説明

リアエンジンバスの車体後部構造

【課題】周辺機器への影響を最小限に留めることができる暖房用プレヒータの配置を可能にする。
【解決手段】リアエンジンバス10の車体後部12にエンジンルーム26が形成されている。エンジンルーム26はアウトリガ24で前方領域と仕切られ、エンジンルーム26の右側空間に車体前後方向に排ガス処理装置付き排気管30が配設されている。アウトリガ24に隣接して、排気管30の上方空間にケーシング36が配設され、ケーシング36内に暖房用プレヒータ38が収容されている。ケーシング36の床板36aを車体前後方向斜めに配置された支持バー50で片持ち支持している。排気管30の上方空間を利用して暖房用プレヒータ38を配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部の床下にエンジンを搭載したリアエンジンバスの車体後部構造に関し、詳しくは、暖房用プレヒータの配置とその支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアエンジンバスの車体後部の床下には、エンジンルームが設けられ、このエンジンルーム内にエンジン本体及びエンジンの付属機器や他の補助機器が設けられている。エンジンルームは、アウトリガによって前方領域と仕切られ、アウトリガには防熱パネルが張設されて、エンジンから放散される熱が前方領域に放散させるのを抑制している。このようなエンジンルームの配置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
エンジンの付属機器として、排ガス処理装置を取り付けた排気管等があり、補助機器として、空調装置等がある。これらの機器がエンジンルーム内に配置されている。
空調装置には、車内全体にラジエータの配管を配設し、エンジン作動により発生する温水を該配管に流し、車内数箇所に設置されたヒータで、温水と室内の空気とを熱交換させ、室内を暖房するタイプの温水式ヒータがある。
【0004】
しかし、この温水式ヒータはエンジンがある程度作動しないと、温水が加温されないという欠点がある。
そこで、温水式ヒータを補助するため、プレヒータが配置される。このプレヒータは、該ラジエータ配管の途中に設けられ、循環ポンプと一体になっており、灯油や軽油等の燃料を燃焼させ、循環ポンプを作動させながら温水を暖める。プレヒータにはサーモスタットが付設されており、一定の温度になったら、自動的に停止する。
【0005】
通常、プレヒータをエンジンルームの近傍に配置し、エンジンで加温された温水が放熱しないうちにプレヒータで室内空気と熱交換させるようにしている。
特許文献2の図1には、バスの車体後部で、エンジン4(特許文献1中の符号)の近傍で車体の両側外面近傍にプレヒータ8が配置されている構成が開示されている。
【0006】
ディーゼルエンジンを搭載したバス等の大型車両では、近年、排ガス基準が厳しくなっており、排ガス浄化性能を向上させる必要がある。そのため、排気管にDPF装置やSCR触媒コンバータ等の排ガス処理装置が取り付けられている。
排ガス浄化性能を向上させる排ガス処理装置としては、排ガス浄化コンバータの還元触媒上流側に尿素水等の液体還元剤を噴射させて、該還元触媒による還元反応を促進するようにした2段型排ガス処理装置が好適とされている。
【0007】
この2段型排ガス処理装置は、排ガス中に液体還元剤を噴出後、排ガス中のNOを除去する還元触媒を内蔵した触媒コンバータと、排ガス中のNO、HC、CO等を酸化反応により低減する酸化触媒とが、排ガス流に対して直列に配置されているため、排気管の全長が長くなり、車体前後方向に大きなスペースを必要とする。
【0008】
従来のリアエンジンバスの暖房用プレヒータの配置を図6により説明する。図6において、リアエンジンバス100の車体後部102には、アウトリガ104が車幅方向にかつ上下方向に立設されている。アウトリガ104は、車体前後方向に設けられたサイドメンバ106に固着されている。アウトリガ104は、車幅方向又は上下方向に配置された中空閉断面の角形フレーム104a〜eを互いに固着して構成されている。
【0009】
車体外側で上下方向に配置された縦フレーム104bは、上方部位が車体内側に微小角だけ傾いており、車体ボディを該縦フレーム104bの外側面に結合することにより、車体ボディをシャーシフレームに取り付けている。そして、車体ボディをアウトリガ104に支持させることで、車体ボディの支持強度を保持するようにしている。
【0010】
アウトリガ104に車体前後方向に中空閉断面角形の支持フレーム108が設けられている。該支持フレーム108に床板110が水平に取り付けられ、床板110上に暖房用プレヒータ112が固定されている。アウトリガ104には、図示省略の防熱パネルを張設することでエンジンルームフロントパネルを構成している。このエンジンルームフロントパネルにより、エンジンから放散される熱が前方領域に放散されるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−341819号公報
【特許文献2】特開2005−193753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現状、バスに搭載される付帯設備が増加する傾向にあり、そのため、バスの車体重量が増加する傾向にある。これに伴い、エンジンの馬力を増大させる必要があり、エンジン本体が大型化しつつある。そのため、リアエンジンバスでは、車体後部のエンジンルームにエンジン本体及びエンジンの付帯設備をコンパクトに収容できなくなる場合も出てきた。
そのため、排ガス処理装置付き排気管をエンジンルーム内に収容しきれず、排気管の一部をアウトリガの前方領域へ突出せざるを得ない場合も出てきた。
【0013】
しかし、排気管をアウトリガを貫通させて配置するようにした場合、アウトリガの強度が低下すると共に、図6に示すように、アウトリガの前方領域に配置していた暖房用プレヒータを別な場所に移設する必要が生じる。前述のように、熱効率を良くするため、暖房用プレヒータは、エンジンの近傍に配置したほうがよい。しかし、多数の機器類が配置されたエンジンルーム内でプレヒータを設けるスペースを確保するのは容易ではない。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、リアエンジンバスにおいて、エンジンの大型化や排ガス規制強化により、暖房用プレヒータの配置位置を変更せざるを得なくなった場合に、周辺機器への影響を最小限に留めることができる暖房用プレヒータの配置を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明のリアエンジンバスの車体後部構造は、
車体後部の床下にエンジンを配置し、エンジン配置領域とその前方領域とをアウトリガで仕切ってエンジンルームを形成してなるリアエンジンバスの車体後部構造において、
前記アウトリガ近傍のエンジンルーム内の外側上方空間に暖房用プレヒータを収容したケーシングを配置すると共に、該ケーシングをアウトリガに固定し、
一端がアウトリガの外側端付近に結合され車体前後方向に斜めに配置された支持バーにより、該ケーシングの床面を片持ち支持させたものである。
【0016】
本発明の車体後部構造では、エンジンルーム内の上方空間にアウトリガに隣接して暖房用プレヒータを配置するようにしたので、周辺機器への影響を最小限に留めることができる。また、暖房用プレヒータをエンジンルーム内の上方空間に配置しているので、プレヒータに下方に他の機器を配置するスペースをもうけることができ、エンジンルーム内の空間を効率良く利用できる。
【0017】
また、暖房用プレヒータのケーシングアウトリガに固定することで、十分な支持強度を得ることができる。また、プレヒータのケーシングを下方から支持する支持バーは、その一端がアウトリガの外側端付近に接続されていると共に、車体前後方向に配置されているので、暖房用プレヒータの下方空間を広く空けることができる。そのため、下方空間を有効利用できる。さらに、該支持バーは、アウトリガに結合されているので、暖房用プレヒータの支持強度を十分得ることができる。
【0018】
本発明において、エンジンの排気ガスを排出する排ガス処理装置付き排気管を前記アウトリガを貫通させ、前記ケーシングの下方空間に車体前後方向に配置するとよい。
このように、排ガス処理装置付き排気管をアウトリガを貫通配置させる場合でも、該排気管をプレヒータの下方空間に暖房用プレヒータのじゃまにならずに配置できる。
【0019】
本発明において、暖房用プレヒータのケーシング及び支持バーを一体としたままアウトリガに着脱自在に取り付けるようにするとよい。これによって、暖房用プレヒータ及び支持バーを一体として取り外すことができるので、エンジン本体のメンテナンス時に、エンジン本体を外側に広く露出できる。そのため、エンジンの整備が容易になるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車体後部の床下にエンジンを配置し、エンジン配置領域とその前方領域とをアウトリガで仕切ってエンジンルームを形成してなるリアエンジンバスの車体後部構造において、アウトリガ近傍のエンジンルーム内の外側上方空間に暖房用プレヒータを収容したケーシングを配置すると共に、該ケーシングをアウトリガに固定し、一端がアウトリガの外側端付近に結合され車体前後方向に斜めに配置された支持バーにより、該ケーシングの床面を片持ち支持させたことにより、周辺機器への影響を最小限に留めて、エンジンルーム内スペースを有効利用できると共に、暖房用プレヒータを十分な強度で支持できる。また、暖房用プレヒータの下方空間を有効利用でき、該下方空間に排ガス処理装置付き排気管等の機器を配置できるので、エンジンの大型化の要求や、排ガス規制が厳しい現状にも十分対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のバス車体後部構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態の一部を拡大した斜視図である。
【図3】前記実施形態のバス車体の側面方向から視た側面図である。
【図4】前記実施形態のプレヒータケーシングの取付部の斜視図である。
【図5】前記実施形態の支持バーの結合部の斜視図である。
【図6】従来のバス車体後部のプレヒータの配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0023】
(実施形態)
本発明のバス車体後部構造の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。まず、図1はリアエンジンバス10の床下の車体後部12を示す。図1において、一対のサイドメンバ16及び18が、互いに間隔を置いて車体前後方向に配置されている。バス車体後部にバンパ20が配置されている。車体後部には、後輪14の後ろ側に、車幅方向に、即ち、サイドメンバ16、18と直交する方向に、アウトリガ24が設けられている。
【0024】
アウトリガ24は、横フレーム24a〜c、縦フレーム24d〜f及び筋交いフレーム24g、24h等が互いに固着されて形成されている。アウトリガ24の後方にエンジンルーム26が形成されている。エンジンルーム26にはエンジン本体28及び図示省略の付属機器類が設けられている。アウトリガ24には、図示省略の防熱パネルが張設されて、エンジンルームフロントパネルが形成される。該エンジンルームフロントパネルによって、エンジンルーム26と車体の前方領域とを仕切り、これによって、エンジン本体28から放散される熱が前方領域に放散されるのを抑制している。
【0025】
エンジンルーム26の右側領域に車体前後方向に、排ガス処理装置付き排気管30が配設されている。排気管30の後端に設けられた排気口32は、バンパ14の右側部位に穿設されたバックランプ取付用切欠22の内側に配置されている。排気管30は、周囲を防熱パネル34で覆われている。防熱パネル34で排気管30から放散される熱を遮蔽している。排気管30は、アウトリガ24を貫通して前方領域まで延設されている。アウトリガ24のエンジンルーム26側で防熱パネル34の上方に、ケーシング36が設けられ、該ケーシング36内に暖房用プレヒータ38が固定されている。
【0026】
次に、図2によりケーシング36の構成を説明する。図2において、エンジンルーム26内のアウトリガ24に隣接した位置に、ケーシング36が配置されている。ケーシング36は、エンジンルーム26の右側領域で、防熱パネル34の上方に配置されている。ケーシング36はアルミ製であり、床板36aと側板36b〜dとで構成されている。床板36a上に暖房用プレヒータ38が固定されている。
【0027】
床板36aの下面には、井桁構造の補強装置40が取り付けられている。車幅方向に配置された一対のハット形状の型鋼42a、42bと、車体前後方向に配置され、型鋼42a、42bに固着された中空閉断面角形を有する角材44a、44bと、車幅方向に配置され角材44a、44bに固着されたコ字形状断面の型鋼46とから構成されている。
【0028】
図3に示すように、型鋼42a、42bがボルト48により床板36aに結合されている。補強装置40によりケーシング36の床板36aの強度を向上できると共に、補強装置40が後述する支持バー50に結合されているので、暖房用プレヒータ38の重量を支持バー50に支障なく伝達できる。
【0029】
図3及び図4に示すように、アウトリガ24のエンジンルーム26側面に、車幅方向にL字断面を有する支持フレーム52が固着されている。該支持フレーム52に角材44a、44bの先端が夫々ボルト54a、54bにより結合されている。
また、図3に示すように、中空角形閉断面を有する支持バー50の一端が、型鋼46にボルト56で結合され、支持バー50の下端は、アウトリガ24に結合されている。
【0030】
次に、図5により、支持バー50の下端とアウトリガ24との結合部の構成を説明する。図5において、アウトリガ24のエンジンルーム26側面の車体外方位置の下部に、一対のL字形状をした金具58a及び58bがボルト60で結合されている。これら金具間の間隔は、支持バー50の下端部を丁度嵌合する間隔を有している。金具58a、58bには、夫々溶接孔62が穿設されている。支持バー50は、金具58a、58b間に挿入され、溶接孔62で金具58a、58bに線溶接されている。
【0031】
本実施形態は、かかる構成を有しているので、アウトリガ24近傍のエンジンルーム26内の上方空間に暖房用プレヒータ38を収容したケーシング36を配置するようにしたので、他の機器類のじゃまにならずに、暖房用プレヒータ38を配置できる。また、暖房用プレヒータ38をエンジンルーム26内の上方空間に配置しているので、暖房用プレヒータ38の下方空間を有効利用できる。
【0032】
該下方空間に車体前後方向に排ガス処理装置付き排気管30を配置できるので、排気管30をアウトリガ24を貫通して配置することが可能になる。そのため、エンジンの大型化の要求や、排ガス規制が厳しい現状にも十分対応できる。
【0033】
また、暖房用プレヒータ38のケーシング36を下方から支持する支持バー50は、その一端がアウトリガ24の車体外方端付近に接続されているので、下方空間に配置される排気管30のじゃまにならない。さらに、該支持バー50は、アウトリガ24に結合されているので、暖房用プレヒータ38の支持強度を十分得ることができる。
【0034】
さらに、ケーシング36はアウトリガ24に対してボルト54a及び54bで着脱自在に取り付けられ、支持バー50の下端はアウトリガ24に対してボルト60で着脱自在に取り付けられているので、ケーシング36及び支持バー50を一体としたまま、アウトリガ24から取り外すことができる。これによって、エンジン本体28のメンテナンス時に、エンジン本体28を外側に広く露出できるので、エンジンの整備が容易になるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、リアエンジンバスにおいて、暖房用プレヒータをエンジンルーム内でスペースを取らずに配置できるので、エンジンの大型化の要求や排ガス規制が強化される現状に対応できる。
【符号の説明】
【0036】
10 リアエンジンバス
12 バス車体後部
14 後輪
16、18 サイドメンバ
20 バンパ
22 バックランプ取付用切欠
24 アウトリガ
26 エンジンルーム
28 エンジン本体
30 排ガス処理装置付き排気管
32 排気口
34 防熱パネル
36 ケーシング
36a 床板
36b〜d 側板
38 暖房用プレヒータ
40 補強装置
42a、42b、46 型鋼
44a、44b 角材
48、54a、54b、56、60 ボルト
50 支持バー
52 支持フレーム
58a、58b 金具
62 溶接孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の床下にエンジンを配置し、エンジン配置領域とその前方領域とをアウトリガで仕切ってエンジンルームを形成してなるリアエンジンバスの車体後部構造において、
前記アウトリガ近傍のエンジンルーム内の外側上方空間に暖房用プレヒータを収容したケーシングを配置すると共に、該ケーシングをアウトリガに固定し、
一端がアウトリガの外側端付近に結合され車体前後方向に斜めに配置された支持バーにより、該ケーシングの床面を片持ち支持させたことを特徴とするリアエンジンバスの車体後部構造。
【請求項2】
エンジンの排気ガスを排出する排ガス処理装置付き排気管を前記アウトリガを貫通させ、前記ケーシングの下方空間に車体前後方向に配置したことを特徴とする請求項1に記載のリアエンジンバスの車体後部構造。
【請求項3】
前記ケーシング及び支持バーを一体としたまま前記アウトリガに着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のリアエンジンバスの車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121522(P2011−121522A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282033(P2009−282033)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】