説明

リパーゼ阻害剤

【課題】 リパーゼ作用の活性阻害機能を有し、連用しても副作用の恐れがない、効果的で安全性の高いリパーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】 サボンソウ又はウコギを含有するリパーゼ阻害剤。本発明の植物は、リパーゼ活性を強力に阻害することから、肥満や高脂血症の抑制や予防に寄与し得ると共に、細菌性リパーゼに起因するニキビや皮膚炎、ふけなどの皮膚疾患の予防、治療に有効である。本発明のリパーゼ阻害剤は安全性が高く、抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤として有用であり、また、食品、医薬および化粧料として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリパーゼ阻害剤に関する。更に詳しくは、生体内での脂質の消化吸収をにない肥満症、高脂血症の鍵を握る膵リパーゼを有効に阻害して肥満や高脂血症の抑制や予防に寄与し得ると共に、細菌性リパーゼに起因するニキビ、皮膚炎、ふけなどの皮膚疾患の予防、治療に有効な安全性の高いリパーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
からだの脂肪組織及び種々の臓器に異常な脂肪沈着を来し、その結果起こる肥満、あるいは血清脂質が異常に高い症状を示す高脂血症は、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの各種生活習慣病の発症に密接に関与していると考えられている。肥満は、体質的因子、食餌性因子、精神的因子、中枢性因子、代謝性因子、運動不足などが要因となり、結果的にカロリー摂取が消費カロリーを上回り、脂肪が蓄積して起こると言われている。食餌中の脂質は、膵臓のリパーゼで分解されて小腸から吸収される。そこで脂質の吸収を抑制するべく、リパーゼ作用の活性阻害機能を有するリパーゼ阻害剤を用い、肥満を防止したり、あるいは高脂血症状を抑制することが可能であると考えられている。
【0003】
この様な観点から、特に日常的に摂取しうる種々の天然物由来の成分で、強いリパーゼ阻害活性を有する成分、すなわち脂質吸収抑制活性を有する天然成分の探索が精力的に行われている。これまでに、ホスファチジルコリン(非特許文献1)、大豆蛋白(非特許文献2;非特許文献3)、タンニン(非特許文献4)、シャクヤク、オオレン、オオバク、ボタンピ、ゲンノショウコウ、チャ、クジンなどの生薬の溶媒抽出エキス(特許文献1)、ピーマン、かぼちゃ、しめじ、まいたけ、ふじき、緑茶、紅茶及びウーロン茶の水抽出物(特許文献2)、ドッカツ、リョウキョウ、ビンロウシ、ヨバイヒ、ケツメイシの抽出物(特許文献3)などがリパーゼ阻害活性を有するものとして報告されているが、物質自身の性状や効果の面で未だ十分ではない。さらに、このような探索においては、原料中の含有量が多く、工業的生産に適した物質が期待されているが、これまでにこのような条件を十分に満たす物質は未だ見出されていない。
【0004】
また、人体における細菌性リパーゼには、皮膚表層に常在する微生物(プロピオニバクテリウム アクネス:Propionibacterium acnes、ピティロスポラム オバール:Pityrosporum ovale、マイクロコッカス属:Micrococcus sp.など)が産生するリパーゼがあり、これらのリパーゼが皮脂中に含まれるトリグリセライドを分解し遊離脂肪酸を産生する。遊離脂肪酸は、皮膚に対して刺激性の炎症反応を起こし、ニキビ、皮膚炎、ふけなどの皮膚疾患の要因の一つとして考えられている。特に、ニキビの原因とされるプロピオニバクテリウム アクネスの菌数と産生する遊離脂肪酸量には相関関係があり、毛包壁に対して、刺激性の炎症反応とそれに伴う過角化、コメドの形成を引き起こすと考えられている(非特許文献5)。
【0005】
しかし、細菌性リパーゼを阻害して疾患を抑制または予防する薬剤の開発は未だあまり進められておらず、2-Pyridylmethyl-2-(P-(2-methylpropyl)-phenyl)propionate(慣用名:イブプロフェンピコノール)(非特許文献6)、テトラサイクリンおよび金属塩(特許文献4)や植物抽出物としてビワ葉抽出物(特許文献5)やコラ・デ・カバロ抽出物(特許文献6)などが報告されているが、他の配合成分との関係からリパーゼ阻害作用を発揮できなかったり、局所適用における安全性、有効性の点で必ずしも満足し得るものではない。
【特許文献1】特開昭64-90131
【特許文献2】特開平3-219872
【特許文献3】特開平5-255100
【特許文献4】特開昭59-186919
【特許文献5】特開平10-265364
【特許文献4】特開平11-228338
【非特許文献1】K.Tanigutiら、Bull.Facul. Agric. Meiji Univ. 73巻、9〜26頁(1986年)
【非特許文献2】K.Satouchiら、Agric. Biol. Chem. 38巻、97〜101頁(1974年)
【非特許文献3】K.Satouchiら、Agric. Biol. Chem. 40巻、889〜897頁(1976年)
【非特許文献4】S.Ahimuraら、日食工、41巻、561〜564頁(1994年)
【非特許文献5】McGinley, K, J.ら、J. Clin. Microbiol. 12巻、672〜675頁(1980年)
【非特許文献6】西日皮膚、47巻、5号、888〜898、899〜908頁(1985年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、リパーゼ作用の活性阻害機能を有し、連用しても副作用の恐れがない、効果的で安全性の高いリパーゼ阻害剤を提供することである。本発明の他の目的は、肥満を防止したり、あるいは高脂血症状を抑制し、又はプロピオニバクテリウム アクネスなどの皮膚常在菌が産生するリパーゼを阻害することによりニキビなどの皮膚疾患を予防あるいは治療に有効であり、しかも連用しても副作用の恐れがない、効果的で安全性の高い抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤を提供することにある。本発明の他の目的は、これらのリパーゼ阻害剤、抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤を含有する食品、医薬および化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ある特定の種の植物に強いリパーゼ阻害活性を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、紅景天(Rhodiola sacra)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、サボンソウ(Saponalia officinalis)、ボルド(Peumus boldus)、パスチャカ(Granium dielsianum Knuth)、トルメンチラ(Potentilla tormentilla Scbrank)、エルカンプリ(Gentianella alborocea)、ウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)、チュチュウアシ(Maytenus laevis)、キャッツクロー(Uncaria tomeotosa)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)、山椒(Zanthoxylum piperitum)、センダングサ(Bidens biternate)、ウコギ(Acanthopanax sieboldianus)、ストロベリー(Fragaria ananassa)、モージェ(Schinus molle)、バラ(Rosa hybrida)、柿(Diospyros kaki Thunb.)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、杜仲(Eucommia ulmoides)及び白茶(White tea)から成る植物の群より選ばれる少なくとも1種を含有するリパーゼ阻害剤及びそれらを含有する脂質吸収阻害剤、抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤、さらには、それらを含有する食品、医薬及び化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物は、リパーゼ活性を強力に阻害することから、肥満や高脂血症の抑制や予防に寄与し得ると共に、細菌性リパーゼに起因するニキビや皮膚炎、ふけなどの皮膚疾患の予防、治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用される植物は、紅景天(Rhodiola sacra)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、サボンソウ(Saponalia officinalis)、ボルド(Peumus boldus)、パスチャカ(Geranium ayabacense Knuth)、トルメンチラ(Potentilla tormentilla Scbrank)、エルカンプリ(Gentianella alborocea)、ウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)、チュチュウアシ(Maytenus laevis)、キャッツクロー(Uncaria tomeotosa)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)、山椒(Zanthoxylum piperitum)、センダングサ(Bidens biternate)、ウコギ(Acanthopanax sieboldianus)、ストロベリー(Fragaria ananassa)、モージェ(Schinus molle)、バラ(Rosa hybrida)、柿(Diospyros kaki Thunb.)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、杜仲(Eucommia ulmoides)及び白茶(White tea)が使用可能である。これらの植物は、通常食用として供されているもので構わない。
【0010】
本発明における紅景天(Rhodiola sacra.)とは、ベンケイソウ科の植物であり、その地下部は漢薬の基源植物の一つとして止血、清熱などに用いられており、近年では、学習や記憶力を高める作用があるとして注目されているものである。
【0011】
本発明におけるイワベンケイ(Rhodiola rosea)とは、ベンケイソウ科の植物であり、Golden Rootとも呼ばれ、東シベリアに生息する天然のハーブで、細胞レベルに働きかけ、ストレスによる副作用を抑え、体の機能を正常化させ、免疫力を高める作用があるとされてきたものである。
【0012】
本発明におけるサボンソウ(Saponalia officinalis)とは、なでしこ科の植物で薬用、花壇用に栽培される多年草植物であり、生の葉および乾燥した根茎を利尿、緩下、胆汁分泌促進、去痰などの目的で使用されている植物である。
【0013】
本発明におけるボルド(Peumus boldus)とは、もにみあ科の常緑高木で、薪炭材、器具材、薬用などに栽培されており、葉は伝承的に利尿、消炎、防腐、強壮効果があるとして利用されているものである。
【0014】
本発明におけるパスチャカ(Geranium ayabacense Knuth)とは、フウロソウ科の多年草植物で、カハマルカ標高4千メートルに生息し、ペルーでは血糖降下、糖尿病治療補助、膵臓機能強化として、民間的に用いられているものである。
【0015】
本発明におけるトルメンチラ(Potentilla tormentilla)とは、バラ科の植物であり、根茎を刻んで洗い乾燥させたものは、急性や神経性の下痢に対する下痢止めとして、また、咽頭炎、喉頭炎、歯茎などの出血、口内潰瘍などの症状の改善などに、また、外用として痔疾などに使用されているものである。
【0016】
本発明におけるエルカンプリ(Gentianella alborocea)とは、アンデスの標高4千メートル付近に生息する多年草植物であり、南米・ペルーにおいて伝承的に健胃薬、慢性胃炎などに用いられているものである。
【0017】
本発明におけるウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)とは、イソマツ科の双子葉植物の小低木状の多年草で、伊豆七島、屋久島以南から台湾、小笠原に分布し、また、このウコンイソマツは台湾では海芙蓉とも呼ばれているものである。
【0018】
本発明におけるチュチュウアシ(Maytenus laevis)とは、ニシキギ科の双子葉植物で、ペルー、コロンビア、エクアドルなどのアマゾン地域に生息し、樹皮は伝承的に赤痢、痔、炎症、リウマチ、関節炎、免疫系刺激などの治療に用いられているものである。
【0019】
本発明におけるキャッツクロー(Uncaria tomeotosa)とは、ペルー原産のアカネ科の双子葉植物でウーニャ・デ・カトととも呼ばれ、樹皮及び葉にリウマチ改善、抗炎症、抗アレルギー、免疫力改善・増強作用があるとして、日本では健康食品として利用されているものである。
【0020】
本発明におけるシナモン(Cinnamomum zeylanicum)とは、クスノキ科の常緑樹で、ニッケイまたは桂皮とも呼ばれ、一般的にクッキー、パン、ケーキなどの香辛料として使用されているものであり、古くから健胃、駆風、発汗、解熱剤として利用されてきたものである。
【0021】
本発明における山椒(Zanthoxylum piperitum)とは、みかん科の落葉低木で、果実を乾燥させたものは香辛料として、また、健胃、整腸、利尿、駆風薬として食欲不振、消化不良、胃下垂、回虫症などに用いられているものである。
【0022】
本発明におけるセンダングサ(Bidens biternate)とは、一般的にマリーゴールド、中国では鬼針草と呼ばれているキク科の双子葉植物であり、中国では全草は解熱、解毒、下痢、肝炎、腎炎、消化器疾患などに、若芽は食用として用いられているものである。
【0023】
本発明におけるウコギ(Acanthopanax sieboldianus)とは、うこぎ科の落葉低木で、漢方では葉および根皮を乾燥させたものを、滋養強壮、鎮痛剤として腹痛、疲労回復、冷え症などに用いられているものである。
【0024】
本発明におけるストロベリー(Fragaria ananassa)とは、バラ科の双子葉植物で、果実を生食として、また、加工品としてジャムやジュース、シロップとして利用しているものである。
【0025】
本発明におけるモージェ(Schinus molle)とは、ペルー原産のウルシ科の高木で、アンデスの低地や半乾燥地帯に生息し、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息、リウマチの治療に、また、乾燥させた果実は香辛料として利用されているものである。
【0026】
本発明におけるバラ(Rosa hybrida)とは、バラ科の双子葉植物で、一般に園芸・鑑賞用に栽培されており、香料の原料として、近年では抗アレルギー素材として健康食品に利用されているものである。
【0027】
本発明における柿(Diospyros kaki Thunb.)とは、かきのき科の落葉高木であり、果実は食用として、葉は高血圧症、動脈硬化症のほか、しもやけ、かぶれ、外傷による出血などに用いられてきたものである。
【0028】
本発明におけるセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)とは、金絲桃科の多年草植物で、セントジョーンズ・ワートとも呼ばれ、一般的に欧米では抗鬱薬として、日本では抗鬱作用を目的とした健康食品として広範に利用されているものである。
【0029】
本発明における杜仲(Eucommia ulmoides)とは、とちゅう科の落葉高木であり、樹皮には血圧降下作用があり、また、強壮、強精、鎮痛薬として、精力の衰えたもの、腰痛、足膝軟弱、胎動流産に応用されるほか、葉は杜仲茶として飲用されているものである。
【0030】
本発明における白茶(White tea)とは、茶を数%発酵させた発酵茶のことであり、芽に白毛の多い特殊な品種からつくられ、白牡丹などの名称で知られている、福建省などで飲用に供されている茶のことである。
【0031】
本発明における植物は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部および根、塊茎などの地下部、種子、果実、樹脂など全ての部位が使用可能である。
【0032】
本発明における植物は、植物自身を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、それら自身を圧搾抽出することにより得られる搾汁、水あるいはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分など、全てを含む。これらは単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。
【0033】
例えば、イワベンケイ(Rhodiola rosea)の植物体乾燥物にエタノール溶媒を加え、室温で一晩浸漬することにより得た抽出液を、そのままリパーゼ阻害剤及びそれらを含有する脂質吸収阻害剤、抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤として使用しても良いし、各種クロマトグラフィーを組み合わせて、精製したものを使用しても良い。
【0034】
これらの特定の植物の乾燥物または抽出物に、リパーゼ阻害活性を有することは、従来から全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。
【0035】
本発明による植物は、卓越したリパーゼ阻害活性を有しており、脂質吸収阻害剤、抗肥満剤、高脂血症改善剤、ニキビ用皮膚改善剤及びこれらを含有する食品、医薬及び化粧料として使用可能である。
【0036】
本発明のリパーゼ阻害剤、脂質吸収阻害剤、抗肥満剤、高脂血症改善剤及びこれらを含有する医薬の投与方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0037】
本発明の食品とは、前記の植物をそのまま、又は種々の栄養成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめて、高脂血症あるいは肥満の治療及び予防に有用な保健用食品又は食品素材として食されるものである。例えば、前記の植物に、上述した適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0038】
本発明の植物の有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の阻害活性の強さなどにより、適宜選択・決定されるが、例えば、経口投与の場合、一般に1日当たり0.001〜1000mg/kg体重程度、トルメンチラの熱水抽出物の場合、1日当たり5〜300mg/kg体重程度とされ、1日に数回に分けて投与してもよい。
【0039】
また、本発明の植物を含有せしめて、リパーゼ阻害剤含有化粧料または化粧料素材として使用する場合、例えば、ウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)の乾燥物あるいは抽出物を小麦胚芽油あるいはオリーブ油に添加してリパーゼ阻害剤含有組成物とし、これを化粧料素材として使用することができる。本発明の植物の乾燥物または抽出物の添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、小麦胚芽油あるいはオリーブ油の重量に対して0.1重量%以上60重量%以下、好ましくは0.5重量%以上50重量%以下が適当である。
また、上記のリパーゼ阻害剤含有組成物を直接、化粧料成分として使用し、リパーゼ阻害作用を有する化粧料を製造することができる。
【0040】
本発明の方法で得られるリパーゼ阻害剤含有組成物を含有せしめた化粧料としては特に限定されるものではないが、機能面からは、例えば乳液、化粧液、フェイスクリーム、ハンドクリーム、ローション、エッセンス、シャンプー、リンスなどが好ましい。
【0041】
このような化粧料は、常法に従って製造することができる。化粧料における本発明の植物の乾燥物または抽出物の添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、化粧料全重量の0.01重量%以上20重量%以下程度が適当である。
【0042】
本発明の植物は、天然物であるためその毒性は低く、例えばトルメンチラ(Potentilla tormentilla)の熱水抽出物を毎日1000mg/kg、100日間という長期間に亘ってラットに経口投与しても、死亡例は認められず、体重変化も観察されなかった。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
製造例1
[植物の抽出]
紅景天(Rhodiola sacra)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、サボンソウ(Saponalia officinalis)、ボルド(Peumus boldus)、パスチャカ(Geranium ayabacense Knuth)、トルメンチラ(Potentilla tormentilla Scbrank)、エルカンプリ(Gentianella alborocea)、ウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)、チュチュウアシ(Maytenus laevis)、キャッツクロー(Uncaria tomeotosa)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)、山椒(Zanthoxylum piperitum)、センダングサ(Bidens biternate)、ウコギ(Acanthopanax sieboldianus)、ストロベリー(Fragaria ananassa)、モージェ(Schinus molle)、バラ(Rosa hybrida)、柿(Diospyros kaki Thunb.)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、杜仲(Eucommia ulmoides)、白茶(White tea)各1Kgに蒸留水3Lを加え、100℃、1500P.S.I.で20分間、煮沸した後、凍結乾燥することにより、各熱水抽出乾燥物1400、1860、1330、1580、990、1040、2514、2320、4950、3210、2354、782、1423、2653、4521、2562、3265、1473、1023、2105、2538mgを得た。
【0045】
薬理試験1
[リパーゼ阻害活性試験]
{基質(10%大豆油/アラビアゴムエマルジョン)の調製}
アラビアゴム1gを約5mlの蒸留水に溶かし、5Lの蒸留水で一晩透析する。その後、透析チューブからアラビアゴムを20mlメートルグラスに出し、共洗いをしながら、20mlにする。また、大豆油1gを50mlビーカーに秤り取る。これに、前述の5%アラビアゴム10mlを加え、スターラーでよく攪拌した。
【0046】
{銅混合液の調製}
6.45% 硝酸銅(II)三水和物100ml、1M トリエタノールアミン90ml、1N 酢酸 10mlを加えて、銅混合液200mlを調製した。
【0047】
{発色試薬(0.1%DEDC)の調製}
N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物10mgを、10mlのブタノールに溶解させた。
【0048】
{阻害活性試験}
リパーゼ阻害活性の測定は、K.Satouchiらの方法(Agric. Biol. Chem. 40巻、889〜897頁(1976年))に従い、Duncombe法により測定した。
すなわち、0.5MTris-HCl (pH7.4)緩衝液50μlに、基質として10%大豆油エマルジョン50μl、5mM 酢酸カルシウム100μl、製造例で得られた植物抽出乾燥物の各種濃度(1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001mg/ml)の水溶液100μlを加えた後、蒸留水を加えて450μlとする。これを37℃、65r.p.m.で5分間、プレインキュベーションした後、リパーゼ(シグマ社製、ウシ膵臓由来)(1mg/ml)を50μl加えて、37℃、125r.p.m.で20分間、インキュベーションした。その後、クロロホルム3.5mlを加え上層を除去し、残りの下層に銅混合液1.5mlを加え、コンセントレーターで15分間攪拌した後、上層を除去する。残りの下層に発色試薬(0.1%DEDC)を0.5ml加えた後、遊離した脂肪酸の量を440nmでの吸光度を測定することにより、リパーゼ阻害活性を測定し、IC50値(酵素活性を50%阻害する濃度(μg/0.5ml))で表した結果を表1に示した。
また、比較例として、すでにリパーゼ阻害活性を有すると報告されているケツメイシ、コラ・デ・カバロについても同様の試験を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0049】
表1からもわかるように、本発明の紅景天(Rhodiola sacra)、イワベンケイ(Rhodiola rosea)、サボンソウ(Saponalia officinalis)、ボルド(Peumus boldus)、パスチャカ(Geranium ayabacense Knuth)、トルメンチラ(Potentilla tormentilla Scbrank)、エルカンプリ(Gentianella alborocea)、ウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)、チュチュウアシ(Maytenus laevis)、キャッツクロー(Uncaria tomeotosa)、シナモン(Cinnamomum zeylanicum)、山椒(Zanthoxylum piperitum)、センダングサ(Bidens biternate)、ウコギ(Acanthopanax sieboldianus)、ストロベリー(Fragaria ananassa)、モージェ(Schinus molle)、バラ(Rosa hybrida)、柿(Diospyros kaki Thunb.)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、杜仲(Eucommia ulmoides)、白茶(White tea)の抽出液に高いリパーゼ阻害活性を有することがわかる。
【0050】
【表1】

【0051】
処方例1
[錠剤の製造]
製造例で得られたウコンイソマツ(Limonium wrigbitii O. Kuntze)の熱水抽出を用いて、常法に従って、下記の組成の錠剤を製造した。
(組 成) (配合:重量%)
ウコンイソマツ抽出物 24
乳糖 63
コーンスターチ 12
グァーガム 1
【0052】
処方例2
[ジュースの製造]
製造例で得られた紅景天(Rhodiola sacra)の熱水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成のジュースを製造した。
(組 成) (配合:重量%)
冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
果糖ブドウ糖液糖 11.0
クエン酸 0.2
L-アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
紅景天抽出物 0.2
水 83.28
【0053】
処方例3
[フェイスクリームの製造]
製造例で得られたバラ(Rosa hybrida)の熱水抽出物を用いて、常法に従って、下記の組成のフェイスクリームを製造した。
(組 成) (配合:重量%)
イソステアリン酸イソプロピル 8.0
ホホバ油 6.0
セタノール 8.0
ステアリルアルコール 2.0
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.5
プロピレングリコール 6.0
ソルビトール 1.0
パラベン 0.4
バラ抽出物 0.5
ビタミンE 0.5
香料 0.1
精製水 66.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サボンソウ及び/又はウコギを含有するリパーゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1記載の植物を少なくとも1種含有する脂質吸収阻害剤。
【請求項3】
請求項1記載の植物を少なくとも1種含有する抗肥満剤。
【請求項4】
請求項1記載の植物を少なくとも1種含有する高脂血症改善剤。
【請求項5】
請求項1記載の植物を少なくとも1種含有するニキビ用皮膚疾患改善剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの剤を含有する食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの剤を含有する医薬。
【請求項8】
請求項1又は5の剤を含有する化粧料。

【公開番号】特開2006−348054(P2006−348054A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256877(P2006−256877)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【分割の表示】特願2000−381248(P2000−381248)の分割
【原出願日】平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】