説明

リミッター回路

【課題】接続される低雑音増幅器の破壊を防止すると共に、この増幅器の飽和の範囲を狭くし正常動作の範囲を広くすることが可能なリミッター回路を提供すること。
【解決手段】一例のリミッター回路は、高周波入力端子に接続され、一定の飽和入力電力範囲を有する低雑音増幅器の入力端子と接地との間に接続されたPINダイオードと、前記低雑音増幅器の入力端子に一端を接続され他端は接地される、所定周波数の1/4波長の長さの伝送線路と、前記低雑音増幅器の入力端子に前記飽和入力電力範囲に入る信号が入力されるときに、前記伝送線路の他端と接地との間に、直列接続される電力設定用抵抗器及び定電圧電源を接続し、前記低雑音増幅器の入力端子に入る信号を、この範囲より電力の小さい正常入力電力範囲の信号に下げて前記低雑音増幅器の入力端子に入力する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、低雑音増幅器に接続されるリミッター回路に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波レーダ装置やマイクロ波送受信装置では、微小な信号を高感度で受信する必要がある反面、比較的大きな送信電力が入ってくることもあるので、低雑音増幅器の保護のためにリミッター回路が必要となる。このようなリミッター回路では、PINダイオードを接続した構成を取ることが多い。
【0003】
この従来のリミッター回路の構成例を図3に示す。このリミッター回路は、高周波入力端子31と、高周波出力端子32の間に、低雑音増幅器33を設ける。この低雑音増幅器33の入力側において、並列にλ/4長の伝送線路34とPINダイオード35を接地との間に設けたものである。PINダイオード35のアノードを低雑音増幅器33の入力側に、カソードを接地する。
【0004】
このリミッター回路において、高周波入力端子31に、PINダイオード35の閾値を越える大きい電力の高周波信号が入力されると、PINダイオード35の高周波インピーダンスがほぼゼロとなり、PINダイオード35において高周波信号の大部分は高周波入力端子側に反射される。したがって、低雑音増幅器33に入力される電力は低減され、この増幅器が破壊されることを防止している。
【0005】
しかし、低雑音増幅器33の動作可能な電力が入力した場合にもこの増幅器は飽和してしまい、正常動作が困難であった。
【0006】
上記PINダイオード35に低電力型のものを用いた場合、通常、そのスレッショルドレベル(保護電力レベル)は+6dBm〜+7dBm程度であるので、低雑音増幅器の破壊を防止することは可能である。しかし、低雑音増幅器の入力飽和電力は−10dBm〜0dBm程度であるので、低雑音増幅器の飽和を防ぐことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−40173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような点に着目してなされたもので、接続される低雑音増幅器の破壊を防止すると共に、この増幅器の飽和の範囲を狭くし正常動作の範囲を広くすることが可能なリミッター回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態のリミッター回路は、高周波入力端子に接続され、一定の飽和入力電力範囲を有する低雑音増幅器の入力端子と接地との間に接続されたPINダイオードと、前記低雑音増幅器の入力端子に一端を接続され他端は接地される、所定周波数の1/4波長の長さの伝送線路と、前記低雑音増幅器の入力端子に前記飽和入力電力範囲に入る信号が入力されるときに、前記伝送線路の他端と接地との間に、直列接続される電力設定用抵抗器及び定電圧電源を接続し、前記低雑音増幅器の入力端子に入る信号を、この範囲より電力の小さい正常入力電力範囲の信号に下げて前記低雑音増幅器の入力端子に入力する手段と、を有することを特徴とするリミッター回路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態のリミッター回路の電気的構成を示す図である。
【図2】一実施形態における切替制御部の構成例を示す図である。
【図3】従来のリミッター回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この実施形態のリミッター回路の電気的構成を、図1に示す。リミッター回路10は、高周波入力端子11aと高周波出力端子11bの間に設けられた低雑音増幅器12の入力端子と接地の間に接続されたPINダイオード13と、一端を低雑音増幅器12の入力端子に接続された所定周波数で1/4波長の長さとなる伝送線路14と、この伝送線路14に一端を接続され、他端を接地された高周波短絡用キャパシタ15と、上記伝送線路14と高周波短絡用キャパシタ15の接続点に一端を接続された1入力2出力の切替スイッチ16と、この切替スイッチ16を制御する切替制御部17と、切替スイッチ16の一方の第1の出力端子16aに接続された電流設定用抵抗器18と、この電流設定用抵抗器18の他端にプラス側を接続され、マイナス側を接地された定電圧電源19とを有する。切替スイッチ16の他方の第2の出力端子16bは接地されている。
【0012】
電流設定用抵抗器18は、PINダイオードを短絡するための順方向電流を決定するためのものであり、定電圧源19はPINダイオードを短絡するために正の電流を供給するためのものである。
【0013】
低雑音増幅器12の入力電力が例えば−20dBm〜−5dBmの範囲内にある場合には特性は飽和しないが、−5dBmを越えると飽和するものとする。また、PINダイオード13のスレッショルドレベル(保護電力レベル)を+10dBmとし、挿入損失を−15dBmとする。
【0014】
要するに、低雑音増幅器12の入力信号範囲は、PINダイオードの保護電力レベルより電力の小さい範囲において、この増幅器が飽和する特性を示す飽和入力電力範囲と、更にこれより電力が小さい正常入力電力範囲がある。飽和入力電力範囲とは低雑音増幅器12の出力が飽和特性を示す入力信号の範囲であり、正常入力電力範囲とは低雑音増幅器12の出力が正常な特性を示す入力信号の範囲である。
【0015】
切替制御部17は、例えば図2に示すように検波ダイオードにより構成される。低雑音増幅器12の入力端子に検波ダイオード22のアノードが接続され、そのカソードは接地される。検波ダイオード22のアノードは切替スイッチ16の制御入力端子に接続されている。検波ダイオード22により入力される電力が検知される。
【0016】
切替制御部17による、切替スイッチ16の出力端子の選択の電力設定レベルは、例えば−5dBm、+10dBmに予め設定される。この設定値は変更可能に設計できる。切替制御部17、即ち低雑音増幅器12に−5dBmより小さい電力が入力するときには、切替スイッチ16の入力端子は出力端子16bに接続されているが、−5dBm以上の電力が入るときには、切替スイッチ16の入力端子は切り替えられて出力端子16aに接続される。また、低雑音増幅器12に+10dBmより大きい電力が入力するときにも、切替スイッチ16の入力端子は出力端子16bに接続される。
【0017】
なお、高周波短絡用キャパシタ15は、切替スイッチ16の入力端子が出力端子16bに接続されているときに、伝送線路の一端を高周波的に確実に接地させるためにある。
【0018】
切替スイッチ16の入力端子が出力端子16bに接続されているときには、所定高周波のλ/4波長の伝送線路14は接地されることになり、図3に示した従来のリミッター回路と同様になる。
【0019】
次にこの実施形態の動作を、高周波入力信号が−5dBmより小さい場合と、−5Bmから+10dBmの場合と、+10dBmを越える場合に分けて説明する。
【0020】
<(1)高周波入力信号が−5dBmより小さいとき>
この場合に高周波入力端子11a入ってくる最も大きい電力は−5dBmより小さい値となる。低雑音増幅器の入力電力は同じ−5dBmより小さくなって、飽和することはなく、正常動作できる。
<(2)高周波入力信号が−5dBmから+10dBmのとき>
この場合には、切替制御部17の入力が−5dBmであるので、切替スイッチ16の入力端子は出力端子16aに切り替わり、伝送線路14は電力設定用抵抗器18と定電圧電源19を介して接地される形となる。
PINダイオード12の挿入損失は−15dBmであるので、この場合には、低雑音増幅器12への入力電力は、−20dBmから−5dBmの範囲内になる。低雑音増幅器12は−5dBmを越えると飽和するが、この場合には、この値を越えていないので、低雑音増幅器12は飽和しないで正常動作させることができる。
<(3)高周波入力信号が+10dBmを越えるとき>
この場合、切替制御部17の入力端子には、+10dBmを越える電力が入るから、切替制御部17は切替スイッチ16の入力端子を出力端子16bに接続するように制御する。
伝送線路14の一端と低雑音増幅器12の入力端子の接続点から伝送線路14を見るとオープンとなる。したがって、この場合には、PINダイオード13の高周波インピーダンスはほぼゼロとなって、高周波入力端子11aから入力された高周波信号は入力端子側に反射され、低雑音増幅器12への入力は小さくなって、この増幅器12を保護することができる。この場合には、低雑音増幅器12の特性は飽和するが、大電力の入力に対してこの増幅器を破壊から保護することができる。
このように、高周波入力信号が+10dBmを越えるときに、切替スイッチ16の入力端子の接続を出力端子16bに戻すのは、入力端子が出力端子16aに接続されているときよりも、この方が破壊に対する耐性が強いからである。
【0021】
この実施形態によれば、低雑音増幅器12の飽和電力−5dBmを越える電力が高周波入力端子11aに入力された場合にも、低雑音増幅器12を飽和させることなく正常動作させることができる。このようにして、飽和しない範囲を広げることによりリミッター回路を含む低雑音増幅装置としての入力信号のダイナミックレンジを広げることが可能となる。
【0022】
実施形態によれば、PINダイオードの保護電力レベルより低い電力レベルにおいて後に接続される低雑音増幅器の飽和特性を有する飽和入力電力範囲の入力信号に対して電力を下げて、正常入力電力範囲の信号とし、この低雑音増幅器に正常動作させることができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態を説明したがこれらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10・・・・リミッター回路、
11a・・・・高周波入力端子、
11b・・・・高周波出力端子、
12・・・・低雑音増幅器、
13・・・・PINダイオード、
14・・・・伝送線路、
15・・・・高周波短絡用キャパシタ、
16・・・・切替スイッチ、
17・・・・切替制御部、
18・・・・電流設定用抵抗器、
19・・・・定電圧電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波入力端子に接続され、一定の飽和入力電力範囲を有する低雑音増幅器の入力端子と接地との間に接続されたPINダイオードと、
前記低雑音増幅器の入力端子に一端を接続され他端は接地される、所定周波数の1/4波長の長さの伝送線路と、
前記低雑音増幅器の入力端子に前記飽和入力電力範囲に入る信号が入力されるときに、前記伝送線路の他端と接地との間に、直列接続される電力設定用抵抗器及び定電圧電源を接続し、前記低雑音増幅器の入力端子に入る信号を、この範囲より電力の小さい正常入力電力範囲の信号に下げて前記低雑音増幅器の入力端子に入力する手段と、
を有することを特徴とするリミッター回路。
【請求項2】
高周波入力端子に接続された低雑音増幅器の入力端子と接地との間に接続されたPINダイオードと、
前記低雑音増幅器の入力端子に一端を接続され他端は接地される、所定周波数の1/4波長の長さの伝送線路と、
この伝送線路の他端と接地との間に接続された高周波短絡用キャパシタと、
前記伝送線路の他端に入力端子を接続され、第1の出力端子及び接地された第2の出力端子を有する切替スイッチと、
前記第1の出力端子に一端を接続され、接地との間に直列に接続された電力設定用抵抗器及び定電圧電源と、
前記低雑音増幅器の入力端子にこの入力端子を接続され、入力される電力により前記切替スイッチの入力端子を前記第1の出力端子又は前記第2の入力端子に接続するように制御する切替制御部と、
を有することを特徴とするリミッター回路。
【請求項3】
前記低雑音増幅器の入力端子にこの低雑音増幅器が飽和特性を示す入力範囲である飽和入力電力範囲に入る信号が入力されたとき、前記切替制御部は、前記切替スイッチの入力端子を前記第1の出力端子に接続するように制御することを特徴とする請求項2記載のリミッター回路。
【請求項4】
前記低雑音増幅器の入力端子に、前記PINダイオードの保護電力レベルを超える信号が入力されたとき、前記切替制御部は、前記切替スイッチの入力端子を前記第2の出力端子に接続するように制御することを特徴とする請求項2又は3記載のリミッター回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55475(P2013−55475A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191776(P2011−191776)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】