説明

リチウムイオン二次電池の製造方法

【課題】固体電解質層と電極層(例えば、正極層)を焼成し相互に結合させる際に、層間の強い結合を維持しつつ、境界層における高いイオン伝導性を備えることができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】電解質グリーンシート及び正極グリーンシートを重ねて積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成する工程と、を含むリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの少なくとも一方は、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関し、より詳しくは正極グリーンシート、電解質グリーンシート、及び/又は負極グリーンシートからなる積層体の製造方法、及びその方法により製造されたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等を始めとする携帯用電子機器の高性能化や小型化により、これら携帯電子機器に使用される電池の高エネルギー密度化、小型化が望まれている。一般に、リチウム電池では高電圧が得られ、高エネルギー密度を有するため、これらの携帯用電子機器のための電源として期待されている。通常、このようなリチウム電池では、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)やマンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などのリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。また、負極活物質としては、黒鉛、繊維状カーボンなどの炭素材料が用いられている。このようなリチウム電池には有機電解液が使われるが、高分子電解質と有機電解液を混合させたポリマー電解質についても研究されている。これらリチウム電池又はポリマー電解質電池は電解質に液体を使用しているため、液漏れや発火の恐れなどの信頼性が低い。また、低温での電解液の凍結や、高温における電解液の気化等は、電池の性能を著しく損なうおそれがあるため、このような電池の使用温度が限定される。そのため、高信頼性のリチウム電池として、有機電解液に代えてリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を用いたリチウム電池の開発が望まれている。
【0003】
このような固体電池は、可燃性の有機溶剤を用いないため、液漏れや発火の恐れがなく、安全性に優れている。例えば、活物質グリーンシート及び固体電解質グリーンシートをそれぞれ形成し、活物質グリーンシートの一方の面に固体電解質グリーンシートを積層し、該活物質グリーンシートの他方の面に集電体グリーンシート層を形成し、酸化雰囲気中200℃以上400℃以下で加熱し、更に、低酸素雰囲気中より高い焼成温度(例えば、700〜1000℃)で焼成して、積層体を得る製造方法が開示されている(特許文献1)。これにより、金属材料からなる集電体が酸化雰囲気中の加熱で酸化された場合でも、酸化された集電体を、低酸素雰囲気中より高い焼成温度(例えば、700〜1000℃)で焼成することで還元することが可能とされる(特許文献1)。尚ガラスフリットの集電体スラリーへの添加に言及されているが、その効果について特に記載されていない。
【0004】
一方、活物質層と、この活物質層に焼結接合された固体電解質層を含む積層体であって、活物質層は、リチウムイオンを放出及び吸蔵し得る結晶性の第1の物質を含み、固体電解質層は、リチウムイオン伝導性を有する結晶性の第2の物質を含む。このとき、前記活物質層及び前記固体電解質層の少なくとも1つが、非晶質酸化物を含む(特許文献2)。この非晶質酸化物としては、例えば、SiO2とAl23とNa2OとMgOとCaOとを含むもの等が挙げられる。これらの非晶質酸化物は、焼結助剤として添加され、材料ごとに異なるかもしれない焼結開始温度や焼結速度等を揃えられるとされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−227362号公報
【特許文献2】特開2007−5279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような固体電池(リチウムイオン二次電池)においては、特に電解質及び電解質と各電極活物質との境界における高いイオン伝導性が重要であるところ、非晶質酸化物は、基本的にイオン伝導性が低く、固体電池の高性能化が困難である。境界における密着性を改善するために、例えば、ガラスをバインダーとして添加することも可能であるが、そのようなガラスは、基本的にイオン伝導性が低いことが多い。また、このようなガラスの中には、焼成中に電極の活物質と反応し、結果的にイオン伝導度を低下させるものもある。一方、イオン伝導性の高い(つまり結晶性が高い)固体電解質においては、電極材料(例えば活物質)との焼成後の密着性が必ずしも高くなく、層間で剥離するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、このような事情に鑑み、固体電解質層と電極層(例えば、正極層)を焼成し相互に結合させる際に、層間の強い結合を維持しつつ、境界層における高いイオン伝導性を備えることができるリチウムイオン二次電池の製造方法及びそれにより製造されたリチウムイオン二次電池を提供する。
【0008】
より具体的には以下のようなリチウムイオン二次電池の製造方法や、それらにより製造されるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
(1)電解質グリーンシート及び正極グリーンシートを重ねて積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成する工程とを含むリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの少なくとも一方は、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0009】
ここでグリーンシートとは、焼成前のガラスや無機酸化物等のセラミックスの主に粉体に有機結合剤、可塑剤、溶剤等を混合し、薄板状に成形した未焼成体を意味することができる。この成形は、ドクターブレードやカレンダ法、スピンコートやディップコーティングなどの塗布法、インクジェット、バブルジェット(登録商標)、オフセットなどの印刷法、ダイコーター法、スプレー法等により行うことができ、混合スラリーから薄板状のグリーンシートを作ることができる。この焼成前のグリーンシートは柔軟であり、任意の形状に切断することや、積層することも可能である。
【0010】
また、リチウムイオン伝導性の結晶としては、LiN、LISICON類、La0.55Li0.35TiOなどのリチウムイオン伝導性を有するペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi12や、これら結晶を析出させたガラスセラミックスを用いることができる。好ましいリチウムイオン伝導性の結晶としてはLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)である。イオン伝導を阻害する結晶粒界を含まない結晶であるとイオン伝導の点で有利である。特にガラスセラミックスは、イオン伝導を妨げる空孔や結晶粒界をほとんど有しないため、イオン伝導性が高くかつ化学的な安定性に優れるため、より好ましい。また、ガラスセラミックス以外で、イオン伝導を妨げる空孔や結晶粒界をほとんど有しない材料として、上記結晶の単結晶が挙げられるが、これは製造が難しくコストが高い。製造の容易性やコストの観点でもリチウムイオン伝導性のガラスセラミックスは有利である。
【0011】
リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスとしては、母ガラスがLiO−Al−TiO−SiO−P系の組成を含むことができ、このガラスを熱処理して結晶化させ、その際の主結晶相がLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる一つ以上)であることを特徴としたガラスセラミックスが例示される。前記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスと前記母ガラスの割合は、要求されるイオン伝導度、焼成条件等により適宜変更可能である。
【0012】
ここでガラスセラミックスとは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶相を析出させて得られる材料を含むことができる。非晶質固体と結晶からなる材料を含んでもよい。前記析出は、例えば、結晶の核の生成後に成長して結晶層が形成されると、X線回折法等により検出可能である。更に、ガラスセラミックスとは、結晶の粒子間や結晶中に空孔がほとんどなければガラス相すべてを結晶相に相転移させた材料、すなわち、材料中の結晶量(結晶化度)が100質量%のものを含むことができる。一般にいわれるセラミックスや焼結体はその製造工程上、結晶の粒子間や結晶中の空孔や結晶粒界の存在が避けられず、ガラスセラミックスとは区別することができる。特にイオン伝導に関しては、セラミックスの場合は空孔や結晶粒界の存在により、結晶粒子自体の伝導度よりもかなり低い値となってしまう。ガラスセラミックスは結晶化工程の制御により結晶間の伝導度の低下を抑えることができ、結晶粒子と同程度の伝導度を保つことができる。
【0013】
本発明において、電解質グリーンシートは、焼成工程を経て固体電解質を形成する。しかし、内部に気孔が残っていれば、イオン伝導経路として寄与しないので電解質全体としてのイオン伝導度は低くなってしまう。一般に、電解質のイオン伝導度が高いとリチウムイオンの移動速度が速くなるため、この固体電解質を用いて作製した電池の出力は高くなる。従って、電解質の気孔率は低い方が好ましい。例えば、20vol%以下が好ましい。また、より好ましくは15vol%以下であり、更に好ましくは10vol%以下である。
【0014】
ここで気孔率とは、単位体積中に含まれる空孔の割合であり、次式で表される。
気孔率(%)=(真密度−見かけ密度)/真密度×100
ここで真密度とは、その材料の真実密度を意味してもよい。これに対し、見かけ密度は物体の重さを見掛けの体積で割った密度であり、空孔も含まれている密度である。
【0015】
ここで、前記重ねて積層体を作製する工程は、前記電解質層及び前記正極層をそれぞれ作製し、それらを重ねて積層体を作製する場合に限らない。電解質層若しくは前記正極層のうち、どちらか一方の層を作製した上に、他方の層を圧着、スパッタリング、熱蒸着、駆体塗布、印刷などから選ばれる少なくとも1つの方法で付着させて前記積層体を作製する方法を含む。前記電解質層及び前記正極層の作製には、グリーンシートを用いることにより作製する方法を含む。
【0016】
また、焼成工程とは、高温でグリーンシートを処理することにより、グリーンシートを構成する無機物の粒子を焼き固める工程である。焼成工程においては、炉内の雰囲気を一定に保つため、排気を行うことが好ましい。焼成工程はガス炉、マイクロ波炉などの公知の焼成炉を用いて行えばよいが、環境・炉内温度分布・コストなどの理由から電気炉を用いることが好ましい。
【0017】
(2)前記結晶は、25℃において10−5S・cm−1以上のイオン伝導度を有することを特徴とする上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0018】
結晶とは、焼成前の、前記正極グリーンシートに含まれる結晶を含むことができる。この結晶には、酸化物結晶を含めることができる。酸化物結晶には、前記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含むことができる。
【0019】
リチウムイオン二次電池の充放電時におけるリチウムイオンの移動性は、電解質のリチウムイオン伝導度及びリチウムイオン輸率に依存する。従って、本発明の前記正極グリーンシートにはリチウムイオン伝導性が高く且つリチウムイオン輸率が高い物質を用いることが好ましい。
【0020】
(3)前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの合計重量に対し50wt%〜75wt%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0021】
(4)前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシートの重量に対し50wt%〜100wt%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を適用することができる。
【0022】
(5)前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記正極グリーンシートの重量に対し5wt%〜45wt%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0023】
ここで、電解質グリーンシートの重量に対してとは、この酸化物ガラス粉末の重量を含む電解質グリーンシート全体の重量で、この酸化物ガラス粉末の重量を割って百分率で表わすことを意味することができる。また、正極グリーンシートの重量に対してとは、この酸化物ガラス粉末の重量を含む正極グリーンシート全体の重量で、この酸化物ガラス粉末の重量を割って百分率で表わすことを意味することができる。
【0024】
(6)前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が7μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0025】
(7)前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の平均粒径が3μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)、又は(6)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0026】
このときの電解質グリーンシートに含まれる酸化物ガラス粉末の平均粒径は、3μm以下が好ましい。より好ましくは2.5μm以下、最も好ましくは2μm以下である。酸化物ガラス粉末を平均粒径3μm以下と十分に細かくした後に十分混合することで、成形体の組成を均一にしておくことにより、焼成後も緻密で気孔率の少ないリチウムイオン伝導性固体電解質を得ることができる。ここで、平均粒径とは、レーザー回折法によって測定した時のD50(累積の体積分率50%径)の値であり、使用する測定装置を具体的にはベックマン・コールター社の粒度分布測定装置LS100Q又はサブミクロン粒子アナライザーN5によって測定した値を用いることができる。なお、前記平均粒子径は体積基準で表わした値である。前記の測定装置は被測定物の粒径によって使い分けをする。被測定物の最大粒径が3μm未満の場合はサブミクロン粒子アナライザーN5のみを用いて測定する。
【0027】
(8)前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が3μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)、又は(5)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0028】
(9)前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)、(5)又は(8)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0029】
このときの正極グリーンシートに含まれる酸化物ガラス粉末の平均粒径は、1μm以下が好ましい。より好ましくは0.9μm以下、最も好ましくは0.8μm以下である。酸化物ガラス粉末を平均粒径1μm以下と十分に細かくした後に十分混合することで、成形体の組成を均一にしておくことにより、焼成後も緻密で気孔率の少ないリチウムイオン伝導性正極を得ることができる。
【0030】
また、無機粉末である酸化物ガラス粉末を任意の形状に成形して焼結することにより成形体を得る場合、その粉末の焼結性が良好な場合は、平均粒径や粒度分布を厳密に制御せずとも、加圧成形して焼結することにより良好な成形体が得られる。しかし、焼結性の良くない無機粉末を用いる場合は、上記の平均粒径は焼成して得られる成形体の密度に大きく影響するため、焼結性が悪いほど、平均粒径は小さくする必要性が高くなり、場合によっては粒度分布も制御することが好ましい。原料粉末の粒度分布が広く、大きな粒子が存在すると、焼結性が下がり、緻密な焼結体が得られない可能性がある。そのため、原料粉末の大きな粒子を少なくする必要がある。従って、電解質グリーンシートにあっては前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が最も好ましく、正極グリーンシートにあっては前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が3μm以下であることが好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下が最も好ましい。
【0031】
(10)前記焼成工程において焼成温度が700℃以上であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0032】
(11)前記焼成工程において、700℃以上の焼成温度保持が1時間以内であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0033】
前記焼成温度を700℃以上にすることにより、非晶質の前記酸化物ガラス粉末が、リチウムイオン伝導性の前記結晶を析出することを含めることができる。また、焼成温度を1時間以内であれば、前記酸化物ガラス粉末は、前記正極グリーンシートに含まれる金属酸化物などの電極材料と反応が進むおそれがない。
【0034】
(12)前記積層体を作製する工程において、前記電解質グリーンシート上に前記正極グリーンシートがパターン状に形成されることを特徴とする上記(1)〜(11)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0035】
前記電解質グリーンシート上に前記正極グリーンシートがパターン状に形成されることには、大きな電解質グリーンシート上に、小さく一定形状の前記正極グリーンシートが一定の間隔で整列して形成されることを含む。整列した前記正極グリーンシート間の溝に沿って前記電解質グリーンシートを切り離すことにより、前記積層体を所定の大きさに分割することができる。これを、所定の条件で焼成すれば、そのサイズの電池とすることができる。
【0036】
(13)前記焼成工程後、焼成された前記積層体に負極層を成膜する工程を更に含む上記(1)〜(12)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0037】
前記膜の厚みは、電池の小型軽量化には薄いほうが好ましいが、機械的強度などの面か
ら30μm程度が好ましい。
【0038】
(14)前記負極層の成膜工程は、前記積層体に負極活物質を、圧着、スパッタリング、熱蒸着、駆体塗布から選ばれる少なくとも1つの方法で付着させ、前記負極活物質が付着した前記積層体を更に焼成する工程を含むことを特徴とする上記(13)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0039】
ここで、前記成膜工程には、前記電解質層及び前記正極層からなる前記積層体を作製し、前記積層体のうち前記正極層が作製された反対の電解質層の面に、負活物質からなる負極層を圧着、スパッタリング、熱蒸着、駆体塗布、印刷などから選ばれる少なくとも1つの方法で付着させて前記積層体を作製する方法を含む。また、成膜工程は、圧着、スパッタリング、熱蒸着、駆体塗布、印刷による方法を、組み合わせて行ってもよい。駆体塗布とは、負極活物質を含む駆体を塗布後に乾燥させるなどして成膜させる手段を含むことができる。
【0040】
(15)前記積層体の作製工程は、負極グリーンシート及び前記正極グリーンシートで前記電解質グリーンシートを挟んで積層する工程を含むことを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0041】
(16)前記負極グリーンシートは、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含むことを特徴とする上記(15)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0042】
(17)前記電解質グリーンシート、前記正極グリーンシート、及び前記負極グリーンシートの少なくとも1つに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシート、前記正極グリーンシート、及び前記負極グリーンシートの合計重量に対し30wt%〜80wt%であることを特徴とする上記(15)又は(16)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0043】
(18)前記負極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記負極グリーンシートの重量に対し5wt%〜45wt%であることを特徴とする上記(16)又は(17)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0044】
(19)前記積層体を作製する工程において、前記電解質グリーンシート上に前記負極グリーンシートがパターン状に形成されることを特徴とする上記(1)〜(18)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0045】
前記電解質グリーンシート上に前記負極グリーンシートがパターン状に形成されることには、大きな電解質グリーンシート上に、小さく一定形状の前記負極グリーンシートが一定の間隔で整列して形成されることを含む。この積層体を焼結後に負極の間の溝に沿って切り離すことにより、所定の大きさに分割し、電池のサイズとすることができる。又は整列した前記負極グリーンシート間の溝に沿って前記電解質グリーンシートを切り離すことにより、前記積層体を所定の大きさに分割することができる。これを、所定の条件で焼成すれば、そのサイズの電池とすることができる。このようにすることで効率的な電池生産が可能となる。
【0046】
(20)前記積層体の焼成工程において、析出する前記結晶の平均粒径が1μm以下となるような焼成温度で保持されることを特徴とする上記(1)〜(19)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0047】
ここで、結晶粒子の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)像により測定した結晶像(n=100)の面積基準の粒子径の中央累積値(「メジアン径」d50)をいう。粒子径は得られた結晶像を平行な2直線で挟んだ時に2直線間の距離が最大となる値である。
【0048】
析出する前記結晶の平均粒径が1μm以下となるような焼成温度は、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラスの複数のサンプルを異なる温度条件で熱処理し、その時に析出した結晶の平均粒子径を上記の方法で測定し、平均粒径が1μm以下となった温度条件を採用することができる。
【0049】
前記積層体の焼成工程において保持する焼成温度を制御することにより、前記析出結晶の平均粒径を制御することができる。リチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラスの種類によって保持する焼成温度を設定することを含むことができる。例えば次に述べる酸化物ガラスの場合は、前記焼成温度を700℃〜1000℃の範囲に設定することを含むことができる。
【0050】
(21)前記酸化物ガラス粉末が、酸化物基準のmol%で、
LiO 10〜25%、及び
Al及び/又はGa 0.5〜15%、及び
TiO及び/又はGeO 25〜50%、及び
SiO 0〜15%、及び
26〜40%
の各成分を含有する上記(1)〜(20)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0051】
LiO成分はLiイオンキャリアを提供し、リチウムイオン伝導性をもたらすのに欠かせない成分である。良好な伝導率を得るためには含有量の下限は10mol%であることが好ましく、11mol%であることがより好ましく、12mol%であることが更に好ましい。また、LiO成分が多すぎるとガラスの熱的な安定性が悪くなり易く、ガラスセラミックスの伝導率も低下し易いため、含有量の上限は25mol%であることが好ましく、24mol%であることがより好ましく、23mol%であることが更に好ましい。
【0052】
Al成分及び/又はGa成分は、母ガラスの熱的な安定を高めることができると同時に、Al3+イオン及び/又はGa3+イオンが前記結晶相に固溶し、リチウムイオン伝導率向上にも効果がある。この効果を得るためには、含有量の下限が0.5mol%であることが好ましく、1.0mol%であることがより好ましく、1.5mol%であることが更に好ましい。しかし含有量が15mol%を超えると、かえってガラスの熱的な安定性が悪くなり易くガラスセラミックスの伝導率も低下し易いため、含有量の上限は15mol%とするのが好ましい。尚、より好ましい含有量の上限は14mol%であり、更に好ましい含有量の上限は13mol%である。
【0053】
TiO成分及び/又はGeO成分はガラスの形成に寄与し、また前記結晶相の構成成分でもあり、ガラスにおいても前記結晶においても有用な成分である。ガラス化するため、及び前記の結晶相が主相としてガラスから析出し高い伝導率を得るためには、含有量の下限が25mol%であることが好ましく、26mol%であることがより好ましく、27mol%であることが更に好ましい。また、TiO成分及び/又はGeO成分が多すぎるとガラスの熱的な安定性が悪くなり易く、ガラスセラミックスの伝導率も低下し易いため、含有量の上限は50mol%であることが好ましく、49mol%であることがより好ましく、48mol%であることが更に好ましい。
【0054】
SiO成分は、母ガラスの溶融性及び熱的な安定性を高めることができると同時に、Si4+イオンが前記結晶相に固溶し、リチウムイオン伝導率の向上にも寄与する。この効果を十分に得るためには含有量の下限は0mol%であることが好ましく、1mol%であることがより好ましく、2mol%であることが更に好ましい。しかしその含有量が15mol%を超えると、かえって伝導率が低下し易くなってしまうため、含有量の上限は15mol%とすることが好ましく、14mol%とすることがより好ましく、13mol%とすることが更に好ましい。
【0055】
成分はガラスの形成に必須の成分であり、また前記結晶相の構成成分でもある。含有量が26mol%未満であるとガラス化しにくくなるので、含有量の下限は26mol%であることが好ましく、27mol%であることがより好ましく、28mol%であることが更に好ましい。また含有量が40mol%を越えると前記結晶相がガラスから析出しにくく、所望の特性が得られにくくなるため、含有量の上限は40mol%とすることが好ましく、39mol%とすることがより好ましく、38mol%とすることが更に好ましい。
【0056】
上述の組成の場合、溶融ガラスをキャストして容易にガラスを得ることができ、このガラスを熱処理して得られた上記結晶相をもつガラスセラミックスは高いリチウムイオン伝導性を有する。また、上記の組成以外にも、類似の結晶構造を有するガラスセラミックスであれば、AlをGa、TiOをGeOに一部又は全部置換することも可能である。更に、ガラスセラミックスの製造の際、その融点を下げるか又はガラスの安定性を上げるために、イオン伝導性を大きく悪化させない範囲で他の原料を添加することも可能である。
【0057】
ガラスセラミックスの組成には、LiO以外のNaOやKOなどのアルカリ金属は、出来る限り含まないことが望ましい。これら成分がガラスセラミックス中に存在するとアルカリイオンの混合効果により、Liイオンの伝導を阻害して伝導度を下げ易くなる。また、ガラスセラミックスの組成に硫黄を添加すると、リチウムイオン伝導性は少し向上するが、化学的耐久性や安定性が悪くなるため、出来る限り含有しない方が望ましい。ガラスセラミックスの組成には、環境や人体に対して害を与える可能性のあるPb、As、Cd、Hgなどの成分もできる限り含有しないほうが望ましい。
【0058】
(22)前記結晶は、Li1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)の結晶を含むことを特徴とする上記(1)〜(21)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0059】
前記リチウムイオン伝導性の無機粉体の組成の好ましい態様の1つとしては、後述の組成が例示される。この組成を有するガラスを粉体としたものは、加圧及び/又は焼結することによって、25℃において1×10−5S・cm−1以上にイオン伝導度が高くなるものの1つとして例示される。またこの組成を有するガラスを母ガラスとして熱処理を施し、結晶を析出させたガラスセラミックスは主結晶相がLi1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)のガラスセラミックスとなる。
【0060】
(23)前記積層体の作製工程において、前記積層体の前記正極グリーンシート側及び前記負極グリーンシート側の少なくとも一方に回路基板を積層する工程を含むことを特徴とする上記(15)〜(18)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することができる。
【0061】
(24)上記(1)〜(23)のいずれかに記載の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明において、電解質グリーンシート及び正極グリーンシートを重ねて積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成する工程とを含む。前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの少なくとも一方は、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含む。従って、前記酸化物ガラス粉末の一部は、バインダーとして働くことにより固体電解質層と正極層は剥離しないので、前記積層体を焼き固めることができる。また、前記酸化物ガラス粉末の一部は、焼成により結晶として析出し、イオン伝導性を発現するので、前記積層体は、高いイオン伝導性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池10の断面を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について詳しく説明するが、以下の記載は、本発明の実施例を説明するためになされたもので、本発明は、かかる実施例に限定はされず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。また、同一若しくは同種類の要素については、同一若しくは関連性のある符号を用い、重複する説明は省略する。
【0065】
図1は、本発明の実施例であるリチウムイオン二次電池10の断面を表したものである。リチウムイオン二次電池10は、電解質グリーンシートが焼成された電解質12を、上方及び下方から、それぞれ正極グリーンシートが焼成された正極14及び負極グリーンシートが焼成された負極16挟み、更に、それらは、それぞれ正極集電体22及び負極集電体24によって挟まれた構造をしている。図中の矢印が示すように、電解質12中のリチウムイオン26が移動することで、電池として機能する。
【0066】
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法について以下説明する。非晶質の酸化物ガラス粉末の作製をし、これを用いて電解質グリーンシート及び正極グリーンシートの作製をする。次に各グリーンシートを任意の形状に加工し重ねた積層体を作製する。グリーンシートは各々別個に作製するだけでなく、積層する相手のグリーンシートに直接成形してもよい。また、該積層体に更に負極層(負極グリーンシート)を積層させる。該積層体を焼結させ、積層焼結体の作製をする。更に正極集電体及び負極集電体を取付ける全固体リチウムイオン二次電池の作製をする。
【0067】
リチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末の含有量は乾燥後の電解質グリーンシート及び正極グリーンシートの合計重量に対し、下限値として50wt%が好ましく、53wt%がより好ましく、55wt%が最も好ましい。50wt%未満の場合、電池のイオン伝導性が低くなってしまうからである。また上限値としては75wt%が好ましく、73wt%がより好ましく、70wt%が最も好ましい。75wt%を超える場合、正極活物質の含有割合が少なくなり、体積及び重量当りの電池容量が少なくなってしまうからである。
【0068】
また、負極グリーンシートを積層する場合はリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末の含有量は乾燥後の電解質グリーンシート及び正極グリーンシートの合計重量に対し、下限値として30wt%が好ましく、33wt%がより好ましく、35wt%が最も好ましい。30wt%未満の場合、電池のイオン伝導性が低くなってしまうからである。また上限値としては80wt%が好ましく、78wt%がより好ましく、77wt%が最も好ましい。80wt%を超える場合、負極活物質の含有割合が少なくなり、体積及び重量当りの電池容量が少なくなってしまうからである。
【0069】
固体電解質グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際の焼成によってリチウムイオン伝導性を発現する酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は、焼成後にリチウムイオン伝導性を有する無機物を多く含むことにより高い伝導率が得られるため、また焼成後の空隙を低減させるため、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して50wt%以上とすることが好ましく、55wt%以上とすることがより好ましく、60wt%以上とすることが最も好ましい。乾燥後の固体電解質グリーンシート中の酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は前記と同様の理由から、50wt%であることが好ましく、65wt%であることがより好ましく、70wt%以上であることが最も好ましい。
【0070】
また、固体電解質グリーンシートの酸化物ガラスの含有量の上限値は、シート形状を維持させるため、混合スラリーの量に対して100wt%以下とすることが好ましく、90wt%以下とすることがより好ましく、80wt%以下とすることが最も好ましい。乾燥後のグリーンシート中のリチウム酸化物ガラス粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、100wt%以下であることが好ましく、95wt%以下であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
【0071】
正極グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際の酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は、イオン伝導性を付与させる必要があるため、正極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。乾燥後の正極グリーンシート中の酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は前記と同様の理由から、5wt%以上とすることが好ましく、7wt%以上とすることがより好ましく、10wt%以上とすることが最も好ましい。
【0072】
また、正極グリーンシートの酸化物ガラス粉体の含有量の上限値は、多くなりすぎると含まれる活物質の量が少なく電池容量が低下してしまうため、混合スラリーの量に対して40wt%以下とすることが好ましく、35wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。乾燥後の正極グリーンシート中の酸化物ガラス粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、45wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、35wt%以下とすることが最も好ましい。
【0073】
負極グリーンシートの場合、有機バインダーと混合する際の酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は、イオン伝導性を付与させる必要があるため、負極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。乾燥後の負極グリーンシート中の酸化物ガラス粉体の含有量の下限値は前記と同様の理由から、5wt%以上とすることが好ましく、7wt%以上とすることがより好ましく、10wt%%以上とすることが最も好ましい。
【0074】
また、負極グリーンシートの酸化物ガラス粉体の含有量の上限値は、多くなりすぎると含まれる活物質の量が少なく電池容量が低下してしまうため、シート形状を維持させるため、混合スラリーの量に対して40wt%以下とすることが好ましく、35wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。乾燥後の負極グリーンシート中の酸化物ガラス粉体の含有量の上限値は前記と同様の理由から、45wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、35wt%以下とすることが最も好ましい。
【0075】
正極グリーンシートには活物質の粉体が含まれる。ここで、正極グリーンシートに使用する活物質としては、Liイオンの吸蔵、放出が可能な遷移金属化合物を用いることができ、例えば、マンガン、コバルト、ニッケル、バナジウム、ニオブ、モリブデン、チタン、鉄、リン、アルミニウム、クロムから選ばれる少なくとも1種を含む遷移金属酸化物等を使用することができる。正極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の下限値は、少ないと焼成後に単位体積当りの電池容量が少なくなってしまうため、40wt%以上であることが好ましく、50wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることが最も好ましい。また、正極グリーンシートに含まれる活物質の含有量は、多すぎると可とう性が無くなり取り扱いが難しくなるため、97wt%以下であることが好ましく、94wt%以下であることがより好ましく、90wt%以下であることが最も好ましい。
【0076】
前記の活物質の含有量を有する正極グリーンシートを得るため、また良好に塗布できるスラリーを調製するためには、正極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して正極活物質の量は10wt%以上とすることが好ましく、15wt%以上とすることがより好ましく、20wt%以上とすることが最も好ましい。
【0077】
また、前記活物質の含有量の上限値は、良好に塗布できるスラリーを調製するためには、混合スラリーの量に対して90wt%以下とすることが好ましく、80wt%以下とすることがより好ましく、75wt%以下とすることが最も好ましい。
【0078】
また、正極活物質の電子伝導性が低い場合、電子伝導助剤を添加することにより、電子伝導性を付与することができる。電子伝導助剤としては、微粒子や纎維状の炭素材や金属を用いることができる。用いることができる金属には、チタンやニッケル、クロム、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属や白金、金、ロジウムなどの貴金属を含むことができる。
【0079】
また、負極グリーンシートには上記の材料以外に活物質の粉体が含まれる。負極グリーンシートに使用する活物質としては、アルミニウム、シリコン、スズなどLiイオンの吸蔵、放出が可能な合金、チタンやバナジウム、クロム、ニオブ、シリコンなどの金属酸化物、の材料を含むことができる。
【0080】
負極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の下限値は、少ないと焼成後に単位体積当りの電池容量が少なくなってしまうため、40wt%以上であることが好ましく、50wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることが最も好ましい。
【0081】
また、負極グリーンシートに含まれる活物質の含有量の下限値は、上記の理由と良好に塗布できるスラリーを調製するためには、正極活物質粉体、無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して正極活物質の量は10wt%以上とすることが好ましく、15wt%以上とすることがより好ましく、20wt%以上とすることが最も好ましい。
【0082】
また、前記活物質の含有量の上限値は、バインダーや溶剤を用いてスラリー化する必要があるため、混合スラリーの量に対して90wt%以下とすることが好ましく、80wt%以下とすることがより好ましく、75wt%以下とすることが最も好ましい。
【0083】
また、負極活物質の電子伝導性が低い場合、電子伝導助剤を添加することにより、電子伝導性を付与することができる。電子伝導助剤としては、微粒子や纎維状の炭素材や金属を用いることができる。用いることができる金属には、チタンやニッケル、クロム、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属や白金、金、ロジウムなどの貴金属を含むことができる。
【0084】
[有機バインダー]
有機系のバインダーとしては、プレス成形やラバープレス、押し出し成形、射出成形用の成形助剤として市販されている汎用のバインダーを用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチルメタアクリレート、ビニル系の共重合物等を用いることができる。有機バインダーの含有量の下限値は、シート形状を維持させやすくするため、活物質粉体(正極グリーンシート、負極グリーンシートの場合)無機物粉体、有機バインダー、可塑剤、溶剤などからなる混合スラリーの量に対して1wt%以上とすることが好ましく、3wt%以上とすることがより好ましく、5wt%以上とすることが最も好ましい。
【0085】
前記と同様の理由から、乾燥後のグリーンシート中の含有量の下限値は3wt%以上とすることが好ましく、5wt%以上とすることがより好ましく、7wt%以上とすることが最も好ましい。
【0086】
また、有機バインダーの含有量の上限値は、脱脂後の空隙を低減させやすくするため、混合スラリーの量に対して50wt%以下とすることが好ましく、40wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
【0087】
前記と同様の理由から、乾燥後のグリーンシート中の含有量の上限値は40wt%以下とすることが好ましく、35wt%以下とすることがより好ましく、30wt%以下とすることが最も好ましい。
【0088】
[溶剤]
溶剤は酸化物ガラス粉体を均質に分散する為に用いてもよい。溶剤としてはPVA、IPA、ブタノール、トルエン、キシレン、アセトニトリル、NMPなど公知の材料を使用することができるが、環境の点でアルコール若しくは水が好ましい。更に均質で緻密な固体電解質を得るために、酸化物ガラス粉体、有機バインダーと共に分散剤を適量添加することも可能であり、混合乾燥時の泡抜きを良好にするための界面活性剤などを適量添加することも可能である。
【0089】
[その他]
また、グリーンシートには、Liを含む無機化合物を同時に含有する事も可能である。これは、Liを含む無機化合物が焼結助剤(バインダー)として働き、酸化物ガラスが結晶化する際に粒子同士を結合させる働きを持つ。
【0090】
Liを含む無機化合物としてはLiPO、LiPO、LiI、LiN、LiO、Li、LiF等が挙げられる。特に、これらのLiを含む無機化合物は、リチウムイオン伝導性無機物粉体と混合して焼結させた際に、焼結温度・雰囲気を調整することにより、軟化又は溶融させることが可能である。軟化又は溶融したLiを含む無機化合物は、酸化物ガラス又は結晶が析出したガラスセラミックスの隙間に流れ込み、前記酸化物ガラス又は結晶が析出したガラスセラミックスを強固に結合させることが可能である。また、Liイオン伝導性を有する無機化合物を選択することで、焼成後のリチウムイオン伝導性を向上させる働きがある。
【0091】
グリーンシートに無機粉体として誘電性の高い絶縁性の結晶又はガラスを少量加えると、リチウムイオンの拡散性が上がるため、リチウムイオン伝導性が向上する効果が得られることがある。例えばBaTiO、SrTiO、Nb、LaTiO等が挙げられる。
【0092】
[グリーンシートの成形]
グリーンシートの成形はドクターブレード法、カレンダ法等の公知の方法を用い、シート状に成形する。成形後のグリーンシートの厚みの下限値は、乾燥工程において内部の残溶媒量をできるだけ少なくし表面にクラックを生じさせないようにするため、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が最も好ましい。また、グリーンシートの厚みの下限値は安定したハンドリング性をもたせるため0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が最も好ましい。更に必要に応じて任意の形状に加工してもよい。焼成後の固体電解質、電極等を所望の厚みとするために、同種のグリーンシートを積層してもよい。また焼成後の固体電解質の緻密性をより向上させる為に、グリーンシートをロールプレスや一軸、等方加圧等により加圧しても良い。
【0093】
積層後のグリーンシートの厚みの上限値は焼成時間の短縮のため800μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましく、400μm以下が最も好ましい。また、グリーンシートの厚みの下限値はうねり度低減のため0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上が最も好ましい。
【0094】
ここで得られた固体電解質グリーンシートと、更に正極グリーンシート及び負極グリーンシートの少なくとも1つを更に積層することにより積層体を作製する。また、上述した様に、積層する相手のグリーンシート上、又はセラミックス等に直接成形しても良い。
【実施例1】
【0095】
以上述べてきたような工程を適用し、以下に具体的に述べるように電池を作製した。
【0096】
[非晶質の酸化物ガラス粉末の作製]
原料として日本化学工業株式会社製のHPO、Al(PO、LiCO、株式会社ニッチツ製のSiO、堺化学工業株式会社製のTiOを使用した。これらを酸化物換算のmol%でPが35.0%、Alが7.5%、LiOが15.0%、TiOが38.0%、SiOが4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃の温度で撹拌しながら3時間加熱・熔解してガラス融液を得た。その後、ガラス融液をポットに取り付けた白金製のパイプから加熱しながら室温の流水中に滴下させることにより急冷し、酸化物ガラスを得た。
【0097】
このガラスを1000℃の電気炉にて結晶化を行い、リチウムイオン伝導度の測定を行ったところ、室温にて1.3×10-3S・cm-1であった。リチウムイオン伝導度の測定にはソーラートロン社製のインピーダンスアナライザーSI−1260を用いて、交流二端子法による複素インピーダンス測定により算出した。また、析出した結晶相はフィリップス社製の粉末X線回折測定装置を用いて測定し、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。
【0098】
酸化物ガラスを栗本鐵工所製のジェットミルにて粉砕後、エタノールを溶媒としたボールミルに入れ、湿式粉砕を行い、平均粒径0.7μm、最大粒径2μm及び平均粒径0.5μm、最大粒径1μmの2種類の酸化物ガラス粉末を得た。粒度測定には、ベックマン・コールター製のレーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置LS100を用いて測定した。分散媒には蒸留水を用いた。
【0099】
[電解質グリーンシートの作製]
平均粒径0.5μmの酸化物ガラスを、アクリル系のバインダー、分散剤、消泡剤とともに水を溶剤として、分散・混合して電解質スラリーを調製した。スラリーは減圧して泡抜きをした後、ドクターブレードを用いて成形、乾燥させて厚み30μmの電解質グリーンシートを作製した。アクリル系のバインダーは、10wt%、消泡剤と分散剤はそれぞれ0.2〜0.3wt%であり、残りは酸化物ガラスであった。電解質グリーンシート中に含有する前記酸化物ガラスの含有量は89.5wt%であった。
【0100】
[正極グリーンシートの作製]
正極活物質として、合成したLiNiOを用いた。平均粒径5μmのLiNiO粉末と平均粒径0.5μmの酸化物ガラスを75:25wt%の割合で秤量し、アクリル系のバインダー、分散剤とともに水を溶剤として、分散・混合して正極スラリーを調製した。スラリーは減圧して泡抜きをした後、ドクターブレードを用いて成形、乾燥させて厚み30μmの正極グリーンシートを作製した。バインダーと分散剤の含有量は10wt%であり、正極グリーンシート中の酸化物ガラスの含有率は、23wt%であった。
【0101】
[正極・電解質積層体の作製]
前記で作製した正極グリーンシート1枚と電解質グリーンシート2枚を重ね合わせ、加熱したロールプレスにて貼り合わせた。貼り合わせた積層体を、神戸製鋼製のCIP(冷間等方圧加圧)を用いて室温にてプレスし、緻密化させた。作製した積層体を、京セラ製のアルミナセッターに挟み、電気炉内にて400℃に加熱し、積層体内のバインダーや分散剤などの有機物を除去した。その後、900℃に急昇温を行い、5分間保持し、冷却することにより、正極と電解質の積層焼結体を作製した。焼成前の上記積層体中の酸化物ガラスの含有量は、積層体の合計重量に対して56wt%であった。また焼成後の酸化物ガラスが結晶化したガラスセラミックの含有量は、焼成した積層体の合計重量に対して62wt%であった。また、焼成後の酸化物ガラスが結晶化した粒子の粒径は、平均で0.8μmであった。
【0102】
[負極の作製]
前記で作製した積層体の電解質側に、日本化学工業株式会社製のLiPOをターゲットとして、窒素雰囲気下のRF−マグネトロンスパッタ(トッキ株式会社製)により、固体電解質上にLiPO3.8N0.2の薄膜を成膜した。この薄膜上に厚み0.1mmのLi金属(本荘エナジーシステムズ製)を貼り合わせることにより、正極、電解質、負極の積層体を作製した。
【0103】
[全固体リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した積層体の正極側に、アルミニウムペーストを塗布後、乾燥・焼成することにより、正極集電体を取り付けた。正極側にアルミニウム箔を正極リードとして接続し、負極側に胴箔を負極リードとして接続し、内側を絶縁コートしたアルミ製のラミネートフィルムに封入し、リチウムイオン電池を作製した。作製した電池は、平均電圧3.6Vで放電し、充放電可能な電池であった。
【実施例2】
【0104】
[正極グリーンシートの作製]
正極活物質として、日本化学工業株式会社製のLiCoOを用いた。平均粒径6μmのLiCoO粉末と平均粒径0.7μmの酸化物ガラスを70:30wt%の割合で秤量し、アクリル系のバインダー、分散剤とともに水を溶剤として、分散・混合して正極スラリーを調製した。スラリーは減圧して泡抜きをした後、連続式のロールコーターを用いて成形、乾燥させて厚み20μmの正極グリーンシートを作製した。バインダーと分散剤の含有量は10wt%であり、正極グリーンシート中の酸化物ガラスの含有率は、27wt%であった。
【0105】
[電解質グリーンシートの作製]
平均粒径0.7μmの酸化物ガラスを、アクリル系のバインダー、分散剤、消泡剤とともに水を溶剤として、分散・混合して電解質スラリーを調製した。スラリーは減圧して泡抜きをした後、ドクターブレードを用いて成形、乾燥させて厚み30μmの電解質グリーンシートを作製した。アクリル系のバインダーは、10wt%、消泡剤と分散剤はそれぞれ0.2〜0.3wt%であり、残りは酸化物ガラスであった。電解質グリーンシート中に含有する前記酸化物ガラスの含有量は89.5wt%であった。
【0106】
[負極グリーンシートの作製]
負極活物質として、石原産業製のLiTi12を500℃にてアニールを行ってから用いた。平均粒径5μmのLiTi12粉末と平均粒径0.5μmの酸化物ガラスを80:20wt%の割合で秤量し、アクリル系のバインダー、及び分散剤とともに水を溶剤として、分散・混合して負極スラリーを調製した。スラリーは減圧して泡抜きをした後、連続式のロールコーターを用いて成形、乾燥させて厚み20μmの負極グリーンシートを作製した。バインダーと分散剤の含有量は10wt%であり、負極グリーンシート中の酸化物ガラスの含有率は、18wt%であった。
【0107】
[積層焼結体の作製]
上記で作製した、2枚の電解質グリーンシートの両側を、各1枚の正極グリーンシート及び負極グリーンシートで挟み込んで積層させ、加熱したロールプレスにより押圧して貼り合わせた。貼り合わせた積層体を、CIP(冷間等方圧加圧)を用いて室温にてプレスし、緻密化させた。作製した積層体を、正極及び負極側からジルコニア製のセッターで挟み、電気炉内にて400℃に加熱し、積層体内のバインダーや分散剤などの有機物を除去した。その後、850℃に急昇温を行い、7分間保持し、その後すぐに冷却することにより、正極、電解質、及び負極のグリーンシートを組み合わせた積層焼結体を作製した。焼成前の上記積層体中の酸化物ガラスの含有量は、積層体の合計重量に対して51wt%であった。また焼成後の酸化物ガラスが結晶化したガラスセラミックの含有量は、焼成した積層体の合計重量に対して57wt%であった。また、焼成後の酸化物ガラスが結晶化した粒子の粒径は、平均で0.6μmであった。
【0108】
[全固体リチウムイオン二次電池の作製]
上記で作製した積層体の正極側に、アルミニウムペーストを塗布後、乾燥・焼成することにより、正極集電体を取り付けた。負極側に、銅ペーストを印刷後、乾燥・焼き付けることにより負極集電体を取付けた。正極側にアルミニウム箔を正極リードとして接続し、負極側に銅箔を負極リードとして接続し、内側を絶縁コートしたアルミ製のラミネートフィルムに封入し、リチウムイオン電池を作製した。作製した電池は、平均電圧2.5Vで放電し、充放電可能な電池であった。
【0109】
[比較例1]
実施例2の正極、負極グリーンシートに、酸化物ガラスを添加しないこと以外は実施例2と同じ手順にて正極、電解質、負極の積層体を作製した。実施例2と同じ条件で焼成したところ、電解質と負極のグリーンシートが剥離しており、それ以降の電池作製ができなかった。
【0110】
以上のように、実施例1及び2では、電解質及び正極のグリーンシート(実施例2では、更に負極のグリーンシート)に、リチウムイオン伝導性の結晶が析出する酸化物ガラスを含めたので、焼成させてイオン伝導性を発現させることにより、積層体は高いイオン伝導性を得ることができ、電池を作製することができた。また、正極グリーンシート及び負極グリーンシートに酸化物ガラスを含めて焼成したので、実施例2では、酸化物ガラスがバインダーとして作用することにより、積層体を焼結でき電池を作製できたのに対して、含めなかった比較例1では剥離して焼結できなかった。
【符号の説明】
【0111】
10 リチウムイオン二次電池
12 電解質
14 正極
16 負極
22 正極集電体
24 負極集電体
26 リチウムイオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質グリーンシート及び正極グリーンシートを重ねて積層体を作製する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を含むリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの少なくとも一方は、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記結晶は、25℃において10−5Scm−1以上のイオン伝導度を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシート及び前記正極グリーンシートの合計重量に対し50wt%〜75wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシートの重量に対し50wt%〜100wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記正極グリーンシートの重量に対し5wt%〜45wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が7μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記電解質グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の平均粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項1〜4、又は6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の最大粒径が3μm以下であることを特徴とする請求項1〜3、又は5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記正極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜3、5、又は8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記焼成工程において焼成温度が700℃以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記焼成工程において、700℃以上の焼成温度保持が1時間以内であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記積層体を作製する工程において、前記電解質グリーンシート上に前記正極グリーンシートがパターン状に形成されることを特徴とする請求項1〜11に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記焼成工程後、焼成された前記積層体に負極層を成膜する工程を更に含む請求項1〜12のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記負極層の成膜工程は、前記積層体に負極活物質を、圧着、スパッタリング、熱蒸着、駆体塗布から選ばれる少なくとも1つの方法で付着させ、前記負極活物質が付着した前記積層体を更に焼成する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記積層体の作製工程は、負極グリーンシート及び前記正極グリーンシートで前記電解質グリーンシートを挟んで積層する工程を含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項16】
前記負極グリーンシートは、前記焼成工程においてリチウムイオン伝導性の結晶が析出する非晶質の酸化物ガラス粉末を含むことを特徴とする請求項15に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項17】
前記電解質グリーンシート、前記正極グリーンシート、及び前記負極グリーンシートの少なくとも1つに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記電解質グリーンシート、前記正極グリーンシート、及び前記負極グリーンシートの合計重量に対し30wt%〜80wt%であることを特徴とする請求項15又は16に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項18】
前記負極グリーンシートに含まれる前記酸化物ガラス粉末の含有量は、前記負極グリーンシートの重量に対し5wt%〜45wt%であることを特徴とする請求項16又は17に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項19】
前記積層体を作製する工程において、前記電解質グリーンシート上に前記負極グリーンシートがパターン状に形成されることを特徴とする請求項1〜18に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項20】
前記積層体の焼成工程において、析出する前記結晶の平均粒径が1μm以下となるような焼成温度で保持されることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項21】
前記酸化物ガラス粉末が、酸化物基準のmol%で、
LiO 10〜25%、及び
Al及び/又はGa 0.5〜15%、及び
TiO及び/又はGeO 25〜50%、及び
SiO 0〜15%、及び
26〜40%
の各成分を含有する請求項1〜20のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項22】
前記結晶は、Li1+x+z(Ge1−yTi2−xSi3−z12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)の結晶を含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項23】
前記積層体の作製工程において、前記積層体の前記正極グリーンシート側及び前記負極グリーンシート側の少なくとも一方に回路基板を積層する工程を含むことを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項24】
前記請求項1〜23のいずれかに記載の製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2009−206090(P2009−206090A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18851(P2009−18851)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】