説明

ランダムアクセス用スロット処理方法および装置

【課題】安全運転支援情報の必要性に応じて優先的にランダムアクセス用スロットを選択することができるランダムアクセス用スロット処理方法および装置を提供する。
【解決手段】車載情報端末装置14a等が路側機16から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と、GPS等の位置検出手段により得られた車載情報端末装置14a等の位置情報とに基づく所定の選択基準(登録優先度)により、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等側に選択させる。所定の選択基準としては、路側機16から車載情報端末装置14aまでの距離Raと路側機16のカバー範囲との比に応じて、選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを選択させる基準とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられるランダムアクセス用スロット処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交差点での安全運転支援サービス等が検討されている。この安全運転支援サービスでは、交差点に路側機が設置され、通信ゾーン内の車両に対して安全運転支援情報を提供することを目的としている。路側機(基地局)と車載無線機(移動局)との間の通信形態として、1つの基地局対複数の移動局間のポイントツーマルチポイント(Point to Multipoint : P−MP)型無線アクセスシステムがある。このP−MP型無線アクセスシステムを採用する従来の狭域通信(Dedicated Short Range Communication : DSRC)システムまたはセルラーシステムでは、複数の移動局から1つの基地局へのランダムアクセスの制御を行なっている。具体的には、移動局を基地局側へ登録する際に、移動局は予め複数個用意されたランダムアクセス用スロットの何れかを任意(ランダム)に選択して登録要求を基地局側へ出している。
【0003】
図13は、従来のランダムアクセス制御を説明するための無線アクセスシステム40を示す(非特許文献1参照)。図13において、符号42は基地局(Road Side Unit : RSU)、44は移動局A(On Board Equipment : OBE−A)、46は移動局B(OBE−B)、48は通信ゾーン、DNはRSU42からOBE−B46へのダウンリンク通信、UPはOBE−A44からRSU42へのアップリンク通信である。
【0004】
図14(A)は無線アクセスシステム40におけるダウンリンク通信DNのフレーム構成を示し、図14(B)は無線アクセスシステム40におけるアップリンク通信UPのフレーム構成を示す。図14(A)に示されるようにダウンリンク通信DNのフレームは、ランダムアクセス用スロットの割当てを行うためのダウンリンク専用のフレームコントロールメッセージスロット(Frame Control Message Slot : FCMS)50と、データ転送用のn2個のメッセージデータスロット(Message Data Slot : MDS)(1)52a、MDS(2)52bないしMDS(n2)52n2と等から構成されている。メッセージデータスロットMDS(1)等はRSU44がメッセージを送出するために用いる。一方、図14(B)に示されるようにアップリンク通信UPのフレームは、OBE−A44等がメッセージを送出するために用いるメッセージデータスロットMDS(1)52a、MDS(2)52bないしMDS(n2)52n2と、登録要求に用いるアップリンク専用のk2個のアクチベーションスロット(ランダムアクセス用スロット)ACTS(1)54aないしACTS(k2)54k2とから構成されている。
【0005】
次に、図13の無線アクセスシステム40および図14(A)および(B)の各フレーム構成を用いて、OBE−A44等がRSU42の通信リンクに登録する際のリンクチャネル確立フェーズについて説明する。まず、OBE−A44等がRSU42からのダウンリンク通信DN(ブロードキャストメッセージ)を受信すると、OBE−A44等は通信ゾーン48内に入ったことを知る。OBE−A44等は、FCMS50の内容を判別し、アクチベーションスロットACTS(1)54aないしACTS(k2)54k2の中からランダムに1個を選択して、アップリンク通信UPをRSU42へ送信し登録要求を行う。次フレームでRSU42はFCMS50にメッセージデータスロットMDSの割当て情報を送信する。OBE−A44等がFCMS50の内容を解釈することにより、リンクチャネル確立フェーズが終了する。
【0006】
【非特許文献1】「狭域通信(DSRC)システム」、標準規格、ARIB STD-T75 1.2版、平成15年10月16日、1.2改定、社団法人電波産業会。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来のリンクチャネル確立フェーズでは、OBE−A44等はアクチベーションスロット(ランダムアクセス用スロット)ACTS(1)54aないしACTS(k2)54k2の中からランダムに1個を選択して、アップリンク通信UPをRSU42へ送信し登録要求を行っていた。ここで、あるOBEが任意のアクチベーションスロットACTS(j)を選択する確率と他のOBEが任意のアクチベーションスロットACTS(j)を選択する確率とは同一である。即ち、選択したアクチベーションスロットACTS(j)が競合/衝突する確率は無線ゾーン48内のすべのOBE−A等について同一である。上述の交差点での安全運転支援サービス等においては、交差点に設置された路側機に近い車両(移動局)ほど安全運転支援情報の必要性が高い場合もある。しかし、従来のリンクチャネル確立フェーズでは安全運転支援情報の必要性の程度にかかわらず、すべてのOBE−A等について選択したアクチベーションスロットACTS(j)が競合/衝突する確率が同一となってしまうという問題があった。そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、安全運転支援情報の必要性に応じて優先的にアクチベーションスロットACTS(j)等のランダムアクセス用スロットを選択することができるランダムアクセス用スロット処理方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のランダムアクセス用スロット処理方法は、路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられるランダムアクセス用スロット処理方法であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機に選択させることを特徴とする。
【0009】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は、車載機が受信手段により路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と位置検出手段により得られた該車載機の位置情報とに基づく基準であるものとすることができる。
【0010】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であるものとすることができる。
【0011】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であるものとすることができる。
【0012】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記相対的関係は路側機から車載機までの距離と路側機のカバー範囲との所定の関数であるものとすることができる。
【0013】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽履歴に基づく基準であるものとすることができる。
【0014】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であるものとすることができる。
【0015】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であるものとすることができる。
【0016】
ここで、この発明の記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は交通状況に応じて用いられるものとすることができる。
【0017】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準により選択されたランダムアクセス用スロットを、現アップリンク通信のフレームで所定の送出確率により送出させることができる。
【0018】
この発明のランダムアクセス用スロット処理方法は、路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられるランダムアクセス用スロット処理方法であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットであって車載機にランダムに選択させたものを、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率により送出させることを特徴とする。
【0019】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は通信エリアの交通状況に基づく基準送出確率を含むことができる。
【0020】
この発明のランダムアクセス用スロット処理装置は、路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられる該車載機のランダムアクセス用スロット処理装置であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機に選択させる選択手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、路側機から所定の通信制御情報を含むダウンリンク通信を受信する受信手段と、路側機の位置を検出する位置検出手段とをさらに備え、前記所定の選択基準は、前記受信手段により車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と前記位置検出手段により得られた該車載機の位置情報とに基づく基準であるものとすることができる。
【0022】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であるものとすることができる。
【0023】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であるものとすることができる。
【0024】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記相対的関係は路側機から車載機までの距離と路側機のカバー範囲との所定の関数であるものとすることができる。
【0025】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽履歴に基づく基準であるものとすることができる。
【0026】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であるものとすることができる。
【0027】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であるものとすることができる。
【0028】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準は交通状況に応じて用いられるものとすることができる。
【0029】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準により選択されたランダムアクセス用スロットを、現アップリンク通信のフレームで所定の送出確率により送出させることができる。
【0030】
この発明のランダムアクセス用スロット処理装置は、路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられる該車載機のランダムアクセス用スロット処理装置であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、路側機から所定の通信制御情報を含むダウンリンク通信を受信する受信手段と、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機にランダムに選択させるランダム選択手段と、前記ランダム選択手段により選択させたランダムアクセス用スロットを、前記受信手段により受信した所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率により送出させる送出手段とを備えたことを特徴とする。
【0031】
ここで、この発明のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は通信エリアの交通状況に基づく基準送出確率を含むことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のランダムアクセス用スロット処理方法および装置によれば、車載情報端末装置が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と、車載情報端末装置が有するGPS等の位置検出手段により得られた車載情報端末装置の位置情報とに基づく所定の選択基準(登録優先度)により、車載情報端末装置から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置側に選択させることができる。即ち、メディアアクセス制御方式のランダムアクセスにおいて、従来のスロットアロハ方式等のように任意にランダムアクセス用スロットを選択させるのではなく、自車両(車載情報端末装置)側が登録優先度に応じてランダムアクセス用スロットを選択することができる。所定の選択基準としては、通信制御情報に含まれる路側機の位置情報、カバー範囲および車載情報端末装置の位置情報に基づく相対的関係に応じて、車載情報端末装置が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。上記相対関係としては路側機から車載情報端末装置までの距離と路側機のカバー範囲との所定の関数とすることができる。この結果、上記相対関係に応じて、ランダムアクセス用スロットを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットが競合/衝突する確率)が異なることになる。所定の選択基準としては、路側機と車載情報端末装置との間の距離を用いる他に、車載情報端末装置が搭載された車両の被遮蔽履歴を用いることもできる。以上により、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機に近い車両(車載情報端末装置)および/または被遮蔽時間の長い車両、即ち安全運転支援情報の必要性が高い車両に対して優先的に特定のランダムアクセス用スロットを選択させることができるという効果がある。
【0033】
ランダムアクセス用スロットの選択にあたり、重み付けは考慮せず、車載情報端末装置にランダムに1スロット選択させ、当該ランダムアクセス用スロットを、車載情報端末装置が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率により送出させることもできる。所定の送出確率は、例えば自車両の相対位置より算出することができる。自車両が路側機に近い場合および/または自車両の被遮蔽時間が長い場合は、所定の送出確率を高く算出することができるため、高い確率で、選択したランダムアクセス用スロットを当該通信フレーム内の同スロットの開始時刻で送信することができる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機に最も近い車両および/または被遮蔽時間が長い車両、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高い車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットを選択させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明の実施例1におけるランダムアクセス用スロット処理方法が適用されるP−MP型無線アクセスシステム10を示す。図1において、符号16は交差点の信号機または支持支柱18等に設置された路側機、12a、12b、12c、12dおよび12eは車両、14a、14b、14c、14dおよび14eは、各々車両12a、12b、12c、12dおよび12eに搭載された車載情報端末装置(車載機)、Raは路側機16と車載情報端末装置14aとの間の距離、Rbは路側機16と車載情報端末装置14bとの間の距離、Rcは路側機16と車載情報端末装置14cとの間の距離、Rdは路側機16と車載情報端末装置14dとの間の距離、Reは路側機16と車載情報端末装置14eとの間の距離、Lは路側機16のカバー範囲(無線通信距離)である。カバー範囲Lは、路側機16が有するアンテナ(不図示)の最大電力、指向性およびアンテナの設置高、隣接路側機との間隔等により定まる。例えば、有料道路自動料金収受(Electronic Toll Collection : ETC)システムにおけるカバー範囲Lは15m〜30m程度である。図1に示されるように、車両12eはカバー範囲Lの外にあるため、本発明のランダムアクセス用スロット処理方法の適用対象外となる。
【0036】
図2(A)は、P−MP型無線アクセスシステム10における路側機16と車載情報端末装置14a等との間の双方向移動通信の流れを説明する概念図である。図2(A)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図2(A)において、符号DLa、DLb、DLcおよびDLdは、各々、路側機16から車載情報端末装置14a、14b、14cおよび14dへのブロードキャストメッセージ等のダウンリンク通信であり、符号ULa、ULb、ULcおよびULdは、各々、車載情報端末装置14a、14b、14cおよび14dから路側機16へのアップリンク通信である。P−MP型無線アクセスシステム10では、無線アクセス方式として例えばTDMA−FDD(Time Division Multiple Access − Frequency Division Duplex : 時分割マルチプルアクセス−周波数分割デュプレックス)が用いられており、メディアアクセス制御方式として予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式等が用いられているものとする。本発明のランダムアクセス用スロット処理方法の対象となる無線システムは、路側機16と車載情報端末装置14a等との間の(初期接続確立後のサービス確立フェーズまたは通信フェーズに先立つ)リンクチャネル確立フェーズにおいて、自車両(車載情報端末装置14a等)を路側機16側へ登録し、アップリンク通信に必要な無線リソースの割当てを要求する際のメディアアクセス制御方式として、ランダムアクセスを使用するものとする。このようなメディアアクセス制御方式には従来からスロットアロハ方式等があるが、後述するようにP−MP型無線アクセスシステム10では、スロットアロハ方式等と比較して本発明のランダムアクセス用スロット処理方法等を用いる点に特徴がある。本発明のランダムアクセス用スロット処理方法は、上述したリンクチャネル確立フェーズにおいて、路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等に選択させることに特徴がある。本実施例1ないし3では、所定の選択基準の例として路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離を用いた場合について説明する。実施例4および5では、所定の選択基準の例として車載情報端末装置14a等が搭載された車両12a等の被遮蔽履歴を用いた場合について説明する。
【0037】
図2(B)は、本発明のランダムアクセス用スロット処理方法の概念を説明するためのグラフである。図2(B)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図2(B)において、横軸は路側機からの距離(m)であり、縦軸は本発明のランダムアクセス用スロット処理方法で用いられる、自車両を路側機16側へ登録する際の優先度合いを示す登録優先度である。図2(B)に示されるように、路側機16からの距離Ra等が近い車両12a等(車載情報端末装置14a等)ほど登録優先度を高く設定する。より厳密には、距離Ra等とカバー範囲Lとの所望の比(例えば、Ra/L)が大きいほど登録優先度を高く設定する。即ち、メディアアクセス制御方式のランダムアクセスにおいて、従来のスロットアロハ方式等のように任意にランダムアクセス用スロットを選択させるのではなく、自車両(車載情報端末装置14a等)側が登録優先度に応じてランダムアクセス用スロットを選択する点に特徴がある。
【0038】
図2(A)および(B)に示されるように、本発明のランダムアクセス用スロット処理方法では、まず、車載情報端末装置14a等が路側機16からダウンリンク通信DLa等を受信することにより、路側機16のカバー範囲Lに入ったことを知る。次に、車載情報端末装置14a等は、受信したダウンリンク通信DLa等に含まれる所定の通信制御情報と、車載情報端末装置14a等が有する全地球測位システム(Global Positioning System : GPS)等の位置検出手段により得られた車載情報端末装置14a等の位置情報とに基づく所定の選択基準(登録優先度)により、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信ULa等に用いるランダムアクセス用スロットを選択する。続いて、車載情報端末装置14a等は、選択したランダムアクセス用スロットを用いてアップリンク通信ULa等を路側機16へ送信し登録要求を行う。この後、路側機16は通信用のデータスロットの割当て情報を車載情報端末装置14a等へ送信する。車載情報端末装置14a等が当該割当て情報の内容を解釈することにより、リンクチャネル確立フェーズが終了する。
【0039】
図3は、本発明のランダムアクセス用スロット処理装置11の機能を示すブロック図である。ランダムアクセス用スロット処理装置11は、路側機16と車両12a等に搭載された車載情報端末装置14a等(車載機)との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられる装置である。ランダムアクセス用スロット処理装置11は、車載情報端末装置14a等の内部にハードウェアおよび/またはソフトウェアとして組み込まれているか、あるいは車載情報端末装置14a等に接続されて車載情報端末装置14a等と一体として機能しているものとする。メディアアクセス制御方式は、上述のように予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式である。ランダムアクセス用スロット処理装置11は、車載情報端末装置14a等と路側機16との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、図3に示されるように、路側機16から所定の通信制御情報を含むダウンリンク通信DLa等を受信する受信手段13と、車載情報端末装置14a等の位置を検出するGPS等の位置検出手段15と、路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等に選択させる選択手段17を備えている。ランダムアクセス用スロット処理装置11は、上述したランダムアクセス用スロット処理方法のように、本実施例1ないし3では所定の選択基準の例として路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離を用い、実施例4および5では所定の選択基準の例として車載情報端末装置14a等が搭載された車両12a等の被遮蔽履歴を用いる。所定の選択基準としては、受信手段13により車載情報端末装置14a等が路側機16から受信したダウンリンク通信DLa等に含まれる所定の通信制御情報と位置検出手段15により得られた車載情報端末装置14a等の位置情報とに基づく基準(登録優先度)とすることができる。以下では、ランダムアクセス用スロット処理方法とランダムアクセス用スロット処理装置11とを合わせてランダムアクセス用スロット処理方法等と呼ぶ。
【0040】
図4は、本発明のランダムアクセス用スロット処理方法等で用いられるダウンリンク通信DLa等、アップリンク通信ULa等のフレーム構成を示す。図4(A)に示されるように、ダウンリンク通信DLa等はSYS20(所定の通信制御情報が含まれる通信制御情報用スロット)と、通信リンクの確立後に用いられるn個(nは任意)のデータスロットDATA1(22a)ないしDATAn(22n)とを含むフレーム構成を有している。SYS20には、路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットの数および当該スロットのフレーム内の開始位置等が含まれている。図4(B)に示されるように、アップリンク通信ULa等は通信リンクの確立後に用いられるn個のデータスロットDATA1(22a)ないしDATAn(22n)と、登録要求時専用のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGn(24n)の列を含むフレーム構成を有している。通信制御情報用スロットSYS20に含まれる上述のスロットのフレーム内の開始位置は、アップリンク通信ULaのフレーム内におけるランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の開始位置である。
【0041】
次に、上述の所定の選択基準(登録優先度)の一例について説明する。所定の選択基準としては、通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットREG1(24a)を車載情報端末装置14a等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。
【0042】
図5(A)は、通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係について説明するための概念図である。図5(A)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図5(A)に示されるように、上記相対関係としては路側機16から車載情報端末装置14aまでの距離Raと路側機16のカバー範囲Lとの所定の関数f(Ra/L)とすることができる。関数f(Ra/L)としては所望の関数を用いることができる。例えば、関数f(Ra/L)=Ra/Lとしてもよく、あるいは関数f(Ra/L)=(R/L)(m>1)としてもよい。距離Ra等は、通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報と車載情報端末装置14a等の位置検出手段15により得られた車載情報端末装置14a等の位置情報とに基づき、計算することができる。
【0043】
図5(B)は、上記相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる一例を説明するためのグラフである。図5(B)において、横軸はランダムアクセス用スロットREGjの位置j、縦軸はランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率、Paは車載情報端末装置14aがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pa(1)は車載情報端末装置14aがランダムアクセス用スロットREG1を選択する確率、Pdは車載情報端末装置14dがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pd(n)は車載情報端末装置14nがランダムアクセス用スロットREGnを選択する確率である。上記相対関係として上述の関数f(Ra/L)を用いると、図5(B)に示されるように、路側機16に近い車載情報端末装置14aの場合、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Paとなる。逆に、路側機16から遠い車載情報端末装置14dの場合、ランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pdとなる。この結果、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14a等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)、即ち安全運転支援情報の必要性が高いと想定される車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択させることができる。ランダムアクセス用スロットREG1(24a)のアップリンク通信ULaのフレーム内の開始位置は上述の通信制御情報用スロットSYS20に含まれているため、車載情報端末装置14a等は、当該開始位置にリンクアドレスを付加することにより、登録要求を行えばよい。
【0044】
図6(A)は、他の車載情報端末装置14b、14cについて上記相対的関係につき説明するための概念図である。図6(A)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図6(A)に示されるように、上記相対関係としては上述の所定の関数f(Ra/L)とすることができる。図6(B)は、上記相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる一例を説明するためのグラフである。図6(B)において、横軸はランダムアクセス用スロットREGjの位置j、縦軸はランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率、Pbは車載情報端末装置14bがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pb(i)は車載情報端末装置14bがランダムアクセス用スロットREGiを選択する確率、Pcは車載情報端末装置14cがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pc(k)は車載情報端末装置14cがランダムアクセス用スロットREGkを選択する確率である。上記相対関係として上述の関数f(Rb/L)を用いると、図6(B)に示されるように、路側機16にやや近い車載情報端末装置14bの場合、ランダムアクセス用スロットREGiを選択する確率が最も高くなるような確率分布Pbとなる。逆に、路側機16からやや遠い車載情報端末装置14cの場合、ランダムアクセス用スロットREGkを選択する確率が最も高くなるような確率分布Pcとなる。この結果、図5(A)、(B)に示される場合と同様に、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14b等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に相対的に近い車両(車載情報端末装置14b)、即ち安全運転支援情報の必要性が相対的に高い車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREGiを選択させることができる。
【0045】
以上より、本発明の実施例1によれば、車載情報端末装置14a等が路側機16から受信したダウンリンク通信DLa等に含まれる所定の通信制御情報と、車載情報端末装置14a等が有するGPS等の位置検出手段15により得られた車載情報端末装置14a等の位置情報とに基づく所定の選択基準(登録優先度)により、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信ULa等に用いるランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等側に選択させることができる。即ち、メディアアクセス制御方式のランダムアクセスにおいて、従来のスロットアロハ方式等のように任意にランダムアクセス用スロットを選択させるのではなく、自車両(車載情報端末装置14a等)側が登録優先度に応じてランダムアクセス用スロットを選択することができる。所定の選択基準としては、通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を車載情報端末装置14a等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。上記相対関係としては路側機16から車載情報端末装置14aまでの距離Raと路側機16のカバー範囲Lとの所定の関数f(Ra/L)とすることができる。この結果、車載情報端末装置14aのように路側機16に最も近い場合には、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Paとなる。逆に、車載情報端末装置14dのように路側機16から遠い場合には、ランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pdとなる。以上のように、上記相対関係に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14a等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高い車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択させることができる。
【実施例2】
【0046】
実施例2では、路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離を用いた場合における他の所定の選択基準について説明する。他の所定の選択基準としては、路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載情報端末装置14a等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けし、当該重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数のランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。
【0047】
図7(A)は、通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係について説明するための概念図である。図7(A)で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図7(A)に示されるように、上記相対関係としては路側機16から車載情報端末装置14aまでの距離Raと路側機16のカバー範囲Lとの所定の関数g(Ra/L)とすることができる。関数g(Ra/L)としては、実施例1の関数f(Ra/L)と同様に、所望の関数を用いることができる。
【0048】
図7(B)は、上記相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けさせた一例を、ランダムアクセス用スロットREGjの列を用いて示す。図7(B)で、ランダムアクセス用スロットREGjは単にjと表す。図7(B)に示されるように、上記相対関係として上述の関数g(Ra/L)を用いると、路側機16に最も近い車載情報端末装置14aの場合、j個のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択するように重み付けさせることができる。逆に、路側機16から最も遠い車載情報端末装置14dの場合、1個のランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択するように重み付けさせることができる。この結果、上記相対関係に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14a等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高いと想定される車両に対して優先的に多数のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択させることができる。
【0049】
図7(B)に示される重み付けの例では、車載情報端末装置14aが選択するj個のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjは連続的に並んでいた。しかし、選択するランダムアクセス用スロットREGjの数がj個であれば、必ずしも連続的に並んでいる必要はない。図7(C)は、車載情報端末装置14aが選択するj個のランダムアクセス用スロットREGjが不連続に並んでいる場合の重み付けの例を示す。図7(C)で、ランダムアクセス用スロットREGjは単にjと表す。図6(C)に示されるように、車載情報端末装置14aが選択するj個のランダムアクセス用スロットREGjは、REG1(24a)、REG2、REGkないしREGk+(j−2)と不連続になっている。以上のように不連続に選択させた場合であっても、車載情報端末装置14aのように路側機16に近い場合にはj個のランダムアクセス用スロットREGを選択するように重み付けさせることができる。車載情報端末装置14dのように路側機16から遠い場合、必ずしも右端のランダムアクセス用スロットREGnではなく、ランダムアクセス用スロットREGn-1を1個選択するように重み付けさせてもよい。以上により、上記相対関係に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、載情報端末装置14a等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高い車両に対して優先的に多数且つ不連続のランダムアクセス用スロットREGを選択させることができる。
【0050】
以上より、本発明の実施例2によれば、他の所定の選択基準として、路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載情報端末装置14a等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けし、当該重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数のランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14a等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。上記相対関係として関数g(Ra/L)を用いると、路側機16に最も近い車載情報端末装置14aの場合、j個のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択するように重み付けさせることができる。逆に、路側機16から最も遠い車載情報端末装置14dの場合、1個のランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択するように重み付けさせることができる。この結果、上記相対関係に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、載情報端末装置14a等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高い車両に対して優先的に多数のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択させることができる。車載情報端末装置14aが選択するj個のランダムアクセス用スロットREGは、その数がj個であれば、必ずしも連続的に並んでいる必要はなく、不連続に並んでいてもよい。
【実施例3】
【0051】
実施例1で説明した車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる選択基準と、実施例2で説明した車載情報端末装置14a等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けさせる選択基準とは、組み合わせて用いることも可能である。例えば、車載情報端末装置14a等が選択した複数個のランダムアクセス用スロットREGk(k=1〜j)の中で、さらに位置kに重み付けさせてもよい。あるいは、路側機16が設置された交差点の道路状況等に応じて、上記2つの選択基準を交互に用いることも可能である。
【実施例4】
【0052】
本実施例4および次の実施例5では、所定の選択基準の例として車載情報端末装置14c等が搭載された車両12c等の被遮蔽履歴に基づく基準を用いた場合について説明する。図8(A)および(B)は、P−MP型無線アクセスシステム10における路側機16と車載情報端末装置14c等との間の双方向移動通信を説明する図である。図8(A)および(B)で図2(A)と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図8(A)に示されるように、大型車両12bと車両12cとは路側機16からほぼ同じ相対位置を並走している。大型車両12bは路側機16と通信可能であるが、車両12cは大型車両12bにより路側機16との通信が遮蔽されている。このため、車両12cで緊急通信のメッセージ送信要求が発生していても、路側機16からのダウンリンク通信DLc(フレーム構成情報等)を受信することはできない。図8(B)は図8(A)に示される状態から時間Tだけ経過後の状態を示す。図8(B)に示されるように、車両12cは大型車両12bによるシャドーイングの影響を脱したため、路側機16からのダウンリンク通信DLcを受信することが可能となっている。
【0053】
以上のように、路側機16からほぼ同じ相対位置を並走している2台の車両12cおよび12bについて、一方が長時間Tに亘りシャドーイングにより通信が遮蔽されていて、通信可能になったばかりの車両12cであり、他方が継続して通信可能であった大型車両12bである場合、通信エリア走行中のランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の選択機会をより公平なものとするためには、車両12cに優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の選択機会を与える必要がある。そこで、所定の選択基準の例として車載情報端末装置14cが搭載された車両12cの被遮蔽履歴に基づく基準を用いる。被遮蔽履歴としては、車両12cがどの程度シャドーイングの影響を受けて通信できなかったかを表す任意の指標であればよい。例えば、車両12cで緊急通信のメッセージ送信要求が発生してから、路側機16からのダウンリンク通信DLc(フレーム構成情報等)を正常に受信することができるまでの時間(上記時間T)を用いることが好適である。当該時間Tは車載情報端末装置14c側のタイマー等により得ればよい。
【0054】
図9は、本発明の実施例4におけるランダムアクセス用スロット処理方法の概念を説明するためのグラフである。図9において、横軸は上述した被遮蔽時間(T)であり、縦軸は自車両を路側機16側へ登録する際の優先度合いを示す登録優先度である。図9に示されるように、被遮蔽時間(T)が長い車両12c等(車載情報端末装置14c等)ほど登録優先度を高く設定する。上述の例では大型車両12bは遮蔽する側であったが、一般的には当該大型車両12bも他の車両により遮蔽されていた可能性がある。従って、一般的には異なる被遮蔽時間(T)を有する複数の車両12c等間で、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14a等毎に異なることが望ましい。そこで、所定の選択基準としては、車載情報端末装置14c等が搭載された車両12c等の被遮蔽時間Tに応じて車載情報端末装置14c等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を車載情報端末装置14c等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離の替わりに被遮蔽時間(T)を用いる点を除けば、他の点は実施例1と同様である。
【0055】
図10は、上記被遮蔽時間Tに応じて、車載情報端末装置14c等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる一例を説明するためのグラフである。図10において、横軸はランダムアクセス用スロットREGjの位置j、縦軸はランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率、Pcは車載情報端末装置14cがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pc(1)は車載情報端末装置14cがランダムアクセス用スロットREG1を選択する確率、Pbは車載情報端末装置14bがランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率分布、Pb(n)は車載情報端末装置14bがランダムアクセス用スロットREGnを選択する確率である。図10に示されるように、被遮蔽時間Tが長い車載情報端末装置14cの場合、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pcとなる。逆に、被遮蔽時間Tが短い車載情報端末装置14bの場合、ランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pbとなる。この結果、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14c等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、被遮蔽時間Tが最も長い車両(車載情報端末装置14c)、即ち安全運転支援情報の必要性が高いと想定される車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択させることができる。
【0056】
以上より、本発明の実施例4によれば、所定の選択基準として車載情報端末装置14c等が搭載された車両12c等の被遮蔽履歴に基づく基準を用いることができる。被遮蔽履歴としては、車両12cがどの程度シャドーイングの影響を受けて通信できなかったかを表す任意の指標であればよく、例えば、車両12cにおける被遮蔽時間Tを用いることが好適である。具体的には、車載情報端末装置14c等が搭載された車両12c等の被遮蔽時間Tに応じて車載情報端末装置14c等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を車載情報端末装置14c等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。被遮蔽時間Tが長い車載情報端末装置14cの場合、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pcとし、被遮蔽時間Tが短い車載情報端末装置14bの場合、ランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択する確率が最も高くなるような確率分布Pbとする。この結果、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14c等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、被遮蔽時間Tが最も長い車両(車載情報端末装置14c)、即ち安全運転支援情報の必要性が高いと想定される車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択させることができる。
【実施例5】
【0057】
実施例5では、非遮蔽履歴を用いた場合における他の所定の選択基準について説明する。他の所定の選択基準としては、車載情報端末装置14c等が搭載された車両14c等の被遮蔽時間Tに応じて車載情報端末装置14c等が選択可能なランダムアクセス用スロットのREG1(24a)等の数に重み付けし、当該重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数のランダムアクセススロットを選択させる基準とすることができる。路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離の替わりに被遮蔽時間(T)を用いる点を除けば、他の点は実施例2と同様である。
【0058】
図11は、上記被遮蔽時間(T)に応じて、車載情報端末装置14c等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けさせた一例を、ランダムアクセス用スロットREGjの列を用いて示す。図11で、ランダムアクセス用スロットREGjは単にjと表す。図11に示されるように、被遮蔽時間(T)が最も長い車載情報端末装置14cの場合、j個のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択するように重み付けさせることができる。逆に、被遮蔽時間(T)が最も短い車載情報端末装置14bの場合、1個のランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択するように重み付けさせることができる。この結果、上記被遮蔽時間(T)に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、車載情報端末装置14c等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、被遮蔽時間(T)に応じてが最も長い車両(車載情報端末装置14c)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高いと想定される車両に対して優先的に多数のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択させることができる。
【0059】
実施例2の場合と同様に、選択するランダムアクセス用スロットREGjの数がj個であれば、選択するランダムアクセス用スロットREGjは必ずしも連続的に並んでいる必要はない。この点は実施例2における図7(C)の説明と同様であるため、詳細は省略する。
【0060】
以上より、本発明の実施例5によれば、非遮蔽履歴を用いた場合における他の所定の選択基準として、被遮蔽時間(T)に応じて車載情報端末装置14c等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けし、当該重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数のランダムアクセス用スロットを車載情報端末装置14c等のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準とすることができる。被遮蔽時間(T)が最も長い車載情報端末装置14cの場合、j個のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択するように重み付けさせることができる。逆に、被遮蔽時間(T)が最も短い車載情報端末装置14bの場合、1個のランダムアクセス用スロットREGn(24n)を選択するように重み付けさせることができる。この結果、被遮蔽時間(T)に応じて、ランダムアクセス用スロットREGjを選択する確率(選択したランダムアクセス用スロットREGjが競合/衝突する確率)は、載情報端末装置14c等毎に異なることになる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、被遮蔽時間(T)が最も長い車両(車載情報端末装置14c)、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高いと想定される車両に対して優先的に多数のランダムアクセス用スロットREG1(24a)ないしREGjを選択させることができる。車載情報端末装置14cが選択するj個のランダムアクセス用スロットREGは、その数がj個であれば、必ずしも連続的に並んでいる必要はなく、不連続に並んでいてもよい。
【実施例6】
【0061】
実施例6では、実施例1ないし5の応用例について説明する。図12は、実施例1ないし5が適用される交差点での安全運転支援サービスシステム30を示す。図12において、符号36aは信号機、16aは信号機36aに設置された路側機、32a、32bおよび32cは信号機36a側の車線を走行する車両、36bは信号機36aの対向側の信号機、16bは信号機36bに設置された路側機、34aおよび34bは信号機36b側の車線を走行する車両である。車両32a等および34a等のすべての車両と路側機16a等とは、実施例1ないし5で説明したランダムアクセス用スロット処理方法等が適用されるP−MP型無線アクセスシステム10を構成しているものとする。図12に示されるように、最も交差点に近い車両32aは交差点を右折しようとしているところであるが、車両32aからは車両34aの陰にある車両34bは見つけにくい状況である。このような場合、路側機16aから特に車両32aに対して、車両34aの陰に車両34bがあるという安全運転支援情報を送信することが望ましい。従来のP−MP型無線アクセスシステム40では、車両32a、32bおよび32cが任意のランダムアクセス用スロットを選択する確率は同一であった。このため、ランダムアクセス用スロットの数によっては路側機16aから最も遠い車両32cの方が路側機16aに最も近い車両32aより先に路側機16a側に登録してしまい、車両32aが登録できなくなる可能性が高かった。本発明のランダムアクセス用スロット処理方法等(実施例1ないし3)が安全運転支援サービスシステム30に適用されると、交差点に最も近い車両32aが優先的に路側機16a側に登録されるため、最も安全運転支援情報を必要とする車両32aに優先的に当該情報を送信することが可能となる。
【0062】
車両32aが大型車両32bに遮蔽されていた直後に図12に示されるような交差点に近い位置に来た場合、従来のP−MP型無線アクセスシステム40では、車両32aおよび32bが任意のランダムアクセス用スロットを選択する確率は同一であった。このため、ランダムアクセス用スロットの数によっては被遮蔽時間が最も短い(または無い)車両32bの方が被遮蔽時間が最も長い車両32aより先に路側機16a側に登録してしまい、車両32aが登録できなくなる可能性が高かった。本発明のランダムアクセス用スロット処理方法等(実施例4および5)が安全運転支援サービスシステム30に適用されると、被遮蔽時間が最も長い車両32aが優先的に路側機16a側に登録されるため、最も安全運転支援情報を必要であると想定される車両32aに優先的に当該情報を送信することが可能となる。
【0063】
所定の選択基準は、実施例1ないし3では路側機16と車載情報端末装置14a等との間の距離を用い、実施例4および5では車載情報端末装置14c等が搭載された車両12c等の被遮蔽履歴を用いた。しかし、上記所定の選択基準は交通状況に応じて使い分けることもできる。交通状況は、従前に走行していた地点の路側機からのダウンリンク通信により、または遮蔽されていなかった時点における路側機からのダウンリンク通信等により得ることができる。
【実施例7】
【0064】
上述した実施例1ないし6のランダムアクセス用スロット処理方法等において、所定の選択基準により選択されたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を、現アップリンク通信のフレームで所定の送出確率により送出させることも可能である。所定の送出確率としては1(一律送出)とすることが好適であるが、任意の送出確率を用いてもよい。
【実施例8】
【0065】
本実施例8では、実施例1ないし7と異なり、車載情報端末装置14a等から路側機16へのアップリンク通信ULa等に用いるランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を車載情報端末装置14a等にランダムに1スロット選択させるランダム選択手段(不図示)を用いる。すなわち、実施例1ないし7のように、スロット選択について重み付けは考慮しない。車載情報端末装置14a等のランダム選択手段によりランダムに選択させたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を、車載情報端末装置14a等が路側機16から受信手段により受信したダウンリンク通信DLa等に含まれる所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率P_txにより送出させる。
【0066】
所定の送出確率P_txの算出方法は任意の方法を用いることができる。以下では一例として、自車両の相対位置より所定の送出確率P_txを算出する方法について説明する。本方法では、上記所定の通信制御情報に通信エリアの交通状況に基づく基準送出確率を含むものとする。まず、路側機16が過去一定時間内における車両12a等と間の通信履歴に基づき、通信エリア内の車両台数を推定する。次に、推定した車両台数を考慮した基準送出確率P_d(0≦P_d≦1)をダウンリンク通信DLa等のフレーム構成情報にて各車両12a等へ配信する。例えば、車両台数が少ない場合には基準送出確率P_d=1とし、車両台数が多い場合には基準送出確率P_d<1とする。配信される情報には、規定位置(路側機16から所望の距離の位置等)および/または規定時間(許容可能な遮蔽時間等)も含む。各車両12a等は、位置検出手段により得られた自車の現在位置と配信された規定位置との比較および/または被遮蔽時間と規定時間との比較等により、基準送出確率P_dを基準とし0≦P_tx≦1の範囲内で所定の送出確率P_txを自律的に算出することができる。例えば、自車両12a等が規定位置に近い場合および/または被遮蔽時間が規定時間より長い場合は、所定の送出確率P_txを高く算出することができる。
【0067】
算出した所定の送出確率P_txは、選択したランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を当該通信フレーム内の同スロットの開始時刻で送信するか、あるいは次の通信フレーム以降に見送るかの判断に用いる。所定の送出確率P_txで当該通信フレームにて送信し、1−P_txの確率で次の通信フレーム以降にて送信する。当該通信フレームでの送信を見送った場合には、次の通信フレームのランダムアクセス用スロットの数を正常受信した上で、再度、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)等をランダムに選択し、所定の送出確率P_txで送信を試みる。さらに送信を見送る場合には、以降同様に繰り返す。再度試みる場合の所定の送出確率P_txは従前と同一の所定の送出確率P_txを用いることが好適であるが、再試行数に応じて異なる所定の送出確率P_txを用いてもよいことは勿論である。ある通信フレームで送出するかどうかの具体的な決定方法は、例えば所定の送出確率P_txで値1(送出)を発生し、1−P_txの確率で値0(不送出)を発生するような擬似乱数を用意しておき、この擬似乱数に従って、ある通信フレームで送出するかどうかを決定すればよい。
【0068】
以上より、本発明の実施例8によれば、ランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の選択にあたり、重み付けは考慮せず、車載情報端末装置14a等にランダムに1スロット選択させる。選択させたランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を、車載情報端末装置14a等が路側機16から受信したダウンリンク通信DLa等に含まれる所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率P_txにより送出させる。所定の送出確率P_txの算出方法は、例えば自車両の相対位置より算出することができる。例えば、自車両12a等が規定位置に近い場合および/または被遮蔽時間が規定時間より長い場合は、所定の送出確率P_txを高く算出することができる。算出した所定の送出確率P_txは、選択したランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を当該通信フレーム内の同スロットの開始時刻で送信するか、あるいは次の通信フレーム以降に見送るかの判断に用いる。自車両の相対位置より所定の送出確率P_txを算出することができるため、例えば、自車両12a等が路側機16に近い場合および/または自車両12a等の被遮蔽時間が長い場合は、所定の送出確率P_txを高く算出することができ、この結果、高い確率で、選択したランダムアクセス用スロットREG1(24a)等を当該通信フレーム内の同スロットの開始時刻で送信することができる。従って、例えば交差点での安全運転支援サービス等において、交差点に設置された路側機16に最も近い車両(車載情報端末装置14a)および/または被遮蔽時間が長い車両14c等、即ち安全運転支援情報の必要性が最も高い車両に対して優先的にランダムアクセス用スロットREG1(24a)を選択させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の活用例として、交差点での安全運転支援サービスシステムへの適用が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1におけるランダムアクセス用スロット処理方法等が適用されるP−MP型無線アクセスシステム10を示す図である。
【図2】P−MP型無線アクセスシステム10における路側機16と車載情報端末装置14a等との間の双方向移動通信の流れおよび本発明のランダムアクセス用スロット処理方法の概念を説明する図である。
【図3】本発明のランダムアクセス用スロット処理方法11の機能を示すブロック図である。
【図4】本発明のランダムアクセス用スロット処理方法等で用いられるダウンリンク通信DLa等、アップリンク通信ULa等のフレーム構成を示す図である。
【図5】通信制御情報用スロットSYS20に含まれる路側機16の位置情報、カバー範囲Lおよび車載情報端末装置14a等の位置情報に基づく相対的関係と、当該相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる一例を説明する図である。
【図6】他の車載情報端末装置14b、14cについての相対的関係と、当該相対的関係に応じて、車載情報端末装置14b等が選択するランダムアクセス用スロットREGi等の位置に重み付けさせる一例を説明する図である。
【図7】本発明の実施例2における相対的関係と、当該相対的関係に応じて、車載情報端末装置14a等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けさせる一例を説明する図である。
【図8】P−MP型無線アクセスシステム10における路側機16と車載情報端末装置14c等との間の双方向移動通信を説明する図である。
【図9】本発明の実施例4におけるランダムアクセス用スロット処理方法の概念を説明するためのグラフである。
【図10】被遮蔽時間Tに応じて、車載情報端末装置14c等が選択するランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の位置に重み付けさせる一例を説明するためのグラフである。
【図11】上記被遮蔽時間(T)に応じて、車載情報端末装置14c等が選択可能なランダムアクセス用スロットREG1(24a)等の数に重み付けさせた一例を、ランダムアクセス用スロットREGjの列を用いて示す図である。
【図12】実施例1ないし5が適用される交差点での安全運転支援サービスシステム30を示す図である。
【図13】従来のランダムアクセス制御を説明するための無線アクセスシステム40を示す図である。
【図14】無線アクセスシステム40におけるダウンリンク通信DNおよびアップリンク通信UPのフレーム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 P−MP型無線アクセスシステム、 11 ランダムアクセス用スロット処理装置、 12a、12b、12c、12d、12e、32a、 32b、32c、34a、34b 車両、 13 受信手段、 14a、14b、14c、14d、14e 車載情報端末装置、 15 位置検出手段、 16、16a、16b 路側機、 17 選択手段、 18 信号機または支持支柱、 20 通信制御情報用スロット(SYS)、 22a、22n データスロット(DATA)、 24a、24n ランダムアクセス用スロット(REG)、 30 安全運転支援サービスシステム、 36a、36b 信号機、 40 従来の線アクセスシステム、 42 基地局、 44、46 移動局、 48 通信ゾーン、 50 フレームコントロールメッセージスロット(FCMS)、 52a、52b、52n2 メッセージデータスロット(MDS)、 54a、54k2 アクチベーションスロット(ACTS)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられるランダムアクセス用スロット処理方法であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、
路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機に選択させることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は、車載機が受信手段により路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と位置検出手段により得られた該車載機の位置情報とに基づく基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項3】
請求項2記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項4】
請求項2記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記相対的関係は路側機から車載機までの距離と路側機のカバー範囲との所定の関数であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項6】
請求項1記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽履歴に基づく基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項7】
請求項6記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項8】
請求項6記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準は交通状況に応じて用いられることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の選択基準により選択されたランダムアクセス用スロットを、現アップリンク通信のフレームで所定の送出確率により送出させることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項11】
路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられるランダムアクセス用スロット処理方法であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、
車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットであって車載機にランダムに選択させたものを、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率により送出させることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項12】
請求項11記載のランダムアクセス用スロット処理方法において、前記所定の通信制御情報は通信エリアの交通状況に基づく基準送出確率を含むことを特徴とするランダムアクセス用スロット処理方法。
【請求項13】
路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられる該車載機のランダムアクセス用スロット処理装置であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、
路車間通信環境に基づく所定の選択基準により、車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機に選択させる選択手段を備えたことを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項14】
請求項13記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、
路側機から所定の通信制御情報を含むダウンリンク通信を受信する受信手段と、
路側機の位置を検出する位置検出手段とをさらに備え、
前記所定の選択基準は、前記受信手段により車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報と前記位置検出手段により得られた該車載機の位置情報とに基づく基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項15】
請求項14記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項16】
請求項14記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、路側機の位置情報、カバー範囲及び車載機の位置情報に基づく相対的関係に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項17】
請求項15又は16記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記相対的関係は路側機から車載機までの距離と路側機のカバー範囲との所定の関数であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項18】
請求項13記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽履歴に基づく基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項19】
請求項18記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択するランダムアクセス用スロットの位置に重み付けさせ、最も高く重み付けされたランダムアクセス用スロットを該車載機のランダムアクセス用スロットとして選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項20】
請求項18記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、車載機が路側機から受信したダウンリンク通信に含まれる所定の通信制御情報は車載機が選択するランダムアクセス用スロットの数を含み、前記アップリンク通信は該ランダムアクセス用スロットの列を含んでおり、前記所定の選択基準は、車載機が搭載された車両の被遮蔽時間に応じて車載機が選択可能なランダムアクセス用スロットの数に重み付けし、重み付けの結果として得られたランダムアクセス用スロットの数のランダムアクセススロットを選択させる基準であることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項21】
請求項13乃至20のいずれかに記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準は交通状況に応じて用いられることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項22】
請求項13乃至21のいずれかに記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の選択基準により選択されたランダムアクセス用スロットを、現アップリンク通信のフレームで所定の送出確率により送出させることを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項23】
路側機と車両に搭載された車載機との間の双方向移動通信におけるメディアアクセス制御方式で用いられる該車載機のランダムアクセス用スロット処理装置であって、該メディアアクセス制御方式は予め区切られたタイムスロット毎のタイミングでのアクセスを許容する方式であり、該車載機と該路側機との間のリンクチャネル確立フェーズにおいて、
路側機から所定の通信制御情報を含むダウンリンク通信を受信する受信手段と、
車載機から路側機へのアップリンク通信に用いるランダムアクセス用スロットを車載機にランダムに選択させるランダム選択手段と、
前記ランダム選択手段により選択させたランダムアクセス用スロットを、前記受信手段により受信した所定の通信制御情報に基づき算出させた所定の送出確率により送出させる送出手段とを備えたことを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。
【請求項24】
請求項23記載のランダムアクセス用スロット処理装置において、前記所定の通信制御情報は通信エリアの交通状況に基づく基準送出確率を含むことを特徴とするランダムアクセス用スロット処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−251287(P2007−251287A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68389(P2006−68389)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人情報通信研究機構、「ユビキタスITSの研究開発」に関する委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】