説明

ラジカル共重合体の製法およびそれに用いる連続式マイクロ反応装置

【課題】未反応物や副生成物の少ない高品質なラジカル共重合体を高収率で製造することのできるラジカル共重合体の製法と、この製法を効率的に実施することのできる連続式マイクロ反応装置を提供する。
【解決手段】ラジカル重合開始剤の存在下、2種以上のラジカル重合性単量体を原料として、下記の工程(I)と、少なくとも1回の工程(II)を行うことを特徴とするラジカル共重合体の製法。(I)少なくとも1種のラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液とを、微小径の第一の反応流路に導入して連続的に重合反応させる工程。(II)先の工程で得られた重合物溶液に、少なくとも1種のラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液、および、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液の少なくとも一方を添加し、第二の反応流路に導入して連続的に重合反応させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル共重合体の製法、および、それに用いる連続式マイクロ反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル共重合体は、重合に使用するラジカル重合性単量体の組み合わせやその割合等を変えることにより、様々な物性を付与できることから、多様な用途において使用されている。このラジカル共重合体は、反応速度の異なる2種以上のラジカル重合性単量体を使用するため、その反応後期には、反応速度の小さいラジカル重合性単量体からなるホモポリマーが副生されやすくなり、生成物の各種性能が低下することが知られている。
【0003】
そこで、このホモポリマーの生成を抑制するために、反応速度の大きいラジカル重合性単量体を過剰量使用し、共重合体中のラジカル重合性単量体の構成が所望の割合となった段階で、反応を停止させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記ホモポリマーの生成を抑制するために、反応がある程度進行した段階で、さらにラジカル重合性単量体を添加して反応させる方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/049256号
【特許文献2】国際公開第2008/047783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示のように、途中で反応を停止させる方法では、未反応のラジカル重合性単量体が多く、収率が低いという問題がある。また、上記特許文献に開示のように、途中でラジカル重合性単量体を追加する方法は、未反応のラジカル重合性単量体が減少し、収率は向上するものの、高収率で共重合体を得るためには、ラジカル重合性単量体を添加して反応させる工程を何度も繰り返す必要がある。特に、反応速度の大きく異なるラジカル重合性単量体を使用する場合には、上記工程の繰り返し回数が非常に多くなってしまう。そのため、これらラジカル共重合体を製造する方法と、それに用いる反応装置の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、未反応物や副生成物の少ない高品質なラジカル共重合体を高収率で製造することのできるラジカル共重合体の製法と、この製法を効率的に実施することのできる連続式マイクロ反応装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ラジカル重合開始剤の存在下、2種以上のラジカル重合性単量体を反応させてラジカル共重合体を製造する方法であって、下記の工程(I)と、少なくとも1回の工程(II)を含むことを特徴とするラジカル共重合体の製法を第1の要旨とする。
(I)2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液とを、微小径の第一の反応流路に導入して、これらの原料溶液を上記第一の反応流路内にて連続的に重合反応させる工程。
(II)先の工程(I)で得られた重合物溶液に、上記2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液、および、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液の少なくとも一方を添加し、上記第一の反応流路に続く第二の反応流路に導入して、さらに連続的に重合反応させる工程。
【0009】
また、本発明は、異なる種類のラジカル重合性単量体を含む2種以上のモノマー原料溶液をそれぞれ貯留する複数のモノマー貯槽と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液を貯留する開始剤貯槽と、上記複数のモノマー原料溶液中の任意のモノマー原料溶液と開始剤原料溶液とを、その内部流通中に第一段の重合反応を連続的に生じさせる第一反応流路と、第一反応流路の下流側に設けられ、上記第一反応流路で生じた重合物溶液と、これに添加された任意のモノマー原料溶液および開始剤原料溶液の少なくとも一方とを、その内部流通中に第二段の重合反応を連続的に生じさせる第二反応流路とを備え、上記第一反応流路および第二反応流路は微小径であり、第一反応流路の上流側には、各貯槽ごとに設けられた供給流路を通じて第一段の重合反応で用いる各原料溶液をそれぞれ所定の割合で送出する第一溶液供給手段と、この第一溶液供給手段から供給された原料溶液を混合する第一溶液混合手段と、この第一溶液混合手段で混合された原料溶液を上記第一反応流路に導入する第一導入流路とが設けられ、上記第一反応流路と第二反応流路との間には、各貯槽ごとに設けられた供給流路を通じて第二段の重合反応で用いる任意の原料溶液を所定の割合で送出する第二溶液供給手段と、上記第一反応流路で得られた重合物溶液と上記第二溶液供給手段から供給された原料溶液とを混合する第二溶液混合手段と、この第二溶液混合手段で混合された混合溶液を上記第二反応流路に導入する第二導入流路とが設けられている連続式マイクロ反応装置を第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、ラジカル共重合体の製造に際して、不純物が少なく高純度なものをより収率良く製造できる手段はないか鋭意検討を重ねた。そして、製造工程,使用する装置等に関してさらに研究を重ねた結果、ラジカル重合性単量体の重合反応に際して、微小径の反応流路を用い、ラジカル重合性単量体の添加を二段階以上で行うと、反応効率良く高純度のラジカル共重合体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明のラジカル共重合体の製法は、(I)2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液とを、微小径の第一の反応流路に導入して、これらの原料溶液を上記第一の反応流路内にて連続的に重合反応させる工程を第一段とし、(II)先の工程(I)で得られた重合物溶液に、上記2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液、および、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液の少なくとも一方を添加し、上記第一の反応流路に続く第二の反応流路に導入して、さらに連続的に重合反応させる工程を第二段として、ラジカル共重合体を製造する方法である。このため、反応速度の異なる2種以上のラジカル重合性単量体(モノマー)を使用する場合でも、ホモポリマー等の不純物の生成が少なく、高純度のラジカル共重合体を高収率で得ることが可能となる。しかも、重合反応を、微小径の反応流路の管内で行うことから、反応中の原料溶液および重合物溶液の温度を、上記重合反応に適した温度に容易に制御することができる。これにより、ラジカル共重合体の収率が、より向上する。
【0012】
そして、上記微小径の各反応流路が、連続式マイクロ反応装置内蔵の反応流路である場合は、上記二段階以上の重合工程を、より簡単に構築することができる。
【0013】
また、本発明の連続式マイクロ反応装置(マイクロリアクター)は、その内部で第一段の重合反応を連続的に生じさせる微小(マイクロ)径の第一反応流路と、内部で第二段の重合反応を連続的に生じさせる微小径の第二反応流路とを、原料溶液の流れ方向に対して連続で備え、個々の反応流路の上流側に、各原料溶液を所定の割合で送出する溶液供給手段と、原料溶液および重合体溶液等を混合する溶液混合手段と、溶液混合手段で混合された原料溶液および重合体溶液等を上記各反応流路に導入する導入流路とが、それぞれ設けられている。これにより、ホモポリマー等の不純物の生成が少ない、高純度のラジカル共重合体を高収率で得ることができる。
【0014】
また、上記第一反応流路および第二反応流路を所要の温度に維持する加熱手段を備える連続式マイクロ反応装置は、これら第一反応流路および第二反応流路とその内部の溶液とを、上記重合反応に適した温度に容易に維持することができる。これにより、未反応物や不純物(副生成物等)の少ない高品質なラジカル共重合体を、高効率で製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態におけるラジカル共重合体の製法の概略を示す流れ図である。
【図2】本発明の第2実施形態におけるラジカル共重合体の製法の概略を示す流れ図である。
【図3】本発明の第3実施形態におけるラジカル共重合体の製法の概略を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施例で使用する連続式マイクロ反応装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0017】
本実施形態におけるラジカル共重合体の製法は、ラジカル重合開始剤の存在下、2種以上のラジカル重合性単量体を、二段階以上に分けて重合反応させ、ラジカル共重合体を製造する方法であり、長尺の微小径反応流路(以下、「マイクロ反応管」と言う)を複数組備えた連続式マイクロ反応装置を用いて、原料溶液の「供給(添加)−混合−重合」からなる一工程を、複数回(複数工程)連続で行うことを特徴とする。
【0018】
まず、上記ラジカル共重合体の製造に使用する連続式マイクロ反応装置(マイクロリアクター)について説明する。図1〜図3は、本発明の第1〜第3の実施形態で用いられる連続式マイクロ反応装置の構成を示す流れ図(フローチャート)である。
【0019】
本実施形態で使用する連続式マイクロ反応装置は、原料となる溶液を所定の流量で送出する原料供給部(図中点線で囲った部分)と、この原料供給部から供給される各種原料溶液(ラジカル重合性単量体溶液または重合開始剤溶液)を混合する溶液混合手段としてのミキサーM1,M2,M3と、原料の重合反応を行う反応流路であるマイクロ反応管R1,R2,R3と、上記原料供給部から各ミキサーM1,M2,M3に原料溶液を輸送する供給流路としての供給管S1,S2,S3,S4と、ミキサーM1,M2,M3で混合された混合溶液を各マイクロ反応管R1,R2,R3に導く導入流路である導入管D1,D2,D3と、上記マイクロ反応管R1,R2,R3を所定温度に維持するための加熱手段としてのホットウォーターバスHおよび反応後の重合物溶液を冷却するための冷却手段としての冷却管C等を組み合わせて構成されている。
【0020】
図1に示す第1実施形態は、原料溶液の「供給(添加)−混合−重合」からなる一工程を2回(二段階で)行うものであり、略Y字型の混合流路を有するミキサーM1とマイクロ反応管R1とからなる工程(I)と、略十字型の混合流路を有するミキサーM2とマイクロ反応管R2とからなる工程(II)とを備えている。すなわち、第1実施形態のラジカル共重合体の製法は、2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液(貯槽T1に貯留)と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液(貯槽T2に貯留)とを、ミキサーM1で混合した後、マイクロ反応管R1に導入してその内部で連続的に重合反応させる工程(I)と、上記工程(I)で得られた重合物溶液に、上記2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種のラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液(貯槽T3に貯留)と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液(貯槽T4に貯留)とを添加してミキサーM2で混合した後、マイクロ反応管R2に導入してその内部で連続的に重合反応させる工程(II)とを備えている。
【0021】
また、図2に示す第2実施形態も、上記第1実施形態と同様、原料の重合を二段階で行うものであり、略T字型の混合流路を有するミキサーM1とマイクロ反応管R1とからなる工程(I)と、同じく略T字型の混合流路を有するミキサーM2とマイクロ反応管R2とからなる工程(II)とが形成されている。第1実施形態と異なるのは、上記工程(II)で、1種の原料溶液(この場合はモノマー原料溶液)しか添加していない点である。すなわち、第2実施形態のラジカル共重合体の製法は、上記モノマー原料溶液(貯槽T1に貯留)と上記開始剤原料溶液(貯槽T2に貯留)とを、ミキサーM1で混合した後、マイクロ反応管R1に導入してその内部で連続的に重合反応させる工程(I)と、上記工程(I)で得られた重合物溶液に、上記モノマー原料溶液(貯槽T3に貯留)のみを添加してミキサーM2で混合した後、マイクロ反応管R2に導入してその内部で連続的に重合反応させる工程(II)とを備えている。
【0022】
そして、図3に示す第3実施形態は、原料溶液の「供給(添加)−混合−重合」からなる一工程を3回(三段階で)行うものである。すなわち、第3実施形態のラジカル共重合体の製法は、上記モノマー原料溶液(貯槽T1に貯留)と上記開始剤原料溶液(貯槽T2に貯留)とを、ミキサーM1で混合した後、マイクロ反応管R1に導入してその内部で連続的に重合反応させる工程(I)と、上記工程(I)で得られた重合物溶液に、上記モノマー原料溶液または上記開始剤原料溶液の少なくとも一方(貯槽T3に貯留)を添加してミキサーM2で混合した後、マイクロ反応管R2に導入してその内部で連続的に重合反応させる一回目の工程(II)と、この一回目の工程(II)で得られた重合物溶液に、上記モノマー原料溶液または上記開始剤原料溶液の少なくとも一方(貯槽T4に貯留)を添加してミキサーM3で混合した後、マイクロ反応管R3に導入してその内部で連続的に重合反応させる二回目の工程(II)〔第三段以降の重合反応工程を、工程(III),工程(IV),・・・と表記する場合もある。〕とを備えている。
【0023】
上記実施形態で用いられている連続式マイクロ反応装置の各部について、より詳しく説明すると、上記各原料供給部(図中点線で囲った部分)は、ラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液および重合開始剤を含む開始剤原料溶液を、それぞれ一定流量で供給可能とする装置であり、原料溶液を個別に貯留する貯槽T1,T2,T3,T4と、これら原料溶液を所定流量で送り出すための溶液供給手段であるポンプP1,P2,P3,P4とから構成されている。使用するポンプとしては、例えば、シリンジポンプ,プランジャポンプ,ギアポンプ,チューブポンプ等の定量式ポンプを用いることができる。これらのうち、流量の精度や耐久性に優れることから、シリンジポンプまたはプランジャポンプを用いることが好ましい。
【0024】
上記貯槽T1,T2,T3,T4は、ラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液とを、個別に貯留するための容器である。なお、上記貯槽T1,T2,T3,T4の中で、モノマー原料溶液を貯留する貯槽を「モノマー貯槽」、開始剤原料溶液を貯留する貯槽を「開始剤貯槽」と呼ぶが、構成上大きな差があるわけではない。そして、各貯槽の内容物(原料溶液)は、使用する原料溶液を装置に投入・添加する順序により適宜入れ替えることができる。また、同じ成分で同じ混合比の原料溶液が2つ以上存在する場合は、2つ以上のポンプで1つの貯槽を共有する場合もある。
【0025】
つぎに、上記溶液混合手段としてのミキサーM1,M2,M3は、上記ポンプP1,P2,P3,P4から、供給管S1,S2,S3,S4を通じて供給されたモノマー原料溶液や開始剤原料溶液等を混合するものであり、上記原料溶液あるいは反応後の重合溶液の2液以上が合流可能な混合形式を備えるものであればよい。例えば、T字型コネクタ,Y字型コネクタ,十字型(クロス)コネクタや、グラジエントミキサー等の微量流体用静止型混合器、マイクロチップ等があげられる。なかでも、価格が安価であり、装置設計が容易であるT字型,Y字型,十字型等のコネクタが好ましい。
【0026】
上記各ミキサーM1,M2,M3の下流側に接続されるマイクロ反応管R1,R2,R3は、ミキサーM1,M2,M3で混合された原料溶液または重合溶液と原料溶液からなる混合溶液を、その内部に流通させて所定時間(所定温度で)滞留させることにより、内部で重合反応を行うものである。使用できる材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)や鉄、チタンやハステロイ(登録商標)(ニッケル,モリブデン,クロム等からなる耐食合金)等の金属のほか、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂,ポリエーテルエーテルケトン,ガラスやセラミックス等の非金属があげられる。
【0027】
上記マイクロ反応管R1,R2,R3は、微小(マイクロ)径で長尺であるが、その断面(幅方向断面)形状は、円形や楕円形のほか、四角形等の各種形状とすることができる。そして、その内径は0.1〜5mmであることが好ましい。なお、上記内径は、マイクロ反応管R1,R2,R3の最も幅広の部分であり、円形の場合は直径、楕円の場合は長径、四角形の場合は対角線が上記範囲に収まることが望ましい。また、その長さは、2種以上のラジカル重合性単量体を重合させ、共重合体中のラジカル重合性単量体の構成が所望の割合となる段階まで反応させることが可能な長さであればよく、マイクロ反応管R1,R2,R3の内径等にもよるが、長さ0.1〜50mであることが好ましい。
【0028】
なお、上記マイクロ反応管R1,R2,R3は、後記する加熱手段(ホットウォーターバスH)の中で、螺旋状に数巻〜数十巻程度巻回した状態で使用される。また、マイクロ反応管R1,R2,R3は、途中で2以上の流路(管)に分岐していてもよく、2以上の流路が合流していてもよい。そして、上記マイクロ反応管R1,R2,R3の反応領域から反応生成物取り出し口までの間に、反応によりマイクロ反応管R1,R2,R3内部で発生する圧力を外部に逃がすための圧力調整手段(例えば、背圧弁等)を設けてもよい。
【0029】
つぎに、上記各マイクロ反応管R1,R2,R3を反応に適した温度に維持する加熱手段としては、上記ホットウォーターバスHのほか、恒温水槽等を使用することもでき、さらに高温が必要な場合は、オイルバス等を利用してもよい。なお、上記加熱手段は、「反応に適した温度」に維持管理することを主眼としているため、通常、室温より高めの温度に設定はされるものの、反応の発熱状況によっては、水,オイル等の熱媒体が、反応溶液および反応管を冷却する作用を奏する場合もある。
【0030】
また、反応後の重合反応物を冷却する冷却手段としては、上記マイクロ反応管R1,R2,R3および恒温水槽と同様の構成とすればよい。例えば、上記重合反応終了後の重合物溶液をその内部に流通させることのできる冷却管Cと、この冷却管Cを浸漬する恒温水槽等から構成することができる。
【0031】
なお、上記ミキサーM1,M2,M3内の溶液流路(混合管)や、これらミキサーM1,M2,M3で混合された混合溶液を各マイクロ反応管R1,R2,R3に導く導入管D1,D2,D3等に用いられる配管(チューブ)の断面形状と口径(内径)は、上記マイクロ反応管R1,R2,R3と同じか類似のものであることが望ましい。
【0032】
つぎに、上記各実施形態のラジカル共重合体の製法で用いる原料(原料溶液)やその混合比等について述べる。
【0033】
上記モノマー原料溶液に含まれるラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸およびそのエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩および(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルp−トルエンスルホン酸塩などの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルおよびその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾールなどのビニル基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−ε−カプロラクタムなどのN−ビニル環状ラクタム化合物;エチレン、プロピレン、イソプレンなどのオレフィン誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸などのスチレン誘導体;アリルアミンおよびその誘導体;アクリロニトリルおよびその誘導体などがあげられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸のことである。そして、これらのラジカル重合性単量体は、単独でもしくは2種を組み合わせて使用され、3種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、上記開始剤原料溶液に含まれるラジカル重合開始剤としては、上記原料のラジカル重合性単量体や、重合溶媒の種類などに応じて適宣選択して使用でき、その種類としては、有機過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤、過硫酸塩などがあげられる。
【0035】
上記有機過酸化物としては、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ−3,5,−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、ジサクシニックアシッドペルオキシドなどがあげられる。
【0036】
また、上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−ジアミジニル−2,2’−アゾプロパン・一塩酸塩、2,2’−ジアミジニル−2,2’−アゾブタン・一塩酸塩、2,2’−ジアミジニル−2,2’−アゾペンタン・一塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−4−ジエチルアミノ)ブチロニトリル・塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがあげられる。
【0037】
さらに、上記レドックス系開始剤としては、例えば、過酸化物と還元剤との組合せなどをあげることができ、上記過酸化物としては、例えば、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられる。また、上記還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、硫酸水素ナトリウムなどの硫酸水素塩、硫酸第一銅、硫酸第一鉄などの金属塩、L−アスコルビン酸、還元糖などがあげられる。
【0038】
これらのラジカル重合開始剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記ラジカル重合開始剤の使用量については、ラジカル重合性単量体成分に対して、0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がさらに好ましく、0.05〜3重量%が最も好ましい。重合反応を行う際には、ラジカル重合開始剤とともに、適宜必要に応じて任意の連鎖移動剤,助触媒,pH調節剤,緩衝剤等を用いることもできる。
【0039】
また、上記各実施形態のラジカル共重合体の製法で用いるラジカル重合反応溶媒(原料溶液の溶媒)としては、従来ラジカル重合において使用されている公知の溶媒が使用でき、原料のラジカル重合性単量体やラジカル重合開始剤の種類などに応じて適宣選択して使用できる。
【0040】
上記ラジカル重合反応溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなど)、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、スルホン酸エステル(ジメチルスルホキシドなど)、炭酸エステル(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、脂環式炭酸エステル(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、炭化水素(ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレンなど)が使用できる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
なお、上記ラジカル重合性単量体の濃度は、反応溶液に対して20〜50重量%であることが好ましく、30〜40重量%であることがより好ましい。上記ラジカル重合性単量体の濃度が20重量%未満であると、反応液に対するラジカル共重合体の収量が低くなる傾向がみられる。また、上記濃度が50重量%を超えると、反応溶液の粘度が上昇しやすく、反応管の閉塞などのトラブルが生じやすくなる傾向がみられる。
【0042】
また、上記各実施形態のラジカル共重合体の製法においては、上記ラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合性開始剤を含む開始剤原料溶液とを、それぞれ一定流量で溶液混合手段(ミキサーM1,M2,M3)に供給するのであるが、互いの流量比は、各成分の粘度等により適宜に設定され、先に述べたようにラジカル重合性単量体とラジカル重合性開始剤との重量比となるようにすればよい。具体的には、経済性,反応性等の観点から、ラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液の流量と、ラジカル重合性開始剤を含む開始剤原料溶液の流量の比が、体積基準(体積比:モノマー原料溶液/開始剤原料溶液)で、(0.1/0.9)〜(0.6/0.4)であることが好ましく、より好ましくは(0.45/0.55)〜(0.5/0.5)である。
【0043】
上記のような各実施形態におけるラジカル共重合体の製法によれば、反応速度の異なる2種以上のラジカル重合性単量体(モノマー)を使用する場合でも、ホモポリマー等の不純物の生成が少なく、高純度のラジカル共重合体を高収率で得ることが可能となる。しかも、重合反応を、微小径のマイクロ反応管の内で行うことから、反応中の原料溶液および重合物溶液の温度を、上記重合反応に適した温度により緻密に制御することができる。これにより、ラジカル共重合体の収率が、より向上する。
【0044】
また、上記各実施形態における連続式マイクロ反応装置は、上記したような高品質のラジカル共重合体を、容易にかつ高効率で製造することができる。しかも、この連続式マイクロ反応装置は、その生産量を増やそうとする場合でも、上記ミキサーとマイクロ反応管のセットを並列で増設すれば足りるため、生産規模の拡大が容易であるという利点もある。
【0045】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
<反応装置>
この実施例で使用する連続式マイクロ反応装置は、先に述べた第1実施形態と同様、原料溶液の「供給(添加)−混合−重合」からなる一工程を二段階で行うものであり、図4に示すように、原料溶液を貯蔵する供給瓶(貯槽)11,12,13,14と、原料溶液を所定流量で送出するプランジャポンプ(溶液供給手段)1a,1b,1c,1dと、T字型コネクタ(T字型ユニオンティ)からなるミキサー(溶液混合手段)2a,2b,2cと、原料の重合反応を行う反応流路(滞留管)となるステンレス製の反応管3a,3bと、これら反応管3a,3bを所定温度に維持するウォーターバス(加熱手段)20と、重合後の重合物溶液を冷却するための冷却管(冷却手段)4および水槽(冷水槽)24等を主体として構成されている。
【0047】
なお、図4中の符号5は上記反応管3a,3b内の背圧を調節する背圧弁(圧力調整手段)であり、6は冷却後の重合物溶液を貯蔵する共重合体溶液瓶(共重合体貯槽)、7は上記重合物溶液を撹拌するマグネチックスターラー(撹拌手段)、8,9は重合反応中の溶液サンプルを採取するためのサンプル採取管、10,10’は原料溶液中の気体を低減する脱気装置、21はウォーターバス20中の温水を撹拌する撹拌器、22はヒーター、23はヒーター22を制御する温度調節器、G1〜G3はいずれも圧力計である。また、図中の弁(バルブ)のうち、V1〜V4はいずれも逆止弁を、V5〜V9はいずれも三方弁(三方コック)を示す。
【0048】
[工程(I)]
上記連続式マイクロ反応装置は、二つのプランジャポンプ1a,1bに、それぞれ円筒形のステンレス製配管(供給管)を逆止弁V1,V2を介して接続し、各供給管の他端をミキサー2a(T字型コネクタ)に接続する。このミキサー2aの出口には、同じく円筒形のステンレス製配管(導入管)を介して、上記混合してなる原料溶液を流通させるステンレス製反応管3aを接続し、さらに上記反応管3aを直径8cm程度で巻回して、この巻回部分を所定温度に設定したウォーターバス20に浸漬する。なお、供給瓶11にはラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液が、供給瓶12にはラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液が貯蔵されている。
【0049】
[工程(II)]
ついで、上記反応管3aの他端と、プランジャポンプ1cに接続した供給管の一端とを、ミキサー2b(T字型コネクタ)に接続し、このミキサー2bの出口に、さらにミキサー2c(T字型コネクタ)の一端を接続する。そして、ミキサー2cの他端に、プランジャポンプ1dに接続した供給管の一端を接続し、このミキサー2cの出口に、混合してなる重合体溶液および追加した原料溶液を流通させるステンレス製反応管3bを接続し、さらに上記反応管3bを直径8cm程度で巻回して、この巻回部分を所定温度に設定したウォーターバス20に浸漬する。なお、供給瓶13にはラジカル重合性単量体を含むモノマー原料溶液が、供給瓶14にはラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液が貯蔵されている。
【0050】
[冷却工程]
つぎに、ウォーターバス20から延びた反応管3bの他端を冷却管4と接続し、さらに上記冷却管4を直径8cm程度で巻回して、この巻回部分を所定温度に設定した冷水槽24に浸漬する。ついで、冷水槽24から延びた冷却管4の他端を、背圧弁5を介して、重合物溶液を貯蔵する共重合体溶液瓶6に接続する。
【0051】
上記連続式マイクロ反応装置には、以下の部材を使用した。
・プランジャポンプ:フロム社製 (商品名 AI−12−33)
・ミキサー:T字型ユニオンティ (材質 SUS316)
・マイクロ反応管:ステンレス製
3a(第一段)−内径1.78mm,長さ10m
3b(第二段)−内径1.78mm,長さ16.5m
・背圧弁:ジーエルサイエンス社製 (商品名 バックプレッシャーレギュレーター
材質−ポリエーテルエーテルケトン 動作圧0.28MPa)
・冷却管:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製(内径1.56mm,長さ5m)
【0052】
上記連続式マイクロ反応装置を用いて、実施例1のN−ビニルピロリドン(NVP)/酢酸ビニル(VAc)共重合体を作製した。また、同じ連続式マイクロ反応装置を用いて実施例2のN−ビニルピロリドン(NVP)/メタクリル酸メチル(MMA)共重合体を作製した。比較例1として、フラスコ中で溶液重合を行い、上記実施例1と同様のN−ビニルピロリドン(NVP)/酢酸ビニル(VAc)共重合体を作製した。さらに、比較例2として、同じフラスコを用いて、実施例2と同様のN−ビニルピロリドン(NVP)/メタクリル酸メチル(MMA)共重合体を作製した。そして、製法の異なる上記実施例1と比較例1の間で、「反応率」,「収率」,「重量平均分子量(Mw)」を比較した。同様に、製法の異なる上記実施例2と比較例2の間で、「反応率」,「収率」,「重量平均分子量(Mw)」を比較した。なお、上記反応率,収率,重量平均分子量(Mw)の測定方法は、最後にまとめて記述する。
【0053】
<使用原料>
実施例1,2および比較例1,2の作製には、以下のような原料(溶液)を使用した。
〔ラジカル重合性単量体〕
・NVP(N−ビニルピロリドン)
・VAc(酢酸ビニル)
・MMA(メタクリル酸メチル)
いずれも、窒素で30分以上バブリングを行ったものを用いた。
〔ラジカル重合開始剤〕
・2,2−アゾビスジスルフェイトジハイドレイト
〔溶媒〕
・混合溶媒:(原料の溶解用)窒素で30分以上バブリングしたイソプロピル
アルコール/水=1/1(重量比)の混合溶媒
【0054】
[実施例1]
まず、上記使用原料を用いて、連続式マイクロ反応装置に供給する原料溶液を調整した。各原料溶液の成分を以下に示す。
・原料溶液(A):NVP33.81g,VAc26.19gおよび混合溶媒40g
・原料溶液(B):ラジカル重合開始剤1.8gおよび混合溶媒98.2g
・原料溶液(C):NVP34.65gおよびVAc15.35g
・原料溶液(D):ラジカル重合開始剤2.82gおよび混合溶媒47.18g
【0055】
作製は、上記連続式マイクロ反応装置の供給瓶11にモノマー原料溶液(A)を、供給瓶12に開始剤原料溶液(B)をセットし、それぞれプランジャポンプ1a,1bにより、流量比が、原料溶液(A)/原料溶液(B)=1/1(体積比)となるようにミキサー2aに供給し、80℃のウォーターバス20中の反応管3a内で、滞留時間(重合反応時間)が4分間となるように合計流量を調節しながら、重合反応させた。
【0056】
ついで、反応管3aから出た重合物溶液に、供給瓶13にセットしたモノマー原料溶液(C)と、供給瓶14にセットした開始剤原料溶液(D)とを、それぞれプランジャポンプ1c,1dを用いて、流量比が、原料溶液(C)/原料溶液(D)=1/1(体積比)、[原料溶液(A)と原料溶液(B)の流量の和]/[原料溶液(C)と原料溶液(D)の流量の和]=2/1(体積比)となるようにミキサー2b,2cに供給し、80℃のウォーターバス20中の反応管3b内で、滞留時間(重合反応時間)が4分間となるように合計流量を調節しながら、重合反応させた。
【0057】
つぎに、反応管3bから出た重合物溶液を、0℃の冷水槽24に浸漬した冷却管4内で充分に冷却し、重合反応を停止させた後、回収・サンプリングして、混合溶媒および未反応のNVPおよびVAcを除去することにより、N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体を得た。上記実施例1における共重合体の反応率は85%、収量が129.2gでその収率が81%、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は15500であった。
【0058】
[実施例2]
原料溶液を下記の成分としたこと以外、上記実施例1と同様にして、実施例2のN−ビニルピロリドン/メタクリル酸メチル共重合体を得た。
・原料溶液(E):NVP7.62g,MMA8.38gおよび混合溶媒84g
・原料溶液(F):ラジカル重合開始剤1.44gおよび混合溶媒98.56g
・原料溶液(G):NVP15.07gおよびMMA34.93g
・原料溶液(H):ラジカル重合開始剤4.5gおよび混合溶媒45.5g
この実施例2における共重合体の反応率は65%、収量が72gでその収率が62%、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は21000であった。
【0059】
[比較例1]
滴下漏斗2つおよび還流管を備えたフラスコに、開始剤原料溶液(B)を投入し80℃に加熱した。ここに、滴下漏斗を用いて、モノマー原料溶液(A)を5分間かけて投入し、さらに40分間反応させた。続いて、モノマー原料溶液(C)と開始剤原料溶液(D)とを、それぞれの滴下漏斗を用いて5分間かけて投入し、さらに40分間反応させた。その後、重合体溶液を0℃の冷水槽に浸漬して充分に冷却し、重合反応を停止させた後、回収・サンプリングして、混合溶媒および未反応のNVPおよびVAcを除去することにより、N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体を得た。上記比較例1における共重合体の反応率は64%、収量が97gでその収率が61%、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は15000であった。
【0060】
[比較例2]
原料溶液を下記の成分としたこと以外、上記比較例1と同様にして、比較例2のN−ビニルピロリドン/メタクリル酸メチル共重合体を得た。
・原料溶液(E):NVP7.62g,MMA8.38gおよび混合溶媒84g
・原料溶液(F):ラジカル重合開始剤1.44gおよび混合溶媒98.56g
・原料溶液(G):NVP15.07gおよびMMA34.93g
・原料溶液(H):ラジカル重合開始剤4.5gおよび混合溶媒45.5g
この比較例2における共重合体の反応率は33%、収量が36gでその収率が31%、得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は22000であった。
【0061】
<測定方法>
(1)ラジカル重合性単量体の「反応率」
反応溶液の測定は、液体クロマトグラフ(ジーエルサイエンス社製、商品名:HPLC)を用いて下記の条件で行った。
(測定条件)
・カラム:Inertsil ODS−3 4.6mmφ×150mm
・展開溶媒:リン酸緩衝溶液:メタノール=80/20(体積比)
・カラム温度:40℃
・測定サンプルの注入量:10μL
(検量線作成)
NVP,VAc,MMAの上記混合溶媒溶液を調整し、展開溶媒で30倍に希釈したものを用いて検量線を作成した。
【0062】
(反応開始前の反応溶液の測定)
調整したモノマー原料溶液0.1mLを、混合溶媒〔イソプロピルアルコール/水=1/1(重量比)〕1mLで希釈して擬似反応溶液を作成し、上記方法にて測定した。
(反応溶液の測定)
重合反応後の溶液サンプルを採取し、上記方法にて測定した。
【0063】
(反応率)
上記測定で得られた各ラジカル重合性単量体の濃度から、「反応率」を下記計算式より算出した。
反応率(%)=[1−(反応液の各ラジカル重合性単量体のモル数)/(反応前の各ラジカル重合性単量体のモル数の和)]×100
【0064】
(2)ラジカル共重合体の「収率」
検量線を用いて、各ラジカル重合性単量体の濃度から反応前後の濃度差を算出し、この濃度の比を、「共重合体中の各ラジカル重合性単量体重量割合」として算出した。そして、上記共重合体中の各ラジカル重合性単量体重量割合を用いて、共重合体の収量から「収率」を算出した。
【0065】
(3)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定を行い、測定した。
(測定条件)
・カラム:GPCカラムTSK−GEL(Shodex社製)
・検出器:RI
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:アセトニトリル/酢酸ナトリウム=1/1(体積比)
・標準サンプル:N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(重量比7/3)
N−ビニルピロリドン/メタクリル酸メチル共重合体(重量比8/2)
【0066】
以上より明らかな通り、本発明のラジカル共重合体の製法およびそれに用いる連続式マイクロ反応装置によれば、短時間かつ高収率で、高品質なラジカル共重合体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のラジカル共重合体の製法およびそれに用いる連続式マイクロ反応装置は、短時間かつ高収率で、高品質なラジカル共重合体を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
C 冷却管
1,D2,D3 導入管
H ホットウォーターバス
1,M2,M3 ミキサー
1,P2,P3,P4 ポンプ
1,R2,R3 マイクロ反応管
1,S2,S3,S4 供給管
1,T2,T3,T4 貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合開始剤の存在下、2種以上のラジカル重合性単量体を反応させてラジカル共重合体を製造する方法であって、下記の工程(I)と、少なくとも1回の工程(II)を含むことを特徴とするラジカル共重合体の製法。
(I)2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液とを、微小径の第一の反応流路に導入して、これらの原料溶液を上記第一の反応流路内にて連続的に重合反応させる工程。
(II)先の工程(I)で得られた重合物溶液に、上記2種以上のラジカル重合性単量体のうちの少なくとも1種を含むモノマー原料溶液、および、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液の少なくとも一方を添加し、上記第一の反応流路に続く第二の反応流路に導入して、さらに連続的に重合反応させる工程。
【請求項2】
上記微小径の各反応流路が、連続式マイクロ反応装置内蔵の反応流路である請求項1記載のラジカル共重合体の製法。
【請求項3】
異なる種類のラジカル重合性単量体を含む2種以上のモノマー原料溶液をそれぞれ貯留する複数のモノマー貯槽と、ラジカル重合開始剤を含む開始剤原料溶液を貯留する開始剤貯槽と、上記複数のモノマー原料溶液中の任意のモノマー原料溶液と開始剤原料溶液とを、その内部流通中に第一段の重合反応を連続的に生じさせる第一反応流路と、第一反応流路の下流側に設けられ、上記第一反応流路で生じた重合物溶液と、これに添加された任意のモノマー原料溶液および開始剤原料溶液の少なくとも一方とを、その内部流通中に第二段の重合反応を連続的に生じさせる第二反応流路とを備え、上記第一反応流路および第二反応流路は微小径であり、第一反応流路の上流側には、各貯槽ごとに設けられた供給流路を通じて第一段の重合反応で用いる各原料溶液をそれぞれ所定の割合で送出する第一溶液供給手段と、この第一溶液供給手段から供給された原料溶液を混合する第一溶液混合手段と、この第一溶液混合手段で混合された原料溶液を上記第一反応流路に導入する第一導入流路とが設けられ、上記第一反応流路と第二反応流路との間には、各貯槽ごとに設けられた供給流路を通じて第二段の重合反応で用いる任意の原料溶液を所定の割合で送出する第二溶液供給手段と、上記第一反応流路で得られた重合物溶液と上記第二溶液供給手段から供給された原料溶液とを混合する第二溶液混合手段と、この第二溶液混合手段で混合された混合溶液を上記第二反応流路に導入する第二導入流路とが設けられていることを特徴とする連続式マイクロ反応装置。
【請求項4】
上記第一反応流路および第二反応流路を所要の温度に維持する加熱手段を備える請求項3記載の連続式マイクロ反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−107163(P2012−107163A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258944(P2010−258944)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】