モータ制御装置
【課題】本発明は、モータを滑らかにPWM駆動可能なモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置10は、モータ12のオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子13と、電圧センサ17によって検知された電源ライン15の検知電圧Eが電圧閾値Ethを超えるかどうかを判断し、検知電圧Eが電圧閾値Ethを超えないと判断した場合にはモータ12をDC駆動させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力すると共に、検知電圧Eが閾値電圧Ethを超えると判断した場合には、モータ12の負荷トルクTに基づいて設定された第1周波数F1でモータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、第1PWM信号を半導体スイッチ素子13に出力するCPU14と、を備える。
【解決手段】モータ制御装置10は、モータ12のオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子13と、電圧センサ17によって検知された電源ライン15の検知電圧Eが電圧閾値Ethを超えるかどうかを判断し、検知電圧Eが電圧閾値Ethを超えないと判断した場合にはモータ12をDC駆動させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力すると共に、検知電圧Eが閾値電圧Ethを超えると判断した場合には、モータ12の負荷トルクTに基づいて設定された第1周波数F1でモータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、第1PWM信号を半導体スイッチ素子13に出力するCPU14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された負荷を制御する制御装置として特許文献1に記載のものが知られている。負荷としては、ランプ、モータ等、種々のものを用いることができるようになっている。この制御装置は、電源と負荷との間に配された半導体スイッチ素子と、負荷をPWM駆動するPWM信号を半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備える。また、電源と半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインには、電源ラインの電圧を検知する電圧センサが配されている。制御部は、電圧センサによって検知された検出電圧に基づいてデューティー比を算出するようになっている。
【0003】
制御部は、検出電圧が電源の定格電圧を下回っている場合には、デューティー比が100%のPWM信号を半導体スイッチ素子に出力して、負荷をDC駆動する。一方、制御部は、検出電圧が電源の定格電圧を上回っている場合には、電源ラインの電圧が低格電圧と等しいときに負荷に供給される電力と実質的に同等の電力が負荷に供給されるようなデューティー比のPWM信号を半導体スイッチ素子に出力して、負荷をPWM駆動する。
【0004】
上記の構成により、電源ラインの電圧が定格電圧以上に高くなっている場合であっても、負荷に必要以上の電力が供給されることが抑制される。この結果、エネルギーが無駄に消費されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−69680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の制御装置をモータに適用する場合、以下のような問題が生じることが懸念される。図11に示すように、モータをPWM駆動する際に、モータの負荷トルクが比較的に大きな場合には、PWMオフ時にモータの回転数が減衰して回転ムラが発生することが懸念される。すると、モータが滑らかに作動しないおそれがある。これにより、モータから異音が発生したり、モータが振動したりする等の問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、モータを滑らかにPWM駆動可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータ制御装置であって、電源とモータとの間に配されて前記モータのオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子と、前記電源と前記半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインの電圧を検知する電圧センサによって検知された検知電圧が電圧閾値を超えるかどうかを判断し、前記検知電圧が前記電圧閾値を超えないと判断した場合には前記モータをDC駆動させるDC駆動信号を前記半導体スイッチ素子に出力すると共に、前記検知電圧が前記閾値電圧を超えると判断した場合には、前記モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数で前記モータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、前記第1PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備える。
【0009】
本発明によれば、電圧センサによって検出された検出電圧が電圧閾値以下の場合には、制御部は、半導体スイッチ素子をDC通電させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子に出力する。一方、検出電圧が電圧閾値よりも大きな場合には、制御部は、半導体スイッチをPWM駆動する第1PWM信号を半導体スイッチ素子に出力する。これにより、必要以上に大きな電力がモータに供給されて無駄な電力が消費されることを抑制できる。
【0010】
また、モータは、モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数でPWM駆動される。これにより、モータの負荷トルクが比較的に小さい場合には、第1周波数は比較的に小さく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子がオフとなったときでも、モータの回転数はあまり減衰しないため、モータは滑らかに駆動される。
【0011】
一方、モータの負荷トルクが比較的に大きい場合には、第1周波数は比較的に大きく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子がオフとなったときでも、モータの回転数が減衰する前に半導体素子がオンとなるので、モータは、滑らかに駆動される。
【0012】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記第1周波数と前記モータの負荷トルクとの関係を表す第1情報を記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記第1情報と、前記モータの負荷トルクとに基づいて前記第1周波数を決定することが好ましい。
【0013】
上記の態様によれば、モータ制御装置に任意のモータが適用された場合でも、制御部は、第1情報に基づいて、各モータのトルク負荷に対応した第1周波数の第1PWM信号を生成できる。これにより、第1周波数を、一層緻密に算出することができる。
【0014】
前記記憶部には、前記モータの負荷トルクと前記モータの回転数との関係を表す第2情報と、前記モータの負荷トルクに応じて、前記モータがPWM駆動されている状態におけるPWMオン時の前記モータの回転数であるオン時回転数からPWMオフ時の前記モータの回転数であるオフ時回転数を減じた回転ムラと前記モータをPWM駆動する際の周波数との関係を表す第3情報と、が記憶されており、前記制御部は、前記モータの回転数を検知する回転センサによって検知された前記モータの回転数に基づいて前記回転ムラを算出し、前記回転ムラが回転ムラ閾値を超えるかどうかを判断し、前記回転ムラが前記回転ムラ閾値を超えたと判断した場合には、前記第2情報と前記モータの回転数とに基づいて前記モータの負荷トルクを算出し、前記第3情報、前記モータの負荷トルク、及び前記回転ムラに基づいて前記モータをPWM駆動する際に前記回転ムラが前記回転ムラ閾値以下となる第2周波数を算出し、前記モータを前記第2周波数でPWM駆動させる第2PWM信号を生成し、前記第2PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力することが好ましい。
【0015】
モータには、例えば、ワイパ駆動モータのように、窓ガラスが濡れているか否かによって、負荷トルクが経時的に変化するものがある。このようなモータをPWM駆動する間に、経時的に負荷トルクが大きくなると、PWM駆動のオフ時に、増大した負荷トルクによってモータの回転が減衰されてしまい、モータの回転数が低下することが懸念される。すると、PWM駆動のオン時と、オフ時との間のモータ回転数の差(回転ムラ)が大きくなり、滑らかにモータが回転しなくなるおそれがある。すると、ノイズや振動が発生することが懸念される。
【0016】
上記の態様によれば、負荷トルクの変化に応じて、回転ムラが回転ムラ閾値以下となる第2周波数でモータをPWM駆動できるので、モータを滑らかにPWM駆動することができる。
【0017】
前記制御部は、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えるかどうかを判断し、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えると判断した場合には、周波数が20kHz以上50kHz以下である第3周波数で前記モータをPWM駆動させる第3PWM信号を生成し、前記第3PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力することが好ましい。
【0018】
モータをPWM駆動すると、PWM信号の周波数が周波数閾値を超えた場合に、PWM信号の周波数に対応したノイズが発生することが懸念される。上記の態様によれば、PWM信号の第1周波数、又は第2周波数が周波数閾値を越えた場合であっても、モータから発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータからのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0019】
また、PWM信号の周波数を過度に高くすると、半導体スイッチ素子のオンオフが頻繁に行われる結果、モータに供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、PWM信号の周波数は、50kHz以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータを滑らかにPWM駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係るモータ制御装置を有する制御系を示すブロック図
【図2】実施形態1に係るモータ制御の処理ルーチンを示すフローチャート
【図3】実施形態1における初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図4】モータの回転数と、モータの負荷トルクとの関係を示す説明図
【図5】モータの負荷トルクと、モータをPWM駆動する際の周波数との関係を示す説明図
【図6】実施形態1においてモータをPWM駆動する処理ルーチンを示すフローチャート
【図7】モータの回転数と、回転ムラとの関係を示す説明図
【図8】モータの回転ムラと、モータをPWM駆動する際の周波数との関係を示す説明図
【図9】実施形態2に係る初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図10】実施形態3に係る初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図11】従来技術におけるモータの回転数と、回転ムラとの関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明を車載用のモータ制御装置10に適用した実施形態1を図1ないし図8を参照しつつ説明する。本実施形態に係るモータ制御装置10は、電力を供給する電源11と、モータ12との間に配されて、モータ12を駆動制御する。
【0023】
(実施例に係るモータ制御装置10の構成)
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置10を含む制御系の概略的なブロック図である。図1に示すように、モータ制御装置10は、電源11と、モータ12との間に配されて、モータ12のオンオフ切り替えを実行する半導体スイッチ素子13と、この半導体スイッチ素子13を制御するCPU14(特許請求の範囲に記載の制御部に相当)と、を備える。
【0024】
電源11と、半導体スイッチ素子13とを接続する電源ライン15には、モータ制御装置10よりも電源11寄りの位置に、電源11と並列にオルタネータ16が接続されている。このオルタネータ16により発電された電力は、電源ライン15に供給されるようになっている。このため、電源ライン15の電圧は、オルタネータ16の発電電圧により変動するようになっている。
【0025】
上記の電源ライン15には、電源11及びオルタネータ16と、半導体スイッチ素子13との間の位置に、電圧センサ17が配されている。この電圧センサ17により、電源ライン15の電圧E(以下、検出電圧という)が検知されるようになっている。
【0026】
モータ12には、回転センサ18が配されている。この回転センサ18により、モータ12の回転数が検知されるようになっている。
【0027】
モータ制御装置10は、ROM19(特許請求の範囲に記載の記憶部に相当)、及びRAM20を備える。ROM19には、各種のプログラムやデータが記憶されている。また、RAM20には、各種のデータが記憶可能とされている。ROM19としては、書き込み可能なPROM(Programmable ROM)を含むようにしてもよい。
【0028】
CPU14は、モータ12を始動させるためのスイッチ(図示せず)がオンされたとき、又は、スイッチがオフされたときに、CPU14に対して出力されるモータオン・オフ指令を受信するようになっている。上記のCPU14は、ROM19に記憶されたプログラムに基づいて、半導体スイッチ素子13のオンオフ切り替えを制御する。また、CPU14は、電圧センサ17により検知された電源ライン15の検出電圧Eを、電圧センサ17から取得することができるようになっている。さらにCPU14は、回転センサ18により検知されたモータ12の回転数Rを、回転センサ18から取得できるようになっている。
【0029】
半導体スイッチ素子13は、例えばFET等、必要に応じて任意の半導体スイッチ素子を用いることができる。
【0030】
(DC通電と、PWM通電)
本実施形態に係るモータ制御装置10においては、モータ12は、DC駆動、及びPWM駆動されるようになっている。CPU14が半導体スイッチ素子13をオンさせることにより、モータ12には、電源11、及びオルタネータ16からの電力が供給される。これにより、モータ12はDC駆動される。
【0031】
また、CPU14は、電圧センサ17から電源ライン15の検出電圧Eを取得して、この検出電圧Eが電源11の定格電圧(例えば12V)を超えた場合に、半導体スイッチ素子13に、所定の周波数F、デューティー比Dを有するPWM信号を出力することにより、モータ12を、PWM駆動させるようになっている。上記のデューティー比は、PWM駆動時にモータ12に供給される電力が、定格電圧の電源11でDC駆動されたときにモータ12に供給される電力と、実質的に同等になるように設定される。これにより、オルタネータ16の発電電圧が、定格電圧よりも大きくなった場合でも、モータ12に対して必要以上の電力が供給されることが抑制される。この結果、エネルギーが無駄に消費されることを抑制できる。
【0032】
(モータ制御装置10の制御内容)
図2は、本実施形態に係るモータ制御装置10のメインルーチンを示すフローチャートである。車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると、図2に記載のルーチンが起動される。操作者がモータ12を始動させるためのスイッチをオンすると、ECU(図示せず)はモータオン指令をCPU14に出力する。CPU14は、上記のモータオン指令が出力されたことを検知するまで待機し(S100:NO)、検知したら(S100:YES)、初期処理(S200)を実行する。
【0033】
(初期処理)
図3は、初期処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。まずCPU14は、モータ12をDC駆動させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力して、モータ12をDC駆動させる(S210)。続いてCPU14は、回転センサ18からモータ12の回転数R1を取得する(S200)。
【0034】
次いで、CPU14は、S230において、モータ12の負荷トルクT1を算出する。詳細には、まず、CPU14は、ROM19に記憶された第2情報を、ROM19から取得する。次にCPU14は、第2情報と、回転センサ18から得られた回数R1と、から、モータ12の負荷トルクT1を算出する。この第2情報は、図4に示すように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける、モータ12の回転数と、負荷トルクとの関係を表すものである。
【0035】
次に、CPU14は、S240において、モータ12をPWM制御する際に、半導体スイッチ素子13に出力する第1PWM信号の周波数である、第1周波数F1を算出する。詳細には、まずCPU14は、ROM19に記憶された第1情報を、ROM19から取得する。次に、CPU14は、第1情報と、S230で算出されたモータ12の負荷トルクT1と、から、第1周波数F1を算出する。この第1情報は、図5に示すように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける負荷トルクと、モータ12をPWM制御する際に生成されるPWM信号の周波数と、の関係を表すものである。
【0036】
上記のように、モータ12の負荷トルクT1を実測し、この負荷トルクT1と、予めROM19に記憶させた1情報とに基づいて第1周波数F1を算出することにより、任意のモータ12に対して、各モータ12のトルク負荷に対応した第1周波数F1を算出することができる。この結果、第1周波数F1を、緻密に制御することができる。
【0037】
次いで、S250において、CPU14は、RAM20に、出力周波数Foutとして、先に算出した第1周波数F1を記憶させる。この出力周波数Foutは、モータ12がPWM駆動される際に、CPU14が出力するPWM信号の周波数を意味する。後述するように、CPU14は、モータ12をPWM駆動する際には出力周波数FoutのPWM信号を生成し、出力するようになっている。このため、RAM20に記憶された出力周波数Foutに新たな値が記憶されない限り、CPU14は、同じ出力周波数FoutのPWM信号を出力するようになっている。
【0038】
S250が終了すると、処理は図2のS300に進められる。
【0039】
(電圧検知)
CPU14は、S300において、電圧センサ17によって検知された電源ライン15の電圧である検出電圧Eを、電圧センサ17から取得する。次いで、CPU14は、S400において、検出電圧Eが、電圧閾値Ethを超えるかどうかを判断する。本実施形態においては、電圧閾値Ethは電源11の定格電圧(12V)とされる。なお、定格電圧は必要に応じて任意の電圧とすることができる。
【0040】
(DC通電)
S400において、CPU14は、検出電圧Eが電圧閾値Ethを超えていないと判断した場合(E≦12V)には(S400:YES)、CPU14はS600にて、モータ12をDC駆動させるDC駆動信号を生成し、半導体スイッチ素子13にDC駆動振動を出力する。これによりモータ12は、定格電圧以下の電力によりDC駆動される。なお、このとき、CPU14は、図示しないエンジンの回転数を上昇させてオルタネータ16の発電電圧を増大させることで、検出電圧を定格電圧まで増大させる処理を実行させてもよい。
【0041】
操作者がモータ12のスイッチをオフすると、ECU(図示せず)はCPU14にモータオフ指令を出力する。CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0042】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0043】
(PWM通電)
一方、S400において、CPU14が、検出電圧Eは電圧閾値Ethを超えている(E>12V)と判断した場合には(S400:YES)、CPU14はS500にて、モータ12に対してPWM通電させるための処理を実行する。
【0044】
図6は、モータ12に対してPWM通電させるための処理ルーチンを示すフローチャートである。まずCPU14は、S501にて、取得した検出電圧Eに基づいて、PWM駆動時にモータ12に供給される電力が、定格電圧の電源11でDC駆動されたときにモータ12に供給される電力と、実質的に同等になるようにデューティー比Dを算出する。
【0045】
次に、S502において、CPU14は、RAM20から出力周波数Foutを取得し、この出力周波数Fout、及びデューティー比Dを有する第1PWM信号S1を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0046】
これにより、オルタネータ16の発電電圧が、電源11の定格電圧を超える場合においては、モータ12に対しては、定格電圧の電源11から供給される電力と実質的に同等の電力が供給される。この結果、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0047】
続いて、CPU14は、S503において、回転センサ18から、PWM駆動時におけるモータ12の回転数R2を取得する。図7に示すように、モータ12の回転数は、第1PWM信号のオン時には増大し、オフ時には、モータ12の負荷トルクにより減衰する。このため、モータ12には回転ムラQが発生する。本実施形態においては、回転ムラQは、PWMオン時における最も大きなモータ12の回転数であるオン時回転数R2onからPWMオフ時における最も小さなモータ12の回転数であるオフ時回転数R2offを減じたものとされる。
【0048】
CPU14は、S504において、モータ12の回転数R2に基づいて、オン時回転数R2onと、オフ時回転数R2offとの差を計算して、回転ムラQを算出する。
【0049】
CPU14は、S505において、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えるかどうかを判断する。CPU14は、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えない(Q≦Qth)場合には(S505:NO)、図2に示すS700を実行する。
【0050】
なお、第1情報に基づいて第1周波数F1を算出した場合、通常の使用状態においては、モータ12の回転ムラQは、回転ムラ閾値Qthを超えないようになっている。
【0051】
その後、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0052】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0053】
(第2周波数F2の算出)
例えば、本実施形態に係るモータ12がワイパを駆動するためのモータ12に適用された場合、ウィンドウの外面に付着した水の量により、モータ12の負荷トルクが変化する場合がある。このとき、モータ12の負荷トルクが増大すると、PWM駆動時のオフ時において、モータ12の回転数の減衰量が増大する。すると、回転ムラQが増大することが懸念される。
【0054】
上記の回転ムラQが過度に増大した場合には、モータ12が滑らかに回転しなくなり、ワイパ等からノイズや振動が発生することが懸念される。そこで、本実施形態においては、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超える場合には、PWM信号の周波数を変更する構成とした。
【0055】
S505において、CPU14は、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えた(Q>Qth)と判断した場合には(S505:YES)、PWM駆動時におけるモータ12の負荷トルクT2を算出する(S506)。詳細に説明すると、まずCPU14は、S506において、ROM19から第2情報を取得する。この第2情報は、上述したように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける、モータ12の回転数と、負荷トルクとの関係を表すものである(図4参照)。
【0056】
図4に示すように、CPU14は、PWM駆動時におけるモータ12の回転数R2と、第2情報とから、PWM駆動時におけるモータ12の負荷トルクT2を算出する。
【0057】
次に、CPU14は、S507において、モータ12をPWM制御する際に、半導体スイッチ素子13に出力する第2PWM信号の周波数である、第2周波数F2を算出する。詳細には、まずCPU14は、ROM19に記憶された第3情報を、ROM19から取得する。次にCPU14は、第3情報と、S506で算出された負荷トルクT2と、S504で算出された回転ムラQと、から、第2周波数F2を算出する。この第3情報は、図8に示すように、回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係を表すものである。上記の回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係は、モータ12の負荷トルクにより変化するようになっている。図8には、負荷トルクT1のときと、負荷トルクT2のときにおける、回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係を示す。
【0058】
具体的に説明すると、まず、モータ12が第1周波数F1でPWM制御された状態において、例えば降雨状況の変化により、ウィンドウの外面に付着した水の量が変化すると、モータ12の負荷トルクがT1からT2へと増大する(図4参照)。すると、モータ12がPWM駆動されている状態において、PWMオフ時にモータ12の回転数が一層減衰するようになる。この結果、PWMオン時の回転数と、PWMオフ時の回転数との差が増大し、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthよりも大きくなる(図8参照)。
【0059】
本実施形態においては、CPU14は、図8に示すように、負荷トルクT2と、第3情報とに基づいて、負荷トルクT2における回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えないような第2周波数F2を算出する。
【0060】
このように本実施形態によれば、負荷トルクT2の変化に応じて、回転ムラQが回転ムラ閾値Qthを超えない(Q≦Qth)第2周波数F2でモータ12をPWM駆動できるので、モータ12を滑らかにPWM駆動することができる。
【0061】
次にCPU14は、S507で算出された第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えるかどうかを判断する(S508)。この周波数閾値Fthについては、後に詳述する。本実施形態においては、周波数閾値は1kHzとされる。なお、周波数閾値Fthとしては、必要に応じて任意の値を採用しうる。
【0062】
CPU14は、第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えない(F2≦1kHz)と判断した場合には(S508:NO)、RAM20に出力周波数Foutとして第2周波数F2を記憶させる。
【0063】
その後、S511において、CPU14は、出力周波数Fout、デューティー比Dの第2PWM信号S2を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0064】
その後、CPU14は、図2のS700の処理を実行し、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0065】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0066】
(第3周波数F3)
モータ12をPWM駆動すると、PWM信号の周波数が周波数閾値Fthを超えた場合に、PWM信号の周波数に対応したノイズが発生することが懸念される。すると、車両の搭乗者等に不快感を与えることが懸念される。なお、上記の周波数閾値Fthは、モータ12の種類、モータ12の使用状態により変化しうる。上述したように、本実施形態においては、周波数閾値Fthは1kHzとされる。
【0067】
そこで、本実施形態においては、PWM信号の周波数が周波数閾値Fthを超えた場合に、PWM信号の周波数を変化させる構成とした。具体的には、CPU14は、第2周波数F2が周波数閾値Fthを超える(F2>Fth)と判断した場合には(S508:YES)、CPU14は、ROM19から第3周波数F3を取得し、RAM20に出力周波数Foutとして第3周波数F3を記憶させる。
【0068】
その後、S511において、CPU14は、出力周波数Fout、デューティー比Dの第3PWM信号S3を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0069】
上記の第3周波数F3は、20kHz以上に設定されている。そして、周波数20kHzを超える音は、人の可聴域の範囲外なので、モータ12から第3周波数F3のノイズが発生した場合でも、このノイズは、搭乗者等に聞こえないようになっている。これにより、モータ12からのノイズが搭乗者等に不快感を与えることを抑制できる。
【0070】
一方、第3周波数F3を過度に高くすると、半導体スイッチ素子13のオンオフが頻繁に行われる結果、モータ12に供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、第3周波数F3は、50kHz以下とすることが好ましい。
【0071】
その後、CPU14は、図2のS700の処理を実行し、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0072】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0073】
(作用、効果)
本実施形態によれば、電圧センサ17によって検出された検出電圧Eが電圧閾値Eth以下の場合には、CPU14は、半導体スイッチ素子13をDC通電させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力する。一方、検出電圧Eが電圧閾値Ethよりも大きな場合には、CPU14は、半導体スイッチ素子13をPWM駆動する第1PWM信号を半導体スイッチ素子13に出力する。これにより、必要以上に大きな電力がモータ12に供給されて無駄な電力が消費されることを抑制できる。
【0074】
また、モータ12は、モータ12の負荷トルクT1に基づいて設定された第1周波数F1でPWM駆動される。これにより、モータ12の負荷トルクT1が比較的に小さい場合には、第1周波数F1は比較的に小さく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子13がオフとなったときでも、モータ12の回転数はあまり減衰しないため、モータ12は滑らかに駆動される。
【0075】
一方、モータ12の負荷トルクT1が比較的に大きい場合には、第1周波数F1は比較的に大きく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子13がオフとなったときでも、モータ12の回転数が減衰する前に半導体スイッチ素子13がオンとなるので、モータ12は、滑らかに駆動される。
【0076】
また、本実施形態によれば、モータ制御装置10に対して任意のモータ12が適用された場合でも、CPU14は、第1情報に基づいて、各モータ12のトルク負荷に対応した第1周波数の第1PWM信号を生成できる。これにより、第1周波数F1を、一層緻密に算出することができる。
【0077】
また、モータ12には、例えば、ワイパ駆動モータのように、窓ガラスが濡れているか否かによって、負荷トルクが経時的に変化するものがある。このようなモータ12をPWM駆動する間に、経時的に負荷トルクが大きくなると、PWM駆動のオフ時に、増大した負荷トルクによってモータ12の回転が減衰されてしまい、モータ12の回転数が低下することが懸念される。すると、PWM駆動のオン時と、オフ時との間のモータ12回転数の差である回転ムラQが大きくなり、滑らかにモータ12が回転しなくなるおそれがある。すると、ノイズや振動が発生することが懸念される。
【0078】
本実施形態によれば、負荷トルクの変化に応じて、回転ムラQが回転ムラ閾値Qth以下となる第2周波数F2でモータ12をPWM駆動できるので、モータ12を滑らかにPWM駆動することができる。
【0079】
また、モータ12をPWM駆動すると、PWM信号の第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えた場合に、第2周波数F2に対応したノイズが発生することが懸念される。本実施形態によれば、PWM信号の第2周波数F2が周波数閾値Fthを越えた場合には、半導体スイッチ素子13には、第3周波数F3が出力される。この第3周波数は20kHz以上(本実施形態では20kHz)に設定されているので、モータ12から発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータ12からのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0080】
また、第3周波数F3を過度に高くすると、半導体スイッチ素子13のオンオフが頻繁に行われる結果、モータ12に供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、第3周波数F3は、50kHz以下とすることが好ましい(本実施形態では20kHz)。
【0081】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、図9を参照しつつ説明する。本実施形態においえては、初期処理において、CPU14は、どのモータ12に対してモータオン指令が出力されたかを判断する(S260)。
【0082】
次に、CPU14は、ROM19に記憶された複数の第1周波数F1の中から、モータオン指令が出力されたモータ12に対応する第1周波数F1を選択して、ROM19から取得する(S270)。上記の第1周波数F1は、通常の使用状態において、モータ12の回転ムラQが回転ムラ閾値Qthを超えないように、モータ12の負荷トルクに基づいて予め算出されたものである。
【0083】
次に、CPU14は、S280において、RAM20に、出力周波数Foutとして第1周波数F1を記憶させる。
【0084】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0085】
本実施形態においては、CPU14が、第1周波数F1を取得する工程を簡略化できる。
【0086】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を、図10を参照しつつ説明する。本実施形態においては、まずCPU14は、初期処理について、図3におけるS210からS240までの処理を実行する。
【0087】
次いでCPU14は、S240で算出された第1周波数F1が周波数閾値Fthを超えるかどうかを判断する(S241)。本実施形態においては、周波数閾値は1kHzとされる。
【0088】
CPU14は、第1周波数F1が周波数閾値Fthを超えない(F1≦1kHz)と判断した場合には(S241:NO)、RAM20に出力周波数Foutとして第1周波数F1を記憶させる(S242)。
【0089】
その後、CPU14は、図2におけるS300以降の処理を実行する。
【0090】
一方、CPU14は、第1周波数F1が周波数閾値Fthを超える(F1>Fth)と判断した場合には(S241:YES)、CPU14は、ROM19から第3周波数F3を取得し、RAM20に出力周波数Foutとして第3周波数F3を記憶させる(S243)。
【0091】
その後、CPU14は、図2におけるS300以降の処理を実行する。
【0092】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0093】
本実施形態によれば、PWM信号の第1周波数F1が周波数閾値Fthを越えた場合であっても、モータ12から発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータ12からのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0094】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態に係るモータ制御装置10は、ワイパ、冷却ファン、ドアミラー、パワーステアリング、パワーウィンドウ、スライドドア、パワーシート、サンルーフ等に使用されるモータ等、必要に応じて任意のモータに適用できる。
(2)回転センサ18は省略してもよい。
(3)回転ムラ閾値Qthは、本発明が適用可能な全てのモータについて同じ値としてもよいし、また、個々のモータ毎に異なる値としてもよい。
(4)第1周波数F1、又は第2周波数F2が1kHzを超える場合であっても、第1周波数F1、又は第2周波数F2を含むPWM信号を半導体スイッチ素子13に出力してもよい。この場合、モータ12に対して防振対策や、防音対策等を施してもよい。
(5)第3周波数F3は、20kHzよりも高く設定してもよい。
(6)本実施形態においては、記憶部としてROM19を用いたが、これに限られず、記憶部はハードディスクドライブ等、任意の記憶装置を用いことができる。
【符号の説明】
【0095】
10…モータ制御装置
11…電源
12…モータ
13…半導体スイッチ素子
14…CPU(制御部)
15…電源ライン
17…電圧センサ
18…回転センサ
19…ROM(記憶部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された負荷を制御する制御装置として特許文献1に記載のものが知られている。負荷としては、ランプ、モータ等、種々のものを用いることができるようになっている。この制御装置は、電源と負荷との間に配された半導体スイッチ素子と、負荷をPWM駆動するPWM信号を半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備える。また、電源と半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインには、電源ラインの電圧を検知する電圧センサが配されている。制御部は、電圧センサによって検知された検出電圧に基づいてデューティー比を算出するようになっている。
【0003】
制御部は、検出電圧が電源の定格電圧を下回っている場合には、デューティー比が100%のPWM信号を半導体スイッチ素子に出力して、負荷をDC駆動する。一方、制御部は、検出電圧が電源の定格電圧を上回っている場合には、電源ラインの電圧が低格電圧と等しいときに負荷に供給される電力と実質的に同等の電力が負荷に供給されるようなデューティー比のPWM信号を半導体スイッチ素子に出力して、負荷をPWM駆動する。
【0004】
上記の構成により、電源ラインの電圧が定格電圧以上に高くなっている場合であっても、負荷に必要以上の電力が供給されることが抑制される。この結果、エネルギーが無駄に消費されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−69680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の制御装置をモータに適用する場合、以下のような問題が生じることが懸念される。図11に示すように、モータをPWM駆動する際に、モータの負荷トルクが比較的に大きな場合には、PWMオフ時にモータの回転数が減衰して回転ムラが発生することが懸念される。すると、モータが滑らかに作動しないおそれがある。これにより、モータから異音が発生したり、モータが振動したりする等の問題が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、モータを滑らかにPWM駆動可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータ制御装置であって、電源とモータとの間に配されて前記モータのオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子と、前記電源と前記半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインの電圧を検知する電圧センサによって検知された検知電圧が電圧閾値を超えるかどうかを判断し、前記検知電圧が前記電圧閾値を超えないと判断した場合には前記モータをDC駆動させるDC駆動信号を前記半導体スイッチ素子に出力すると共に、前記検知電圧が前記閾値電圧を超えると判断した場合には、前記モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数で前記モータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、前記第1PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備える。
【0009】
本発明によれば、電圧センサによって検出された検出電圧が電圧閾値以下の場合には、制御部は、半導体スイッチ素子をDC通電させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子に出力する。一方、検出電圧が電圧閾値よりも大きな場合には、制御部は、半導体スイッチをPWM駆動する第1PWM信号を半導体スイッチ素子に出力する。これにより、必要以上に大きな電力がモータに供給されて無駄な電力が消費されることを抑制できる。
【0010】
また、モータは、モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数でPWM駆動される。これにより、モータの負荷トルクが比較的に小さい場合には、第1周波数は比較的に小さく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子がオフとなったときでも、モータの回転数はあまり減衰しないため、モータは滑らかに駆動される。
【0011】
一方、モータの負荷トルクが比較的に大きい場合には、第1周波数は比較的に大きく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子がオフとなったときでも、モータの回転数が減衰する前に半導体素子がオンとなるので、モータは、滑らかに駆動される。
【0012】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記第1周波数と前記モータの負荷トルクとの関係を表す第1情報を記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記第1情報と、前記モータの負荷トルクとに基づいて前記第1周波数を決定することが好ましい。
【0013】
上記の態様によれば、モータ制御装置に任意のモータが適用された場合でも、制御部は、第1情報に基づいて、各モータのトルク負荷に対応した第1周波数の第1PWM信号を生成できる。これにより、第1周波数を、一層緻密に算出することができる。
【0014】
前記記憶部には、前記モータの負荷トルクと前記モータの回転数との関係を表す第2情報と、前記モータの負荷トルクに応じて、前記モータがPWM駆動されている状態におけるPWMオン時の前記モータの回転数であるオン時回転数からPWMオフ時の前記モータの回転数であるオフ時回転数を減じた回転ムラと前記モータをPWM駆動する際の周波数との関係を表す第3情報と、が記憶されており、前記制御部は、前記モータの回転数を検知する回転センサによって検知された前記モータの回転数に基づいて前記回転ムラを算出し、前記回転ムラが回転ムラ閾値を超えるかどうかを判断し、前記回転ムラが前記回転ムラ閾値を超えたと判断した場合には、前記第2情報と前記モータの回転数とに基づいて前記モータの負荷トルクを算出し、前記第3情報、前記モータの負荷トルク、及び前記回転ムラに基づいて前記モータをPWM駆動する際に前記回転ムラが前記回転ムラ閾値以下となる第2周波数を算出し、前記モータを前記第2周波数でPWM駆動させる第2PWM信号を生成し、前記第2PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力することが好ましい。
【0015】
モータには、例えば、ワイパ駆動モータのように、窓ガラスが濡れているか否かによって、負荷トルクが経時的に変化するものがある。このようなモータをPWM駆動する間に、経時的に負荷トルクが大きくなると、PWM駆動のオフ時に、増大した負荷トルクによってモータの回転が減衰されてしまい、モータの回転数が低下することが懸念される。すると、PWM駆動のオン時と、オフ時との間のモータ回転数の差(回転ムラ)が大きくなり、滑らかにモータが回転しなくなるおそれがある。すると、ノイズや振動が発生することが懸念される。
【0016】
上記の態様によれば、負荷トルクの変化に応じて、回転ムラが回転ムラ閾値以下となる第2周波数でモータをPWM駆動できるので、モータを滑らかにPWM駆動することができる。
【0017】
前記制御部は、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えるかどうかを判断し、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えると判断した場合には、周波数が20kHz以上50kHz以下である第3周波数で前記モータをPWM駆動させる第3PWM信号を生成し、前記第3PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力することが好ましい。
【0018】
モータをPWM駆動すると、PWM信号の周波数が周波数閾値を超えた場合に、PWM信号の周波数に対応したノイズが発生することが懸念される。上記の態様によれば、PWM信号の第1周波数、又は第2周波数が周波数閾値を越えた場合であっても、モータから発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータからのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0019】
また、PWM信号の周波数を過度に高くすると、半導体スイッチ素子のオンオフが頻繁に行われる結果、モータに供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、PWM信号の周波数は、50kHz以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータを滑らかにPWM駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係るモータ制御装置を有する制御系を示すブロック図
【図2】実施形態1に係るモータ制御の処理ルーチンを示すフローチャート
【図3】実施形態1における初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図4】モータの回転数と、モータの負荷トルクとの関係を示す説明図
【図5】モータの負荷トルクと、モータをPWM駆動する際の周波数との関係を示す説明図
【図6】実施形態1においてモータをPWM駆動する処理ルーチンを示すフローチャート
【図7】モータの回転数と、回転ムラとの関係を示す説明図
【図8】モータの回転ムラと、モータをPWM駆動する際の周波数との関係を示す説明図
【図9】実施形態2に係る初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図10】実施形態3に係る初期処理の処理ルーチンを示すフローチャート
【図11】従来技術におけるモータの回転数と、回転ムラとの関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明を車載用のモータ制御装置10に適用した実施形態1を図1ないし図8を参照しつつ説明する。本実施形態に係るモータ制御装置10は、電力を供給する電源11と、モータ12との間に配されて、モータ12を駆動制御する。
【0023】
(実施例に係るモータ制御装置10の構成)
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置10を含む制御系の概略的なブロック図である。図1に示すように、モータ制御装置10は、電源11と、モータ12との間に配されて、モータ12のオンオフ切り替えを実行する半導体スイッチ素子13と、この半導体スイッチ素子13を制御するCPU14(特許請求の範囲に記載の制御部に相当)と、を備える。
【0024】
電源11と、半導体スイッチ素子13とを接続する電源ライン15には、モータ制御装置10よりも電源11寄りの位置に、電源11と並列にオルタネータ16が接続されている。このオルタネータ16により発電された電力は、電源ライン15に供給されるようになっている。このため、電源ライン15の電圧は、オルタネータ16の発電電圧により変動するようになっている。
【0025】
上記の電源ライン15には、電源11及びオルタネータ16と、半導体スイッチ素子13との間の位置に、電圧センサ17が配されている。この電圧センサ17により、電源ライン15の電圧E(以下、検出電圧という)が検知されるようになっている。
【0026】
モータ12には、回転センサ18が配されている。この回転センサ18により、モータ12の回転数が検知されるようになっている。
【0027】
モータ制御装置10は、ROM19(特許請求の範囲に記載の記憶部に相当)、及びRAM20を備える。ROM19には、各種のプログラムやデータが記憶されている。また、RAM20には、各種のデータが記憶可能とされている。ROM19としては、書き込み可能なPROM(Programmable ROM)を含むようにしてもよい。
【0028】
CPU14は、モータ12を始動させるためのスイッチ(図示せず)がオンされたとき、又は、スイッチがオフされたときに、CPU14に対して出力されるモータオン・オフ指令を受信するようになっている。上記のCPU14は、ROM19に記憶されたプログラムに基づいて、半導体スイッチ素子13のオンオフ切り替えを制御する。また、CPU14は、電圧センサ17により検知された電源ライン15の検出電圧Eを、電圧センサ17から取得することができるようになっている。さらにCPU14は、回転センサ18により検知されたモータ12の回転数Rを、回転センサ18から取得できるようになっている。
【0029】
半導体スイッチ素子13は、例えばFET等、必要に応じて任意の半導体スイッチ素子を用いることができる。
【0030】
(DC通電と、PWM通電)
本実施形態に係るモータ制御装置10においては、モータ12は、DC駆動、及びPWM駆動されるようになっている。CPU14が半導体スイッチ素子13をオンさせることにより、モータ12には、電源11、及びオルタネータ16からの電力が供給される。これにより、モータ12はDC駆動される。
【0031】
また、CPU14は、電圧センサ17から電源ライン15の検出電圧Eを取得して、この検出電圧Eが電源11の定格電圧(例えば12V)を超えた場合に、半導体スイッチ素子13に、所定の周波数F、デューティー比Dを有するPWM信号を出力することにより、モータ12を、PWM駆動させるようになっている。上記のデューティー比は、PWM駆動時にモータ12に供給される電力が、定格電圧の電源11でDC駆動されたときにモータ12に供給される電力と、実質的に同等になるように設定される。これにより、オルタネータ16の発電電圧が、定格電圧よりも大きくなった場合でも、モータ12に対して必要以上の電力が供給されることが抑制される。この結果、エネルギーが無駄に消費されることを抑制できる。
【0032】
(モータ制御装置10の制御内容)
図2は、本実施形態に係るモータ制御装置10のメインルーチンを示すフローチャートである。車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると、図2に記載のルーチンが起動される。操作者がモータ12を始動させるためのスイッチをオンすると、ECU(図示せず)はモータオン指令をCPU14に出力する。CPU14は、上記のモータオン指令が出力されたことを検知するまで待機し(S100:NO)、検知したら(S100:YES)、初期処理(S200)を実行する。
【0033】
(初期処理)
図3は、初期処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。まずCPU14は、モータ12をDC駆動させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力して、モータ12をDC駆動させる(S210)。続いてCPU14は、回転センサ18からモータ12の回転数R1を取得する(S200)。
【0034】
次いで、CPU14は、S230において、モータ12の負荷トルクT1を算出する。詳細には、まず、CPU14は、ROM19に記憶された第2情報を、ROM19から取得する。次にCPU14は、第2情報と、回転センサ18から得られた回数R1と、から、モータ12の負荷トルクT1を算出する。この第2情報は、図4に示すように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける、モータ12の回転数と、負荷トルクとの関係を表すものである。
【0035】
次に、CPU14は、S240において、モータ12をPWM制御する際に、半導体スイッチ素子13に出力する第1PWM信号の周波数である、第1周波数F1を算出する。詳細には、まずCPU14は、ROM19に記憶された第1情報を、ROM19から取得する。次に、CPU14は、第1情報と、S230で算出されたモータ12の負荷トルクT1と、から、第1周波数F1を算出する。この第1情報は、図5に示すように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける負荷トルクと、モータ12をPWM制御する際に生成されるPWM信号の周波数と、の関係を表すものである。
【0036】
上記のように、モータ12の負荷トルクT1を実測し、この負荷トルクT1と、予めROM19に記憶させた1情報とに基づいて第1周波数F1を算出することにより、任意のモータ12に対して、各モータ12のトルク負荷に対応した第1周波数F1を算出することができる。この結果、第1周波数F1を、緻密に制御することができる。
【0037】
次いで、S250において、CPU14は、RAM20に、出力周波数Foutとして、先に算出した第1周波数F1を記憶させる。この出力周波数Foutは、モータ12がPWM駆動される際に、CPU14が出力するPWM信号の周波数を意味する。後述するように、CPU14は、モータ12をPWM駆動する際には出力周波数FoutのPWM信号を生成し、出力するようになっている。このため、RAM20に記憶された出力周波数Foutに新たな値が記憶されない限り、CPU14は、同じ出力周波数FoutのPWM信号を出力するようになっている。
【0038】
S250が終了すると、処理は図2のS300に進められる。
【0039】
(電圧検知)
CPU14は、S300において、電圧センサ17によって検知された電源ライン15の電圧である検出電圧Eを、電圧センサ17から取得する。次いで、CPU14は、S400において、検出電圧Eが、電圧閾値Ethを超えるかどうかを判断する。本実施形態においては、電圧閾値Ethは電源11の定格電圧(12V)とされる。なお、定格電圧は必要に応じて任意の電圧とすることができる。
【0040】
(DC通電)
S400において、CPU14は、検出電圧Eが電圧閾値Ethを超えていないと判断した場合(E≦12V)には(S400:YES)、CPU14はS600にて、モータ12をDC駆動させるDC駆動信号を生成し、半導体スイッチ素子13にDC駆動振動を出力する。これによりモータ12は、定格電圧以下の電力によりDC駆動される。なお、このとき、CPU14は、図示しないエンジンの回転数を上昇させてオルタネータ16の発電電圧を増大させることで、検出電圧を定格電圧まで増大させる処理を実行させてもよい。
【0041】
操作者がモータ12のスイッチをオフすると、ECU(図示せず)はCPU14にモータオフ指令を出力する。CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0042】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0043】
(PWM通電)
一方、S400において、CPU14が、検出電圧Eは電圧閾値Ethを超えている(E>12V)と判断した場合には(S400:YES)、CPU14はS500にて、モータ12に対してPWM通電させるための処理を実行する。
【0044】
図6は、モータ12に対してPWM通電させるための処理ルーチンを示すフローチャートである。まずCPU14は、S501にて、取得した検出電圧Eに基づいて、PWM駆動時にモータ12に供給される電力が、定格電圧の電源11でDC駆動されたときにモータ12に供給される電力と、実質的に同等になるようにデューティー比Dを算出する。
【0045】
次に、S502において、CPU14は、RAM20から出力周波数Foutを取得し、この出力周波数Fout、及びデューティー比Dを有する第1PWM信号S1を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0046】
これにより、オルタネータ16の発電電圧が、電源11の定格電圧を超える場合においては、モータ12に対しては、定格電圧の電源11から供給される電力と実質的に同等の電力が供給される。この結果、無駄なエネルギー消費を抑制できる。
【0047】
続いて、CPU14は、S503において、回転センサ18から、PWM駆動時におけるモータ12の回転数R2を取得する。図7に示すように、モータ12の回転数は、第1PWM信号のオン時には増大し、オフ時には、モータ12の負荷トルクにより減衰する。このため、モータ12には回転ムラQが発生する。本実施形態においては、回転ムラQは、PWMオン時における最も大きなモータ12の回転数であるオン時回転数R2onからPWMオフ時における最も小さなモータ12の回転数であるオフ時回転数R2offを減じたものとされる。
【0048】
CPU14は、S504において、モータ12の回転数R2に基づいて、オン時回転数R2onと、オフ時回転数R2offとの差を計算して、回転ムラQを算出する。
【0049】
CPU14は、S505において、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えるかどうかを判断する。CPU14は、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えない(Q≦Qth)場合には(S505:NO)、図2に示すS700を実行する。
【0050】
なお、第1情報に基づいて第1周波数F1を算出した場合、通常の使用状態においては、モータ12の回転ムラQは、回転ムラ閾値Qthを超えないようになっている。
【0051】
その後、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0052】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0053】
(第2周波数F2の算出)
例えば、本実施形態に係るモータ12がワイパを駆動するためのモータ12に適用された場合、ウィンドウの外面に付着した水の量により、モータ12の負荷トルクが変化する場合がある。このとき、モータ12の負荷トルクが増大すると、PWM駆動時のオフ時において、モータ12の回転数の減衰量が増大する。すると、回転ムラQが増大することが懸念される。
【0054】
上記の回転ムラQが過度に増大した場合には、モータ12が滑らかに回転しなくなり、ワイパ等からノイズや振動が発生することが懸念される。そこで、本実施形態においては、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超える場合には、PWM信号の周波数を変更する構成とした。
【0055】
S505において、CPU14は、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えた(Q>Qth)と判断した場合には(S505:YES)、PWM駆動時におけるモータ12の負荷トルクT2を算出する(S506)。詳細に説明すると、まずCPU14は、S506において、ROM19から第2情報を取得する。この第2情報は、上述したように、定格電圧の電力をモータ12に供給したときにおける、モータ12の回転数と、負荷トルクとの関係を表すものである(図4参照)。
【0056】
図4に示すように、CPU14は、PWM駆動時におけるモータ12の回転数R2と、第2情報とから、PWM駆動時におけるモータ12の負荷トルクT2を算出する。
【0057】
次に、CPU14は、S507において、モータ12をPWM制御する際に、半導体スイッチ素子13に出力する第2PWM信号の周波数である、第2周波数F2を算出する。詳細には、まずCPU14は、ROM19に記憶された第3情報を、ROM19から取得する。次にCPU14は、第3情報と、S506で算出された負荷トルクT2と、S504で算出された回転ムラQと、から、第2周波数F2を算出する。この第3情報は、図8に示すように、回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係を表すものである。上記の回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係は、モータ12の負荷トルクにより変化するようになっている。図8には、負荷トルクT1のときと、負荷トルクT2のときにおける、回転ムラQと、PWM信号の周波数との関係を示す。
【0058】
具体的に説明すると、まず、モータ12が第1周波数F1でPWM制御された状態において、例えば降雨状況の変化により、ウィンドウの外面に付着した水の量が変化すると、モータ12の負荷トルクがT1からT2へと増大する(図4参照)。すると、モータ12がPWM駆動されている状態において、PWMオフ時にモータ12の回転数が一層減衰するようになる。この結果、PWMオン時の回転数と、PWMオフ時の回転数との差が増大し、回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthよりも大きくなる(図8参照)。
【0059】
本実施形態においては、CPU14は、図8に示すように、負荷トルクT2と、第3情報とに基づいて、負荷トルクT2における回転ムラQが、回転ムラ閾値Qthを超えないような第2周波数F2を算出する。
【0060】
このように本実施形態によれば、負荷トルクT2の変化に応じて、回転ムラQが回転ムラ閾値Qthを超えない(Q≦Qth)第2周波数F2でモータ12をPWM駆動できるので、モータ12を滑らかにPWM駆動することができる。
【0061】
次にCPU14は、S507で算出された第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えるかどうかを判断する(S508)。この周波数閾値Fthについては、後に詳述する。本実施形態においては、周波数閾値は1kHzとされる。なお、周波数閾値Fthとしては、必要に応じて任意の値を採用しうる。
【0062】
CPU14は、第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えない(F2≦1kHz)と判断した場合には(S508:NO)、RAM20に出力周波数Foutとして第2周波数F2を記憶させる。
【0063】
その後、S511において、CPU14は、出力周波数Fout、デューティー比Dの第2PWM信号S2を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0064】
その後、CPU14は、図2のS700の処理を実行し、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0065】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0066】
(第3周波数F3)
モータ12をPWM駆動すると、PWM信号の周波数が周波数閾値Fthを超えた場合に、PWM信号の周波数に対応したノイズが発生することが懸念される。すると、車両の搭乗者等に不快感を与えることが懸念される。なお、上記の周波数閾値Fthは、モータ12の種類、モータ12の使用状態により変化しうる。上述したように、本実施形態においては、周波数閾値Fthは1kHzとされる。
【0067】
そこで、本実施形態においては、PWM信号の周波数が周波数閾値Fthを超えた場合に、PWM信号の周波数を変化させる構成とした。具体的には、CPU14は、第2周波数F2が周波数閾値Fthを超える(F2>Fth)と判断した場合には(S508:YES)、CPU14は、ROM19から第3周波数F3を取得し、RAM20に出力周波数Foutとして第3周波数F3を記憶させる。
【0068】
その後、S511において、CPU14は、出力周波数Fout、デューティー比Dの第3PWM信号S3を生成し、半導体スイッチ素子13に出力する。
【0069】
上記の第3周波数F3は、20kHz以上に設定されている。そして、周波数20kHzを超える音は、人の可聴域の範囲外なので、モータ12から第3周波数F3のノイズが発生した場合でも、このノイズは、搭乗者等に聞こえないようになっている。これにより、モータ12からのノイズが搭乗者等に不快感を与えることを抑制できる。
【0070】
一方、第3周波数F3を過度に高くすると、半導体スイッチ素子13のオンオフが頻繁に行われる結果、モータ12に供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、第3周波数F3は、50kHz以下とすることが好ましい。
【0071】
その後、CPU14は、図2のS700の処理を実行し、モータオフ指令が出力されたことを検知したら(S700:YES)、S800にて、半導体スイッチ素子13をオフさせる。これにより、モータ12の駆動制御が終了する。
【0072】
一方、CPU14は、モータオフ指令が出力されたことを検知しない場合(S700:NO)には、S300以降の処理を実行する。
【0073】
(作用、効果)
本実施形態によれば、電圧センサ17によって検出された検出電圧Eが電圧閾値Eth以下の場合には、CPU14は、半導体スイッチ素子13をDC通電させるDC駆動信号を半導体スイッチ素子13に出力する。一方、検出電圧Eが電圧閾値Ethよりも大きな場合には、CPU14は、半導体スイッチ素子13をPWM駆動する第1PWM信号を半導体スイッチ素子13に出力する。これにより、必要以上に大きな電力がモータ12に供給されて無駄な電力が消費されることを抑制できる。
【0074】
また、モータ12は、モータ12の負荷トルクT1に基づいて設定された第1周波数F1でPWM駆動される。これにより、モータ12の負荷トルクT1が比較的に小さい場合には、第1周波数F1は比較的に小さく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子13がオフとなったときでも、モータ12の回転数はあまり減衰しないため、モータ12は滑らかに駆動される。
【0075】
一方、モータ12の負荷トルクT1が比較的に大きい場合には、第1周波数F1は比較的に大きく設定される。すると、PWM制御時に半導体スイッチ素子13がオフとなったときでも、モータ12の回転数が減衰する前に半導体スイッチ素子13がオンとなるので、モータ12は、滑らかに駆動される。
【0076】
また、本実施形態によれば、モータ制御装置10に対して任意のモータ12が適用された場合でも、CPU14は、第1情報に基づいて、各モータ12のトルク負荷に対応した第1周波数の第1PWM信号を生成できる。これにより、第1周波数F1を、一層緻密に算出することができる。
【0077】
また、モータ12には、例えば、ワイパ駆動モータのように、窓ガラスが濡れているか否かによって、負荷トルクが経時的に変化するものがある。このようなモータ12をPWM駆動する間に、経時的に負荷トルクが大きくなると、PWM駆動のオフ時に、増大した負荷トルクによってモータ12の回転が減衰されてしまい、モータ12の回転数が低下することが懸念される。すると、PWM駆動のオン時と、オフ時との間のモータ12回転数の差である回転ムラQが大きくなり、滑らかにモータ12が回転しなくなるおそれがある。すると、ノイズや振動が発生することが懸念される。
【0078】
本実施形態によれば、負荷トルクの変化に応じて、回転ムラQが回転ムラ閾値Qth以下となる第2周波数F2でモータ12をPWM駆動できるので、モータ12を滑らかにPWM駆動することができる。
【0079】
また、モータ12をPWM駆動すると、PWM信号の第2周波数F2が周波数閾値Fthを超えた場合に、第2周波数F2に対応したノイズが発生することが懸念される。本実施形態によれば、PWM信号の第2周波数F2が周波数閾値Fthを越えた場合には、半導体スイッチ素子13には、第3周波数F3が出力される。この第3周波数は20kHz以上(本実施形態では20kHz)に設定されているので、モータ12から発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータ12からのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0080】
また、第3周波数F3を過度に高くすると、半導体スイッチ素子13のオンオフが頻繁に行われる結果、モータ12に供給されるべき電力が、熱となって失われてしまうおそれがある。このため、第3周波数F3は、50kHz以下とすることが好ましい(本実施形態では20kHz)。
【0081】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、図9を参照しつつ説明する。本実施形態においえては、初期処理において、CPU14は、どのモータ12に対してモータオン指令が出力されたかを判断する(S260)。
【0082】
次に、CPU14は、ROM19に記憶された複数の第1周波数F1の中から、モータオン指令が出力されたモータ12に対応する第1周波数F1を選択して、ROM19から取得する(S270)。上記の第1周波数F1は、通常の使用状態において、モータ12の回転ムラQが回転ムラ閾値Qthを超えないように、モータ12の負荷トルクに基づいて予め算出されたものである。
【0083】
次に、CPU14は、S280において、RAM20に、出力周波数Foutとして第1周波数F1を記憶させる。
【0084】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0085】
本実施形態においては、CPU14が、第1周波数F1を取得する工程を簡略化できる。
【0086】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を、図10を参照しつつ説明する。本実施形態においては、まずCPU14は、初期処理について、図3におけるS210からS240までの処理を実行する。
【0087】
次いでCPU14は、S240で算出された第1周波数F1が周波数閾値Fthを超えるかどうかを判断する(S241)。本実施形態においては、周波数閾値は1kHzとされる。
【0088】
CPU14は、第1周波数F1が周波数閾値Fthを超えない(F1≦1kHz)と判断した場合には(S241:NO)、RAM20に出力周波数Foutとして第1周波数F1を記憶させる(S242)。
【0089】
その後、CPU14は、図2におけるS300以降の処理を実行する。
【0090】
一方、CPU14は、第1周波数F1が周波数閾値Fthを超える(F1>Fth)と判断した場合には(S241:YES)、CPU14は、ROM19から第3周波数F3を取得し、RAM20に出力周波数Foutとして第3周波数F3を記憶させる(S243)。
【0091】
その後、CPU14は、図2におけるS300以降の処理を実行する。
【0092】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0093】
本実施形態によれば、PWM信号の第1周波数F1が周波数閾値Fthを越えた場合であっても、モータ12から発生するノイズの周波数を人の可聴域よりも高くすることができる。これにより、モータ12からのノイズが人に不快感を与えることを抑制できる。
【0094】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態に係るモータ制御装置10は、ワイパ、冷却ファン、ドアミラー、パワーステアリング、パワーウィンドウ、スライドドア、パワーシート、サンルーフ等に使用されるモータ等、必要に応じて任意のモータに適用できる。
(2)回転センサ18は省略してもよい。
(3)回転ムラ閾値Qthは、本発明が適用可能な全てのモータについて同じ値としてもよいし、また、個々のモータ毎に異なる値としてもよい。
(4)第1周波数F1、又は第2周波数F2が1kHzを超える場合であっても、第1周波数F1、又は第2周波数F2を含むPWM信号を半導体スイッチ素子13に出力してもよい。この場合、モータ12に対して防振対策や、防音対策等を施してもよい。
(5)第3周波数F3は、20kHzよりも高く設定してもよい。
(6)本実施形態においては、記憶部としてROM19を用いたが、これに限られず、記憶部はハードディスクドライブ等、任意の記憶装置を用いことができる。
【符号の説明】
【0095】
10…モータ制御装置
11…電源
12…モータ
13…半導体スイッチ素子
14…CPU(制御部)
15…電源ライン
17…電圧センサ
18…回転センサ
19…ROM(記憶部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源とモータとの間に配されて前記モータのオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子と、
前記電源と前記半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインの電圧を検知する電圧センサによって検知された検知電圧が電圧閾値を超えるかどうかを判断し、前記検知電圧が前記電圧閾値を超えないと判断した場合には前記モータをDC駆動させるDC駆動信号を前記半導体スイッチ素子に出力すると共に、前記検知電圧が前記閾値電圧を超えると判断した場合には、前記モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数で前記モータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、前記第1PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
前記第1周波数と前記モータの負荷トルクとの関係を表す第1情報を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記第1情報と、前記モータの負荷トルクとに基づいて前記第1周波数を決定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記モータの負荷トルクと前記モータの回転数との関係を表す第2情報と、前記モータの負荷トルクに応じて、前記モータがPWM駆動されている状態におけるPWMオン時の前記モータの回転数であるオン時回転数からPWMオフ時の前記モータの回転数であるオフ時回転数を減じた回転ムラと前記モータをPWM駆動する際の周波数との関係を表す第3情報と、が記憶されており、
前記制御部は、前記モータの回転数を検知する回転センサによって検知された前記モータの回転数に基づいて前記回転ムラを算出し、前記回転ムラが回転ムラ閾値を超えるかどうかを判断し、前記回転ムラが前記回転ムラ閾値を超えたと判断した場合には、前記第2情報と前記モータの回転数とに基づいて前記モータの負荷トルクを算出し、前記第3情報、前記モータの負荷トルク、及び前記回転ムラに基づいて前記モータをPWM駆動する際に前記回転ムラが前記回転ムラ閾値以下となる第2周波数を算出し、前記モータを前記第2周波数でPWM駆動させる第2PWM信号を生成し、前記第2PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えるかどうかを判断し、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えると判断した場合には、周波数が20kHz以上50kHz以下である第3周波数で前記モータをPWM駆動させる第3PWM信号を生成し、前記第3PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項1】
電源とモータとの間に配されて前記モータのオンオフ切り替えを行う半導体スイッチ素子と、
前記電源と前記半導体スイッチ素子とを接続する電源ラインの電圧を検知する電圧センサによって検知された検知電圧が電圧閾値を超えるかどうかを判断し、前記検知電圧が前記電圧閾値を超えないと判断した場合には前記モータをDC駆動させるDC駆動信号を前記半導体スイッチ素子に出力すると共に、前記検知電圧が前記閾値電圧を超えると判断した場合には、前記モータの負荷トルクに基づいて設定された第1周波数で前記モータをPWM駆動させる第1PWM信号を生成し、前記第1PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する制御部と、を備えたモータ制御装置。
【請求項2】
前記第1周波数と前記モータの負荷トルクとの関係を表す第1情報を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記第1情報と、前記モータの負荷トルクとに基づいて前記第1周波数を決定する請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記記憶部には、前記モータの負荷トルクと前記モータの回転数との関係を表す第2情報と、前記モータの負荷トルクに応じて、前記モータがPWM駆動されている状態におけるPWMオン時の前記モータの回転数であるオン時回転数からPWMオフ時の前記モータの回転数であるオフ時回転数を減じた回転ムラと前記モータをPWM駆動する際の周波数との関係を表す第3情報と、が記憶されており、
前記制御部は、前記モータの回転数を検知する回転センサによって検知された前記モータの回転数に基づいて前記回転ムラを算出し、前記回転ムラが回転ムラ閾値を超えるかどうかを判断し、前記回転ムラが前記回転ムラ閾値を超えたと判断した場合には、前記第2情報と前記モータの回転数とに基づいて前記モータの負荷トルクを算出し、前記第3情報、前記モータの負荷トルク、及び前記回転ムラに基づいて前記モータをPWM駆動する際に前記回転ムラが前記回転ムラ閾値以下となる第2周波数を算出し、前記モータを前記第2周波数でPWM駆動させる第2PWM信号を生成し、前記第2PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えるかどうかを判断し、前記第1周波数、又は前記第2周波数が周波数閾値を超えると判断した場合には、周波数が20kHz以上50kHz以下である第3周波数で前記モータをPWM駆動させる第3PWM信号を生成し、前記第3PWM信号を前記半導体スイッチ素子に出力する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−233366(P2010−233366A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78999(P2009−78999)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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