説明

リグノセルロース系製品用エマルジョン、その製造方法、改良リグノセルロース系製品、及びその製造方法

リグノセルロース系製品に耐水性を付与するうえで有用なエマルジョンを提供する。一実施形態では、エマルジョンは不鹸化性ワックス、鹸化ワックス、アルキルフェノール成分、ポリナフタレンスルホン酸の塩などの分散剤/界面活性剤及びカルボキシメチルセルロースを含む。このエマルジョンは分離、凝固することなく温水、場合により沸騰した熱湯に加えることが可能である。エマルジョンの実施形態としては、室温で保存された場合に長期安定性を有し、リグノセルロース系製品の生分解を防止するための防腐殺生物剤を添加する必要がないものである。エマルジョンは室温では流動性を有する液体である。必要に応じて、エマルジョンを防腐剤とともにリグノセルロース系製品に使用して防腐剤の浸出を防止することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系複合材製品ならびに木材の改良に有用なエマルジョンに関するものである。本発明は更にこうしたエマルジョンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パネルボード産業には、これらには限定されないが、合板、OSB(配向性ボード)(一般にフレークまたはウェーハボードと呼ばれる)、中密度繊維ボード、パーティクルボードなどがあり、これらを総称してリグノセルロース系複合材製品と呼ぶものとする。これらの複合材製品ならびに木材(建材用に切断、加工された木材)(明細書中で「リグノセルロース系製品」と総称する)においては、水分の吸収すなわち「取込み」ならびに膨潤を制御できることが望ましい。これらはいずれも製品の有用性に悪影響をもたらす性質である。例えば、床材として用いられる合板では、膨潤によって仕上げ材やタイル材が歪んだり、クリープが生じたりする。同様の問題は、屋根材として水分に曝される部位に用いられるOSBの膨潤でも見られる。木材や他のリグノセルロース系製品と同様、これらの複合板パネルも、雨曝しでの保管によって水分を吸収し、細菌類、真菌類、昆虫などの増殖、侵入による生分解が起こるために作業現場で劣化してしまうことが知られている。
【0003】
従来、リグノセルロース系複合材製品は、リグノセルロース系材料をワックスや熱硬化性樹脂とホットプレスすることによって製造されてきた。これは従来、接着法と呼ばれるものである。ワックスは複合材の耐水性を向上させるためのサイズ剤として機能し、樹脂は複合材を構成する材料を接合して一体化するための接着剤として機能する。リグノセルロース系複合材製品の接合樹脂としてはレゾールが広く用いられている。
【0004】
リグノセルロース系複合材製品を製造するための従来のホットプレス法では、リグノセルロース系材料をフェノール系樹脂や他の成分とブレンダーやミキサー中で混合する。得られた配合物または混合物を、通常大気圧よりも高い圧力と室温よりも高い温度でプレスして複合材を形成する。マットの製造に用いられるリグノセルロース系材料は、ウッドファイバー、ウッドフレーク、ウッドストランド、ウッドチップ、ウッドパーティクル及びこれらの混合物からなる群から選択することが可能である。ここに列記したリグノセルロース系材料は当業界ではウッドファーニッシュと呼ばれるものである。しかしながら、ストロー、バガス、樹皮、再利用ウッドファイバー、再利用紙ファイバー及びこれらの混合物といった他のウッドファーニッシュの使用も可能であることはよく知られている。ウッドファーニッシュはフェノール性樹脂と配合または混合した後、支持材上にて成型してほぼ最終製品の形状を有するプリフォームとする。このプリフォームをホットプレス機のコールプレート上に置き、大気圧よりも高い圧力と室温よりも高い温度を作用させて最終製品とする。高温、高圧の作用によりフェノール性樹脂が重合し、プリフォームが一体の最終製品として接合される。このホットプレス法についてはシュイ・タン・チウ(Shui−TungChiu)に付与された米国特許第4,433,120号明細書に更に述べられている。
【0005】
リグノセルロース系複合材製品は建築業や製造業における用途が主である。これらの製品は建築物や従来木材が用いられているあらゆる製品での使用が可能であるが、現状のリグノセルロース系複合材製品は寸法の安定性が低いために製品の力学的性質に影響し、耐荷重が低い。更にこうした寸法安定性の低さによって、屋根や床の下敷や建築物の側壁がでこぼことなる。寸法安定性に優れたリグノセルロース系複合材製品を製造するための主な方法として2つの方法が提案されている。しかしながらこれらの方法はいずれもコストが嵩み実用には適していない。第1の方法はバルキング処理と呼ばれるものである。この方法では、リグノセルロース系材料に、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーを含浸させるか、フェノール−ホルムアルデヒドなどの低分子量の樹脂を含浸させるか、あるいは、ビニルモノマーを含浸させて、その状態で重合させる。第2の方法は化学修飾法と呼ばれるものである。この方法では、例えばアセチル化などによってリグノセルロースをエステル化するか、例えばアルデヒドを用いてリグノセルロースを架橋する。化学修飾の別法として、通常蒸気による処理を用い、高温下でヘミセルロースとリグニンを反応させる方法もある。これらの化学修飾法はコストが嵩み、一旦形成された複合材の強度を低下させてしまう。
【0006】
リグノセルロース系複合材製品の製造に使用されるフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、固体または液体として与えられる。ノボラック、レゾール、またはこれらの混合物などの粉末のフェノール性樹脂が広く用いられている。バーシェム(Berchem)等に付与された米国特許第4,098,770号明細書には、ウェーハボードの製造に用いられる、非フェノール性ポリヒドロキシ化合物の付加によって修飾されスプレードライにて形成されたフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が開示されている。レゾールまたはレゾールとノボラックの組合せなどの液体のフェノール−ホルムアルデヒドをリグノセルロース系複合材製品の製造に使用することも可能である。液体または固体のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の製造の条件に関しては、「フェノール樹脂、化学、応用、及びその性能(Phenolic Resins, Chemistry, Applications and Performance)(エー・ノップ及びアイ・エー・ピラトー(A. Knop and I.A. Pilato)Springer−Verlag (1985))ならびに「先端木材接着技術(Advance Wood Adhesives Technology)」(エー・ピッチ、マルセル・デッカー(A Pizzi, Marcel Dekker)(1994))に開示されている。
【0007】
歴史的にボードパネルの製造においては異なる性能の耐水性を付与する目的で溶融炭水化物ならびにステアリン酸/トリエタノールアミン(TEA)やジエタノールアミン(DEA)及び/またはリグノスルホネートを界面活性剤として用いた単純なエマルジョンが使用されてきた。しかしながら、これらの化合物は、望ましからざる排気を生じるとともに、性能が不安定であって、取り扱いや貯蔵が困難であり、また発泡を生じ、必要な結果を得るうえで求められるワックスの適用レベルが予測できないという問題を有する。
【0008】
上述したような寸法安定性を向上させる目的で従来の接着法において広く用いられている方法としてサイズ剤としてのワックスの使用がある。ワックス系のサイズ剤によって、一旦形成された複合材にある程度の撥水性が付与される。パラフィンは複合型のサイズ剤である。ワックス系サイズ剤を用いた撥水性の付与方法としてリグノセルロースの表面をコーティングすることによって表面張力を低下させる方法がある。ワックス系サイズ剤を用いた撥水性の別の付与方法として、リグノセルロース内部の毛管を部分的に充填することによって毛管による水の吸収に対するバリア性を与える方法がある。
【0009】
従来のリグノセルロース系製品用の防腐剤には、クロム化砒酸銅(CCA)などの重金属を含有したものがしばしば見られる。CCAを用いた木製品すなわち木材の加圧処理はウルマナイズ処理と呼ばれる。他の方法では多環式芳香族炭化水素(PAH)を含有するクレオソート油を用いたものがあり、クレオソーティングと呼ばれている。これらの従来法では防腐剤が辺縁部周辺にしか浸透しない。更に、ウルマナイズ処理及び/またはクレオソート処理した木材の使用には、環境保護団体からの圧力が高まっている。CCA処理を行った木材の問題点としては、水質汚染防止法の基準を満たさない点や、CCA処理された木材の廃材の問題などがあり、これらは防腐剤に含まれる重金属に少なくとも一部よるものである。クレオソート油は優れた浸透性、耐候性、防腐特性を有する一方で、臭気、皮膚刺激、健康被害をもたらしたり、黒色であるなどの問題点を有する。感知されるリスクの少ない木材用の別の防腐剤としては、アンモニア塩基銅4価アンモニウム複合体(ACQ)、アンモニア銅亜鉛砒酸塩(ACZA)、銅ビス(ジメチルジチオカルバメート)(CDDC)、アンモニア銅クエン酸塩、銅アゾールなどがあるが商業的な利用はやはり限定されている。
【0010】
最近の有機殺生物剤は比較的環境に対する影響が少なく、例えば、CCA処理した木材に見られる問題は生じないものと考えられる。テブコナゾールなどの殺生物剤は通常の有機溶媒に極めて溶けやすいが、クロロタロニルなど低い溶解性しか示さないものもある。有機殺生物剤の溶解性は、その殺生物剤によって処理された木材製品が適する市場を左右するものである。溶解度の高い殺生物剤は少量の有機溶媒に高濃度で溶解させることが可能であり、この溶液を適当な乳化剤を用いて水に分散させて水性のエマルジョンとすることができる。このエマルジョンを従来の木材加圧処理で使用すると、こうした処理を行った木材はデッキングなどの、処理木材が人と接触するような製品で使用することが可能である。溶解度の低い殺生物剤は、AWPA P9 A型などの炭化水素系オイルの溶液として木材に使用する。この有機溶液を木材の処理に直接使用する。こうしたオイルは皮膚に対する刺激性を有することから、こうした処理を行った木材は、電柱や線路の枕木といった工業用途においてのみしか使用できない。
【0011】
したがって、水分と接触した際にその寸法が安定しているリグノセルロース系製品が求められている。更に、水中に浸漬しても膨潤せず、乾燥しても収縮しないリグノセルロース系製品が求められており、木材及びリグノセルロース系複合材製品に対して広範な防腐剤ならびに有機殺生物剤を適用することが求められている。
【発明の開示】
【0012】
一実施形態では、本発明のエマルジョンは不鹸化性ワックス、鹸化ワックス、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分、及び水からなる。特定の一実施形態では、不鹸化性ワックスは重量にしてエマルジョンの約33%〜約35%であり、鹸化ワックスは重量にしてエマルジョンの約3%〜約5%であり、アルキルフェノール成分は重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2.5%であり、分散剤は重量にしてエマルジョンの約0.5〜約2%であり、カルボキシメチルセルロースは重量にしてエマルジョンの約0.2%〜約5%である。エマルジョンには必要に応じて防腐剤を添加してもよい。
【0013】
リグノセルロース系材料をバインダーと混合して混合物とし、選択された構成にて該混合物を固化することによって調製されるリグノセルロース系複合材製品の耐水性を向上させるための方法は、前記混合物に前述のエマルジョンを添加することを含む。リグノセルロース系複合材製品は、リグノセルロース系材料をバインダーと混合して混合物とし、該混合物に前述のエマルジョンを添加し、選択された構成にて該混合物を固化することによって製造される。木材を処理する方法は、木材に前述のエマルジョンを含浸させることを含む。
【0014】
エマルジョンを調製するための方法であって、単一の容器に、溶融状態の不鹸化性ワックス、溶融状態の鹸化ワックス、アルキルフェノール成分、水、分散剤/界面活性剤、及びカルボキシメチルセルロース成分を入れ混合物とすることと、該容器中で混合物を加熱及び攪拌することとを含む方法が更に提供される。次いで混合物を均質化してもよい。この方法では好ましくは溶融状態の鹸化性ワックスと鹸化剤とを前記容器に入れることで鹸化ワックスを与えてもよい。
【0015】
リグノセルロース系製品に防腐剤を添加するための方法であって、防腐剤とエマルジョンを担体溶媒に加えた防腐剤溶液をリグノセルロース系製品に含浸させることと、リグノセルロース系製品から担体溶媒を除去することとを含む方法が更に提供される。一実施形態では、リグノセルロース系製品に含浸する工程において、リグノセルロース系製品をチャンバに入れることと、チャンバを減圧することと、リグノセルロース系製品と接触させてチャンバに防腐剤溶液を添加することと、チャンバを再加圧することとを行う。
更に前記方法によって得られるリグノセルロース系製品も開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書で述べるエマルジョンは、リグノセルロース系製品の耐水性を向上させるうえで有用であり、これにより、寸法の不安定性(膨潤)や生分解といった、吸収された水分がリグノセルロース系製品に与える悪影響が低減されるものである。必要に応じてこれらのエマルジョンにはそれ自体は撥水性を有さない防腐剤を添加することが可能であり、その場合エマルジョンは、防腐剤を木材などのリグノセルロース系製品の内部に浸透させるための担体として機能し、またこうした防腐剤の製品からの後の浸出を防止する。
【0017】
本明細書で述べるエマルジョンは、不鹸化性ワックス、鹸化性ワックス、鹸化剤、アルキルフェノール成分、石炭酸塩などの分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース、及び水の組合せからなり、これらの成分は不連続相を形成するワックス成分によってエマルジョン化される。こうした水中ワックス型エマルジョンは、リグノセルロース系材料及び/または複合材製品の他の成分の混合物に、リグノセルロース系複合材製品の製造に必要な混合物の性質に影響を与えることなく添加することが可能であり、これらの成分を木材に含浸させることが可能である。こうしたエマルジョンの製造ならびに使用方法ならびにこうしたエマルジョンを含有するリグノセルロース系製品が更に開示される。
【0018】
上述のエマルジョンを用いてリグノセルロース系複合材製品を製造するためのリグノセルロース系材料の例としては、これらに限定されるものではないが、ウッドファイバー、ウッドフレーク、ウッドストランド、ウッドチップ、ウッドパーティクル、麦わら、バガス、樹皮、再利用ウッドファイバー、再利用紙ファイバー、及びこれらの混合物が挙げられる。製造される複合材パネルは、ファイバーボード、ウェーハボード、ストランドボード、配向性ボード、フレークボード、パーティクルボード、合板などとして知られる。こうした製品は更に、フェノール−ホルムアルデヒド(PF)、尿素−ホルムアルデヒド(UF)、またはこれらの組合せなどの樹脂を、製品を製造するためのファーニッシュ中に含有していてもよい。本明細書で述べるエマルジョンは、こうした樹脂と混合して浸透性の複合成分システムとして複合材製造法で使用することが可能である。特定の理論に束縛されるものではないが、こうしたエマルジョンでは、界面活性剤のシステムが不連続相(即ち、ワックス相)に対して整列し、リグニン繊維と結合することによって繊維を含有する複合材製品(例、ボード)に疎水性を与えるものと考えられる。
【0019】
本明細書で述べるエマルジョンは不鹸化性ワックスと鹸化性ワックスとからなるワックス成分を含んでいる。不鹸化性ワックスは、約120°F(約49℃)よりも高い、例として約120°F〜約165°F(約49℃〜約74℃)、場合により約120°F〜約150°F(約49℃〜約66℃)、好ましくは約135°F〜約145°F(約57℃〜約63℃)の融点を有する(ここに開示される範囲はすべて包括的かつ連結的である。例えば「約120°〜約165°F、場合により135°〜145°F」は端点及びすべての中間値及びそれらの組合せを含み、例えば、約120°〜約145°F、約130°〜150°Fなどは含まれる。)。好適な不鹸化性ワックスとしては、パラフィンワックス、スラックワックス、及びスケールワックスなどが挙げられる。こうしたワックスは低揮発性のものとして市販されており、標準的な熱重量分析における重量損失が約10%未満のものである。またこれらのワックスのオイル含量は通常約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満である。これらのワックスの中には平均鎖長がC36すなわち炭素36個分よりも長い比較的高分子量のものもある。パラフィンワックスは通常、軽潤滑油蒸留物から得られ、その主成分は平均鎖長が炭素原子20〜30個分の直鎖状炭化水素である。好適なパラフィンワックスとしては、ハネウェル/アストー社(Honeywell/Astor)(ジョージア州ダルース)から販売されているWax3816がある。スラックワックスはオイル含量が3〜50重量%の石油系ワックスである。好適なスラックワックスとしては、Exxon600スラックワックス及びAshland200スラックワックス、及び50部のExxon600スラックワックスと50部のAshland200スラックワックスの組合せである。
【0020】
好適な鹸化性ワックスとは所定の酸価または鹸化価を有し、約180°F(約82℃)よりも高い融点を有するものである。鹸化性ワックスとしては、石炭の液化によって得られるワックス、スラックワックスの処理及び/または精製によって得られる植物性ワックスや酸化ワックス、スケールワックスまたは原油などが挙げられる。鹸化性ワックスの例として、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜蝋、ベイベリーワックス、キャンデリラワックス、キャランデイワックス、トウゴマワックス、エスパルトワックス、ジャパンワックス、オーリクリーワックス、レタモ−セリ ミンビワックス(Retamo−ceri mimbi wax)、セラック、鯨蝋、サトウキビワックス、ウールラノリンワックスなどが挙げられる。有用な鹸化性ワックスの一例として、融点が約190〜約200°F(約88〜約93℃)であるモンタンワックスがある。こうしたワックスは、ワックスと鹸化剤と組合わせることによって鹸化される。鹸化剤は、水酸化アンモニアまたは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物のような強塩基性物質である。ワックスの鹸化に必要な鹸化剤の量は、ワックスの鹸化価に基づいて計算することが可能である。例えば、鹸化価を1000で割ったものはワックス1g当たりに添加する水酸化カリウムのグラム数に等しい。
【0021】
これらのワックスに含まれる不純物としての極性化合物は約5%(重量)を超えないことが好ましい。
【0022】
ワックス成分はエマルジョンの全重量に対し約25重量%〜約50重量%、好ましくは約30重量%〜約40重量%の量で含まれる。ワックス成分は融点が約120°F以上である不鹸化性ワックスと鹸化性ワックスとの組合せからなることが好ましい。不鹸化性ワックスは防腐剤組成物の約25wt%〜約44wt%を構成し、鹸化性ワックスは約エマルジョンの全重量の約0.5wt%〜約5wt%を構成していればよい。ワックスの好ましい組合せの一例として、第1のワックスとしてのハネウェル3816などのパラフィンワックスと、モンタンワックスなどの鹸化性ワックスとの組合せがある。一実施形態では、ワックス成分はエマルジョンの全重量に対し約25wt%〜約45wt%、好ましくは約30wt%〜約40wt%のパラフィンワックスと、約2.5wt%〜約5wt%、好ましくは約3.5wt%〜約4.5wt%の鹸化性ワックスとを含む。
【0023】
エマルジョン混合物には鹸化性ワックスを鹸化するために強塩基性化合物を添加する。鹸化剤の例としては、水酸化アンモニウムや、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、重量にして約45%程度のアルカリ金属水酸化物を含む高濃度水溶液として与えられる。水酸化アンモニウムは固体として与えられる。鹸化剤の一部または全部を分散剤及び/またはエマルジョンの他の成分とin situで反応させてもよい。水酸化アンモニウムは発生するアンモニア臭のために敬遠されることがあるが、水酸化アンモニウムはワックスを鹸化させるだけでなく、アンモニアがエマルジョンとともに用いられる樹脂中のホルムアルデヒドのスカベンジャーとして機能し、複合材の最終製品からのホルムアルデヒドの発生を低減させる。更に水酸化アンモニウムとホルムアルデヒドとが組み合されることによって水酸化アンモニウム臭が低減するため、実施形態によってはこうした目的で例えば重量で約0.02〜約0.1%のホルムアルデヒドがエマルジョンに添加される場合もある。更に、水酸化アンモニウムは、ダグラス杉、ポプラなどの米国北部で産出される樹木からなるリグノセルロース系材料とともにエマルジョンが使用される場合に特に有用である。
【0024】
鹸化剤は、重量にしてエマルジョンの約0.15%〜約4.5%、場合により約0.5%〜約3%の量で加える。必要に応じ、高濃度の鹸化剤水溶液を重量にしてエマルジョンの約0.5〜約3%の量で加える。水酸化アンモニウムの場合には固体としてエマルジョンの重量の約0.15〜約3%の量で加える。鹸化剤の量は使用する鹸化剤ワックスの種類、または木材の種類に応じて異なる。鹸化剤の使用により、エマルジョンのpHは約8.5〜約12.5の値、例えば約8.5〜約9.5の値をとりうる。
【0025】
こうしたエマルジョンでの使用に適したカルボキシメチルセルロースは、分子中の炭素鎖の長さが炭素原子約20〜約50個分のものである。好ましいカルボキシメチルセルロースの一例として、ペン・カルボース社(ペンシルベニア州サマセット)からLT−30の商品名で販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムがあり、炭素鎖長は炭素原子約26〜30個分であるとされる。他の好ましいカルボキシメチルセルロース材料としては、ペン・カルボースLT−20及びLT−42がある。こうしたカルボキシメチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースと鹸化剤またはエマルジョン中の他の成分との反応生成物を本明細書では「カルボキシメチルセルロース成分」と呼ぶ。
【0026】
本明細書で述べるエマルジョンではポリナフタレンスルホン酸塩が好ましく用いられ、学説に束縛されるものではないが、分散剤/界面活性剤として機能するものと考えられる。この塩は、ポリナフタレンスルホン酸と、アルカリ金属水酸化物などの鹸化剤とのin situ反応の生成物である。市販のポリナフタレンスルホン酸としてハンディー・ケミカル社(ケベック州モントリオール、カナダ)から販売されているDISAL GPSがある。これらの酸及び酸の塩は、総称してポリナフタレンスルホン酸成分と呼び、より広義には(代用材料を含めて)分散剤/界面活性剤と呼ぶ。分散剤/界面活性剤の量は重量にしてエマルジョンの約0.1%〜約5%、場合により約0.25wt%〜約5wt%である。
【0027】
エマルジョンにアルキルフェノールを添加することによりリグノセルロース系複合材の最終製品の水分吸収量を容易に低下させうることが明らかとなった。ここで云う「アルキルフェノール」とは、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物のことである。この場合の長鎖アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい。長鎖アルキル基はC20〜C42(20〜42個分の炭素鎖長)、例としてC24〜C34、好ましくはC24〜C28のものである。こうしたアルキルフェノールとしては、重合化メチレン連結アルキルフェノール、石炭酸塩、石炭酸カルシウム、長鎖分枝鎖カルシウムアルキルフェノール、長鎖直鎖カルシウムアルキルフェノール、及びアミン基にて置換/非置換したマレイン酸の複合重合体が挙げられる。長鎖アルキル基は、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリブチレン基などの重合体からなる置換基である。アルキル置換基は市販の材料がしばしばそうであるように異なる鎖長の混合物である。アルキルフェノールはアルキル部分の平均炭素鎖長がカルボキシメチルセルロースの平均炭素鎖長にほぼ一致するか近くなるように選択されることが好ましい。例として、平均炭素鎖長が約C24〜約C34の範囲であるアルキルフェノールを、平均炭素鎖長が炭素約26〜約32個分である、例えばカルボースLT−30カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシメチルセルロースからなるエマルジョンにおいて使用することが可能である。
【0028】
アルキルフェノールのアルキル基は対応するオレフィンから誘導することができる。例えば、C26アルキル基はC26アルケン、好ましくは1−アルケンから誘導され、C34アルキル基はC34アルケンから誘導され、異なる鎖長のアルキル基の混合物を対応するオレフィンの混合物から誘導される。しかしながらアルキル基が少なくとも約30個の炭素原子を有するアルキル基である場合には、アルキル基は、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、1−ヘキセン、及び1−オクテンなどの炭素原子数が2〜10個であるモノ及びジオレフィンのホモポリマーまたはインターポリマー(例、コポリマーやターポリマー)からなる脂肪族基(またはそれらの置換基の混合物)であってもよい。脂肪族ヒドロカルビル基はこうしたホモポリマーやインターポリマーのハロゲン化(例、塩素化、臭素化)類似体から誘導することも可能である。しかしながらこうした置換基は、モノマー性高分子量アルケン(例、1−テトラコンテン)ならびにその塩素化類似体及びヒドロクロロ化類似体、脂肪族の石油分画物、特にパラフィンワックス及び熱分解及び塩素化したその類似体、ホワイトオイル、チーグラーナッタ法によって製造されるもののような合成アルケン(例、ポリ(エチレン)グリース)、ならびに当業者に周知の他の原料から誘導することも可能である。必要に応じヒドロカルビル基中の不飽和結合は、当該技術分野では周知の方法を用いた水素化によって減少または消失させることが可能である。塩素などのハロゲンを実質上使用しない方法、材料を用いた調製法が環境上の理由から好ましい場合がある。
【0029】
芳香環の芳香核1個当たりに1個以上のアルキル基が含まれていてもよいが、通常は2または3個以下である。最も一般的には、芳香部分1個当たりに含まれるヒドロカルビル基は、(特にヒドロカルビル置換されたフェノールが1個のベンゼン環に基づくものである場合には)1個のみである。
【0030】
アルキルフェノール及びアルキルフェノールと鹸化剤またはエマルジョンの他の成分との反応生成物をここではアルキルフェノール成分と呼ぶ。
【0031】
エマルジョンに含まれるアルキルフェノール成分の量は、エマルジョンの全重量に対して約0.25wt%〜約10wt%、場合に応じて約0.5wt%〜約2.5wt%である。
【0032】
本発明の組成物での使用に適したアルキルフェノール成分の例として、ルブリゾール・ケム社(Lubrizol Chem. Corp)(オハイオ州ウィクリフ)から商品名319Hとして市販されているものがある。この材料はC24〜C34の重合化メチレン結合アルキルフェノールである。
【0033】
本明細書で述べるエマルジョンの新規な製造方法によって、時間、エネルギー、人員、ならびに製造面での効率が向上する。この方法では、エマルジョンの成分を単一の容器中で混合し、ついで以下に述べるような条件化でホモジェナイザー内の混合物を移送する。この方法の利点として、エマルジョン混合物が単一の容器中で調製される点がある。すなわちエマルジョンの成分の部分混合物を調製して、それらを混合する前に別々の容器に保存する必要がない。
【0034】
不鹸化性ワックス(例、後述する3816ワックス)を溶融し、融点よりも約10°F高い温度で溶融状態で保存し、ワックスが固化しない温度で水を加える。容器には以下の例に述べるような要領で材料を加える。
【0035】
a.溶融した不鹸化性ワックス(例、3816ワックス)を約189°F〜約192°F(約87℃〜約89℃)の温度で加える。
【0036】
b.加熱攪拌を開始する。
【0037】
c.攪拌を継続しながら溶融した鹸化性ワックスとアルキルフェノールを加える。
【0038】
d.水の大部分(例、95%)を加え、攪拌を続ける。
【0039】
e.分散剤/界面活性剤(本明細書の別の箇所で更に記載するDISALポリナフタレンスルホン酸)、カルボキシメチルセルロース及び鹸化剤を加える。
【0040】
f.残りの水を加える(好ましくは試験管をすすぐのに用いた水を計算し、全体から差し引いた分を含める)。
【0041】
g.例えば約190°F〜約210°F(約88℃〜約100℃)の温度にタンクを昇温する。
【0042】
h.温度を維持しながら約30〜約150分攪拌を続ける。
【0043】
i.約1500〜約3500PSI(約10MPa〜約24MPa)でホモジェナイザーを通過させる。
【0044】
j.必要に応じて2回の発熱工程を行う工程で冷却する。第1の発熱工程は、ホモジェナイザーからの出口温度から室温よりも高い所定温度まで、第2の発熱工程は、室温(保存温度)までの工程である。例えばエマルジョン組成物をホモジェナイザーから冷却器に通過させて例えばホモジェナイザーからの出口温度よりも約10°F〜約20°F低い温度までの第1の発熱工程とし、次いで冷却槽まで通過させて必要に応じて攪拌を行いながら例えば更に約5°F〜約15°F低い温度までの第2の発熱工程とする。一実施形態では、第1の発熱工程において約130°F〜約110°Fまでの冷却を行い、第2の発熱工程において約110°F〜約70°Fまでの冷却を行う。
【0045】
特定の理論に束縛されるものではないが、2回の発熱冷却工程を行うことでエマルジョンの形成の相化工程が完了する。この結果、1回の発熱冷却工程を用いた場合と比較してエマルジョンの粘性の経時安定性が向上し、せん断攪拌に対してより安定性が増す。エマルジョンの別の調製方法ではバッチ処理を行う。このバッチ処理では、溶融ワックス及びアルキルフェノールからなる第1のプレミックスを調製し、更に水、カルボキシメチルセルロース、ポリナフタレンスルホン酸、及び鹸化剤からなる第2のプレミックス(水性プレミックス)を調製し、次いで第1のプレミックスと第2のプレミックスとを混合槽内で、例えば1〜3時間、少なくともワックスが鹸化されるだけの充分な時間にわたって混合し、得られた混合物をホモジェナイザーに通過させて上述の要領で冷却する。
【0046】
本明細書で述べる実施形態のうちの幾つかで使用される成分の範囲の例を下記表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表2は本明細書で述べるエマルジョンの特定の一実施形態において使用される成分の比率の例を示したものである。
【0049】
【表2】

【0050】
本明細書で述べるエマルジョンは場合に応じて、リグノセルロース系複合材製品の製造の際のエマルジョンの性能及び得られる複合材製品の性能を向上させるための更なる成分を含有してもよい。本明細書で述べるエマルジョンはブルックフィールド粘度計で測定した場合に約10〜約100センチポアズの粘度を有する。エマルジョンの一サンプルでは約40%の固体分における粘度は9cpであった。安定性、せん断性能及び発泡が見られないことによってこれらのエマルジョンを受容する能力が更に向上する。例えば、エマルジョンのサンプルのあるものは、食品ブレンダー中で4分間攪拌した後にも良好な状態に保たれていた。これらのエマルジョンは多くのリグノセルロース系製品の製造に用いられる尿素−ホルムアルデヒドやフェノール−ホルムアルデヒドシステムとも相溶性を有する。更にこのシステムは両性であることから幅広い範囲のpHで安定であって、反応への添加剤としてではなく全体の反応の一部をなすものであり、これによってより均一な最終製品を与えるものである。これらエマルジョンの実施形態は生物活動に寄与するものではないことが実証された。
【0051】
配向性ボード(OSB)は本明細書で述べるエマルジョンを用いて製造可能な複合材の一種である。ホットプレス法を用いてOSBを製造するには、リグノセルロース系材料を樹脂及び本発明のエマルジョンとミキサーで混合する。得られたプリフォーム混合物は支持材の上に流し込んで厚さ7/16インチ(約1.1cm)と厚さ5/8インチ(約1.6cm)の配向性ボードのプリフォームを形成する。このプリフォームをホットプレス機のコールプレート上に置き、大気圧よりも高い圧力と室温よりも高い温度を作用させて最終製品とする。ホットプレス法についてはシュイ・タン・チウ(Shui−TungChiu)に付与された米国特許第4,433,120号明細書に更に述べられている。12インチ×12インチ(30.5cm×30.5cm)のパネルを最終製品から切り出して密度、膨潤度、及び吸収性について試験を行った。必要に応じて、プリフォーム混合物にはパネル内部での好ましくない生物の増殖を防止するために後述する防腐剤を添加してもよい。
【0052】
本明細書で述べるエマルジョンによって与えられる耐水性を説明するため、異なる量のエマルジョンを用いて配向性ボードのサンプルを複数作成した。OSBボードのサンプルは、ウッドストランド、フレークまたはウェーハと、レジンバインダー及び表2に述べたようなエマルジョンを混合物中の樹脂の容量に対して約1%〜約0.25%(容量%)の量で混合した混合物から作成した。各混合物を鋳型に入れ、硬化させてボードを形成した。比較用のボードをCascowax EW−58として知られる市販の比較用エマルジョンを1容量%使用して作成した。Cascowax EW−58は、固形分が約58%であるステアリン酸TEAエマルジョンからなると考えられる。各サンプルをボードから切り出し、寸法ならびに重量を測定し、室温(約72°F(約22℃))で24時間水中に浸漬した後、再び寸法ならびに重量を測定した。
【0053】
下記の表3は各エマルジョンサンプルの異なる使用量、コントロール、ならびに吸水性、エッジ膨潤率及び厚さ膨潤率試験の結果を示したものである。吸水性は、開始時のサンプルの重量に対する重量の増加分として測定した。エッジ膨潤率とは、開始時のサンプルの厚さに対する、1以上のエッジに沿って測定したサンプルの厚さの平均増加分の指標であり、中央部膨潤率は、開始時のサンプルの厚さに対するサンプルの中央部の厚さの増加分の指標である。
【0054】
【表3】

【0055】
表3のデータは、サンプルエマルジョンによって、ウッド複合材製品における水分吸収ならびにエッジ及び中央部膨潤の双方の性能が大幅に向上することを示すものである。具体的には、サンプル1〜3はコントロールと比較して水分吸収率、エッジ厚さ膨潤率及び中央部膨潤率が低く、サンプル2及び3はコントロールよりもエマルジョンの含有量が大幅に小さかったが、すべてのサンプルで同様の結果が得られた。このデータは、コントロールに対して容量/容量ベースで低い含有率(コントロールに対して約50〜75%少ないエマルジョン)で性能の向上が見られることを示すものである。試験エマルジョンでは、OSBや他のボード製品からのエミッションが少なく、ボード/レジンの干渉が少ない。また試験エマルジョンは他の特定のエマルジョンと比較して保存条件による影響を受けにくい。等量の液体として用いたので、すべてのワックス条件について用いられた固形分は少なかった。エマルジョンワックスサンプルでは密度がやや高かった。エミッションの低下は、リグノセルロース系製品に導入される材料が少なくなるようなエマルジョンの添加量であってもコントロールと同等の結果が得られることに少なくとも一部よるものである。例えば表3では、固形分を約40%しか含まないサンプルエマルジョン1%を用いた場合に、固形分を約60%含むコントロール1%を用いた場合よりも良好な結果が得られることが分かる。エミッションの低下に寄与していると考えられる別の要因は、本発明のエマルジョンでは低融点のワックスと比較して揮発分の少ない高融点のワックスを使用していることである。
【0056】
例えば水酸化アンモニウム鹸化剤に由来するアンモニウムを含む本発明のエマルジョンの実施形態は、他の実施形態と比較して優れた性能を示すものである。これはそれぞれが以下の成分からなる複数のエマルジョンを調製することによって証明される。すなわち、33%不鹸化性ワックス、3%モンタンワックス、0.5%アルキルフェノール、2%ポリナフタレンスルホン酸(特に断る場合には2.5%)、0.5%カルボキシメチルセルロース。これらの実施形態は、示した量の鹸化剤、不鹸化性ワックス、及び下記表4に示す量の更なる成分を含み、残部は水である。表4のサンプルはそれぞれ前述のバッチ処理を用いて調製した。エマルジョンB及びEでは、示した量のホルムアルデヒドを水性プレミックスに添加した。エマルジョンC、F、G、H及びIでは、エマルジョンを他の成分から形成した後に、示した量のホルムアルデヒドをエマルジョンに添加した。
【0057】
【表4】

【0058】
エマルジョンA〜Jを用いて配向性ボード(OSB)の各サンプルを作成した。更に上記表2に示したエマルジョンを用いてOSBのサンプルを作成し(図中、サンプルKとして示した)、商品名EW−50Sとして市販されているCascowaxエマルジョンを用いて別のサンプルを作成した(このサンプルの性能をベースライン(0%)とした)。EW−50Sは、ステアリン酸及びTEA(トリエタノールアミン)を含むパラフィンワックスエマルジョンである。これらのサンプルを前述の方法で水分吸収率、エッジ膨潤率、中央部膨潤率について試験した。結果を図に示した。図中、他のサンプルにおける水分吸収率(WAで示した棒グラフ)、エッジ膨潤率(ESで示した棒グラフ)、中央部膨潤率(CSで示した棒グラフ)の低下をベースラインサンプルに対する改善度(%Δ)として示した。図に示した結果から、すべてのサンプルエマルジョンで少なくとも3つの試験のうち2つにおいてEW−50Sと比較して性能が向上したことが分かる。
【0059】
これらの実験結果は、本明細書で述べるエマルジョンがリグノセルロース系製品に耐水性を付与する点において優れた性能を発揮し、したがってこうした製品の一部においてリグニン化合物及び殺生物剤の必要性をなくすものであることを実証するものである。これら2つの化合物が必要でなくなることによってリグノセルロース系複合材製品ならびにこうしたエマルジョンを使用した木材の製造が容易となり、製造コストが低減される。
【0060】
本明細書で述べるエマルジョンを木材や他のリグノセルロース系製品に浸透させて水分吸収を抑制することができる。リグノセルロース系製品を後で乾燥することによりエマルジョンが破壊され、内部のワックスが放出されて製品表面に移動し、耐水性を向上させるものと考えられる。必要に応じて本明細書で述べるエマルジョンを、生物活動、すなわちカビ、真菌、細菌、昆虫などの増殖による生分解を防止するうえで有効な量の防腐剤をリグノセルロース系複合材製品または木材内部に含浸させるための補助剤として用いることができる。このように使用された場合、エマルジョンはリグノセルロース系材料による防腐剤の保持性を高め、防腐処理が施された製品が実際に使用される際に周辺環境に浸出する防腐剤の量を低減させる。
【0061】
本明細書で述べるエマルジョンが、木材や他のリグノセルロース系製品によって吸収された防腐剤の保持性を高め、製品からの防腐剤の浸出を防止する性能を評価するため、銅系防腐剤(ACQ)をサンプルエマルジョン及び比較例のエマルジョンとともに木材サンプルに含浸させ、保存処理を行った木材サンプルを水中に浸漬して、銅が浸出する様子を観察した。これは以下のように行った。
【0062】
25%のACQの40%溶液を70%の水及び5%のサンプルエマルジョンと表2に示したように混合して防腐剤溶液を調製した。得られた混合物を室温で2分間攪拌した。この開始混合物中の銅濃度を当該分野では周知のDSC(示差走査熱量計)を用いて測定した。比較用のステアリン酸及びオズモース社(Osmose)(ジョージア州グリフィン、米国)またはアーク・ウッド・プロテクション社(Arch−Wood Protection Incorporated)(ジョージア州スミルナ、米国)から市販されているトリエタノールアミン組成物を使用して比較用の溶液を調製した。
【0063】
サンドペーパーをかけた2インチ×1/4インチ×12インチ(長さ)の松材のラス片のサンプルを、上述した木材防腐剤溶液中に溶液を激しく攪拌しながら2分間浸漬してから引き上げた。各サンプルが引き上げられた後に溶液中に残留した銅の量を再び測定した。木材サンプルに含浸した銅の量を開始溶液からの銅濃度の差として求めた。
【0064】
各サンプルから溶液をしたたらせて2分間乾燥し、70°Fに調整したオーブン中で24時間乾燥した。乾燥後、処理を行った各木材サンプルを清浄な水に2分間、激しく攪拌しながら浸漬した。次いで水中の銅の量をDSC法を用いて求め、サンプルによって保持された銅の量を、水中の銅の量とサンプルによって吸収された銅の量との差として求めた。水中の銅の相対量は浸出度を示すものである。
【0065】
結果:比較用エマルジョンからなる防腐剤溶液を含浸したサンプルからは、含浸した銅のほぼ100%が浸出したのに対し、サンプルエマルジョンからなる防腐剤溶液を含浸したサンプルからは、含浸した銅の約15〜約25%程度しか浸出しなかった。これらの結果は、本明細書で述べるエマルジョンが防腐剤を木材内部に浸透させ、その後の防腐剤の浸出を防止するうえで優れた性能を発揮することを示すものである。
【0066】
一般に木材は、防腐剤を担体溶媒(通常は水)に加えた防腐剤溶液を使用した処理を行って防腐剤を含浸した木質からなる。この方法では、木材を真空チャンバに入れ、チャンバ内を減圧し、チャンバ内に木材と接触させて防腐剤溶液を導入し、チャンバ内を加圧して木材による防腐剤の吸収を促進し、更にチャンバ内を減圧して担体溶媒を木材から除去する。防腐剤は担体溶媒が吸収される際に木材内部に導入され、少なくともその一部は担体溶媒が除去された後も木材内部に残留する。本明細書で述べるエマルジョンを防腐剤溶液に加えることによって木材による防腐剤の吸収が促進され、後に担体溶媒が除去された際の木材による防腐剤の保持性が向上する。
【0067】
本明細書で述べるエマルジョンとともにリグノセルロース系製品に注入するうえで適当な防腐剤は無機または有機系防腐剤であり、その例としては、殺虫剤、殺真菌剤、殺細菌剤、及びこれらの殺生物剤の1以上のものの組合せなどの殺生物剤が挙げられる。この殺生物剤は、(1)対象とする生物、(2)溶解特性、(3)温度及びpHに対する安定性、及び複合材の製造に求められる他の条件などに基づいて選択すればよい。殺生物剤には、カビ、粘菌、真菌、細菌などの微生物を殺すかその増殖を防止する物質が含まれる。殺菌剤、殺真菌剤、殺細菌剤はすべて殺生物剤の例である。殺真菌剤には、真菌を殺すかその増殖を防止する物質が含まれる。殺細菌剤には細菌を殺す物質が含まれる。殺虫剤は昆虫を殺す薬剤である。殺生物剤のより具体的な例としては、これらに限定されるものではないが、塩素化炭化水素、有機金属化合物、ハロゲン放出化合物、金属塩、有機硫黄化合物、及びフェノール類が挙げられる。好ましい殺生物剤としてはこれらに限定されるものではないが、アンモニア塩基銅4価アンモニウム複合体(ACQ)、アンモニア銅亜鉛砒酸塩(ACZA)、銅ビス(ジメチルジチオカルバメート)(CDDC)、アンモニア銅クエン酸塩、銅アゾールなどのクロム化銅砒酸塩(CCA)、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、4級アンモニウム塩、ペンタクロロフェノール、テブコナゾール(TEB)、クロロタロニル(CTL)、クロロピリフォス、イソチアゾロン、プロピコナゾール、他のトリアゾール類、ピレスロイド、及び他の殺虫剤、イミジクロピド、オキシン銅など、及びこれらの殺生物剤の1以上のものの組合せなどが挙げられる。これらの有機系殺生物剤の他に、変化する放出速度を有し、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム塩、亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸シリカ、銅塩、及び亜鉛塩などの無機防腐剤を組み入れたナノ粒子を使用することも可能である。
【0068】
好ましい一般的な殺真菌剤の例としては、3−イソチアゾロン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、メチレン−ビス−チオ−シアネート(MBT)、2−チオシアノ−メチルチオベンゾチアゾール、テトラクロロイソフタロ−ニトリル、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジ−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、N,N’−ジメチルヒドロキシル−5,5’−ジメチル−ヒダントイン、ブロモクロロジメチルヒダントイン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、4,5−トリ−メチレン−2−メチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、ナフテン酸銅、銅−8−ヒドロキシ−キノリン、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、トリメチルホウ素、酸化亜鉛、グルタルアルデヒド、1,4−ビス(ブロモ−アセトキシ)−2−ブテン、4,5−ジクロロ−1,1−ジチアシクロペンテン−3−オン、クロロタロニル、4級アンモニウム系化合物、及びこれらの殺菌剤の1以上のものの組合せなどが挙げられる。
【0069】
好ましい一般的な殺真菌剤の例としては、ジンクジメチルジチオカルバメート、2−メチル−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、銅チオシアネート、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−フルオロジクロロメチルチオスルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシドの銅、ナトリウム及び亜鉛塩、テトラメチルチウラムジスルフィド、2,4,6−トリクロロフェニル−マレイミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)−ピリジン、ジイオドメチル p−トリルスルフォン、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロリド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、ピリジントリフェニルボラン、フェニルアミド、ハロプロパルギル化合物、プロピコナゾール、シプロコナゾール、テブコナゾール及び2−ハロアルコキシアリル−3−イソチアゾロン類(例、2−(4−トリフルオロ−メトキシフェニル)−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−5−クロロ−3−イソチアゾロン、2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−4,5−ジクロロ−イソチアゾロン)、及びこれらの殺真菌剤の1以上のものの組合せなどである。
【0070】
殺真菌剤としては、例えば、ファーバム、ジラム、マンネブ(マンガンエチレンビスジチオ−カーバメート)、マンコゼブ、ジネブ(亜鉛エチレンビスジチオカーバメート)、プロピネブ、メタム、チラム、ジネブとポリエチレンチウラムスルフィドの複合体、ダゾメット、及びこれらの銅塩の混合物などのジチオカルバメート及びその誘導体;ジノカプ、ビナパクリル及び2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェニルイソプロピルカーボネートなどのニトロフェノール誘導体;カプタンフォルペット、グリオジン、ジチアノン、チオキノクス、ベノミル、チアベンダゾール、ビノロゾリン、イプロジオン、プロシミドン、トリアジメノール、トリアジメフォン、ビテルタノール、フルオロイミド、トリアリモール、シクロヘキシイミド、エチリモール、ドデモルフ、ジメトモルフ、チフザミド及びキノメチオネートなどの複素環構造;クロラニル、ジクロン、クロロネブ、トリカンバ、ジクロラン及びポリクロロニトロベンゼンなどの種々のハロゲン化殺真菌剤;グリセオフルビン、カスガマイシン及びストレプトマイシンなどの殺真菌性抗生物質;ジフェニルスルフォン、ドジン、メトキシル、1−チオシアノ−2,4−ジニトロベンゼン、1−フェニル−チオセミカルバジド、チオファネート−メチル及びシモキサニルなどの種々の殺真菌剤;フララキシル、シプロフラム、オフレース、ベナラキシル、及びオキサジキシルなどのアシルアラニン類;フルアジナム、フルメトベル、欧州特許出願公開第578,586号明細書に開示されるもののようなフェニルベンズアミド誘導体、欧州特許出願公開第550,788号明細書に開示されるバリン誘導体などのアミノ酸誘導体、メチル(E)−2−(2−(6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン-4−イルオキシ)フェニル)−3−メトキシアクリレートなどのメトキシアクリレート類、ベンゾ(1,2,3)チアジアゾール−7−カルボチオイン酸のS−メチルエステル、プロパモカルブ、イマザリル、カルベンダジム、ミクロブタニル、フェンブ−コナゾール、トリデモルフ、ピラゾフォス、フェナリモール、フェンピクロニル、ピリメタニル、及びこれらの殺真菌剤の1以上のものの組合せなどの農業用殺真菌剤を使用することが可能である。
【0071】
防腐剤組成物には殺細菌剤/殺真菌剤の組合せを添加してもよい。殺細菌剤/殺真菌剤の例としてはメタゾールD3TAがある。メタゾールD3TAはオンド・ナルコ社(テキサス州ヒューストン)から市販されている3,5−ジメチル−テトラヒドロ−1,3,5,2H−チアジアジン−2−チオンである。
【0072】
好ましい殺虫剤の例としては、アセフェート、アルジカルブ、α−シペルメトリン、アジンフォス−メチル、ビフェントリン、ビナパクリル、ブプロフェジン、カルバリル、カルボフラン、カルタップ、クロルピリフォス、クロルピリフォスメチル、クロフェンテジン、シフルトリン、シヘキサチン、シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、デメトン、デメトン−S−メチル、デメトン−O−メチル、デメトン−S、デメトン−S−メチルスルフォキシド、デメフィオン−O、デメフィオン−S、ジアリフォル、ジアジノン、ジコフォル、ジクロトフォス、ジフルベンズロン、ジメトエート、ジノカップ、エンドスルファン、エンドチオン、エスフェンバレレート、エチオフェンカルブ、エチオン、エトエート−メチル、エスロプロップ、エトリムフォス、フェナミフォス、フェナザフロル、フェンブタチン−オキシド、フェニトロチオン、フェノキシカルブ、フェンスルフォチオン、フェンチオン、フェンバレレート、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、フルバリネート、フォノフォス、フォスメチラン、フラチオカルブ、ヘキシチアゾクス、イサゾフォス、イソフェンフォス、イソキサチオン、メタミドフォス、メチダチオン、メチオカルブ、メトミル、メチルパラチオン、メビンフォス、メキサカルベート、モノクロトフォス、ニコチン、オメトエート、オキサミル、パラチオン、ペルメトリン、フォレート、フォサロン、フォスメット、フォスファミドン、ピリミカルブ、ピリミフォスエチル、プロフェノフォス、プロメカルブ、プロパルギト、ピリダベン、レスメトリン、ロテノン、テブフェノジド、テメフォス、TEPP、テルブフォス、チオジカルブ、トククロフォス−メチル、トリアザメート、トリアゾフォス、バミドチオン、及びこれらの殺虫剤の1以上のものの組合せなどが挙げられる。
【0073】
他の殺虫剤の性質に影響しないかぎり、他の殺虫剤に加えて抗シロアリ剤を使用することも可能である。抗シロアリ剤としては、ペルメトリン、イミダクロプリド、エトプフェンプロックス、及びこれらの薬剤の1以上のものの組合せなどが挙げられる。
【0074】
好ましい防腐剤の具体的な例としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)、BARDAP(N,N−ジデシル−N−メチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオネート)、銅ベンズアルコニウムクロリドやN−アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(BKC)などのアルキルアンモニウム化合物;ナフテン酸銅(NCU)やナフテン酸亜鉛(NZN)などのナフテン酸の金属塩;バーサチン酸亜鉛などのバーサチン酸の金属塩;シプロコナゾール[(2RS,3RS;2RS,3SR)−2−(4−クロロフェニル)−3−(シクロプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール]、テブコナゾール[(RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オール]、プロピコナゾール[1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール]、1−[2−(2’,4−ジクロロフェニル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールや1−[2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどのトリアゾール型化合物;及びIF−1000[4−クロロフェニル−3−イオドプロパルギルフォルマール]、IPBC[3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカルバメート]などの有機ヨウ素化合物及びこれらの防腐剤の1以上のものの組合せが挙げられる。
【0075】
リグノセルロース系防腐剤は組合せて使用することも可能である。好ましい組合せとしては、シクロコナゾールとDDAC;シプロコナゾールとBARDAP;テブコナゾールとプロピコナゾールなどが挙げられる。
【0076】
防腐剤として木材腐朽菌及び軟腐朽菌、主としてchaetomium globosumなどの軟腐朽菌の増殖を阻害もしくは防止するうえで有効な化合物を使用することも可能である。こうした化合物としては、p−クミルフェノール(PCP)、及びp−クミルフェノールのナトリウム塩、p−クミルフェノールのエチルアミン塩などの塩、ならびにこれらの防腐剤の1以上のものの組合せが挙げられる。PCPは木材腐朽菌、子嚢菌類、及び不完全菌類の増殖を阻害し、抗カビ剤や抗シロアリ剤としても有効である。したがってPCPは特に好ましい。PCPは木材1立方メートル当たり約200〜1000g(g/m)の処理量(使用量)で木質材料に対して充分な効果を発揮する。
【0077】
本明細書で述べるエマルジョンには更に木材防腐剤用の一般的な添加剤を添加してもよい。例えば石油樹脂、ロジン及びワックスによって、PCPなどの防腐剤の殺微生物活性を高め、持続性を与えることが可能であることから、これらは更なる添加剤として適当である。
【0078】
フェノール型の木材用殺微生物剤として知られるジニトロフェノール、ジニトロ−O−クレゾール、クロロニトロフェノールなどは、子嚢菌類に対して殺微生物活性を示さないことから、本開示の木質防腐剤には含まれない。
【0079】
上述の防腐剤の1以上のものの混合物を使用することも可能である。1以上の防腐剤を、防腐剤が使用される木材またはリグノセルロース系複合材製品内部での生物活動を阻害するうえでの有効量、例えば、エマルジョンの約0.02wt%〜約1wt%、好ましくはエマルジョンの約0.1wt%〜約1wt%の量で使用する。こうした使用量は一般的に木材1立方フィート当たり約2〜約120g(g/ft)(1立方メートル当たり約70〜約4240g(g/m))及び約12〜約120g/ft(約425〜約4240g/m)に相当する。例えば、防腐剤は木材1立方フィート当たり約0.031ポンド(約500g/m)となるような量で使用される。
【0080】
リグノセルロース系防腐剤以外の他の添加剤を防腐剤組成物に添加することが望ましい場合もある。例えば、木材及び木材製品を、ホウ砂/ホウ酸、リン酸グアニル尿素、ジシアンジアミドリン酸ホルムアルデヒド、リン酸ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル及びこれらの添加剤の1以上のものの組合せのような難燃剤で処理することが望ましい場合がある。これらの難燃剤は例えばポリビニルピリジンやポリ塩化ビニルから形成されたナノ粒子に容易に取り込まれる。木材及び木材製品に望ましい性質を与え、組成物に添加することが可能な他の添加剤としては、撥水剤、着色剤、UV阻害剤、接着触媒、及びこれらの添加剤の1以上のものの組合せなどが挙げられる。
【0081】
以上、エマルジョンならびにこうしたエマルジョンを用いて製造されるリグノセルロース系複合材製品について開示した。これらのエマルジョンはリグノセルロース系複合材製品に耐水性を付与するうえで有用であり、製品内部での生物活動に寄与することがない。実施形態によっては、これらのエマルジョンを、温水、場合により沸騰した熱湯に分離、凝固させることなく加えることが可能である。実施形態によってはエマルジョンに室温で保存した場合の長期安定性を与えることが可能である。実施形態によってはエマルジョンに殺細菌剤を添加せずともよい。実施形態によってはエマルジョンを室温で流動性を有する液体としてもよい。必要に応じてこれらのエマルジョンに防腐剤を添加してもよい。本明細書では特定の実施形態ならびに最良の態様について述べたが、これらの実施形態はあくまで説明のためのものである。これらの実施形態には特許請求の範囲の精神ならびに範囲から逸脱することなく改変を加えることが可能であることは当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図は本発明のエマルジョンを用いて調製したボードサンプルの試験結果を市販のコントロールと対比してプロットしたグラフである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不鹸化性ワックスと鹸化ワックスとからなるワックス成分と、
アルキルフェノール成分と、
分散剤/界面活性剤と、
カルボキシメチルセルロース成分と、
水とからなるエマルジョン。
【請求項2】
前記ワックス成分が重量にしてエマルジョンの約25%〜約50%を構成する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記ワックス成分が重量にしてエマルジョンの約30%〜約40%を構成する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記不鹸化性ワックスはスラックワックス、スケールワックス、パラフィンワックス、またはこれらの組合せである請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記鹸化ワックスは、鹸化性ワックスと水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物またはこれらの組合せとの反応によって生成される請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
鹸化性ワックスと水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムとの反応によって生成される鹸化ワックスを含む請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
鹸化性ワックスと水酸化アンモニウムとの反応によって生成される鹸化ワックスを含む請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記アルキルフェノール成分はC20〜C42のアルキル基を有する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記アルキルフェノール成分はC24〜C34のアルキル基を有する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記アルキルフェノール成分はC24〜C28のアルキル基を有する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記分散剤/界面活性剤はポリナフタレンスルホン酸塩を含む請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記アルキルフェノール成分は前記カルボキシメチルセルロースの炭素鎖長と一致する平均炭素鎖長を有するアルキル基を有するアルキルフェノールを含む請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項13】
前記不鹸化性ワックスは重量にしてエマルジョンの約33%〜約35%を構成し、
前記鹸化ワックスは重量にしてエマルジョンの約3%〜約5%を構成し、
前記アルキルフェノール成分は重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2.5%を構成し、
前記分散剤/界面活性剤は重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2%を構成し、
前記カルボキシメチルセルロース成分は重量にしてエマルジョンの約0.2%〜約5%を構成する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項14】
前記鹸化ワックスは鹸化性ワックスと水酸化アンモニウムとの反応によって生成され、更に重量にして約0.5%のホルムアルデヒドを含む請求項13に記載のエマルジョン。
【請求項15】
リグノセルロース系材料をバインダーと混合して混合物とし、選択された構成にて該混合物を固化することによって調製されるリグノセルロース系複合材製品の耐水性を向上させるための方法であって、前記混合物に請求項1に記載のエマルジョンを添加することを含む方法。
【請求項16】
前記バインダーはフェノール性樹脂を含み、該樹脂の容量に対して約1%のエマルジョンを添加することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
リグノセルロース系材料をバインダーと混合して混合物とし、選択された構成にて該混合物を固化することによって調製されるリグノセルロース系複合材製品の耐水性を向上させるための方法であって、前記混合物に請求項13に記載のエマルジョンを添加することを含む方法。
【請求項18】
前記バインダーはフェノール性樹脂を含み、該樹脂の容量に対して約1%のエマルジョンを添加することを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リグノセルロース系材料をバインダーと混合して混合物とし、該混合物に、不鹸化性ワックス及び鹸化ワックスからなるワックス成分、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分及び水からなるエマルジョンを添加し、選択された構成にて該混合物を固化することによって製造されるリグノセルロース系複合材製品。
【請求項20】
不鹸化性ワックスは重量にしてエマルジョンの約33%〜約35%であり、鹸化ワックスは重量にしてエマルジョンの約3%〜約5%であり、アルキルフェノール成分は重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2.5%であり、分散剤/界面活性剤は重量にしてエマルジョンの約0.5〜約2%であり、カルボキシメチルセルロース成分は重量にしてエマルジョンの約0.2%〜約5%である請求項19に記載のリグノセルロース系複合材製品。
【請求項21】
不鹸化性ワックス及び鹸化ワックスからなるワックス成分、アルキルフェノール成分、分散剤/界面活性剤、カルボキシメチルセルロース成分及び水からなるエマルジョンを木材に含浸させることを含む木材の処理方法。
【請求項22】
前記木材は北部で産出される木材であり、前記エマルジョンは鹸化性ワックスと水酸化アンモニウムとの反応によって生成される鹸化ワックスを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
不鹸化性ワックスは重量にしてエマルジョンの約33%〜約35%であり、鹸化ワックスは重量にしてエマルジョンの約3%〜約5%であり、アルキルフェノール成分は重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2.5%であり、分散剤/界面活性剤は重量にしてエマルジョンの約0.5〜約2%であり、カルボキシメチルセルロース成分は重量にしてエマルジョンの約0.2%〜約5%である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記木材は北部で産出される木材であり、前記エマルジョンは鹸化性ワックスと水酸化アンモニウムとの反応によって生成される鹸化ワックスを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
防腐剤と前記エマルジョンを担体溶媒に加えた防腐剤溶液を前記木材に含浸し、リグノセルロース系製品から担体溶媒を除去することを含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記木材に含浸する工程は、木材をチャンバに入れることと、チャンバを減圧することと、木材と接触させてチャンバに防腐剤溶液を添加することと、チャンバを再加圧することとを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記担体溶媒を除去する工程は、チャンバを減圧することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記防腐剤は重量にして約1%〜約5%のエマルジョンを含む請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記防腐剤は重量にして約1%〜約2%のエマルジョンを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記防腐剤は銅化合物を含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記防腐剤はACQを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項25に記載の方法に従って処理された木質からなる木材。
【請求項33】
単一の容器に、溶融状態の不鹸化性ワックス、鹸化性ワックス、アルキルフェノール、水、分散剤/界面活性剤、鹸化剤、及びカルボキシメチルセルロースを入れて混合物とすることと、
該混合物を加熱、攪拌及び均質化することとを含むエマルジョンの調製方法。
【請求項34】
容器に、溶融状態の不鹸化性ワックス、鹸化性ワックス、アルキルフェノール成分及び水を入れて第1の混合物とすることと、第1の混合物を攪拌することと、分散剤/界面活性剤、鹸化剤及びカルボキシメチルセルロースを添加して第2の混合物とすることと、第2の混合物を加熱、攪拌及び均質化することとを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
エマルジョンを室温にまで冷却することを更に含む請求項33に記載の方法。
【請求項36】
2回の発熱工程を行う工程でエマルジョンを冷却することを含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
重量にしてエマルジョンの約33%〜約35%となる量の鹸化性ワックスを入れることと、
重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約1.5%となる量の鹸化剤を入れることと、
重量にしてエマルジョンの約0.5%〜約2.5%となる量のアルキルフェノール成分を入れることと、
重量にしてエマルジョンの約0.5〜約2%となる量の分散剤/鹸化剤を入れることと、
重量にしてエマルジョンの約0.2%〜約5%となる量のカルボキシメチルセルロースを添加することとを含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
エマルジョンを室温にまで冷却することを更に含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
2回の発熱工程を行う工程でエマルジョンを冷却することを含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記アルキルフェノール成分の炭素鎖長を前記カルボキシメチルセルロースの炭素鎖長と一致させることを含む請求項33に記載の方法。

【公表番号】特表2007−504351(P2007−504351A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533297(P2006−533297)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/016039
【国際公開番号】WO2005/039841
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(596174400)ヘキソン スペシャルティ ケミカルズ インコーポレーテッド (20)
【住所又は居所原語表記】180 East Broad Street,Columbus,Ohio 43215,United States of America
【Fターム(参考)】