説明

リヤカメラの取付け構造

【課題】 車体の外観を損なうことなく、着脱作業を容易に行うことができるリヤカメラの取付け構造を提供する。
【解決手段】 車体後部に取り付けられるリヤカメラ10の取付け構造であって、ライセンスガーニッシュ7の上側に取付け座25を設け、この取付け座25にリヤカメラ10を着脱可能に取付け、ライセンスガーニッシュ7の上部に設けられるモールディング9により前記取付け座25を外側から覆ってモールディング9を車体に支持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両のリヤカメラ取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後方を監視するリヤカメラが知られている。このリヤカメラの中には、車両後部のアウターパネル外面に固定して設けられたものがあるが、車体デザイン上の一体感が得られずに外観品質を著しく損ねていた。そこで、前記リヤカメラが車体外面から突出しないように、ライセンスガーニッシュ上部のランプハウスに前記リヤカメラを収容して固定する取付け構造が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平09−240370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記リヤカメラの取付け構造にあっては、例えばメンテナンスでリヤカメラを取り外そうとした場合、前記ライセンスガーニッシュを取外してからでないと前記リヤカメラの固定ビスをゆるめることができない等、作業工数が増加して作業者の負担が大きくなる問題がある。また、ライセンスプレートの取付け用ビスが封印してある場合には、ライセンスガーニッシュを取り外す度に封印し直す必要があり、さらに作業者の負担が増加してしまうこととなる。
【0004】
そこで、この発明は、車体の外観を損なうことなく、着脱作業を容易に行うことができるリヤカメラの取付け構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車体後部に取り付けられるリヤカメラの取付け構造であって、ライセンスガーニッシュ(例えば、実施の形態におけるライセンスガーニッシュ7)と、ライセンスガーニッシュの上部に設けられるモールディング部材(例えば、実施の形態におけるモールディング9)とを有し、前記ライセンスガーニッシュの上側に設けられた取付け座(例えば、実施の形態における取付け座25)にリヤカメラ(例えば、実施の形態におけるリヤカメラ10)が取り付けられ、モールディングが前記取付け座を外側から覆って取り付けられることを特徴とする。
このように構成することで、ライセンスガーニッシュを外したり封印を解かずに、モールディングを取り外すだけでライセンスガーニッシュ上部の取付け座が露出し、この取付け座に設けられたリヤカメラを取付け、取外しすることができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記モールディングはライセンスガーニッシュを介して車体(例えば、実施の形態におけるテールゲート3)に支持され、前記モールディングと前記ライセンスガーニッシュとの間には、車体の内側方向で両者を嵌合により固定する係合部(例えば、実施の形態における係合部30)を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、モールディングの着脱作業を容易に行うことができる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記係合部は、前記モールディング又はライセンスガーニッシュに設けられる断面T字状の位置決め嵌合部(例えば、実施の形態における位置決め嵌合部16)であることを特徴とする。
このように構成することで、モールディングの仮保持及び上下、左右方向への位置決めを容易且つ確実に行うことができる。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記モールディングは長尺状に形成され、前記位置決め嵌合部は前記モールディング又はライセンスガーニッシュへの取付け部(例えば、実施の形態における位置決め嵌合部16、クリップ取付け片18、ガイド片20)の中央部に設けられ、前記モールディングの端部はクリップ手段(例えば、実施の形態におけるクリップ21)によって前記ライセンスガーニッシュに係合されることを特徴とする。
このように構成することで、モールディング又はライセンスガーニッシュの中央部を位置決め嵌合部によって容易に位置決めできると共に、モールディングの端部をクリップ手段によって容易且つ確実に着脱させることができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、ライセンスガーニッシュを外したり封印を解かなくても、モールディングを取り外すだけでライセンスガーニッシュ上部の取付け座に設けられたリヤカメラを取付け、取り外すことができるため、作業工数を低減して作業者の負担を軽減することができる効果がある。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1の効果に加え、モールディングの着脱作業を容易に行うことができるため、さらに作業者の負担を軽減することができる効果がある。
【0011】
請求項3に記載した発明によれば、請求項1又は請求項2の効果に加え、モールディングの仮保持及び上下、左右方向への位置決めを容易且つ確実に行うことができるため、モールディング着脱時の作業者の負担を軽減することができる効果がある。
【0012】
請求項4に記載した発明によれば、請求項3の効果に加え、モールディング又はライセンスガーニッシュの中央部を位置決め嵌合部によって容易に位置決めできると共に、モールディングの端部をクリップ手段によって容易且つ確実に着脱させることができるため、モールディングの取付信頼性を向上することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施の形態ではワゴン車等の車両に適用した場合を示している。
図1において、車体1の後部開口部2には、テールゲート3が開閉自在に設けられている。前記テールゲート3の上部開口部4にはリヤウインドウガラス5がはめ込まれ、前記テールゲート3の下部には、車幅方向中央にライセンスプレート6を取り付ける樹脂製のライセンスガーニッシュ7が車幅方向に沿って取り付けられている。そして、前記テールゲート3には、前記ライセンスガーニッシュ7の両側縁から車体側面に回り込むようにリヤコンビネーションランプ8が配置されている。
【0014】
前記ライセンスガーニッシュ7の上縁には車幅方向に沿って設けられた長尺状のモールディング(モールディング部材)9の下縁が固定されている。このモールディングの外面は、なんら突出部もなく前記テールゲート3のアウターパネルに沿うように形成されている。そして、前記モールディング9の中心より若干右側の車室内側にはリヤカメラ10が設置されている。
【0015】
図1、図2に示すように、前記ライセンスガーニッシュ7の略中央部には車室内側に凹んだライセンスプレート6の取付け凹部11が形成されている。この取付け凹部11は上壁12が略水平に形成され、下壁13、両側壁14,14が前記取付け凹部11の底壁15に向かって若干傾斜して形成されている。
図2に示すように、前記ライセンスガーニッシュ7の上縁には車幅方向の中央部である前記取付け凹部11の上壁12の上面に略断面T字状の位置決め嵌合部16が形成されている。この位置決め嵌合部16は前記上壁12の後側縁から前記上壁12の前後方向略中央部に渡り平行に設けられ、左右対称に2箇所に配置されている。
【0016】
前記ライセンスガーニッシュ7の前記取付け凹部11よりも車幅方向の外側には、クリップ孔17を有した2つのクリップ取付け片18,18と、これらの間に配置され係合孔19を有した1つのガイド片20とが上方に向かってそれぞれ形成されている。前記クリップ取付け片18のクリップ孔17は長手方向が車幅方向に沿った長孔になっており、後述するクリップ手段であるクリップ21とクリップ押圧部22との車幅方向への変位をある程度許容するものである。
【0017】
前記取付け凹部11の上壁12には、前記右側(図2において左側)に配置された位置決め嵌合部16の右側に車体後方から車室内側に向かって前記リヤカメラ10を受容する切欠部23が形成されている。この切欠部23はリヤカメラ10の外形に対応した形状に設定されており、前記切欠部23の後部両側縁には上方に延出するカメラ取付け片24が形成されている。前記切欠部23と前記カメラ取付け片24とで前記リヤカメラ10の取付け座25が構成されている。上述したクリップ取付け片18とガイド片20と位置決め嵌合部16とで前記ライセンスガーニッシュ7の取付部が構成されている。
【0018】
一方、前記リヤカメラ10には左右にフランジ部26,26が一体に形成されており、前記リヤカメラ10を切欠部23に挿入し、前記フランジ部26,26を前記カメラ取付け片24,24に押し当てて、車体1の後方からビス27,27で前記フランジ部26,26をカメラ取付け片24,24に固定し、前記リヤカメラ10を前記ライセンスガーニッシュ7に取り付けている。
【0019】
ところで、前記モールディング9の下部には、前述した位置決め嵌合部16,16に対応した位置に略断面C字状の受容部28,28が形成されている。この受容部28は、前記位置決め嵌合部16のT字状の水平部分に対応して車幅方向、上下方向に若干大きく設定された空間を有しており、前記受容部28の下部中央には前記位置決め嵌合部16の垂直部分に対応するスリット29が形成されている。これら位置決め嵌合部16,16と受容部28,28とで係合部30が構成されている。
【0020】
前記モールディング9の端部である前記受容部28の車幅方向外側には、車室内側に向かってクリップ押圧部22が形成されている。このクリップ押圧部22は、前述した受容部28よりも全長が若干短く車幅方向に沿った平板状に形成され、前記ライセンスガーニッシュ7の前記クリップ取付け片18に対応した位置に配置されている。また、前記クリップ押圧部22には、この上下面を覆うようにクリップ21が配置されている。前記クリップ21は、長尺状であるモールディング9の車幅方向への伸縮を考慮して、上下方向に開放して係止すべくU字状に湾曲し、両端が上下方向に屈曲形成されている。
【0021】
さらに、前記モールディング9の端部には前記ガイド片20に対応した位置に円柱状のガイドピン31が車室内方向に突出して形成されている。このガイドピン31は、主として前記モールディング9の端部が上下方向へ変位するのを規制するためのものである。尚、前記ガイドピン31は柱状であれば良く、円柱状以外に角柱や断面X字の柱状等であっても良い。
【0022】
図3に示すように、前記モールディング9はその取付け状態で前記リヤカメラ10を覆うようにリヤカメラ10の車体後方側に配置されている。前記モールディング9は上半部32が車体後方下側に向かって傾斜して形成され、下半部33が車体上下方向に沿って形成されている。前記下半部33の下縁は若干車室内側に回り込むように屈曲形成され、前記リヤカメラ10が車体後方から目に付かないようにすると共に前記リヤカメラ10の被写界を十分に確保するために、車体1の後方斜め下を撮影する前記リヤカメラ10のレンズ34の上端と水平な(図中、破線で示す)位置に配置されている。そして、前記取付け凹部11にはライセンスプレート6がビス35で固定されており、このビス35のヘッド部には封印36が取り付けられている。
すなわち、前記車体1を後方から見たとしても、前記リヤカメラ10のレンズ34のみが露出して、前記リヤカメラ10の本体部分が外部に露出することはなく、車体1の外観が損なわれない。
【0023】
以下、組付け手順について説明する。
まず、ライセンスガーニッシュ7を図示しないクリップを介して前記テールゲート3のアウターパネルの取付け点(図1参照)37に固定する。そして、前記ライセンスガーニッシュ7の取付け座25にリヤカメラ10をビス27で固定してリヤカメラ10の配線を行う。尚、リヤカメラ10の固定は前記ライセンスガーニッシュ7をテールゲート3に取り付ける前に行っても良い。
【0024】
次に、前述したクリップ押圧部22よりも車室内方向に長く形成された受容部28の先端をライセンスガーニッシュ7の位置決め嵌合部16に挿入する。この挿入作業に先立って、クリップ21をクリップ押圧部22あるいはクリップ孔17に取り付けておく。これにより、前記モールディング9は若干の左右、上下方向への変位を許容しつつ初期的な位置決めがなされる。
【0025】
そして、モールディング9の端部に形成されたガイドピン31を前記ライセンスガーニッシュ7のガイド片20に形成された係合孔19に挿入する。このようにすることで、前記ガイドピン31の左右に配置されたクリップ押圧部22と前記クリップ孔17との上下位置が完全に決められることとなる。すなわち、ガイドピン31を係合孔19に挿入した時点で前記モールディング9の左右端部の上下位置が決められ、長尺状である前記モールディング9が水平状態に保持されるのである。
【0026】
さらに、前記モールディング9の左右端部を車体1の後方から車室内側に向けて押圧すると、前記モールディング9の受容部28に前記ライセンスガーニッシュ7の位置決め嵌合部16が奥までスライド挿入されると共に、前記クリップ押圧部22が前記クリップ取付け片18のクリップ孔17に奥まで挿入され、前記クリップ21が前記クリップ取付け片18のクリップ孔17の上縁及び下縁に係止され、前記モールディング9がライセンスガーニッシュ7に固定される。尚、前記ライセンスガーニッシュ7がテールゲート3に固定されている状態であればライセンスガーニッシュ7へのライセンスプレート6の取付けはいつ行っても良い。
【0027】
一方、メンテナンス等により前記リヤカメラ10を取り外す際には、前記モールディング9の左右側部を車体後方に引っ張り、前記ライセンスガーニッシュ7のクリップ取付け片18からクリップ21を抜き、前記受容部28を位置決め嵌合部16から後方にスライドさせて外すと、前記モールディング9が前記ライセンスガーニッシュ7から離脱し、前記取付け座25が露出する。この状態で、ドライバー等の工具を用いてリヤカメラ10を固定しているビス27を外し、前記リヤカメラ10を取付け座25から取り外す。ここで、メンテナンス終了後にリヤカメラ10を取り付ける際には、組付け時と同様の手順でリヤカメラ10をビス27で取付け座25に固定してモールディング9をライセンスガーニッシュ7に取り付けるため詳細な説明は省略する。
【0028】
したがって、上述した実施の形態によれば、ライセンスガーニッシュ7を外したり封印36を解かなくても、モールディング9を取り外すだけでライセンスガーニッシュ7の上部に設けられた取付け座25が露出するので、ここに設けられたリヤカメラ10を着脱することができる。よって、作業工数を低減して作業者の負担を軽減することができる。
【0029】
さらに、クリップ21によってモールディング9の着脱作業を容易に行うことができると共にモールディング9の仮保持及び上下、左右方向への位置決めを容易且つ確実に行うことができるため、モールディング9の着脱時の作業者の負担を軽減することができる。
【0030】
また、モールディング9とライセンスガーニッシュ7の中央部に設けられた係合部30によって前記モールディング9の位置決めを行うだけで、この左右側部をクリップ21によって容易且つ確実にライセンスガーニッシュ7に係合させることができるため、モールディング9の着脱信頼性を向上することができる。
【0031】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、嵌合部をモールディングに設け受容部をライセンスガーニッシュに設けても良い。また、ライセンスガーニッシュのリヤカメラ取付け座は車幅方向右側以外に中央や左側に設けても良い。さらに、ライセンスガーニッシュをテールゲートと一体に成型しても良い。そして、前記モールディングに前記ライセンスガーニッシュを介さずに直接テールゲートに固定可能なブラケットを別途設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態における車両の後方斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるライセンスガーニッシュとモールディングとの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における図1のA−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0033】
3 テールゲート
7 ライセンスガーニッシュ
9 モールディング(モールディング部材)
10 リヤカメラ
16 位置決め嵌合部(取付け部)
18 クリップ取付け片(取付け部)
20 ガイド片(取付け部)
21 クリップ(クリップ手段)
25 取付け座
30 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に取り付けられるリヤカメラの取付け構造であって、ライセンスガーニッシュの上側に取付け座を設け、この取付け座にリヤカメラを着脱可能に取付け、ライセンスガーニッシュの上部に設けられるモールディングにより前記取付け座を外側から覆ってモールディングを車体に支持することを特徴とするリヤカメラの取付け構造。
【請求項2】
前記モールディングはライセンスガーニッシュを介して車体に支持され、前記モールディングと前記ライセンスガーニッシュとの間には、車体の内側方向で両者を嵌合により固定する係合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリヤカメラ取付け構造。
【請求項3】
前記係合部は、前記モールディング又はライセンスガーニッシュに設けられる断面T字状の位置決め嵌合部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリヤカメラの取付け構造。
【請求項4】
前記モールディングは長尺状に形成され、前記位置決め嵌合部は前記モールディング又はライセンスガーニッシュへの取付け部の中央部に設けられ、前記モールディングの端部はクリップ手段によって前記ライセンスガーニッシュに係合されることを特徴とする請求項3に記載のリヤカメラの取付け構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−69276(P2006−69276A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252523(P2004−252523)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】