モードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法
【課題】モードSトランスポンダから送信された信号を正確に解読することが可能なモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法を提供する。
【解決手段】モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理部43と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算部44と、相関演算処理により得られた相関の度合に基づいてパルスを再生するパルス再生部45と、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行うパルス位相同期部46と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読するパルス解読部47とを設ける。
【解決手段】モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理部43と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算部44と、相関演算処理により得られた相関の度合に基づいてパルスを再生するパルス再生部45と、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行うパルス位相同期部46と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読するパルス解読部47とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダへ送信したモードS質問信号に対するモードS応答信号やトランスポンダが送信するモードSスキッタ信号(モードSショートスキッタ信号及びモードS拡張スキッタ信号)を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と、二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得する。
【0004】
一方、SSRは、地上から質問信号を送信し、これに対するトランスポンダからの応答信号を受信することにより航空機に関する各種情報を取得する。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードC、モードSに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものであり、モードSは上記の情報に加えて進路情報や速度情報等を得るためのである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、モードS用トランスポンダは、モードS応答信号と同様の信号形式を有し、且つ24ビットアドレスからなるモードSショートスキッタ信号と、同じくモードS応答信号と同様の信号形式を有し、且つ自機の位置や速度等の情報を示すモードS拡張スキッタ信号とを送信する機能を有している。なお、以降の説明においては、適宜、前記のモードSショートスキッタ信号とモードS拡張スキッタ信号とを“モードSスキッタ信号”と総称する。
【0007】
上記のモードSスキッタ信号は、モードS用トランスポンダから一定間隔をもって自動的に送信され、地上局だけでなく航空機でも受信可能である。このため、放送型自動従属監視(ADS−B:Automatic Dependent Surveillance Broad Assistance)に用いることができる。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のSSRモードSの応答信号及びモードSスキッタ信号を解読するにあたっては、図11(a)に示すように閾値を設定し、この閾値より出力が大であり、且つ図11(b)に示すようにパルス幅が所定の範囲内にあるものを信号として認識していた。
【0009】
なお、図11(b)においては、パルスWの幅が所定範囲内にあり、パルスXの幅が所定範囲の下限値を満たしておらず、パルスZの幅が所定範囲の上限値を超えている場合を示している。つまりパルスWのみが正しい信号として認識される。
【0010】
しかしながら、図12(a)に示すように、地上局102からのモードS質問信号103に対して航空機101から地上局102に送信されたモードS応答信号の直進波104が同じモードS応答信号の反射波105に干渉されることがある。また、この現象はモードSスキッタ信号を受信する際にも発生することがある。
【0011】
なお、以降の説明においては、適宜、上記のモードS応答信号及びモードSスキッタ信号を“モードSトランスポンダ送信信号”と総称する。
【0012】
上記のような反射波による干渉は到達経路による位相差が原因で発生し、この際に地上局102が受信するモードSトランスポンダ送信信号の強度Pは以下の式で表される。
【0013】
[数1]
P=αsinωt+Βsin(ω(t+d))・・・・・(1)
【0014】
なお、上記の式(1)におけるPは受信強度、αは直進波の減推量、Βは反射波の減推量、dは到達時間差である。
【0015】
また、図12(b)に示すように、地上局102の監視範囲内に航空機が複数存在する場合、航空機101からのモードSトランスポンダ送信信号104と、航空機106からのモードSトランスポンダ送信信号(非同期信号)107とが干渉することがある。
【0016】
つまり、図13(a)に示すパルスを直進波104、図13(b)に示すパルスを反射波105あるいは非同期信号107とすると、これら2つのパルスの位相が同一である場合は、図13(c)に示すような合成波が形成されてしまう。このパルスは上記の所定幅の上限値を超えていると誤認され、この結果、正しい信号として認識されない。したがって、モードSトランスポンダ送信信号を正しく解読することができなくなる。
【0017】
一方、2つのパルスの位相が異なる場合は、図13(d)に示すような合成波が形成されてしまう。このパルスは上記の所定幅の下限値を満たさないと誤認され、この結果、正しい信号として認識されない。したがって、図13(c)に示した場合と同様にモードSトランスポンダ送信信号を正しく解読することができなくなる。
【0018】
このような事情に鑑み本発明は、モードSトランスポンダ送信信号を正確に解読することが可能なモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生手段と、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期手段と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段とを有することを要旨とする。
【0020】
請求項2に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生手段と、モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択手段と、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期手段と、パルス位置同期処理がなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と、類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、誤差の補正値を算出する補正値算出手段とを有し、パターン選択手段は、補正値に基づいて基準位置を逐次補正することを要旨とする。
【0021】
請求項3に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生工程と、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期工程と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程とを有することを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生工程と、モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択工程と、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期工程と、パルス位置同期処理がなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と、類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、誤差の補正値を算出する補正値算出工程とを有し、パターン選択工程においては、補正値に基づいて基準位置を逐次補正することを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、モードSトランスポンダ送信信号を解読するにあたって、微分処理、相関演算処理、パルス再生処理、ゲート処理、位相同期処理を行う。
【0024】
また、微分処理、相関演算処理、パルス再生処理、パターン選択処理、位置同期処理、補正値算出処理を行う。
【0025】
したがって、モードSトランスポンダ送信信号を正確に解読することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を提示しつつ本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。
SSRシステム1は、水平方向に360°回転可能な地上設置型レーダアンテナを備えるレーダアンテナ装置2と、送受信装置3と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4aと、航空機5に搭載されるトランスポンダ(モードSトランスポンダ)6とからなる。
【0028】
送受信装置3は、レーダアンテナ装置2を介してモードS質問信号7を送信し、これを受信したトランスポンダ6は、受信したモードS質問信号に対するモードS応答信号8を送信する。このモードS応答信号8は、レーダアンテナ装置2及び送受信装置3により受信され、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4aにより解読される。つまり、このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、モードS応答信号解読装置として機能する。
【0029】
なお、本図においてはモードS質問信号の生成部やユーザへ各種情報を提示するためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0030】
図2は、図1に示した本発明の第1の実施例(実施例1)に係るモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aの構成図である。
このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、検波部41と、A/D変換部42と、微分処理部43と、相関演算部44と、パルス再生部45と、パルス位相同期部46と、パルス解読部47とからなる。
【0031】
検波部41は、受信されたRF信号に対して検波処理を行い、A/D変換部42は、検波された信号(検波信号)を多値デジタル信号に変換する。
【0032】
微分処理部43は、図3(a)に示すような波形を有するデジタル信号を微分処理する。この微分処理を得た信号の波形は図3(b)に示すようになる。
【0033】
相関演算部44は、微分化された信号(微分化信号)に対して相関演算処理を行う。この処理においては、微分化信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合(強さ)を演算する。
【0034】
モードS応答信号は、その規格によりパルス幅が1.0μsあるいは0.5μsに定められているため、P(t)・(−P(t+0.5))あるいはP(t)・(−P(t+1.0))に強い相関(図4中のA、B及びC)が表れる。
【0035】
パルス再生部45は、前記の相関の度合とモードS信号の規格とに基づいてパルスの位置を特定し、パルス列を再生する。なお、この際には相関の度合の閾値が用いられ、この閾値以上の相関度合を有する部分にパルスが再生される。
【0036】
パルス位相同期部46は、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルス列(再生パルス列)に対してゲート処理と位相同期処理とを行う。
【0037】
このパルス位相同期部46は、ゲート処理部461と同期実行部462とからなる。
【0038】
ゲート処理部461は、図5に示すとおり、其々において異なる遅延時間が設定されたディレイ回路50、SRフリップフロップ回路51、OR回路52、AND回路53からなる。
【0039】
このゲート処理部461は、図6に示すように、1.0μsおきに開閉時間が0.5μsのゲートを生成する。モードS信号の規格においては、そのパルス幅が0.5μsであり、パルスの繰り返し間隔は1.0μsであるため、図中のGに示すような不正な信号がゲートを通過することを防止できる。したがって、この後の位相同期処理及び解読処理を正確に行うことが可能となる。
【0040】
なお、本実施例においては、ゲートの開閉時間が0.5μsである場合を示したが、これに限定されず、ゲートの生成間隔がモードS信号の規格に応じた1.0μsであり、且つゲートの開閉時間が信号を通過させるに十分な時間であればよい。
【0041】
同期実行部462は、上記のゲートが生成された後に位相同期処理を行う。
【0042】
パルス解読部47は、前記のゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードS応答信号を解読する。
【0043】
以上のとおり、本実施例におけるモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、位相同期処置を行う際に不正な信号がゲートを通過することを防止する。したがって、モードS応答信号を正確に解読することができる。
【実施例2】
【0044】
図7は、本発明の第2の実施例(実施例2)に係るモードSトランスポンダ送信信号解読装置(モードS応答信号解読装置)4bの構成図である。
このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4bは、上記のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aに変更を加えたものであり、パルス位相同期部46に代えてパターン選択部48とパルス位置同期部49とが設けられている。
【0045】
モードS信号のパルスの反復パターンは、予め定められており、図8(a)から(d)に示すもののいずれかである。
【0046】
上記のパターン選択部48は、これらのパルスのパターンから再生されたパルス列に最も類似するパルスのパターンを選択する。
【0047】
パルス位置同期部49は、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う。
【0048】
なお、上記のパルス選択を行うにあたっては、その基準位置に誤差が発生する可能性がる。このため、パルス位置同期部49は、この誤差の補正値を算出し、これをパターン選択部48にフィードバックし、パターン選択部48は、この同期位置補正信号に基づいて基準位置を逐次補正する。
【0049】
以下、図9を参照しつつ、上記の処理の詳細について説明する。
パルス選択を行うにあたっての基準は、L、N、P、T、Vであり、Mの幅を計測することにより基準Nにおける補正値を算出し、次に、Oの幅を計測することにより基準Pの補正値を算出するというように、全ての基準における補正値が継続的に算出される。
【0050】
なお、Rはパルスが存在しないため基準とはなりえず、基準Tにおける補正値は、区間Qの倍数、つまり区間Q及びSの幅に基づいて算出される。
【0051】
パルス解読部47は、上記のパルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードS応答信号を解読する。
【0052】
以上のとおり、本実施例のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4bにおいては、パルス位置同期処理を行う際に予め適切なパルスのパターンを選択するため不正な信号が介在することを防止できる。また、パルスのパターンを選択する際の基準位置を逐次補正するためパルスパターンの選択を適切に行うことができる。したがって、モードS応答信号を正確に解読することが可能となる。
【実施例3】
【0053】
上記の実施例においては、本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aまたは4bをSSRシステムに適用し、これらのモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bが前記のモードSトランスポンダ送信信号のうちモードS応答信号8を解読する場合を示したが、これに限定されない。
【0054】
つまり、本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bは、前記のモードSスキッタ信号を用いるADS−B(放送型自動従属監視)システムにも適用可能であり、前記のモードSトランスポンダ送信信号のうちモードSスキッタ信号を解読することもできる。以下の実施例は、この場合を示すものである。
【0055】
図10は、本発明の第3の実施例(実施例3)に係るADS−Bシステム9の構成図である。
このADS−Bシステム9は、航空機5(本図では、5a及び5bの2機)に搭載されるトランスポンダ6と、アンテナ61と、受信装置62と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bと、地上設置型のオムニアンテナ10と、受信装置11と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bとからなる。
【0056】
つまり、本実施例のADS−Bシステム1においては、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bが地上だけでなく、航空機5内にも設けられる。
【0057】
なお、上記の航空機5a及び5bのモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bは、機内の任意の場所に設置することができる。
【0058】
トランスポンダ6は、モードSスキッタ信号(モードSショートスキッタ信号、モードS拡張スキッタ信号)12を所定の間隔をもって自動送信する。
【0059】
送信されたスキッタ信号12は、航空機5の受信装置62と、地上の受信装置11により受信される。
【0060】
つまり、ADS−Bシステム9においては、地上からの航空機監視のみならず、航空機5間での相互監視も可能である。
【0061】
また、従来の監視レーダでは、山間部や低高度を飛行する小型航空機の監視は困難であったが、オムニアンテナ10は山間部等にも容易に設置可能であるため、地形や監視対象の状態に影響されずに監視を行うことができる。
【0062】
また、上記のモードSショートスキッタ信号は、航空機の初期捕捉等に用いることができるため、本実施例のADS−Bシステム9を航空機衝突防止装置(ACAS:Airborne Collision Avoidance System)として機能させることができる。
【0063】
一方、モードS拡張スキッタ信号は、前記のモードS拡張スキッタ信号の信号長を拡張することによりデータ伝送量を増大させたものであり、自機の位置、速度、便名、進路変更の意図の有無といった様々な情報を送信することができる。したがって、本実施例のADS−Bシステム9を航空機間隔維持装置(ASAS:Airborne Separation Assurance System)として機能させることもできる。
【0064】
また、本実施例におけるモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bの機能・構成等は上記の実施例1及び2と同様である。したがって、モードSスキッタ信号を正確に解読することができる。
【0065】
<マルチラテレーション機能>
上記の全ての実施例においては、レーダアンテナ装置2及び送受信装置3(図1)やオムニアンテナ10及び受信装置11(図10)がそれぞれ1個である場合を示したが、これらを3個以上離隔して配置することにより上記のSSRシステム1及びADS−Bシステム9にマルチラテレーション機能を付与することができる。
【0066】
マルチラテレーションにおいては、航空機から送信される応答信号やスキッタ信号等を3箇所以上の受信局で受信する。次に、受信局間における受信時刻差を各受信局と航空機との距離の差に変換し、この距離差が一定であるという条件からなる双曲線同士の交点を求めることにより航空機の位置を算出する。
【0067】
このマルチラテレーションは、悪天候等による監視性能の低下やマルチパスによる監視対象の誤認を防止できる。このため、空港面におけるレーダ監視が及ばない領域の監視等に適している。
【0068】
なお、上記のようなモードSトランスポンダ送信信号解読装置を用いるモードSトランスポンダ送信信号解読方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施例に係る二次監視レーダシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るモードS応答信号解読装置の構成を示す図である。
【図3】微分処理を説明するための図である。
【図4】相関演算処理を説明するための図である。
【図5】図2のゲート処理部の詳細を示す図である。
【図6】ゲート処理を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るモードS応答信号解読装置の構成を示す図である。
【図8】モードS応答信号のパルスのパターンを示す図である。
【図9】パルス位置同期処理を説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る放送型自動従属監視システムの構成を示す図である。
【図11】従来の応答信号の解読方法を説明するための図である。
【図12】応答信号の反射ならびに干渉を説明するための図である。
【図13】応答信号のパルス変化を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…レーダアンテナ装置、3…送受信装置、4…モードS応答信号解読装置、5…航空機、6…トランスポンダ、7…モードS質問信号、8…モードS応答信号、9…ADS−B(放送型自動従属監視)システム、10…オムニアンテナ、11…受信装置、12…モードSスキッタ信号、41…検波部、42…A/D変換部、43…微分処理部、44…相関演算部、45…パルス再生部、46…パルス位相同期部、47…パルス解読部、48…パターン選択部、49…パルス解読部、49…ディレイ回路、50…SRフリップフロップ回路、51…OR回路、52…AND回路、61…アンテナ、62…受信装置、461…ゲート処理部、462…同期実行部
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダへ送信したモードS質問信号に対するモードS応答信号やトランスポンダが送信するモードSスキッタ信号(モードSショートスキッタ信号及びモードS拡張スキッタ信号)を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と、二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得する。
【0004】
一方、SSRは、地上から質問信号を送信し、これに対するトランスポンダからの応答信号を受信することにより航空機に関する各種情報を取得する。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードC、モードSに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものであり、モードSは上記の情報に加えて進路情報や速度情報等を得るためのである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、モードS用トランスポンダは、モードS応答信号と同様の信号形式を有し、且つ24ビットアドレスからなるモードSショートスキッタ信号と、同じくモードS応答信号と同様の信号形式を有し、且つ自機の位置や速度等の情報を示すモードS拡張スキッタ信号とを送信する機能を有している。なお、以降の説明においては、適宜、前記のモードSショートスキッタ信号とモードS拡張スキッタ信号とを“モードSスキッタ信号”と総称する。
【0007】
上記のモードSスキッタ信号は、モードS用トランスポンダから一定間隔をもって自動的に送信され、地上局だけでなく航空機でも受信可能である。このため、放送型自動従属監視(ADS−B:Automatic Dependent Surveillance Broad Assistance)に用いることができる。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のSSRモードSの応答信号及びモードSスキッタ信号を解読するにあたっては、図11(a)に示すように閾値を設定し、この閾値より出力が大であり、且つ図11(b)に示すようにパルス幅が所定の範囲内にあるものを信号として認識していた。
【0009】
なお、図11(b)においては、パルスWの幅が所定範囲内にあり、パルスXの幅が所定範囲の下限値を満たしておらず、パルスZの幅が所定範囲の上限値を超えている場合を示している。つまりパルスWのみが正しい信号として認識される。
【0010】
しかしながら、図12(a)に示すように、地上局102からのモードS質問信号103に対して航空機101から地上局102に送信されたモードS応答信号の直進波104が同じモードS応答信号の反射波105に干渉されることがある。また、この現象はモードSスキッタ信号を受信する際にも発生することがある。
【0011】
なお、以降の説明においては、適宜、上記のモードS応答信号及びモードSスキッタ信号を“モードSトランスポンダ送信信号”と総称する。
【0012】
上記のような反射波による干渉は到達経路による位相差が原因で発生し、この際に地上局102が受信するモードSトランスポンダ送信信号の強度Pは以下の式で表される。
【0013】
[数1]
P=αsinωt+Βsin(ω(t+d))・・・・・(1)
【0014】
なお、上記の式(1)におけるPは受信強度、αは直進波の減推量、Βは反射波の減推量、dは到達時間差である。
【0015】
また、図12(b)に示すように、地上局102の監視範囲内に航空機が複数存在する場合、航空機101からのモードSトランスポンダ送信信号104と、航空機106からのモードSトランスポンダ送信信号(非同期信号)107とが干渉することがある。
【0016】
つまり、図13(a)に示すパルスを直進波104、図13(b)に示すパルスを反射波105あるいは非同期信号107とすると、これら2つのパルスの位相が同一である場合は、図13(c)に示すような合成波が形成されてしまう。このパルスは上記の所定幅の上限値を超えていると誤認され、この結果、正しい信号として認識されない。したがって、モードSトランスポンダ送信信号を正しく解読することができなくなる。
【0017】
一方、2つのパルスの位相が異なる場合は、図13(d)に示すような合成波が形成されてしまう。このパルスは上記の所定幅の下限値を満たさないと誤認され、この結果、正しい信号として認識されない。したがって、図13(c)に示した場合と同様にモードSトランスポンダ送信信号を正しく解読することができなくなる。
【0018】
このような事情に鑑み本発明は、モードSトランスポンダ送信信号を正確に解読することが可能なモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生手段と、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期手段と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段とを有することを要旨とする。
【0020】
請求項2に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生手段と、モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択手段と、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期手段と、パルス位置同期処理がなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と、類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、誤差の補正値を算出する補正値算出手段とを有し、パターン選択手段は、補正値に基づいて基準位置を逐次補正することを要旨とする。
【0021】
請求項3に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生工程と、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期工程と、ゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程とを有することを要旨とする。
【0022】
請求項4に記載の本発明は、航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、パルスを再生するパルス再生工程と、モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択工程と、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期工程と、パルス位置同期処理がなされたパルスを基にモードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と、類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、誤差の補正値を算出する補正値算出工程とを有し、パターン選択工程においては、補正値に基づいて基準位置を逐次補正することを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、モードSトランスポンダ送信信号を解読するにあたって、微分処理、相関演算処理、パルス再生処理、ゲート処理、位相同期処理を行う。
【0024】
また、微分処理、相関演算処理、パルス再生処理、パターン選択処理、位置同期処理、補正値算出処理を行う。
【0025】
したがって、モードSトランスポンダ送信信号を正確に解読することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を提示しつつ本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置及びモードSトランスポンダ送信信号解読方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例に係るSSR(二次監視レーダ)システム1の構成図である。
SSRシステム1は、水平方向に360°回転可能な地上設置型レーダアンテナを備えるレーダアンテナ装置2と、送受信装置3と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4aと、航空機5に搭載されるトランスポンダ(モードSトランスポンダ)6とからなる。
【0028】
送受信装置3は、レーダアンテナ装置2を介してモードS質問信号7を送信し、これを受信したトランスポンダ6は、受信したモードS質問信号に対するモードS応答信号8を送信する。このモードS応答信号8は、レーダアンテナ装置2及び送受信装置3により受信され、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4aにより解読される。つまり、このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、モードS応答信号解読装置として機能する。
【0029】
なお、本図においてはモードS質問信号の生成部やユーザへ各種情報を提示するためのインタフェース部などの記載は省略している。
【0030】
図2は、図1に示した本発明の第1の実施例(実施例1)に係るモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aの構成図である。
このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、検波部41と、A/D変換部42と、微分処理部43と、相関演算部44と、パルス再生部45と、パルス位相同期部46と、パルス解読部47とからなる。
【0031】
検波部41は、受信されたRF信号に対して検波処理を行い、A/D変換部42は、検波された信号(検波信号)を多値デジタル信号に変換する。
【0032】
微分処理部43は、図3(a)に示すような波形を有するデジタル信号を微分処理する。この微分処理を得た信号の波形は図3(b)に示すようになる。
【0033】
相関演算部44は、微分化された信号(微分化信号)に対して相関演算処理を行う。この処理においては、微分化信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合(強さ)を演算する。
【0034】
モードS応答信号は、その規格によりパルス幅が1.0μsあるいは0.5μsに定められているため、P(t)・(−P(t+0.5))あるいはP(t)・(−P(t+1.0))に強い相関(図4中のA、B及びC)が表れる。
【0035】
パルス再生部45は、前記の相関の度合とモードS信号の規格とに基づいてパルスの位置を特定し、パルス列を再生する。なお、この際には相関の度合の閾値が用いられ、この閾値以上の相関度合を有する部分にパルスが再生される。
【0036】
パルス位相同期部46は、モードS信号の規格に基づいて、再生されたパルス列(再生パルス列)に対してゲート処理と位相同期処理とを行う。
【0037】
このパルス位相同期部46は、ゲート処理部461と同期実行部462とからなる。
【0038】
ゲート処理部461は、図5に示すとおり、其々において異なる遅延時間が設定されたディレイ回路50、SRフリップフロップ回路51、OR回路52、AND回路53からなる。
【0039】
このゲート処理部461は、図6に示すように、1.0μsおきに開閉時間が0.5μsのゲートを生成する。モードS信号の規格においては、そのパルス幅が0.5μsであり、パルスの繰り返し間隔は1.0μsであるため、図中のGに示すような不正な信号がゲートを通過することを防止できる。したがって、この後の位相同期処理及び解読処理を正確に行うことが可能となる。
【0040】
なお、本実施例においては、ゲートの開閉時間が0.5μsである場合を示したが、これに限定されず、ゲートの生成間隔がモードS信号の規格に応じた1.0μsであり、且つゲートの開閉時間が信号を通過させるに十分な時間であればよい。
【0041】
同期実行部462は、上記のゲートが生成された後に位相同期処理を行う。
【0042】
パルス解読部47は、前記のゲート処理と位相同期処理とがなされたパルスを基にモードS応答信号を解読する。
【0043】
以上のとおり、本実施例におけるモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aは、位相同期処置を行う際に不正な信号がゲートを通過することを防止する。したがって、モードS応答信号を正確に解読することができる。
【実施例2】
【0044】
図7は、本発明の第2の実施例(実施例2)に係るモードSトランスポンダ送信信号解読装置(モードS応答信号解読装置)4bの構成図である。
このモードSトランスポンダ送信信号解読装置4bは、上記のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aに変更を加えたものであり、パルス位相同期部46に代えてパターン選択部48とパルス位置同期部49とが設けられている。
【0045】
モードS信号のパルスの反復パターンは、予め定められており、図8(a)から(d)に示すもののいずれかである。
【0046】
上記のパターン選択部48は、これらのパルスのパターンから再生されたパルス列に最も類似するパルスのパターンを選択する。
【0047】
パルス位置同期部49は、選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う。
【0048】
なお、上記のパルス選択を行うにあたっては、その基準位置に誤差が発生する可能性がる。このため、パルス位置同期部49は、この誤差の補正値を算出し、これをパターン選択部48にフィードバックし、パターン選択部48は、この同期位置補正信号に基づいて基準位置を逐次補正する。
【0049】
以下、図9を参照しつつ、上記の処理の詳細について説明する。
パルス選択を行うにあたっての基準は、L、N、P、T、Vであり、Mの幅を計測することにより基準Nにおける補正値を算出し、次に、Oの幅を計測することにより基準Pの補正値を算出するというように、全ての基準における補正値が継続的に算出される。
【0050】
なお、Rはパルスが存在しないため基準とはなりえず、基準Tにおける補正値は、区間Qの倍数、つまり区間Q及びSの幅に基づいて算出される。
【0051】
パルス解読部47は、上記のパルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードS応答信号を解読する。
【0052】
以上のとおり、本実施例のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4bにおいては、パルス位置同期処理を行う際に予め適切なパルスのパターンを選択するため不正な信号が介在することを防止できる。また、パルスのパターンを選択する際の基準位置を逐次補正するためパルスパターンの選択を適切に行うことができる。したがって、モードS応答信号を正確に解読することが可能となる。
【実施例3】
【0053】
上記の実施例においては、本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4aまたは4bをSSRシステムに適用し、これらのモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bが前記のモードSトランスポンダ送信信号のうちモードS応答信号8を解読する場合を示したが、これに限定されない。
【0054】
つまり、本発明のモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bは、前記のモードSスキッタ信号を用いるADS−B(放送型自動従属監視)システムにも適用可能であり、前記のモードSトランスポンダ送信信号のうちモードSスキッタ信号を解読することもできる。以下の実施例は、この場合を示すものである。
【0055】
図10は、本発明の第3の実施例(実施例3)に係るADS−Bシステム9の構成図である。
このADS−Bシステム9は、航空機5(本図では、5a及び5bの2機)に搭載されるトランスポンダ6と、アンテナ61と、受信装置62と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bと、地上設置型のオムニアンテナ10と、受信装置11と、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bとからなる。
【0056】
つまり、本実施例のADS−Bシステム1においては、モードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bが地上だけでなく、航空機5内にも設けられる。
【0057】
なお、上記の航空機5a及び5bのモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a又は4bは、機内の任意の場所に設置することができる。
【0058】
トランスポンダ6は、モードSスキッタ信号(モードSショートスキッタ信号、モードS拡張スキッタ信号)12を所定の間隔をもって自動送信する。
【0059】
送信されたスキッタ信号12は、航空機5の受信装置62と、地上の受信装置11により受信される。
【0060】
つまり、ADS−Bシステム9においては、地上からの航空機監視のみならず、航空機5間での相互監視も可能である。
【0061】
また、従来の監視レーダでは、山間部や低高度を飛行する小型航空機の監視は困難であったが、オムニアンテナ10は山間部等にも容易に設置可能であるため、地形や監視対象の状態に影響されずに監視を行うことができる。
【0062】
また、上記のモードSショートスキッタ信号は、航空機の初期捕捉等に用いることができるため、本実施例のADS−Bシステム9を航空機衝突防止装置(ACAS:Airborne Collision Avoidance System)として機能させることができる。
【0063】
一方、モードS拡張スキッタ信号は、前記のモードS拡張スキッタ信号の信号長を拡張することによりデータ伝送量を増大させたものであり、自機の位置、速度、便名、進路変更の意図の有無といった様々な情報を送信することができる。したがって、本実施例のADS−Bシステム9を航空機間隔維持装置(ASAS:Airborne Separation Assurance System)として機能させることもできる。
【0064】
また、本実施例におけるモードSトランスポンダ送信信号解読装置4a及び4bの機能・構成等は上記の実施例1及び2と同様である。したがって、モードSスキッタ信号を正確に解読することができる。
【0065】
<マルチラテレーション機能>
上記の全ての実施例においては、レーダアンテナ装置2及び送受信装置3(図1)やオムニアンテナ10及び受信装置11(図10)がそれぞれ1個である場合を示したが、これらを3個以上離隔して配置することにより上記のSSRシステム1及びADS−Bシステム9にマルチラテレーション機能を付与することができる。
【0066】
マルチラテレーションにおいては、航空機から送信される応答信号やスキッタ信号等を3箇所以上の受信局で受信する。次に、受信局間における受信時刻差を各受信局と航空機との距離の差に変換し、この距離差が一定であるという条件からなる双曲線同士の交点を求めることにより航空機の位置を算出する。
【0067】
このマルチラテレーションは、悪天候等による監視性能の低下やマルチパスによる監視対象の誤認を防止できる。このため、空港面におけるレーダ監視が及ばない領域の監視等に適している。
【0068】
なお、上記のようなモードSトランスポンダ送信信号解読装置を用いるモードSトランスポンダ送信信号解読方法も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施例に係る二次監視レーダシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るモードS応答信号解読装置の構成を示す図である。
【図3】微分処理を説明するための図である。
【図4】相関演算処理を説明するための図である。
【図5】図2のゲート処理部の詳細を示す図である。
【図6】ゲート処理を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るモードS応答信号解読装置の構成を示す図である。
【図8】モードS応答信号のパルスのパターンを示す図である。
【図9】パルス位置同期処理を説明するための図である。
【図10】本発明の第3の実施例に係る放送型自動従属監視システムの構成を示す図である。
【図11】従来の応答信号の解読方法を説明するための図である。
【図12】応答信号の反射ならびに干渉を説明するための図である。
【図13】応答信号のパルス変化を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1…SSR(二次監視レーダ)システム、2…レーダアンテナ装置、3…送受信装置、4…モードS応答信号解読装置、5…航空機、6…トランスポンダ、7…モードS質問信号、8…モードS応答信号、9…ADS−B(放送型自動従属監視)システム、10…オムニアンテナ、11…受信装置、12…モードSスキッタ信号、41…検波部、42…A/D変換部、43…微分処理部、44…相関演算部、45…パルス再生部、46…パルス位相同期部、47…パルス解読部、48…パターン選択部、49…パルス解読部、49…ディレイ回路、50…SRフリップフロップ回路、51…OR回路、52…AND回路、61…アンテナ、62…受信装置、461…ゲート処理部、462…同期実行部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生手段と、
モードS信号の規格に基づいて、前記再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期手段と、
前記ゲート処理と前記位相同期処理とがなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と
を有することを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読装置。
【請求項2】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生手段と、
モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから前記再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択手段と、
前記選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期手段と、
前記パルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と、
前記類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、当該誤差の補正値を算出する補正値算出手段と
を有し、
前記パターン選択手段は、前記補正値に基づいて前記基準位置を逐次補正する
ことを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読装置。
【請求項3】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生工程と、
モードS信号の規格に基づいて、前記再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期工程と、
前記ゲート処理と前記位相同期処理とがなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と
を有することを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読方法。
【請求項4】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生工程と、
モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから前記再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択工程と、
前記選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期工程と、
前記パルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と、
前記類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、当該誤差の補正値を算出する補正値算出工程と
を有し、
前記パターン選択工程においては、前記補正値に基づいて前記基準位置を逐次補正する
ことを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読方法。
【請求項1】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生手段と、
モードS信号の規格に基づいて、前記再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期手段と、
前記ゲート処理と前記位相同期処理とがなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と
を有することを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読装置。
【請求項2】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読装置であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理手段と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算手段と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生手段と、
モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから前記再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択手段と、
前記選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期手段と、
前記パルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読手段と、
前記類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、当該誤差の補正値を算出する補正値算出手段と
を有し、
前記パターン選択手段は、前記補正値に基づいて前記基準位置を逐次補正する
ことを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読装置。
【請求項3】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生工程と、
モードS信号の規格に基づいて、前記再生されたパルスに対してゲート処理と位相同期処理とを行う位相同期工程と、
前記ゲート処理と前記位相同期処理とがなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と
を有することを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読方法。
【請求項4】
航空機に搭載されるトランスポンダが送信するモードSトランスポンダ送信信号を解読するモードSトランスポンダ送信信号解読方法であって、
前記モードSトランスポンダ送信信号に対して微分処理を行う微分処理工程と、
前記微分処理がなされた信号における強度の上昇変化率と下降変化率との相関の度合を演算する相関演算工程と、
前記相関演算処理により得られた相関の度合とモードS信号の規格とに基づいて、前記相関演算処理された信号におけるパルスの位置を特定し、当該パルスを再生するパルス再生工程と、
モードS信号の規格により定められたパルスのパターンから前記再生されたパルスに最も類似するパルスのパターンを選択するパターン選択工程と、
前記選択されたパルスのパターンに基づいてパルス位置同期処理を行う位置同期工程と、
前記パルス位置同期処理がなされたパルスを基に前記モードSトランスポンダ送信信号を解読する解読工程と、
前記類似したパルスのパターンを選択するにあたっての基準位置に誤差が発生した際に、当該誤差の補正値を算出する補正値算出工程と
を有し、
前記パターン選択工程においては、前記補正値に基づいて前記基準位置を逐次補正する
ことを特徴とするモードSトランスポンダ送信信号解読方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−162324(P2006−162324A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351163(P2004−351163)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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