説明

ランキンサイクル装置

【課題】搭載スペースを低減するとともに、発電量の調節が可能であるランキンサイクル装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ランキンサイクル装置101は、膨張機114、ポンプ111、ポンプ111を膨張機114に連通する第一経路1、膨張機114をポンプ111に連通する第二経路2、第一経路1の冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113、第二経路2のコンデンサ115、第一経路1を第二経路2に連通するバイパス経路3、並びに、バイパス経路3を開放及び閉鎖可能な流量調整弁120を有するランキンサイクル100と、膨張機114の仕事を電力に変換するモータジェネレータ116と、変換された電力を蓄電するバッテリ118と、バッテリ118の充電率を検知し、充電率に基づき流量調整弁120を制御するECU119とを備える。ECU119は、充電率が第一の所定量以上となると流量調整弁120を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランキンサイクルを備えたランキンサイクル装置に係り、特に車両に搭載されるランキンサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関から排出される熱を発電機等の動力に変換するランキンサイクルを利用した技術が開発されている。そして、ランキンサイクルは、液相流体を等圧加熱して過熱蒸気を発生させるボイラ、過熱蒸気を断熱膨張させて動力を得る膨張機、膨張機において膨張した蒸気を等圧冷却して液化するコンデンサ、及び液化した液相流体をボイラに送り出すポンプ等から構成される。
【0003】
特許文献1には、車両に搭載されるランキンサイクル回路が記載されている。このランキンサイクル回路では、ポンプの駆動軸と膨張機の出力軸とが電磁クラッチを介して同軸上に配置され、さらに、ポンプの駆動軸には、別の電磁クラッチを介してエンジンの動力が伝達されるように構成されている。また、膨張機は、さらに別の電磁クラッチを介して発電機に接続され、発電機は、バッテリに接続されている。そして、車両の状態に応じて、3つの電磁クラッチが締結又は解放されて、ポンプ、膨張機及び発電機のそれぞれの動作が制御され、それにより、ランキンサイクル回路の動作及び発電が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−274513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載されるランキンサイクルでは、ポンプ及び膨張機が継続して稼動されて発電機により発電された電力がバッテリへ充電され続けると、バッテリへ充電される電力量が車両で消費される電力量より多い場合には、バッテリは、その充電量を増加させ続け、過度に充電された状態である過充電状態にいたってしまう。
ここで、引用文献1のランキンサイクル回路では、膨張機と発電機との間の電磁クラッチを解放することによって、発電機の稼働を停止して発電量を調節し、バッテリの過充電を防ぐことができる。しかしながら、ランキンサイクル回路が搭載される車両には、電磁クラッチを搭載するためのスペースが必要になり、他の装備品が多数搭載される車両ではスペースの確保が難しいという問題がある。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、搭載スペースを低減するとともに、発電量の調節が可能であるランキンサイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明に係るランキンサイクル装置は、車両に搭載されるランキンサイクル装置において、作動流体を膨張させて仕事を得る流体膨張手段、作動流体を流体膨張手段に向かって送る流体圧送手段、流体圧送手段を流体膨張手段に連通する第一経路、流体膨張手段を流体圧送手段に連通する第二経路、第一経路に設けられて作動流体を加熱する加熱手段、第二経路に設けられて作動流体を冷却する冷却手段、第一経路を第二経路に連通するバイパス経路、並びに、バイパス経路に設けられてバイパス経路を開放及び閉鎖可能な流量調整弁を有する、作動流体を流通させるランキンサイクルと、流体膨張手段が得た仕事を電力に変換する発電手段と、発電手段が変換した電力を蓄電する蓄電手段と、蓄電手段に蓄電されている電力の充電率を検知し、検知した充電率に基づき流量調整弁の開放及び閉鎖を制御する制御手段とを備え、制御手段は、検知した充電率が所定量以上となると、流量調整弁を開放する。
【0008】
制御手段は、車両の電気負荷を検知し、流量調整弁の開放時、車両の電気負荷に基づき、流量調整弁の開度を制御してバイパス経路を流通する作動流体の流量を調節ことによって、検知した充電率の増加を抑えるように発電手段が発生する電力を制御してもよい。
また、制御手段は、流量調整弁の開放時、車両を通常走行させるためのみに必要な最小電気負荷に基づき、流量調整弁の開度を制御してバイパス経路を流通する作動流体の流量を調節ことによって、検知した充電率の増加を抑えるように発電手段が発生する電力を制御してもよい。
【0009】
バイパス経路は、第一経路における流体圧送手段と加熱手段との間を第二経路に連通してもよい。
バイパス経路は、第一経路を、第二経路における流体膨張手段と冷却手段との間に連通してもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るランキンサイクル装置によれば、搭載スペースを低減するとともに、発電量を調節することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るランキンサイクル装置及びその周辺の構成を示す模式図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るランキンサイクル装置及びその周辺の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1に係るランキンサイクル装置101及びその周辺の構成を説明する。なお、以下の実施形態において、内燃機関すなわちエンジンを搭載する車両にランキンサイクル装置を使用した場合の例について説明する。
図1を参照すると、エンジン10を備える図示しない車両は、ランキンサイクル100を有するランキンサイクル装置101を備えている。
【0013】
ランキンサイクル100は、ポンプ111、冷却水ボイラ112、廃ガスボイラ113、膨張機114、及びコンデンサ115によって構成されており、ランキンサイクル100には、作動流体である冷媒が流通するようになっている。
ここで、ポンプ111は流体圧送手段を構成し、冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113は加熱手段を構成し、膨張機114は流体膨張手段を構成し、コンデンサ115は冷却手段を構成している。
【0014】
ポンプ111は、稼動することにより流体を圧送するものであり、本実施の形態1では、液体を圧送するものとする。
ポンプ111には、その下流側となる図示しない吐出口に、経路1aを介して熱交換器である冷却水ボイラ112が連通しており、冷却水ボイラ112の内部をポンプ111により圧送された冷媒が流通するようになっている。
【0015】
冷却水ボイラ112は、エンジン10の廃熱を含む流体であるエンジン冷却水が流通し且つその経路の一部がラジエータ20を通る冷却水経路10aに連通している。そして、冷却水ボイラ112は、その内部において冷媒とエンジン冷却水とが熱交換を行うように構成されている。このため、図示しないポンプによってエンジン10から冷却水経路10aに圧送されるエンジン冷却水は、冷却水ボイラ112の内部を流通し、その流通過程で冷媒と熱交換を行ってその温度を低下させエンジン10に戻る。同時に、冷媒は、冷却水ボイラ112の内部でエンジン冷却水と熱交換を行うことによって、その温度を上昇させる。
【0016】
さらに、冷却水ボイラ112には、その下流側に経路1bを介して熱交換器である廃ガスボイラ113が連通しており、廃ガスボイラ113の内部を冷却水ボイラ112から流出した冷媒が流通するようになっている。さらに、廃ガスボイラ113は、排気ガス分岐経路30aに連通している。なお、排気ガス分岐経路30aは、エンジン10の廃熱を含む流体である排気ガスをエンジン10から車両の外部に排出するための排気系統30から分岐して再び排気系統30に戻る経路である。そして、廃ガスボイラ113は、その内部において冷媒と排気ガスとが熱交換を行うように構成されている。このため、エンジン10から排出された排気ガスの一部は、排気系統30から排気ガス分岐経路30aに流入し、さらに廃ガスボイラ113の内部を流通し、その流通過程で冷媒と熱交換を行ってその温度を低下させた後、再び排気系統30に戻り、車両の外部に排出される。同時に、冷媒は、廃ガスボイラ113の内部でエンジン冷却水より温度が高い排気ガスと熱交換を行うことによって、その温度をさらに上昇させる。
【0017】
廃ガスボイラ113には、その下流側に経路1cを介して膨張機114の図示しない入口が連通しており、膨張機114には、冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113において加熱された後の高温高圧の冷媒が流通するようになっている。膨張機114は、高温高圧の冷媒を膨張させることによって図示しないタービン等の回転体及び膨張機駆動軸114aを回転させ、回転駆動力による仕事を得る流体機器である。さらに、膨張機114は、膨張機駆動軸114aを介して、発電機又は電動機として作動可能なモータジェネレータ116と連結されている。
【0018】
また、モータジェネレータ116は、ポンプ駆動軸111aを介してポンプ111と連結されている。さらに、ポンプ駆動軸111aと膨張機駆動軸114aとは、モータジェネレータ116内で互いの回転駆動力を伝達できるように連結されている。
また、モータジェネレータ116は、インバータ及びコンバータとして動作可能なインバータ装置117と電気的に接続され、さらに、インバータ装置117は、バッテリ118と電気的に接続されている。
【0019】
このため、膨張機114が膨張機駆動軸114aを回転駆動することによってモータジェネレータ116が稼動され、それにより、モータジェネレータ116は、発電機として作動して交流電流を発生し、インバータ装置117に交流電流を送る。このとき、インバータ装置117は、コンバータとして機能し、送られた交流電流を直流電流に変換してバッテリ118に供給し、バッテリ118は、供給された直流電流を蓄電すなわち充電する。
ここで、モータジェネレータ116は、発電手段を構成し、バッテリ118は、蓄電手段を構成している。
【0020】
また、インバータ装置117は、インバータとして機能すると、バッテリ118に充電された直流電気を変換して交流電流としてモータジェネレータ116に供給し、モータジェネレータ116を電動機として作動させることもできる。
ここで、経路1a、経路1b及び経路1cは、第一経路1を形成しランキンサイクル100を構成している。そして、モータジェネレータ116、インバータ装置117及びバッテリ118は、ランキンサイクル装置101を構成している。
【0021】
また、膨張機114の図示しない出口には、経路2aを介して熱交換器であるコンデンサ115が連通しており、コンデンサ115の内部を膨張機114から流出した冷媒が流通するようになっている。そして、コンデンサ115は、その内部を流通する冷媒とコンデンサ115の周囲の空気とが熱交換を行うように構成されている。このとき、コンデンサ115の内部の冷媒は、周囲の空気と熱交換することによって冷却されて凝縮する。
さらに、コンデンサ115には、その下流側に経路2bを介してポンプ111の図示しない吸入口が連通している。よって、コンデンサ115から流出した液体状態の冷媒は、ポンプ111によって吸入されて再び圧送され、ランキンサイクル100を循環する。
ここで、経路2a及び経路2bは、第二経路2を形成しランキンサイクル100を構成している。
【0022】
また、ランキンサイクル100は、第一経路1を第二経路2に連通するバイパス経路3を有している。なお、本実施の形態1では、バイパス経路3の一方の端部は、第一経路1の経路1aと接続され、バイパス経路3の他方の端部は、第二経路2の経路2aと接続されている。
さらに、ランキンサイクル100は、バイパス経路3の途中に、バイパス経路3を開放又は閉鎖し、さらにバイパス経路3の流路断面積を調節することができる電磁弁からなる流量調整弁120を有している。
【0023】
また、ランキンサイクル装置101は、制御手段であるECU119を有している。ECU119は、バッテリ118と電気的に接続されており、バッテリ118の電圧を検知することができる。さらに、ECU119は、インバータ装置117とも電気的に接続されており、インバータ装置117の動作を制御することができると共に、インバータ装置117からバッテリ118に供給される直流電流による電力及び電力量を検出することができる。
また、ECU119は、流量調整弁120と電気的に接続されており、流量調整弁120の開放及び閉鎖動作を制御することができる。
さらに、ECU119は、車両に搭載された電力で作動する装置、例えば、ヘッドライト、リヤデフォッガー、ブロワーファン、エアコンのコンプレッサ、エンジン10への燃料供給装置等の稼動を検知して、これらの電気負荷(使用電力)を検出することができる。
【0024】
次に、この発明の実施の形態1に係るランキンサイクル装置101の動作を説明する。
図1を参照すると、エンジン10が稼動されると、図示しないポンプによってエンジン10からエンジン冷却水が圧送され、エンジン冷却水は、エンジン10を冷却水ボイラ112に連通する冷却水経路10aを循環する。そして、エンジン冷却水は、冷却水ボイラ112において、ランキンサイクル100を流通する冷媒と熱交換を行う。
同時に、エンジン10から排気系統30に排気ガスが排出され、排出された排気ガスの一部は、排気ガス分岐経路30aを流通した後に再び排気系統30に戻り、排気系統30の他の排気ガスと共に、車両の外部に排出される。そして、排気ガス分岐経路30aを流通する排気ガスは、廃ガスボイラ113において、ランキンサイクル100を流通する冷媒と熱交換を行う。
【0025】
また、エンジン10が稼動され、排気ガスの温度が所定の温度以上に上昇し且つエンジン冷却水の温度が所定の温度以上に上昇すると、ランキンサイクル100が起動される。このとき、ECU119によって、インバータ装置117がインバータとして起動され、インバータ装置117は、バッテリ118の直流電気を変換して交流電流としてモータジェネレータ116に供給し、モータジェネレータ116を電動機として稼動させる。
【0026】
電動機として稼動するモータジェネレータ116は、ポンプ駆動軸111a及び膨張機駆動軸114aを回転駆動させ、ポンプ111及び膨張機114を駆動する。なお、このとき、バイパス経路3の流量調整弁120は閉じられている。
そして、駆動されたポンプ111は、液体状態の冷媒を等温圧縮して冷却水ボイラ112に向かって圧送し、また、駆動された膨張機114は、図示しないタービン等の回転体を回転させ、経路1cの冷媒を経路2aに送る。
【0027】
ポンプ111によって圧送された液体状態の低温の冷媒は、経路1aを通過して冷却水ボイラ112に流入する。冷却水ボイラ112では、冷媒は、冷却水ボイラ112を流通するエンジン冷却水と熱交換を行うことによって等圧加熱されて蒸発し、高圧であり比較的高温の気液混合状態となる。
【0028】
気液混合状態となった冷媒は、冷却水ボイラ112を出た後、経路1bを通過して廃ガスボイラ113に流入する。廃ガスボイラ113では、冷媒は、エンジン冷却水より高温である廃ガスボイラ113を流通する排気ガスと熱交換を行うことによって等圧加熱されてさらに蒸発し、高温高圧の過熱蒸気となる。
【0029】
過熱蒸気の状態となった冷媒は、廃ガスボイラ113を出た後、経路1cを通過して膨張機114に流入する。膨張機114では、高温高圧の過熱蒸気の状態である冷媒が断熱膨張し、高圧状態から低圧状態になる際の冷媒の膨張エネルギーが回生エネルギーとして回転エネルギーに変換される。それにより、膨張機114では、モータジェネレータ116によって回転駆動されている図示しない回転体にさらなる回転駆動力が加えられ、この回転駆動力が膨張機駆動軸114aを介してモータジェネレータ116及びポンプ駆動軸111aに伝達する。このとき、ECU119によって、インバータとして動作しているインバータ装置117は、その動作がコンバータに切り替えられ、バッテリ118からモータジェネレータ116への電力供給が停止される。そして、ポンプ111が、膨張機114から膨張機駆動軸114a及びポンプ駆動軸111aを介して伝達される回転駆動力によって駆動されると共に、モータジェネレータ116が、膨張機114から膨張機駆動軸114aを介して伝達される回転駆動力によって駆動されて発電機として作動し、交流電流を生成する。そして、モータジェネレータ116によって生成された交流電流は、インバータ装置117で直流電流に変換された後、バッテリ118に充電される。
【0030】
また、膨張機114を通過した冷媒は、高温低圧状態となって膨張機114から排出され、膨張機114から排出された冷媒は、経路2aを通過してコンデンサ115に流入する。コンデンサ115では、冷媒は、周囲の空気すなわち外気と熱交換を行うことによって等圧冷却されて凝縮し、液体となる。液体となった冷媒は、経路2bを介してポンプ111に吸入され、ポンプ111によって再度圧送されて、ランキンサイクル100を循環する。
【0031】
また、ランキンサイクル100の稼動中、ECU119は、バッテリ118の電圧の検知を継続して行う。そして、ECU119は、検知したバッテリ118の電圧から、バッテリ118におけるその総充電容量に対する現在の充電量の割合である充電率(充電量/総充電容量)を算出する。なお、充電率と電圧との関係をECU119に予め記憶させておく等することにより、ECU119は、バッテリ118の電圧から充電率を算出する。
【0032】
また、ECU119は、バッテリ118の充電率が第一の所定量(100%未満)以上となると、すなわち、バッテリ118の総充電容量から現在の充電量を減じたものである充電残容量の割合が所定量以下の小さいものとなると、充電率が100%に達した後もさらにバッテリ118が充電される過充電を防止するために、流量調整弁120を開放するように動作させる。このとき、ポンプ111によって圧送された直後の高圧の冷媒が流通する経路1aから、膨張機114によって減圧された後の低圧の冷媒が流通する経路2aに向かって、バイパス経路3を冷媒の一部が流通する。
これによって、経路1cを流通する冷媒の流量が減少して膨張機114に流入する冷媒量が減少する。さらに、冷媒流量の減少によって経路1cにおける冷媒の圧力が低下し、膨張機114における冷媒の流入側と流出側との差圧が小さくなる。
従って、膨張機114に流入した冷媒を膨張させることによって膨張機114が仕事として得る回生エネルギー量が減少するため、バッテリ118に供給される電力量が減少する。このとき、流量調整弁120の開度を大きくしてバイパス経路3の流路断面積を大きくし、バイパス経路3を流通する冷媒の流量を増加させることによって、膨張機114の回生エネルギーの減少量は増大する。
【0033】
また、ECU119は、車両の電気負荷を常時検出している。そしてECU119は、インバータ装置117からバッテリ118に供給される直流電流による電力がこの検出した車両の電気負荷以下となるように、流量調整弁120の開度を調節してバイパス経路3の冷媒の流量を制御することによって膨張機114へ流れる冷媒を調節し、膨張機114の稼動を抑制側に制御する。
このとき、車両の電気負荷が、膨張機114が稼動することによってモータジェネレータ116が発生する電力以上であるため、バッテリ118の充電電気が消費されて充電率が減少するが、充電率が第一の所定量より小さい量である第二の所定量に達すると、すなわち、バッテリ118の充電残容量の割合が大きくなり別の所定量となると、ECU119は、流量調整弁120を閉鎖するように動作させ、バイパス経路3における冷媒の流通を遮断する。
【0034】
なお、ECU119は、流量調整弁120の開放時、インバータ装置117からバッテリ118に供給される直流電流による電力が、検出した車両の電気負荷以下であり且つ車両の最小電気負荷以上となるように、流量調整弁120の開度を調節してもよい。なお、車両の最小電気負荷は、車両を通常走行させるためのみに必要な電気負荷であり、つまり、エンジン10への燃料噴霧装置と燃料ポンプが作動する電気負荷であり、車両毎に設定されるものであり、ECU119に記憶されている。そして、この場合も、バッテリ118の充電率が第二の所定量に達すると、ECU119は、流量調整弁120を閉鎖するように動作させる。
【0035】
このように、この発明の実施の形態1に係るランキンサイクル装置101は、車両に搭載されるランキンサイクル装置である。そして、ランキンサイクル装置101は、冷媒を膨張させて仕事を得る膨張機114、冷媒を膨張機114に向かって送るポンプ111、ポンプ111を膨張機114に連通する第一経路1、膨張機114をポンプ111に連通する第二経路2、第一経路1に設けられて冷媒を加熱する冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113、第二経路2に設けられて冷媒を冷却するコンデンサ115、第一経路1を第二経路2に連通するバイパス経路3、並びに、バイパス経路3に設けられてバイパス経路3を開放及び閉鎖可能な流量調整弁120を有する、冷媒を流通させるランキンサイクル100を備える。さらに、ランキンサイクル装置101は、膨張機114が得た仕事を電力に変換するモータジェネレータ116と、モータジェネレータ116が変換した電力を蓄電するバッテリ118と、バッテリ118に蓄電されている電力の充電率を検知し、検知した充電率に基づき流量調整弁120の開放及び閉鎖を制御するECU119とを備える。また、ECU119は、検知した充電率が所定量以上となると、流量調整弁120を開放する。
【0036】
このとき、流量調整弁120を開放しバイパス経路3に冷媒を流通させることによって、膨張機114に流れる冷媒の流量が減少する共に、膨張機114の上流側の入口と下流側の出口との圧力差が減少する。これにより、膨張機114が冷媒の膨張によって仕事として得る回生エネルギー量が減少するため、モータジェネレータ116による発電量が減少し、バッテリ118に供給される電力量も減少する。そして、バッテリ118に供給される電力量の調節は、流量調整弁120の開度を調節することによって行うことができる。よって、流量調整弁120の制御によりバッテリ118へ供給される電力量を調節することができるため、バッテリ118の充電率が100%に至り、さらにバッテリ118が過剰に充電されて過充電となることを抑えることができる。従って、モータジェネレータ116による発電量を調節するために、バイパス経路3と流量調整弁120を設けるのみでよいため、車両に占めるスペースを低減することができる。すなわち、ランキンサイクル装置101は、搭載スペースを低減するとともに、発電量を調節することを可能にする。さらに、流量調整弁120が開放される充電率の第一の所定量は、100%の近傍が好ましい。これによって、バッテリ118は、常に充電率100%のフル充電に近い状態が維持されるため、その性能を高い状態で維持することができる。同様に、流量調整弁120が閉鎖される充電率の第二の所定量も、100%に近い方が好ましい。
【0037】
また、ランキンサイクル装置101のECU119は、車両の電気負荷を検知し、流量調整弁120の開放時、車両の電気負荷に基づき、流量調整弁120の開度を制御してバイパス経路3を流通する冷媒の流量を調節することによって、検知した充電率の増加を抑えるようにモータジェネレータ116が発生する電力を制御する。これにより、流量調整弁120の開放時、車両の電気負荷に基づいてモータジェネレータ116が発生する電力を制御することによって、バッテリ118にさらに電力が充電されることを抑え、バッテリ118の充電率が増加することを効果的に防ぐことができるため、バッテリ118における過充電の発生をさらに効果的に抑えることが可能になる。
【0038】
さらに、ランキンサイクル装置101のECU119は、流量調整弁120の開放時、車両を通常走行させるためのみに必要な最小電気負荷に基づき、流量調整弁120の開度を制御してバイパス経路3を流通する冷媒の流量を調節することによって、検知した充電率の増加を抑えるようにモータジェネレータ116が発生する電力を制御する。これにより、流量調整弁120の開放時、車両の最小電気負荷に基づいてモータジェネレータ116が発生する電力を制御することによって、バッテリ118の充電率の増加をさらに効果的に防ぐことが可能になる。さらに、ECU119に車両の最小電気負荷を記憶させておくのみで、ECU119は、車両の電気負荷を検出せずに、流量調整弁120の開度を制御することができる。
【0039】
また、ランキンサイクル装置101のランキンサイクル100において、バイパス経路3は、第一経路1におけるポンプ111と冷却水ボイラ112との間を第二経路2に連通する。これによって、バイパス経路3は、加熱される前の密度が高い冷媒を流通させるため、バイパス経路3の直径及び流量調整弁120が小さくても、冷媒流量を確保することができる。よって、バイパス経路3及び流量調整弁120の小型化を図ることが可能になる。
また、ランキンサイクル装置101のランキンサイクル100において、バイパス経路3は、第一経路1を、第二経路2における膨張機114とコンデンサ115との間に連通する。これによって、第二経路2の冷媒は、その全てがコンデンサ115を流通して冷却される。よって、ポンプ111に吸入される冷媒におけるサブクール(過冷却)の不足を低減することができるため、ポンプ111におけるキャビテーションを防ぐことが可能になる。
【0040】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るランキンサイクル装置201は、実施の形態1におけるランキンサイクル装置101のランキンサイクル100におけるバイパス経路3を、膨張機114のみをバイパスするようにしたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図2を参照すると、ランキンサイクル装置201のランキンサイクル200におけるバイパス経路23は、その一方の端部が第一経路1の経路1cと接続され、その他方の端部が第二経路2の経路2aと接続され、膨張機114のみをバイパスするようにして設けられている。そして、バイパス経路23の途中には、バイパス経路23を開放又は閉鎖し、さらにバイパス経路23の流路断面積を調節することができる流量調整弁120が設けられている。
【0042】
よって、バッテリ118の充電率が第一の所定量以上となりECU119が流量調整弁120を開放するように動作させると、ポンプ111によって圧縮されて冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113によって加熱された高温高圧の冷媒の一部が、経路1cから経路2aに向かってバイパス経路23を流通する。これによって、膨張機114に流入する冷媒量が減少すると共に、膨張機114における冷媒の流入側と流出側との差圧が小さくなる。従って、膨張機114が冷媒の膨張時に仕事として得る回生エネルギー量が減少し、バッテリ118に供給される電力量が減少する。
【0043】
しかしながら、ランキンサイクル200では、経路1a及び1bを流通して冷却水ボイラ112及び廃ガスボイラ113によって加熱される冷媒の流量が、バイパス経路23に冷媒を流通させた場合でも減少しない。このため、特に、冷媒自体に温度の限界がある場合、各ボイラで加熱された冷媒の温度が高くなり過ぎることが防止される。
【0044】
また、この発明の実施の形態2に係るランキンサイクル装置201のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
このように、実施の形態2におけるランキンサイクル装置201によれば、上記実施の形態1のランキンサイクル装置101と同様な効果が得られる。
【0045】
また、実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、ECU119は、車両の電気負荷を検知し、流量調整弁120の開放時、モータジェネレータ116によって発生する電力を車両の電気負荷に合わせるように、流量調整弁120の開度を制御してバイパス経路3及び23を流通する冷媒の流量を調節してもよい。すなわち、ECU119は、流量調整弁120の開放時、インバータ装置117からバッテリ118に供給される直流電流による電力が、ECU119が検出した車両の電気負荷に合わせてその近傍となるように、流量調整弁120の開度を調節してもよい。これにより、流量調整弁120の開放時、バッテリ118の充電率が第一の所定量の近傍で維持されるため、バッテリ118の充電量の変動が抑えられ、バッテリ118の耐久性を向上させることが可能になる。
【0046】
さらに、実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、ECU119は、流量調整弁120の開放時、インバータ装置117からバッテリ118に供給される直流電流による電力が、ECU119が記憶している車両の最小電気負荷に合わせてその近傍となるように、流量調整弁120の開度を調節してもよい。これによって、ECU119は、車両の電気負荷を検出しない場合であっても、バッテリ118へ供給される電力量を制御し、バッテリ118の過充電を防ぐことができる。
【0047】
また、実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、バイパス経路3及び23の接続位置は、実施の形態1及び2の接続位置に限定されるものでなく、単に第一経路1を第二経路2に連通するものであればよい。
また、実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、バイパス経路3及び23は、複数あってもよい。このとき、複数のバイパス経路は、バイパス経路3及び23を組み合わせたものであってもよく、複数のバイパス経路の接続位置は、第一経路1を第二経路2に連通するものであればよい。
【0048】
また、実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、ポンプ111、モータジェネレータ116及び膨張機114は互いに連結された構成を有していたが、これに限定されるものでない。モータジェネレータ116及び膨張機114のみが連結された構成であってもよい。このとき、膨張機114が冷媒の膨張によって仕事として得た回生エネルギーは全て、モータジェネレータ116での発電及びインバータ装置117での電力変換を介して、バッテリ118に供給される。また、ポンプ111は、バッテリ118の電力によって直接稼動するものであってもよく、駆動ベルトを介して伝達されるエンジン10の動力によって稼動するものであってもよい。
【0049】
実施の形態1及び2のランキンサイクル装置101及び201において、モータジェネレータ116をオルタネータとし、インバータ装置117をレギュレータとしてもよい。このとき、オルタネータは、ポンプ111及び膨張機114と駆動ベルトを介して連結することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 第一経路、2 第二経路、3,23 バイパス経路、100,200 ランキンサイクル、101,201 ランキンサイクル装置、112 冷却水ボイラ(加熱手段)、113 廃ガスボイラ(加熱手段)、114 膨張機(流体膨張手段)、115 コンデンサ(冷却手段)、116 モータジェネレータ(発電手段)、118 バッテリ(蓄電手段)、119 ECU(制御手段)、111 ポンプ(流体圧送手段)、120 流量調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるランキンサイクル装置において、
作動流体を膨張させて仕事を得る流体膨張手段、作動流体を前記流体膨張手段に向かって送る流体圧送手段、前記流体圧送手段を前記流体膨張手段に連通する第一経路、前記流体膨張手段を前記流体圧送手段に連通する第二経路、前記第一経路に設けられて作動流体を加熱する加熱手段、前記第二経路に設けられて作動流体を冷却する冷却手段、前記第一経路を前記第二経路に連通するバイパス経路、並びに、前記バイパス経路に設けられて前記バイパス経路を開放及び閉鎖可能な流量調整弁を有する、作動流体を流通させるランキンサイクルと、
前記流体膨張手段が得た仕事を電力に変換する発電手段と、
前記発電手段が変換した電力を蓄電する蓄電手段と、
前記蓄電手段に蓄電されている電力の充電率を検知し、検知した充電率に基づき前記流量調整弁の開放及び閉鎖を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記検知した充電率が所定量以上となると、前記流量調整弁を開放するランキンサイクル装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車両の電気負荷を検知し、前記流量調整弁の開放時、前記車両の電気負荷に基づき、前記流量調整弁の開度を制御して前記バイパス経路を流通する作動流体の流量を調節することによって、前記検知した充電率の増加を抑えるように前記発電手段が発生する電力を制御する請求項1に記載のランキンサイクル装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記流量調整弁の開放時、前記車両を通常走行させるためのみに必要な最小電気負荷に基づき、前記流量調整弁の開度を制御して前記バイパス経路を流通する作動流体の流量を調節することによって、前記検知した充電率の増加を抑えるように前記発電手段が発生する電力を制御する請求項1または2に記載のランキンサイクル装置。
【請求項4】
前記バイパス経路は、前記第一経路における前記流体圧送手段と前記加熱手段との間を前記第二経路に連通する請求項1〜3のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。
【請求項5】
前記バイパス経路は、前記第一経路を、前記第二経路における前記流体膨張手段と前記冷却手段との間に連通する請求項1〜4のいずれか一項に記載のランキンサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67683(P2012−67683A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213459(P2010−213459)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】