説明

ラミネート体の形成方法およびラミネート体

【課題】中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートが施されたラミネート体の形成方法であって、該画像の変色を抑制することができるラミネート体の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるラミネート体の形成方法は、第1重合体および中空構造を有する粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分に、第2重合体を含む密着層を有するシートを密着させるラミネートであって、前記第1重合体のガラス転移温度が、前記第2重合体のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート体の形成方法およびラミネート体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録において、白色の色材を含有するインク組成物の需要がある。白色の色材としては、酸化チタンの粉末が典型的な例であり、分散剤等とともにインク組成物に配合されることが多い。また、近年では、色材として、特許文献1に開示されているような中空粒子が利用されるようになってきた。
【0003】
一方、従来から、印刷物の保護等を行う目的で、各種印刷物に対してラミネートを施すことが行われている(例えば、特許文献2参照)。印刷物に対するラミネートの一般的な態様としては、表面に接着層を有するシートまたはフィルムを、印刷物に対して熱融着等によって貼り合わせて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4880465号公報
【特許文献2】特開2000−318093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、色材として中空構造を有する粒子を用いて形成した印刷物に対してラミネートを施す場合、色材の本来の色味が損なわれてしまうことがあった。具体例としては、白色の色材として中空粒子を用いた印刷物に対してラミネートを行ったときに、白色の印刷部分の白色度が低下する、あるいは透明化してしまうことがあった。発明者らは、このような不具合が、色材の中空構造に由来して生じるとの知見を得て、本発明を為すに至った。
【0006】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートが施されたラミネート体の形成方法であって、該画像の変色を抑制することができるラミネート体の形成方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートを行ったラミネート体であって、該画像の変色が抑制されるラミネート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明にかかるラミネート体の形成方法の一態様は、
第1重合体および中空構造を有する粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、
前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分に、第2重合体を含む密着層を有するシートを密着させるラミネートであって、
前記第1重合体のガラス転移温度が、前記第2重合体のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする。
【0009】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色が生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記第1重合体のガラス転移温度が、0℃以上であることができる。
【0011】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色がさらに生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記インク組成物中の前記第1重合体の含有量が、5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0013】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色がさらに生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記インク組成物中の前記粒子の含有量が、5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0015】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色がさらに生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることができる。
【0017】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色がさらに生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0018】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記第2重合体のガラス転移温度が、前記中空構造を有する粒子のガラス転移温度または熱分解温度よりも低いことができる。
【0019】
本適用例のラミネート体の形成方法によれば、画像の変色がさらに生じにくいラミネート体を形成することができる。
【0020】
[適用例7]
本発明にかかるラミネート体の一態様は、
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、第1重合体および中空構造を有する粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成され、第2重合体を含む密着層を介して密着されたシートと、
を含み、
前記第1重合体のガラス転移温度が、前記第2重合体のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする。
【0021】
本適用例のラミネート体によれば、画像層の粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。
【0022】
[適用例8]
適用例7において、
前記第1重合体のガラス転移温度が、0℃以上であることができる。
【0023】
本適用例のラミネート体によれば、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0025】
1.ラミネート体の形成方法
本実施形態のラミネート体の形成方法は、画像形成工程とラミネート工程とを含む。
【0026】
1.1.画像形成工程
画像形成工程は、記録媒体に、第1重合体および中空構造を有する粒子を含むインク組成物を用いて画像を形成する工程である。
【0027】
1.1.1.記録媒体
画像形成工程で使用される記録媒体としては、インクジェット記録装置によってインク組成物(後述)の液滴を付着させるまたは塗布することができるものであれば特に限定されない。画像形成工程で使用される記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、多孔性フィルム、布(繊維製品)、多孔性セラミックスシート等の吸収性記録媒体が挙げられ、またプラスチック、ガラス等のインク吸収性を有さない基材の被塗布面にインク受容層やインク吸収層が形成されたものであってもよい。
【0028】
また、記録媒体は、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。記録媒体の具体例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および、インク受容層などが形成された塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0029】
1.1.2.インク組成物
画像形成工程で使用されるインク組成物は、少なくとも第1重合体、および中空構造を有する粒子を含む。画像形成工程で使用されるインク組成物は、溶剤として水を含有する水系、および溶剤として水を含有しない非水系のいずれであってもよい。以下の実施形態では、インク組成物が、溶剤として水を含有する水系のインク組成物である態様を例示する。
【0030】
1.1.2.1.第1重合体
画像形成工程で使用されるインク組成物に含有される第1重合体は、インク組成物中に溶解または分散可能であって、後述の第2重合体よりも低いガラス転移温度(Tg)を有する限り、特に限定されない。
【0031】
第1重合体としては、広範な重合体を選択可能であり、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリオール、ポリアミド、ポリカーボネート、およびポリエステル等の重合体、およびこれらの変性体を例示することができる。
【0032】
第1重合体は、上記例示した重合体のうち、Tgの調節が比較的容易である観点から、ポリウレタンまたはその変性体が好ましい。さらに、水系のインク組成物における分散性、記録媒体に付着した際の記録媒体への接着性が良好な点で、第1重合体は、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタンが好ましい。以下、第1重合体としてポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタンを用いる実施形態を例示する。
【0033】
第1重合体として、ポリウレタンを用いる場合、該ポリウレタンの合成は、公知の方法を適用することができ、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、を反応させる方法を用いることができる。以下、ポリウレタンを合成する方法について具体的に述べる。
【0034】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の環状構造を有する脂肪族イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートが挙げられる。ポリウレタンを合成する際には、2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
2個以上の水酸基を有する化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールを挙げることができる。
【0036】
より具体的には、ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、あるいは、エピクロロヒドリン等の環状エーテル化合物を、活性水素原子を有する化合物を触媒とする等して、単独または2種以上を混合して開環重合する等して得られる重合体が挙げられる。さらに具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0037】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、あるいは、ポリテトラメチレングリコール等のようなジオール類と、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、あるいは、エチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
【0038】
ポリウレタンを合成する際には、2個以上の水酸基を有する化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ポリウレタンは、アニオン性を有してもよい。例えば、カルボキシル基やスルホン基等を有するモノマーを導入することにより、ポリウレタンにアニオン性を付与することができる。このようなモノマーとしては、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;α,α−ジメチロール酢酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸等のジヒドロキシカルボン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノー2−トルエンスルホン酸等のジアミノスルホン酸などが挙げられる。
【0040】
さらに、第1重合体として上述のポリウレタンを用いる場合には、溶媒中に粒子状でポリウレタンが分散されたエマルジョンタイプ、溶媒中に溶解した状態で存在している溶液タイプのいずれのタイプのポリウレタンを用いてもよい。また、エマルジョンタイプは、その乳化方法によって強制乳化型と自己乳化型に分類することができ、本実施形態においてはいずれのタイプでも用いることができる。第1重合体にエマルジョンタイプのポリウレタンを採用する場合には、自己乳化型であることがさらに好ましい。このような自己乳化型のエマルジョンの形態のポリウレタンは、強制乳化型のものに比べ、造膜性や耐水性に優れるため、例えば記録媒体に付着されて画像を形成したときに、画像の耐水性をより高めることができる。
【0041】
画像形成工程で使用されるインク組成物に用いられる第1重合体の市販品の例としては、「タケラック(登録商標)W−6061」(三井化学社製)などの強制乳化型ポリウレタンエマルジョン、「タケラック(登録商標)W−6021」(三井化学社製)、「WBR−016U」(大成ファインケミカル株式会社製ポリエーテル、Tg=20℃)などの自己乳化型ポリウレタンエマルジョンなどが挙げられる。
【0042】
第1重合体として、上記のエマルジョンタイプのポリウレタンを採用した場合、ポリウレタンのエマルジョン粒子の平均粒子径は、好ましくは50nm以上200nm以下であり、より好ましくは60nm以上200nm以下である。ポリウレタンのエマルジョン粒子の平均粒子径が上記範囲にあると、インク組成物中においてポリウレタンを均一に分散させることができる。
【0043】
画像形成工程で使用されるインク組成物における第1重合体の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上20質量%以下である。インク組成物における第1重合体の含有量(固形分)が上記範囲にあれば、インクジェット記録装置において良好な吐出、および印刷が可能となりやすく、また、記録媒体上に付着されて形成された画像の耐擦過性を十分に確保することができる。他方、第1重合体の含有量が30質量%を超えると、インク組成物のインクジェット記録における信頼性(目詰まりや吐出安定性など)を損なう場合があり、インクとしての適切な物性(粘度など)が得られない場合がある。一方、1質量%未満であると、記録媒体上におけるインク組成物の定着性が不足する場合があり、形成された画像の耐擦性が不足する場合がある。
【0044】
画像形成工程で使用されるインク組成物に配合される第1重合体のガラス転移温度(Tg)は、後述するラミネート用シートの接着層に含有される第2重合体のガラス転移温度よりも高くなるように選択される。第1重合体のTgは、例えば、重合体の種類、重合体の変性、重合条件、およびモノマーの種類の少なくとも一種を変化させることにより変化させることができる。第1重合体および第2重合体におけるTgの関係については、「1.3.第1重合体および第2重合体のガラス転移温度の関係」の項にて述べる。
【0045】
第1重合体のTgは、0℃以上であることがより好ましい。第1重合体として、Tgが0℃以上のものを選択すると、第1重合体の流動性がある程度小さくなるため、第1重合体が中空構造を有する粒子の内部により侵入しにくくなる。
【0046】
1.1.2.2.粒子
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、色材として中空構造を有する粒子を含有する。
【0047】
中空構造を有する粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。
【0048】
ここで、中空構造とは、粒子に少なくとも屈折率の異なる物質が内包される構造のことを指し、例えば、いわゆるコア・シェル構造、すなわち空間が閉じたシェル(殻)によって取り囲まれた構造のことを指す。また、中空構造のコア(殻によって取り囲まれた内側)の物質は、液体でも気体でもよい。
【0049】
このような中空構造を有する粒子は、少なくとも記録媒体に付着された後に、無彩色または有彩色を呈することができる。例えば、着色されていない中空構造を有する粒子は、コアとシェルの屈折率の差に起因する光の散乱により、記録媒体に付着されたときに、無彩色である白色から灰色を呈することができる。また、中空構造を有する粒子には、着色が可能であり、記録媒体に付着されたときに、彩度(色彩)を付与することも可能である。このような色彩は、例えば、コアまたはシェルに配置される物質を着色することや、着色しなくても、コアまたはシェルの光学的な寸法を変化させることによって、付与されることができる。
【0050】
なお、無彩色、および有彩色との文言は、日本工業規格JIS Z8105の番号3008、および03009、並びに、日本工業規格JIS Z8113の番号03010、および03011に定義されるものであるが、本明細書では、無彩色とは、多少の色相を有してもよいものとする。
【0051】
またなお、本明細書において「白色のインク」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、該用紙が被覆される量のインクが吐出された印字物の明度(L*)と色度(a*、b*)が、Gretag Macbeth Spectrolino(X-Rite社製)の測色器を用いて計測した場合に、70≦L*≦100、−3.5≦a*≦1、−5≦b*≦1.5の範囲を示すインクのことをいう。
【0052】
中空構造を有する粒子のシェル(殻)の材質としては、樹脂などの有機化合物、金属酸化物などの無機化合物により形成されることができる。また、コアに配置される物質についても特に限定されず、液体や気体とすることができる。なお、シェルの材質を、例えば、高分子化合物(樹脂)とすることや、シェルの厚みを小さくすること等により、コアに配置される物質をシェルを介して外部と置換することができる。そのため、例えば、粒子が、記録媒体に付着されたときには、粒子の内部の水分等の液体が、乾燥して外気と置き換わることによって、コアを空洞(実質的には大気)とすることができる。また、例えば、粒子は、インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞はインク組成物の媒質で満たされることができ、そのため、外部の媒質と近い比重を有するようになるため、インク組成物中における分散安定性を確保することができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0053】
中空構造を有する粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上0.8μm以下である。中空構造を有する粒子の外径がこのような範囲にあれば、インク組成物中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、所望の色を呈することができる。また、外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、所望の色が得られない場合がある。また、中空構造を有する粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、0.1μm以上0.8μm以下程度が適当である。
【0054】
中空構造を有する粒子の平均粒子径d50は、例えば、粒径加積曲線を用いて測定される。粒径加積曲線とは、水等の分散媒に分散された粒子について、粒子の直径、および当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を、統計的に処理して得られる曲線の一種である。本明細書における粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸にとり、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度、および粒子数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸にとったものである。
【0055】
そして、粒径d50とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が50%(0.50)となるときの、横軸の値すなわち粒子の直径のことをいう。
【0056】
粒子の粒径加積曲線は、例えば、動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置を使用することによって求めることができる。動的光散乱法は、分散している粒子にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測するものである。一般に分散している粒子は、通常ブラウン運動をしている。粒子の運動の速度は、粒子直径の大きな粒子ほど大きく、粒子直径の小さな粒子ほど小さい。ブラウン運動をしている粒子にレーザー光を照射すると、散乱光において、各粒子のブラウン運動に対応した揺らぎが観測される。この揺らぎを測定し、光子相関法等により自己相関関数を求め、キュムラント法およびヒストグラム法解析等を用いることで粒子の直径や、直径に対応した粒子の頻度(個数)を求めることができる。本実施形態にかかる粒子のようにサブミクロンサイズの粒子を含む試料に対しては、動的光散乱法が適しており、動的光散乱法により比較的容易に粒径加積曲線を得ることができる。動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置としては、例えば、ナノトラックUPA−EX150(日機装株式会社製)、ELSZ−2、DLS−8000(以上、大塚電子株式会社製)、LB−550(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0057】
一方、粒子の粒径加積曲線は、本実施形態の粒子を含有するインク組成物、該インク組成物が付着された状態(例えば印刷物)、または、ラミネート体を形成した後の状態においても、例えば、電子顕微鏡法によって測定することができる。この方法は、電子顕微鏡写真から粒子の大きさを計測するもので、当該写真を、例えば画像処理して計測することにより、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。具体的には、個々の粒子の短軸径と長軸径を計測し、その面積と等しい円の直径(円相当直径)を算術的に求め、一定の視野から例えば50個以上の粒子をランダムに選択して求める方法が挙げられる。この方法によれば、インク組成物中に粒子以外の粒子(例えば顔料)が含有されている場合でも、電子顕微鏡画像上で、粒子を選別することができるため、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。また、この測定における信頼性を高めたい場合には、計測する粒子の個数を増して求めるとよい。なお、ラミネート体である場合には、電子顕微鏡観察の試料として、ラミネート用シートを基材(紙等の記録媒体)から剥離したものとすることができ、当該剥離面(ラミネート用シート側または基材側)の表面を観察することにより、粒径加積曲線を求めることができる。
【0058】
さらに、本実施形態の粒子を含有するインク組成物においては、粒子の粒径加積曲線を求める方法として、その他にも、遠心分離を利用する方法(以下、これを遠心法ということがある。)が挙げられる。遠心法の具体例としては、適宜な長さの遠心チューブにインク組成物を充填し、遠心操作を行った後、チューブの特定の位置(深さ)の範囲の遠心物を採取する。粒子の比重と、インク組成物の他の成分との比重差によって、遠心後の遠心チューブ内における粒子の存在位置が特定されるため、例えば、特定の範囲には、粒子が濃化している。そのため、当該遠心チューブの適宜な位置から、インク組成物の一部を採取し、これを上述の動的光散乱法等により測定することにより、粒子を含有するインク組成物における粒子の粒径加積曲線を求めることができる。
【0059】
上記中空構造を有する粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。中空構造を有する粒子の含有量(固形分)がこの範囲にあれば、例えば、インク組成物中の粒子の分散を良好に保つことができる。一方、中空構造を有する粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。また、5質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
【0060】
中空構造を有する粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、例えば以下のような公知の方法を適用することができる。中空構造を有する粒子の調製方法としては、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空構造を有する粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0061】
乳化重合法に用いるビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、粒子の光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空構造を有する粒子を得ることができる。
【0062】
乳化重合法に用いる界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。また、乳化重合法に用いる重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。この際の水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0063】
1.1.2.3.その他の成分
(1)水
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水を含有することができる。インク組成物に使用可能な水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。上述の粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にはイオン等が存在してもよい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、カビやバクテリアの発生を長期間抑制することができ、インク組成物を長期に安定に保つことができるためより好ましい。
【0064】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物における水の含有量は、中空構造を有する粒子の分散が維持できる範囲で限定されないが、インク組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク組成物における水の含有量が、この範囲内であると、中空構造を有する粒子の分散性がより良好となり保存安定性をさらに高めることができる。
【0065】
なお、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、水以外の成分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを示している。本明細書では、水以外の成分のことを固形分と称することがあり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、インク組成物における固形分の濃度が5質量%以上50質量%以下であることを指している。
【0066】
(2)浸透助剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、必要に応じて、浸透助剤を含有してもよい。浸透助剤としては、多価アルコール類が挙げられる。多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下のアルカンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびグリコールエーテル類が挙げられる。
【0067】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがインク組成物に配合されると、さらに良好な記録品質を得ることができる。
【0068】
このような浸透助剤の機能の一つとしては、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることが挙げられる。また、これらのアルカンジオールは、インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果も有する場合がある。
【0069】
また、アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4ないし8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。さらにこの中でも炭素数が6ないし8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、インク組成物の記録媒体への浸透性を高める作用が特に良好であるためより好ましい。
【0070】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に浸透助剤を含有させる場合には、浸透助剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0071】
また、多価アルコールは、複数の機能を有することができ、上記浸透助剤としての機能の他の機能の一つとしては、インクの乾燥を抑制することが挙げられ、インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止する効果を高めることができる。さらに、多価アルコールは、一分子内の水酸基の数が、疎水性領域の大きさに対してより多い化合物であるほうが、水分を捕捉する機能が高くインク組成物の乾燥を抑制する効果が高い。
【0072】
(3)界面活性剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。本実施形態のインク組成物に好適な界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤の少なくとも一種が挙げられる。これらの界面活性剤がインク組成物に配合されると、記録媒体の被記録面への濡れ性が高まり、インク組成物の記録媒体への浸透性をさらに向上させることができる。
【0073】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに本実施形態のラミネート体の形成方法で使用されるインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0074】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
【0075】
(4)pH調整剤
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、pH調整剤を含有することができる。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に好適なpH調整剤としては、特に制限されず、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの少なくとも一種が挙げられる。またこれらのうち、pH調整剤としてトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミンを選択すると、インク組成物のpHの調整がより容易となる。pH調整剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0076】
(5)その他の成分
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、中空構造を有する粒子によって、例えば、白色(無彩色)等の画像を形成することができるが、さらに他の色材を含有してもよい。このような色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に添加することができる色材の色としては、有彩色でも無彩色でもよい。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に色彩を付与することができる。
【0077】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0078】
色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に、金属光沢とともに、光沢の色を付与することができる。
【0079】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0080】
インク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
【0081】
無機顔料としては、例えば。カーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料の色としては、黒色、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであっても良い。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。
【0082】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1〜25質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%程度の範囲である。
【0083】
また、インク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の色材の含有量に対して、5〜200質量%、好ましくは30〜120質量%であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
【0084】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に使用可能な顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などを使用することができる。顔料の色としては、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであっても良い。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンの基本3色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルーを含有させることが例示できる。
【0085】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物には、白色の顔料を使用してもよい。インク組成物に使用可能な白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の周期表第IV族の元素の酸化物が挙げられる。白色顔料としては、その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、カオリン、クレー(粘土鉱物)、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0086】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものである。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下程度の範囲である。
【0087】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するために慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の顔料の含有量に対して、5質量%以上200質量%以下、好ましくは30質量%以上120質量%以下であり、分散すべき顔料によって適宜選択するとよい。
【0088】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物には、有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、またはエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)の他、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を用いることができる。
【0089】
さらに、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、上記第1重合体以外の重合体を含有してもよい。ただし、このような重合体は、第2重合体よりもTgが高いものが選択されることが好ましい。このような重合体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、あるいはその変性体、あるいはポリウレタン、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でもよい。
【0090】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、防腐剤、および防かび剤などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0091】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0092】
なお、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、多の用途にも適用が可能であり、例えば、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。例えば用途が、インクジェット記録方式の印刷である場合、インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、ラミネート体の形成方法に使用する場合により好適である。
【0093】
1.1.3.画像形成方法
画像形成工程における画像形成の具体的な方法としては、記録媒体に対して画像を形成する方法であれば、特に限定されず、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどの方法により行うことができる。しかし、上述のインク組成物は、インクジェット式記録ヘッドによって吐出させ、記録媒体に付着させることが好ましい。以下では、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に上述のインク組成物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成する方法の一例を示す。
【0094】
インクジェット式記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。本実施形態の画像形成工程では、上記いずれのインクジェット式記録ヘッドを用いてもよい。
【0095】
画像形成工程で用いるインクジェット記録装置としては、上記のインクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備えて、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。本実施形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、あるいはさらに専用のカートリッジを設けてこれに、上述のインク組成物を充填し設置する。また、それ以外のカートリッジには、通常のインクなどが充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0096】
以上のような画像形成工程により、記録媒体上に、インク組成物を用いて画像を形成することができる。記録媒体上に形成される画像の態様としては、特に限定されず、記録媒体の全面、または一部にインク組成物を付着させる。
【0097】
1.2.ラミネート工程
ラミネート工程は、画像形成工程を経ることによって、記録媒体に画像が形成された後、該記録媒体の少なくとも画像が形成された部分に、第2重合体を含む密着層を有するシートを密着させる工程である。本工程で使用するシートは、本明細書では、「ラミネート用シート」または単に「シート」と称することがある。シートは、少なくとも基材および密着層を有する。シートは、基材および密着層の他に、他の機能を発揮する層を有してもよい。また、ラミネート用シートは、記録媒体の両面に設けられてもよく、このようにすれば、より記録媒体および画像を保護する作用を高めることができる。
【0098】
一般的にシートは、熱ラミネート用である場合、密着層(糊層、シーラント層などと称される場合がある)が熱可塑性樹脂で構成されており、加熱によって熱可塑性樹脂を軟化・溶融させて糊状にし、被着物に圧着させるものである。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン・αーオレフィン共重合体、アモルファスポリエステルなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびそれらの変性体などが挙げられる。密着層の厚さは、例えば15μm以上100μm以下とすることができる。
【0099】
また、ラミネート用シートは、市販のものを用いてもよいが、例えば、タンデム押出ラミネート、サンドイッチ押出ラミネート、ドライラミネート、など一般的に用いられている手法を用いて、基材と密着層を形成して製造することができる。この場合の加工温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは200〜280℃である。また、このような加工においては、例えば、基材と密着層の間にオゾン処理を施す等の操作を付加してもよい。
【0100】
1.2.1.基材
基材の形状は、例えば、薄膜状、フィルム状、シート状とすることができる。基材の厚みは特に限定されず、例えば、10μm以上2mm以下とすることができる。基材の機能の一つとしては、少なくとも記録媒体のインク組成物が付着した部位を覆って、当該部分を外力等から保護することが挙げられる。また基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であることが好ましい。さらに、基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であれば、着色されていてもよい。
【0101】
基材の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびポリスチレン、並びにそれらの共重合体、並びにそれらの変性体が挙げられる。また、これらの材質は、基材において延伸等により一軸または多軸の配向性が付与されてもよい。
【0102】
基材の厚みは、好ましくは6μm以上100μm以下、より好ましくは7μm以上40μm以下である。また基材には、滑剤、アンチブッロキング剤、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、その他の添加剤が配合されていてもよい。
【0103】
1.2.2.密着層
密着層は、基材の一方の面に形成されている。密着層の厚みは、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。密着層の機能の一つとしては、記録媒体に接着、圧着または融着されることにより、記録媒体と基材とを密着させることが挙げられる。
【0104】
密着層は、例えば、熱融着可能な材質で形成される。密着層は、例えば熱可塑性樹脂で形成されることができる。本実施形態のラミネート工程で用いられるシートの密着層は、第2重合体を含む。
【0105】
1.2.3.第2重合体
第2重合体の種類としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアクリル酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、およびそれらの変性体などが挙げられる。第2重合体の種類としては、第1重合体と異なる種類を選択することが好ましい。第2重合体の機能の一つとしては、密着層の記録媒体および基材との密着性を付与することが挙げられる。第2重合体のガラス転移温度(Tg)は、第2重合体のモノマー組成、重合度(分子量)、変性量によって調節することができる。
【0106】
密着層には、第2重合体以外の成分が含まれてもよい。密着層に含まれることができるその他の成分としては、第2重合体以外の重合体、可塑剤、添加剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤など)などが挙げられる。なお、密着層に第2重合体以外の重合体が含まれる場合には、該重合体は、第1重合体よりもTgが高いものが選択されることが好ましい。密着層全体における第2重合体の含有量は、20質量%以上100質量%以下が好ましく、更に好ましくは、50質量%以上100質量%以下である。
【0107】
1.2.4.ラミネートの態様
本工程におけるラミネートの態様は、一般的な方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、画像が記録された記録媒体を、ラミネート用シートによって挟持し、このような積層体に、プレスまたはローラー圧着によって熱を印加して行うものが挙げられる。
【0108】
ラミネート工程において、積層体に印加される熱は、少なくとも第2重合体が、該第2重合体のガラス転移温度よりも高い温度となる程度印加される。また、本工程において、第2重合体がガラス転移温度よりも高い温度にある期間は、例えば、0.1秒以上100秒以内となるように設定されることが好ましい。第2重合体がガラス転移温度よりも高い温度にある期間は、基材の材質や厚み等により変化するため、良好なラミネート体が得られる範囲で適宜調節されることができる。
【0109】
1.3.第1重合体および第2重合体のガラス転移温度の関係
本実施形態のラミネート体の形成方法においては、上述の第1重合体および第2重合体のガラス転移温度(Tg)の関係に特徴がある。すなわち、本実施形態のラミネート体の形成方法では、第1重合体のTgが第2重合体のTgよりも低くなるように両者が選択される。
【0110】
ラミネート工程は、密着層の少なくとも第2重合体が、そのガラス転移温度よりも高い温度において行われる。本実施形態では、第1重合体のTgが第2重合体のTgよりも低いため、ラミネート工程が終了した後(加熱が終了して温度が降下し始めた後)には、第1重合体がTg以上の温度(ゴム状態)にあって、第2重合体のTg以下の温度(ガラス状態)にある状態が存在することになる。すなわち、ラミネート工程の後、温度が降下するときには、第2重合体の流動性(分子の運動性)が先に低下することになる。そのため、第2重合体が第1重合体よりも流動しにくくなり、画像を形成している中空構造を有する粒子のコアに第2重合体が侵入することが抑制される。また、第1重合体は、上述の通り、インク組成物中に配合されるものである。そのため、ラミネート体において、第2重合体よりも量が十分に少ないため、中空構造を有する粒子のコアに第1重合体が侵入する割合が小さく、多くの第1重合体は、記録媒体と粒子との定着に関与する。
【0111】
以上のような機作により、本実施形態のラミネート体の形成方法によれば、中空構造を有する粒子内に第2重合体が侵入しにくく、中空構造を有する粒子の本来の呈色を長期間にわたって維持することができる。
【0112】
また、第1重合体として、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタンを採用した場合には、以下のような異質な効果が得られる。一般的にポリウレタンの性質として、ポリウレタンの主鎖間が水素結合により緩やかに結合するため、柔軟で強靭な膜構造を形成させることが可能である。第1重合体としてポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタンを用いることにより、通常のインクジェット印刷を行う温度(10℃〜40℃)において流動性を維持した状態で、記録媒体上で広がるようにしながら、柔軟な膜構造を形成することができ、形成される画像の耐擦性を高めることができる。また、一般に印刷用途に使われるメディア(例えば、インクジェット用専用記録用紙「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)は正に帯電していることが多いため、第1重合体としてアニオン性のポリウレタンを採用する場合には、静電相互作用により密着性をさらに向上することができる。
【0113】
また、第1重合体として、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタンを用いると、ポリエステル系ポリウレタンを用いる場合などに比べて、柔軟性の高い膜を形成しやすいため、耐擦性がより高い。また、ポリエーテル系またはポリカーボネート系ポリウレタンは、水に対して劣化しにくい性質も有するため、水性インクに用いる際に好ましい。
【0114】
また、第1重合体のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上であることが好ましい。詳細な理由は明らかではないが、第1重合体のTgが0℃以上であると、ラミネート体としたときに流動性が大きくなりすぎないと考えられ、中空構造を有する粒子のコアにさらに侵入しにくくなる。これにより、さらに画像の品質の低下しにくいラミネート体を得ることができる。さらに、第2重合体のガラス転移温度は、中空構造を有する粒子の熱分解温度よりも低いことが好ましい。
【0115】
本実施形態のラミネート体の形成方法で形成されたラミネート体の画像の呈色は、中空構造を有する粒子の外殻(シェル)と空洞(コア)の間における光の屈折率の差による光散乱を利用している。そして、第2重合体の流動性を第1重合体の流動性よりも小さくすることにより、空洞に第2重合体が入り込むことが抑えられる結果、ラミネート体の画像の呈色の安定化を図ることができると考えられる。
【0116】
さらに、第1重合体として、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のアニオン性ポリウレタンを用いる場合には、第1重合体が、乾燥とともに表面で膜化し、ポリエステル系のポリウレタンに比べて、柔軟性の高い膜を形成することができるため、上記のインク組成物中の中空構造を有する粒子の散乱性能の変化をさらに抑制することが可能である。
【0117】
2.ラミネート体
上述の通り、本実施形態のラミネート体の形成方法によって形成されるラミネート体は、記録媒体と、記録媒体上に形成され、第1重合体および中空構造を有する粒子を含む画像層と、少なくとも画像層を覆うように形成され、第2重合体を含む密着層を介して密着されたシートと、を含み、第1重合体のガラス転移温度が、第2重合体のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする。このようなラミネート体は、画像層の粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。
【0118】
また、上述したように、第1重合体のガラス転移温度が、0℃以上である場合には、ラミネート体は、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。さらに、中空構造を有する粒子の平均粒子径d50が、0.4μm以上0.8μm以下であるようにすれば、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。
【0119】
なお、上述のインク組成物によって、記録媒体に形成された画像において、中空構造を有する粒子を白色の色材として用いる場合、画像の白色度は、日本工業規格(JIS)Z8715:1999「色の表現方法−白色度」に記載された指標(例えば白色度指数)によって数値化することができる。このような数値を得るための測定は、例えば、日本工業規格(JIS)Z8722:2000「色の測定方法−反射および透過物体色」に記載された方法によって行うことができる。また、このような測定が可能な装置としては、一般に市販されている装置を用いることができる。一方、簡易的に白色度を評価する場合には、例えばLab表色系を評価可能な装置を用いて、L*値(明度)を用いて行うことができる。
【0120】
3.実施例および比較例
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0121】
3.1.インク組成物
表1および表2に示す配合量で、中空構造を有する粒子(中空粒子)、第1重合体、多価アルコール、浸透助剤、pH調整剤、界面活性剤、および、イオン交換水または有機溶剤を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜12、および比較例1〜9の各インク組成物を得た。なお、表1の実施例1〜12、および表2の比較例1〜9に記載されている数値の単位は、質量%であり、中空粒子、第1重合体についてはいずれも固形分換算である。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
中空粒子は、表1および表2に記載の市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。また、「SX8782(D)」の熱分解温度は、300℃〜330℃である。
【0125】
第1重合体は以下のポリウレタン、スチレンアクリル酸共重合体、およびポリアクリル酸を用いた。
【0126】
「U−1」は、ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタンであって、大日精化工業株式会社製、商品名「D−1060」であり、Tg=−70℃、平均粒子径=130μm、自己乳化型ディスパージョンである。
【0127】
「U−2」は、「レザミンD2020」(大日精化工業株式会社製ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン、Tg=−30℃、平均粒子径=100μm、自己乳化型ディスパージョン)である。
【0128】
「U−3」は、「W−512A6」(三井化学ポリウレタン株式会社製ポリエーテル系ノニオン性ポリウレタン、Tg=2℃、平均粒子径=>1000μm)である。
【0129】
「U−4」は、「WS−5000」(三井化学ポリウレタン株式会社製ポリエステル系アニオン性ポリウレタン、Tg=65℃)である。
【0130】
「SA−1」は、「UF−5022」(東亜合成株式会社製、アニオン性スチレンアクリル樹脂、Tg=75℃)である。
【0131】
「A−1」は、「UC−3510」(東亜合成株式会社製、アニオン性アクリル樹脂、Tg=−50℃)である。
【0132】
その他の成分については、以下の通りである。
【0133】
多価アルコールは、試薬として入手したグリセリンを用いた。
【0134】
浸透助剤としては、試薬として入手した1,2−ヘキサンジオールを用いた。
【0135】
pH調整剤としては、試薬として入手したトリエタノールアミンを用いた。
【0136】
界面活性剤としては、「BYK−348」(ポリシロキサン系界面活性剤)または「BYK−U3500」(ポリエーテル変性ポリシロキサン系界面活性剤)(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。
【0137】
水は、試薬として入手したイオン交換水を用いた。
【0138】
有機溶剤は、試薬として入手したイソプロピルアルコールを用いた。
【0139】
3.2.ラミネート用シート
ラミネート用シートは、表1および表2に示した第2重合体を含む密着層を有する市販品をそれぞれ用意した。
【0140】
密着層に低密度ポリエチレンを含有するラミネート用シートは、株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトゼックス」を入手して用いた。低密度ポリエチレンのTgは、−125℃である。
【0141】
密着層にエチレン酢酸ビニル共重合体を含有するラミネート用シートは、三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名「エバフレックス」を入手して用いた。エチレン酢酸ビニル共重合体のTgは、およそ0℃である。
【0142】
密着層にアイオノマー樹脂を含有するラミネート用シートは、三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名「ハイミラン1554」を入手して用いた。アイオノマー樹脂の軟化点は、72℃である。
【0143】
密着層にポリアクリル酸を含有するラミネート用シートは、三井化学株式会社製、商品名「アルマテックスZ113」を入手して用いた。このポリアクリル酸のTgは、5℃である。
【0144】
なお、各実施例、各比較例で用いたシートは、表1および表2中に●で示した。
【0145】
3.3.評価方法
3.3.1.ラミネート体の作成
まず、表1および表2に記載された各例のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。そしてインクカートリッジをプリンタに装着し、記録媒体として、インクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して印刷を行った。印刷は、720×720dpiの解像度で行い、パターンは、100%dutyのベタパターンとした。得られた印刷物は、目視観察では白色を呈した。なお、ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いたもので、印刷には用いなかった。
【0146】
なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
次に、得られた印刷物を乾燥させた後、表1および表2に記載した密着層を有するラミネート用シートによって狭持し、フジプラ株式会社製、型式LPA3301ラミネート装置によって、ラミネート体を形成した。当該装置のラミネートは、温度を約90℃、シートの搬送速度を600mm/分に設定して行った。
【0147】
3.3.2.ラミネート体の評価
3.3.2.1.ラミネートの接着性
各実施例および各比較例のラミネート体の、シートの基材面に、セロハンテープを貼り付け、密着させた後、剥したときの変化を調べ、ラミネート体の接着性の評価を行った。
【0148】
評価基準は、
A:剥がれがみられない
B:一部剥がれる
C:全面がはがれる
とし、各試料の結果を表1および表2に記載した。
【0149】
3.3.2.2.ラミネートの環境接着性
各実施例および各比較例のラミネート体を、−40℃の冷凍庫に、5時間静置した。そして常温に戻した後、シートの基材面に、セロハンテープを貼り付け、密着させた後、剥したときの変化を調べ、ラミネート体の環境接着性の評価を行った。
【0150】
評価基準は、「3.3.2.1.ラミネートの接着性」の評価基準と同様とした。
【0151】
3.3.2.3.ラミネート体のエージング試験
各実施例および各比較例のラミネート体のエージング試験を行った。
【0152】
まず、各実施例および各比較例のラミネート体の白色度を、それぞれL*値を測定することによって評価した。測定は、標準黒色紙に各試料を載せて行った。用いた装置は、Gretag Macbeth SpectroscanおよびSpectrolino(X−Rite社製)であり、光源はD50とした。
【0153】
次に各試料のエージングを、それぞれ60℃にて1週間実施した。そして、再び各試料のラミネート体の白色度を、それぞれ上記と同様にL*値によって評価した。
【0154】
評価基準は、
A:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3未満
B:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3以上5未満
C:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が5以上10未満
D:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が10以上
とし、各試料の結果を表1および表2に併記した。なお、ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が大きいほど、目視観察では白さが低下して透明感を生じる傾向があった。
【0155】
3.4.評価結果
表1および表2をみると、実施例の試料は、いずれも、ラミネートの接着性、ラミネートの環境接着性、およびラミネート後のエージング特性に優れていた。すなわち、第1重合体のTgが第2重合体のTgよりも低い実施例のラミネート体は、接着性に優れ、画像の透明化が生じにくいことが判明した。これに対して、第1重合体のTgが第2重合体のTgよりも高い比較例のラミネート体は、いずれもラミネートの接着性、ラミネートの環境接着性、およびラミネート後のエージング特性に劣っており、画像の透明化が生じやすいことが判明した。
【0156】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重合体および中空構造を有する粒子を含むインク組成物を用いて形成された画像を含む記録媒体に対して、
前記記録媒体の少なくとも前記画像が形成された部分に、第2重合体を含む密着層を有するシートを密着させるラミネートであって、
前記第1重合体のガラス転移温度が、前記第2重合体のガラス転移温度よりも低いことを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1重合体のガラス転移温度が、0℃以上であることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記インク組成物中の前記第1重合体の含有量が、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記インク組成物中の前記粒子の含有量が、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることを特徴とするラミネート体の形成方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記第2重合体のガラス転移温度が、前記中空構造を有する粒子のガラス転移温度または熱分解温度よりも低いことを特徴とする、ラミネート体の形成方法。
【請求項7】
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、第1重合体および中空構造を有する粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成され、第2重合体を含む密着層を介して密着されたシートと、
を含み、
前記第1重合体のガラス転移温度が、前記第2重合体のガラス転移温度よりも低いことを特徴とするラミネート体。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1重合体のガラス転移温度が、0℃以上であることを特徴とするラミネート体。

【公開番号】特開2012−6279(P2012−6279A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144614(P2010−144614)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】