説明

ユーザ起動の簡単なワンタッチ・スキャナ較正方法とソフトウェア

本発明は、標準スキャナまたは関連装置を較正するためのユーザに簡単な「ワンクリック」方法に関する。カラーターゲットをスキャナに挿入し、本発明によるユーザインターフェイスで提供されるアイコンを一度クリックすることによって、ユーザは較正開始を選択することができる。本発明の専用アルゴリズムは、取得ステップと変換ステップとを実行し、この結果は、較正する装置の座標とメーカ形成のカラーターゲットの座標との対応関係で、最適なカラーとして表示される。このような方法は、単純で、較正処理の知識を必要としない。従って、ほとんど計算機に精通していないユーザでも、内蔵された光源の使用中の自然減衰を補償するように、上記スキャナまたは関連装置を周期的に較正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが、工業用標準カラーターゲットを挿入することで、自動的または定期的にスキャナおよび関連装置を較正することができる簡単なワンステップ方法に関する。本発明の方法は、較正を行うユーザからの入力操作またはスキルをほとんど必要とせず、またさらに、ユーザに気付かれずに複雑な方法で較正処理を最適化する。このような較正方法は、スキャナ、すなわち、CCFL、CISまたは標準の蛍光ランプを含む装置の存続期間を通して使用することができ、従って装置の存続期間中、一定の機能を確保することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、米国特許商標庁のクラス分類358/1.5に最も密接に関連する。クラス分類358は、静止画の情報伝達もしくは再生、または局部光源下の静止画の配列処理を含み、すなわち時間と共には変化しない画像からなる密度差を含む。サブクラスは、形成手段または画像媒体の位置もしくは速度が、データ表示を変更させることに関する主題を含む。
【0003】
最も簡単な態様として、本発明は、スキャナを自動的に較正する目的を有する光学スキャナもしくは関連装置、または、完了したスキャンで最適なカラーを再生するための装置(明解な説明にするため、ここで最も説明する装置は、標準のスキャナになろう)に挿入される物理的なカラーターゲットと、ソフトウェアプログラムと、を結合させる方法を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明以前に存在していた較正処理は、数学的処理が困難で、非常にエラーを起こす傾向があり、または、計算機に精通していないユーザに、難しいスキャナ較正処理を含むマルチステップ処理を要求していた。この例は、ウェブサイトのURL(http://triptych.brynmawr.edu/guides/scanner.html)におけるブリンマー大学(Bryn Mawr University)のトリプティク(Triptych)「三大学デジタル図書館(The Tri-College Digital Library)」の項目を参照のこと。さらに、Margaret Motamed 氏の米国特許6,327,047号「自動スキャナ較正方法(Automatic scanner calibration)」も参照のこと。この米国特許は、自己較正の最新方法を示しているが、グレースケール(gray scale)に限定されており、かつ、「前記較正したターゲットを保持するために、前記スキャン表面の近くに存在する非反射のスリーブ」のようなスキャン先頭ページに付着するターゲットを必要とする。さらに、Motamed 氏の方法は、専用のソフトウェアを含まないだけでなく、むしろサードパーティのソフトウェアを頼りにしている。さらに、Motamed 氏の特許での処理は、較正が必要か否かにかかわらず、スキャンのたびに、ターゲットを走らせ、ユーザはアドレス指定しなければならない。最終的に、上記に参照とした特許のターゲットは、印刷することと、そしてこの後にスキャナで処理することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
産業界で良く知られているように、冷陰極管蛍光ランプまたは標準の蛍光ランプは、カラー温度、単一性および光出力の面で、時間の経過と共に低下する。この低下が発生すると、スキャンした画像は、再生画像におけるカラーの明解度および一貫性に関して、影響を受けることになる。本発明は、広い態様において、ユーザが所有するスキャナを簡単に自動的に較正できる標準のカラーターゲットと、ソフトウェアプログラムとを協働させて使用する新規でかつ独自な方法から成る。周期的な較正は、スキャナの存続期間中、ユーザにスキャナの安定した最適な結果を与えるであろう。また、周期的な較正は、老朽化する機械に起因する通常の機能低下を抑制するであろう。
【0006】
スキャン処理において、光源は、スキャンで得られた画像で観察される実際のカラーを規定することになる。本発明の方法において、光源は、冷陰極管蛍光ランプ、または標準の蛍光ランプを仮定しているが、これらの光源は、リン光体が白色光を発光する。デジタル用静止画カメラ、ビデオカメラ、スキャナ、モニター、ビデオグラバーおよびプリンターのようなデジタル用画像操作に使用されるすべての装置は、各々が自身の転送特性または送信特性を有している。これらの装置は、画像データの強度分布を変更することができ、高度なノンリニアの方法で、画像データのいくつかの特性を変更することができる。
【0007】
各装置における画像データの変更は、たびたび制御不能を生じさせる。また、画像を形成する1つ以上のいくつかのシステムを使用して、対象画像が観察または操作されるとき、画像データの変更は深刻な問題を引き起こすことがある。非常に暗い、非常に明るいまたは非常に平面的な画像は、制御不能となった変更の最も一般的な特徴である。ノンリニアな変更の直接結果として得られる色相シフトは、たびたび何の検討材料も残さないことになる。
【0008】
また、種々の計算機プラットフォーム間で、ビューイング・ガンマ(viewing gamma)が大きく相違する事実も考慮すべき事項である。スキャナのようなハードウェアの部分に特定されるガンマ補正は、製造メーカにより変化するが、ほとんどの場合明確でない。従って、ユーザは、何らかの較正をするのに先立ち、最初に転写特性を測定しなければならない。このことは、計算機に精通していないユーザが、確かに知らない例外的事項であり、計算機に精通しているユーザに、複雑な解決法による補正を要求するものである。
【0009】
転写機能、特に転写でのリニア性は、カラー管理で最も重要な部分である。このことは、非常に暗い画像/明るい画像の原因、または、色相シフトの原因、例えばオレンジ色がオレンジ色または赤色のように見えることの原因となる。モニター、スキャナおよびカメラが動作するRGB(赤、緑、青)モードにおいて、各原色のカラーに対して、各色の強さレベルの所定の数値が与えられる。通常の3*8ビット=24ビットのフルカラーのモードの場合、3原色の各々の強さは、256レベルだけとなる。混合したとき、他のすべてのカラーを作り出すことができ、モニター上に2563=16.7百万色を見ることになる。各々の256レベルが、リニアに較正されないと、カラースペース全体(カラーの全範囲)が同様に較正されないことになり、ハイレベルなグラフィックスの製図家(draftsperson)は、出力結果にまったく満足しないことになるであろう。大部分のユーザは、精通していない者に属するので、典型的には標準の低価格から中価格のスキャナを使用している。このようなユーザでも、仮に、較正方法、および較正と画像品質との関連を知れば、視覚による較正を行うことになる。視覚による較正は、スキャナ自身の較正だけでなく、ユーザのモニターおよびプリンターの較正を含む複数のステップを含むことになる。この視覚による較正処理は、面倒であり、特別正確なものでもない。
【0010】
本発明の方法は、計算機に最も精通していないユーザでさえ、容易に使用できる簡単な「ワンクリック」処理であって、上述した特有の問題を解決するための較正および補正に関する方法である。ユーザは、単に標準のカラーターゲットをユーザ自身のスキャナに挿入し、スキャンボタンを押すだけである。ここでは、本発明は、実例としてコダック社のQ−60ターゲットを使用する。本発明のユーザインターフェイスは、開始すると、ユーザ計算機のスクリーン上に現れる。このとき、ユーザは、単にインターフェイス画面の「取得ターゲット(acquire target)」を選択する。取得期間中、スキャナは、所定の既知モードの状態になり、ランプが安定化され、こうして、テストターゲットがスキャンされる。スキャンターゲット全体が本発明のソフトウェアによって一旦受け取られると、改良されたパターン認識は、ターゲットのテスト・エリアを指し示すために、ターゲットに付随するクロップマーク(crop mark)を設定するのに使用される。ターゲットは、スキャンされ、かつ、クロップマークをカラーターゲットの適切なエリアに置くように設定するのに、専用のアルゴリズムを使用して自動的にトリミングされる。
【0011】
ここで詳細に説明する較正処理に関連して、基礎的な2つのデータセットがある。第1のデータセットは、スキャナによって形成されるカラーデータから成る。また、第2のデータセットは、テストターゲットをベースとして形成されるはずのカラーデータである。本発明のシステムは、カラーターゲットの座標を使用して当該ターゲットにおけるカラー正方形の各々の場所を特定し、特定した後に、テストターゲット上の各々の正方形のために、特定したカラーとメーカが形成したカラー座標でのカラーとを比較する。この処理は、数秒以内で行われ、実質的にユーザは気付かない。
【0012】
本発明のアルゴリズムは、上記の比較処理で使用され、テストターゲットのデータに類似させるために、スキャナが形成したデータの最も有力な変換を決定する。こうして、この変換は、各スキャンに使用され、装置のカラー正確度を保証する。また、本発明のユーザインターフェイスが含むのは、ドロップダウン(drop down)またはスライドスケール(slide scale)のメニュー項目形式でのオプションである。これらのメニュー項目から、ユーザは、必要に応じて明るい方から暗い方へと、カラー・ガンマを変更またはカスタマイズするために選択することができる。
【0013】
要約すると、本発明による方法は、シングルステップであり、ユーザにとってワンタッチ手段で数秒内にスキャナを較正することができ、しかも特別な技術または較正処理の知識を必要とすることも無く較正することができる。ユーザは、単にカラーターゲットを挿入し、1つのボタンを押すだけであり、較正処理は即座に実行され、実質的にユーザに気付かれない。このような方法の市場ニーズは大きいが、典型的な計算機ユーザに、このような簡単な較正の解決法は未だ提供されていない。
【0014】
添付図面を参照し、本発明を、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の詳細な記述は、実施例として本発明を説明するものであり、本発明の原理を制限するためのものではない。ここでの説明は、当業者に、本発明の内容を理解して使用してもらうために明確化するものであり、種々の実施例、適用例、変形例、代替例および本発明の使用例を記述することになる。この説明は、本発明を実行するのに、現時点で最適な態様と信じるものを含む。
【0016】
この観点から、ソフトウェア・アーキテクチャ、プログラミング、および計算機オペレーションに関係する当業者に、本発明の内容を理解して使用してもらうために供される方法で、十分に詳細に説明する方法もあるが、本発明は、5つの比較的単純な図により説明を行うこととする。
【0017】
図1は、異なった値における8ビットデータのガンマ関数を使用して、ビット深さによる圧縮の理論上の上限を示すグラフである。この図1は、基本的に、階調度の機能を理解するのに手助けとなる整理されたデータとして、カラー・ガンマを示すのに使用される。数学的に表現するため、逆ガンマ関数の1次導関数に相当するX軸20を、バイナリーコードで、微分係数分の1の値を8ビットの精度で表現する。Y軸22は、灰色のパーセンテージK%を示すために符号化する。ガンマ補正は、黒レンジの0%から75%の間で精度を低減させる。ガンマスペース2.2、および7ビット以上の分解能のとき、精度が明るい領域で有効となる。カラー画像にとって、7ビットの分解能は、カラー構成要素(赤、緑および青)の各々が半分にカットされるので、8倍でカラーが減色されたと同一である。これは、JPGフォーマットが中間域の圧縮設定で使用されるときの品質とほぼ同一の品質である。ガンマ補正24は、黒レンジの75%から100%の間で精度を得ている。
【0018】
図2は、工業用標準カラーターゲットの例として、コダック社のQ−60カラーターゲットを表示する。このターゲットは、本発明の保護対象ではなく、本発明の説明のためだけに記載するものである。特定のカラー正方形部分26の各々は、ターゲットのカラー部分を表す。クロップマーク28は、カラーターゲットに付随しており、ターゲットの他のすべてのエリアを排除して、テスト・エリアを取得する本発明のソフトウェアを助けるのに不可欠なものである。取得したカラーターゲットが一旦トリミングされると、クロップマーク内の各々のターゲットエリアは、カラー正方形部分の各々の座標に付随するものとして、較正処理で使用される唯一のエリアとなる。これらの座標は、本発明方法の較正における比較処理および変換処理の基礎を提供することになる。
【0019】
図3は、本発明の方法により実行されるステップの順序を説明するフローチャートである。このフローは、スキャナにカラーターゲットを挿入することから開始される(30)。カラーターゲットの挿入後、本発明のユーザインターフェイスが開始され(32)、ここで、ユーザは「取得ターゲット」を選択する(34)。一旦カラーターゲットを取得すると、本発明のアルゴリズムは、ターゲット処理を起動する(36)。アルゴリズムが実行する間、カラーターゲットに付随するクロップマークが取得され、かつ、カラー部分は、装置メーカの形成した座標に最も一致した状態に対応させて処理および変換される(38)。取得処理、変換処理およびカラー処理が完了した時点で、較正は完成したことになる(40)。
【0020】
図4は、本発明の方法によるユーザインターフェイスを示し、ユーザ計算機のスクリーン上に、較正用ソフトウェア42を立ち上げたときを表示している。ユーザインターフェイスに含まれるオプションは、カラーターゲットの取得によって較正を開始するオプション、および、要求があればカラー・ガンマを調整するオプションがある。「取得ターゲット(Acquire Q60 Target )」用ボタンまたはアイコン44は、ユーザによる1回のクリックでターゲットの取得を開始すること、および、ユーザによる追加入力無しで較正用の残りの処理ステップをユーザ計算機が取り込む(include)ことを可能にする。これに加えて、ユーザは、必要であれば、ガンマ用オプション(Gamma)46をクリックすることで、カラー・ガンマを調整することができる。ガンマ調整が実行されると、各自の計算機用モニターに実行結果が表示されるので、ユーザは、カラーターゲットの正方形部分を視覚的に比較することができる。このオプションは、たいがい、より高度な技術力を有するユーザによって選択される。
【0021】
図5は、本発明のソフトウェアのユーザインターフェイスを示し、一旦取得されたカラーターゲット48を表示している。取得されたカラーターゲットは、トリミングされて、ユーザインターフェイス50上に表示される。また、取得されたカラーターゲットは、本発明のソフトウェアが較正用に検出したと同一状態を示すカラーの正方形部分を含む。さらなる選択が、ユーザに可能であり、トリミングの繰り返し(Redo Crop)52、スキャンの繰り返し(Redo Scan)54、ガンマ調整(Gamma)56、またはターゲット処理(Process Q60 Target)58のような処理を有効にすることができる。ユーザ観点から見たこの段階でのステップ処理は、新規タスクの処理ではなく、実際は較正処理の繰り返しである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ガンマ関数を使用する、ビット深さによる圧縮の理論的上限を示す図である。
【図2】較正に使用する工業用標準カラーターゲットを示す図である。
【図3】較正処理全体にかかわる本発明の方法処理のフローチャートである。
【図4】較正を開始するオプションを表示する本発明の方法におけるユーザインターフェイスの画面例である。
【図5】スキャンカラーターゲットを含み、ガンマ調整オプションを表示する本発明の方法におけるユーザインターフェイスの画面例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルステップのユーザインターフェイスおよびこのためのソフトウェアを使用して、カラー画像を出力する標準スキャナまたは関連装置の簡単なワンタッチ較正方法。
【請求項2】
較正が、前記スキャナまたは関連装置にカラーターゲットを挿入することに依存する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カラーターゲット上のカラーの取得および変換に使用される専用アルゴリズムを含む計算機プログラム。
【請求項4】
較正のテスト・エリアを決定するために、前記カラーターゲット上にクロップマークを設置した後で、前記取得を実行する請求項3に記載の計算機プログラム。
【請求項5】
前記スキャナまたは関連装置のメーカが作成したカラー座標に照らして、前記カラーターゲット上のカラーを比較および最適化する変換アルゴリズムをさらに含む請求項4に記載の計算機プログラム。
【請求項6】
前記計算機プログラムは、ユーザインターフェイスの表示をさらに含み、較正オプションをユーザが選択できる請求項3に記載の計算機プログラム。
【請求項7】
選択方法が、インターフェイスのアイコンをクリックすることにより較正を開始するユーザ用オプションを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
カラー・ガンマを増加または減少させる選択方法をさらに含む請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−536856(P2007−536856A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512560(P2007−512560)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001212
【国際公開番号】WO2005/107231
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506370940)ビジョニア,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】