説明

モータ電流検出用IC、およびこれを用いた電流検出器またはモータ制御装置

【課題】モータ制御用の電流検出回路において、小型化、部品点数削減、実装面積削減、低コスト化を実現する。
【解決手段】ICの内部に、差動増幅回路を備え、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子を備え、また、前記差動増幅回路の出力端子を備え、前記差動増幅回路の入力端子は負電圧の入力が可能であり、前記差動増幅回路の入力端子は過大電圧入力時に回路を遮断する機能を有する回路をIC化したことにより、電流検出回路の小型化、低コスト化を実施するものであり、モータ制御回路あるいはモータ制御装置、モータ制御装置を用いた種々の機器の小型化、低コスト化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御回路の一部であるモータ電流検出用IC、およびこれを用いた電流検出器またはモータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3相誘導電動機やブラシレスモータのような3相同期電動機(以下、総称としてモータと略す)の制御装置として、広く一般にインバータ回路が用いられており、その制御回路の一部分として、モータの巻線電流の検出が行われている。モータの巻線電流の検出方法として、大別して、2通りの方法がある。
【0003】
1つめの方法は、モータの巻線につながる電路にホールセンサ等を使用した電流検出器を用いることで、モータ巻線の電流を直接検出する方法である。この方法では、モータの巻線電流が精度よく検出でき、また、ホール素子を用いたセンサを使用すると、巻線と制御回路間の絶縁が可能である。一般的に三相モータでは2回路を使用する場合が多い。しかしこの方法では、検出器(あるいは検出回路)が比較的大きく、また、高価である。一般的に産業用のサーボモータの制御回路等、高精度な制御が必要な制御装置に使用されている。
【0004】
2つ目の方法は、インバータ回路の−側(下側)素子の−電源側に直列に電流検出用低抵抗を挿入し、その電圧降下を増幅し、検出する方法である。この方法では、インバータの各素子のオン、オフのタイミングに対して電流検出用低抵抗に流れる電流が変化するため、制御回路にて検出するタイミングの制御が必要であり、多くはマイクロコンピュータを用い、制御されている。また、検出する信号の電位はインバータ回路の−側の電位となるため、制御回路を同電位に設置する場合には問題ないが、制御回路をインバータ回路と絶縁した電位に設置する場合には何らかの絶縁回路が必要である。しかし、この方法では比較的安価に電流検出回路を構成できることから、産業用三相誘導電動機駆動用インバータや、洗濯機、エアコン等の家電用モータの制御に幅広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図9は、従来例の第1の実施の形態におけるモータ駆動装置のブロック図を示すもので、ヒートポンプ式洗濯乾燥機への実施例を示している。
【0006】
図9において、交流電源1より全波整流回路20と電解コンデンサ21より構成される整流回路2に交流電力を加えて直流電力に変換する直流電源を構成し、第1のインバータ回路3A、第2のインバータ回路3B、および第3のインバータ回路3Cにより直流電力を3相交流電力に変換して、回転ドラム駆動モータ(第1のモータ)4A、ヒートポンプ用圧縮機モータ(第2のモータ)4Bおよび送風ファンモータ4Cを駆動する。それぞれのインバータ回路の下アームスイッチングトランジスタのエミッタ端子に接続されモータ電流を検出する第1の電流検出手段5A、第2の電流検出手段5B、および第3の電流検出手段5Cと、制御手段6により、回転ドラム駆動モータ(第1のモータ)4A、ヒートポンプ用圧縮機モータ(第2のモータ)4Bおよび送風ファンモータ4Cのそれぞれのモータの電流を検出して制御を行う。
【0007】
インバータ制御手段60は、インバータ回路3A、3B、3CをPWM制御するPWM制御手段(図示せず)および高速A/D変換手段(図示せず)を複数個内蔵するマイクロコンピュータ、等の高速プロセッサにより構成され、インバータ回路3A、3B、3Cを同時に制御するもので、回転ドラム駆動モータ4A、ヒートポンプ用圧縮機モータ4B、送風ファンモータ4Cはそれぞれ異なる回転速度で制御する。
【0008】
第1のインバータ回路3Aは、回転ドラム駆動モータ4Aを制御するものであり、位置検出手段40aによりロータ永久磁石の位置を検出し、第1の電流検出手段5Aにより回転ドラム駆動モータ4Aのモータ電流を検出して、回転ドラム駆動モータ4Aを制御する。
【0009】
第2のインバータ回路3Bは、ヒートポンプ用圧縮機モータ4Bを、第3のインバータ回路3Cは、送風ファンモータ4Cを、第1のインバータ回路3Aと同様に制御を行う。
【0010】
電流検出手段5A、5B、5Cは3シャント式電流検知方式で、3ヶ又は2ヶのシャント抵抗と電流信号増幅手段より構成し、電流検出手段5A、5B、5Cの基本構成は全く同じであり、モータ電流に応じてシャント抵抗値が異なるので、以下代表例について説明する。フルブリッジ3相インバータ回路下アームトランジスタのそれぞれのエミッタ端子(Nu、Nv、Nw)にシャント抵抗の一方の端子を接続し、シャント抵抗の他方の端子は直流電源負側G端子に接続するもので、それぞれ3ヶのシャント抵抗より構成されるため3シャント方式と呼ばれる。
【0011】
図10は、従来例におけるインバータ回路の詳細回路図であり、6個のトランジスタとダイオード、および制御用ICよりなるパワーモジュールよりインバータ回路を構成している。ここで、3相アームの1つのU相アーム30Aについて説明すると、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBTと略す)よりなる上アームトランジスタ31a1と逆並列ダイオード32a1の並列接続体と、IGBTよりなる下アームトランジスタ31a2と逆並列ダイオード32a2の並列接続体を直列関係に接続し、上アームトランジスタ31a1のコレクタ端子は直流電源の正電位端子P1に接続し、上アームトランジスタ31a1のエミッタ端子はモータ4への出力端子Uに接続し、下アームトランジスタ31a2のエミッタ端子Nuは電流検出手段5を構成するU相シャント抵抗50aを介して高圧直流電源の負電位側端子G1に接続する。
【0012】
上アームトランジスタ31a1は上アーム駆動信号Upに応じて上アームゲート駆動回路33a1により駆動され、下アームトランジスタ31a2は下アーム駆動信号Unに応じて下アームゲート駆動回路33a2によりオンオフスイッチング制御される。
【0013】
V相アーム30B、W相アーム30Cも同様の接続であり、各アームの下アームトランジスタのエミッタ端子Nv、Nwは電流検出手段5を構成するV相シャント抵抗50b、W相シャント抵抗50cに接続し、V相シャント抵抗50b、W相シャント抵抗50cの他方の端子は直流電源負電位端子G1に接続している。IGBT、あるいはパワーMOSFETにより下アームトランジスタを構成すると、ゲート電圧を制御することによりスイッチング制御できるので、IGBTの場合はエミッタ端子、パワーMOSFETの場合にはソース端子に接続するシャント抵抗の電圧が1V以下となるように抵抗値を選定すればスイッチング動作にはほとんど影響することなく電圧制御によりオンオフスイッチング制御でき、UVW各相シャント抵抗50a、50b、50cの電圧veu、vev、vewを検出することによりインバータ回路出力電流、すなわちモータ電流を検出できる。
【0014】
図11は、従来例による電流検出手段5の電流信号増幅手段を単電源増幅回路より構成した詳細回路図であり、UVW各相シャント抵抗50a、50b、50cにより検出した交流の電流信号を非反転増幅器により変換増幅し、マイクロコンピュータ等のプロセッサに内蔵するA/D変換器が検出できるDC電圧レベルにレベル変換するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−054812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このような従来のモータ電流検出回路は従来、モータの電流を電圧として検出するシャント抵抗と、増幅器を構成するアンプ(一般的にオペアンプが使用されている)と、増幅器のゲインを決定する複数の抵抗器と、コンデンサやダイオード等のその他の部品より構成されており、部品点数が多く、実装面積も必要で、コストの上でも高くついていた。また、前記先行技術では電流検出回路のモジュール化を記してあるが、前記シャント抵抗、増幅器を構成するアンプ、複数の抵抗器と、コンデンサやダイオード等の部品を例えばハイブリッドICのようなモジュールとしてまとめたものであり、ある程度小型化にはなるものの限界があり、また、コスト的にはモジュール化することで決して安くはならないものである。
【0017】
このように個々の部品を組み合わせて電流検出回路を構成しているのには下記の理由がある。
【0018】
1つ目の理由は、モータの電流は正負両極性で流れるため、モータの電流検出回路のモータ電流を検出するシャント抵抗にも正負の電圧が流れ、その結果シャント抵抗の両端には正の電圧、負の電圧が発生する。一般的に増幅器を構成するアンプの入力端子には正負の電源電圧の範囲内の電圧を入力するのが普通である。前記シャント抵抗が発生する電圧をシャント抵抗に接続される増幅器に接続するには、使用するアンプに正負両電源の増幅器を使用するか、またはシャント抵抗が発生する負電圧がアンプに印加されないような回路構成とする必要があった。
【0019】
2つ目の理由は、例えばモータ電流を検出するシャント抵抗がオープン等の異常時に増幅器にはモータを駆動する高電圧が印加される可能性があり、増幅器を構成するアンプの電源電圧をはるかに越えた電圧が印加され、アンプの樹脂モールドが破裂し、発火、発煙等の可能性がある。増幅器のゲインを構成する抵抗のうち、シャント抵抗とアンプの間に接続される抵抗器が異常時にアンプに流れ込む電流を抑制する働きがあり、また、場合によっては溶断することで被害を最小限にできた。
【0020】
このような理由で、従来の電流検出回路は、部品点数が多く、実装面積も必要で、コストの上でも高く、また、モジュール化し小型化を図るとコスト的により高いものとなっていた。
【0021】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、モータ制御回路の一部分を構成する電流検出回路おいて、小型化、部品点数削減、低コスト化を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記目的を達成するために、差動増幅回路と、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子と、前記差動増幅回路の出力端子を備え、前記差動増幅回路の入力端子は負電圧の入力が可能であり、前記差動増幅回路の入力端子は過大電圧入力時に過大電圧が入力された端子の回路を遮断する機能を有する、モータ電流検出用ICである。
【0023】
これにより、電流検出回路として、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化を実現できるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電流検出用ICは、モータ制御回路に使用されている、電流検出回路の小型化、低コスト化を実施するものであり、モータ制御回路あるいはモータ制御装置、モータ制御装置を用いた種々の機器の小型化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のICを使用したモータ制御装置のブロック図
【図2】本発明のICを使用したモータ制御装置の他のブロック図
【図3】本発明のIC内部ブロック図
【図4】本発明の他のIC内部ブロック図
【図5】本発明のIC入力端子のサージ保護素子配置を示す図
【図6】本発明のIC入力端子のサージ保護素子配置を示す他の図
【図7】本発明のICの内部構造図
【図8】本発明のIC入力端子近傍のアルミ配線を示す図
【図9】従来のモータ駆動装置のブロック図
【図10】従来のモータ駆動装置のインバータ回路の詳細回路図
【図11】従来のモータ駆動装置の電流信号増幅手段の単電源増幅回路の詳細回路図
【図12】本発明のICを使用したモータ制御装置の別のブロック図
【図13】本発明のICを使用したモータ制御装置のさらに別のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の発明は、差動増幅回路と、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子と、前記差動増幅回路の出力端子を備え、前記差動増幅回路の入力端子は負電圧の入力が可能であり、前記差動増幅回路の入力端子は過大電圧入力時に過大電圧が入力された端子の回路を遮断する機能を有し、回路をIC化したことにより、モータを駆動するインバータ回路の下側のスイッチング素子の−電源側を一括接続し、直列に挿入された低抵抗の両端を前記前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子に接続することで、1シャント方式の電流検出回路を構成することができ、これにより電流検出回路として、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化を実現することができる。
【0027】
第2の発明は、上記第1の発明において、差動増幅回路と、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子と、前記差動増幅回路の出力端子とを複数組備えたことにより、例えば3回路分をICとして構成した場合、モータを駆動するインバータ回路の下側のそれぞれのスイッチング素子の−側に個々に低抵抗を直列に挿入し、その抵抗の両端を前記差動増幅回路のそれぞれの+、−一対の入力端子に接続することで、3シャント方式の電流検出回路を構成することができ、これにより電流検出回路として、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化を実現することができる。
【0028】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、差動増幅回路の増幅率は、外部から調整可能とする機能を設け、増幅率の設定用端子を設けた構成とすることにより、外部に設置する電流検出用低抵抗との組み合わせで、広範囲の電流検出値に対応することができる。
【0029】
第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、電源電圧が単電圧である、例えばICの電源電圧は5V単一電源電圧とすることで、アナログ回路特有の正負の電源を必要とせず、マイコン等他の制御回路と共通の電源で動作することができる。
【0030】
第5の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、差動増幅回路の+、−の入力端子に配置されるサージ保護素子は、電源電圧の正側との間に配置されることにより、すなわち、差動増幅回路の入力端子のワイヤーボンディングパッド近傍にICの電源電圧の正側との間にサージ保護素子を配置することで、差動増幅回路の入力端子に負電圧が印加された場合にもサージ保護素子を通じてリーク電流が流れることは無く、負電圧の印加を可能とすることにより、モータ電流が負になる場合にもICの破壊等なく、正確な電流を検出することができる。
【0031】
第6の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、差動増幅回路の+、−の入力端子に配置されるサージ保護素子は、電源電圧の負側との間に2個のサージ保護素子を極性を逆とし直列に配置されることにより、すなわち、差動増幅回路の入力端子のワイヤーボンディングパッド近傍にICの電源電圧の負側との間に2個のサージ保護素子を極性を逆として配置することで、差動増幅回路の入力端子に負電圧が印加された場合にもサージ保護素子を通じてリーク電流が流れることは無く、負電圧の印加を可能とすることにより、モータ電流が負になる場合にもICの破壊等なく、正確な電流を検出することができる。
【0032】
第7の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、差動増幅回路の+、−の入力端子は、過大電圧入力時に入力端子のリードフレームとシリコンチップ間のワイヤーボンディングを溶断させることにより、すなわち、差動増幅回路の入力端子のICピンを形成するリードフレームと同チップ上のボンディングパッド間に使用するワイヤーボンディングに極力細いものを使用することにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合に前記ワイヤーボンディングを溶断させることでICの破裂、発火等不安全を防ぐことができる。
【0033】
第8の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、差動増幅回路の+、−の入力端子は、過大電圧入力時にシリコンチップ上のアルミ配線のボンディングパッド近傍を溶断させることにより、すなわち、差動増幅回路の入力端子のICピンを形成するリードフレームよりワイヤーボンディングを介して接続される同チップ上のボンディングパッドとサージ保護素子を含む他の回路との間のアルミ配線の部分に極力細い部分を設けることにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合に前記アルミ配線の細くなった部分を溶断させることでICの破裂、発火等不安全を防ぐことができる。
【0034】
第9の発明は、上記第1から第8のいずれかの発明のモータ電流検出用ICと、ICの差動増幅回路の+、−の入力端子間に接続した抵抗により、モータ電流検出器を構成したことにより、モータ電流検出器として、IC1個と低抵抗のわずかな部品で構成することができ、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化を実現することができる。
【0035】
第10の発明は、上記第1から第8のいずれかの発明のモータ電流検出用ICを備えた電流検出回路を使用したモータ制御装置を構成することで、小型で安価なモータ制御装置を実現することができる。
【0036】
第11の発明は、上記第1から第8の発明のモータ電流検出用ICと、差動増幅回路の+、−の入力端子間のいずれか一方に保護素子を介して接続された抵抗により、モータ電流検出器を構成したことにより、モータ電流検出器として、IC1個と低抵抗のわずかな部品で構成することができ、また、前述の作動増幅回路の+、−いずれか一方に素子を 介して低抵抗を接続することにより例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合にこの保護素子によりICの破裂、発火等不安全を防ぐことができ、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化、安全性の高い電流検出器を 構成することができる。
【0037】
第12の発明は、上記第11の発明の保護素子は電流を遮断するヒューズを使用することにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合にこのヒューズが溶断しICの破裂、発火等不安全を防ぐことができ、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化、安全性の高い電流検出器を 構成することができる。
【0038】
第13の発明は、上記第11の発明の保護素子は抵抗を使用することにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合にこの抵抗を溶断しICの破裂、発火等不安全を防ぐことができ、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化、安全性の高い電流検出器を構成することができる。
【0039】
第14の発明は、上記第11から第13の発明のモータ電流検出器を使用した電流モータ制御装置を構成することで、小型で安価なモータ制御装置を実現することができる。
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0041】
(実施の形態1)
図1は本発明のICを使用したモータ制御装置のブロック図、図3は本発明の実施の形態1を含んだICのブロック図であり、実施の形態1は図3の中の、入力端子T1、T2、抵抗R1、R2、R4、R5、R8、アンプ110、出力端子T7の部分である。
【0042】
図1で、3相モータ駆動用のインバータ回路はスイッチング素子31a1と31a2、31b1と31b2、31c1と31c2の直列に接続された2個1組を並列に3組、合計6個のスイッチング素子より構成されており、図1では例としてスイッチング素子にIGBTを使用している。2個1組のスイッチング素子の接続点、例えば31a1の下側(エミッタ側)と31a2の上側(コレクタ側)が接続されているが、その接続点より図示しないモータに接続されている。直列に接続された各下側スイッチング素子のエミッタ側は全て接続されており、電流検出用の抵抗である電流検出用低抵抗50dに接続されている。電流検出用低抵抗50dの両端は電流検出用IC101に入力されている。電流検出用IC101は電流検出用低抵抗50dの両端の電圧を差動増幅回路105で増幅し、アナログの信号idcとして出力する。この信号はマイクロコンピュータ等の制御回路102に入力され、A/D変換を行い、電流検出値としてモータの速度制御、トルク制御等に使用される。
【0043】
図3で、前述の電流検出用低抵抗50dの両端は入力端子T1、T2に接続される。説明のため、入力端子T1には図1に示す電流検出用低抵抗50dの右側、下側IGBTのエミッタ側が接続され、入力端子T2には図1に示す電流検出用低抵抗50dの左側、コンデンサC1側が接続されているとする。入力端子T1への入力電圧をVT1[V]、入力端子T2への入力電圧をVT2[V]、出力端子T7への出力電圧をVOUT[V]、図3抵抗R4のVREF側の電圧をVREF[v]、抵抗R1、R2、R4、R5の抵抗値をR1[Ω]、R2[Ω]、R4[Ω]、R5[Ω]とすると、出力電圧は、

OUT={(R12+R15)VREF+(R24+R45)VT1
+(−R15−R45)VT2}/{R2(R1+R4)}

で表される。また、一般的に差動増幅回路を構成する場合、抵抗R1、R2、R4、R5の値はR1=R2、R4=R5(またはR1:R4=R2:R5)であり、前式にこれを代入すると、

OUT=VREF+(VT1−VT2)R4/R1

となり、電圧VREFを仮想GNDとし、それを中心に、増幅率R4/R1で増幅された電圧を端子T7に接続する。
【0044】
各定数の設計値の例を示す。今、モータ電流の最大値を±8A(ゼロ−ピーク)とする。図1に示す電流検出用低抵抗50dはインバータを構成するIGBT 31a2、31b2、31c2の動作に影響しないように、電流検出用低抵抗50dによる電圧降下を1V以下とするべきである。低抵抗の値を50mΩとしたとき、モータの最大電流による電圧降下は8A×50mΩ=0.4Vであり、仮に8Aを超えることがあってもインバータ回路の素子を余裕を持って駆動できる。図1に示す制御回路102をマイクロコンピュータのA/D変換器を想定すると、入力可能な電圧は一般的に0V〜5Vであり、その中心電圧の2.5Vを基準に±2.5Vの範囲に差動増幅器の電圧を設定したい。この場合には、IC内部の基準電圧VREFを2.5Vになるように設定する。図3に示す抵抗R6、R7、アンプ112より構成される基準電圧VREFが2.5Vとなるように抵抗R6、R7を設定する。例えばICの電源電圧VCCが+5Vの場合には抵抗R6とR7の値を等しく設定する。入力端子T1、T2間にはモータの最大電流8A時に0.4Vの電圧が入力される。このときの振幅を2.5V以下とする必要がある。例えば図3の抵抗をR1=R2=40kΩ、R4=R5=200kΩと設定すると、増幅器の増幅率は200kΩ/40kΩ=5倍となり、最大電流8A時の出力端子T7の振幅は0.4V×5=2.0Vとなる。
【0045】
また、図1に示すように一般的に制御回路および検出回路の回路グランドGNDは、電流検出用の電流検出用低抵抗50dの左側、スイッチング素子とは接続されていない側である。モータ電流が負である場合には、電流検出用の電流検出用低抵抗50dには図1の左側から右側に電流が流れる可能性がある。その場合に図3ICのブロック図の入力端子T1には負の電圧が入力される。本発明はICの負電圧がかかる可能性のある入力端子T1は負電圧に対する耐量を上げた構成としている。
【0046】
また、電流検出用の電流検出用低抵抗50dが焼損やはんだはずれなどでオープンとなった場合、図1の電流検出用低抵抗50dの右側、すなわちIGBT側にはインバータ回路の高電圧が印加される可能性がある。このとき、図3ICのブロック図の入力端子T1には過大な電圧が印加される可能性がある。本発明はICの過大電圧が印加される可能性がある端子T1は過大電圧が印加され、大電流が流れ込んだ場合に電流流入経路を遮断する機能を備え、樹脂パッケージの破裂、発火等に至らない構成としている。
【0047】
なお、上記各定数は一例であり、モータの電流値、制御回路への出力電圧等の条件により、値は変化するものである。また、ICの内部ブロック構成は一例であり、例えば入力端子T1、T2と差動増幅器への入力の極性や、差動増幅器の構成を別の構成としても良い。
【0048】
(実施の形態2)
図2は本発明のICを使用したモータ制御装置のブロック図、図4は本発明の実施の形態2を含んだICのブロック図であり、実施の形態2は図4の中の、入力端子T1、T2、T3、T4、T5、T6、抵抗R1、R2、R4、R5、R8、アンプ110、出力端子T7、T8、T9の部分である。
【0049】
以下、実施の形態1との違いを中心に説明する。実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0050】
図2で、3相モータ駆動用のインバータ回路はスイッチング素子31a1と31a2、31b1と31b2、31c1と31c2の直列に接続された2個1組を並列に3組、合計6個のスイッチング素子より構成されており、図2では例としてスイッチング素子にIGBTを使用している。2個1組のスイッチング素子の接続点、例えば31a1の下側(エミッタ側)と31a2の上側(コレクタ側)が接続されているが、その接続点より図示しないモータに接続されている。直列に接続された各下側スイッチング素子のエミッタ側には、個々に電流検出用の抵抗である電流検出用低抵抗50a、50b、50cが接続されており、各低抵抗の他端はインバータ電源の負側へと接続されている。各電流検出用の低抵抗の両端は電流検出用IC103に入力されている。すなわち、図2の電流検出用低抵抗50aのIGBT側は図4の入力端子T1に、電流検出用低抵抗50aの他端は入力端子T2に、図2の電流検出用低抵抗50bのIGBT側は図4の入力端子T3に、電流検出用低抵抗50bの他端は入力端子T4に、図2の電流検出用低抵抗50cのIGBT側は図4の入力端子T5に、電流検出用低抵抗50cの他端は入力端子T6に、それぞれ接続されている。電流検出用IC103は電流検出用低抵抗50a、50b、50cの両端の電圧を増幅し、アナログの信号iu、iv、iwとして出力する。この信号はマイクロコンピュータ等の制御回路104に入力され、A/D変換を行い、電流検出値としてモータの速度制御、トルク制御等に使用される。
【0051】
実施の形態1との違いは、実施の形態1が3相分の電流をまとめて検出していたのに対して、実施の形態2は各相独立して検出が可能である。このため、より高精度の制御が必要な場合に用いることができる。各定数の説明、耐負電圧、耐過電流等については実施の形態1と同様であるので省略する。
【0052】
(実施の形態3)
上記実施の形態1または実施の形態2において、差動増幅回路105の増幅率を調整あるいは選択可能とする機能を設け、増幅率の設定用端子を設けた構成とする。図3及び図4を用いて一例を説明する。図3及び図4において、端子T13、T14は増幅率設定端子であり、増幅率設定器113に入力される。図3、図4の例では、端子T13、T14は2本あるので、4種類の状態を設定することができる。増幅率設定器113は例えば端子T13、T14の状態により、抵抗R4、R5の値を変更する。今、実施の形態1で説明したように、抵抗R1、R2が40kΩであったとする。増幅率設定器113は端子T13、T14の状態によって、R4、R5を同時に100kΩ、200kΩ、400kΩ、800kΩと設定する。増幅率はそれぞれ2.5倍、5倍、10倍、20倍となる。
【0053】
これによって、制御するモータの電流値が小さい場合、例えば電流が最大で1A以下の場合には図1に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50d、図3に示す同50a、50b、50cの値を1Ω、電流増幅率を2.5倍とすることで電流は小さいがS/N比に優れた電流検出が可能である。また、電流が大きい場合には、電流検出用抵抗の損失が大きくなるので、抵抗値をなるべく下げたい。例えば電流検出値の最大値が20Aの場合、図1に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50d、図3に示す同50a、50b、50cの値を10mΩ、電流増幅率を20倍とすることで極力抵抗による損失を抑えた電流検出回路を構成することができる。
【0054】
なお、増幅率の設定を2端子を用い、4通りの設定として説明を行ったが、増幅率設定端子の数は2端子以外の数でも良い。例えば増幅率設定端子を1端子のみとし、差動増幅回路の増幅率を5倍、10倍といった2段階に設定することもできる。また、増幅率設定端子を3端子とし、5種類以上の差動増幅回路の増幅率の設定をすることもできる。また、増幅率をアナログ的に設定しても良い。例えば1端子で端子と回路GND間に抵抗を接続し、アナログ入力とすることで、増幅率設定器内部にカレントミラーを用い、各抵抗R4、R5をリニアに設定を行うこともできる。
【0055】
(実施の形態4)
上記実施の形態1から実施の形態3のいずれかにおいて、ICの電源電圧は例えば5V単一電源電圧とする。
【0056】
図3及び図4を用いて一例を説明する。図3、図4において、端子T15は+側電源入力端子、IC内部電源VCCは端子T15に接続されている。また、端子T16はグランド端子、IC内部グランドGNDに接続されている。実施の形態1から4で説明したように、本発明のICは入力端子に負電圧の入力が可能であり、ICの電源を+5Vの単一電源とすることができる。これにより、制御回路を構成するマイコンやロジック回路と電源を共通にすることができ、アナログ回路特有の専用電源が不要であり、電流検出回路、モータ制御回路の小型化をはかることができる。
【0057】
(実施の形態5)
上記実施の形態1から実施の形態4のいずれかにおいて、差動増幅回路の入力端子のワイヤーボンディングパッド近傍にICの電源電圧の正側との間にサージ保護素子を配置する。
【0058】
図5にその実施例を示す。端子Tは負電圧が印加される端子、IC内部電源VCCは外部より端子T15を経て供給される。IC内部グランドGNDは端子T16を経て外部の回路グランドと接続されている。サージ保護素子120は図示のように入力端子TとIC内部電源VCC間に接続されている。サージ保護素子の特性はツェナーダイオードの特性に類似している。サージ保護素子の耐圧は電源電圧より十分に高い値である。例えばICの電源電圧が5Vであるとき、サージ保護素子の耐圧は少なくとも7V程度以上とする必要がある。
【0059】
端子Tに正電圧のサージが印加された場合、サージ保護素子120はツェナーダイオードの順電圧特性を示し、ICの電源電圧にツェナーダイオードの順電圧を加えた値でサージをクランプする。IC電源電圧が+5Vであるとすると、正電圧側のサージは+5.7V程度でクランプされる。
【0060】
端子Tに負電圧のサージが印加された場合、サージ保護素子120はICの電源電圧からツェナーダイオードのツェナー電圧を引いた値でサージ電圧をクランプする。ICの電源電圧が+5V、サージ保護素子の耐圧が7Vであるとすると、負電圧側のサージは−2Vでクランプされる。
【0061】
これにより、差動増幅回路の入力端子に負電圧が印加された場合にもサージ保護素子を通じてリーク電流が流れることは無く、負電圧の印加を可能とすることにより、モータ電流が負になる場合にもICの破壊等なく、正確な電流を検出することができる。
【0062】
(実施の形態6)
上記実施の形態1から実施の形態4のいずれかにおいて、差動増幅回路の入力端子のワイヤーボンディングパッド近傍にICの内部グランドとの間にサージ保護素子2個を極性を逆とし、直列に接続し配置する。差動増幅回路の入力端子に負電圧が印加された場合にもサージ保護素子を通じてリーク電流が流れることは無く、負電圧の印加を可能とすることにより、モータ電流が負になる場合にもICの破壊等なく、正確な電流を検出することができる。
【0063】
図6にその実施例を示す。端子Tは負電圧が印加される端子、IC内部電源VCCは外部より端子T15を経て供給される。IC内部グランドGNDは端子T16を経て外部の回路グランドと接続されている。サージ保護素子121、122は図示のように逆極性に直列に入力端子TとIC内部電源VCC間に接続されている。サージ保護素子の特性はツェナーダイオードの特性に類似している。サージ保護素子の耐圧は、サージ保護素子121は2V程度以上、サージ保護素子122はICの電源電圧よりも十分に高い価が必要である。
【0064】
端子Tに正電圧のサージが印加された場合、サージ保護素子121はツェナーダイオードの順電圧特性を示し、サージ保護素子122はツェナーダイオードのツェナー電圧特性を示す。これらの電圧を加えた値でサージをクランプする。IC電源電圧が+5Vであり、サージ保護素子122の耐圧を7Vとすると、正電圧側のサージは+7.7V程度でクランプされる。
【0065】
端子Tに負電圧のサージが印加された場合、サージ保護素子121はツェナーダイオードのツェナー電圧特性を示し、サージ保護素子122はツェナーダイオードの順電圧特性を示す。サージ保護素子121の耐圧が2Vであるとすると、負電圧側のサージは−2.7Vでクランプされる。
【0066】
これにより、差動増幅回路の入力端子に負電圧が印加された場合にもサージ保護素子を通じてリーク電流が流れることは無く、負電圧の印加を可能とすることにより、モータ電流が負になる場合にもICの破壊等なく、正確な電流を検出することができる。
【0067】
(実施の形態7)
上記実施の形態1から実施の形態4のいずれかにおいて、差動増幅回路の入力端子のICピンを形成するリードフレームと同チップ上のボンディングパッド間に使用するワイヤーボンディングに極力細いものを使用する。
【0068】
図7はICの構造である。端子152、ベース基板153は、リードフレームを打ち抜き構成されている。一般的にベース基板153はICを構成する複数の端子152のいずれか1本と共通である。チップ154はベース基板153に銀ペースト等で接着されている。ワイヤーボンディング155はリードフレーム152とチップ154上のボンディングパッドを電気的に接続する。樹脂モールド151はICのチップ、ワイヤーの保護とリードフレームの固定を行っている。
【0069】
図1に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50d、図2に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50a、50b、50cが焼損やはんだはずれなどでオープンとなった場合、低抵抗のIGBT側にはインバータ回路の高電圧が印加される可能性がある。このとき、図3及び図4のICのブロック図の入力端子T1には過大な電圧が印加される可能性がある。このときに電流が流れる経路として、必ずワイヤーボンディング155を通り、実施の形態7、実施の形態8で示したサージ保護素子に電流が流れる。このワイヤーボンディングに極力細いものを使用する。
【0070】
これにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合に前記ワイヤーボンディング溶断させることでICの破裂、発火等不安全を防ぐことができる。
【0071】
(実施の形態8)
上記実施の形態1から実施の形態4のいずれかにおいて、差動増幅回路の入力端子のICピンを形成するリードフレームよりワイヤーボンディングを介して接続される同チップ上のボンディングパッドとサージ保護素子を含む他の回路との間のアルミ配線の部分に極力細い部分を設ける。
【0072】
図8はICのボンディングパッド付近の構造である。ICのチップ201の表面には、アルミ配線が施されている。ボンディングパッド203付近のアルミ配線202は一般的にボンディングパッド近傍に設置されるサージ保護素子204と太く直結されている。それぞれの信号はサージ保護素子を通り、例えばコンタクトホール205を通り、あるいは表層上のアルミ配線でIC内部へと配線されている。図8(a)は一般的に行われているボンディングパッド付近のアルミ配線の例である。
【0073】
本発明のボンディングパッド近傍のアルミ配線を図8(b)に示す。ボンディングパッド203からサージ保護素子204の間のアルミ配線に細い部分を設けている。それぞれの信号はサージ保護素子を通り、例えばコンタクトホール205を通り、あるいは表層上のアルミ配線でIC内部へと配線されている。
【0074】
図1に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50d、図2に示す電流検出用の電流検出用低抵抗50a、50b、50cが焼損やはんだはずれなどでオープンとなった場合、低抵抗のIGBT側にはインバータ回路の高電圧が印加される可能性がある。このとき、図3及び図4のICのブロック図の入力端子T1には過大な電圧が印加される可能性がある。このときに電流が流れる経路として、必ずボンディングパッド203を通り、実施の形態7、実施の形態8にも示したサージ保護素子204に電流が流れる。ボンディングパッドからサージ保護素子のアルミ配線に細い部分を作りこむ。
【0075】
これにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れた場合に前記アルミ配線の細くなった部分を溶断させることでICの破裂、発火等不安全を防ぐことができる。
【0076】
(実施の形態9)
上記実施の形態1から実施の形態8のいずれかに示した電流検出用ICと、入力端子に接続された電流検出用の低抵抗で構成される電流検出器である。
【0077】
図1及び図2にモータ制御装置のブロック図を示す。
【0078】
図1のモータ制御装置構成において、6個のIGBT 31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2よりインバータ回路を構成している。下側の3個のIGBT 31a2、31b2、31c2の−電源側端子であるエミッタ端子は接続されており、電流検出用低抵抗50dに接続されており、他端はコンデンサ108の−側へと接続されている。一般的に、コンデンサ108の両端、図1では左側には図示しない商用の交流電源の整流回路が接続されており、例えば単相交流100Vの倍電圧整流回路あるいは単相または三相交流200Vの全波整流回路が接続されている場合には、コンデンサ108の両端の電圧は約280Vの直流電圧が印加される。電流検出器106は前述の電流検出用の電流検出用低抵抗50dと電流検出用IC101より構成される。電流検出用低抵抗の両端は図3に示す電流検出用ICのブロック図中の端子T1、T2へと接続されている。端子T1、T2は電流検出用IC101内部にて、増幅回路105の入力である。ICの詳細説明は既に前述しているので省略する。
【0079】
次に、図2のモータ制御装置構成において説明する。6個のIGBT 31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2よりインバータ回路を構成している。下側の3個のIGBT 31a2、31b2、31c2の−電源側端子であるエミッタ端子にはそれぞれ別個に電流検出用低抵抗50a、50b、50cが接続されている。すなわち、IGBT31a2のエミッタ側には電流検出用低抵抗50aの一端が、IGBT31b2のエミッタ側には電流検出用低抵抗50bの一端が、IGBT31c2のエミッタ側には電流検出用低抵抗50cの一端が接続されており、それぞれの電流検出用低抵抗50a、50b、50cの他端はコンデンサ108の−側へと接続されている。一般的に、コンデンサ108の両端、図2では左側には図示しない商用の交流電源の整流回路が接続されており、例えば単相交流100Vの倍電圧整流回路あるいは単相または三相交流200Vの全波整流回路が接続されている場合には、コンデンサ108両端の電圧は約280Vの直流電圧が印加される。電流検出器107は前述の電流検出用の電流検出用低抵抗50a、50b、50cと電流検出用IC103より構成される。電流検出用低抵抗の両端は、電流検出用低抵抗50aの両端が図4に示す電流検出用IC103のブロック図中の端子T1、T2へ、電流検出用低抵抗50bの両端が図4に示す電流検出用IC103の端子T3、T4へ、電流検出用低抵抗50cの両端が図4に示す電流検出用IC103の端子T5、T6へとそれぞれ接続されている。それぞれの端子は電流検出用IC103内部にて、差動増幅回路105の入力である。ICの詳細説明は既に前述しているので省略する。
【0080】
(実施の形態10)
上記実施の形態1から実施の形態8のいずれかに示した電流検出用ICを備えた電流検出回路を使用したモータ制御装置である。
【0081】
図1及び図2にモータ制御装置のブロック図を示す。IC内部の構成、動作、電流検出の内容は既に説明したので省略する。
【0082】
図1の制御回路102は、例えば図示しないマイコンを中心に構成されており、電流検出信号idcはマイコンのA/D変換ポートに接続されている。マイコンはインバータを構成するスイッチング素子31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2のゲート信号を制御し、モータを駆動する。電流検出は、例えはスイッチング素子31a1、31b1、31c2がオン、他の3個がオフしている場合、電流検出用の電流検出用低抵抗50dとICを介して、スイッチング素子31c1と31c2と接続されているモータ巻線の電流を、モータ巻線からインバータの回路方向への電流を検出することができる。また、例えはスイッチング素子31a1、31b2、31c2がオン、他の3個がオフしている場合、電流検出用の電流検出用低抵抗50dとICを介して、スイッチング素子31a1と31a2と接続されているモータ巻線の電流を、インバータ回路からモータの巻線の方向への電流を検出することができる。
【0083】
制御回路102はこのようにして得たモータ巻線電流と、図示しない他の検出器の情報、例えばモータに付属した位置センサや速度センサ、電源電圧のセンサなどを用い、モータを制御する。
【0084】
このように図1のような電流検出用の抵抗を1箇所のみで行うと、コスト的には有利ではあるが、インバータ回路の動作と電流の向きによってどこを流れる電流を検出しているか制御回路が判断する必要がある。このような構成はファンモータの制御など、比較的簡単なモータ制御装置に多く使用されている。
【0085】
図2の制御回路104は、例えば図示しないマイコンを中心に構成されており、電流検出信号iu、iv、iwはマイコンのA/D変換ポートに接続されている。マイコンはインバータを構成するスイッチング素子31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2のゲート信号を制御し、モータを駆動する。電流検出は、例えはインバータ回路の下側のスイッチング素子31a2、31b2、31c2がオン、他の3個がオフしている場合、電流検出用の電流検出用低抵抗50a、50b、50cとICを介して、3相全てのモータ巻線の電流を、電流の方向に関わらず検出することができる。このように電流検出用抵抗を各相に挿入することで、電流検出を行ううえでの制約は少なくなるので、例えば誘導電動機やブラシレスモータなどのベクトル制御のように比較的高度な制御法を用いる機器に広く用いられている。他の動作は図1の制御回路と同様なので省略する。
【0086】
以上のように本発明の電流検出用ICを備えた電流検出回路を使用したモータ制御装置を構成することで、小型で安価なモータ制御装置を実現することができる。
【0087】
(実施の形態11)
上記実施の形態1から実施の形態8に示した電流検出用ICと、入力端子のいずれか一方に保護素子を介して接続し、他方直接接続はされた電流検出用の低抵抗と、で構成される電流検出器である。
【0088】
図12及び図13にモータ制御装置のブロック図を示す。
【0089】
図12のモータ制御装置において、6個のIGBT 31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2よりインバータ回路を構成している。下側の3個のIGBT 31a2、31b2、31c2の−電源側端子であるエミッタ端子は接続されており、電流検出用低抵抗50dに接続されており、他端はコンデンサ108の−側へと接続されている。一般的に、コンデンサ108の両端、図1では左側には図示しない商用の交流電源の整流回路が接続されており、例えば単相交流100Vの倍電圧整流回路あるいは単相または三相交流200Vの全波整流回路が接続されている場合には、コンデンサ108の両端の電圧は約280Vの直流電圧が印加される。電流検出器106は前述の電流検出用の低抵抗50dと電流検出用IC101と保護素子161dより構成される。電流検出用低抵抗50dの端子は、下側の3個のIGBT 31a2、31b2、31c2の−電源側端子であるエミッタ端子側と接続されている側が保護素子161dを介して、他端は直接、図3に示す電流検出用ICのブロック図中の端子T1、T2の端子へと接続されている。端子T1、T2は電流検出用IC101内部にて、差動増幅回路105の入力である。ICの詳細説明は既に前述しているので省略する。
【0090】
次に、図13のモータ制御装置構成において説明する。6個のIGBT 31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2よりインバータ回路を構成している。下側の3個のIGBT 31a2、31b2、31c2の−電源側端子であるエミッタ端子にはそれぞれ別個に電流検出用低抵抗50a、50b、50cが接続されている。すなわち、IGBT31a2のエミッタ側には低抵抗50aの一端が、IGBT31b2のエミッタ側には低抵抗50bの一端が、IGBT31c2のエミッタ側には低抵抗50cの一端が接続されており、それぞれの低抵抗50a、50b、50cの他端はコンデンサ108の−側へと接続されている。一般的に、コンデンサ108の両端、図2では左側には図示しない商用の交流電源の整流回路が接続されており、例えば単相交流100Vの倍電圧整流回路あるいは単相または三相交流200Vの全波整流回路が接続されている場合には、コンデンサ108両端の電圧は約280Vの直流電圧が印加される。電流検出器107は前述の電流検出用の低抵抗50a、50b、50cと電流検出用IC103と保護素子161a、161b、161cより構成される。電流検出用低抵抗の両端は、低抵抗50aのIGBT 31a2と接続されている側が保護素子161aを介して、他端が直接、図4に示す電流検出用IC103のブロック図中の端子T1、T2へ接続されている。低抵抗50bのIGBT31b2と接続されている側が保護素子161bを介して、他端が直接、図4に示す電流検出用IC103の端子T3、T4へ接続されている。低抵抗50cのIGBT31c2と接続されている側が保護素子161cを介して、他端が直接、図4に示す電流検出用IC103の端子T5、T6へとそれぞれ接続されている。それぞれの端子は電流検出用IC103内部にて、差動増幅回路105の入力である。ICの詳細説明は既に前述しているので省略する。
【0091】
図12のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50d、図13のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50a、50b、50cが焼損やはんだはずれなどでオープンとなった場合、低抵抗のIGBT側にはインバータ回路の高電圧が印加される可能性がある。このとき、図3及び図4のICのブロック図の入力端子T1には過大な電圧が印加される可能性がある。このときに電流が流れる経路として、図12では必ず保護素子161dを、また、図13では必ず保護素子161a、161b、161cを経由し、実施の形態7、実施の形態8で示したサージ保護素子に電流が流れる。この保護素子に電流を抑制するものを使用する。また、保護素子161a、161b、161c、161dのインピーダンスは電流検出用ICの内部の抵抗R1、R2に対して十分に小さい値である必要がある。
【0092】
これにより、例えば前記IC外部に接続された電流検出用の低抵抗がオープンとなった場合に、低抵抗のスイッチング素子側に接続された端子より大電流が流れることを防ぐことでICの破裂、発火等不安全を防ぐことができる。
【0093】
(実施の形態12)
上記実施の形態11に示した保護素子161a、161b、161c、161dとして電流を遮断するヒューズを使用する。
【0094】
図12のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50d、図13のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50a、50b、50cが正常な状態、すなわち低抵抗の抵抗値が正しい値であり、焼損、はんだはずれなどがない状態では保護素子161a、161b、161c、161dに流れる電流は微小である。使用するヒューズとしては小さい電流で遮断できるもので良く、例えば0.1A程度の電流ヒューズで十分である。
【0095】
他の詳細な説明は実施の形態11と同一であるので省略する。
【0096】
(実施の形態13)
上記実施の形態11に示した保護素子161a、161b、161c、161dとして抵抗を使用する。
【0097】
図12のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50d、図13のモータ制御装置に示す電流検出用の低抵抗50a、50b、50cが正常な状態、すなわち低抵抗の抵抗値が正しい値であり、焼損、はんだはずれなどがない状態では保護素子161a、161b、161c、161dに流れる電流は微小である。使用する抵抗としては、抵抗値が電流検出用ICの内部の抵抗R1、R2に対して十分に小さい値であり、また、電流検出用の低抵抗50a、50b、50cが焼損やはんだはずれなどでオープンとなった場合に低抵抗のIGBT側にはインバータ回路の高電圧が印加され、IC内部が絶縁破壊などにより電流経路ができたときに保護素子161a、161b、161c、161dに流れる電流に対して十分に溶断するような抵抗を選定するか、または流れる電流を電流検出用ICの破裂、発火等不安全を防ぐよう十分に電流を抑制できる抵抗値及び容量を選定する。
【0098】
他の詳細な説明は実施の形態11と同一であるので省略する。
【0099】
(実施の形態14)
上記実施の形態11から13に示した電流検出器を使用したモータ制御装置である。詳細な説明は実施の形態10から13と同一であるので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明にかかる電流検出用ICは、電流検出回路として、小型化、部品点数が少なく、実装面積が小さく、低コスト化を実現することが可能となる。また、本発明の、電流検出用ICを搭載したモータ制御装置は、装置の小型化、低コスト化が可能となるので、洗濯機、エアコン、冷蔵庫など広く一般のモータ使用機器の制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0101】
31a1、31a2、31b1、31b2、31c1、31c2 スイッチング素子
50a、50b、50c、50d 電流検出用低抵抗
101 電流検出用IC
102 制御回路
103 電流検出用IC
104 制御回路
105 差動増幅回路
106 電流検出器
107 電流検出器
108 コンデンサ
110、112 アンプ
113 増幅率設定器
120、121、122 サージ保護素子
151 樹脂モールド
152 リードフレーム
153 ベース基板
154 チップ
155 ワイヤーボンディング
161a、161b、161c、161d 保護素子
201 ICのチップ
202 アルミ配線
203 ボンディングパッド
204 サージ保護素子
205 コンタクトホール
T1、T2、T3、T4、T5、T6、T 入力端子
T7、T8、T9 出力端子
T13、T14 増幅率設定端子
T15 電源端子
T16 グランド端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動増幅回路と、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子と、前記差動増幅回路の出力端子を備え、前記差動増幅回路の入力端子は負電圧の入力が可能であり、前記差動増幅回路の入力端子は過大電圧入力時に過大電圧が入力された端子の回路を遮断する機能を有する、モータ電流検出用IC。
【請求項2】
差動増幅回路と、前記差動増幅回路の+、−一対の入力端子と、前記差動増幅回路の出力端子とを複数組備えた請求項1記載のモータ電流検出用IC。
【請求項3】
差動増幅回路の増幅率は、外部から調整可能な請求項1または2のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項4】
電源電圧が単電圧である、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項5】
差動増幅回路の+、−の入力端子に配置されるサージ保護素子は、電源電圧の正側との間に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項6】
差動増幅回路の+、−の入力端子に配置されるサージ保護素子は、電源電圧の負側との間に2個のサージ保護素子を極性を逆とし直列に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項7】
差動増幅回路の+、−の入力端子は、過大電圧入力時に入力端子のリードフレームとシリコンチップ間のワイヤーボンディングを溶断させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項8】
差動増幅回路の+、−の入力端子は、過大電圧入力時にシリコンチップ上のアルミ配線のボンディングパッド近傍を溶断させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ電流検出用IC。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項に記載のモータ電流検出用ICと、差動増幅回路の+、−の入力端子間に接続される抵抗より構成する、モータ電流検出器。
【請求項10】
請求項1から8いずれか1項に記載のモータ電流検出用ICを使用したモータ制御装置。
【請求項11】
請求項1から8いずれか1項に記載のモータ電流検出用ICと、差動増幅回路の+、−の入力端子間のいずれか一方に保護素子を介して接続された抵抗より構成する、モータ電流検出器。
【請求項12】
請求項11の保護素子は電流を遮断するヒューズである、モータ電流検出器。
【請求項13】
請求項11の保護素子は抵抗である、モータ電流検出器。
【請求項14】
請求項11から13いずれか1項に記載のモータ電流検出器を使用したモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−254561(P2011−254561A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113884(P2010−113884)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】