説明

モータ駆動装置

【課題】リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置において、リニア振動モータに印加する駆動電圧の振幅値を変化させることなく、リニア振動モータの出力を調整可能とする。
【解決手段】リニア振動モータの運転状態などに基づいて、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力を決定する指令出力決定部3と、上記リニア振動モータ100の駆動周波数を、上記指令出力決定部3により決定されたモータ出力に基づいて決定する駆動周波数決定部2とを備え、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ駆動装置に関し、特に、可動子及びこれを支持するバネ部材を有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からリニア振動モータを用いた機器には、携帯電話などの、機械的振動によって着信を伝える振動発生器や、気体もしくは液体を圧縮循環させる圧縮機あるいは往復式電気かみそりがあり、圧縮機や往復式電気かみそりでは、その駆動源に上記リニア振動モータが用いられている。
【0003】
リニア振動モータの代表的なものは、単相同期モータの構造、つまり永久磁石からなる可動子と、鉄心にコイルを巻回してなる固定子とを有し、上記コイルへの交流電圧の印加により可動子が往復運動するものである。
【0004】
このように可動子の往復運動により振動を発生させる場合、強い電磁力が必要であるが、リニア振動モータでは、可動子をバネ部材により支持して該可動子を含むバネ振動系を形成することにより、その駆動に必要なエネルギーを小さく抑えることができる。つまり、上記可動子をバネ部材により支持したリニア振動モータでは、可動子を含むバネ振動系をその固有の共振周波数で振動させることにより、リニア振動モータを小さいエネルギーで駆動可能である。
【0005】
また、このような可動子をバネ支持したリニア振動モータの出力を制御する方法には、リニア振動モータをその共振周波数で駆動しつつ、リニア振動モータに印加する電圧もしくは電流の振幅値を調整する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0006】
ところが、リニア振動モータでは、可動子のストローク長が一定の許容値以上に大きくなると、可動子とモータ筐体との衝突や支持バネの破損といった問題が生ずることから、可動子のストローク長が、リニア振動モータの構造により制限されることとなる。
【0007】
例えば、支持バネは、その伸びが可動子のストローク長の増大により一定値以上になると、塑性変形を起こして破壊してしまう。また、可動子は、そのストローク長が、モータ筐体の可動子振動方向の寸法程度に大きくなると、モータ筐体の内壁などに衝突して破壊してしまう。
【0008】
そこで、リニア振動モータを駆動する駆動装置において、リニア振動モータの可動子の位置を検知する位置センサなどの検出部を備え、可動子のストローク長が一定の許容値以上に大きくなると、リニア振動モータの出力を抑制し、つまりリニア振動モータへの印加電圧もしくは印加電流の振幅値を減少させ、これにより、可動子がモータ筐体等と衝突したり、支持バネが限界値以上に伸びたりして、リニア振動モータが破壊するのを防止するものが開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−193993号(第1図)
【特許文献2】
特開平11−324911号公報(第1図)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した従来のリニア振動モータの駆動装置(以下、モータ駆動装置ともいう。)は、リニア振動モータを、その可動子の往復運動の周波数を、可動子を含むバネ振動系の共振周波数に保持して駆動するため、リニア振動モータの出力の調整は、可動子のストローク長のみによって行われる。その結果、リニア振動モータの最大出力が、リニア振動モータの構造によって制限されてしまうという問題、さらに、リニア振動モータの最大出力が、モータ駆動装置に入力される電源電圧により制限されてしまうという問題がある。
【0011】
まず、リニア振動モータの構造によるモータ出力の制限について詳しく説明する。
リニア振動モータでは、可動子の最大ストローク長は、可動子を収容するリニア振動モータの筐体の、可動子振動方向の長さ、及び可動子を支持するバネの弾性限界に相当する長さのうちの短い方の長さまでしか、大きくすることができない。
【0012】
従って、リニア振動モータの最大出力を高めるには、可動子のストローク長を大きく確保できるよう、リニア振動モータの筐体の、可動子振動方向の寸法を長くし、さらに、可動子を支持するバネをその弾性限界長の長いものとするといった対策を講じるか、もしくは、可動子を支持するバネのバネ定数を大きくして、リニア振動モータの共振周波数を大きくするといった対策を講じるしか方法がない。
【0013】
このようなことから、従来のリニア振動モータでは、必要とされる最大出力を基準にして、機械的な構成が決定されており、このため、最大出力を高めると、寸法が大きくなるだけではなく、最も使用頻度の高い出力域でのモータ効率、つまりモータ入力に対するモータ出力の比率が低下する可能性があるという課題があった。
【0014】
例えば、リニア振動モータが空気調和機(以下、エアコンともいう。)の圧縮機に適用されている場合を例にあげて、具体的に説明すると、最も使用頻度の高い出力域は、急速暖房運転や急速冷房運転などが行われる、高いモータ出力を発生する高出力領域ではなく、モータ出力が、上記のような高出力領域でのモータ出力の10〜20パーセント程度である低出力領域である。このような低出力領域では、可動子のストローク幅が小さくなるため、モータ効率は低下する。また、圧縮機では、ピストンのストローク幅の減少により、トップクリアランスが広がって、仕事率が低下することとなる。
【0015】
次に、リニア振動モータの電源電圧によるモータ出力の制限について詳しく説明する。
上述した従来のモータ駆動装置では、リニア振動モータへの駆動電圧の断続的な印加により、可動子が所望のストローク長となるよう印加電圧の電圧値を調節している。具体的には、リニア振動モータに要求される出力が増加した場合、可動子のストローク長が増加するよう、リニア振動モータへの印加電圧の電圧値を上昇させている。
【0016】
但し、上記モータ駆動装置に一般的なインバータが用いられている場合、該モータ駆動装置は、入力される直流電圧の電圧レベルよりその振幅値が大きい交流電圧を出力することができない。言い換えると、リニア振動モータに印加する駆動電圧の振幅値を大きくして、可動子のストローク長を大きくしようとしても、モータ駆動装置は、振幅値が入力電圧の電圧レベル以下である交流電圧しかリニア振動モータに印加するとができない。この結果、リニア振動モータの最大出力が、モータ駆動装置に入力される直流電圧の電圧レベルにより制限されることとなる。
【0017】
この場合、リニア振動モータの最大出力を大きくするには、リニア振動モータの固定子を構成するコイルの巻き数を減らすしか方法がない。つまり、リニア振動モータの固定子を構成するコイルの巻き数を減らすことにより、リニア振動モータが発生する誘起電圧の大きさが変化して、駆動電圧と駆動電流のバランス、つまり駆動電流と駆動電圧の積である駆動電力が変更されることとなる。
【0018】
このようなことから、従来のリニア振動モータでは、要求される最大出力を基準にして、リニア振動モータの固定子を構成するコイルの巻き数が決定されることとなり、最も使用頻度の高い出力域でのモータ効率が低下する可能性があるという課題があった。
【0019】
例えば、リニア振動モータの最大出力が増大するよう、モータコイルの巻き数を減らした場合、最も使用頻度の高い出力域、つまりモータ出力が低い出力領域での電流量が増大することとなり、結果的に、モータでの銅損及び鉄損やインバータでの損失の増大によってモータ効率が低下することとなる。
【0020】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、リニア振動モータの駆動電圧の電圧レベルを一定に保持した状態でモータ出力を調整することができ、これにより、リニア振動モータの出力制御を容易に行うことができ、また、リニア振動モータの最大出力を、リニア振動モータやその電源の仕様変更を行うことなく大きくすることができるモータ駆動装置を得ることを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
この発明(請求項1)に係るモータ駆動装置は、往復運動可能に設けられた可動子と、該可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、上記リニア振動モータに駆動電圧として交流電圧を供給するモータドライバを備え、該モータドライバは、上記リニア振動モータのモータ出力及び可動子のストロークの少なくとも一方を、上記交流電圧の周波数を調整して制御する、ことを特徴とするものである。
【0022】
この発明(請求項2)は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記決定された目標出力に基づいて、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部とを備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力を制御する、ことを特徴とするものである。
【0023】
この発明(請求項3)は、請求項2記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部を備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記駆動周波数を決定する、ことを特徴とするものである。
【0024】
この発明(請求項4)は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記可動子の位置を検出する位置検出部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするものである。
【0025】
この発明(請求項5)は、請求項4記載のモータ駆動装置において、上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合、上記駆動周波数を、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超えない周波数に変更する、ことを特徴とするものである。
【0026】
この発明(請求項6)は、請求項4記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整する、ことを特徴とするものである。
【0027】
この発明(請求項7)は、請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記基準位置は、上記可動子を支持するバネ部材の弾性限界値に基づいて定められている、ことを特徴とするものである。
【0028】
この発明(請求項8)は、請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記基準位置は、上記可動子が、上記リニア振動モータを構成する部品、もしくは、上記リニア振動モータを内蔵する機器の部品と衝突する位置に基づいて定められている、ことを特徴とするものである。
【0029】
この発明(請求項9)は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が、予め定められた基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするものである。
【0030】
この発明(請求項10)は、請求項9記載のモータ駆動装置において、上記基準値は、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められており、上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超えない周波数に変更する、ことを特徴とするものである。
【0031】
この発明(請求項11)は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部と、上記リニア振動モータの駆動電圧の実際の電圧値を検出する駆動電圧検出部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出された実際の電圧値が、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められている基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された実際の電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするものである。
【0032】
この発明(請求項12)に係る圧縮機は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
【0033】
この発明(請求項13)に係る圧縮機は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
【0034】
この発明(請求項14)に係る圧縮機は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
【0035】
この発明(請求項15)に係る圧縮機は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
【0036】
この発明(請求項16)に係る携帯電話は、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、上記モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態1のモータ駆動装置101は、固定子及び可動子と、該可動子を含むバネ振動系が形成されるよう該可動子を支持する支持バネとを有するリニア振動モータ100を、要求されるモータ出力に応じた駆動周波数で駆動するものである。ここで、上記固定子は鉄心にコイルを巻回してなる電磁石から構成されており、上記可動子は永久磁石から構成されている。
【0038】
すなわち、このモータ駆動装置101は、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力を決定し、該決定された目標出力を示す出力指令信号Oopを出力する指令出力決定部3を有している。
【0039】
また、モータ駆動装置101は、該リニア振動モータ100の駆動周波数を上記出力指令信号Oopに基づいて決定し、決定した駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrを出力する駆動周波数決定部2と、該駆動周波数信号Ifrに基づいて所定の周波数を有する交流電圧Vdを駆動電圧としてリニア振動モータ100に印加するモータドライバ1とを有している。
【0040】
以下、上記モータ駆動装置101を構成するモータドライバ1、駆動周波数決定部2、及び指令出力決定部3について詳しく説明する。
モータドライバ1は、外部の電源10から一定の電圧レベルを有する直流電圧Vpを受け、駆動周波数決定部2からの駆動周波数信号Ifrに基づいて、該駆動周波数決定部2により決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdを発生し、該交流電圧Vdを駆動電圧としてリニア振動モータ100に印加するものである。なお、ここでは、モータドライバ1は、一定の振幅値を有する交流電圧Vdを出力するものであるが、このモータドライバ1は、出力する交流電圧Vdの振幅値を変更可能なものであってもよい。この場合、リニア振動モータ100の出力をさらに細かく制御することが可能となる。さらに、上記モータドライバ1は、リニア振動モータ100の、往復運動を行う可動子の振動中心を補正するための直流電圧を重畳した交流電圧を、上記リニア振動モータに印加するものでもよい。
【0041】
上記モータドライバ1は、具体的には、トランジスタを用いた電力増幅器、又はスイッチング素子を用いたインバータにより実現することができる。ここで、トランジスタを用いた電力増幅器は、一般にオーディオのパワーアンプなどで用いられる回路構成を用いて容易に実現可能である。しかも、この電力増幅器は、交流電圧をトランジスタ出力の滑らかな増減により発生するため、その出力電圧のノイズが小さいという特徴を有している。一方、スイッチング素子を用いたインバータは、スイッチング素子ではオン抵抗がゼロ、オフ抵抗が無限大であることから、スイッチング動作でのエネルギーロスが理想的にはゼロとなり、高効率でリニア振動モータ100を駆動できるという特徴を有している。
【0042】
指令出力決定部3は、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力を、リニア振動モータ100の運転状態、及び該リニア振動モータを駆動源として利用する機器の運転状態のうちの、少なくとも一方の運転状態に基づいて決定するものである。
【0043】
ここで、上記リニア振動モータ100の運転状態は、例えば、リニア振動モータに求められる能力によるものであり、該リニア振動モータの適用の形態により種々のものがある。例えば、リニア振動モータ100を、携帯電話の、振動により着信を知らせる振動発生器に適用した場合には、上記リニア振動モータに要求される能力は、着信をユーザに知らせる振動の強弱をリズミカルに変更するといったものである。
【0044】
また、リニア振動モータ100を駆動源として利用する機器の運転状態は、該機器の種類により種々のものがある。例えば、リニア振動モータ100を圧縮機に適用した場合、機器の運転状態は、圧縮される流体の圧力、温度といったものである。特にこの圧縮機がエアコンに搭載されたものである場合、上記機器の運転状態は、室内の温度や室外の温度である。また、上記圧縮機が冷蔵庫に搭載されたものである場合、上記機器の運転状態は庫内温度などである。さらに、リニア振動モータ100を髭剃り機に適用した場合は、上記機器の運転状態はひげの濃さということになる。このように機器の運転状態は、機器にかかる負荷の状態などである。
【0045】
駆動周波数決定部2は、上記出力指令信号Oopが示す指令出力、つまり、上記指令出力決定部3により決定された、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力に基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数を決定し、該決定した駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrを上記モータドライバ1に出力するものである。
【0046】
ここで、上記駆動周波数の具体的な決定方法には、上記出力指令信号Oopが示す指令出力の値と駆動周波数の値とを対応付けるデーブルや計算式を用いる方法が考えられる。また、上記指令出力の値と駆動周波数の値との具体例な対応関係には、例えば、駆動周波数の値が、これに対応付けられる指令出力の値が小さいものほど、共振周波数からより離れた周波数の値となっているものが挙げられる。このような対応関係は、リニア振動モータの駆動周波数が共振周波数と一致したとき、リニア振動モータで発生されるモータ出力が最大となり、リニア振動モータの駆動周波数が共振周波数から離れるにつれて、上記発生されるモータ出力が低下するという現象に基づくものである。なお、ここで共振周波数は、可動子を含むバネ振動系が共振状態となるリニア振動モータの駆動周波数である。
【0047】
次に動作について説明する。
本実施の形態1では、モータ駆動装置101は、リニア振動モータ100が所望のモータ出力を発生する駆動周波数を決定し、リニア振動モータ100に、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdを印加して、該リニア振動モータ100を駆動する。
【0048】
すなわち、上記モータ駆動装置101では、モータドライバ1から出力される交流電圧Vdがリニア振動モータ100に印加され、リニア振動モータの運転が開始されると、指令出力決定部3では、リニア振動モータ100の運転状態、あるいはリニア振動モータを駆動源として搭載した機器の運転状態に基づいて、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力が決定され、該決定されたモータ出力を示す出力指令信号Oopが駆動周波数決定部2に出力される。
【0049】
すると、駆動周波数決定部2では、上記指令出力決定部3からの出力指令信号Oopに基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1に出力される。
【0050】
モータドライバ1では、上記駆動周波数信号Ifrに基づいて、発生する交流電圧Vdの周波数が、上記駆動周波数決定部2により決定された駆動周波数と一致するよう調整され、該駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdが、モータドライバ1からリニア振動モータ100に出力される。
【0051】
ここで、リニア振動モータがモータドライバ1から供給されるパルス電圧により駆動されている場合、上記交流電流の調整は、発振器から出力されるパルス信号の周波数の変更により行われる。この発振器が、電圧制御により出力パルスの周波数が変化するVCO(voltage−controlled oscillator)である場合、モータ出力はVCOの制御電圧の調整により制御されることとなる。この出力制御は、モータ出力を発振器から出力されるパルス信号のデューティー比を専用のハードウエアなどにより制御する場合に比べると、簡単なものである。
【0052】
このように本実施の形態1のモータ駆動装置101では、リニア振動モータ100の運転状態などに基づいて、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力を決定する指令出力決定部3と、上記リニア振動モータ100の駆動周波数を、上記指令出力決定部3により決定されたモータ出力に基づいて決定する駆動周波数決定部2とを備え、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するので、リニア振動モータの出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数の調整により、その振幅レベルを一定に保持した状態で制御することができ、これにより、リニア振動モータの出力制御を容易に行うことができる。
【0053】
また、リニア振動モータの出力を、上記交流電圧の周波数により調整可能であるため、リニア振動モータの最大出力を、リニア振動モータやその電源の仕様変更を行うことなく大きくすることができ、リニア振動モータの最大出力がリニア振動モータの構造、あるいは外部直流電源の電圧レベルにより制約を受けることもない。
【0054】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態2のモータ駆動装置102は、固定子及び可動子と、該可動子を含むバネ振動系が形成されるよう該可動子を支持する支持バネとを有するリニア振動モータ100を、そのモータ出力と要求されるモータ出力との差分が小さくなるよう駆動周波数を調整しつつ駆動するものである。なお、この実施の形態2のリニア振動モータ100は、実施の形態1のものと同一である。
【0055】
すなわち、このモータ駆動装置102は、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力を決定し、決定された目標出力を示す出力指令信号Oopを出力する指令出力決定部3と、リニア振動モータ100が発生するモータ出力Ompを検出し、該検出したモータ出力を示す出力検出信号Dopを出力する出力検出部4とを有している。
【0056】
また、モータ駆動装置102は、上記出力指令信号Oop及び出力検出信号Dopに基づいて、該リニア振動モータ100の駆動周波数を決定し、決定した駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrを出力する駆動周波数決定部2aと、該駆動周波数信号Ifrに基づいて所定の周波数を有する交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するモータドライバ1とを有している。
【0057】
以下、上記モータ駆動装置102を構成するモータドライバ1、駆動周波数決定部2a、指令出力決定部3、及び出力検出部4について詳しく説明する。
ここで、モータドライバ1及び指令出力検出部3は、上記実施の形態1のモータ駆動装置101におけるものと同一のものである。
【0058】
そして、出力検出部4は、リニア振動モータ100で発生されるモータ出力Ompを検出し、該推定したモータ出力を示す出力検出信号Dopを出力するものである。該出力検出部4での具体的な検出方法としては、リニア振動モータ100の運転状態、又はリニア振動モータ100が組み込まれているシステムの運転状態のうちの、少なくとも一つの運転状態を検出し、該検出した運転状態に基づいて、リニア振動モータ100で発生されるモータ出力Ompを推測する方法がある。
【0059】
駆動周波数決定部2aは、上記出力指令信号Oopが示す、上記指令出力決定部3により決定されたモータ出力と、出力検出信号Dopが示す、上記出力検出部4により検出されたモータ出力との差がゼロとなるよう、リニア振動モータ100の駆動周波数を調整して決定するものである。
【0060】
具体的には、駆動周波数決定部2aは、上記指令出力と検出出力との出力比較処理を行い、この出力比較処理の結果、検出出力が指令出力より低ければ、検出出力が増加するよう上記駆動周波数を変化させ、逆に、検出出力が指令出力より高ければ、検出出力が減少するよう駆動周波数を変化させる周波数調整を行うものである。
【0061】
但し、検出出力が増大する駆動周波数の変化、及び検出出力が減少する駆動周波数の変化は、駆動周波数の増加方向及び減少方向のいずれかの方向の変化に一意に決められない。これは、リニア振動モータ100の運転状態により、駆動周波数を減少してもモータ出力が増大する場合や、駆動周波数を増大してもモータ出力が減少する場合があるためである。
【0062】
そこで、この実施の形態2では、上記駆動周波数決定部2aは、駆動周波数を変化させる際には、前回、駆動周波数を変化させたときにモータ出力が増加したかもしくは減少したかを、駆動周波数の変化前後に検出されたモータ出力に基づいて判定し、該判定結果に基づいて、検出されたモータ出力が所要のモータ出力に近づくよう、駆動周波数を増加方向あるいは減少方向のうちの適切な方向に変化させる。
【0063】
次に動作について説明する。
本実施の形態2では、モータ駆動装置102は、リニア振動モータ100のモータ出力を、要求されるモータ出力に一致するようフィードバック制御しつつ、上記リニア振動モータを駆動する。
【0064】
すなわち、このモータ駆動装置102では、モータドライバ1から出力される交流電圧Vdがリニア振動モータ100へ印加され、リニア振動モータの運転が開始されると、指令出力決定部3では、実施の形態1のモータ駆動装置101と同様、リニア振動モータ100の運転状態、あるいはリニア振動モータを駆動源として搭載した機器の運転状態に基づいて、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力が決定され、該決定されたモータ出力を示す出力指令信号Oopが駆動周波数決定部2aに出力される。
【0065】
また、出力検出部4では、リニア振動モータ100が発生するモータ出力Ompが検出され、該検出されたモータ出力を示す出力検出信号Dopが駆動周波数決定部2aに出力される。
【0066】
すると、駆動周波数決定部2aでは、上記指令出力決定部3からの出力指令信号Oop及び出力検出部4からの出力検出信号Dopに基づいて、上記検出出力が指令出力に一致するよう、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1に出力される。
【0067】
具体的には、駆動周波数決定部2aでは、上記指令出力と検出出力とが比較される。そして、該両出力の比較の結果、検出出力が指令出力より低ければ、検出出力が増加するよう上記駆動周波数を変化させ、逆に、検出出力が指令出力より高ければ、検出出力が減少するよう駆動周波数を変化させる周波数調整が行われる。
【0068】
そして、モータドライバ1では、実施の形態1と同様、上記駆動周波数信号Ifrに基づいて、発生する交流電圧Vdの周波数が、上記駆動周波数決定部2aにより決定された駆動周波数と一致するよう調整され、該駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdが、モータドライバ1からリニア振動モータ100に出力される。
【0069】
このように本実施の形態2のモータ駆動装置102では、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力を決定する指令出力決定部3と、リニア振動モータ100が発生するモータ出力Ompを検出する出力検出部4と、出力検出部4により検出されたモータ出力が、上記指令出力決定部3により決定されたモータ出力に一致するよう、該リニア振動モータ100の駆動周波数を決定する駆動周波数決定部2aとを備え、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するので、実施の形態1と同様、リニア振動モータの出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の振幅レベルを一定に保持した状態で調整することができ、また、リニア振動モータの最大出力を、リニア振動モータやその電源の仕様変更を行うことなく大きくすることができる。
【0070】
さらに、この実施の形態2では、リニア振動モータの発生するモータ出力を検出し、該検出されたモータ出力が指令出力に一致するよう、リニア振動モータ100の駆動周波数を調整するので、上記リニア振動モータに対するモータ出力の制御は、指令出力決定部3により決定された指令出力を目標とするフィードバック制御となり、リニア振動モータに対する安定かつ高精度な出力制御が可能となるという効果もある。
【0071】
(実施の形態3)
図3(a)は、本発明の実施の形態3によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態3のモータ駆動装置103は、固定子及び可動子と、該可動子を含むバネ振動系が形成されるよう該可動子を支持する支持バネとを有するリニア振動モータ100を、上記可動子の位置に基づいて決定される駆動周波数で駆動するものである。なお、この実施の形態3のリニア振動モータ100は、実施の形態1のものと同一である。
【0072】
すなわち、このモータ駆動装置103は、上記リニア振動モータ100の、往復運動を行う可動子の位置を検出し、該検出した可動子の位置を示す位置検出信号Dposiを出力する位置検出部5と、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoを出力する共振周波数決定部6と、該リニア振動モータ100の駆動周波数を、上記位置検出信号Dposi及び共振周波数信号Dresoに基づいて決定し、決定した駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrを出力する駆動周波数決定部2bと、該駆動周波数信号Ifrに基づいて所定の周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するモータドライバ1とから構成されている。
【0073】
以下、上記モータ駆動装置103を構成するモータドライバ1、位置検出部5、共振周波数決定部6、及び駆動周波数決定部2bについて詳しく説明する。
ここで、モータドライバ1は、実施の形態1のモータ駆動装置101におけるものと同一のものである。
【0074】
そして、位置検出部5は、往復運動する可動子の位置を検出するものである。可動子の位置を検出する具体的方法には、例えば、リニア振動モータ内に配置された位置センサを用いて、往復運動する可動子が位置センサに最も近づいた時の可動子の位置を検出する方法がある。ここで、上記位置センサは、例えば、可動子の振動方向に沿った直線上の所定位置に配置されている。
【0075】
また、可動子の位置検出の方法は、上記のように可動子が位置センサに最も近づいたときの可動子の位置を検出する方法に限らず、例えば、リニア振動モータ100が組み込まれているシステム内の特定の位置と可動子との距離を位置センサにより測定して、可動子の位置を検出する方法もある。さらに、位置センサを用いないで可動子の位置を検出する方法としては、可動子の質量、支持バネのバネ定数、リニア振動モータに印加する駆動電圧及び駆動電流に基づいて、可動子の位置を推定する方法がある。
【0076】
共振周波数決定部6は、ここでは、リニア振動モータの可動子の質量及びバネ定数から推測される、上記バネ振動系の1つの固有振動数である共振周波数を示す共振周波数信号Dresoを出力するものである。
【0077】
但し、上記共振周波数決定部6は、可動子の質量及びバネ定数から推測される1つの固有周波数を示す信号を出力するものに限らず、例えば、可動子の質量及びバネ定数だけでなく、リニア振動モータ100の負荷状態に基づいて、上記バネ振動系の共振周波数を決定し、該決定された共振周波数を示す信号を出力するものであってもよい。この場合、可動子の質量、バネ定数、及びリニア振動モータ100の負荷状態の組と共振周波数との対応を複数含むテーブルなどを利用して、運転状態に応じて共振周波数を決定する方法がある。ここで、可動子の質量とバネ定数は一定の値を有するものであるため、上記テーブルは、具体的には、リニア振動モータの複数の負荷状態を示すパラメータの値と、該個々の負荷状態での共振周波数の値とを対応付けるものとなる。また、リニア振動モータの負荷状態の変化に応じた共振周波数の変動が無視できる場合には、上記共振周波数決定部6は、共振周波数の1つの代表値を示す共振周波数信号を出力するものであってもよく、この場合は、負荷状態を示すパラメータの値と共振周波数の値を対応付けるテーブルは不要である。
【0078】
また、リニア振動モータ100の負荷状態によって大きく共振周波数が変化する場合には、以下のように、リニア振動モータに供給される交流電流の周波数を一定の条件を満たすよう調整して決定する共振周波数決定方法が用いられる。例えば、以下の2つの共振周波数決定方法が考えられる。
【0079】
まず、第1の共振周波数決定方法は、可動子の変位の位相とリニア振動モータ100に供給する交流電流の位相とが90°ずれるときの該供給電流の周波数が、リニア振動モータの共振周波数であることを利用する方法である。この方法は、可動子の変位の位相と上記供給電流の位相とが90°ずれるよう、該供給電流の周波数を調整し、該調整により得られた周波数を共振周波数として決定するものである。
【0080】
第2の共振周波数決定方法は、リニア振動モータ100に供給する交流電流(供給電流)の振幅値を一定とした状態で、該モータに供給する電力が最大となるときの供給電流の周波数が、リニア振動モータの共振周波数であることを利用する方法である。この方法は、該供給電流の振幅値を一定とした状態で、供給電力が最大となるよう供給電流の周波数を変化させて調整し、該調整により得られた周波数を共振周波数として決定するものである。
【0081】
駆動周波数決定部2bは、具体的には、位置検出部5により検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えない許容ストローク状態では、リニア振動モータ100の駆動周波数を、共振周波数決定部6により決定された共振周波数に設定し、一方、上記検出位置が、上記基準位置を超えるオーバーストローク状態では、上記リニア振動モータ100の駆動周波数を、共振周波数決定部6により決定された共振周波数より高い周波数に設定するものである。
【0082】
ここで、上記基準位置は、上記可動子を支持するバネ部材の弾性限界値に基づいて定められている。但し、上記基準位置は、バネ部材の弾性限界値に基づく位置に限らず、上記可動子が、上記リニア振動モータを構成する部品、もしくは、上記リニア振動モータを内蔵する機器の部品と衝突する可動子の限界位置に基づいて定めてもよい。実際は、可動子衝突の可能性が、バネ破壊の可能性より高いときは、上記基準位置は、上記限界位置に基づいて定められ、逆に上記バネ破壊の可能性の方が高い場合には、上記基準位置は、バネ部材の弾性限界値に基づいて定められる。
【0083】
次に動作について説明する。
本実施の形態3では、モータ駆動装置103は、リニア振動モータ100を、往復運動する可動子の位置に応じた駆動周波数で駆動する。
【0084】
すなわち、このモータ駆動装置103では、モータドライバ1から交流電圧Vdがリニア振動モータ100へ印加され、リニア振動モータの運転が開始されると、位置検出部5により、リニア振動モータ100の、往復運動を行う可動子の位置が検出され、該検出された可動子の位置を示す位置検出信号Dposiが該位置検出部5から駆動周波数決定部2bに出力される。
【0085】
また、共振周波数決定部6からは、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoが駆動周波数決定部2bに出力される。
【0086】
すると、駆動周波数決定部2bでは、上記位置検出部5からの位置検出信号Dposi及び共振周波数決定部6からの共振周波数信号Dresoに基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1に出力される。
【0087】
具体的には、駆動周波数決定部2bでは、位置検出部5により検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えない許容ストローク状態では、リニア振動モータ100の駆動周波数が、共振周波数決定部6により決定された共振周波数に設定される。一方、上記検出位置が上記基準位置を超えるオーバーストローク状態では、上記リニア振動モータ100の駆動周波数が、共振周波数決定部6により決定された共振周波数より高い周波数に設定される。
【0088】
そして、モータドライバ1では、実施の形態1と同様、上記駆動周波数信号Ifrに基づいて、発生する交流電圧Vdの周波数が、上記駆動周波数決定部2bにより決定された駆動周波数と一致するよう調整され、該駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdが、モータドライバ1からリニア振動モータ100に出力される。
【0089】
このように本実施の形態3のモータ駆動装置103では、リニア振動モータ100を、決定された駆動周波数と一致した周波数の交流電圧により駆動するモータドライバ1と、リニア振動モータ100の可動子の位置を検出する位置検出部5とを備え、該検出位置が基準位置を超えない許容ストローク状態では、上記駆動周波数をリニア振動モータの共振周波数に設定し、上記検出位置が上記基準位置を超えるオーバーストローク状態では、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に設定するので、リニア振動モータを共振周波数で駆動しても可動子のストローク長が許容範囲を超えない低出力領域では、リニア振動モータを高い効率でもって駆動することができる。また、リニア振動モータを共振周波数で駆動すると可動子のストローク長が許容範囲を超えるような高出力領域では、駆動周波数の変更により可動子のストローク長を許容範囲内に抑えることができ、これにより、可動子がモータ筐体と衝突して破損したり、可動子を支持する支持バネが限界以上に伸びて破壊したりするのを回避することができる。
【0090】
なお、上記実施の形態3では、上記駆動周波数決定部2bは、駆動周波数の決定を、検出された可動子の位置が、予め定められている基準位置を超えているか否かに応じて行うものとしたが、これは以下の方法を用いることもできる。
【0091】
<駆動周波数の決定方法の変形例1>
図3(b)は、実施の形態3の駆動周波数の決定方法において、2つの基準位置を用いた例を説明する図である。
この変形例1では、駆動周波数決定部2bは、図3(b)に示すように、上記駆動周波数Fxの決定に、可動子の限界位置Plitから近い順に設定された第1の基準位置Pb1及び第2の基準位置Pb2を用いる。
【0092】
そして、可動子のストロークが増加している状態(図3(b)中の矢印X1参照)では、該ストロークが、上記検出位置Pxが第1の基準位置Pb1を超える程度に増大した場合のみ、駆動周波数が、共振周波数より高い周波数Fhに設定される。つまり、上記検出位置Pxが第2の基準位置Pb2と第1の基準位置Pb1との間にある場合は、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoのまま維持される。一方、可動子のストロークが減少している状態(図3(b)中の矢印Y1参照)では、上記ストロークが、上記検出位置Pxが第2の基準位置Pb2に達しない程度に減少した場合のみ、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoに設定される。つまり、上記検出位置Pxが第1の基準位置Pb1と第2の基準位置Pb2の間にある場合は、駆動周波数Fxが、共振周波数Fresoより高い周波数Fhのまま維持される。
【0093】
このように2つの基準位置を用いて駆動周波数を決定する方法では、検出位置が基準位置付近で変化する場合でも、駆動周波数の決定を安定に行うことが可能となる。
【0094】
<駆動周波数の決定方法の変形例2>
図3(c)は、実施の形態3の駆動周波数の決定方法において、基準位置に代わる一定範囲を危険ゾーンとして用いる例を説明する図である。
この変形例2では、上記駆動周波数決定部2bは、検出された可動子の位置が、基準位置と限界位置との間に予め定められている一定の危険ゾーン内にあるとき、該可動子のストロークが小さくなるよう上記駆動周波数を調整する。
【0095】
ここで、上記危険ゾーンZ1の下限位置Prbは、上記実施の形態3の、限界位置に基づいて定められた基準位置と一致しており、上記危険ゾーンZ1の上限位置Pruは限界位置Plimから一定距離離れた位置となっている。
【0096】
駆動周波数決定部2bでは、可動子のストロークが大きくなって、上記検出位置Pxが上記危険ゾーンZ1に入るまでは、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoに保持されている。そして、上記検出位置Pxが上記危険ゾーンZ1に入ると、上記駆動周波数を、共振周波数から外れるよう増大させる周波数調整が開始される。上記検出位置Pxが危険ゾーンZ1内に位置する間は、検出位置Pxが危険ゾーンZ1の上限位置Pruに近づくほど、駆動周波数Fxが、該共振周波数Fresoからより離れた周波数に設定される。さらに、上記検出位置Pxが危険ゾーンZ1の上限位置Pruに達すると、駆動周波数Fxが、該共振周波数Fresoから最も離れた、最大の周波数Fmaxに設定される。なお、検出位置Pxが危険ゾーンZ1を超えて限界位置Plimに近づく状態では、駆動周波数Fxは、最大の周波数Fmaxに維持される。
【0097】
また、上記検出位置が限界位置Plimから遠ざかっていくときには、上記検出位置Pxが危険ゾーンZ1内に入っている状態では、設定される駆動周波数Fxが徐々に共振周波数Fresoに近づくこととなる。そして、上記検出位置Pxが危険ゾーンZ1の下限位置Prb以上に限界位置Plimから遠ざかると、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoに設定される。
【0098】
ここで、上記検出位置Pxが危険ゾーンZ1内に入っている状態での駆動周波数Fxの設定には、上記検出位置Pxと上記危険ゾーンZ1の下限位置Prbとの距離の大きさと、駆動周波数Fxとして用いられる周波数の値との対応を示すテーブルや関数などが用いられる。なお、該関数は、図3(c)に示すような線形関数に限らず、検出位置Pxと上記危険ゾーンZ1の下限位置Prbとの距離が大きいほど、駆動周波数の増加量が大きくなる二次,三次などの高次の関数でもよい。
【0099】
このように危険ゾーンを用いて駆動周波数を決定する方法では、検出位置Pxが上記下限位置Prbより限界位置Plimから遠い許容ストローク状態では、駆動周波数Fxを共振周波数Fresoとすることにより最高効率でリニア振動モータを駆動することができる。また、検出位置Pxが上記下限位置Prbを超えて限界位置Plimに近づいているオーバーストローク状態では、可動子がリニア振動モータ100の筐体内壁と衝突する、もしくは可動子の支持バネがその限界値以上に伸びて破壊するのを回避しつつ、駆動効率の低下を小さく抑えることができる。
【0100】
<駆動周波数の決定方法の変形例3>
この変形例3では、駆動周波数決定部2bは、単に、上記検出位置が上記基準位置を超えているオーバーストローク状態では、上記検出位置Pxと上記基準位置との距離が大きいほど、駆動周波数Fxを共振周波数Fresoに比べてより高い周波数に設定するようにしたものである。この場合も、駆動周波数の設定には、上記検出位置と上記基準位置との距離の大きさと、駆動周波数として用いられる周波数の値との対応を示すテーブルなどが用いられる。
【0101】
このように検出位置が基準位置を超えた程度に応じて駆動周波数を決定する方法では、可動子のオーバーストローク状態を、素早くしかも確実に許容ストローク状態に復帰させることができ、しかも駆動周波数決定部2bを比較的簡単な回路構成にすることができる。
【0102】
(実施の形態4)
図4(a)は、本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置を説明するためのブロックである。
【0103】
この実施の形態4のモータ駆動装置104は、固定子及び可動子と、該可動子を含むバネ振動系が形成されるよう該可動子を支持する支持バネとを有するリニア振動モータ100を、上記可動子の位置に基づいて決定される駆動周波数で駆動しつつ、該リニア振動モータへ駆動電圧として印加する交流電圧の振幅値を、モータ出力が、要求される出力と一致するよう調整するものである。なお、この実施の形態4のリニア振動モータ100は、実施の形態1のものと同一である。
【0104】
すなわち、このモータ駆動装置104は、上記リニア振動モータ100が発生するモータ出力を検出し、該検出されたモータ出力を示す出力検出信号Dopを出力する出力検出部4と、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力を決定し、該決定した目標出力を示す出力指令信号Oopを出力する指令出力決定部3と、出力検出信号Dop及び出力指令信号Oopに基づいて、リニア振動モータ100に駆動電圧として供給する交流電圧の振幅値を決定し、該決定した振幅値を示す電圧振幅値信号Odvを出力する駆動電圧決定部7とを有している。
【0105】
モータ駆動装置104は、リニア振動モータ100の、往復運動を行う可動子の位置を検出し、該検出した可動子の位置を示す位置検出信号Dposiを出力する位置検出部5と、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoを出力する共振周波数決定部6とを有している。
【0106】
モータ駆動装置104は、上記位置検出信号Dposiが示す可動子の位置、及び上記共振周波数信号Dresoが示すリニア振動モータの共振周波数に基づいて、上記リニア振動モータ100の駆動周波数を決定し、該決定した駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrを出力する駆動周波数決定部2cと、駆動周波数信号Ifrが示す駆動周波数と一致した周波数を有し、かつ電圧振幅値信号Odvが示す振幅値を有する交流電圧Vdをリニア振動モータ100に印加するモータドライバ1aとを有している。
【0107】
以下、上記モータ駆動装置104を構成するモータドライバ1a及び各部2c、3〜7について詳しく説明する。
上記指令出力検出部3は、実施の形態1のモータ駆動装置101のものと同一である。上記出力検出部4は、実施の形態2のモータ駆動装置102のものと同一である。また、上記位置検出部5及び共振周波数決定部6は、実施の形態3のモータ駆動装置103のものと同一である。
【0108】
そして、本実施の形態4のモータドライバ1aは、外部電源10から一定の電圧レベルを有する直流電圧Vpを受け、上記駆動周波数信号Ifr及び電圧振幅値信号Odvに基づいて、駆動周波数決定部2cにより決定された駆動周波数と一致した周波数を有し、かつ、駆動電圧決定部7により決定された振幅値を有する交流電圧Vdを、上記リニア振動モータ100に印加するものである。なお、上記リニア振動モータ100に印加する交流電圧Vdは、リニア振動モータ100の往復運動する可動子の振動中心位置を補正する直流電圧成分を含むものであってもよい。
また、上記モータドライバ1aは、具体的には、トランジスタを用いた電力増幅器、又はスイッチング素子を用いたインバータにより実現することができる。
【0109】
なお、実施の形態1で説明した通り、トランジスタを用いた電力増幅器は、その回路構成を容易に実現可能であり、しかもその出力電圧のノイズが小さいという特徴を有しており、また、スイッチング素子を用いたインバータは、高効率でリニア振動モータ100を駆動できるという特徴を有している。
【0110】
駆動電圧決定部7は、上記指令出力決定部3からの出力指令信号Oop及び出力検出部4からの出力検出信号Dopを受け、該出力指令信号Oopが示す指令出力の大きさと、上記出力検出信号Dopが示す検出出力の大きさとの大小関係に応じて、リニア振動モータ100の駆動電圧の振幅値、つまりモータドライバ1aがリニア振動モータ100に供給する交流電圧Vdの振幅値を決定するものである。
【0111】
ここでの具体的な振幅値の決定方法は、検出出力の値が、指令出力の値より小さければ、上記交流電圧Vdの振幅値をより大きな値に決定し、逆に、検出出力の値が、指令出力の値より大きければ、上記交流電圧Vdの振幅値をより小さい値に決定するというものである。
【0112】
なお、この実施の形態4では、駆動電圧決定部7は、リニア振動モータ100に駆動電圧として供給する交流電流の振幅値を決定するものとしているが、駆動電圧決定部7は、上記駆動電圧である交流電流Vdの実効値を決定するものであってもよく、この場合も、上記交流電流の振幅値を決定する場合と同様の効果が得られる。
駆動周波数決定部2cは、上記位置検出信号Dposiが示す可動子の位置に応じて、リニア振動モータ100の駆動周波数を決定するものである。
【0113】
つまり、上記駆動周波数決定部2cは、位置検出部5により検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えていない場合は、駆動周波数を、上記共振周波数信号Dresoが示す共振周波数に設定し、一方、位置検出部5により検出された可動子の位置が、上記基準位置を超えている場合は、駆動周波数を、上記共振周波数信号Dresoが示す共振周波数より高い周波数に設定するものである。
【0114】
ここで、上記基準位置は、実施の形態3と同様、上記可動子を支持するバネ部材の弾性限界値に基づいて定められている。但し、上記基準位置は、バネ部材の弾性限界値に基づく位置に限らず、上記可動子が、上記リニア振動モータを構成する部品、もしくは、上記リニア振動モータを内蔵する機器の部品と衝突する可動子の限界位置に基づいて定められていてもよい。
【0115】
次に動作について説明する。
本実施の形態4では、モータ駆動装置104は、リニア振動モータ100を駆動しつつ、リニア振動モータへ駆動電圧として印加する交流電圧の振幅値を、モータ出力が、要求される出力に一致するよう調整するとともに、リニア振動モータ100の駆動周波数を可動子の位置に基づいて調整する。
【0116】
すなわち、このモータ駆動装置104では、モータドライバ1aの出力交流電圧Vdがリニア振動モータ100に印加されて、リニア振動モータの運転が開始されると、位置検出部5により、リニア振動モータ100の、往復運動する可動子の位置Prmが検出され、該検出された可動子の位置Prmを示す位置検出信号Dposiが該位置検出部5から駆動周波数決定部2cに出力される。
【0117】
また、共振周波数決定部6からは、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoが駆動周波数決定部2cに出力される。
すると、駆動周波数決定部2cでは、上記位置検出部5からの位置検出信号Dposi及び共振周波数決定部6からの共振周波数信号Dresoに基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1aに出力される。
【0118】
具体的には、駆動周波数決定部2cでは、上記実施の形態3の駆動周波数決定部2bと同様、検出位置が予め定められた基準位置を超えていない許容ストローク状態では、リニア振動モータ100の駆動周波数が、共振周波数決定部6により決定された共振周波数に設定され、上記検出位置が上記基準位置を超えているオーバーストローク状態では、上記リニア振動モータ100の駆動周波数が、共振周波数決定部6により決定された共振周波数より高い周波数に設定される。
【0119】
また、出力検出部4では、上記リニア振動モータ100が発生するモータ出力Ompが検出され、該検出されたモータ出力を示す出力検出信号Dopが駆動電圧決定部7に出力される。指令出力決定部3では、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力が決定され、該決定された目標出力を示す出力指令信号Oopが駆動電圧決定部7に出力される。
【0120】
すると、駆動電圧決定部7では、出力検出信号Dop及び出力指令信号Oopに基づいて、リニア振動モータ100に供給される交流電圧Vdの振幅値が決定され、該決定された振幅値を示す電圧振幅値信号Odvが上記モータドライバ1aに供給される。ここで、上記振幅値を決定する際には、上記検出出力Dopが上記指令出力Oopより小さければ、上記交流電圧Vdの振幅値がより大きな値に変更され、逆に、検出出力Dopが上記指令出力Oopより大きければ、上記交流電圧Vdの振幅値がより小さい値に変更される。
【0121】
そして、モータドライバ1aでは、周波数指示信号Ifr及び電圧振幅値信号Odvに基づいて、リニア振動モータ100に印加する交流電圧Vdが、その周波数が上記駆動周波数決定部2cにより決定された駆動周波数と一致し、かつその振幅値が駆動電圧決定部7により決定された振幅値となるよう調整される。
【0122】
このように本実施の形態4のモータ駆動装置104では、可動子の位置を検出する位置検出部5と、リニア振動モータ100のモータ出力を検出する出力検出部4とを備え、リニア振動モータ100に印加する交流電圧の振幅値を、モータ出力が、要求される出力に一致するよう調整し、かつ上記リニア振動モータ100の駆動周波数を、検出された可動子の位置に基づいて決定するので、上記交流電圧の振幅値調整によりモータ出力のフィードバック制御が行われ、上記駆動周波数の調整により、可動子が限界位置に近づき過ぎるのが回避される。
【0123】
つまり、モータ出力は、そのフィードバック制御により常に、要求される出力に保持されることとなる。また、検出された可動子の位置が、基準位置まで達していない許容ストローク状態では、リニア振動モータの駆動周波数を共振周波数に設定して、リニア振動モータの高効率駆動を行い、可動子の検出位置が、上記基準位置を超えているオーバーストローク状態では、リニア振動モータの駆動周波数を、共振周波数より高い周波数に設定して、可動子のストロークを減少させることが可能となる。
【0124】
この結果、可動子のストロークをそれ以上大きくすると、可動子がリニア振動モータ100の筐体内壁と衝突する、もしくは可動子を支持するバネが限界伸び値以上に伸びて破壊する可能性がある状態でも、可動子とモータ筐体との衝突もしくは支持バネの破壊を回避しつつ、リニア振動モータの出力を増加させることが可能となる。
【0125】
言い換えると、本実施の形態4では、可動子のストローク長を許容される最大ストローク長に固定した状態で、駆動周波数の増大により、リニア振動モータ100のモータ出力を、要求される出力まで増大させることが可能である。これにより、リニア振動モータには、可動子のストローク長を可動子の位置が基準位置を超えないよう保持し、かつ要求されるモータ出力を発生する交流電圧を印加することにより、リニア振動モータを、要求されるモータ出力で、可動子とモータ筐体との衝突や支持バネの破壊を招くことなく駆動することができる。
【0126】
なお、上記実施の形態4では、上記駆動周波数決定部2cは、駆動周波数の決定を、検出された可動子の位置が、予め定められている基準位置を超えているか否かに応じて行うものとしたが、これは以下の方法を用いることもできる。
【0127】
<駆動周波数の決定方法の変形例1>
図4(b)は、実施の形態4の駆動周波数の決定方法において、図3(b)の例と同様、2つの基準位置を用いた例を説明する図である。
この変形例1では、上記駆動周波数決定部2cは、図4(b)に示すように、駆動周波数の決定に、実施の形態3の駆動周波数決定部2bと同様、可動子の限界位置Plimから近い順に設定された第1の基準位置Pb1及び第2の基準位置Pb2を用いる。そして、駆動周波数決定部2cは、上記ストロークが増加している状態では、検出された可動子の位置Pxを第1の基準位置Pb1と比較し、ストロークが減少している状態では、検出位置を第2の基準位置Pb2と比較して、決定する。
【0128】
このように2つの基準位置を用いて駆動周波数を決定する方法では、検出位置が基準位置付近で変化する場合でも、駆動周波数の決定を安定に行うことが可能となる。
【0129】
<駆動周波数の決定方法の変形例2>
また、上記駆動周波数決定部2cは、図3(c)の例と同様、検出された可動子の位置Pxが、予め定められている一定の危険ゾーンZ1(図3(c)参照)に入った場合、上記駆動周波数Fxを、検出位置Pxが限界位置Plimに近づくほど、共振周波数より大きい、より高い周波数に設定するものであってもよい。
【0130】
このように危険ゾーンを用いる駆動周波数を決定する方法では、低出力領域では駆動効率を最高とし、高出力領域では、可動子の衝突や支持バネの破損を回避しつつ、駆動効率をできるだけ高く保持することができる。
【0131】
<駆動電圧振幅値の決定方法の変形例>
上記実施の形態4では、モータ駆動装置104は、リニア振動モータ100に供給される駆動電圧Vdの振幅値を、検出されたモータ出力と要求されるモータ出力とに基づいて決定するものとしているが、リニア振動モータの駆動電圧Vdの振幅値は、検出されたモータ出力及び要求されるモータ出力だけでなく、検出された可動子の位置にも基づいて決定するようにしてもよい。
【0132】
図4(b)は、駆動電圧振幅値の決定方法の変形例を説明する図であり、リニア振動モータの4つの動作状態DS1〜DS4を示している。
この変形例では、駆動電圧決定部7は、検出された可動子の位置が上記基準位置を超えていない場合は、検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力に一致するよう、交流電圧Vdの振幅値を決定する。つまり、検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力より小さい状態DS1では、交流電圧Vdの振幅値を増大させ、検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力より大きい状態DS2では、交流電圧Vdの振幅値を減少させる。
【0133】
また、検出された可動子の位置が、上記基準位置を超えており、かつ検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力より小さい状態DS3では、駆動電圧決定部7は、検出された可動子の位置が一定の範囲内の位置となるよう、供給電圧Vdの振幅値を調節する。つまり、可動子のストローク長の増大により上記検出位置が上記一定範囲をはみ出しそうになれば、供給電圧Vdの振幅値を減少させ、逆に、可動子のストローク長の減少により上記検出位置が上記一定の範囲をはみ出しそうになれば、交流電圧Vdの振幅値を増加させる。
【0134】
さらに、検出された可動子の位置が上記基準位置を超えており、かつ検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力より大きい状態DS4では、駆動電圧決定部7は、検出されたモータ出力が、要求されるモータ出力に一致するよう、交流電圧Vdの振幅値を減少させる。
【0135】
このようにリニア振動モータ100への印加電圧Vdの振幅値を、検出されたモータ出力、要求されるモータ出力、及び検出された可動子の位置に基づいて決定する方法を用いることにより、オーバーストローク状態では、駆動電圧決定部7によるモータの出力制御及び可動子の位置制御が、駆動周波数制御部2cによるモータの出力制御及び可動子の位置制御と同様、上記検出位置に基づいて行われることとなり、駆動電圧決定部7による制御と駆動周波数制御部2cによる制御とを、該両制御の干渉を招くことなくスムーズかつ安定に行うことができる。
【0136】
(実施の形態5)
図5(a)は、本発明の実施の形態5によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態5のモータ駆動装置105は、実施の形態4のモータ駆動装置104の位置検出部5及び駆動周波数決定部2cに代えて、駆動電圧決定部7の出力である電圧振幅値信号Odvに基づいてリニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部2dを備えたものである。このモータ駆動装置105のその他の構成は、実施の形態4のモータ駆動装置104と同一である。
【0137】
すなわち、本実施の形態5のモータ駆動装置105の、モータドライバ1a、指令出力検出部3、出力検出部4、共振周波数決定部6、及び駆動周波数決定部7は、実施の形態4のモータ駆動装置104のものと同一である。
【0138】
そして、本実施の形態5の駆動周波数決定部2dは、駆動電圧決定部7からの電圧振幅値信号Odvが示す振幅値、言い換えると、モータ出力が要求される出力に一致するよう決定した駆動電圧の振幅値が、一定の基準値を超えているか否かに応じて、リニア振動モータ100の駆動周波数を決定するものである。
【0139】
つまり、駆動周波数決定部2dは、電圧振幅値信号Odvが示す振幅値が、定められた一定の基準値を超えていない場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数を、共振周波数決定部6からの共振周波数信号Dresoが示す共振周波数に設定し、一方、電圧振幅値信号Odvが示す振幅値が、定められた一定の基準値を超えている場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数を、共振周波数決定部6からの共振周波数信号Dresoが示す共振周波数より高い所定の周波数に設定するものである。具体的には、ここで、上記所定の周波数は、あらかじめ決められた周波数だけ上記共振周波数より高い周波数である。
【0140】
なお、本実施の形態5では、駆動周波数決定部2dは、駆動電圧決定部7からの電圧振幅値信号Odvが示す振幅値を、予め設定されている一定の基準値と比較するものとしているが、駆動周波数決定部2dは、駆動電圧決定部7からの電圧振幅値信号Odvが示す振幅値を、モータドライバ1aに入力される直流電源の電圧値、あるいは該直流電源の電圧値を用いた所定の計算により求められる電圧値と比較するものであってもよい。
【0141】
次に動作について説明する。
本実施の形態5では、モータ駆動装置105は、上記リニア振動モータ100に印加する交流電圧の振幅値を、モータ出力が、要求される出力に一致するよう調整しつつ、該リニア振動モータ100を、該調整された交流電圧の振幅値に応じた駆動周波数で駆動する。
【0142】
すなわち、このモータ駆動装置105では、モータドライバ1aの出力交流電圧Vdがリニア振動モータ100に印加され、リニア振動モータの運転が開始されると、出力検出部4では、上記リニア振動モータ100が発生するモータ出力が検出され、該検出されたモータ出力を示す出力検出信号Dopが駆動電圧決定部7に出力される。指令出力決定部3では、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力が決定され、該決定されたモータ出力を示す出力指令信号Oopが駆動電圧決定部7に出力される。
【0143】
すると、駆動電圧決定部7では、出力検出信号Dop及び出力指令信号Oopに基づいて、リニア振動モータ100に供給する交流電圧の振幅値が決定され、該決定された振幅値を示す電圧振幅値信号Odvが駆動周波数決定部2d及びモータドライバ1aに供給される。
【0144】
また、共振周波数決定部6からは、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoが駆動周波数決定部2dに出力される。
駆動周波数決定部2dでは、上記駆動電圧決定部7からの電圧振幅値信号Odv及び共振周波数決定部6からの共振周波数信号Dresoに基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1aに出力される。具体的には、駆動周波数決定部2dでは、電圧振幅値信号Odvが示す振幅値が、定められた一定の基準値を超えていない場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数がその共振周波数に決定され、一方、電圧振幅値信号Odvが示す振幅値が、定められた一定の基準値を超えている場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数がその共振周波数より高い所定周波数に決定される。
【0145】
そして、モータドライバ1aでは、周波数指示信号Ifr及び電圧振幅値信号Odvに基づいて、リニア振動モータ100に印加する交流電圧Vdが、その周波数が上記駆動周波数決定部2dにより決定された駆動周波数と一致し、かつその振幅値が駆動電圧決定部7により決定された振幅値となるよう調整される。
【0146】
次に、本実施の形態5のモータ駆動装置105の特徴について、理論的な根拠を示す数式及び図面を用いて説明する。
図6(a)はリニア振動モータの等価回路を示す図である。
図中、Lは、リニア振動モータを構成する巻線の等価インダクタンス[H]であり、Rは、上記巻線の等価抵抗[Ω]である。また、Vd(t)はリニア振動モータに印加される交流電圧の瞬時値[V]であり、Id(t)はリニア振動モータに供給される交流電流の瞬時値[A]である。αは、リニア振動モータの推力定数[N/A]、v(t)はリニア振動モータの可動子の速度の瞬時値[m/s]であり、α・v(t)は、リニア振動モータの駆動により生じる誘導起電圧Vindの瞬時値[V]である。
【0147】
ここで、リニア振動モータの推力定数αは、リニア振動モータに単位電流[A]を流したときに生じる力[N]を示している。また、推力定数αの単位は[N/A]により表しているが、この単位は、[Wb/s]、[V・s/m]と同等である。
【0148】
図6(a)に示す等価回路はキルヒホッフの法則から導出されるものである。この等価回路から、リニア振動モータの可動子の速度の瞬時値、駆動電流の瞬時値、駆動電圧の瞬時値の関係を示す式(1)が、以下の通り導かれる。
【数1】



式(1)で用いられている係数α[N/A]、R[Ω]、L[H]はモータ固有の定数であるため、時間的に変化する変数は、可動子の速度の瞬時値v(t)[m/s]を示すベクトルv、駆動電圧の瞬時値Vd(t)[V]を示すベクトルV、及び駆動電流の瞬時値Id(t)[A]を示すベクトルIである。
【0149】
図7(a)〜図7(d)は、式(1)における変数を示すベクトル図である。これらの図7R>7(a)〜図7(d)では、速度の瞬時値v(t)[m/s]、駆動電圧の瞬時値Vd(t)[V]、及び駆動電流の瞬時値Id(t)[A]の位相関係が、それぞれの値に対応する速度ベクトルv、電圧ベクトルV、及び電流ベクトルIを用いて示されている。
【0150】
また、図7(a)〜図7(d)では、駆動電流Id(t)の位相を基準に、上記等価回路の各回路要素にて生じる端子電圧がベクトルで示されている。なお、図中、ωは、リニア振動モータに供給する交流電流Id(t)の周波数、α・vは、誘起電圧Vind(=α×v(t))を示す電圧ベクトル、R・Iは等価抵抗の端子電圧R・Id(t)を示す電圧ベクトル、ω・L・Iは等価インダクタンスの端子電圧ω・L・Id(t)を示す電圧ベクトル、V0〜V3はリニア振動モータに印加する電圧(Vd(t))を示す電圧ベクトルである。また、φはリニア振動モータに供給する電圧Vd(t)と電流Id(t)の位相差であり、βはリニア振動モータに供給する電流Id(t)と、誘起電圧Vind(=α・v(t))との位相差である。
【0151】
リニア振動モータ100の力学的特性は、図6(b)に示す1自由度粘性減衰振動系でモデル化される。なお、1自由度粘性減衰振動系は、1自由度振動系、つまり質量Mが1方向(Y方向)に振動可能となるようバネSで基部Bに対して支持された振動系に、上記質量の振動を減衰させるダンパDを付加してなるものである。
【0152】
そして、リニア振動モータの駆動状態では、図7(a)〜図7(d)に示すように、誘起電圧Vind(=α・v(t))を示す電圧ベクトルα・vと、等価抵抗の端子電圧R・Id(t)を示す電圧ベクトルR・Iと、等価インダクタンスの端子電圧ω・L・Id(t)を示す電圧ベクトルω・L・Iとの和は、印加電圧Vdを示す電圧ベクトルVと等しくなる。
【0153】
また、リニア振動モータが共振状態にあるときは、リニア振動モータ100の可動子の速度v(t)と、可動子を動かす電磁力との位相が等しい。また、リニア振動モータでは、誘起電圧Vind(=α・v(t))は、可動子の速度v(t)の定数倍であり、さらに供給する電流Id(t)と可動子を動かす力とは比例関係にある。従って、リニア振動モータの共振状態であるとき(電圧ベクトルV=V0)、駆動電流Id(t)の位相と誘起電圧Vind(=α・v(t))の位相が等しくなる(図7(a)参照)。
【0154】
同様に、リニア振動モータに繰返し印加される加振力の周波数、つまり駆動電流Id(t)の周波数が共振周波数より低い場合(電圧ベクトルV=V1)は、リニア振動モータの可動子の速度v(t)の位相が、可動子を動かす電磁力の位相(駆動電流Id(t)の位相)より位相差βだけ遅れ(図7(b)参照)、逆に、上記加振力の周波数が共振周波数より高い場合(電圧ベクトルV=V2)は、リニア振動モータの可動子の速度v(t)の位相が、可動子を動かす電磁力の位相、つまり駆動電流Id(t)の位相より位相差βだけ進む(図7(c)参照)。
【0155】
そこで、図7(d)から分かるように、リニア振動モータ100に供給する電流Id(t)の周波数ωをリニア振動モータの共振周波数より高い適当な周波数に選ぶことにより、供給電流Id(t)の位相と供給電圧Vd(t)の位相とが等しくなる。このときの電圧ベクトルVはV3(|V3|<|V2|<|V0|<|V1|)となる。
【0156】
このように供給電流Id(t)の周波数ωを共振周波数より高い周波数とした場合(図7(d)参照)、リニア振動モータへの供給電流Id(t)の周波数ωが、リニア振動モータの共振周波数である場合(図7(a)参照)に比べて、リニア振動モータへの印加電圧V(=V3<V0)が小さくなる。
【0157】
従って、モータドライバ1aの出力電圧の限界により、リニア振動モータに印加する交流電圧Vdの振幅値を大きくすることができない場合、リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を共振周波数より高い妥当な周波数に設定することにより、要求される印加電圧の振幅値を、モータ出力を一定に保持した状態で下げることができ、これにより、リニア振動モータをより高い出力域で駆動することが可能となる。
【0158】
このように本実施の形態5のモータ駆動装置105では、リニア振動モータ100に要求されるモータ出力を決定する指令出力決定部3と、リニア振動モータ100が発生するモータ出力を検出する出力検出部4と、該検出されたモータ出力及び要求されるモータ出力に基づいて、リニア振動モータ100に印加する交流電圧の振幅値を決定する駆動電圧決定部7とを備え、リニア振動モータ100への印加電圧の振幅値を、モータ出力が、要求される出力に一致するよう決定するとともに、上記決定された印加電圧の振幅値が定められた一定値を超えるまでは、リニア振動モータの駆動周波数を共振周波数とし、上記交流電圧の要求される振幅値が一定値を超えたとき、リニア振動モータの駆動周波数を、共振周波数より高い周波数に設定するので、上記決定された印加電圧の振幅値が一定値を超えるまでは、リニア振動モータを最高の効率で駆動することができ、上記決定された印加電圧の振幅値が一定値を超えたときには、リニア振動モータの駆動周波数の調整により、モータ出力を一定に保持しつつ、供給電圧の振幅値を減少させることができる。この結果、電源電圧の制限によりリニア振動モータの共振周波数での駆動が不可能な高出力領域でも、リニア振動モータを駆動することができる。
【0159】
言い換えると、本実施の形態5のモータ駆動装置105では、リニア振動モータの駆動電圧の振幅を許容される最大振幅に保持し、しかもその駆動周波数をできるだけ共振周波数に近い周波数に設定することにより、駆動効率をできるだけ低下させることなく、共振周波数での駆動では発生不可能な高いモータ出力を発生することができる。
【0160】
なお、上記実施の形態5では、上記駆動周波数決定部2dは、駆動周波数の決定を、駆動電圧決定部7により決定された駆動電圧の振幅値が、一定の基準値を超えているか否かに応じて行うものとしたが、これは以下の方法を用いることもできる。
【0161】
<駆動周波数の決定方法の変形例1>
図5(b)は、実施の形態5の駆動周波数の決定方法において、2つの基準値を用いた例を説明する図である。
この変形例1では、駆動周波数決定部2dは、図5(b)に示すように、駆動周波数Fxの決定に、第1の基準値Ab1とこれより小さい第2の基準値Ab2を用いる。そして、駆動周波数決定部2dは、上記ストロークが増加している状態(図5(b)中の矢印X2参照)では、上記決定振幅値Axを第1の基準値Ab1と比較し、ストロークが減少している状態(図5(b)中の矢印Y2参照)では、決定振幅値Axを第2の基準値Ab2と比較して、上記駆動周波数Fxを決定する。なお、図5(b)中、Alimは、決定振幅値Axの最大値であり、具体的な駆動周波数Fxの決定方法は、図3(b)で示す、駆動周波数Fxを検出位置Pxに基づいて決定する方法と同じである。
【0162】
このように2つの基準値を用いて駆動周波数を決定する方法では、決定振幅値が基準値付近で変化する場合でも、駆動周波数の決定を安定に行うことが可能となる。
【0163】
<駆動周波数の決定方法の変形例2>
図5(c)は、上記実施の形態5の駆動周波数の決定方法において、基準値に代わる一定範囲を危険ゾーンとして用いた例を説明する図である。
この変形例2では、上記駆動周波数決定部2dは、図5(c)に示すように、上記駆動周波数Fxを、上記決定振幅値Axが、基準値Arbと限界値Alimとの間に予め定められている一定の危険ゾーンZ2内に入った場合、決定された振幅値Axに応じて上記駆動周波数Fxを変化させる。
【0164】
ここで、上記危険ゾーンZ2の下限値Arbは、上記実施の形態5で用いた一定の基準値と一致しており、上記危険ゾーンZ2の上限値Aruは限界値Alimから一定量だけ小さい値となっている。また、上記危険ゾーンZ2では、上記決定振幅値Axと駆動周波数Fxとの関係は、一次単調増加関数となっている。上記決定振幅値Axが上記危険ゾーンZ2の下限値Arbより小さいとき、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoに保持され、また、上記決定振幅値Axが危険ゾーンZ2の上限値Aruを超えると、駆動周波数Fxは、該共振周波数から最も離れた、最大の周波数Fmaxに設定される。
【0165】
なお、上記危険ゾーンZ2での駆動周波数Fxの設定には、上記のような一次単調増加関数に限らず、上記決定振幅値Axと上記危険ゾーンZ2の下限値Arbとの差分の大きさと、駆動周波数として用いられる周波数の値との対応を示すテーブルや他の関数などが用いられる。
【0166】
このように危険ゾーンを用いて駆動周波数を決定する方法では、決定振幅値Axが危険ゾーンZ2の下限値Arbより小さいときには、リニア振動モータを共振周波数で最も効率よく駆動することができ、また、決定振幅値Axが危険ゾーンZ2内にあるときには、可動子の衝突や可動子の支持バネの破損を回避しつつ、駆動効率の低下をできるだけ抑えることができる。
【0167】
(実施の形態6)
図8(a)は、本発明の実施の形態6によるモータ駆動装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態6のモータ駆動装置106は、実施の形態5のモータ駆動装置105の駆動周波数決定部2dに代えて、モータドライバ1aの出力交流電圧Vdを検出する供給電圧検出部8と、該検出されたモータドライバ1aの出力電圧に基づいて駆動周波数を決定する駆動周波数決定部2eとを備えたものである。この実施の形態6のモータ駆動装置106のその他の構成は、実施の形態5のモータ駆動装置105のものと同一である。
【0168】
すなわち、本実施の形態6のモータ駆動装置106の、モータドライバ1a、指令出力検出部3、出力検出部4、共振周波数決定部6、及び駆動周波数決定部7は、実施の形態5のモータ駆動装置105のものと同一である。
【0169】
そして、供給電圧検出部8は、モータドライバ1aがリニア振動モータ100に供給する交流電圧の電圧値を検出し、該検出した電圧値を示す電圧検出信号Ddvを出力するものである。ここでは、電圧検出信号Ddvは、モータドライバ1aの出力電圧の振幅値を示しており、この振幅値の具体的な検出方法には、抵抗分圧による検出方法がある。
【0170】
駆動周波数決定部2eは、供給電圧検出部8からの電圧検出信号Ddvが示す電圧値が、予め設定されている基準値を超えているか否かに応じて、リニア振動モータ100の駆動周波数を決定するものである。
【0171】
つまり、駆動周波数決定部2eは、上記電圧検出信号Ddvが示す電圧値が、定められた一定の基準値を超えていない場合は、上記リニア振動モータの駆動周波数を、共振周波数決定部6の出力信号Dresoが示す共振周波数に設定し、一方、上記検出された電圧値が、定められた一定の基準値を超えている場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数を、共振周波数決定部6の出力信号Dresoが示す共振周波数より高い周波数に決定するものである。
【0172】
なお、本実施の形態6では、駆動周波数決定部2eは、駆動電圧検出部8からの電圧検出信号Ddvが示す電圧値を、予め設定されている一定の基準値と比較するものとしているが、駆動周波数決定部2eは、駆動電圧検出部8からの電圧検出信号Ddvが示す電圧値を、モータドライバ1aに入力される直流電源の電圧値、あるいは該直流電源の電圧値を用いた所定の計算により求められる電圧値と比較するものであってもよい。
【0173】
次に動作について説明する。
本実施の形態6では、モータ駆動装置106は、リニア振動モータ100に印加する交流電圧の振幅値を、該モータ出力が、要求されるモータ出力に一致するよう調整しつつ、上記リニア振動モータ100を、その駆動電圧の検出レベルに応じた駆動周波数で駆動する。
【0174】
すなわち、このモータ駆動装置106では、モータドライバ1aの出力交流電圧Vdがリニア振動モータ100に印加され、リニア振動モータの運転が開始されると、出力検出部4では、上記リニア振動モータ100が発生するモータ出力Ompが検出され、該検出されたモータ出力を示す出力検出信号Dopが駆動電圧決定部7に出力される。指令出力決定部3では、上記リニア振動モータ100に要求されるモータ出力である目標出力が決定され、該決定された目標出力を示す出力指令信号Oopが駆動電圧決定部7に出力される。
【0175】
すると、駆動電圧決定部7では、出力検出信号Dop及び出力指令信号Oopに基づいて、リニア振動モータ100の駆動電圧の振幅値が決定され、該決定された振幅値を示す電圧振幅値信号Odvがモータドライバ1aに供給される。
【0176】
供給電圧検出部8では、上記モータドライバ1aの出力電圧、つまりリニア振動モータ100に供給される実際の交流電圧Vdの電圧値が検出され、検出された交流電圧の電圧値を示す電圧検出信号Ddvが上記駆動周波数決定部2eに出力される。
また、共振周波数決定部6からは、リニア振動モータ100の共振周波数を示す共振周波数信号Dresoが駆動周波数決定部2eに出力される。
【0177】
すると、駆動周波数決定部2eでは、上記共振周波数信号Dreso及び電圧検出出力Ddvに基づいて、リニア振動モータ100の駆動周波数が決定され、該決定された駆動周波数を示す駆動周波数信号Ifrが上記モータドライバ1aに出力される。
【0178】
具体的には、駆動周波数決定部2eでは、検出された印加電圧の電圧値が、定められた一定の基準値を超えていない場合は、上記リニア振動モータの駆動周波数が、上記共振周波数決定部の出力が示す共振周波数に決定され、一方、上記検出された印加電圧の電圧値が、定められた一定の基準値を超えている場合は、リニア振動モータ100の駆動周波数が、上記共振周波数決定部6の出力が示す共振周波数より高い周波数に決定される。
【0179】
そして、モータドライバ1aでは、電圧振幅値信号Odv及び周波数指示信号Ifrに基づいて、リニア振動モータに印加する交流電圧Vdが、その周波数が上記駆動周波数決定部2eにより決定された駆動周波数と一致し、かつその振幅値が駆動電圧決定部7により決定された振幅値となるよう調整される。
【0180】
このように本実施の形態6のモータ駆動装置106では、リニア振動モータ100のモータ出力Ompを検出する出力検出部4と、モータドライバ1aからリニア振動モータ100への印加電圧Vdの電圧値を検出する供給電圧検出部8とを備え、上記リニア振動モータ100に印加されるモータドライバの出力電圧の振幅値を、モータ出力が、要求されるモータ出力に一致するよう調整しつつ、リニア振動モータを、上記モータドライバの出力電圧の検出値に応じた駆動周波数で駆動するので、低出力領域では、最大効率でリニア振動モータを駆動し、高出力領域では、駆動電圧の最大振幅により決まる最大出力以上のモータ出力を発生することができる。
【0181】
つまり、ドライバの出力交流電圧の検出値が一定の基準値を超えるまでは、リニア振動モータのモータ出力と、リニア振動モータに要求されるモータ出力とに差がある場合でも、リニア振動モータの駆動周波数を共振周波数に設定した状態で、モータ出力を駆動電圧の振幅値により調整して、リニア振動モータを最大効率でもって駆動することができる。また、上記ドライバ出力電圧の検出レベルが一定レベルを超えたときには、駆動電圧の振幅値を増大せずに、リニア振動モータの駆動周波数を共振周波数より高くして、要求されるモータ出力を発生することができる。これにより、リニア振動モータを、電源の電圧レベルの制約を受けることなく、しかもモータ駆動効率の低下を極力抑えつつ、高出力領域で駆動することができ、また、可動子とモータ筐体との衝突や支持バネの破損を起こりにくくすることもできる。
【0182】
さらに、上記ドライバ出力電圧の検出レベルが一定レベルを超えている状態では、検出レベルの減少に応じて、駆動周波数を共振周波数に近い周波数に変更するようにすれば、要求されるモータ出力が、ドライバ出力電圧の検出レベルが一定レベル以下となる程度に減少した場合には、駆動周波数をスムーズに共振周波数に戻すことができる。
【0183】
なお、上記実施の形態6では、上記駆動周波数決定部2eは、駆動周波数の決定を、駆動電圧検出部8により検出された駆動電圧の電圧値(検出電圧値)が、一定の基準値を超えているか否かに応じて行うものとしたが、これは以下の方法を用いることもできる。
【0184】
<駆動周波数の決定方法の変形例1>
図8(b)は、実施の形態6の駆動周波数の決定方法において、2つの基準値を用いた例を説明する図である。
この変形例1では、駆動周波数決定部2eは、図8(b)に示すように、駆動周波数Fxの決定に、第1の基準値Vb1とこれより小さい第2の基準値Vb2を用いる。そして、駆動周波数決定部2eは、上記ストロークが増加している状態(図8(b)中の矢印X3参照)では、上記検出電圧値Vxを第1の基準値Vb1と比較し、ストロークが減少している状態(図8(b)中の矢印Y3参照)では、検出電圧値Vxを第2の基準値Vb2と比較して、上記駆動周波数を決定する。なお、図8(b)中、Vlimは、検出電圧値Vxの最大値であり、具体的な駆動周波数Fxの決定方法は、図3(b)で示す、駆動周波数Fxを検出位置Pxに基づいて決定する方法と同じである。
【0185】
このように2つの基準値を用いて駆動周波数を決定する方法では、上記検出電圧値が基準値付近で変化する場合でも、駆動周波数の決定を安定に行うことが可能となる。
【0186】
<駆動周波数の決定方法の変形例2>
図8(c)は、上記実施の形態6の駆動周波数の決定方法において、基準値に代わる一定範囲を危険ゾーンとして用いた例を説明する図である。
この変形例2では、駆動周波数決定部2eは、図8(c)に示すように、上記駆動周波数Fxを、上記検出電圧値Vxが、基準値Vrbと限界値Vlimとの間に予め定められている一定の危険ゾーンZ3内に入った場合、検出電圧値Vxの変化に応じて上記駆動周波数Fxを変化させる。
【0187】
ここで、上記危険ゾーンZ3の下限値Vrbは、上記実施の形態6で用いた一定の基準値と一致しており、上記危険ゾーンZ3の上限値Vruは限界値Vlimから一定量だけ小さい値となっている。また、上記危険ゾーンZ3では、上記検出電圧値Vxと駆動周波数Fxとの関係は、一次単調増加関数となっている。上記電圧検出値Vxが上記危険ゾーンZ3の下限値Vb2より小さいとき、駆動周波数Fxが共振周波数Fresoに保持され、また、上記電圧検出値Vxが危険ゾーンZ3の上限値Vruを超えると、駆動周波数Fxは、該共振周波数から最も離れた、最大の周波数Fmaxに設定される。
【0188】
なお、上記危険ゾーンZ3での駆動周波数の設定には、上記一次単調増加関数に限らず、上記電圧検出値Vxと上記危険ゾーンZ3の下限値Vrbとの差分と、駆動周波数として用いられる周波数の値との対応を示すテーブルやその他の関数などが用いられる。
【0189】
このように危険ゾーンを用いて駆動周波数を決定する方法では、電圧検出値Vxが危険ゾーンZ3の下限値Vrbより小さいときには、リニア振動モータを共振周波数で最も効率よく駆動することができ、また、電圧検出値Vxが危険ゾーンZ3内にあるときには、可動子の衝突や可動子の支持バネの破損を回避しつつ、駆動効率の低下をできるだけ抑えることができる。
【0190】
(実施の形態7)
図9は、本発明の実施の形態7による圧縮機駆動装置を説明する模式図である。
この実施の形態7の圧縮機駆動装置207は、空気やガスなどを圧縮する圧縮機40を駆動するものである。ここで、該圧縮機40の動力源は、リニア振動モータ46であり、これは実施の形態1のリニア振動モータ100と同じものである。また、上記圧縮機駆動装置207は、該リニア振動モータ46を駆動するモータ駆動装置であり、実施の形態1のモータ駆動装置101と同じ構成を有している。なお、以下、この実施の形態7の圧縮機40はリニア圧縮機と呼び、このリニア圧縮機40について簡単に説明する。
【0191】
このリニア圧縮機40は、所定の軸線に沿って並ぶシリンダ部41aと、モータ部41bとを有している。該シリンダ部41a内には、上記軸線方向に沿って摺動自在に支持されたピストン42が配置されている。シリンダ部41aとモータ部41bとにまたがって、その一端がピストン42の背面側に固定されたピストンロッド42aが配置され、ピストンロッド42aの他端側には、該ピストンロッド42aを軸線方向に付勢する支持ばね43が設けられている。
【0192】
また、上記ピストンロッド42aには、マグネット44が取り付けられており、上記モータ部41bの、マグネット44に対向する部分には、アウターヨーク45aとこれに埋設されたステータコイル45bとからなる電磁石45が取り付けられている。このリニア圧縮機40では、電磁石45と、上記ピストンロッド42aに取り付けられたマグネット44とによりリニア振動モータ46が構成されている。従って、このリニア圧縮機40では、この電磁石45とマグネット44との間で発生する電磁力及び上記ばね43の弾性力により、上記ピストン42がその軸線方向に沿って往復運動する。
【0193】
さらに、シリンダ部41a内には、シリンダ上部内面47a、ピストン圧縮面42b、及びシリンダ周壁面41bにより囲まれた密閉空間である圧縮室48が形成されている。シリンダ上部内面47aには、ガス側流通路から圧縮室48に低圧ガスLgを吸入するためのガス側吸入管40aの一端が開口している。また、上記シリンダ上部内面47aには、上記圧縮室48からガス側流通路へ高圧ガスHgを吐出するための吐出管40bの一端が開口している。上記吸入管40a及び吐出管40bには、ガスの逆流を防止する吸入弁49a及び吐出弁49bが取り付けられている。
【0194】
そして、この実施の形態7のモータ駆動装置207は、外部電源10の直流出力電圧Vpを交流駆動電圧Vdに変換して、この圧縮機40のリニア振動モータ46に供給するものである。つまり、モータ駆動装置207は、実施の形態1のものと同様、図1に示すように、モータドライバ1,駆動周波数決定部2,及び指令出力決定部3を有している。このモータ駆動装置207は、リニア振動モータ46に要求されるモータ出力を、リニア振動モータ46に印加する交流駆動電圧Vdの周波数を調整して制御する。
【0195】
このような構成のリニア圧縮機40では、モータ駆動装置207からリニア振動モータ46への駆動電圧の断続的な印加により、ピストン42がその軸線方向に往復動し、圧縮室48への低圧ガスLgの吸入、圧縮室48でのガスの圧縮、及び圧縮された高圧ガスHgの圧縮室48からの排出が繰り返し行われる。
【0196】
そして、リニア圧縮機40の動作状態では、リニア振動モータ46の運転状態に基づいてリニア振動モータ46に要求されるモータ出力が決定され、該決定されたモータ出力に基づいてリニア振動モータ46の駆動周波数が決定され、さらに、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdがリニア振動モータ46に印加される。
【0197】
このように本実施の形態7のリニア圧縮機40では、その動力源であるリニア振動モータ46のモータ出力を、リニア振動モータ46に印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、リニア圧縮機40の出力を、そのリニア振動モータに印加する駆動電圧のレベルを変えずに制御でき、その出力制御が簡単になる。また、リニア圧縮機40の出力を駆動周波数により制御するので、回転型モータを駆動源とする圧縮機と同様、該リニア圧縮機は、その構造上の制約を受けることなく最大能力で運転可能となり、定格能力での駆動効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、小型でかつ高効率なリニア圧縮機を実現できる。
【0198】
(実施の形態8)
図10は本発明の実施の形態8による空気調和機を説明するブロック図である。
この実施の形態8の空気調和機208は、室内機55及び室外機56を有し、冷暖房を行う空気調和機である。この空気調和機208は、冷媒を室内機55と室外機56の間で循環させるリニア圧縮機50aと、該リニア圧縮機50aを駆動する圧縮機駆動装置50bとを有している。ここで、上記圧縮機50aは、上記実施の形態4の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置50bは、外部電源10の直流出力電圧Vpを交流駆動電圧Vdに変換して、該リニア圧縮機50aのリニア振動モータに印加するモータ駆動部で、実施の形態4のモータ駆動装置207と同一の構成を有している。
【0199】
以下詳述すると、実施の形態8の空気調和機208は、冷媒循環経路を形成するリニア圧縮機50a,四方弁54,絞り装置(膨張弁)53,室内側熱交換器51及び室外側熱交換器52を有するとともに、該リニア圧縮機50aの駆動源であるリニア振動モータを駆動するモータ駆動部50bを有している。
【0200】
ここで、室内側熱交換器51は上記室内機55を構成しており、絞り装置53,室外側熱交換器52,リニア圧縮機50a,四方弁54及びモータ駆動部50bは上記室外機52を構成している。
【0201】
上記室内側熱交換器51は、熱交換の能力を上げるための送風機51aと、該熱交換器51の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ51bとを有している。上記室外側熱交換器52は、熱交換の能力を上げるための送風機52aと、該熱交換器52の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ52bとを有している。
【0202】
そして、この実施の形態8では、上記室内側熱交換器51と室外側熱交換器52との間の冷媒経路には、リニア圧縮機50a及び四方弁54が配置されている。つまりこの空気調和機208は、冷媒が矢印Aの方向に流れ、室外側熱交換器52を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、該リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室内側熱交換器51へ供給される状態と、冷媒が矢印Bの方向に流れ、室内側熱交換器51を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室外側熱交換器52へ供給される状態とが、上記四方弁54により切り替えられるものである。
【0203】
また、上記絞り装置53は、循環する冷媒の流量を絞る絞り作用と、冷媒の流量を自動調整する弁の作用とをあわせ持つものである。つまり、絞り装置53は、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器から蒸発器へ送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、蒸発器に必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
【0204】
なお、上記室内側熱交換器51は暖房運転では凝縮器として、冷房運転では蒸発器として動作するものであり、上記室外側熱交換器52は、暖房運転では蒸発器として、冷房運転では凝縮器として動作するものである。凝縮器では、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスは、送り込まれる空気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。これは、冷媒が大気中に熱を放熱して液化することと等しい。また、蒸発器には絞り装置53で低温低圧となった液冷媒が流れ込む。この状態で蒸発器に部屋の空気が送り込まれると、液冷媒は空気から大量の熱を奪って蒸発し、低温低圧のガス冷媒に変化する。蒸発器にて大量の熱を奪われた空気は空調機の吹きだし口から冷風となって放出される。
【0205】
そして、この空気調和機208では、モータ駆動部50bは、空気調和機の運転状態、つまり空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいて、リニア圧縮機50aのリニア振動モータの出力を制御する。
【0206】
次に動作について説明する。
この実施の形態8の空気調和機208では、モータ駆動部50bからリニア圧縮機50aに駆動電圧Vdが印加されると、冷媒循環経路内で冷媒が循環し、室内機55の熱交換器51及び室外機56の熱交換器52にて熱交換が行われる。つまり、上記空気調和機208では、冷媒の循環閉路に封入された冷媒をリニア圧縮機50aにより循環させることにより、冷媒の循環閉路内に周知のヒートポンプサイクルが形成される。これにより、室内の暖房あるいは冷房が行われる。
【0207】
例えば、空気調和機208の暖房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Aで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は凝縮器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により熱を放出する。これにより室内が暖められる。
【0208】
逆に、空気調和機208の冷房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Bで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は蒸発器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により周辺空気の熱を吸収する。これにより室内が冷やされる。
【0209】
ここで、空気調和機208では、モータ駆動部50bにより、空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいて、リニア圧縮機50aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、空気調和機208では、快適な冷暖房が行われる。
【0210】
このように本実施の形態8の空気調和機208では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)50aを用いているので、回転型モータを動力源とする圧縮機を用いた空気調和機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の、高圧冷媒と低圧冷媒とをシールするシール性が高まることとなり、圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0211】
さらに、本実施の形態8のリニア振動モータを用いた圧縮機50aでは、摩擦損が低減されることから、回転型モータを用いた圧縮機で必要不可欠であった潤滑用オイルの使用量を大幅に低減することができる。これにより、リサイクル処理などが必要なる廃油の発生量を少なく抑えることができるだけでなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから圧縮機に充填する冷媒量を削減することができ、これにより地球環境の保全にも貢献することができる。
【0212】
また、本実施の形態8の空気調和機208では、圧縮機のリニア振動モータのモータ出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、リニア圧縮機50aの出力を、そのリニア振動モータに印加する駆動電圧のレベルを変えずに制御することができ、空気調和機の能力制御が簡単になる。また、リニア圧縮機50aの出力を駆動周波数により制御するので、上記実施の形態7と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、小型でかつ効率のよいリニア圧縮機を、さらには小型で効率のよい空気調和機を実現できる。
【0213】
(実施の形態9)
図11は本発明の実施の形態9による冷蔵庫を説明するブロック図である。
この実施の形態9の冷蔵庫209は、リニア圧縮機60a,圧縮機駆動装置60b,凝縮器61,冷蔵室蒸発器62,及び絞り装置63から構成されている。
【0214】
ここで、リニア圧縮機60a,凝縮器61,絞り装置63,及び冷蔵室蒸発器62は、冷媒循環経路を形成するものであり、圧縮機駆動装置60bは、上記リニア圧縮機60aの駆動源であるリニア振動モータを駆動するモータ駆動部である。なお、上記リニア圧縮機60a及びモータ駆動部60bはそれぞれ、上記実施の形態7のリニア圧縮機40及びモータ駆動装置207と同一のものである。
【0215】
絞り装置63は、上記実施の形態8の空気調和機208の絞り装置53と同様、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器61から送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、冷蔵室蒸発器62に、必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
【0216】
凝縮器61は、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。該凝縮器61に送り込まれた冷媒ガスは、外気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。
【0217】
冷蔵室蒸発器62は、低温の冷媒液を蒸発させて冷蔵庫内の冷却を行うものである。この冷蔵室蒸発器62は、熱交換の効率を上げるための送風機62aと、庫内の温度を検出する温度センサ62bとを有している。
【0218】
そして、この冷蔵庫209では、モータ駆動部60bは、冷蔵庫の運転状態、つまり冷蔵庫に対して設定された目標温度、及び冷蔵庫内の温度に基づいて、リニア圧縮機60aのリニア振動モータの出力を制御する。
【0219】
次に動作について説明する。
この実施の形態9の冷蔵庫209では、モータ駆動部60bからリニア圧縮機60aのリニア振動モータに駆動電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機60aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Cの方向に循環し、凝縮器61及び冷蔵室蒸発器62にて熱交換が行われる。これにより、冷蔵庫内が冷却される。
【0220】
つまり、凝縮器61で液状となった冷媒は、絞り装置63にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、冷蔵室蒸発器62へ低温の液冷媒が送り込まれると、冷蔵室蒸発器62では、低温の冷媒液が蒸発して、冷蔵庫内の冷却が行われる。このとき、冷蔵室蒸発器62には、送風機62aにより強制的に冷蔵室内の空気が送り込まれており、冷蔵室蒸発器62では、効率よく熱交換が行われる。
【0221】
また、この実施の形態9の冷蔵庫209では、モータ駆動部60bにより、該冷蔵庫209に対して設定された目標温度及び冷蔵庫内の室温に基づいて、リニア圧縮機60aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、冷蔵庫209では、冷蔵庫内の温度が目標温度に維持される。
【0222】
このように本実施の形態9の冷蔵庫209では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機60aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0223】
さらに、本実施の形態9の冷蔵庫209では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0224】
また、本実施の形態9の冷蔵庫209では、圧縮機のリニア振動モータのモータ出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、実施の形態8と同様、リニア圧縮機60aの出力をその駆動電圧のレベルを変えずに制御することができ、冷蔵庫の能力制御が簡単となる。また、リニア圧縮機60aの出力を駆動周波数の調整により制御するので、実施の形態7と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、小型でかつ高効率のリニア圧縮機を、さらには小型で高効率の冷蔵庫を実現できる。
【0225】
(実施の形態10)
図12は本発明の実施の形態10による極低温冷凍機を説明するブロック図である。
この実施の形態10の極低温冷凍機210は、冷凍室(図示せず)を有し、該冷凍室内部を極低温状態(−50°C以下)となるよう冷却するものである。この極低温冷凍機210を用いて冷却する冷却対象物には、超電導素子として用いる抵抗,コイル,磁石などの電気磁気回路素子、赤外線センサ用の低温参照部などの電子部品、血液や内臓といった医療用のもの、さらに、冷凍マグロなど冷凍食品がある。
【0226】
電子部品を極低温状態にするのは、動作効率アップ,あるいは熱雑音の除去による感度アップのためであり、食料品などでは、生鮮食品を輸送したり、鮮度維持や乾燥を行ったりするためである。
【0227】
また、冷凍温度は用途により異なるが、−50度以下、特に、超伝導の用途などでは0〜100K(ケルビン)の広い範囲にわたっている。例えば、この極低温冷凍機の冷却温度は、高温超電導の用途では、50から100K程度に、通常の超電導の用途では、0〜50K程度の極低温状態に設定される。また、食品などの生鮮維持に用いられる場合は、この極低温冷凍装置の冷却温度は−50°C弱に設定される。
【0228】
以下、具体的に説明する。
この実施の形態10の極低温冷凍機210は、リニア圧縮機70a,圧縮機駆動装置70b,放熱器71,蓄冷器72,及び絞り装置73から構成されている。
ここで、リニア圧縮機70a,放熱器71,絞り装置73,及び蓄冷器72は、冷媒循環経路を形成する。圧縮機駆動装置70bは、上記リニア圧縮機70aの駆動源であるリニア振動モータを駆動制御するモータ駆動部である。なお、上記リニア圧縮機70a及びモータ駆動部70bはそれぞれ、上記実施の形態7のリニア圧縮機40及びモータ駆動装置207と同一のものである。
【0229】
絞り装置73は、上記実施の形態8の絞り装置53と同様、放熱器71から蓄冷器72へ送り出された液冷媒を絞り膨張させる装置である。
放熱器71は、上記実施の形態9の冷蔵庫209の凝縮器61と同様、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。
蓄冷器72は、上記実施の形態9の冷蔵室蒸発器62と同様、低温の冷媒液を蒸発させて冷凍室内の冷却を行い、冷却対象物を極低温状態とするものであり、冷却対象物の温度を検出する温度センサ72bを備えている。なお、蓄冷器72は、図12に示すように、熱交換の効率を上げるための送風機72aを有するものであってもよい。
【0230】
そして、この極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bは、極低温冷凍機の運転状態、つまり極低温冷凍機に対して設定された目標温度、及び冷凍対象物の温度に基づいて、リニア圧縮機70aのリニア振動モータの出力を制御する。
【0231】
この実施の形態10の極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bからリニア圧縮機70aのリニア振動モータに交流電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機70aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Dの方向に循環し、放熱器71及び蓄冷器72にて熱交換が行われる。これにより、冷凍室内の冷却が行われ、その内部の冷却対象物が冷却される。
【0232】
つまり、放熱器71で液状となった冷媒は、絞り装置73にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、蓄冷器72へ低温の液冷媒が送り込まれると、蓄冷器72では、低温の冷媒液が蒸発して、冷凍室の冷却が行われる。
【0233】
また、この実施の形態10の極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bにより、該極低温冷凍機210に対して設定された目標温度及び冷凍対象物の温度に基づいて、リニア圧縮機70aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、極低温冷凍機210では、冷凍対象物の温度が目標温度に維持される。
【0234】
このように本実施の形態10の極低温冷凍機210では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機70aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0235】
さらに、本実施の形態10の極低温冷凍機210では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0236】
また、本実施の形態10の極低温冷凍機210では、圧縮機のリニア振動モータの出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、実施の形態8と同様、リニア圧縮機70aの出力をその駆動電圧のレベルを変えずに制御することができ、極低温冷凍機210の能力制御が簡単になる。また、リニア圧縮機70aの出力を駆動周波数の調整により制御するので、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、小型でかつ高効率のリニア圧縮機を、さらには小型で高効率の極低温冷凍機を実現できる。
【0237】
(実施の形態11)
図13は本発明の実施の形態11による給湯器を説明するブロック図である。
この実施の形態11の給湯器211は、供給された水を加熱して温水を排出する冷凍サイクル装置81aと、冷凍サイクル装置81aから排出された温水を貯める貯湯槽81bと、これらを連結する水配管86a,86b,87a,及び87bとを有している。
【0238】
上記冷凍サイクル装置81aは、リニア圧縮機80a,圧縮機駆動装置80b,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85を有している。
ここで、リニア圧縮機80a,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85は、冷媒循環経路を形成している。
圧縮機駆動装置80bは、上記リニア圧縮機80aの駆動源であるリニア振動モータ(図示せず)を駆動するものである。なお、上記リニア圧縮機80aは、上記実施の形態7の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置80bは、外部電源10から直流電圧Vpが供給されるもので、実施の形態7のモータ駆動装置207と同一の構成を有しており、以下この実施の形態11では、モータ駆動部80bという。
【0239】
絞り装置83は、上記実施の形態8の空気調和機208の絞り装置53と同様、水熱交換器85から空気熱交換器82へ送り出された液冷媒の流量を絞って、該液冷媒を膨張させるものである。
【0240】
水熱交換器85は、冷凍サイクル装置81aに供給された水を加熱する凝縮器であり、加熱された水の温度を検出する温度センサ85aを有している。空気熱交換器82は、周辺雰囲気から熱を吸収する蒸発器であり、熱交換の能力を上げるための送風機82aと、該周辺温度を検出する温度センサ82bとを有している。
【0241】
なお、図中、84は、上記冷媒を、リニア圧縮機80a,水熱交換器85,絞り装置83,及び空気熱交換器82により形成される冷媒循環経路に沿って循環させる冷媒配管である。該冷媒配管84には、リニア圧縮機80aから吐出された冷媒を、水熱交換器85及び絞り装置83をバイパスして空気熱交換器82に供給する除霜バイパス管84aが接続されており、該バイパス管84aの一部には除霜バイパス弁84bが設けられている。
【0242】
上記貯湯槽81bは、水あるいは温水を貯める貯湯タンク88を有している。該貯湯タンク88の受水口88c1には、該貯湯タンク88内へ水を外部から供給する給水配管88cが接続され、上記貯湯タンク88の湯出口88d1には、該貯湯タンク88から浴槽へ湯を供給する浴槽給湯管88dが接続されている。また、上記貯湯タンク88の水出入口88aには、該タンク88に貯められた湯を外部に供給する給湯管89が接続されている。
【0243】
上記貯湯タンク88と冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85とは、配管86a,86b,87a,及び87bにより接続されており、貯湯タンク88と水熱交換器85との間には水の循環路が形成されている。
【0244】
ここで、水配管86bは、水を貯湯タンク88から水熱交換器85へ供給する配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出口88bに接続され、その他端は、ジョイント部分87b1を介して、水熱交換器85の入水側配管87bに接続されている。また、この水配管86bの一端側には、貯湯タンク88内の水あるいは温水を排出するための排水弁88b1が取り付けられている。上記水配管86aは、水を水熱交換器85から貯湯タンク88へ戻す配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出入口88aに接続され、その他端は、ジョイント部分87a1を介して水熱交換器85の排出側配管87aに接続されている。
そして、水熱交換器85の入水側配管87bの一部には、上記水循環路内で水を循環させるポンプ87が設けられている。
【0245】
さらに、この給湯器211では、モータ駆動部80bは、給湯器の運転状態、つまり給湯器に対して設定された温水の目標温度、貯湯層81bから冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85aに供給される水の温度、及び外気温に基づいて、リニア圧縮機80aのリニア振動モータに要求されるモータ出力を決定する。
【0246】
次に動作について説明する。
リニア圧縮機80aのリニア振動モータ(図示せず)にモータ駆動部80bから交流電圧Vdが印加され、リニア圧縮機80aが駆動すると、リニア圧縮機80aにより圧縮された高温冷媒は、矢印Eが示す方向に循環し、つまり冷媒配管84を通り、水熱交換器85に供給される。また、水循環路のポンプ87が駆動すると、貯湯タンク88から水が水熱交換器85に供給される。
【0247】
すると、水熱交換器85では、冷媒と貯湯タンク88から供給された水との間で熱交換が行われ、熱が冷媒から水へ移動する。つまり供給された水が加熱され、加熱された水は、貯湯タンク88へ供給される。このとき、加熱された水の温度は凝縮温度センサ85aにて監視されている。
【0248】
また、水熱交換器85では、冷媒は上記熱交換により凝縮し、凝縮した液冷媒は、その流量が絞り装置83により絞られることにより膨張し、空気熱交換器82に送り込まれる。この給湯器211では、該空気熱交換器82は、蒸発器として働く。つまり、該空気熱交換器82は、送風機82bにより送り込まれた外気から熱を吸収し、低温の冷媒液を蒸発させる。このとき、上記空気熱交換器82の周辺雰囲気の温度は温度センサ82bにより監視されている。
【0249】
また、冷凍サイクル装置81aでは、空気熱交換器82に霜がついた場合は、除霜バイパス弁84bが開き、高温の冷媒が除霜バイパス路84aを介して空気熱交換器82に供給される。これにより空気熱交換器82の除霜が行われる。
【0250】
一方、貯湯槽81bには、冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85から温水が配管87a及び86aを介して供給され、供給された温水が貯湯タンク88に貯められる。貯湯タンク88内の温水は、必要に応じて、給湯管89を通して外部に供給される。特に、浴槽へ給湯する場合は、貯湯タンク内の温水は浴槽用給湯管88dを通して浴槽に供給される。
【0251】
また、貯湯タンク88内の水あるいは温水の貯蓄量が一定量以下となった場合には、外部から給水管88cを介して水が補給される。
そして、この実施の形態11の給湯器211では、モータ駆動部80bにより、該給湯器211に対して設定された温水の目標温度、水熱交換機85aに供給される水の温度、及び外気温に基づいて、リニア圧縮機80aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、給湯器211では、目標温度の温水の供給が行われる。
【0252】
このように本実施の形態11の給湯器211では、冷凍サイクル装置81aにて冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機80aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを動力源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0253】
さらに、本実施の形態11の給湯器211では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填される冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0254】
また、本実施の形態11の給湯器211では、圧縮機のリニア振動モータの出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、実施の形態8と同様、リニア圧縮機80aの出力をその駆動電圧のレベルを変えずに制御することができ、給湯器211の能力制御が簡単になる。また、リニア圧縮機80aの出力を駆動周波数の調整により制御するので、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、小型でかつ高効率のリニア圧縮機を、さらには小型で高効率の給湯器を実現できる。
【0255】
(実施の形態12)
図14は本発明の実施の形態12による携帯電話を説明するブロック図である。
この実施の形態12の携帯電話212は、機械的に振動する振動器90aと、該振動部90aを駆動する駆動装置90bとを有し、着信等を振動によりユーザに伝えるものである。
【0256】
ここで、上記振動器90aは、そのケース91内に配置され、バネ部材92により振動可能に支持された重り部材93と、該重り部材93に一部に固着されたマグネット93aと、上記ケース91内に上記重り部材93のマグネット93aに対向するよう配置され、コイル94aが埋め込まれたステータ94とを有している。そして、上記重り部材93に取り付けられたマグネット93aと、上記ステータ94に埋め込まれたコイル94aとから、リニア振動モータ95が構成されている。このリニア振動モータ95では、このコイル94aとマグネット93aとの間で発生する電磁力及び上記ばね部材92の弾性力により、上記重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に沿って往復運動する。
【0257】
そして、この実施の形態12の駆動装置90bは、携帯電話212に搭載されたバッテリー10aの出力電圧Vpを交流電圧Vdに変換し、該交流電圧Vdを上記振動器90aのリニア振動モータ95に駆動電圧として供給するものであり、以下この実施の形態12ではモータ駆動部90bという。このモータ駆動部90bは、実施の形態1のモータ駆動装置101と同様、図1に示す、モータドライバ1,駆動周波数決定部2,及び指令出力決定部3を有している。また、このモータ駆動制御部90bは、実施の形態1のモータ駆動装置101と同様、リニア振動モータ95に要求されるモータ出力を、リニア振動モータ95に印加する交流駆動電圧Vdの周波数を調整して制御する。
【0258】
このような構成の携帯電話212では、着信時には、モータ駆動制御部90bから振動器90aのリニア振動モータ95への通電により、重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に往復動し、振動器90aが振動する。
【0259】
つまり、コイル94aに交流電圧Vdが印加されると、ステータ94には交流の磁界が発生し、この磁界にマグネット93aが引き付けられ、マグネット93aと、マグネット93aが固着されている重り部材93が往復運動を開始する。
【0260】
そして、振動部90aの動作状態で、リニア振動モータ95の運転状態に基づいてリニア振動モータ95に要求されるモータ出力が決定され、該決定されたモータ出力に基づいてリニア振動モータ95の駆動周波数が決定され、さらに、該決定された駆動周波数と一致した周波数を有する振幅値一定の交流電圧Vdがリニア振動モータ95に印加される。これにより、携帯電話212では、着信時の振動の大きさが、要求されるパターン通りに制御され、ユーザの好みなどに応じたパターンの振動により着信がユーザに伝えられる。
【0261】
このように本実施の形態12の携帯電話212では、機械的な振動をリニア振動モータ95により発生するので、回転型モータにより振動を発生させる場合に比べて、機械的な振動を、振動数と振幅の大きさという2つの自由度でもって変化させることができ、振動により着信等をユーザに知らせる振動器91を、振動のバリエーションの多彩なものとできる。
【0262】
また、本実施の形態12の携帯電話212では、振動部90aの動力源であるリニア振動モータのモータ出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の周波数を調整して制御するので、リニア振動モータの駆動電圧のレベルを一定に保持した状態で、モータ出力の調整が可能となり、携帯電話の振動の大きさ制御が簡単になる。また、リニア振動モータ95の出力を駆動周波数の調整により制御するので、該リニア振動モータ95は構造上の制約を受けずに最大能力で運転でき、より強力な振動を発生することができる。
【0263】
なお、上記実施の形態12では、実施の形態1のリニア振動モータ及びその駆動装置を、携帯電話における着信を振動により知らせる振動器及びその駆動制御部として用いた場合を示したが、実施の形態1のリニア振動モータ及びその駆動装置は、往復式電気かみそりの動力源及びその駆動部として用いることができることは言うまでもない。
【0264】
さらに、上記実施の形態7〜12では、モータ駆動部は、実施の形態1のモータ駆動装置101と同一の構成を有しているが、実施の形態7〜12のモータ駆動部は、実施の形態2ないし6のモータ駆動装置101ないし106と同一の構成を有するものでもよい。
【0265】
【発明の効果】
以上のように、本発明(請求項1)に係るモータ駆動装置によれば、往復運動可能に設けられた可動子と、該可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、上記リニア振動モータに駆動電圧として交流電圧を供給するモータドライバを備え、該モータドライバは、上記リニア振動モータのモータ出力及び可動子のストロークの少なくとも一方を、上記交流電圧の周波数を調整して制御する、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動電圧を一定に保持した状態で、モータ出力を調整することが可能となり、これにより、リニア振動モータやその電源の仕様変更を行うことなく、リニア振動モータの最大出力を大きくすることができる効果がある。
【0266】
また、リニア振動モータの出力あるいは可動子のストロークを、該交流電圧の周波数の調整により変更するので、モータドライバに搭載する発振器として電圧制御発振器などを用いることにより、リニア振動モータの出力制御あるいは可動子のストローク制御を、該電圧制御発振器の制御電圧の変更により容易に行うことができるという効果もある。
【0267】
本発明(請求項2)によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記決定された目標出力に基づいて、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部とを備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力を制御する、ことを特徴とするので、リニア振動モータの出力を、リニア振動モータに印加する交流電圧の振幅レベルを大きく変化させることなく目標出力に一致させることができる効果がある。
【0268】
本発明(請求項3)によれば、請求項2記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部を備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記駆動周波数を決定する、ことを特徴とするので、上記リニア振動モータの出力制御は、リニア振動モータに要求されるモータ出力を目標出力とするフィードバック制御となり、このため、リニア振動モータに対する出力制御あるいは可動子のストローク制御を、安定かつ高精度なものとできるという効果がある。
【0269】
本発明(請求項4)によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記可動子の位置を検出する位置検出部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするので、可動子のストロークが許容範囲内である状態では、リニア振動モータを、その駆動周波数を共振周波数として高効率で駆動することができ、しかも、リニア振動モータを共振周波数で駆動すると可動子のストロークが許容範囲を超える高出力領域でも、可動子のストロークを許容範囲内に抑えて、リニア振動モータを駆動することができる。
【0270】
本発明(請求項5)によれば、請求項4記載のモータ駆動装置において、上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合、上記駆動周波数を、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超えない周波数に変更する、ことを特徴とするので、リニア振動モータを共振周波数で駆動すると可動子のストロークが許容範囲を超える高出力領域では、駆動周波数を、可動子のストロークが許容範囲を超えない、最も共振周波数に近い周波数とすることによって、可動子が衝突したり支持バネの弾性限界以上に伸びたりするのを回避しつつ、リニア振動モータを最高効率で駆動することができる効果がある。しかも、上記高出力領域では、駆動周波数が、可動子のストロークが許容範囲を超えない、最も共振周波数に近い周波数に設定されているため、リニア振動モータに要求されるモータ出力が減少した場合には、駆動周波数をスムーズに共振周波数に戻すことができる効果もある。
【0271】
本発明(請求項6)によれば、請求項4記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整する、ことを特徴とするので、上記リニア振動モータの出力制御は、リニア振動モータに要求されるモータ出力を目標出力として駆動電圧の電圧値を調整するフィードバック制御となり、これにより、可動子のストロークを許容範囲内に抑えつつ、リニア振動モータの出力制御を、高精度かつ安定に、しかも応答性よく行うことができるという効果がある。
【0272】
本発明(請求項7)によれば、請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記基準位置は、上記可動子を支持するバネ部材の弾性限界値に基づいて定められている、ことを特徴とするので、高いモータ出力が要求された場合でも、可動子のストローク長を、可動子の支持バネの伸び幅が弾性限界値を超えない程度に抑えて、要求されたモータ出力を発生することができる。この結果、リニア振動モータの信頼性を向上できるだけではなく、リニア振動モータの共振周波数での駆動が、上記支持バネの伸び幅が弾性限界から不可能な高出力領域でも、リニア振動モータを駆動することができる。
【0273】
本発明(請求項8)によれば、請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記基準位置は、上記可動子が、上記リニア振動モータを構成する部品、もしくは、上記リニア振動モータを内蔵する機器の部品と衝突する位置に基づいて定められている、ことを特徴とするので、高いモータ出力が要求された場合でも、可動子のストローク長を、可動子がリニア振動モータの構成部品やリニア振動モータが組み込まれている構成部品と衝突しない程度に抑えて、要求されたモータ出力を発生することができる。この結果、リニア振動モータの信頼性を向上できるだけではなく、リニア振動モータの共振周波数での駆動が、モータ筐体の可動子振動方向の寸法から不可能な高出力領域でも、リニア振動モータを駆動することができる。
【0274】
本発明(請求項9)によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が、予め定められた基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするので、要求されるモータ出力が、共振周波数でのリニア振動モータの駆動が電源の電圧レベルにより制限される最大出力に達するまでは、リニア振動モータを共振周波数でもって高効率に駆動することができ、さらに、要求されるモータ出力が上記最大出力を超える高出力領域では、リニア振動モータを、その共振周波数より高い周波数でもって、駆動効率を大きく低下させることなく駆動することができる効果がある。
【0275】
また、上記リニア振動モータの出力制御は、リニア振動モータに要求されるモータ出力を目標出力として駆動電圧の電圧値を調整するフィードバック制御となり、これにより、リニア振動モータの出力制御を、高精度かつ安定に、しかも応答性よく行うことができるという効果もある。
【0276】
本発明(請求項10)によれば、請求項9記載のモータ駆動装置において、上記基準値は、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められており、上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超えない周波数に変更する、ことを特徴とするので、電源電圧により制限される最大出力を超える高出力領域では、駆動周波数を最も共振周波数に近い周波数とすることによって、リニア振動モータの高効率駆動が可能となり、さらにリニア振動モータが必要とされるモータ出力が減少した場合には駆動周波数をスムーズに共振周波数に戻すことができる効果がある。
【0277】
本発明(請求項11)によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部と、上記リニア振動モータの駆動電圧の実際の電圧値を検出する駆動電圧検出部とを備え、上記駆動周波数決定部は、上記検出された実際の電圧値が、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められている基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された実際の電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、ことを特徴とするので、電源の電圧レベルの制約を受けることなく、高出力領域でも効率よくリニア振動モータを駆動することができる効果がある。
【0278】
つまり、実際のモータ出力が、要求されるモータ出力に一致していなくても、実際のモータ出力が、共振周波数でのリニア振動モータの駆動が電源の電圧レベルにより制限される最大出力に達するまでは、リニア振動モータを共振周波数でもって高効率に駆動することができる効果がある。また、共振周波数で駆動されるリニア振動モータの実際のモータ出力が上記最大出力を超える高出力領域では、リニア振動モータを、その共振周波数より高い周波数でもって、駆動効率を大きく低下させることなく駆動することができる効果がある。さらに、上記高出力領域では、駆動周波数は、要求されるモータ出力を発生可能な最も共振周波数に近い周波数に設定することにより、要求されるモータ出力が減少した場合には、駆動周波数をスムーズに共振周波数に戻すことができる効果がある。
【0279】
本発明(請求項12)に係る空気調和機によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置とを備え、該モータ駆動制御装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、リニア圧縮機の能力を駆動周波数により制御することから、回転型モータを駆動源とする圧縮機と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、リニア圧縮機を用いた空気調和機の小型化及び高効率化を図ることができる。
【0280】
本発明(請求項13)に係る冷蔵庫によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置とを備え、該モータ駆動制御装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、リニア圧縮機の能力を駆動周波数により制御することから、回転型モータを駆動源とする圧縮機と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、リニア圧縮機を用いた冷蔵庫の小型化及び高効率化を図ることができる。
【0281】
本発明(請求項14)に係る極低温冷凍機によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置とを備え、該モータ駆動制御装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、リニア圧縮機の能力を駆動周波数により制御することから、回転型モータを駆動源とする圧縮機と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、リニア圧縮機を用いた極低温冷凍機の小型化及び高効率化を図ることができる。
【0282】
本発明(請求項15)に係る給湯器によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置とを備え、該モータ駆動制御装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、リニア圧縮機の能力を駆動周波数により制御することから、回転型モータを駆動源とする圧縮機と同様、該リニア圧縮機は構造上の制約を受けずに最大能力で運転可能となり、しかも定格能力での効率を最大とするような設計を行うことができる。この結果、リニア圧縮機を用いた給湯器の小型化及び高効率化を図ることができる。
【0283】
本発明(請求項16)に係る携帯電話によれば、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、上記モータ駆動制御装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするので、振動数と振幅(振動)の大きさという2つの自由度で振動を外部に伝えることができ、このため、従来の回転型モータを用いて振動を発生する場合に比べて、振動のバリエーションの多彩なものとできる。さらに、リニア振動モータの出力を駆動周波数の調整により制御するので、該リニア振動モータは構造上の制約を受けずに最大能力で運転でき、より強力な振動を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるモータ駆動装置を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態2によるモータ駆動装置を説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態3によるモータ駆動装置を説明する図であり、図(a)は該モータ駆動装置のブロック図、図(b)及び図(c)は、それぞれ該モータ駆動装置の動作の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置を説明する図であり、図(a)は該モータ駆動装置のブロック図、図(b)は、該モータ駆動装置の動作の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態5によるモータ駆動装置を説明する図であり、図(a)は該モータ駆動装置のブロック図、図(b)及び図(c)は、それぞれ該モータ駆動装置の動作の一例を示す図である。
【図6】上記実施の形態5のモータ駆動装置の駆動原理を説明するための図であり、該モータ駆動装置により駆動されるリニア振動モータの等価回路(図(a))、及びそのモデル化された力学的特性(図(b))を示している。
【図7】上記実施の形態5のモータ駆動装置の駆動原理を説明するための図であり、図(a)〜図(d)は、駆動周波数が異なる場合の、上記等価回路の各要素の端子電圧、駆動電圧、及び駆動電流の位相関係をベクトルで示している。
【図8】本発明の実施の形態6によるモータ駆動装置を説明する図であり、図(a)は該モータ駆動装置のブロック図、図(b)及び図(c)は、それぞれ該モータ駆動装置の動作の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態7のモータ駆動装置207を説明する模式図である。
【図10】本発明の実施の形態8による空気調和機208を説明する模式図である。
【図11】本発明の実施の形態9による冷蔵庫209を説明する模式図である。
【図12】本発明の実施の形態10による極低温冷凍機210を説明する模式図である。
【図13】本発明の実施の形態11による給湯器211を説明する模式図である。
【図14】本発明の実施の形態12による携帯電話212を説明する模式図である。
【符号の説明】
1,1a モータドライバ
2,2a,2b,2c,2d,2e 駆動周波数決定部
3 指令出力決定部(目標出力決定部)
4 出力検出部
5 位置検出部
6 共振周波数決定部
7 駆動電圧決定部
8 駆動電圧検出部
40,50a,60a,70a,80a リニア圧縮機
41a シリンダ部
41b モータ部
42 ピストン
43,92 支持ばね
44 マグネット
45 電磁石
46,95,100 リニア振動モータ
50b,60b,70b,80b,90b モータ駆動制御部
51 室内側熱交換器
51b,52b,62b,72b,82b,85a 温度センサ
52 室外側熱交換器
53,63,73,83 絞り装置
54 四方弁
55 室内機
56 室外機
61 凝縮器
62 冷蔵室蒸発器
71 放熱器
72 蓄冷器
81a 冷凍サイクル装置
81b 貯湯槽
82 空気熱交換器
85 水熱交換器
87 ポンプ
88 貯湯タンク
90a 振動器
91 ケース
93 重り部材
93a マグネット
94 ステータ
94a コイル
100 リニア振動モータ
101,102,103,104,105,106,207 モータ駆動装置
208 空気調和機
209 冷蔵庫
210 極低温冷凍機
211 給湯器
212 携帯電話
α リニア振動モータの推力定数
Dposi 位置検出信号
Dreso 共振周波数信号
Ddv 電圧検出信号
Dop 出力検出信号
Hg 高圧ガス
Id 駆動電流
Id(t) 駆動電流の瞬時値
Ifr 駆動周波数信号
L 巻線の等価インダクタンス
Lg 低圧ガス
Omp モータ出力
Oop 出力指令信号
Odv 電圧振幅値信号
Prm 可動子の位置
R 巻線の等価抵抗
Vd 駆動電圧
Vd(t) 駆動電圧の瞬時値
v(t) 可動子の速度の瞬時値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動可能に設けられた可動子と、該可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、
上記リニア振動モータに駆動電圧として交流電圧を供給するモータドライバを備え、
該モータドライバは、上記リニア振動モータのモータ出力及び可動子のストロークの少なくとも一方を、上記交流電圧の周波数を調整して制御する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、
上記決定された目標出力に基づいて、上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部とを備え、
上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力を制御する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部を備え、
上記駆動周波数決定部は、上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記駆動周波数を決定する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、
上記可動子の位置を検出する位置検出部とを備え、
上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が、予め定められた基準位置を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、
上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数を、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記可動子のストロークを制御する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
請求項4記載のモータ駆動装置において、
上記駆動周波数決定部は、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超える場合、上記駆動周波数を、上記検出された可動子の位置が上記基準位置を超えない周波数に変更する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項4記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、
上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、
上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、
上記モータドライバは、
上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
上記基準位置は、上記可動子を支持するバネ部材の弾性限界値に基づいて定められている、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項8】
請求項4ないし6のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
上記基準位置は、上記可動子が、上記リニア振動モータを構成する部品、もしくは、上記リニア振動モータを内蔵する機器の部品と衝突する位置に基づいて定められている、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項9】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、
上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、
上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、
上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部とを備え、
上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が、予め定められた基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、
上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が、上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項10】
請求項9記載のモータ駆動装置において、
上記基準値は、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められており、
上記駆動周波数決定部は、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記決定された目標電圧値が上記基準値を超えない周波数に変更する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項11】
請求項1記載のモータ駆動装置において、
上記リニア振動モータの駆動周波数を決定する駆動周波数決定部と、
上記リニア振動モータに要求されるモータ出力である目標出力を決定する目標出力決定部と、
上記リニア振動モータのモータ出力を検出する出力検出部と、
上記検出されたモータ出力と上記決定された目標出力との差分がゼロとなるよう、上記リニア振動モータの駆動電圧の目標電圧値を決定する駆動電圧決定部と、
上記リニア振動モータの駆動電圧の実際の電圧値を検出する駆動電圧検出部とを備え、
上記駆動周波数決定部は、上記検出された実際の電圧値が、上記モータドライバに供給される直流電源の電圧値に基づいて定められている基準値を超えない場合は、上記駆動周波数を、上記可動子を含むバネ振動系が共振状態となる共振周波数に決定し、上記検出された実際の電圧値が上記基準値を超える場合は、上記駆動周波数を、上記共振周波数より高い周波数に決定し、
上記モータドライバは、上記リニア振動モータに供給する交流電圧の周波数及び電圧値を、該交流電圧の電圧値が、上記駆動電圧決定部により決定された目標電圧値となり、かつ上記交流電圧の周波数が上記駆動周波数決定部により決定された駆動周波数と一致するよう調整して、上記モータ出力及び可動子のストロークを制御する、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項12】
シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、
固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項13】
シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、
固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項14】
シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、
固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
ことを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項15】
シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、
固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
該モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
ことを特徴とする給湯器。
【請求項16】
振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備えた携帯電話であって、
上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、
上記モータ駆動装置は、請求項1から11のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
ことを特徴とする携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2004−104987(P2004−104987A)
【公開日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−191096(P2003−191096)
【出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】