説明

モータ装置及び回転子の駆動方法並びにロボット装置

【課題】高トルクを発生させることができるモータ装置を提供する。
【解決手段】回転子と、回転子の外周の少なくとも一部に掛けられた伝達部と、伝達部に接続され、印加された駆動電圧に応じて伝達部を移動させる複数の駆動部と、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態とする保持力に対応する第1駆動波形を備える第1駆動電圧と、伝達部を移動させる駆動力に対応する第2駆動波形を備える第2駆動電圧とを複数の駆動部にそれぞれ印加させて、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態として伝達部を一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部を所定の位置に戻す復帰動作を駆動部に行わせる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置及び回転子の駆動方法並びにロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば旋回系機械を駆動させるアクチュエータとして、モータ装置が用いられている。このようなモータ装置として、例えば電動モータや超音波モータなど、高トルクを発生させることが可能なモータ装置が広く知られている。近年では、ヒューマノイドロボットの関節部分など、より精密な部分を駆動させるモータ装置が求められており、電動モータや超音波モータなどの既存のモータにおいても小型化、トルクの制御性等、細密で高精度な駆動を行うことができる構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−311237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動モータや超音波モータにおいては、高トルクを発生させるためには減速機を取り付ける必要があるため、小型化には限界がある。また、超音波モータにおいては、トルクの制御が困難である。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、高トルクを発生させることができる、モータ装置及び回転子の駆動方法並びにロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、回転子と、回転子の外周の少なくとも一部に掛けられた伝達部と、伝達部に接続され、印加された駆動電圧に応じて伝達部を移動させる複数の駆動部と、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態とする保持力に対応する第1駆動波形を備える第1駆動電圧と、伝達部を移動させる駆動力に対応する第2駆動波形を備える第2駆動電圧とを複数の駆動部にそれぞれ印加させて、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態として伝達部を一定距離移動させる駆動動作及び回転力伝達状態を解消した状態で伝達部を所定の位置に戻す復帰動作を駆動部に行わせる制御部と、を備えるモータ装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、複数の駆動部により、回転子と当該回転子に掛けられた伝達部との間を回転力伝達状態として伝達部を一定距離移動させる駆動ステップと、複数の駆動部により、回転力伝達状態を解消した状態で伝達部を所定の位置に戻す復帰ステップとを含み、駆動ステップは、回転子と伝達部との間を回転力伝達状態とする保持力に対応する第1駆動波形を備える第1駆動電圧と、伝達部を移動させる駆動力に対応する第2駆動波形を備える第2駆動電圧とを複数の駆動部にそれぞれ印加することを含む回転子の駆動方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、回転軸部材と、回転軸部材を回転させるモータ装置と、を備え、モータ装置として、本発明の第1の態様のモータ装置が用いられているロボット装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高トルクを発生させることができる小型のモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係るモータ装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るモータ装置の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るモータ装置の特性を示すグラフ。
【図4】本実施形態に係るモータ装置の動作を示す図。
【図5】本実施形態に係るモータ装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係るモータ装置の動作を示す図。
【図7】本実施形態に係るモータ装置の動作を示す図。
【図8】本実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図9】本実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図10】本実施形態に係る各駆動素子に印加する駆動電圧を示す図。
【図11】第2実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図12】第2実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図13】第3実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図14】第3実施形態に係る駆動部に印加する駆動電圧を示す図。
【図15】第3実施形態に係る各駆動素子に印加する駆動電圧を示す図。
【図16】第4実施形態に係る回転子の正面図。
【図17】第5実施形態に係るロボットハンドの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のモータ装置及び回転子の駆動方法並びにロボット装置の実施の形態を、図1ないし図17を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るモータ装置MTRの一例を示す概略構成図である。図2は、図1におけるA−A´断面に沿った構成を示す図である。
図1及び図2に示すように、モータ装置MTRは、ベース部BS、BS’と、伝達部BT、BT’と、AC’と、制御部CONTとを有している。当該モータ装置MTRは駆動部AC、AC’及び伝達部BT、BT’を用いて回転子SFを回転させる。回転子SFは、中心軸Cを回転軸として回転するようになっている。
【0013】
以下、各図の説明においてはXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。回転子SFの回転軸方向をZ軸方向とし、当該Z軸方向に垂直な平面上の直交方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸周りの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0014】
ベース部BSは、例えばステンレス等の材料を用いて板状に形成された部分である。ベース部BSには、貫通部10及び貫通部20が形成されている。貫通部10は、正面視でほぼ円形に形成された開口部であり、ベース部BSの表裏を貫通して形成されている。貫通部10には、伝達部BTが配置されており、回転子SFが挿入されるようになっている。
【0015】
伝達部BTは、第一端部21、第二端部22及びベルト部23を有している。第一端部21及び第二端部22は、例えば貫通部10のX方向の中央部から−Y方向に平行に延びるように形成されている。第一端部21及び第二端部22は、回転子SFの外周上の基準位置Fを挟んで配置されている。本実施形態では、例えば図1における回転子SFの−Y側端部を基準位置Fとした場合を例に挙げて説明する。
【0016】
ベルト部23は、帯状に形成され、例えば貫通部10の内周面10aに沿って設けられている。ベルト部23は、貫通部10に挿入される回転子SFを囲うように配置される。
換言すると、回転子SFは、貫通部10のうちベルト部23によって囲まれる空間に挿入される。ベルト部23は、例えば回転子SFの少なくとも一部に掛けられる。
【0017】
図1に示すように、貫通部20は、例えば貫通部10の−Y側端部に一部重なるように正面視でほぼ矩形に形成された開口部であり、ベース部BSの表裏を貫通して形成されている。貫通部20内には、駆動部ACが配置される。駆動部ACは、貫通部20の内周面に設けられた支持部材33及び34によって支持されている。
【0018】
駆動部ACは、例えばピエゾ素子などの電気機械変換素子(電歪素子)を備えた駆動素子31及び32を有している。駆動素子31及び駆動素子32は、電気機械変換素子に電圧が印加されることにより、X方向に伸縮する構成である。制御部CONTは駆動部ACに接続されており、当該駆動部ACに対して制御信号を供給可能になっている。
【0019】
駆動素子31は、支持部材33によって支持されている。駆動素子31は、図中−X側の端部の位置が固定されている。このため、駆動素子31は、X方向に伸縮することで図中+X側の端部の位置がX方向に移動することになる。駆動素子31のうち当該+X側の端部は、支持部材33の先端部33aに接続されている。支持部材33の先端部33aは、例えば第一端部21に接続されている。支持部材33は、先端部33aよりも−X側に、例えば伸縮部33bを有している。伸縮部33bは、駆動素子31の+X側端部の移動に合わせて先端部33aが移動するように伸縮する。
【0020】
駆動素子32は、支持部材34によって支持されている。駆動素子32は、図中+X側の端部の位置が固定されている。このため、駆動素子32は、X方向に伸縮することで図中−X側の端部の位置がX方向に移動することになる。駆動素子31のうち当該−X側の端部は、支持部材34の先端部34aに接続されている。支持部材34の先端部34aは、例えば第二端部22に接続されている。支持部材34は、先端部34aよりも+X側に、例えば伸縮部34bを有している。伸縮部34bは、駆動素子32の−X側端部の移動に合わせて先端部34aが移動するように伸縮する。
【0021】
駆動素子31及び駆動素子32は、第一端部21及び第二端部22を挟む位置に設けられている。支持部材33の先端部33aは第一端部21に向けられており、支持部材34の先端部34aは第二端部22に向けられている。したがって、先端部33a及び先端部34aは対向して配置されている。
【0022】
駆動素子31が+X方向に伸び、かつ、駆動素子32が−X方向に伸びると、第一端部21と第二端部22とが近づく。このため、ベルト部23が回転子SFに巻きつき、当該ベルト部23に張力が加わる。駆動素子31が−X方向に縮み、かつ、駆動素子32が+X方向に縮むと、第一端部21と第二端部22とが遠ざかる。このため、ベルト部23が回転子SFから離れて弛緩する。
【0023】
また、本実施形態では、上記のベース部BS、伝達部BT、駆動部AC(駆動素子31、32)と同様の構成を有するベース部BS’、伝達部BT’、駆動部AC’(駆動素子31’、32’)が設けられている。これらベース部BS’、伝達部BT’、駆動部AC’(駆動素子31’、32’)は、図2に示すように、ベース部BS、伝達部BT、駆動部AC(駆動素子31、32)に対して−Z側に間隔をあけて、且つ図1に示すように、中心軸Cを中心とする軸周りに180°回転させた位置に設けられている。
【0024】
次に、回転子SFの駆動動作を説明する。
本実施形態に係るモータ装置MTRにおいて、回転子SFを駆動させる原理を説明する。回転子SFを駆動させる際には、回転子SFに巻き掛けられた伝達部BT、BT’に有効張力を生じさせ、当該有効張力によって回転子SFにトルクを伝達する。
なお、駆動部AC、AC’による伝達部BT、BT’の駆動動作は同様であるため、以下では、代表的に駆動部ACによる伝達部BTの駆動動作について説明する。
【0025】
オイラーの摩擦ベルト理論により、回転子SFに巻き掛けられた伝達部BTの第一端部21側の張力T1及び第二端部22側の張力T2が下記[数1]を満たすとき、伝達部BTと回転子SFとの間で摩擦力が生じ、伝達部BTが回転子SFに対して滑りを生じることの無い状態(回転力伝達状態)で回転子SFと共に移動する。この移動により、回転子SFにトルクが伝達される。ただし、[数1]において、μは伝達部BTと回転子SFとの間の見かけ上の摩擦係数であり、θは伝達部BTの有効巻き付き角である。
【0026】
【数1】

【0027】
このとき、トルクの伝達に寄与する有効張力は、(T1−T2)によって表される。上記[数1]に基づいて有効張力(T1−T2)を求めると、[数2]のようになる。[数2]は、T1を用いて有効張力を表す式である。
【0028】
【数2】

【0029】
上記[数2]より、回転子SFに伝達されるトルクは駆動素子31の張力T1によって一意に決定されることがわかる。[数2]の右辺のT1の係数部分は、伝達部BTと回転子SFとの間の摩擦係数μ及び伝達部BTの有効巻き付き角θにそれぞれ依存する。図3は、摩擦係数μを変化させたときの有効巻き付き角θと係数部分の値との関係を示すグラフである。グラフの横軸は有効巻き付き角θを示しており、グラフの縦軸は係数部分の値を示している。
【0030】
図3に示すように、例えば摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θが300°以上のときに係数部分の値が0.8以上となっている。このことから、摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θを300°以上とすることにより、駆動素子31による張力T1の80%以上の力が回転子SFのトルクに寄与することがわかる。この巻き付き角の他、図3のグラフから、例えば伝達部BTと回転子SFとの間の摩擦係数を大きくするほど、係数部分の値が大きくなることが推定される。
【0031】
このように、トルクの大きさは駆動素子31の張力T1によって一意に決定されることになり、例えば伝達部BTの移動距離などには無関係であることがわかる。したがって、例えば駆動素子31及び駆動素子32に用いられるピエゾ素子などは、数ミリ程度の小型素子であっても、数百ニュートン以上の力を出すことができるので非常に大きな回転力を付与することができる。
【0032】
このような原理に基づいて、制御部CONTは、図4に示すように、まず、第一端部21が+X方向に、第二端部22が−X方向にそれぞれ移動するように駆動素子31及び駆動素子32を変形させる。この動作により、伝達部BTの第一端部21側には張力T1が発生し、伝達部BTの第二端部22側には張力T2が発生する。したがって、伝達部BTには、回転力伝達状態となる保持力である有効張力(T1−T2)が発生する。
【0033】
制御部CONTは、伝達部BTに有効張力を発生させた状態を保持しつつ、図5に示すように、伝達部BTの第一端部21が−X方向に移動するように、かつ、第二端部22が−X方向に移動するように駆動素子31及び駆動素子32を変形させる(駆動動作)。この動作において、制御部CONTは、第一端部21の移動距離と第二端部22の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向(矢印方向)に回転する。
【0034】
本実施形態では、伝達部BTと回転子SFとの間の摩擦係数μが例えば0.3であり、伝達部BTが回転子SFにほぼ1回転(360°)巻き掛けられている。したがって、図3のグラフを参照すると、駆動素子31の張力T1の85%程度の力がトルクとして回転子SFに伝達されることになる。
【0035】
制御部CONTは、第一端部21及び第二端部22を所定距離だけ移動させた後、図6に示すように、第二端部22が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように、かつ、第一端部21が移動しないように、駆動素子32だけを変形させる。この動作により、第二端部22が+X方向へ移動し、伝達部BTの巻き掛けが緩んだ状態になる。つまり、伝達部BTに付加されていた有効張力(回転子SFに対する保持力)が解除された状態になる。この状態においては、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力は発生せず、回転子SFは慣性によって矢印方向に回転し続けることになる。
【0036】
制御部CONTは、伝達部BTの巻き掛けを緩ませた後、図7に示すように、第一端部21が駆動の開始位置(所定位置)へ戻るように駆動素子31を変形させる。この動作により、伝達部BTの巻き掛けが緩んだまま、すなわち、有効張力が発生しないまま、伝達部BTの第一端部21が駆動の開始位置(所定位置)へ戻っていく(復帰動作)。
【0037】
第一端部21が駆動開始位置に戻される直前になったら、制御部CONTは、駆動素子32を変形させて第二端部22を+X方向に移動させる。この動作により、第一端部21が駆動開始位置に戻されるのとほぼ同時に、第二端部22側に張力T2が発生し、第一端部21側に張力T1が発生する。これにより、駆動開始時に伝達部BTに有効張力を付加させた状態(図4の状態)と同様の状態となる。
【0038】
伝達部BTに有効張力が付加された後、制御部CONTは、伝達部BTの第一端部21が−X方向に移動するように駆動素子31を変形させ、第二端部22が−X方向に移動するように駆動素子32を変形させる(駆動動作)。このとき、第一端部21の移動距離と第二端部22の移動距離とを等しくさせる。この動作により、伝達部BTと回転子SFとの間に摩擦力が発生した状態で伝達部BTが移動し、当該移動と共に回転子SFがθZ方向に回転する。
【0039】
この後、制御部CONTは、伝達部BTに付加されていた有効張力を再度解除させる。
制御部CONTは、有効張力を解除させた後、伝達部BTの第一端部21及び第二端部22が開始位置に戻るように移動させる(復帰動作)。このように制御部CONTが上記駆動動作と復帰動作とを駆動部ACに繰り返し行わせることにより、回転子SFがθZ方向に回転し続けることになる。
【0040】
続いて、2つの伝達部BT、BT’を用いて、上記の駆動動作及び復帰動作を行う際の駆動部ACに印加する駆動電圧について説明する。
本実施形態では、回転子SFと伝達部BT、BT’との間を回転力伝達状態とする保持力を生じさせる第1駆動電圧と、伝達部BT、BT’を移動させる駆動力を生じさせる第2駆動電圧とを個別に設定し、設定した第1駆動電圧及び第2駆動電圧に基づく駆動電圧を駆動部AC、AC’に印加している。
【0041】
図8は、伝達部BT、BT’により、上記の回転力伝達状態とする保持力(以下、単に保持力と称する)を交互に生じさせる際に駆動部AC、AC’に印加する駆動電圧を示す図である。図8には、伝達部BTに保持力を生じさせる際に駆動部ACに印加する駆動電圧の駆動波形(第1駆動波形)EH1と、伝達部BT’に上記保持力を生じさせる際に駆動部AC’に印加する駆動電圧の駆動波形(第1駆動波形)EH2とが示されている。図8においては、時刻t0〜t4を伝達部BTを主として駆動させる駆動区間(以下、第1メイン駆動区間と称する)とし、時刻t4〜t8を伝達部BT’を主として駆動させる駆動区間(以下、第2メイン駆動区間と称する)とし、保持力を生じさせる間はこれらの駆動区間を繰り返す。
【0042】
駆動波形EH1は、例えば、時刻t1〜t3で伝達部BT単体で保持力を生じさせる電圧Vfの第1波形部EH11と、例えば、時刻t0〜t1、時刻t4前後のt3〜t5で伝達部BT、BT’で協働して保持力を生じさせる第2波形部EH12と、保持力を生じさせない電圧ゼロの第3波形部EH13とを備えている。同様に、駆動波形EH2は、例えば、時刻t5〜t7で伝達部BT’単体で保持力を生じさせる電圧Vfの第1波形部EH21と、例えば、時刻t3〜t5、時刻t8前後の時刻t7〜t9で伝達部BT、BT’で協働して保持力を生じさせる第2波形部EH22と、保持力を生じさせない電圧ゼロの第3波形部EH23とを備えている。
【0043】
第2波形部EH12、EH22は、設定された時間範囲で電圧が電圧Vfと電圧ゼロとの間を滑らかに変化するように設定されている。また、第2波形部EH12、EH22が設定された時間範囲では、第2波形部EH12、EH22の電圧の和が電圧Vfを維持するように変化している。
従って、駆動波形EH1による駆動電圧と、駆動波形EH2による駆動電圧との和は、図8に示されるように、一定の電圧Vfが連続する駆動波形EHTを備える駆動電圧となる。そのため、伝達部BT、BT’により交互に保持力を生じさせる際にも、変動が生じない一定の保持力を維持することができる。
【0044】
また、図9は、伝達部BT、BT’により、上記伝達部BT、BT’を移動させる駆動力(以下、単に駆動力と称する)を交互に生じさせる際に駆動部AC、AC’に印加する駆動電圧を示す図である。図9には、伝達部BTに駆動力を生じさせる際に駆動部ACに印加する駆動電圧の駆動波形(第2駆動波形)ED1と、伝達部BT’に駆動力を生じさせる際に駆動部AC’に印加する駆動電圧の駆動波形(第2駆動波形)ED2とが示されている。図9においては、上述したように、時刻t0〜t4を第1メイン駆動区間とし、時刻t4〜t8を第2メイン駆動区間として、それぞれ電圧ゼロから回転子SFに設定される駆動力(トルク)に対応する電圧Vdまで変化し、駆動力を生じさせる間はこれらの駆動区間を繰り返す。
【0045】
駆動波形ED2は、例えば、時刻t4の前の時刻t3から電圧の変化を開始し、第1メイン駆動区間において伝達部BTの移動による回転子SFの加加速度、加速度及び速度に、時刻t3〜t5の間で伝達部BT’の加加速度、加速度及び速度を一致させるような駆動電圧となる第1助走波形部ED21を備えている。また、駆動波形ED2は、当該伝達部BT’及び回転子SFの加加速度、加速度及び速度が一致した状態から、例えば、時刻t8の前後の時刻t7〜t9の間で滑らかに減速するように電圧が変化する第2助走波形部ED22を備えている。これにより、伝達部BT’が回転子SFから離間する際に外乱が生じることを排除できる。そして、駆動波形ED2においては、時刻t9〜t10の間に、次のメイン駆動開始位置である電圧ゼロまで滑らかに変化する。
【0046】
一方、駆動波形ED1は、上記の駆動波形ED2の電圧変化と対応する時刻について説明すると、例えば、時刻t7〜t9で電圧の変化が始まり、時刻t9までに伝達部BTの加加速度、加速度及び速度が、伝達部BT’の移動による回転子SFの加加速度、加速度及び速度と一致するように滑らかに加速する駆動電圧となる第1助走波形部ED11を備えている。また、駆動波形ED1は、当該伝達部BT及び回転子SFの加加速度、加速度及び速度が一致した状態から、例えば、時刻t4の前後の時刻t3〜t5の間で滑らかに減速するように電圧が変化する第2助走波形部ED12を備えている。これにより、伝達部BTが回転子SFから離間する際に外乱が生じることを排除できる。そして、駆動波形ED1においては、時刻t5〜t6の間に、次のメイン駆動開始位置である電圧ゼロまで滑らかに変化する。
【0047】
従って、駆動波形ED1による駆動電圧、及び駆動波形ED2による駆動電圧は、回転子SFに設定される駆動力(トルク)に対応する電圧Vdを最大値として連続する駆動波形EDTを維持しつつ、伝達部BT、BT’により交互に駆動力を生じさせる際にも、外乱が生じない一定の駆動力を維持することができ、静音化にも寄与できる。
【0048】
上記で設定された駆動波形EH1、ED1の駆動電圧の和が駆動部ACに印加する駆動電圧の総和となり、駆動波形EH2、ED2の和が駆動部AC’に印加する駆動電圧の総和となる。駆動部ACは、駆動素子31、32を備えており、各駆動素子31、32に印加される駆動電圧の総和が駆動波形EH1、ED1の駆動電圧の和となる。また、駆動部AC’は、駆動素子31’、32’を備えており、各駆動素子31’、32’に印加される駆動電圧の総和が駆動波形EH2、ED2の駆動電圧の和となる。
【0049】
図10に、駆動素子31に印加する駆動電圧の駆動波形EB11、駆動素子32に印加する駆動電圧の駆動波形EB12、駆動素子31’に印加する駆動電圧の駆動波形EB21、駆動素子32’に印加する駆動電圧の駆動波形EB22を示す。
駆動素子31には、駆動波形EH1の駆動電圧を半分にした駆動波形と、駆動波形ED1とを併せた駆動波形(第3駆動波形)EB11を備える駆動電圧(第3駆動電圧)を印加する。また、駆動素子32には、駆動波形EH1の駆動電圧を半分にした駆動波形と、駆動波形ED1における、駆動力を付与する第1メイン駆動区間の中間点(例えば、(t4−t0)/2)を中心位置として、駆動波形ED1を反転させた駆動波形とを併せた駆動波形(第4駆動波形)を備える駆動電圧(第4駆動電圧)を印加する。
【0050】
同様に、駆動素子31’には、駆動波形EH2の駆動電圧を半分にした駆動波形と、駆動波形ED2とを併せた駆動波形(第3駆動波形)EB21を備える駆動電圧(第3駆動電圧)を印加する。また、駆動素子32’には、駆動波形EH2の駆動電圧を半分にした駆動波形と、駆動波形ED2における、駆動力を付与する第2メイン駆動区間の中間点(例えば、(t8−t4)/2)を中心位置として、駆動波形ED2を反転させた駆動波形とを併せた駆動波形(第4駆動波形)を備える駆動電圧(第4駆動電圧)を印加する。
これにより、上記電圧Vfに対応する保持力で回転子SFと伝達部BT、BT’との間の回転力伝達状態を保持しつつ、上記電圧Vdに対応する駆動力で安定して回転子SFを回転駆動することができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、伝達部BT、BT’が回転子SFの少なくとも一部に掛けられた状態で駆動部AC、AC’に駆動動作及び復帰動作を行わせることとしたので、減速機等を取り付けなくても、また、小型の駆動部AC、AC’であっても高いトルクを回転子SFに付加させることが可能となる。これにより、高トルクを発生させることができる小型のモータ装置MTRを得ることができる。また、小型の駆動部AC、AC’であっても高効率で回転子SFを回転させることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態によれば、複数の伝達部BT、BT’を用いる場合であっても、安定した保持力で回転子SFと伝達部BT、BT’との間の回転力伝達状態を保持できるとともに、外乱を生じさせることなく安定した駆動力で回転子SFを回転駆動することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、モータ装置MTRの第2実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。
上記第1実施形態では、保持力及び駆動力を一定値とする例を用いて説明したが、第2実施形態では保持力及び駆動力が変動する場合について説明する。
【0054】
図11は、保持力に対応する駆動電圧が時間の経過に伴って変動する駆動波形EHTを示す図である。また、図12は、駆動力に対応する駆動電圧が時間の経過に伴って変動する駆動波形EDTを示す図である。
例えば、必要保持力が変動する場合には、上述した最大の保持力に対応する駆動電圧Vfに対する、図11に示す駆動波形EHTから求められる駆動電圧の時刻毎の変化率を算出し、図8に示した上記の駆動波形EH1、EH2の駆動電圧に対して当該時間毎の変化率を乗算することで、変動する保持力に対応する駆動波形EH1、EH2を求めることができる。
【0055】
一方、必要トルク(必要駆動力)が変動する場合には、上述した最大の駆動力に対応する駆動電圧Vdに対する、図12に示す駆動波形EDTから求められる駆動電圧の時刻毎の変化率を算出し、図9に示した上記の駆動波形ED1、ED2の駆動電圧に対して当該時間毎の変化率を乗算することで、変動する駆動力に対応する駆動波形ED1、ED2を求めることができる。
そして、求められた駆動波形EH1、EH2及び駆動波形ED1、ED2から、上述した方法を用いて駆動素子31、32、31’、32’に印加する駆動電圧の駆動波形をそれぞれ求め、求めた駆動波形と時刻とに応じて駆動電圧を印加すればよい。
【0056】
このように、本実施形態では、複数の伝達部BT、BT’を用い、且つ回転子SFに求められるトルクが変動する場合でも、安定した保持力で回転子SFと伝達部BT、BT’との間の回転力伝達状態を保持できるとともに、外乱を生じさせることなく安定した駆動力で回転子SFを回転駆動することができる。
【0057】
(第3実施形態)
次に、モータ装置MTRの第3実施形態について、図13乃至図15を参照して説明する。
上記第1実施形態では、2つの伝達部BT、BT’を用いる場合を例示したが、第3実施形態では3つの伝達部BT1〜BT3及び駆動部AC1〜AC3を用いる場合について説明する。
【0058】
上記第1実施形態では、各伝達部BT、BT’のメイン駆動区間は、それぞれ1周期の1/2(伝達部BTでは時刻t0〜t4、伝達部BT’では時刻t4〜t8)であったが、第2実施形態では各伝達部BT1〜BT3のメイン駆動区間は、それぞれ1周期の2/3に設定されている。
【0059】
図13は、伝達部BT1〜BT3により、保持力を順次生じさせる際に駆動部AC1〜AC3に印加する駆動電圧を示す図である。
図13に示されるように、伝達部BT1に保持力を生じさせる際に駆動部AC1に印加する駆動電圧の駆動波形EH1は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t0〜t8をメイン駆動区間として電圧Vfを生じさせる。また、伝達部BT2に保持力を生じさせる際に駆動部AC2に印加する駆動電圧の駆動波形EH2は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t4〜t12をメイン駆動区間として電圧Vfを生じさせる。そして、伝達部BT3に保持力を生じさせる際に駆動部AC3に印加する駆動電圧の駆動波形EH3は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t0〜t4、及び時刻t8〜t12をメイン駆動区間として電圧Vfを生じさせる。
【0060】
また、各駆動波形EH1〜EH3は、各メイン駆動区間の開始時刻及び終了時刻の前後(時刻t0〜t1、t3〜t5、t7〜t9、t11〜t13等)に、上記第1実施形態と同様に、メイン駆動区間の終了時刻及び開始時刻となる他の伝達部の駆動波形と協働して保持力に対応する電圧Vfを生じさせる第1助走波形部または第2助走波形部を備えている。
【0061】
そのため、駆動波形EH1〜EH3による駆動電圧の和は、図13に示されるように、一定の電圧2Vfが連続する駆動波形EHTを備える駆動電圧となる。そのため、伝達部BT1〜BT3により順次保持力を生じさせる際にも、第1実施形態で示した場合と比較すると、変動が生じない一定で二倍の保持力を維持することができる。
【0062】
図14は、伝達部BT1〜BT3により、駆動力を順次生じさせる際に駆動部AC1〜AC3に印加する駆動電圧を示す図である。図14に示されるように、伝達部BT1に駆動力を生じさせる際に駆動部AC1に印加する駆動電圧の駆動波形ED1は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t0〜t8をメイン駆動区間としている。また、伝達部BT2に駆動力を生じさせる際に駆動部AC2に印加する駆動電圧の駆動波形ED2は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t4〜t12をメイン駆動区間としている。そして、伝達部BT3に駆動力を生じさせる際に駆動部AC3に印加する駆動電圧の駆動波形ED3は、例えば時刻t0〜t12を1周期としたときに、時刻t8〜t12及び時刻t0〜t4をメイン駆動区間としている。
【0063】
駆動波形ED1〜ED3による駆動電圧の最大値は、回転子SFに設定される駆動力(トルク)に対応する一定の電圧Vdが連続する駆動波形EDTを備える駆動電圧となる。また、各駆動波形ED1〜ED3は、上記第1実施形態と同様に、各メイン駆動区間の開始時刻及び終了時刻の前後に、回転子SFの加加速度、加速度及び速度と一致するように滑らかに加速または減速する駆動電圧となる第1助走波形部または第2助走波形部を備えている。
【0064】
従って、駆動波形ED1〜ED3による駆動電圧は、回転子SFに設定される駆動力(トルク)に対応する電圧Vdを最大値として連続する駆動波形EDTを維持しつつ、伝達部BT1〜BT3により順次駆動力を生じさせる際にも、外乱が生じない一定の駆動力を維持することができ、静音化にも寄与できる。
【0065】
図15には、駆動部AC1〜AC3における一対の駆動素子のそれぞれに印加する駆動電圧の駆動波形EB11〜EB12、EB21〜EB22、EB31〜EB32が示されている。本実施形態においても、各駆動部AC1〜AC3における一対の駆動素子の一方には、駆動波形EH1〜EH3の駆動電圧を半分にした駆動波形と、駆動波形ED1〜ED3とを併せた駆動波形(第3駆動波形)EB11、EB21、EB31を備える駆動電圧(第3駆動電圧)を印加する。また、各駆動部AC1〜AC3における一対の駆動素子の他方には、駆動波形EH1〜EH3の駆動電圧を半分にした駆動波形と、各駆動波形ED1〜ED3における、駆動力を付与するメイン駆動区間の中間点を中心位置として、駆動波形ED1〜ED3を反転させた駆動波形とを併せた駆動波形(第4駆動波形)を備える駆動電圧(第4駆動電圧)を印加すればよい。
【0066】
このように、本実施形態では3つの伝達部BT1〜BT3及び駆動部AC1〜AC3を用いる場合であっても、安定した保持力で回転子SFと伝達部BT1〜BT3との間の回転力伝達状態を保持できるとともに、外乱を生じさせることなく安定した駆動力で回転子SFを回転駆動することができる。
なお、本実施形態では3つの伝達部BT1〜BT3及び駆動部AC1〜AC3を用いる構成を例示したが、4つ以上の伝達部BT1〜BT3及び駆動部AC1〜AC3を用いる構成であっても、同様の作用・効果が得られることは言うまでもない。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図16(a)〜(c)を参照して説明する。
本実施形態では、上記の第1〜第3実施形態に対して回転子SFの構成が異なっているため、以下、回転子SFについて説明する。
【0068】
図16(a)に示すように、回転子SFの外周面(表面)には、伝達部BT1〜BT3がそれぞれ嵌合する幅の隙間をあけて円盤状の突出部50が回転軸線方向に複数(ここでは4つ)設けられている。そして、接触部材BT1〜BT3は、突出部50に案内されて回転子SFの外周面に巻き掛けられている。
他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0069】
上記の構成の回転子SFでは、接触部材BT1〜BT3が突出部50に案内された状態となるため、回転子SFが回転した場合でも、回転軸線方向の位置にずれが生じず、回転トルクを安定して回転子SFに付与することが可能になる。また、本実施形態の回転子SFでは、突出部50から放熱が促進されることから冷却装置CLとして機能することになり、接触部材BT1〜BT3との間の摩擦等で発熱した場合でも、効果的に冷却することができ、摩擦熱に起因する回転トルクが回転子SFに作用することを回避できる。
【0070】
また、回転子SFに設ける冷却装置CLとしては、上記の突出部50の他に、図16(b)に示すように、回転子SFの外周面に回転軸線回りに形成した複数(ここでは3つ)の溝部50aを形成する構成としてもよい。
この構成では、溝部50aにより回転子SFの表面積が増して放熱効率が高まるとともに、回転子SFと接触部材BT1との間に隙間が形成されて排熱されるため、冷却効率を大幅に高めることができる。また、この構成では、回転子SFと接触部材BT1との摩擦で生じた摩擦粉を溝部50aを介して排出できるため、回転子SFと接触部材BT1との間に存在する摩擦粉によって摩擦力が変動して、回転子SFに付与されるトルクが変動することを抑制できる。
【0071】
さらに、回転子SFに設ける冷却装置CLとしては、図16(c)に示すように、回転子SFを円筒形状の中空構造とし、外周面と中空部とを貫通する貫通孔50bを設ける構成としてもよい。
この構成では、図16(b)に示した構成と同様に、摩擦熱及び摩擦粉を貫通孔50bを介して中空部に排出することができる。さらに、この構成では、摩擦粉の飛散を抑えることができ、摩擦粉による回転子SFのトルク変動を抑制することが可能になる。
【0072】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図17は、上記実施形態のいずれかに記載のモータ装置MTRを備えるロボット装置RBTの一部(指部分の先端)の構成を示す図である。
【0073】
同図に示すように、ロボット装置RBTは、末節部101、中節部102及び関節部103を有しており、末節部101と中節部102とが関節部103を介して接続された構成になっている。関節部103には軸支持部103a及び軸部103bが設けられている。軸支持部103aは中節部102に固定されている。軸部103bは、軸支持部103aによって固定された状態で支持されている。
【0074】
末節部101は、接続部101a及び歯車101bを有している。接続部101aには、関節部103の軸部103bが貫通した状態になっており、当該軸部103bを回転軸として末節部101が回転可能になっている。この歯車101bは、接続部101aに固定されたベベルギアである。接続部101aは、歯車101bと一体的に回転するようになっている。
【0075】
中節部102は、筐体102a及び駆動装置ACTを有している。駆動装置ACTは、上記実施形態に記載のモータ装置MTRを用いることができる。駆動装置ACTは、筐体102a内に設けられている。駆動装置ACTには、回転軸部材104aが取り付けられている。回転軸部材104aの先端には、歯車104bが設けられている。この歯車104bは、回転軸部材104aに固定されたベベルギアである。歯車104bは、上記の歯車101bとの間で噛み合った状態になっている。
【0076】
上記のように構成されたロボット装置RBTは、駆動装置ACTの駆動によって回転軸部材104aが回転し、当該回転軸部材104aと一体的に歯車104bが回転する。
歯車104bの回転は、当該歯車104bと噛み合った歯車101bに伝達され、歯車101bが回転する。当該歯車101bが回転することで接続部101aも回転し、これにより末節部101が軸部103bを中心に回転する。
【0077】
このように、本実施形態によれば、低速高トルクの回転を出力することができる駆動装置ACTを搭載することにより、例えば減速器を用いることなく直接末節部101を回転させることができる。さらに本実施形態では、駆動装置ACTが非共振に駆動される構成になっているため、樹脂など軽量な材料で大部分を構成することが可能になる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態では、ベース部BS、BS’が正面視で矩形に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、他の形状であっても構わない。例えば、円形、楕円形としても構わないし、台形、平行四辺形、ひし形、三角形、五角形、六角形など、他の多角形としても構わない。
【0080】
また、上記実施形態では、伝達部BT、BT’、BT1〜BT3が帯状に形成された例を説明したが、これに限られることは無く、例えば線状、鎖状に形成されていても構わない。
【0081】
また、上記実施形態では、伝達部BTを移動させる駆動部ACが電歪素子を有する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば駆動部が電歪素子に代えて磁歪素子、電磁石、VCM(ボイスコイルモータ)など、他のアクチュエータを用いる構成であっても構わない。例えば磁歪素子を用いた場合、推力を高くすることができる。電磁石を用いた場合は、高推力、長ストロークの駆動が可能である。VCMを用いた場合、長ストロークの駆動が可能であり、トルク制御が容易となる。
【0082】
また、上記実施形態のモータ装置MTRに、回転子SFに対する保持力や駆動力を計測する種々のセンサを設け、このセンサの計測結果に基づいて、保持力(保持力に対応する駆動波形を備える駆動電圧)及び駆動力(駆動力に対応する駆動波形を備える駆動電圧)を変化させる構成としてもよい。
例えば、回転子SFの回転に関する情報を計測するエンコーダをスリップ量計測装置として設け、駆動部AC(駆動素子31、32)へ入力される駆動電圧とエンコーダの計測結果とに基づいて、回転子SFと伝達部BTとの相対的なスリップ量を計測する構成としてもよい。この場合、制御部CONTは、計測されたスリップ量がゼロとなるように、保持力に対応する駆動電圧の大きさをフィードバック制御すればよい。
【0083】
また、回転子SFのトルクを計測するトルク計測装置を設け、トルク計測装置の計測結果に基づいて、制御装置CONTが駆動力に対応する駆動電圧の大きさをフィードバック制御する構成も好適に採用できる。
【符号の説明】
【0084】
50…突出部、 AC、AC’…駆動部、 BT、BT’…伝達部、 CL…冷却装置、 EB11、EB12、EB21、EB22…駆動波形(第3駆動波形)、 ED1、ED2…駆動波形(第2駆動波形)、 ED21…第1助走波形部、 ED22…第2助走波形部、 EH1、EH2…駆動波形(第1駆動波形)、 EH11、EH21…第1波形部、 EH12、EH22…第2波形部、 CONT…制御部、 MTR…モータ装置、 RBT…ロボット装置、 SF…回転子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
前記回転子の外周の少なくとも一部に掛けられた伝達部と、
前記伝達部に接続され、印加された駆動電圧に応じて前記伝達部を移動させる複数の駆動部と、
前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態とする保持力に対応する第1駆動波形を備える第1駆動電圧と、前記伝達部を移動させる駆動力に対応する第2駆動波形を備える第2駆動電圧とを前記複数の駆動部にそれぞれ印加させて、前記回転子と前記伝達部との間を前記回転力伝達状態として前記伝達部を一定距離移動させる駆動動作及び前記回転力伝達状態を解消した状態で前記伝達部を所定の位置に戻す復帰動作を前記駆動部に行わせる制御部と、
を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ装置において、
前記第1駆動波形は、複数の前記伝達部のうち、第1の伝達部に前記保持力を生じさせる第1波形部と、該第1の伝達部及び第2の伝達部に協働させて前記保持力を生じさせる第2波形部とを備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のモータ装置において、
前記第2駆動波形は、前記駆動力の付与を複数の前記伝達部のうち、第1の伝達部から第2の伝達部に切り替える際に、前記第1の伝達部の移動による前記回転子の加加速度、加速度及び速度に、前記第2の伝達部の加加速度、加速度及び速度を一致させるような駆動電圧となる第1助走波形部を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項4】
請求項3記載のモータ装置において、
前記第2駆動波形は、前記駆動力の付与を複数の前記伝達部から前記第2の伝達部に切り替える際に、前記第1助走波形部に対応する駆動電圧との和が前記駆動力に対応する駆動電圧となる第2助走波形部を備えることを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記駆動部は、前記伝達部に対で設けられ、
前記制御部は、前記駆動部の一方に、前記第1駆動波形の駆動電圧を半分にした駆動波形と前記第2駆動波形とを併せた第3駆動波形を備える第3駆動電圧を印加させ、
前記前記駆動部の他方に、前記第1駆動波形の駆動電圧を半分にした駆動波形と、前記第2駆動波形における前記駆動力を付与する区間の中間点を中心位置として、該第2駆動波形を反転させた駆動波形とを併せた第4駆動波形を備える第4駆動電圧を印加させることを特徴とするモータ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記制御部は、所定の情報に基づいて前記保持力を変化させる前記第1駆動波形を印加させることを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記制御部は、所定の情報に基づいて前記駆動力を変化させる前記第2駆動波形を印加させることを特徴とするモータ装置。
【請求項8】
請求項6または7記載のモータ装置において、
前記回転子と前記伝達部との間の相対的なスリップ量を計測するスリップ量計測装置を備え、
前記所定の情報は、前記計測装置の計測結果であることを特徴とするモータ装置。
【請求項9】
請求項6または7記載のモータ装置において、
前記回転子のトルクを計測するトルク計測装置を備え、
前記所定の情報は、前記トルク計測装置の計測結果であることを特徴とするモータ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記駆動部は、電歪素子を有するモータ装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記伝達部は、線状、帯状及び鎖状のうちいずれかの形状に形成されているモータ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記伝達部は、弾性変形可能に形成されているモータ装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記回転子は、前記伝達部を冷却する冷却装置を有するモータ装置。
【請求項14】
請求項13記載のモータ装置において、
前記冷却装置は、前記回転子の表面に設けられた突出部を有するモータ装置。
【請求項15】
請求項14記載のモータ装置において、
前記突出部は、前記伝達部を案内する位置に設けられるモータ装置。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記冷却装置は、前記回転子の表面に設けられた溝部を有するモータ装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のモータ装置において、
前記回転子は、中空に形成されているモータ装置。
【請求項18】
請求項17記載のモータ装置において、
前記駆動部は、複数の前記伝達部ごとに設けられ、
複数の前記駆動部は、前記回転子の回転方向にずれた位置に配置されているモータ装置。
【請求項19】
複数の駆動部により、回転子と当該回転子に掛けられた伝達部との間を回転力伝達状態として前記伝達部を一定距離移動させる駆動ステップと、
前記複数の駆動部により、前記回転力伝達状態を解消した状態で前記伝達部を所定の位置に戻す復帰ステップとを含み、
前記駆動ステップは、前記回転子と前記伝達部との間を回転力伝達状態とする保持力に対応する第1駆動波形を備える第1駆動電圧と、前記伝達部を移動させる駆動力に対応する第2駆動波形を備える第2駆動電圧とを前記複数の駆動部にそれぞれ印加することを含むことを特徴とする回転子の駆動方法。
【請求項20】
回転軸部材と、
前記回転軸部材を回転させるモータ装置と、
を備え、
前記モータ装置として、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のモータ装置が用いられている
ロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−10519(P2012−10519A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145270(P2010−145270)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】