説明

モールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物及びモールドコイル装置

【課題】機械強度に優れ、初期だけでなく通電状態での絶縁破壊電圧も高く維持することができ、かつコイルへの含浸性に優れたエポキシ樹脂組成物及びこのエポキシ樹脂組成物を用いたモールドコイル装置を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmのシリカ粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含むモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いたモールドコイル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物及びモールドコイル装置に係り、特に、高い耐電圧が要求されるイグニッションコイルの絶縁に好適なエポキシ樹脂組成物及びそのエポキシ樹脂組成物によって注形されたモールドコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器部品は、構成部品の保護、絶縁等を目的として、多くは注形用樹脂組成物で注形封止されている。イグニッションコイルの含浸注形には、絶縁性、機械特性、耐クラック性、長期信頼性に優れたエポキシ樹脂組成物が多く用いられている。近年、多機能化、小型化による内蔵部品の複雑化等により、絶縁距離が狭まりつつあり、注形用樹脂組成物には、絶縁破壊に対する要求が高まり、長期信頼性のある樹脂組成物が求められている。このようなエポキシ樹脂組成物において、絶縁信頼性を付与する手法としては、樹脂の不純分を低減したり、特定の機能性樹脂粉末を添加することが行われている(例えば、特許文献1乃至2参照。)。
【特許文献1】特開2005−187609号公報
【特許文献2】特開2006−169312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、そのような手法では、硬化物の機械強度の低下を防止することはできず、また初期の絶縁破壊電圧を向上することはできても、通電状態での絶縁破壊電圧の低下を防ぐには不十分であり、とくに高絶縁信頼性に対する要求が強いペンタイプのイグニッションコイル等への樹脂含浸が困難である。
【0004】
そこで、本発明は、このような従来の課題を解消するためになされたものであって、機械強度に優れ、初期だけでなく通電状態での絶縁破壊電圧も高く維持することができ、かつコイルへの含浸性に優れたエポキシ樹脂組成物及びこのエポキシ樹脂組成物を用いたモールドコイル装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物は、特定のシリカ粉を所定量用いることにより、注形に適し、絶縁信頼性に優れた樹脂組成物である。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmのシリカ粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含むことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明の他のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子とを必須成分として含有する主剤成分と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有する硬化剤成分とからなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmのシリカ粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含むことを特徴とするものである。
【0007】
そして、本発明のモールドコイル装置は、コイルを本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によって含浸・硬化させてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によれば、コイルへの含浸性に優れ、その硬化物の機械強度及び通電状態における絶縁破壊電圧の向上を図り、絶縁信頼性に優れた硬化物を得ることができ、モールドコイルを安価に製造することができる。
【0009】
また、本発明のモールドコイル装置によれば、本発明の樹脂組成物を用いて含浸、製造することにより機械強度及び絶縁信頼性に優れたモールドコイルとすることができ、動作信頼性の高い製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子量、分子構造等に制限されることなく一般的に用いられているものを用いることができ、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型等の芳香族系エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエーテル、シクロヘキサン誘導体等のエポキシ化によって得られる脂環族系エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0012】
また、この他に、必要に応じて液状のモノエポキシ樹脂等を併用成分として使用することができ、さらに、難燃性を付与しようとする場合には、ハロゲン系のエポキシ樹脂を使用することもできる。
【0013】
本発明に用いる(B)シリカ粒子としては、平均粒径10〜30μmのシリカ粒子をエポキシ樹脂組成物全体のうち30〜85質量%含有するものであり、40〜70質量%含有することが好適である。これによって、通電状態での絶縁破壊電圧の低下を防ぐことができる。これは通電状態で発生するトリーが、シリカ粒子の平均粒径が10〜30μmであればそれより平均粒径の小さいシリカ粒子を使用した場合に比較してその形成経路距離が長くなり、トリー経路が成長しにくくなることによるものである。
【0014】
このシリカ粒子としては、含浸用樹脂組成物中へ通常配合されるシリカ粒子であればよく、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、溶融球状シリカ、破砕シリカの区別なく使用可能であるが、樹脂組成物の粘度、絶縁破壊への耐性等の観点から溶融球状シリカであることが好ましい。これは、破砕シリカであると形状が鋭角のため電界集中が起きやすいが、球状シリカであるとそのような電界集中が起きにくく、より絶縁破壊が生じにくくなる。より具体的には、例えば、MSR−25、MSR−2212(以上、株式会社龍森製、商品名)、FB74、FB940、FB942(以上、電気化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0015】
このように比較的大きな粒径のシリカ粒子を用いると、硬化物の強度低下、樹脂組成物中でのシリカの沈降を生じる場合があり、これを防止するために平均粒径0.01〜1.5μmの微細シリカをエポキシ樹脂組成物中に5〜20質量%併用することが好ましい。このときエポキシ樹脂組成物中の微細シリカ粒子の含有量は、5〜10質量%であることがより好ましい。このような微細シリカとしては、例えば、クリスタライト5X、ヒューズレックスX(以上、株式会社龍森製、商品名)、SP−0.3B、SP−1B(扶桑化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法による50%平均粒径(D50)を算出することにより求めることができる。本明細書における他の成分においても同様である。
【0016】
この(B)シリカ粒子の配合量は、エポキシ樹脂組成物中に30〜90質量%の範囲で含有することが好ましく、含有量が30質量%未満では強度が十分に確保できない可能性があり、90質量%を超えると、粘度が上昇し、作業性が低下してしまう可能性がある。
【0017】
また、この(B)シリカ粒子は、樹脂組成物中へのカップリング剤の添加処理により、その表面改質を施すことで、さらに優れた硬化物の絶縁信頼性、機械強度を得ることができる。ここで用いることができるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられ、特性向上に優れていることからシランカップリング剤、特にアミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0018】
このアミノシラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)ブトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用してもよい。
【0019】
本発明に用いる(C)酸無水物としては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる、分子中に酸無水物基を有するものであれば特に制限されずに用いることができ、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらの硬化剤は単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
本発明に用いる(D)硬化促進剤としては、(A)エポキシ樹脂同士又は(A)エポキシ樹脂と(C)酸無水物との反応を促進する作用を有するものであれば特に制限されるものではなく、硬化促進剤として一般的に用いられているもの、例えば、2−エチル−4−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)及びそのオクチル塩等の3級アミン類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0021】
この(D)硬化促進剤の配合量は、(C)酸無水物 100質量部に対して、0.3〜5質量部の範囲であることが好ましく、配合量が0.3質量部未満であると、硬化時間が長く硬化特性が十分に向上できないおそれがあり、5質量部を超えると、反応が速く、ポットライフが短くなるため好ましくない。
【0022】
本発明に用いる(E)樹脂微粒子としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる平均粒径0.1〜0.5μmのものが使用できる。このような樹脂微粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂微粒子、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂微粒子、コア層とシェル層の2層からなるコアシェルゴム等が挙げられ、この樹脂微粒子を配合することにより、機械強度や絶縁信頼性をより向上させることができる。また、これらは単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0023】
この(E)樹脂微粒子の配合量は、(B)シリカ粒子 100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であることが好ましく、配合量が0.05未満であると、機械強度等の強化が十分に得られず、5質量部を超えると、樹脂組成物の粘度が高く、含浸性が悪くなり巣が生じやすくなってしまう。
【0024】
本発明に用いる(F)酸化チタン微粒子としては、樹脂組成物に添加配合するものとして用いられている一般に市販されている二酸化チタンの微粒子が使用できる。この酸化チタン微粒子としては、平均粒径 0.05〜0.3μmのものであることが好ましく、例えば、PT501R(石原産業社製、商品名)、KA−15(チタン工業社製、商品名)等が挙げられ、この酸化チタンを配合することにより、機械強度や絶縁信頼性をより向上させることができる。また、これらは単独又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0025】
この(F)酸化チタン微粒子の配合量は、(B)シリカ粒子 100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であることが好ましく、配合量が0.05質量部未満であると、電気絶縁性等の向上が十分に図られず、5質量部を超えると、樹脂組成物の粘度が高く、含浸性が悪くなり巣が生じやすくなってしまう。
【0026】
本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物には、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、アルミナ、マグネシア、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、クレー、ベンガラ、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、カップリング剤、消泡剤、顔料その他添加剤及び難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等を必要に応じて配合することができる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物を、注形材料として調整するにあたっては、上記した各成分を均一に混合することにより得ることができるが、好ましくは、(A)エポキシ樹脂及び(B)シリカ粒子の必須成分と、(E)樹脂微粒子、(F)酸化チタン微粒子、その他必要に応じて配合される成分とを充分混合して主剤成分とした後、この主剤成分に、あらかじめ(C)酸無水物、(D)硬化促進剤の必須成分と必要に応じて配合される成分とを混合した硬化剤成分を、均一に混合することにより製造することができる。なお、このとき、硬化剤成分に無機充填材を配合しておいてもよい。
【0028】
このようにして得られた含浸用エポキシ樹脂組成物は、電気機器部品、例えば、コイル、ICチップ等の封止、被覆、絶縁等に適用すれば優れた特性と信頼性を付与することができる。中でも絶縁信頼性の要求されるモールドコイル、特にイグニッションコイルを注形含浸するのに好ましく使用できる。
【0029】
本発明のモールドコイル装置は、コイルを本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によって含浸・硬化させてなるものである。このようなモールドコイル装置としては、直径2.0cm以下のプラスチックケース中に配置された、直径30μm以下の被覆導線を鉄心に巻いたコイルを前記モールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によって含浸・硬化させてなるペンタイプのイグニッションコイルが挙げられ、このイグニッションコイルにおける樹脂占有体積は30%以下であることが好ましい。
【0030】
このタイプのイグニッションコイル用の樹脂組成物としては、その含浸性から、従来、粒径が8μm以下、好ましくは6μm以下の粉砕シリカが一般に用いられていた。シリカ粒子の径が大きくなると、レジン内でフィラーの沈降がおこり、また硬化物の強度低下が生じてしまい、製品として使用することが難しかった。
【0031】
本発明のモールドコイル装置は、本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を用いて、コイルを注形により含浸、硬化させてなることを特徴とするものであり、このモールドコイル装置を得るには、コイル等の電気・電子部品に対し、本発明のエポキシ樹脂組成物を2液性のエポキシ樹脂における常法に従い注形し、硬化させることにより製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0033】
(実施例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB942(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径16μm)200質量部及び微細シリカとして、SP−1B(平均粒径1μm、株式会社扶桑化学工業製、商品名)10質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0034】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0035】
なお、得られた樹脂組成物の成分の配合については、表1に示した。以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0036】
(実施例2)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB950(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径25μm)200質量部及び微細シリカとしてSP−1B(平均粒径1μm、株式会社扶桑化学工業製、商品名)10質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0037】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0038】
(実施例3)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてヒューズレックスE−1(株式会社龍森製、商品名;平均粒径15μm)200質量部及び微細シリカとしてSP−1B(株式会社扶桑化学工業製、商品名;平均粒径1μm)10質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0039】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0040】
(実施例4)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB942(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径16μm)185質量部及び微細シリカとしてSP−1B(株式会社扶桑化学工業製、商品名;平均粒径1μm)10質量部、水酸化アルミニウムとしてハイジライトH42M(昭和電工株式会社製、商品名)15質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0041】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0042】
(実施例5)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB942(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径16μm)200質量部及び微細シリカとしてSP−1B(株式会社扶桑化学工業製、商品名;平均粒径1μm)10質量部、酸化チタンとしてPT501−R(石原産業株式会社、商品名)3質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0043】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0044】
(実施例6)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB942(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径16μm)200質量部及び微細シリカとしてSP−1B(平均粒径1μm、株式会社扶桑化学工業製、商品名)10質量部、樹脂微粒子として2質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0045】
次いで、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤である2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0046】
(比較例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカとしてクリスタライトAA(株式会社龍森製、商品名;平均粒径7μm)200質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0047】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0048】
(比較例2)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてFB942(株式会社電気化学工業製、商品名;平均粒径16μm)200質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーシ株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0049】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0050】
(比較例3)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としてEP4100E(旭電化工業株式会社製、商品名)100質量部、シリカ粒子としてクリスタライトAA(株式会社龍森工業製、商品名:平均粒径7μm)200質量部、樹脂微粒子として平均粒径0.3μmのコアシェルゴム(ガンツ化成株式会社製、商品名:AC−3355)10質量部、消泡剤としてTSA720(東芝シリコーン株式会社製、商品名)0.1質量部、シランカップリング剤としてTSL8350(東芝シリコーン株式会社、商品名)0.5質量部を混合して主剤とした。
【0051】
次いで、これとは別に、酸無水物としてHN5500E(日立化成工業株式会社製、商品名)100質量部に、硬化促進剤として2E4MZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)0.5質量部を混合して硬化剤とし、この硬化剤を主剤100質量部に対して30質量部加えてモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0052】
(試験例)
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させた硬化物のガラス転移点、曲げ強さ及び絶縁破壊の強さを評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0053】
【表1】

【0054】
*1 混合液粘度:主剤と硬化剤を均一に混合した直後の粘度を、B型粘度計を用いて、25℃、12rpmの条件で測定した。
*2 主剤沈降性:1L丸缶に高さ12cmまで樹脂を入れ、100℃で1時間放置後と2時間放置後のフィラーの堆積度合いを、ヘラを挿入することにより評価した。
なし…堆積なし、少し…やわらかい堆積、沈降…かたい堆積
*3 コイル含浸性:イグニッションコイルにエポキシ樹脂組成物を真空注入し硬化後、コイルの断面を観察することにより評価した。
良好…ボイドなし、やや良好…ボイド数1個、連続ボイドあり
*4 ガラス転移点:TMA法により、昇温温度を15度/minとして室温から185℃まで昇温させて測定した。
*5 曲げ強さ:JIS C 2105に準じ、温度25℃において測定した。
*6 絶縁破壊電圧:エポキシ樹脂組成物に針電極(オゲラ針、針先端曲率半径:5μm)を絶縁間距離2mmになるように埋め込み、硬化させた。針電極に様々な電圧を印加させ、絶縁破壊寿命(V−t特性)を取得し、100時間及び1000時間における絶縁破壊電圧を示した。
【0055】
これらの結果から、本発明のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物は、作業性がよく、含浸性が良好な樹脂組成物を得ることができ、その硬化物は機械強度、絶縁信頼性にも優れるため、この樹脂組成物を用いて得られるモールドコイル装置は装置の信頼性の高いものである。また、原料として特殊で高価な成分を用いることがないため原料の調達が容易で、製造を低コストで行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、
前記(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmのシリカ粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含むことを特徴とするモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子とを必須成分として含有する主剤成分と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有する硬化剤成分とからなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、
前記(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmのシリカ粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含むことを特徴とするモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子と、(E)樹脂微粒子とを必須成分として含有する主剤成分と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有する硬化剤成分とからなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物であって、
前記(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmの粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含み、
前記(E)樹脂微粒子として平均粒径0.0001〜0.001μmの微粒子を、前記(B)シリカ粒子100質量部に対して0.05〜5.0質量部含むことを特徴とするモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(A)エポキシ樹脂と、(B)シリカ粒子と、(F)酸化チタン微粒子とを必須成分として含有する主剤成分と、(C)酸無水物と、(D)硬化促進剤とを必須成分として含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記(B)シリカ粒子として平均粒径10〜30μmの粒子を、エポキシ樹脂組成物中に30〜85質量%含み、
前記(F)酸化チタン微粒子として平均粒径0.001〜0.1μmの微粒子を、前記(B)シリカ粒子100質量部に対して0.05〜5.0質量部含むことを特徴とするモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)シリカ粒子が、球状シリカ粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)シリカ粒子として、エポキシ樹脂組成物中に、平均粒径10〜30μmの粒子を30〜85質量%、平均粒径0.01〜1.5μmの粒子を5〜20質量%含むことを特徴と請求項1乃至5のいずれか1項記載のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)シリカ粒子が、アミノシラン系カップリング剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
コイルを請求項1乃至7のいずれか1項記載のモールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によって含浸・硬化させてなることを特徴とするモールドコイル装置。
【請求項9】
前記モールドコイル装置が、直径2.0cm以下のプラスチックケース中に配置された、直径30μm以下の被覆導線を鉄心に巻いたコイルを前記モールドコイル含浸用エポキシ樹脂組成物によって含浸・硬化させてなるペンタイプのイグニッションコイルであり、このイグニッションコイルにおける樹脂占有体積が30%以下であることを特徴とする請求項8記載のモールドコイル装置。

【公開番号】特開2008−195782(P2008−195782A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30820(P2007−30820)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】