説明

リードフレーム固定材、リードフレーム及び半導体装置

【課題】本発明の目的は、リードフレーム固定材で固定したリードフレームを使用した半導体装置において、リードフレーム固定材に無機フィラーを高充填率で充填しなくても、半田リフロー過程で内部剥離を生じることなく、かつ固定材として高接着性を有するリードフレーム固定材等を提供することである。
【解決手段】本発明のリードフレーム固定材は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)とナフタレン型エポキシ樹脂(B)とを含有し、硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム固定材、リードフレーム及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームとは、薄い金属板をフォトエッチングやプレス加工等することにより多数のピン(リード)を備えて形成されたフレームであって、半導体素子の個々の端子と各リードとが接続されるフレームである。
【0003】
従来、例えばICやLSI等の電子部品の組み立て、製造工程において、リードフレームのピンが変形したり不揃いになったりすることを防止するため、リードフレームにはピン保持部等が形成されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、耐熱性接着剤を塗布したポリイミド系フィルムを適当な寸法に切断したピン保持テープを、リードフレームの各ブロックに各ピン先端寄りの所定箇所上に粘着する方法が記載されている。
【0005】
しかし、支持フィルムの片面に接着剤層を設けた二層構造の接着テープを用いて接着する方法においては、型抜きにより廃棄物が多量に生じたり、リードフレームの種類に応じて型抜き用の金型が必要であったりする等、材料、廃棄、管理のコストの観点から問題がある。
【0006】
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献2には、リードフレームの形状及び種類を問わずピンの保持を容易に行うこと等を目的として、リードフレームの各ピン先端寄りの所定箇所上及び各ピン間に光硬化性の樹脂材料を塗布し、押圧板間で押圧して樹脂材料をピン間に入り込ませ、ピン間に保持部を形成する方法が記載されている。
【0007】
しかし、この方法ではピン間に気泡等が介在する可能性があり、ピン間を確実に固定できない可能性や、押圧板を使用することによる接着性樹脂の汚染の点などから改善の余地を有する。
【0008】
その改善を行う方法と材料について、例えば、特許文献3には、硬化の目的で加熱する過程において材料の粘度が適切に低下し、リード間隙への埋め込みが速やかに行われるリードフレーム固定材を用いれば、押圧板を使用せずに簡便にリードフレームを固定し得る方法が記載されている。また、リードフレーム固定材としてカプセル型アミンアダクトを硬化剤として用いることは、エポキシ樹脂と硬化剤との配合物の貯蔵安定性が良好であると共に、比較的低温の加熱環境下での速やかな硬化を実現する観点から好適であることが記載されている。
【0009】
しかし、上記リードフレーム固定材を用いたリードフレームを用い、モールドパッケージを施した場合、吸湿後半田リフロー試験を行うと、半導体装置内部に剥離が観察される。ここで、主な剥離箇所は、リードピンと各リードピン間に挟まれた硬化樹脂の界面である。半田リフロー加熱において半導体装置内部に剥離が生じると、マイグレーション発生等により信頼性が低下し、好ましくない。
【0010】
このような半田実装時のクラックや各素材界面での剥離の防止のために、従来のQuad Flat PackageやSmall Outlline Packageなどの樹脂封止型半導体装置では、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂と可撓性骨格を有するフェノール樹脂硬化剤とを組み合わせて用い、かつ無機フィラーの配合量を増加することにより、低ガラス転移温度による高温での低応力化と吸湿率の低下を行う対策がとられている(例えば、特許文献4参照)。また、半田実装時のクラックや剥離を抑制するためには、無機フィラーを最低でも50容量%以上に充填する必要がある(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭55−021118号公報
【特許文献2】特公平04−064468号公報
【特許文献3】国際公開第WO2008/075655号
【特許文献4】特開平11−60687号公報
【特許文献5】特開平6−322073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、エポキシ樹脂とカプセル型のエポキシ樹脂硬化剤との配合物に対して、50容量%以上といった高充填率で無機フィラーを充填すると、配合物の貯蔵安定性が失われ、配合物の粘度が時間経過と共に上昇し、配合物のゲル化や基材に対する接着強度の低下が生じる。これは高充填率で充填された無機フィラーがカプセル型アミンアダクトのカプセル膜を破損させることで、硬化剤がエポキシ樹脂中に染み出し、緩やかに硬化反応を開始させるためである。そのため、カプセル型アミンアダクトを使用した配合物に、無機フィラーを高充填率で充填し、リードフレーム固定材として使用するのは難しい。
【0013】
本発明は、リードフレーム固定材で固定したリードフレームを使用した半導体装置において、リードフレーム固定材に無機フィラーを高充填率で充填しなくても、半田リフロー過程で内部剥離を生じることなく、かつ固定材として高接着性を有するリードフレーム固定材等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上述の課題を解決するため鋭意検討した結果、半導体装置内において半田リフロー過程において内部剥離を生じなることなく、かつ高い接着性を有するリードフレーム固定材を作成するのに、適したガラス転移温度、使用するエポキシ樹脂の組合せを見出し、特に、それらエポキシ樹脂の配合比率を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下に関する。
【0016】
[1]
1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)とナフタレン型エポキシ樹脂(B)とを含有し、
硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上であるリードフレーム固定材。
【0017】
[2]
前記エポキシ樹脂(A)の含有量が、固定材の樹脂成分100質量%に対して、8質量%以上15質量%以下である、[1]に記載のリードフレーム固定材。
【0018】
[3]
前記ナフタレン型エポキシ樹脂(B)が、溶融状態から25℃まで徐冷したときに液状である、[1]又は[2]に記載のリードフレーム固定材。
【0019】
[4]
前記エポキシ樹脂(A)と前記ナフタレン型エポキシ樹脂(B)との配合比率(質量)(エポキシ樹脂(A)/エポキシ樹脂(B))が、10/90〜25/75である、[1]〜[3]のいずれかに記載のリードフレーム固定材。
【0020】
[5]
前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される構造を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のリードフレーム固定材。
【0021】
【化1】

(式(1)中、R1は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
[6]
前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(2)〜(5)で表される群のうちいずれか1つで表される構造を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のリードフレーム固定材。
【0022】
【化2】

(式(2)中、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、m1は2以上の整数である。)
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

(式(4)中、m2は正の整数である。)
【0025】
【化5】

[7]
エポキシ樹脂用硬化剤をさらに含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のリードフレーム固定材。
【0026】
[8]
前記エポキシ樹脂用硬化剤が潜在性を有するマイクロカプセル型硬化剤である、[7]に記載のリードフレーム固定材。
【0027】
[9]
[1]〜[8]のいずれかに記載のリードフレーム固定材で固定されたリードフレーム。
【0028】
[10]
[9]に記載のリードフレームを用いた半導体装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明のリードフレーム固定材は、該リードフレーム固定材で固定したリードフレームを使用した半導体装置において、半田リフロー過程で内部剥離を生じることなく、かつ固定材として高接着性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」ともいう)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0031】
≪リードフレーム固定材≫
本実施の形態のリードフレーム固定材は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)(以下、単に「エポキシ樹脂(A)」とも記す。)とナフタレン型エポキシ樹脂(B)(以下、単に「エポキシ樹脂(B)」とも記す。)とを含有し、硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上である。この構成により、本実施の形態のリードフレーム固定材は、該リードフレーム固定材により固定されたリードフレームを使用した半導体装置において、半田リフロー過程で半導体装置内部に剥離やクラックを生じることなく、高い接着性を達成することができる。
【0032】
本発明者らは、硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上のリードフレーム固定材であれば、半田リフロー加熱において半導体装置内の剥離を抑えることができることを見出した。一般に、リードフレーム固定材において、その硬化物のガラス転移温度を上昇させると、接着性が下がる傾向にあることが知られているが、本願においては、接着性も維持しつつ、半導体装置内の剥離を抑えることができるガラス転移温度の領域を見出したことに特徴がある。従って、リードフレーム固定材の硬化物のガラス転移温度は、接着性と半導体装置内の内部剥離抑制との2つの効果を達成するという点から、より好ましくは、178℃以上185℃以下であり、さらに好ましくは、179℃以上183℃以下である。なお、本実施の形態において、リードフレーム固定材の硬化物のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0033】
本実施の形態のリードフレーム固定材において、接着性と、半導体装置内の剥離抑制とを両立させるメカニズムは明らかではないが、ナフタレン樹脂(ナフタレン型エポキシ樹脂(B))中に多官能エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(A))を配合することで、硬化物中の水酸基の数が増加し、硬化物と基材の金属との相互作用を増加させ、接着性が向上したと考えられる。また、ナフタレン樹脂と多官能エポキシ樹脂との併用により硬化物のガラス転移温度は増加し、半田リフロー過程での硬化物の線膨張が減少し、リードフレーム固定材とリードフレームとの接着界面に加わる応力が減少し、剥離しにくくなったとも考えられる。
【0034】
硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上のリードフレーム固定材を得る方法としては、例えば、リードフレーム固定材の原料として、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)とエポキシ樹脂(A)とを併用し、エポキシ樹脂(A)の含有量を後述の範囲に調整する方法が挙げられる。
【0035】
また、本実施の形態に係るリードフレーム固定材は、接着性と半導体装置内の内部剥離抑制との2つの効果を達成するという点から、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)とナフタレン型エポキシ樹脂(B)とを併用する。この構成により接着性を低下させずに、ガラス転移温度を十分に上げることを見出した。
【0036】
上記に記載の通り、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)と多官能エポキシ樹脂(エポキシ樹脂(A))との併用で、ガラス転移温度は上昇するが、その配合割合によって金属と樹脂との接着強度がより向上することが分かった。つまり、ガラス転移温度が増加するのと比例して、接着強度が低下するわけでなく、樹脂組成物の組成によって高ガラス転移温度であっても、より高接着強度を発現することとなるのである。以上より、本実施の形態に係るリードフレーム固定材中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、固定材中の樹脂成分100質量%に対して、8質量%以上15質量%以下であることが好ましく、この範囲にエポキシ樹脂(A)の含有量を調整することにより、リードフレーム固定材は、より内部剥離を生じることなく、高い接着性を得ることができる。また、エポキシ樹脂(A)の含有量は、より好ましくは9質量%以上14質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上12質量%以下である。
【0037】
なお、固定材中の樹脂成分は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)および後述のエポキシ樹脂用硬化剤を含む。
【0038】
また、本実施の形態のリードフレーム固定材において、エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との配合比率(質量)(エポキシ樹脂(A)/エポキシ樹脂(B))は、10/90〜25/75であることが好ましく、11/90〜22/78であることがより好ましく、14/86〜17/83であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との配合比率(質量)が前記範囲内であると、リードフレーム固定材は、該リードフレーム固定材で固定したリードフレームを使用した半導体装置において、半田リフロー過程で内部剥離をより抑制でき、かつ固定材として接着性がより向上する。
【0039】
従来、結晶性エポキシ樹脂であるナフタレン型エポキシ樹脂(B)が、組成物の大部分を占めると、リードフレーム固定材として通常使用される温度である25℃付近での粘度が増加する傾向があり、粘度が増加するとリードフレームへの塗布性が低下し、その結果内部剥離を生じる原因となる。これは25℃付近でナフタレン型エポキシ樹脂(B)の結晶化が急速に進行し、2日から3日でほぼ固体状になるまで結晶化し、粘度が劇的に増加するからである。この結晶化はナフタレン型エポキシ樹脂(B)の純度が高いほど顕著になる傾向がある。しかしながら、本実施の形態では、リードフレーム固定材中に、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)という比較的高分子量な樹脂を含有していることから、上記のような25℃での結晶化を抑制することができる。これについては、高分子量成分(エポキシ樹脂(A))がナフタレン型エポキシ樹脂(B)中に溶解することによって、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)のミクロな運動を阻害することで結晶化が抑制されたと考えられる。
【0040】
上記の観点から、エポキシ樹脂(A)の分子量は、460〜1770が好ましく、さらに好ましくは460〜790である。
【0041】
本実施の形態に係るリードフレーム固定材に用いるナフタレン型エポキシ樹脂(B)は、溶融状態から25℃まで徐冷したときに液状であることが好ましい。このような液状のナフタレン型エポキシ樹脂(B)を用いることにより、リードフレーム固定材全体の粘度を下げることができ、リードフレーム固定材として好適に使用することができる。
【0042】
エポキシ樹脂(A)のような多官能エポキシ樹脂を、液状のBis−A型エポキシ樹脂などに混ぜ、硬化すると硬化物のガラス転移温度が上昇することは一般に知られている。しかし、多官能エポキシ樹脂は固形樹脂である場合が多く、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)が液状である場合には、液状であるナフタレンエポキシ樹脂(B)に固形樹脂のエポキシ樹脂(A)を溶解させると、著しくその粘度を増加させる。リードフレーム固定材の粘度が著しく増加することで塗布性が低下し、リードフレームとリードフレーム固定材の接着強度が低下する。このような観点からも、エポキシ樹脂(A)の含有量を上記範囲に調整し、かつナフタレン型エポキシ樹脂(B)が液状であることが、リードフレーム固定材の接着性を維持しつつ、低粘度を発現させるという点で好ましい。また、より好ましくは、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)の25℃での粘度は、1Pa・s〜100Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは、1Pa・s〜50Pa・sである。
【0043】
本実施の形態に係るリードフレーム固定材に使用するエポキシ樹脂(A)は、その構造中に芳香環を含むものであることが好ましい。一般的に、エポキシ樹脂(A)は固形樹脂であることが多く、樹脂配合物中に占める割合が多いと、樹脂配合物の粘度が大きく上昇する。リードフレーム固定材は粘度が高すぎると、塗布性が低下し、接着強度が低下し内部剥離を生じやすくなり、好ましくない。エポキシ樹脂(A)中に芳香環を含むことにより、エポキシ樹脂(A)が少ない量で、リードフレーム固定材を硬化物とした際のガラス転移温度がより高くなることから、リードフレーム固定材の粘度を低くでき、塗布性が向上し、内部剥離が抑制できる傾向にある。
【0044】
エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0045】
【化6】

(式(1)中、R1は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
エポキシ樹脂(A)が上記一般式(1)で表される構造を有すると、エポキシ樹脂(A)が少ない量で、リードフレーム固定材を硬化物とした際のガラス転移温度がより高くなることから、リードフレーム固定材の粘度をより低くでき、塗布性がより向上し、内部剥離がより抑制できる傾向にある。
【0046】
エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(2)〜(5)で表される群のうちいずれか1つで表される構造を有することがより好ましい。これらの構造を有することにより、より内部剥離を抑えつつ、かつ高接着性を得ることができる。中でも、式(3)で表される構造を有することが特に好ましい。
【0047】
【化7】

(式(2)中、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、m1は2以上の整数である。)
【0048】
【化8】

【0049】
【化9】

(式(4)中、m2は正の整数である。)
【0050】
【化10】

式(2)中、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であるが、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。また、式(2)中、m1は2〜9の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがより好ましい。
【0051】
式(4)中、m2は1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
【0052】
エポキシ樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0053】
ナフタレン型エポキシ樹脂(B)は、ナフタレンジオールの水酸基をクリシジル化することで得ることができ、例えば、ナフタレン−1、5―ジオール、ナフタレン−1、6―ジオール、ナフタレン−1、7―ジオール、ナフタレン−1、8―ジオールをグリシジル化した樹脂が挙げられる。その中でも、常温で結晶化しにくいナフタレン−1,6−ジオールのグリシジル化物が特に好ましい。ナフタレン型エポキシ樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、本実施の形態において、ナフタレン型エポキシ樹脂(B)は、エポキシ樹脂(A)以外のナフタレン型エポキシ樹脂である。
【0054】
本実施の形態に係るリードフレーム固定材は、さらにエポキシ樹脂用硬化剤を含有することが好ましい。本実施の形態で使用できるエポキシ樹脂用硬化剤として、ノボラック樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤等が例示できる。これらは2種以上を併用することも可能である。この中でも、分子量が大きく、低揮発性で硬化時にリードフレーム表面を汚染しにくいアミンアダクト系硬化剤が好ましい。低揮発性であることにより、揮発成分がリードフレーム表面に付着することを抑えることができ、ワイヤーボンド性を向上させることができる。
【0055】
ノボラック樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノール、等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0056】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水−3−クロロフタル酸、無水−4−クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデックク酸、無水マレイン酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0057】
アミン系硬化剤としては、例えば、一級、二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物が挙げられる。これらは2種以上を併用することも可能である。
【0058】
一級アミノ基を有する化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0059】
二級アミノ基を有する化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0060】
三級アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、べンジルジメチルアミン、N,N'−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1、8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、1、5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5等の三級アミン類;
2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;
2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;
1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;
ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;
2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;
N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;
N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類;等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0061】
アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、以下のような(b−1)成分と、(b−2)成分との反応物として得られるアミンアダクトを挙げることができる。
(b−1)カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、尿素化合物、イソシアネート化合物、及びリードフレーム固定材として使用可能なエポキシ樹脂、より選択された1種又は2種以上の化合物。
(b−2)アミン化合物。
【0062】
前記(b−1)成分として、前記カルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ダイマー酸、等が挙げられる。
【0063】
前記(b−1)成分として、前記スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、等が挙げられる。
【0064】
前記(b−1)成分として、前記尿素化合物としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素、等が挙げられる。
【0065】
前記(b−1)成分として、前記イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、ポリイソシアネート、等を挙げることができる。
【0066】
ここで、脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、等を挙げることができる。
【0067】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4−4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2イル)−シクロヘキサン、等を挙げることができる。
【0068】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、等を挙げることができる。
【0069】
脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,6−トリイソシアネートメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル、等を挙げることができる。
【0070】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや、上述した各種ジイソシアネート化合物より誘導されるポリイソシアネート、等を挙げることができる。このようなポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート、等が挙げられる。
【0071】
一方、前記(b−2)成分としては、例えば、以下のような(b−2−1)成分、(b−2−2)成分が挙げられる。
(b−2−1)少なくとも1個の一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するが三級アミノ基を有さない化合物。
(b−2−2)少なくとも1個の三級アミノ基と、少なくとも1個の活性水素基とを有する化合物。
【0072】
前記(b−2−1)成分としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、等の三級アミノ基を有さない第一アミン類;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、等の三級アミノ基を有さない第二アミン類;
等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
前記(b−2−2)成分において、活性水素基としては、例えば、一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボン酸、ヒドラジド基が挙げられる。前記(b−2−2)成分としてより具体的には、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;
2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;
1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;
ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;
2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;
N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;
N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類;等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0073】
前記エポキシ樹脂用硬化剤は、潜在性を有する硬化剤であることが好ましい。潜在性を有する硬化剤とは、使用時までは硬化剤としての活性が抑制されており、使用時に、外的な刺激、例えば、熱、UV光等の放射線等を与えた時に初めて、硬化剤としての活性を良好に発揮するような硬化剤を意味する。
【0074】
このような潜在性を有する硬化剤(潜在性エポキシ樹脂用硬化剤)の態様の一つとしては、カプセル型(粒径がμmオーダーの場合、「マイクロカプセル型」と呼ぶことがある。)の硬化剤を挙げることができる。カプセル型の硬化剤とは、例えば、エポキシ樹脂用硬化剤からなるコアの表面が、無機酸化物や合成樹脂等からなるシェルによって被覆された構造を有する硬化剤を意味する。このようなカプセル型の硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂と硬化剤との配合物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0075】
上記コアの材質としては、硬化剤と同様の成分を用いることができる。中でも、活性が高く、短時間で硬化できるという観点から、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、又は2−フェニルイミダゾールにより変性した、アミンアダクト系硬化剤であることが好ましい。また、コアとしては、常温(25℃)において固体である材質を用いて形成されたコアであることが好適である。
【0076】
一方、上記シェルの材質として、無機酸化物としては、例えば、酸化ホウ素、ホウ酸エステル等のホウ素化合物、二酸化珪素、酸化カルシウム等が挙げられる。中でも、シェルの安定性と加熱時の破壊しやすさの観点から、酸化ホウ素が好ましく用いられる。
【0077】
また、合成樹脂の例としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、等が挙げられる。中でも、比較的低温の加熱でシェルが破壊されるという観点から、モノアルコール又は多価アルコールとモノイソシアネート又は多価イソシアネートとの反応生成物であるウレタン系樹脂、アミン系硬化剤、又はアミンアダクト系硬化剤とエポキシ樹脂との反応生成物であるエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂が望ましい。
【0078】
なお、シェルの安定性と加熱時の破壊しやすさ、及び硬化物の均一性等の観点から、シェルの材質としては合成樹脂であることが好ましい。また、アミンアダクト系硬化剤を合成樹脂のシェルで被覆してカプセル型の硬化剤を形成することが、主剤(エポキシ樹脂)と硬化剤の配合物の貯蔵安定性が良好であると共に、比較的低温の加熱環境下での速やかな硬化が可能な潜在性硬化剤を実現する観点から好適である。
【0079】
本実施の形態に係るリードフレーム固定材において、エポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、固定材の樹脂成分100質量%に対して、30〜50質量%であることが好ましく、30〜40質量%であることがより好ましく、30〜35質量%であることがさらに好ましい。前記範囲でエポキシ樹脂用硬化剤を含有させると、リードフレーム固定材の硬化が十分に行え、且つ他のエポキシ樹脂の配合の自由度が高い点で好ましい。
【0080】
本実施の形態に係るリードフレームは、前記リードフレーム固定材で固定されたリードフレームである。該リードフレームは、前記リードフレーム固定材を塗布することによって得ることができる。一般的には、リード先端部から600μm程度離れた位置に前記リードフレーム固定材を塗布することが好ましい。
【0081】
リードフレーム固定材の塗付方法としては、エアディスペンシング法、スクリューディスペンシング法、ジェットディスペンシング法などを想定しており、スクリューディスペンシング法がより好ましいと思われる。これら方法であれば、リードフレーム毎に異なるデザインに合わせて前記リードフレーム固定材を塗布する時、ディスペンサーヘッドの移動プログラムを変更することで適切な位置に塗布できる。適切な位置に塗布することで、リードフレーム固定材は適切な接着強度を発現する。
【0082】
これらの方法でリードフレームに前記リードフレーム固定材を塗布するためには、リードフレーム固定材の粘度が重要な要素となる。リードフレーム固定材の粘度があまりにも高い場合、リード間隙への樹脂の埋め込み不良やディスペンサーの吐出装置に対しての樹脂の追従性が低下することでリードフレーム固定材の塗布性が著しく低下し、リードフレーム固定材の接着強度の低下を招く。具体的には、25℃でのリードフレーム固定材の粘度が150Pa・s以下が好ましい。
【0083】
本実施の形態のリードフレーム固定材には発明の目的を損なわない範囲であれば、その他のエポキシ樹脂(例えば、モノエポキシ化合物、2価エポキシ化合物)を使用することに制限はない。モノエポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート、等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0084】
また、2価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;
ジヒドロキシベンゼン、ビフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0085】
本実施の形態のリードフレーム固定材は、ダムバー形成用接着剤を含めたリードフレーム固定用に特に有用な固定材である。本実施の形態の半導体装置は、前記リードフレームを用いた半導体装置である。具体的には、前記リードフレーム固定材により支持固定されたリードフレームを用いて封止した半導体装置である。また本実施の形態のリードフレーム固定材は、これら以外の用途に使用されることが妨げられるものではない。接着剤及び/又は接合用ペースト、接合用フィルムとして使用される他、導電材料、異方導電材料、絶縁材料、封止材、コーティング材、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料等としても有効に使用することができる。
【0086】
なお、本実施の形態に使用する各種エポキシ樹脂、及び硬化剤は不純物として含まれる塩素やイオン性不純物などが少なければ少ないほど、半導体装置の信頼性を向上させ、材料として好ましい。
【実施例】
【0087】
次に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、接着強度測定、リードフレーム固定材の硬化物のガラス転移温度測定、リードフレーム固定材で固定したリードフレームの作成、半導体装置作成方法、内部剥離評価(吸湿後半田リフロー試験)及び粘度測定は以下の方法及び条件で行った。
【0088】
(1)接着強度測定
標準試験片CP1100Pとリードフレーム固定材との接着面積が25mm×5mmとなるように、厚み100μmのテフロン(登録商標)耐熱テープでスペーサーを形成した。該スペーサーにより形成された空間にリードフレーム固定材を塗り、別の標準試験片を取り付けた。リードフレーム固定材が標準試験片2枚に挟まれたものを225℃のホットプレート上で20秒間加熱することで、リードフレーム固定材を硬化させ、接着強度測定用試験片を作成した。該試験片を島津製作所製AGS−Xを用いて、試験速度10mm/minでリードフレーム固定材の接着強度を測定した。該測定の際の接着強度が10.0N/mm2以上のものを◎、9.0N/mm2以上10.0N/mm2未満のものを○、9.0N/mm2未満のものを△とした。実施例及び比較例で得られたリードフレーム固定材の接着強度測定結果を表2及び3中に示した。
【0089】
(2)リードフレーム固定材の硬化物のガラス転移温度測定
前述(1)の接着強度測定後の試験片から得られる硬化物を用い、セイコーインスツルメント株式会社製EXSTAR6000により、昇温速度10℃/minで硬化物の測定を2回連続で行い、2回目の測定で得られた測定結果に対して、同社製muse解析ソフトを用いて解析を行うことでリードフレーム固定材の硬化物のガラス転移温度を得た。
【0090】
(3)リードフレーム固定材で固定したリードフレームの作成
リードフレームとして、インナーリード先端部のリード幅が100μm、リード間隙が50μmの銅アロイ194のQFP208タイプオープンリードフレームを用いた。該リードフレームに対して、リードフレーム固定材の塗布幅が300μmから500μmであり、樹脂量が1.5mgから2.0mgになるように、リード先端部から600μm離れた位置にスクリューディスペンサーでリードフレーム固定材を塗布した。次に、リードフレーム表面が、約5秒で220℃に到達し、その後220℃一定温度になるように調整されたリフロー炉に固定材を塗布したリードフレームを約20秒間入れて固定材を加熱硬化し、インナーリードを固定することで、リードフレーム固定材で固定したリードフレームを作成した。
【0091】
(4)半導体装置作成方法
前述(3)で作成したリードフレーム固定材で固定したリードフレームをオープンリードフレーム封止用金型に固定し、市販の半導体用エポキシ樹脂封止材を用い、成形温度175℃、モールド圧35kgf/cm2で樹脂封止型半導体装置を作成した。
【0092】
(5)内部剥離評価(吸湿後半田リフロー試験)
前述(4)で作成した半導体装置を温度30℃、相対湿度70%下で198時間吸湿させ、遠赤外線加熱方式のリフロー炉(250℃以上で20秒間)中に3回通した後、半導体装置の内部を超音波映像装置(日立建機株式会社製HSAM220)で、断面を走査型電子顕微鏡で観察した。観察の結果、剥離やクラックがなかったリードフレーム固定材は○、剥離やクラックがあったリードフレーム固定材は×とした。実施例及び比較例で得られたリードフレーム固定材の内部剥離評価結果を表2及び3中に示した。
【0093】
(6)粘度測定
リードフレーム固定材の粘度は、循環水温度を25℃に設定したJulabo Labortechnik GMBH製F25恒温水循環装置に接続された東機産業株式会社製TVE-20HTを使用して、測定を行った。ローター番号、レンジは各リードフレーム固定材の粘度に対して、適正なものを使用し測定を行った。粘度が110Pa・sよりも低いものは◎、110Pa・s以上150Pa・s未満のものは○、150Pa・s以上のものは△とした。
【0094】
[エポキシ樹脂用硬化剤の製造]
実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂用硬化剤(マイクロカプセル型アミンアダクト系硬化剤)は以下の方法で製造した。
【0095】
2−プロパノールとキシレンとを重量比で50:50で混合させた溶媒中で、表1に示す配合比(エポキシ基/アミノ基の当量比)にて、原料(エポキシ樹脂とアミン化合物)を反応温度80℃で反応させた。
【0096】
反応後、減圧下で溶剤と低分子アミン成分とを留去し、アミンアダクトb−1〜b−4を得た。得られたアミンアダクトはいずれも25℃で固体状であった。
【0097】
【表1】

エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:185g/当量、全塩素量:1400ppm)。
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:470g/当量、全塩素量:1300ppm)。
エポキシ樹脂3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:215g/当量、全塩素量:1500ppm)。
【0098】
表2及び3に記載の各種カプセル型硬化剤(カプセル型アミンアダクト系硬化剤)は以下の方法で得た。
【0099】
[製造例1:カプセル型アミンアダクトb−1−2]
アミンアダクトb−1を粉砕し、平均粒子径2.4μmの粉砕物を得た(25℃で固体状)。この粉砕物100質量部、水1.5質量部、及びトリレンジイソシアネート7質量部を、200質量部のエポキシ樹脂1に加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で8時間行い、マイクロカプセル型硬化剤であるカプセル型アミンアダクトb−1−2を得た。
【0100】
[製造例2:カプセル型アミンアダクトb−2−2]
アミンアダクトb−2を粉砕し、平均粒子径2.4μmの粉砕物を得た(25℃で固体状)。この粉砕物100質量部、水1.5質量部、及びトリレンジイソシアネート7質量部を、200質量部のエポキシ樹脂1に加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で8時間行い、マイクロカプセル型硬化剤であるカプセル型アミンアダクトb−2−2を得た。
【0101】
[製造例3:カプセル型アミンアダクトb−3−2]
アミンアダクトb−1の代わりにアミンアダクトb−3を用いた以外は、カプセル型アミンアダクトb−1−2と同様にしてカプセル型アミンアダクトb−3−2を得た。
【0102】
[製造例4:カプセル型アミンアダクトb−3−2F]
200質量部のエポキシ樹脂1の代わりに、50質量部のエポキシ樹脂1と150質量部のビスフェノールF型エポキシ樹脂(以下「エポキシ樹脂4」とも記す。)とを用いた以外は、カプセル型アミンアダクトb−3−2と同様にしてカプセル型アミンアダクトb−3−2Fを得た。
【0103】
[製造例5:カプセル型アミンアダクトb−3−2N]
200質量部のエポキシ樹脂1の代わりに、160質量部のエポキシ樹脂4(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:169g/当量、全塩素量:330ppm))と20質量部のナフタレン型エポキシ樹脂(B)(1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン(エポキシ当量:143g/当量、全塩素量:920ppm))とを用いた以外は、カプセル型アミンアダクトb−3−2と同様にしてカプセル型アミンアダクトb−3−2Nを得た。
【0104】
[製造例6:カプセル型アミンアダクトb−4−2]
アミンアダクトb−4を粉砕し、平均粒子径2.4μmの粉砕物を得た(25℃で固体状)。この粉砕物100質量部、水1.5質量部、及びトリレンジイソシアネート7質量部を、200質量部のエポキシ樹脂1に加えて、40℃で攪拌しながら3時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で8時間行い、マイクロカプセル型硬化剤であるカプセル型アミンアダクトb−4−2を得た。
【0105】
[実施例1〜11]
表2に示す配合割合で計量した各原材料を、真空混合機を使用して約5分間混ぜることで目的とする11種類のリードフレーム固定材(実施例1〜11)を得た。作成したリードフレーム固定材について、前述に記載の評価を行い、得られたリードフレーム固定材の内部剥離評価、ガラス転移温度、接着強度及び粘度の評価結果を表2に纏めて示す。
【0106】
【表2】

ナフタレン型エポキシ樹脂(B):1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン(エポキシ当量:143g/当量、全塩素量:920ppm)。
エポキシ樹脂(A)1:式(2)の構造を有し、R2が全て水素原子であり、m1の平均値=2〜9を有するものに相当(具体的製品名:DIC株式会社製 N−770、エポキシ当量:180〜200g/eq、軟化点:65〜75℃)。
エポキシ樹脂(A)2:式(3)の構造を有するものに相当(具体的製品名:三菱化学株式会社製 jER1032H60)。
エポキシ樹脂(A)3:式(4)の構造を有し、m2の平均値=1〜3を有するものに相当(具体的製品名:日本化薬株式会社製 EPPN−501H、エポキシ当量:164g/eq、軟化点:53℃)。
エポキシ樹脂(A)4:式(5)の構造を有するものに相当(具体的製品名:三菱化学株式会社製 jER1031S)。
エポキシ樹脂(A)5:式(2)の構造を有し、各芳香環単位における複数のR2のうち、1つがメチル基であり、残りが水素原子であり、m1の平均値=2〜6を有するものに相当(具体的製品名:DIC株式会社製N−660、エポキシ当量:176〜180g/eq、軟化点:61〜69℃)。
【0107】
[比較例1〜9]
表3に示す配合割合で計量した各原材料を、真空混合機を使用して約5分間混ぜることで目的とする9種類のリードフレーム固定材を得た。作成したリードフレーム固定材について、前述に記載の評価を行い、得られたリードフレーム固定材の内部剥離評価、ガラス転移温度、接着強度及び粘度の評価結果を表3に纏めて示す。
【0108】
【表3】

エポキシ樹脂4:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:169g/当量、全塩素量:330ppm)。
ナフタレン型エポキシ樹脂(B):1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン(エポキシ当量:143g/当量、全塩素量:920ppm)。
エポキシ樹脂(A)2:式(3)の構造を有するものに相当(具体的製品名:三菱化学株式会社製 jER1032H60)。
フェノキシ樹脂:重量平均分子量45000〜55000。エポキシ当量8000g/当量。具体的製品名:三菱化学株式会社製jER1256。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のリードフレーム固定材は、例えば、半導体アセンブリに使用されるリードフレームのインナーリードを固定する材料、又はリードフレームのダムバーを形成する材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)とナフタレン型エポキシ樹脂(B)とを含有し、
硬化物とした際のガラス転移温度が178℃以上であるリードフレーム固定材。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)の含有量が、固定材の樹脂成分100質量%に対して、8質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載のリードフレーム固定材。
【請求項3】
前記ナフタレン型エポキシ樹脂(B)が、溶融状態から25℃まで徐冷したときに液状である、請求項1又は2に記載のリードフレーム固定材。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(A)と前記ナフタレン型エポキシ樹脂(B)との配合比率(質量)(エポキシ樹脂(A)/エポキシ樹脂(B))が、10/90〜25/75である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリードフレーム固定材。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリードフレーム固定材。
【化1】

(式(1)中、R1は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(2)〜(5)で表される群のうちいずれか1つで表される構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリードフレーム固定材。
【化2】

(式(2)中、R2は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基であり、m1は2以上の整数である。)
【化3】

【化4】

(式(4)中、m2は正の整数である。)
【化5】

【請求項7】
エポキシ樹脂用硬化剤をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリードフレーム固定材。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂用硬化剤が潜在性を有するマイクロカプセル型硬化剤である、請求項7に記載のリードフレーム固定材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のリードフレーム固定材で固定されたリードフレーム。
【請求項10】
請求項9に記載のリードフレームを用いた半導体装置。

【公開番号】特開2013−105960(P2013−105960A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250005(P2011−250005)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】