説明

ラムエア調節装置

【課題】ブローバイガスを掃気するための通路が凍結により閉塞してしまうことを抑止する。
【解決手段】内燃機関0を収めたエンジンルーム11内に取り入れる空気の量を調節するものであって、空気を取り入れる取入口であるフロントグリルの開度を可変制御することのできる開閉機構10と、外気温が所定以下の場合に、内燃機関0において発生するブローバイガス量が少ないほど開閉機構10の開度を小さく補正する制御部とを具備するラムエア調節装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を収めたエンジンルームに取り入れる空気の量を調節する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、走行風をエンジンルーム内に導入して、内燃機関や補機、変速機等の冷却に供することが通例となっている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
寒冷地や厳冬期にあっては、外気温が氷点下となることが間々あり、極低温の走行風がエンジンルームに入り込むことになる。さすれば、クランク室内に漏洩したブローバイガスを掃気するための通路内で、ブローバイガスに含まれる水分が凍結して当該通路を閉塞してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−066824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブローバイガスを掃気するための通路が凍結により閉塞してしまうことを抑止しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、内燃機関を収めたエンジンルーム内に取り入れる空気の量を調節するものであって、空気を取り入れる取入口から取り入れた空気を排出する排出口までの流通経路上に設けられ開度を可変制御することのできる開閉機構と、外気温が所定以下の場合に、内燃機関において発生するブローバイガス量が少ないほど前記開閉機構の開度を小さく補正する制御部とを具備するラムエア調節装置を構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブローバイガスを掃気するための通路が凍結により閉塞してしまうことを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態における内燃機関及びブローバイガス還流装置を示す図。
【図2】同実施形態における開閉機構を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に示す車両用内燃機関0は、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気通路3と、各気筒1から排気を排出するための排気通路4と、吸気通路3を流通する吸気を過給する排気ターボ過給機5と、排気通路4から吸気通路3に向けてEGRガスを還流させる外部EGR通路2と、ブローバイガスを掃気するブローバイガス還流装置6とを備えている。
【0010】
吸気通路3は、外部から空気を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁35、過給機5のコンプレッサ51、インタクーラ32、スロットルバルブ33、サージタンク34を、上流からこの順序に配置している。
【0011】
排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、過給機5の駆動タービン52及び三元触媒41を配置している。
【0012】
排気ターボ過給機5は、駆動タービン52とコンプレッサ51とを同軸で連結し連動するように構成したものである。そして、駆動タービン52を排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
【0013】
外部EGR通路2は、いわゆる低圧ループEGRを実現するものである。低圧ループEGR通路2の圧力損失は、数百Pa程度と非常に小さい。外部EGR通路2の入口は、排気通路4における三元触媒41の下流の所定箇所に接続している。外部EGR通路2の出口は、吸気通路3における吸気絞り弁35の下流、かつコンプレッサ51の上流の所定箇所に接続している。外部EGR通路2上には、EGRクーラ21及びEGRバルブ22を設けてある。
【0014】
低圧ループEGRでは、大気圧に近い低圧の排気ガスをEGR通路2を通じて吸気通路3に還流する。そのために、EGR通路2の出口の上流にある吸気絞り弁35を絞ることで、EGR通路2の出口の周囲を負圧化する。
【0015】
内燃機関0のクランク室7は、気筒1及びピストン12により燃焼室から隔絶されている。しかし、この隔絶は完全なものではなく、内燃機関0の圧縮行程では未燃焼ガスが、また膨張行程では燃焼ガスが、気筒1とピストン12との隙間からクランク室7内に漏洩する。この漏洩したブローバイガスは、クランク室7内に蓄えている潤滑油の劣化や、内燃機関0本体の腐食を引き起こす。
【0016】
ブローバイガス還流装置6は、クランク室7内のブローバイガスを吸気通路3に排出する役割を担うもので、PCV通路61、PCVバルブ62及びブローバイ通路63を構成要素とする。
【0017】
PCV通路61は、その一端がクランク室7に接続し、他端が吸気通路3のサージタンク34に接続している。
【0018】
PCVバルブ62は、PCV通路61上にあって、PCV通路61を流通するブローバイガスの流量を増減させる。通常、PCVバルブ62は、弾性付勢されて弁座に押し付けられている弁体が、ブローバイガスの圧力により(弾性付勢力に抗して)弁座から離反する方向に変位する態様の機械式(差圧作動形)バルブである。このPCVバルブ62は、サージタンク34内の吸気圧が大気圧以上であるときには閉じており、サージタンク34内の吸気圧が低くなるほど(大気圧に対して負圧になるほど)開度が大きく開く。但し、サージタンク34内の吸気圧が顕著に低下した場合には、その開度が逆に小さくなる。
【0019】
クランク室7とPCVバルブ62との間には、オイルセパレータ(図示せず)を介設する。オイルセパレータは、ラビリンス構造を有し、流通するガスに含まれる潤滑油を当該ガスから分離させる気液分離作用を営むもので、クランク室7から潤滑油が失われることを抑止する。
【0020】
ブローバイ通路63は、その一端が内燃機関0のシリンダヘッドカバー内のカム室8に接続し、他端が吸気通路3におけるコンプレッサ51の上流側に接続している。このブローバイ通路63のカム室8への接続箇所にも、オイルセパレータを設けてある。なお、カム室8とクランク室7とは、連通している。
【0021】
PCVバルブ62が開いているとき、カム室8及びクランク室7内のブローバイガスが、PCVバルブ62及びPCV通路61経由を経由して吸気通路3に送り出される。同時に、吸気通路3からブローバイ通路63を経由してカム室8及びクランク室7に新気が流れ込み、カム室8及びクランク室7内が換気される。吸気通路3のサージタンク34に還流したブローバイガスは、気筒1に充填されて再燃焼される。
【0022】
内燃機関0は、これを搭載する車両のエンジンルーム11に収められる。車両のボディには、内燃機関0や補機(図示せず)、変速機(図示せず)等を冷却する目的で、外気を取り入れるための取入口を開設して、外気をエンジンルーム11に供給し得るようにしている。図2は、FF車またはFR車の例を示しており、エンジンルーム11は車両の前方部位にあって、フロントグリルが取入口となり、走行風(図中矢印で示す)をエンジンルーム11へと導く。エンジンルーム11内で内燃機関0等と熱交換して昇温した走行風は、ホイールルームやボンネット等に開設した排出口から排出される。
【0023】
しかして、本実施形態では、取入口たるフロントグリルに、その開度を可変制御することのできる開閉機構10、例えば電動(サーボまたはステッピング)モータにより駆動される可変ルーバを設けている。
【0024】
制御部たるECU9は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。入力インタフェースには、車両の走行速度を検出する車速センサから出力される車速信号a、エンジン回転数を検出する回転数センサから出力される回転数信号b、スロットルバルブ33の開度またはアクセルペダルの踏込量を検出するスロットルポジションセンサから出力されるスロットル開度信号c、サージタンク34内の吸気圧(負圧または過給圧)を検出する圧力センサから出力される吸気圧信号d、冷却水温を検出する水温センサから出力される水温信号e、外気温を検出する気温センサから出力される気温信号f、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号g等が入力される。出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号h、点火プラグ(のイグニッションコイル)に対して点火信号i、EGRバルブ22に対して開度操作信号j、吸気絞り弁35に対して開度操作信号k、開閉機構10の駆動モータに対して開度操作信号l等を出力する。
【0025】
ECU9のプロセッサは、メモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、内燃機関0の運転を制御する。ECU9は、内燃機関0の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、gを入力インタフェースを介して取得し、それらに基づいて吸入空気量や要求燃料噴射量、点火時期、目標EGR率、開閉機構10の開度等を演算する。そして、演算結果に対応した各種制御信号h、i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0026】
開閉機構10(による取入口)の開度、換言すればエンジンルーム11内に取り入れる空気の量は、車速、外気温、クランク室7内で発生するブローバイガスの量に応じて決定する。これは、内燃機関0等のオーバークールを防止する意図の他、比較的細径なPCV通路62やブローバイ通路63等の内部で凍結が発生して当該通路が閉塞してしまう問題を回避するためでもある。
【0027】
具体的には、車速が速いほど開閉機構10の開度を小さく補正し、車速が遅いほど開閉機構10の開度を大きく補正する。並びに、外気温が低いほど開閉機構10の開度を小さく補正し、外気温が高いほど開閉機構10の開度を大きく補正する。
【0028】
その上で、ブローバイガスの発生量、即ちPCV通路62等を流通するブローバイガス量が少ないほど、当該通路内の温度が低下しやすくなる。そこで、ブローバイガスの発生量が少ないほど開閉機構10の開度を小さく補正し、ブローバイガスの発生量が多いほど開閉機構10の開度を大きく補正する。
【0029】
ブローバイガスの発生量は、吸気管内圧力、大気圧、燃焼室内での燃焼圧力及びエンジン回転数等から推測する。ECU9のメモリには予め、吸気管内圧力、大気圧及び燃焼圧力等の指標と、単位回転数当たりのブローバイガスの予想発生量との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU9は、それらの指標をキーとしてマップを検索し、単位回転数当たりのブローバイガスの予想発生量を知得し、知得した予想発生量にエンジン回転数を乗じて、ブローバイガスの発生量の推測値とする。
【0030】
燃焼室内での燃焼圧力もまた、吸気管内圧力及び燃料噴射量等から推測する。ECU9のメモリには予め、吸気管内圧力及び燃料噴射量等の指標と、燃焼圧力との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU9は、指標をキーとしてマップを検索し、燃焼圧力を知得して、上記のブローバイガスの発生量の推測に用いる。
【0031】
ECU9は、外気温、車速及びブローバイガスの発生量に応じた開閉機構10の開度を演算し、その開度を実現する制御信号lを開閉機構10のモータに入力する。但し、ブローバイガスの発生量に応じた開閉機構10の開度の補正は、外気温が所定の閾値以下である場合に限り行う。外気温が十分に高ければ、PCV通路62等の凍結の心配はないからである。
【0032】
本実施形態では、内燃機関0を収めたエンジンルーム11内に取り入れる空気の量を調節するものであって、空気を取り入れる取入口の開度を可変制御することのできる開閉機構10と、外気温が所定以下の場合に、内燃機関0において発生するブローバイガス量が大きいほど前記開閉機構10の開度を小さく絞る操作を実行する制御部9とを具備するラムエア調節装置を構成した。本実施形態によれば、ブローバイガスを掃気するための通路62、63が凍結により閉塞してしまうのを好適に抑止することができる。
【0033】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、開閉機構の設置箇所は、空気の取入口には限定されない。開閉機構は、空気の排出口に設置してもよいし、空気の取入口から排出口までの流通経路の中途に設置してもよい。要するに、空気の流通経路上に開閉機構を設けておき、外気温が低い状況下においてブローバイガスの発生量が少ないほど開閉機構の開度を小さく絞る、つまりはエンジンルームに取り入れる空気の量を少なくするのである。
【0034】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、内燃機関を搭載した自動車等に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
0…内燃機関
6…ブローバイガス還流装置
9…制御部
10…開閉装置
11…エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を収めたエンジンルーム内に取り入れる空気の量を調節するものであって、
空気を取り入れる取入口から取り入れた空気を排出する排出口までの流通経路上に設けられ開度を可変制御することのできる開閉機構と、
外気温が所定以下の場合に、内燃機関において発生するブローバイガス量が少ないほど前記開閉機構の開度を小さく補正する制御部と
を具備するラムエア調節装置

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−171565(P2012−171565A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37852(P2011−37852)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】