説明

モータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置

【課題】実行中の加工プログラムの指令から、負荷トルクの計測対象となる工具とモータ、および計測区間を自動的に決定することで、加工プログラムの変更なしに工具毎の負荷トルクの計測を可能とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置を提供すること。
【解決手段】工具交換が指令されたか否か判断し、工具交換指令がなされた場合には、
計測対象の工具を決定し、切削動作が指令されたか否か判断し、送り軸のサーボモータを決定する(SA100〜SA103)。送り軸の移動開始か否か判断し、各モータの負荷トルクの計測を実行し、負荷トルクの計測データを記録メモリに記録する(SA104〜SA106)。送り軸の移動終了が終了するまで負荷トルクの計測および記憶を行い、プログラムの終了をもって処理を終了する(SA107〜SA109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を制御する数値制御装置に関し、特に、モータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置により制御される工作機械では、ワークを加工中の工具の折損や工具寿命の到来を検出するために、加工負荷の計測が行われている。加工中の負荷トルクは、工具の種類や摩耗の状態、そして加工動作により変化するため、工具毎および加工動作毎に計測する必要がある。
【0003】
特許文献1には、ワーク加工時の加工負荷の自動監視区間の設定が極めて容易になるとともに、加工負荷の上限値(破損値)の設定も容易にかつ誤りなくできるという効果がある。またモニタの加工負荷のグラフ表示が工具が変更される毎に更新表示されるため、各工具についての負荷変動をオペレータがより詳細に視認することができ、従ってオペレータの視認による工具の折損や摩耗状態の監視もより容易かつ確実に行うことができる技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、位置決め動作時には、自動的にその位置決め動作で駆動される送り軸のサーボモータの負荷トルクが測定され、シーケンス番号を指定して、位置決め動作でも負荷トルクを測定しないブロックを選定し、送り軸の可動部の摩耗等を示す負荷トルクを、その摩耗度検出に適したブロックのみ選択することが可能な数値制御装置の技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、試切削の加工負荷のサンプリングデータと実切削時の加工負荷の実測データを時間的に正確に比較して、加工状態を監視できる加工負荷監視方式の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−19939号公報
【特許文献2】特開2005−32279号公報
【特許文献3】特開平7−51995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術では、工具毎に加工中の負荷トルクを計測するためには、加工プログラムを実行する前に手動で補助機能であるMコードを該加工プログラムに挿入するなどして、計測する工具や計測区間(各工具の切削動作区間)を決定する必要があった(図7参照)。図7に示す従来技術では、補助機能Mコード1(符号m1)、補助機能Mコード2(符号m2)、補助機能Mコード3(符号m3)、および補助機能Mコード4(符号m4)を手動で加工プログラムに挿入している。
【0008】
上述したように、計測区間を決定する方法としては加工プログラムの計測区間の前後に補助機能Mコードを配置するのが一般的な方法であるが、手動で加工プログラムを変更する必要があり、これが加工プログラムの実行にも影響を与える可能性がある。また、計測区間内の工具と計測対象となるモータとの対応も予め手動で設定する必要があり、作業が煩雑である。
【0009】
特許文献2に開示される技術では、加工プログラムのシーケンス番号により負荷トルクの計測区間を決定する必要があるが、計測区間となる指令ブロックにシーケンス番号を配置するために、加工プログラムの変更が必要となる。
【0010】
特許文献3に開示される技術では、負荷トルクの計測区間を加工プログラムの指令ブロック単位で決定し記録していることから、タップサイクル指令のように、1つの指令で異なる動作(穴あけ動作と逃げ動作)を連続で行う指令ブロックでは、各切削動作区間が判別できないため、負荷トルクを切削動作毎に計測することができなかった(図8参照)。図8は、負荷トルクの計測区間を加工プログラムの指令ブロック単位で決定し、記録している従来技術を説明する図である。図8に示されるように、計測区間の開始を指令する補助機能Mコード(符号ms)と計測区間の終了を指令する補助機能Mコード(符号me)の各ブロックを加工プログラムに挿入する。しかし、タップサイクル指令(ブロック番号:30)は、穴あけ動作(切削動作1)と逃げ動作(切削動作2)の2つの切削動作を行わせる指令である。このような指令ブロックでは各切削動作区間が判別できないため、切削動作毎に負荷トルクを分類することができない。
【0011】
そこで本発明の目的は、実行中の加工プログラムの指令から、負荷トルクの計測対象となる工具とモータ、および計測区間を自動的に決定することで、加工プログラムの変更なしに工具毎の負荷トルクの計測を可能とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置を提供することである。さらに、送り軸の移動方向から各切削動作区間を区別することで、切削動作毎の負荷トルクの計測を可能とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に係る発明は、加工プログラムに従って工作機械の送り軸モータと主軸モータを駆動してワークと工具を相対移動させてワークの加工を行うとともに、負荷トルク計測手段によって加工中の該送り軸モータと該主軸モータの負荷トルクを測定するモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置であって、前記加工プログラムの工具交換指令により指令された工具番号を読み取る工具番号読み取り手段と、工具交換後の前記加工プログラムで指令された動作が切削動作であるか非切削動作であるかを判別する切削動作判別手段と、前記切削動作判別手段により切削動作であると判別された時、該切削動作に使用される前記送り軸モータの移動開始から移動終了までの区間を負荷トルク測定区間として設定する負荷トルク測定区間設定手段と、前記負荷トルク測定区間設定手段により設定された負荷トルク測定区間において、前記送り軸モータと前記主軸モータの負荷トルクを前記負荷トルク計測手段によって計測し、前記工具番号読み取り手段により読み取った工具番号に対応付けて各送り軸モータおよび主軸モータのモータ負荷トルクを記憶する記憶手段と、を有することを特徴とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置である。
請求項2に係る発明は、前記切削動作判別手段は、前記加工プログラムの1つの指令ブロックに、送り軸の移動方向が異なる切削動作がある場合は、これを別の切削動作と判断し、該1つの指令ブロックは複数の切削動作からなると判断する手段であり、切削動作毎に前記負荷トルクを計測し記憶することを特徴とする請求項1に記載のモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、実行中の加工プログラムの指令から、負荷トルクの計測対象となる工具とモータ、および計測区間を自動的に決定することで、加工プログラムの変更なしに工具毎の負荷トルクの計測を可能とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置を提供できる。
さらに、送り軸の移動方向から各切削動作区間を区別することで、切削動作毎の負荷トルクの計測を可能とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である数値制御装置の要部と該数値制御装置で制御される工作機械の要部のブロック図である。
【図2】記憶手段に格納される負荷トルク計測データを説明する図である。
【図3】本発明の実施形態を説明する図である。
【図4】本発明に係る負荷トルクの計測を行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図6】本発明に係る負荷トルクの計測を行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(送り軸の移動方向が異なる切削動作がある場合)。
【図7】手動で加工プログラム中に補助機能のMコードを挿入する従来技術を説明する図である。
【図8】負荷トルクの計測区間を加工プログラムの指令ブロック単位で決定し、記録している従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態の数値制御装置の要部と該数値制御装置で制御される工作機械の要部を示すブロック図である。数値制御装置10は、プロセッサ(CPU)11、ROM12、RAM13、サーボ制御部14、表示制御部15、PMC16、I/Oユニット17、および、スピンドル制御部18等を備え、バス19で接続されている。
プロセッサ11は、ROM12に格納されたシステムプログラムを読み出し、このシステムプログラムに従って、数値制御装置を全体的に制御する。RAM13は、一時的な計算データ、表示データ、図示していない入力インターフェースより入力された加工プログラム等が格納されるもので、特に本実施形態に関係して、工具番号に対応付けられた各送り軸付けて各送り軸モータおよび主軸モータのモータ負荷トルクを記憶する記憶手段である。
【0016】
表示制御部15は、工作機械の各軸の現在位置、アラーム、各種パラメータ、画像データ等の画像信号、さらには、本実施形態に関係して、測定負荷トルクの現在値、負荷トルク、負荷トルクの平均値、最大値等の信号を表示器21に送信する。表示器21は、表示機能とデータ入力手段の機能を行うもので、この表示器21に上述した各種情報を表示する。また、アラームにするための負荷トルクの限界値等を設定する設定入力手段を構成する。
【0017】
サーボ制御部14は、プロセッサやROM,RAMなどのメモリ等で構成され、加工プログラムに基づいて、数値制御装置10のプロセッサ(CPU)11から送られてくる各送り軸(この実施形態では直交するX,Y,Z軸の送り軸を備えているものとしている)への移動指令を受け、各軸のサーボアンプ22x,22y,22zを介して、各軸サーボモータMx,My,Mzを駆動する。
【0018】
各軸のサーボモータMx,My,Mzには、位置・速度検出用のパルスエンコーダ(図示せず)が内蔵されている。各サーボアンプ22x,22y,22zには、各サーボモータMx,My,Mzの駆動電流を検出する電流検出器(図示せず)を備えている。サーボ制御部14は、プロセッサ11からの移動指令と、各パルスエンコーダ、及び各電流検出器からの位置、速度、電流のフィードバック信号に基づいて、位置ループ、速度ループ、電流ループの各処理を行い各軸のサーボモータMx,My,Mzの位置、速度を制御する。サーボ制御部14が有するプロセッサ(図示せず)には、外乱推定オブザーバが組み込まれており、このオブザーバによって、各送り軸の負荷トルクを推定するようにしている。
【0019】
PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、数値制御装置10に内蔵され、シーケンスプログラムを実行し機械を制御する。加工プログラムで指令されたM機能、S機能、T機能に従って、これらをシーケンスプログラムで工作機械側に必要な信号に変換し、I/Oユニット17から工作機械側に出力する。図示しない工作機械は、T機能に基づいたI/Oユニット17から入力した信号に従って、使用する工具を交換する。
【0020】
スピンドル制御部18は、プロセッサ11からスピンドル回転指令及びオリエンテーション等の指令及び図示しないポジションコーダからのフィードバック信号に基づいてスピンドルアンプ23を介してスピンドルモータMsを指令された回転速度で回転させる。また、オリエンテーション指令により、所定位置にスピンドルモータMsの回転位置を位置決めする。このスピンドル制御部18にも外乱推定オブザーバが組み込まれ、スピンドルモータMsに加わる負荷トルクを推定し検出するようにしている。
なお、サーボ制御部14やスピンドル制御部18に組み込まれた外乱推定オブザーバは、例えば特許文献3に開示されているように周知の技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0021】
工具の破損や摩耗は、工具により被加工物に対する切削がなされているとき、すなわち、切削指令(G01,G02,G03,G94等の指令)のブロックが実行されているときのサーボモータ、主軸モータの負荷トルクを測定して、負荷トルク計測データの統計をとることにより、監視することができる。
【0022】
前述したように、サーボ制御部14,スピンドル制御部18では、各軸のサーボモータMx,My,Mzに対する外乱推定オブザーバ、主軸モータMsに対する外乱推定オブザーバが組み込まれており、このオブザーバによって、各送り軸モータMx,My,Mz、主軸モータMsに加わる負荷トルクが求められている。このオブザーバによって求められた負荷トルクをRAM13の所定記憶領域に記憶する。
【0023】
図2は、記憶手段に格納される負荷トルク計測データを説明する図である。RAM13の所定の記憶領域には、切削動作中における各モータの負荷トルクの計測データ(現在値、最大値、平均値)が、計測工具、計測区間毎に記憶される。現在値には、計測区間中に計測された負荷トルクの現在値が記憶される。最大値には、計測期間中に計測された負荷トルクの最大値が記憶される。また、平均値には、計測区間中に計測された負荷トルクの平均値が、計測区間終了後に記憶される。なお、負荷トルク計測データから最大値や平均値の算出する方法は周知の統計処理の手法を用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0024】
図2に示されるように、計測工具T01は計測対象の工具がT01であること、その計測を行う加工プログラムのブロックが100(シーケンス番号)であること、そして、ブロック100を2つの計測区間1,2に区別して、主軸1、主軸2、サーボ軸1・・・として各モータの負荷トルク計測データを記憶手段であるRAM13(図1参照)に格納する。また、計測工具T05や計測工具T20のように、計測ブロックを1つの計測区間として各モータの負荷トルク計測データを記憶する場合もある。これは、各計測ブロックで実行される切削動作に応じて、計測区間を複数に区分するか否かが判別されている。これについては、図5を用いて後述する。
【0025】
測定され記憶された主軸モータMs、各送り軸のサーボモータMx,My,Mzの負荷トルクは、従来の数値制御装置が備える負荷トルク監視機能と同様に、最大値、平均値が求められる。
また、測定した負荷トルクの最大値、平均値が予め設定されている限界値を越えたときには、アラーム信号が出力される。なお、測定した負荷トルクの最大値、平均値が限界値を越えたときアラーム信号を出力する点は従来と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0026】
本発明の実施形態では、切削送り指令における負荷トルクの測定のみを行うようにしているが、切削動作以外の動作の位置決め(早送り)動作と判断することで、位置決め動作におけるサーボモータの負荷トルクを自動的に測定することも可能である。
【0027】
上述した本発明の実施形態では、スピンドルモータMsや各送り軸のサーボモータMx,My,Mzの負荷トルクを外乱推定オブザーバで推定することによって負荷トルクを監視した例を述べた。外乱推定オブザーバを設けない場合には、モータの駆動電流の大きさを負荷トルクの大きさとして検出するようにしてもよい。この場合、モータ駆動電流の測定は、各モータの電流検出器で検出されフィードバックされる電流フィードバック信号を測定してもよく、又は速度ループから出力される電流指令(トルク指令)を負荷トルクとみなし測定するようにしてもよい。
【0028】
図3は、本発明の実施形態を説明する図である。加工プログラム実行時において、工具交換指令から計測対象である工具を決定し、切削動作が指令された場合は、その切削動作に使用される送り軸のサーボモータを指令ブロックから自動的に決定する。そして、決定した送り軸の移動開始から移動終了までの間を負荷トルクの計測区間として、その区間の主軸モータとサーボモータの負荷トルクを自動的に計測する。
【0029】
図3において、加工プログラムは、工具交換指令(T01)のブロック、補間指令(ブロック番号:10、送り軸:Z軸、主軸:SP1)のブロック、工具交換指令(T03)のブロック、補間指令(ブロック番号:20、送り軸:Z軸、主軸:SP1)の各ブロックの指令を含んでいる。
【0030】
図4は、本発明に係る負荷トルクの計測を行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。そして、図4に示すフローチャートの処理は、数値制御装置10のプロセッサ11が所定周期毎実行する。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA100]読み込まれた加工プログラムのブロックで工具交換が指令されたか否か判断し、工具交換指令がなされた場合にはステップSA101へ移行し、なされなかった場合にはステップS102へ移行する。
●[ステップSA101]加工プログラムの工具交換指令から計測対象の工具を決定し、図2に示されるように、計測対象の工具と、工具を駆動するサーボモータ、主軸モータの負荷トルク計測データを記憶する記録メモリを決定する。
●[ステップSA102]切削動作が指令されたか否か判断し、切削動作が指令された場合にはステップSA103へ移行し、されなかった場合にはステップSA109へ移行する。切削指令か否かは、ブロックの指令にG01やG02のコードがあるか否かで判断する。
●[ステップSA103]加工プログラムの切削指令ブロックから、計測対象の工具を駆動する送り軸のサーボモータを決定する。
●[ステップSA104]送り軸の移動開始か否か判断し、移動開始するのを待ってステップSA105へ移行する。
●[ステップSA105]各モータの負荷トルクの計測を実行する。
●[ステップSA106]負荷トルクの計測データを記録メモリに記録する。
●[ステップSA107]送り軸の移動終了か否か判断し、移動終了でない場合にはステップSA105へ戻り処理を継続し、移動終了の場合にはステップSA108へ移行する。
●[ステップSA108]切削動作を終了する。
●[ステップSA109]加工プログラムの終了か否か判断し、終了でない場合にはステップSA100へ戻り処理を継続し、終了の場合にはモータの負荷トルクを計測する処理を終了する。
【0031】
図5は、本発明の他の実施形態を説明する図である。加工プログラムの実行中において、1つの指令ブロックに送り軸の移動方向が異なる切削動作がある場合は、別の切削動作であると判断して、負荷トルクの計測区間を区別する。図5に示すタップサイクル指令の例では、穴あけ動作と逃げ動作を別の計測区間とし、計測した負荷トルクデータを計測区間から判別することができる。図5において、加工プログラムは、工具交換指令T01、タップサイクル指令(ブロック番号:30、送り軸:Z軸、主軸SP1)を備えている。
【0032】
図6は、本発明に係る負荷トルクの計測を行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである(送り軸の移動方向が異なる切削動作がある場合)。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB100]読み込まれた加工プログラムのブロックで工具交換が指令されたか否か判断し、工具交換指令がなされた場合にはステップSB101へ移行し、なされなかった場合にはステップSB102へ移行する。
●[ステップSB101]計測対象の工具を決定する。
●[ステップSB102]切削動作が指令されたか否か判断し、切削動作が指令された場合にはステップSB103へ移行し、されなかった場合にはステップSB111へ移行する。切削指令か否かは、ブロックの指令にG01やG02のコードがあるか否かで判断する。
●[ステップSB103]送り軸のサーボモータを決定する。
●[ステップSB104]送り軸の移動開始か否か判断し、移動開始するのを待ってステップSB105へ移行する。
●[ステップSB105]送り軸の移動方向が異なる切削動作があるか否か判断し、異なる切削動作がある場合にはステップSB106へ移行し、ない場合にはステップSB107へ移行する。送り軸の移動方向が異なる切削動作の有無は、例えば、送り軸の移動方向ベクトルを監視することによって行う。
●[ステップSB106]計測区間を更新し、ステップSB107へ移行する。計測区間の更新は、図2に示されるように、送り軸の移動方向が異なる切削動作の場合に、計測対象の工具と、その工具を駆動するサーボモータと主軸モータの負荷トルク計測データを記憶する領域を、新たな計測区間として設定することを意味する。
●[ステップSB107]各モータの負荷トルクの計測を実行する。
●[ステップSB108]負荷トルクの計測データを記録メモリに記憶する。
●[ステップSB109]送り軸の移動終了か否か判断し、移動終了でない場合にはステップSB105へ戻り処理を継続し、移動終了の場合にはステップSB110へ移行する。
●[ステップSB110]切削動作を終了する。
●[ステップSB111]加工プログラムの終了か否か判断し、終了でない場合にはステップSB100へ戻り処理を継続し、終了の場合にはモータの負荷トルクを計測する処理を終了する。
【0033】
上述したように、本発明によれば、負荷トルクの計測において複雑な設定作業や、加工プログラムの変更作業は一切必要ない。そのため、加工プログラムを新規作成したり、変更した場合においても、工具別および切削動作別に加工中のモータ負荷トルクを計測し、その統計を取る(切削動作中の平均値や最大値など)ことが容易になる。
【0034】
なお、本発明の実施形態において、負荷トルク以外にも、フィードバックされてくるモータの速度フィードバック信号や位置ループから出力される速度指令に基づくモータの速度、位置ループ処理で求められるエラー量(位置誤差)、さらには、熱シミュレーションによって得られる熱量等のモータの状態を、監視するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 数値制御装置
11 プロセッサ(CPU)
12 ROM
13 RAM
14 サーボ制御部
15 表示制御部
16 PMC
17 I/Oユニット
18 スピンドル制御部
19 バス
21 表示器
22x,22y,22z サーボアンプ
23 スピンドルアンプ
Mx X軸サーボモータ
My Y軸サーボモータ
Mz Z軸サーボモータ
Ms スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに従って工作機械の送り軸モータと主軸モータを駆動してワークと工具を相対移動させてワークの加工を行うとともに、負荷トルク計測手段によって加工中の該送り軸モータと該主軸モータの負荷トルクを測定するモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置であって、
前記加工プログラムの工具交換指令により指令された工具番号を読み取る工具番号読み取り手段と、
工具交換後の前記加工プログラムで指令された動作が切削動作であるか非切削動作であるかを判別する切削動作判別手段と、
前記切削動作判別手段により切削動作であると判別された時、該切削動作に使用される前記送り軸モータの移動開始から移動終了までの区間を負荷トルク測定区間として設定する負荷トルク測定区間設定手段と、
前記負荷トルク測定区間設定手段により設定された負荷トルク測定区間において、前記送り軸モータと前記主軸モータの負荷トルクを前記負荷トルク計測手段によって計測し、前記工具番号読み取り手段により読み取った工具番号に対応付けて各送り軸モータおよび主軸モータのモータ負荷トルクを記憶する記憶手段と、
を有することを特徴とするモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置。
【請求項2】
前記切削動作判別手段は、前記加工プログラムの1つの指令ブロックに、送り軸の移動方向が異なる切削動作がある場合は、これを別の切削動作と判断し、該1つの指令ブロックは複数の切削動作からなると判断する手段であり、切削動作毎に前記負荷トルクを計測し記憶することを特徴とする請求項1に記載のモータ負荷トルク測定機能を有する数値制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−118840(P2011−118840A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277946(P2009−277946)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】