説明

リサイクルプラスチックパネル製造方法及び製造装置

【課題】比較的狭いスペースで、反りのないプラスチックパネルを容易に製造可能とし、また、容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物を原料として、木材の代用となりうる剛性と耐釘打ち性能を有するリサイクルプラスチックを製造できるようにする。
【解決手段】廃プラスチックを主成分とする原料を溶融混練機に投入し、溶融した原料をリザーバーに送り込んだ後プレス成形機の金型内に射出する。成形したパネルは冷却部で徐冷する。リザーバーを用いることでパネルの曲げ強度、曲げ剛性、衝撃強度が向上し、冷却部で徐冷することでパネルの反りを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器リサイクル法の主に家庭から廃棄される一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物から、木材の代用として使用可能な物性、特に曲げ剛性、耐釘打ち性能を有するリサイクルプラスチックパネルを製造するのに好適な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック廃棄の総排出量は年間1千万トンと言われ巨大な排出量は資源、環境問題を起こしているため、容器リサイクル法によってポリエチレンテレフタレート(PET)は回収およびマテリアルリサイクルが行われてきているが、もっとも多く家庭ごみとして廃棄される一般廃棄物の中のその他のプラスチックはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックや熱硬化性樹脂など種々のプラスチックから構成され、加えて食品による汚れや、ラベルなどの紙、土、砂や金属などの異物の混入などがあり、マテリアルリサイクルの材料の用途として、高い物性を要求するような用途には適用できなかった。
【0003】
しかし、多量に回収される一般廃棄物プラスチックのリサイクル用途開発技術が待ち望まれる中で水の比重選別で水より比重の小さいポリエチレンとポリプロピレンを主体とする廃プラスチック材料が選別、水洗浄、乾燥、ペレット化して得られるようになった。
【0004】
一方、厚さが10〜50mm程度の木材パネルは建築、土木、家具や輸送梱包などその需要は益々大きなものになっているが、その資源の枯渇や海外への依存度が大きくなっていて供給は不安定になってきている。そこで、上記のポリエチレンとポリプロピレンを主体とする廃プラスチック材を原料として成形したリサイクルプラスチックパネルを木材パネルの代用材料として使用できれば、一石二鳥の用途開発であるといえる。
【0005】
しかし、この水より比重の小さい選別された廃プラスチックは、プラスチックの中で最も多量に生産され消費されているポリエチレンおよびポリプロピレンが主成分の混合物となっているものの、廃棄物であるために製造法やメーカーが異なる上に、元来ポリエチレンとポリプロピレンは分子構造や結晶構造も異なっていて両者は非相溶であり、混合物の機械的な物性はそれぞれ単独のものより大きく低下してしまう。さらに、木材の代用品として使用するためには、相応の剛性及び耐釘打ち性能を必要とするので、上記の廃プラスチックからこのような用途に使用できるリサイクルプラスチックを得ることは困難であると考えられていた。
【0006】
下記特許文献1には、廃プラスチックからコンクリート型枠として使用可能な板材を製造する方法が記載されている。しかしこの方法は、熱硬化性廃プラスチックと廃ポリスチレンを原材料とするものであるから、廃棄物から熱硬化性プラスチックとポリスチレンを選別しなければならず、この選別に多大の労力を必要とするものである。さらに、成形方法としては圧縮成形、射出成形、押出成形などにより行うことが記載されているが、非相溶のポリエチレンとポリプロピレンが主成分の原料の場合、単にこれらの方法により成形したのでは曲げ強度、曲げ剛性などの物性が著しく悪いものとなってしまう。また、圧縮成形、射出成形によりパネルを成形すると、成形直後のパネル内部の温度分布の不均一さにより、パネルに反りが発生するという問題もある。
【0007】
また、下記特許文献2には、使用済みプラスチックから分離した比重1.0以下のプラスチック混合物を原料としたコンクリート型枠用のプラスチック複合パネルが開示されているが、これは、中心層とその両側の外層とからなり、中心層が発泡プラスチックであるため、木材の代用として一般的に用いるには剛性不足とならざるを得ないものである。成形方法としては押出成形によることが記載されている。一般にパネル状のプラスチックを成形する場合は押出成形法が用いられる。図4は従来の押出成形法でパネルを成形する場合の説明図である。押出成形機20で溶融、混練した原料を、金型21を通して帯状に押し出し、多数のローラ22の間を通して徐冷し、図示しないカッターで切断してパネルにするのであるが、反りのない平滑なパネルを得るには、ローラを通しながら長い距離を徐冷しなければならず、非常に広いスペースを必要としていた。
【特許文献1】特開平7−124947号公報
【特許文献2】特開2002−322809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、第一に、比較的狭いスペースで、反りのないプラスチックパネルを製造できるようにすることであり、第二に、容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物を原料として、木材の代用となりうる剛性と耐釘打ち性能を有するリサイクルプラスチックを製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔請求項1〕
本発明は、廃プラスチックを主成分とする原料を溶融混練機に投入し該原料溶融、混練するステップと、溶融混練した原料をリザーバーに送り込んでリザーバー内に貯留するステップと、リザーバーから貯留している原料をプレス成形機の金型内に射出するステップと、プレス成形機により射出された原料をプレス成形するステップと、成形が完了したパネルを金型から取り出して冷却部に送るステップと、該冷却部において、前記パネルを2枚の冷却板で挟んで押圧しながら徐々に冷却するステップを有することを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法である。
【0010】
〔請求項2〕
また本発明は、前記請求項1の製造方法において、前記原料が比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックに対し、4重量%〜49重量%(限界値を含む)の無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネルの製造方法である。
【0011】
〔請求項3〕
また本発明は、前記請求項2の製造方法において、前記原料が、無機フィラーを含有しているポリオレフィン複合材を添加することにより、無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法である。
【0012】
〔請求項4〕
また本発明は、前記請求項1の製造方法において、前記原料が比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックに対し、4重量%〜49重量%(限界値を含む)の無機フィラーと、2〜10重量%(限界値を含む)の熱可塑性エラストマーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法である。
【0013】
〔請求項5〕
また本発明は、前記請求項4の製造方法において、前記原料が、無機フィラーを含有しているポリオレフィン複合材を添加することにより、無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法である。
【0014】
〔請求項6〕
また本発明は、前記請求項1〜5のいずれかの製造方法において、前記リサイクルプラスチックパネルの厚さが10〜50mm(限界値を含む)であることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法である。
【0015】
〔請求項7〕
また本発明は、溶融混練機、リザーバー、プレス成形機及び冷却部を備え、前記溶融混練機は原料を溶融混練すると共に溶融混練した原料をスクリューでリザーバーに送り込むものであり、前記リザーバーはシリンダ及び該シリンダ内を前進、後退するピストンを有し、前記溶融混練機から送り込まれた原料を、前記ピストンを後退させて前記シリンダ内に貯留した後、前記ピストンを前進させて該原料をプレス成形機の金型内に射出するものであり、前記プレス成形機は金型内に射出された原料をパネルにプレス成形するものであり、前記冷却部は前記プレス成形機で成形されたパネルを2枚の冷却板で挟んで押圧しながら徐々に冷却するものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造装置である。
【0016】
本発明における溶融混練機は単軸押出機、2軸押出機、ニーダー混練機など何れでもよく、混練機のスクリューのL/D(Lはスクリューの長さ、Dはスクリューの直径)は少なくとも20以上と混練に必要な長さがあることが必要であり、ベント部は1ヶ所以上あることが望ましく、とくに2軸押出機やニーダー混練機は空気混入による熱酸化劣化を防止するために樹脂供給およびベント部を窒素ガス封入をすることが望ましい。
【0017】
本発明におけるリザーバーは、シリンダと、油圧などによってシリンダ内を前進、後退するピストンを有するものである。原料となる廃プラスチックが、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他のプラスチックなどが混在しているものである場合、溶融混練機で溶融、混練された原料をリザーバーに移して貯留することで、これら異なるプラスチックが均等に混練され、成形したパネルが均質で物性に優れたものとなる。
【0018】
本発明におけるプレス成形機は、例えば特許第2951944号公報に示されるような、上金型を予め定められた傾きに制御しながらキャビティー内に原料を均一に分散して充填する傾斜プレス方式とするのが望ましい。金型は予め温度制御されていることが望ましく、原料の注入口は金型の底面、側面など適宜の個所に適宜数設ければよく、流入速度は冷却が不均一にならないように、できるだけ短時間に行うことが望ましく、冷却は成形したパネルの変形や収縮がなるべく起こらないようになるまで保持することが望ましい。
【0019】
本発明における冷却部は、プレス成形機で成形されたパネルを2枚の冷却板で挟んで押圧しながら徐々に冷却するものであり、冷却板は、例えば、内部に設けた通水路に水を流す構成とすることができる。押圧は、成形後のパネルに反りが生じない状態で保持できる程度でよく、冷却板の重量が充分ある場合はその重量で押圧すればよく、そうでない場合はプレスシリンダなどの適当な押圧手段で押圧する。
【0020】
本発明で対象にしているパネルの大きさは特に規定するものではないが、幅が100mmから2000mm程度、長さが500mmから4000mm程度、厚さが10〜50mm程度が好適である。
【0021】
本発明において使用する原料は、比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックとすることができる。容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物を、水による比重分離することで容易に得ることができる。容器リサイクル法による一般廃棄物系の使用済みプラスチックは、大量に製造消費されている安価なポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデンが主成分であり、その他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に加えて紙や繊維、木材、砂、金属類なども混入している。これらの廃棄物を分別する方法としては、風選、磁選、比重分離、ろ過分離などが行われているが、本発明においては、水による比重分離を行うことで、比重が1.0を越えるPET、熱硬化性樹脂、塩化ビニル、金属などが取り除かれ、ポリエチレンとポリプロピレンを主体とするポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックが得られる。この廃プラスチックを必要に応じて水洗浄・乾燥したもの、またはこの廃プラスチックを溶融混練押出機によりペレット化したもの、さらに加工性を改良するための樹脂ブレンドしたものも原料として用いることができる。
【0022】
新規なポリエチレンとポリプロピレンは、非相溶であるためにブレンドされることはほとんど無いが、ポリエチレンとポリプロピレン両方の構造要素をもつエチレンプロピレンゴムおよびエチレンプロピレンターポリマーなどの相容化剤を添加すると強度や破壊時の伸びや衝撃強度といった物性が改良できることは知られている。しかし、相溶化剤を添加すると厚物板成形体に最も要求される剛性率が著しく低下してしまうので、木材の代用品としての使用には耐えられない。
【0023】
また新規なポリエチレンとポリプロピレンを主成分とするブレンド物は剛性率をあげるためには無機フィラーを充填することが可能であるが、強度や衝撃強度の低下を招いてしまい、目的の高剛性で尚且つ衝撃強度が大きく尚且つ木材の組み立てに要求される釘打ちに対して耐えられる耐釘打ち性能をもった厚物板成形体を得ることはできなかった。
【0024】
ところが容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物の水による比重分離により選別された比重1.0以下の廃プラスチック材料(ポリオレフィンを70重量%以上含む)にタルク、炭カル等の無機フィラーを添加した混合物を適当な手段で成形したリサイクルプラスチックは、意外にも新規ポリオレフィンのブレンド物と同様に剛性が高くなると同時に衝撃強度の低下は殆ど見られず釘打ちによる衝撃強度は改善することが分かり、無機フィラーの添加がリサイクル材の物性改良に著しく効果があることが判明した。
【0025】
無機フィラーはすでにポリエチレンやポリプロピレンに添加されて複合材として市場で多く使われていて、充填量も20〜60重量%と多く、多量に廃棄されているが、このような複合材は、水による分離では水より比重が大きいため別に分離されていて、リサイクル用途を探しているのが現状であるが、これを無機フィラー充填の目的で上記の廃プラスチックに充填したところ、剛性率が高くなると同時に無機フィラーを直接添加した場合より耐釘打ち性能が改善され、複合材のリサイクルに寄与するとともに、非相溶であるための低い物性が一挙に改良できることが判明した。
【0026】
加えて、これらの混合物にスチレンーブタジエン−スチレンブロック共重合体エラストマー(SBSエラストマー)やその水素添加物(SBESエラストマー)のような熱可塑性エラストマーを添加して適当な手段で成形したリサイクルプラスチックは剛性率が保持された上に、耐釘打ち性能が著しく改善された。
【0027】
本発明で使用される無機フィラーの代表例としては酸化物としてシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、軽石など、水酸化物として水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸カルシウムなど、炭酸塩として炭酸カルシウム、ドロマイトなど、硫酸塩として硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど、けい酸塩としてタルク、クレー、マイカ、ガラス、けい酸カルシウム、モンモリロナイトなど、炭素としてカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなど、金属粉として鉄粉、ステンレス粉など、その他としてゼオライト、ホウ酸塩などの平均粒径が100μm以下の粉体で、形状は多くは球状であるが、板状、円柱状、繊維状などのものも用いることができ、物性向上の観点からは板状や繊維フィラーが望ましい。
【0028】
本発明で使用される繊維状フィラーとしてはガラス繊維、炭素繊維、芳香族アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維がある。
【0029】
また、本発明で使用される無機フィラーの添加方法は無機フィラーを添加するまえに、プラスチック中での分散をよくするため、チタネート系カップリング剤およびシラン系またはアミノ系カップリング剤などでフィラーの表面処理をしたものでもよく、ステアリン酸カルシウムやマグネシウムなどの分散剤を添加したものでもよく、また添加方法も廃プラスチックをペレット化する時に添加してペレット化してもよく、廃プラスチックを溶融混練機に投入するときに同時に投入するなどしてもよい。
【0030】
また、本発明で使用されるこれらの無機フィラーの多くがすでにポリエチレン、ポリプロピレンに添加されていろいろの用途に使用されているが、そのようなプラスチックと無機フィラーの複合材を廃棄物から分離して、廃プラスチックに添加したところ、剛性率及び耐釘打ち性能が無機フィラーを単に添加する以上に改善されることが判明した。
【0031】
これはフィラーがすでにポリオレフィンに分散していてポリオレフィンとなじんでいるためにフィラーの充填効果と相溶効果が十分に発揮されたものと考えられ、第一にポリオレフィン複合材のリサイクルに寄与できること、第二に背反する物性改良が出来ることから一石二鳥の効果が得られたことになる。
【0032】
無機フィラーに加えエラストマーを添加することは耐釘打ち性能の向上に特に効果があったので、そのエラストマーについて述べると、エラストマーとしては天然ゴムに代表されるポリイソプレン、スチレンーブタヂエンゴムなどのゴム物質も有効であるが、本発明としては熱可塑性エラストマーが望ましい。
【0033】
本発明で使用される熱可塑性エラストマーとしてはスチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系、イソプレン系、フッ素系などがあるが、スチレン系、オレフィン系、イソプレン系が望ましく、特にスチレン系熱可塑性エラストマーが望ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のリサイクルプラスチックパネル製造方法及びリサイクルプラスチックパネル製造装置によれば、比較的狭いスペースで、反りのないプラスチックパネルを製造でき、また、容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物を原料として、木材の代用となりうる剛性と耐釘打ち性能を有するリサイクルプラスチックパネルを製造することができる。本発明により製造されたリサイクルプラスチックパネルは、木製板の代用品として好適であるので、土木・建築材料、家具材料、梱包材料、荷役パレットの材料などとして広い用途があり、一般廃棄物中のその他のプラスチックのリサイクル促進に貢献するものである。
【実施例】
【0035】
本発明のリサイクルプラスチックパネル製造方法は、例えば図1〜3に示す実施例のリサイクルプラスチックパネル製造装置により実施することができる。図1において符号1は溶融混練機(単軸押出機、2軸押出機、ニーダー混練機等)、2はリザーバー、3はプレス成形機、4は冷却部、5、6は弁であり、これらの各装置は図示しない制御装置によって作動する。
【0036】
溶融混練機1は、供給された廃プラスチック、無機フィラー等の原料を溶融すると共に混練し、スクリューによってリザーバー2に送る。このとき、弁5は開、弁6は閉となっており、リザーバーは内部のピストンロッド2aが後退してシリンダ2b内に溶融混練された予定量の原材料を貯留する。廃プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他のプラスチックなどが混在しているが、リザーバーに送って一旦貯留することで、これらの異なるプラスチックが均等に混練され、成形したパネルが均質で物性に優れたものとなる。貯留完了後、弁5を閉、弁6を開に切り替え、ピストンロッド2aが前進し、溶融混練した原料をプレス成形機3の金型内に射出する。
【0037】
図2に示す、いわゆる傾斜プレス式プレス成形機3は、金型(上金型8、下金型7)、加圧シリンダ10、センサ11などからなり、上金型8と下金型7の間の空間がキャビティー9となっている。上金型8及び下金型7は冷却水により温度制御されるもので、下金型7の中央部には原料の注入口が設けられている。加圧シリンダ10は油圧式で、上金型8を上下動すると共に、キャビティー9内の原料を加圧する。また、センサ11で上金型の高さ及び傾きが検知され、制御装置(図示せず)が左右のシリンダの動作を制御し、上金型を予め定められた傾きに制御しながらキャビティー内に原料を均一に分散して充填する。キャビティー9内に原料を注入した後、加圧シリンダ10で金型を型締めして保持し、原料を硬化させ、その後上金型8を上昇させて成形したパネルを取り出す。取り出したパネルは、ローラーコンベア、吸着盤を備えたクレーン、ロボットなどの周知な搬送手段により冷却部4に送られる。
【0038】
冷却装置4は内部に通水路13が形成された上下2枚の冷却板12を備え、上の冷却板はシリンダ14で上下動する。成形直後のパネルは上の冷却板が上昇している状態で下の冷却板の上に載置され、その後上の冷却板が下降して上の冷却板の重量で加圧しながらパネルを徐冷する。通水路13には15℃に温度制御された水が流れている。パネルは内部が室温となるまで徐冷されることが望ましく、厚さ15mmのパネルであれば5分程度である。徐冷が完了したパネルはストックヤード(図示せず)に搬送される。
【0039】
容器リサイクル法による一般廃棄物中のその他のプラスチックに該当する廃棄物を、水による比重分離で分別し、比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックを得た。タルクを40重量%含有するポリプロピレン複合材を30重量%、及びスチレンーブタヂエン−スチレン熱可塑性エラストマー5重量%を加えたものを原料としてリサイクルプラスチックパネルを上記の製造装置により製造した。溶融混練機1は70mmφ、L/D40、ベント式で温度設定180〜220℃にしてスクリュー回転数280rpmにて混練溶融物を混練し、直径250mm、長さ850mmで220℃に保温した油圧式プランジャータイプのリザーバー2に注入し、さらに弁5、6を切り替えて15mm(厚さ)×600(幅)×2400mm(長さ)のキャビティーを有する金型に注入圧および保圧を15MPaの条件で注入して保圧成形した。成形したパネルは直ちにローラーコンベアにより冷却部4に搬送し、5分間徐冷した。これにより、反りの全くない平滑なリサイクルプラスチックパネルが得られた。
【0040】
このパネルについて、JIS K 7171に準拠して曲げ試験を行い曲げ強度および曲げ弾性率を求め、また、JIS K 7110に準拠してアイゾット衝撃強度を求めた。釘打ち試験は厚板材を90mm×40mmに切断したものを気温20℃の室内に放置した後、気温20℃の室内でロール釘打ち機を使い、釘は21−38のサイズのスクリュー型および丸型を使い、その板の破壊状況を目視観察し、サンプル数に対して破壊数(破壊数/試験数)を釘打破損率として求めた。その結果、曲げ剛性は1GPa、アイゾット衝撃強度は4.2KJ/mで、木材の代用品として使用することができる水準であり、釘打破損率はスクリュータイプ釘打ちが0/30、丸釘打ちが0/30で、耐釘打ち性能も十分であった。また、このパネルは鋸で容易に切断加工できるものであった。
【0041】
上記実施例の製造方法に対し、リザーバーを用いずに溶融混練機から直接金型に原料を注入すると、成形したパネルの曲げ強度は平均で30%程度低下する。また、冷却装置を用いずに成形直後のパネルを室温で放置したところ、平均20mm程度の反りが生じた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】リサイクルプラスチックパネル製造装置の平面図である。
【図2】プレス成形機3の断面図である。
【図3】冷却部4の断面図である。
【図4】押出成形によるパネル製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 溶融混練機
2 リザーバー
3 プレス成形機
4 冷却部
5 弁
6 弁
7 下金型
8 上金型
9 キャビティー
10 加圧シリンダ
11 センサ
12 冷却板
13 通水路
14 シリンダ
20 押出成形機
21 金型
22 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを主成分とする原料を溶融混練機に投入し該原料溶融、混練するステップと、溶融混練した原料をリザーバーに送り込んでリザーバー内に貯留するステップと、リザーバーから貯留している原料をプレス成形機の金型内に射出するステップと、プレス成形機により射出された原料をプレス成形するステップと、成形が完了したパネルを金型から取り出して冷却部に送るステップと、該冷却部において、前記パネルを2枚の冷却板で挟んで押圧しながら徐々に冷却するステップを有することを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法において、前記原料が比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックに対し、4重量%〜49重量%(限界値を含む)の無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネルの製造方法。
【請求項3】
請求項2の製造方法において、前記原料が、無機フィラーを含有しているポリオレフィン複合材を添加することにより、無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法。
【請求項4】
請求項1の製造方法において、前記原料が比重1.0以下で、ポリオレフィンを70重量%以上含む廃プラスチックに対し、4重量%〜49重量%(限界値を含む)の無機フィラーと、2〜10重量%(限界値を含む)の熱可塑性エラストマーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法。
【請求項5】
請求項4の製造方法において、前記原料が、無機フィラーを含有しているポリオレフィン複合材を添加することにより、無機フィラーを混合したものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの製造方法において、前記リサイクルプラスチックパネルの厚さが10〜50mm(限界値を含む)であることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造方法。
【請求項7】
溶融混練機、リザーバー、プレス成形機及び冷却部を備え、前記溶融混練機は原料を溶融混練すると共に溶融混練した原料をスクリューでリザーバーに送り込むものであり、前記リザーバーはシリンダ及び該シリンダ内を前進、後退するピストンを有し、前記溶融混練機から送り込まれた原料を、前記ピストンを後退させて前記シリンダ内に貯留した後、前記ピストンを前進させて該原料をプレス成形機の金型内に射出するものであり、前記プレス成形機は金型内に射出された原料をパネルにプレス成形するものであり、前記冷却部は前記プレス成形機で成形されたパネルを2枚の冷却板で挟んで押圧しながら徐々に冷却するものであることを特徴とするリサイクルプラスチックパネル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−112028(P2007−112028A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306486(P2005−306486)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(390028082)武蔵野機工株式会社 (12)
【Fターム(参考)】