説明

モータ安全弁

【課題】ステッピングモータ106のロータ161に雄ねじ部材105を連結し、可動部材103の雌ねじ部131に螺合させて可動部材103を進退させることにより、可動部材103に固定された電磁石104で弁体102を吸着して引き上げて開弁させる構成は、弁体102が収納されている内部空間111にガスが充満するため、従来はロータ161の回転軸162にOリングを装着してシールしていたが、Oリングが回転時の抵抗になるためステッピングモータ106を大型化しなければならなかった。
【解決手段】回転軸162に装着していたOリングを廃止し、ロータ161を隔絶部材108で覆って、隔絶部材を気密構造にすることによりガスの流出を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナへのガス供給路に介設され、モータによって開弁されると共に、バーナの失火時には閉弁してバーナへのガスの供給を遮断するモータ安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のモータ安全弁は、相互に螺合した雄ねじ部と雌ねじ部とからなる直線運動機構を備えており、モータによって例えば雄ねじ部を回転させることにより、この雄ねじ部に螺合している雌ねじ部を軸線方向に進退させることができるように構成されている。この雌ねじ部の先端には電磁石が取り付けられており、雄ねじ部の前進方向には弁体が設置されている。
【0003】
この弁体には可動鉄片が取り付けられており、電磁石がこの可動鉄片に当接した状態で電磁石に通電すると、可動鉄片は電磁石に吸着される。電磁石に通電したままの状態でモータを反転させ雌ねじ部を後退させると、弁体は電磁石に吸着されたままの状態で雄ねじ部と共に移動する。この弁体の移動によってガス通路が開弁される。
【0004】
一方、弁体は閉弁方向にバネによって付勢されており、バーナの失火によって電磁石への通電が停止すると、電磁石に可動鉄片を吸着させていた電磁力が消滅する。すると、弁体は雌ねじ部から離れバネの付勢力によって閉弁方向に移動し、ガス通路を閉鎖する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−30440号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のモータ安全弁では、ケーシングに設けた内部空間に電磁石や弁体が収納されている。そして、この内部空間にはガスが充満することになる。一方、電磁石を進退させる直線運動機構も内部区間内に収納する必要があるため、モータの回転軸は内部空間内に挿入され、モータの回転軸の雄ねじ部は雌ねじ部に螺合している。
【0006】
ガスが内部空間から漏出しないように各所にシール部材を設けなければならず、モータの回転軸を内部空間に挿入している部分からのガスの漏出を防止するため、モータの回転軸にはOリングが装着されている。
【0007】
モータはOリングと回転軸との間の摩擦力に抗して回転軸を回転させなければならない。そのため、モータは大きなトルクを発生させなければならず、モータが大型化するという不具合が生じる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、モータの回転トルクを小さくすることのできるモータ安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるモータ安全弁は、ガスの流入口と流出口とが接続された内部空間を備えたケーシングを有し、ガスの流出口に対して進退して内部空間の内側から流出口を開閉する弁体と、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段とを設けると共に、弁体に連結された可動鉄片に対して進退する電磁石を設け、この電磁石に可動鉄片を吸着させた状態で弁体を開弁方向に移動させるモータをケーシングに取り付けたモータ安全弁において、モータを構成するロータの回転軸の外周面に接触するシールを設けずに、ロータを囲んでロータが位置する空間と外部とを隔絶する隔絶部材を設け、内部空間からロータが位置する空間へ侵入したガスの外部への漏出を防止することを特徴とする。
【0010】
従来の構成では、ガスが充満するケーシングの内部空間とモータ内部とをOリング等のシールによって隔絶していた。本発明では、このようなロータの回転軸の外周面に接触するシールを用いずに、隔絶部材を設けて、この隔絶部材によってガスの外部への流出を防止するようにした。
【0011】
上記ロータを囲繞し、ロータを回転させる駆動コイルが配設されており、上記隔絶部材はロータと駆動コイルとの間に位置するようにしてもよい。そして、このように構成することにより、駆動コイルを隔絶部材の外側に配置することができ、ガスが充満する空間を小さくすることができる。
【0012】
また、ガス内にはガス管内壁から剥離した錆や配管時の切り粉等の塵埃が混入することがある。これら塵埃がロータ部分に侵入すると、ロータのスムーズな回転を阻害するおそれが生じる。そのような場合には、上記ロータが位置する空間とケーシングの内部空間との間に、内部空間側からロータが位置する空間側へ塵埃が侵入することを防止する防塵手段を設ければよい。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、モータの回転軸にOリングなどの、回転軸の外周面に接触するシールを用いていないので、ロータの駆動トルクが小さくてよく、その結果モータの定格を従来のものより小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、101はモータ安全弁のケーシングである。このケーシング101内には内部空間111が設けられている。ケーシング101にはこの内部空間111内にガスを流入させる流入部112と、内部空間111からガスを流出させる流出部113とが形成されている。そして、流出部113から流出したガスは図外の火力調節装置を経てガスバーナに供給される。
【0015】
内部空間111内には弁体102が配設されており、この弁体102はバネ122の付勢力により流出部113を閉鎖する方向に常に付勢されている。弁体102の上部には可動鉄片であるアーマチュア121が連結されている。そしてこのアーマチュア121には電磁石104が対向している。
【0016】
電磁石104は可動部材103に固定されている。この可動部材103には雌ねじ部131が形成されている。またケーシング101に固定され内部空間111の蓋部材としても機能するブラケット114に対して、可動部材103は回り止めされている。
【0017】
雌ねじ部131には雄ねじ部材105が螺合しており、この雄ねじ部材105が回転すると、可動部材103が、本図に示す状態では上下方向に進退するように構成されている。したがって、本図に示す状態から可動部材103を下降させると、電磁石104がアーマチュア121に近づき、更に下降させることによって電磁石104をアーマチュア121に接触させることができる。
【0018】
ところで、上記雄ねじ部材105はステッピングモータ106の回転軸162に固定されている。この回転軸162はステッピングモータ106のロータ161に連結されており、ロータ161が回転すると回転軸162を介して雄ねじ部材105が回転する。なお、ロータ161は駆動コイル163に囲繞されており、駆動コイル163の磁極の極性を切り換えることによりロータ161は正逆自在に回転され、かつ任意の回転角度でロータ161を停止させることができる。
【0019】
本実施の形態では、ロータ161と駆動コイル163との間に位置して、ロータ161を囲繞する筒状の隔絶部材108を設けた。この隔絶部材108は非磁性の金属材料もしくは非金属材料で形成される。したがって、駆動コイル163により発生される磁力は隔絶部材108を透過するのでロータ161の回転には何ら影響を及ぼさない。
【0020】
隔絶部材108の上端部分には環状のシール181が配設されている。また隔絶部材108の下端部近傍にはOリング182が取り付けられている。したがって、隔絶部材108によって囲まれた空間は外部に対して気密状態になっている。
【0021】
ところで、上記電磁石104のコイル104aから導出される1対の電線141a,142aは、可動部材103の上面に設置された1対の環状電極141,142に各々接続されている。この環状電極141,142は、環状電極142の外側を環状電極141が囲むように2重に配置されている。これら環状電極141,142に対応する環状電極115,116がブラケット114の下面に取り付けられている。そして、両環状電極141,142と環状電極115,116とは内外2重の1対のバネ状連結線143,144で電気的に接続されている。
【0022】
したがって、外部から環状電極115,116に電荷を印加すると、バネ状連結線143,144を介して環状電極141,142に給電され、電磁石104のコイル104aに通電される。電磁石104のコイル104aには、上記図外のバーナが点火状態の場合に通電される。なお、バーナの近傍に熱電対を設置し、この熱電対で発生する熱起電力を直接コイル104aに通電してもよく、あるいは熱起電力をセンサとして機能させて、点火中は別途のコントローラからコイル104aに通電されるようにしてもよい。
【0023】
ところで、上記構成ではロータ161の回転軸162や雄ねじ部材105の、いわゆる回転系のいずれの部材にもOリングなどのシールが接触していない。そのため、内部空間111内に充満するガスはロータの収納されている空間まで侵入する。但し、上述のように隔絶部材108によって気密性が保たれているので、ガスがそれ以上外部へ漏出することはない。但し、ガス管の内部から剥離した錆や配管工事の際にガス管内に残留した塵埃が、流入部112に達するおそれがある。
【0024】
比較的大きな塵埃は流入部112に設けたネット上のフィルタ112aによって内部空間111内への侵入を阻止できるが、フィルタ112aの目を細かくするとガス流に対して抵抗となるため、小さな塵埃が内部空間111内に侵入するおそれがある。このような小さな塵埃は排出部113からそのまま排出され、バーナに達してもまったく問題はない。しかし、ロータ161の近傍まで侵入するとロータ161の回転に対して悪影響を及ぼすおそれが生じる。そこで、ロータ161が収納されている空間内に塵埃が侵入しないように、更に目の細かいフィルタ107を設けた。なお、このフィルタ107は回転軸162に接触しても回転に対する抵抗とはならない。なお、109はロータ161等の回転系に対して軸心のぶれを防止すると共に上下方向の位置ずれを防止するスラスト軸受である。このスラスト軸受109は内部に複数のコロを内蔵しており、回転に対する抵抗はきわめて小さい。
【0025】
上記構成によるモータ安全弁では、図1に示す状態からステッピングモータ106を正回転させ、可動部材103と共に電磁石104を下降させ、電磁石104をアーマチュア121に接触させる。その状態で電磁石104のコイルへの通電を開始し、電磁石104にアーマチュア121を吸着させる。つぎに、ステッピングモータ106を逆回転させて可動部材103と共に電磁石104を上昇させる。
【0026】
アーマチュア121は電磁石104に吸着されているので、電磁石104の上昇と共に弁体102はバネ122の付勢力に抗して上昇する。その結果、閉じられていた流出部113は内部空間111に対して開口する。すると内部空間111内のガスは流出部113から流出し、上述のように火力調節装置を経てバーナに供給される。
【0027】
バーナの点火中は電磁石104のコイルに対する通電が継続されるが、消火操作がされたり点火途中で失火すると、電磁石104のコイルへの通電が停止する。すると、電磁石104の電磁力が消滅するので、弁体102はバネ122の付勢力によって下降し、流出部113を内部空間111に対して閉鎖する。
【0028】
上記実施の形態では、ロータ161の回転軸162に雄ねじ部材105を連結した。これに対して、図2に示す物では、ステッピングモータ206のロータ261に、回転軸心上に位置するように雌ねじ部262を形成した。そして、この雌ねじ部262に対して雄ねじ部材205を螺合させ、更にこの雄ねじ部材205を可動部材203に固定した。なお、この可動部材203に電磁石204を取り付け、電磁石204のコイル204aへの通電を内外2重のバネ状連結線241,242を介して行うようにした。そして、この電磁石204でアーマチュア221を吸着し弁体202を引き上げるように構成した。
【0029】
ロータ261はカップ状の隔絶部材208で覆われている。この隔絶部材208も上記隔絶部材108と同様に非磁性の金属材料もしくは非金属材料で構成されており、駆動コイルからの電磁力を透過させるので、ロータ261の回転に悪影響を及ぼすおそれはない。なお、207はフィルタであり、209はスラスト軸受である。
【0030】
図2に示す実施の形態では、ロータ261に雌ねじ部262を設け、その雌ねじ部262に雄ねじ部材205を螺合させたので、上記図1に示す実施の形態よりも上下方向の長さを短くすることができる。
【0031】
図3に示す実施の形態では更に上下方向の長さを短くすることができる。図3に示す物では、ステッピングモータ306のロータ361の内部に可動部材303を収納した。更に詳述すると、可動部材303の外周面に雄ねじ部332を形成し、その雄ねじ部332を、ロータ361の内部に形成した雌ねじ部362に螺合させた。また、可動部材303の下部に突出する回り止め軸331を断面D形状に成形し、回り止め部312を回り止め軸331に係合させて可動部材303が回転することなく上下方向に進退できるようにした。また、可動部材303の内部には電磁石304が固定され、弁体302の上端に固定されたアーマチュア321をこの電磁石304で吸着できるようにした。
【0032】
なお、電磁石304のコイル304aへは内外2重のバネ状連結線341,342を介して通電される。また、隔絶部材308は上下両端に鍔状部分が形成された筒状に成形されており、上下に設置された2個のOリング381,382によって隔絶部材308の内部の空間が外部に対して気密に保たれるようにした。
【0033】
301はケーシングであり、311はこのケーシング301の内部空間である。また、塵埃の侵入を防止するフィルタ307を設けた。更に、ロータ361の回転軸心のぶれを防止し、かつロータ361の上下位置を保持するため、ロータ361の上下に各々アンギュラ軸受391,392を配置した。
【0034】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示す図
【図2】第2の実施に形態を示す図
【図3】第3の実施に形態を示す図
【符号の説明】
【0036】
101,201,301 ケーシング
102,202,302 弁体
104,204,304 電磁石
106,206,306 ステッピングモータ
161,261,361 ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流入口と流出口とが接続された内部空間を備えたケーシングを有し、ガスの流出口に対して進退して内部空間の内側から流出口を開閉する弁体と、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段とを設けると共に、弁体に連結された可動鉄片に対して進退する電磁石を設け、この電磁石に可動鉄片を吸着させた状態で弁体を開弁方向に移動させるモータをケーシングに取り付けたモータ安全弁において、モータを構成するロータの回転軸の外周面に接触するシールを設けずに、ロータを囲んでロータが位置する空間と外部とを隔絶する隔絶部材を設け、内部空間からロータが位置する空間へ侵入したガスの外部への漏出を防止することを特徴とするモータ安全弁。
【請求項2】
上記ロータを囲繞し、ロータを回転させる駆動コイルが配設されており、上記隔絶部材はロータと駆動コイルとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載のモータ安全弁。
【請求項3】
上記ロータが位置する空間とケーシングの内部空間との間に、内部空間側からロータが位置する空間側へ塵埃が侵入することを防止する防塵手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−322492(P2006−322492A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145020(P2005−145020)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】