説明

リーリン欠損症または機能障害およびそれに関連する方法

脳および現在近づくことができないまたは近づくことが困難な中枢神経系(CNS)の他の重要成分におけるDIIAレベルを非破壊的に評価または予想するためのバイオマーカーとして、リーリンを測定する方法について記述する。リーリン欠損症または機能障害を有すると診断された、または有することが疑われる患者に、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の作用を代償する量のPUFA、特にω-3PUFA、より詳しくはドコサヘキサエン酸(DHA)またはその前駆体もしくは供給源を投与することを含む、リーリン欠損症または機能障害および/またはリーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態を予防する、その発症を遅らせる、または治療するための方法についても同様に記述する。同様に、患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下を代償するため;患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下を代償するため;患者における脂肪酸結合タンパク質の活性を改善するため;患者における脳脂質結合タンパク質(BLBPs)の発現を増加させるため;患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータを改善するため;中枢神経系(CNS)の構造におけるDHAの欠損を克服して、得られたその機能を改善させるため;患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜への機能的DHAおよび他のPUFAsの取り込みを増加させるため;患者におけるリーリンレベルを増加させるおよび/もしくはリーリン活性を改善するため;ならびに/またはリーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態の少なくとも一つの症状を改善するために、多価不飽和脂肪酸(PUFAs、二つまたはそれ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸)、特に高度不飽和脂肪酸(HUFAs、三つまたはそれ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸)、およびより詳しくはアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸(DPA)から選択されるHUFA、さらにより詳しくはω-3 HUFAs、およびより詳しくはDHAの補給的使用を通してリーリン機能障害または欠損症に関連した発達的欠損または障害を予防または軽減させる方法も記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、脳脂質結合タンパク質(BLBPs)、および詳しくはドコサヘキサエン酸(DHA 22:6 n-3)のようなω-3および/またはω-6多価不飽和脂肪酸(PUFAs)に対して高い親和性を有する物質の補助剤としての使用によって、リーリン欠損症または機能障害およびそれらに関連した病態または障害を治療する方法に関する。本発明はまた、脳および他の組織におけるDHAおよび他のPUFAレベルのバイオマーカーとしてリーリンを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経または神経精神障害および疾患は、予測、同定、および診断に対して絶えず難題であった。より有意な神経変性異常(例えば、統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、てんかん、自閉症、パーキンソン病、老人性痴呆、アルツハイマー病、ペルオキシソーム増殖剤活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病性ニューロパシー、黄斑変性、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脳麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)および無虹彩症)のいくつかの原因は、部分的に、脳におけるニューロンの移動またはニューロンの配置における機能障害に起因する可能性がある。
【0003】
リーリンは、適切なニューロンの移動、ニューロンの方向性において、ならびに中枢および末梢神経系における放射状グリアシステムを維持することによって発達調節物質として肝要な役割を果たしている。リーリンはまた、ニューロンの適切な層状化にも関与している。発達の際、リーリンは、肝臓、腎臓、脳、脊髄および網膜において高レベルで認められる(D'Arcangelo et al., Nature 374;719〜723, 1995)。しかし、多くの発達遺伝子と同様に、リーリンは一生のあいだ発現され続ける。
【0004】
脳脂質結合タンパク質(BLBP)レベルは発達中の脳におけるリーリンレベルに関連し、これは脂肪酸結合タンパク質(FABP)ファミリーメンバーとして機能する。Hartfussら(Development, 2003:130, 4597〜4609)は、リーリンを(インビトロで)添加すると、脳の皮質におけるBLBP含有量が増加することを示した。BLBP(または脳FABP)は典型的に発達中の中枢および末梢神経系のグリア細胞において認められ、発達中の中枢神経系(CNS)に対して脂肪酸を絶えず確実に供給するために、特定の脂質(例えば、ω-3脂肪酸)の輸送、沈着、または保護的保存において機能するように思われる(Ganesaratnam K. Balendiran et al., 2000 The Journal of Biological Chemistry, 275, No. 35, 27045〜27054)。
【0005】
そのような一つの必須ω-3脂肪酸であるDHA(4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸;22:6 n-3)は、脳において最も豊富なn-3多価不飽和脂肪酸である(Williard et al., Journal of Lipid Research, 2001, 42, 1368〜1376)。BLBP(脳-FABP)は、DHAに対して高い親和性および特異性を有し、BLBPは、DHAがフリーラジカル過酸化を受けないように保護するように作用する可能性があると考えられている(Ganesaratnam K. Balendiran et al., 2000)。
【0006】
神経障害を有する患者では、様々なレベルのリーリンが認められている。例えば、Fatemiら(Neuroreport 2001 Oct. 29:12(15):3209〜3215)によれば、リーリンレベルの様々な低下が、統合失調症、双極性障害およびうつ病を有する被験者の脳において認められた。さらに、Chenら(Nucleic Acids Res. 2002 Jul 1:30(13):2930〜2939)は、統合失調症または精神病を伴う双極性障害を有する患者は、脳におけるリーリンレベルが正常より低かったことを示した。Persicoら(Mol Psychiatry, 2001 Mar;6(2):150〜159)は、リーリン遺伝子のより長いサイズ変種(>11 GGCリピート)を有する自閉症患者の脳におけるリーリンレベルがより低く、自閉症に対するより大きい易損性を付与することを証明した。
【0007】
神経疾患または損傷の予防、減少、または治癒のための治療は、従来、薬学的アプローチに重点が置かれている。例えば、開発されているのは常に、症状を緩和するが、神経学的問題の固有の原因を緩和することができない神経精神または神経変性薬である。このように、神経障害、疾患、または損傷を治療するために新規治療戦略が当技術分野においてさらに必要である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の一つの態様は、リーリン欠損症または機能障害を治療する方法に関する。方法には、リーリン欠損症または機能障害を有すると診断された、または有することが疑われる患者に、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償する量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源から選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を投与することが含まれる。一つの局面において、リーリン欠損症または機能障害は、患者における脂肪酸結合タンパク質(例えば、脳脂質結合タンパク質(BLBP))の発現または機能の低下に関連する。
【0009】
好ましくは、患者に対するPUFAの投与は、患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下を代償する、患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下を代償する、患者における脂肪酸結合タンパク質の活性を改善する、患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータを改善する、患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜への機能的DHAの取り込みの増加が起こる、患者におけるリーリンレベルを増加させる、および/または患者におけるリーリン活性を改善する。
【0010】
本発明の方法に従って治療される患者には、PUFAの患者への投与が、疾患もしくは病態の少なくとも一つの症状を改善する、または疾患もしくは病態の発病を予防もしくは遅らせるように、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態を有する、またはそのリスクを有する患者が含まれる。一つの局面において、患者は神経障害または神経精神障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する。もう一つの局面において、患者は発作を有する。もう一つの局面において、患者は神経機能障害に関連した自己免疫障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する。さらにもう一つの局面において、患者は抗リン脂質障害を有する。もう一つの局面において、患者は以下から選択される障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する:統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、てんかん、自閉症、パーキンソン病、老人性痴呆、アルツハイマー病、ペルオキシソーム増殖剤活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病性ニューロパシー、黄斑変性、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脳麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)または無虹彩症。さらにもう一つの局面において、患者は甲状腺障害を有する。
【0011】
この態様の一つの局面において、投与する段階の前に、方法には、患者からの生体試料中のリーリンの量または生物活性を測定する段階が含まれる。例えば、方法には、患者の試料中のリーリンの量を同じタイプの試料中のリーリンの基準値量と比較する段階であって、患者の試料中のリーリン量が基準値量と比較して変化すれば、患者がリーリン欠損症を有することが示される段階が含まれる。測定する段階は、以下が含まれるがこれらに限定されない方法によって行うことができる:mRNA転写分析、ウェスタンブロット、イムノブロット、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈殿、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、ホスホレッセンス、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、またはタンパク質マイクロチップもしくはマイクロアレイ。
【0012】
一つの局面において、方法には、患者の試料におけるリーリンサイズ型プロフィールを確立するために、患者における異なるリーリンサイズ型の相対的発現または活性を決定する段階、および患者のリーリンサイズ型プロフィールを同じタイプの試料におけるリーリンサイズ型の基準値プロフィールと比較する段階であって、基準値プロフィールにおけるサイズ型の相対的発現または活性と比較してリーリンの一つまたはそれ以上のサイズ型の発現が変化すれば、患者がリーリン欠損症または機能障害を有することが示される段階が含まれる。この測定段階は、mRNA転写分析、ウェスタンブロット、イムノブロット、およびキャピラリー電気泳動が含まれるがこれらに限定されない方法によって行うことができる。
【0013】
もう一つの局面において、方法には、患者試料におけるリーリンの活性を同じタイプの試料におけるリーリンの基準値活性と比較する段階であって、基準値レベルと比較して患者の試料におけるリーリンの活性レベルが変化すれば、患者がリーリン機能障害を有することが示される段階が含まれうる。測定段階は、受容体-リガンドアッセイおよび燐酸化アッセイが含まれるがこれらに限定されない技術によって行うことができる。
【0014】
さらにもう一つの局面において、方法には、患者の試料における甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルを測定する段階、および患者の試料中のTSH量を同じタイプの試料におけるTSHの基準値量と比較する段階であって、患者の試料中のTSH量が基準値量と比較して変化すれば、患者がTSH欠損症を有することが示される段階が含まれうる。この局面において、方法は、PUFAと共に甲状腺治療薬を患者に投与する段階をさらに含んでもよい。
【0015】
上記の方法において、生体試料が得られた場合、そのような試料には、細胞試料、組織試料および体液試料が含まれうるがこれらに限定されず、血液試料が特に好ましい。
【0016】
この態様の一つの局面において、方法にはさらに、投与段階の後に少なくとも1回、患者におけるリーリンレベルまたは生物活性に及ぼすPUFA投与の有効性をモニターする段階;または投与段階の後に少なくとも1回、患者におけるリーリンの一つもしくはそれ以上のサイズ型の発現もしくは生物活性の変化に及ぼすPUFAの投与の有効性をモニターする段階が含まれうる。これらの局面において、方法にはさらに、治療の有効性のモニタリングの結果に基づいてその後の治療における患者に対するPUFAの治療を調節する段階が含まれうる。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、組織または体液におけるリーリン発現を調節する方法に関する。この方法には、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)の、患者の組織または体液におけるリーリン発現を調節するために有効な量を患者に投与する段階が含まれる。一つの局面において、PUFAの量は患者の組織または体液におけるリーリン発現を増加させるために十分である。
【0018】
本発明のさらにもう一つの態様は、網膜の発達欠損または障害を予防、減少、またはその発症を遅らせる方法に関する。この方法には、網膜の発達的欠損または障害を予防、減少、またはその発症を遅らせるために有効な、および患者におけるリーリン欠損症または機能障害の効果を代償するために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階が含まれる。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、リーリン欠損症または機能障害に関連した発達的欠損または障害を予防、減少、またはその発症を遅らせる方法に関する。方法には:(a)患者の生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階;ならびに(b)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階であって、投与されるPUFAの量が、試料中のリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定される段階が含まれる。一つの局面において、リーリンの発現または活性を測定する段階はさらに、試料中のリーリンの個々のサイズ型の相対的発現または活性を決定する段階を含む。一つの局面において、患者に投与されるPUFAの量は、患者の試料におけるリーリンの発現または生物活性のレベルを、PUFAの推奨用量に対応するリーリン発現または活性の基準値レベルと比較する段階、およびそれに従って患者に関するPUFAの用量を調節する段階によって決定される。この局面において、患者に投与されるPUFAの量は、患者におけるリーリンの発現または生物活性が基準値レベルと比較して低下している場合に、PUFAの推奨用量と比較して増加させることができる。もう一つの局面において、患者に投与されるPUFAの量は、患者の試料における異なるリーリンサイズ型の発現または活性を、PUFAの推奨用量に対応するリーリンサイズ型の基準値プロフィールと比較する段階、およびそれに従って患者に関するPUFAの用量を調節する段階によって決定される。この局面において、患者に投与されるPUFAの量は、患者の試料中の一つまたはそれ以上のリーリンサイズ型の相対的発現または活性が基準値プロフィールにおけるリーリンサイズ型の相対的発現または活性とは異なる場合に、PUFAの推奨用量と比較して増加させることができる。患者からの生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階は、患者にPUFAを投与した後1回またはそれ以上繰り返すことができ、患者に投与されるPUFAの量は、患者におけるリーリンの発現または生物活性の繰り返し測定に従って調節される。患者の生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階はまた、患者の一生の間の一定期間、または患者の一生を通して間欠的に繰り返すことができ、患者に投与されるPUFAの量は、患者におけるリーリンの発現または生物活性の毎回の新しい測定に対応して調節される。患者におけるリーリンの発現または生物活性が実質的に正常である場合、PUFAはリーリン欠損症または機能障害の発症を予防またはそのリスクを低下させるための補助物質として投与される。この方法を用いて治療される患者には、妊娠女性、授乳期の女性、ヒト成人、ヒト小児もしくはヒト青年、PUFAを胚もしくは胎児の母親に投与することによってPUFAが胚または胎児に投与されるヒト胚もしくは胎児、リーリン欠損症もしくは機能障害または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した神経障害または神経精神障害を有するまたは発症のリスクを有する患者、リーリン欠損症もしくは機能障害または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した自己免疫疾患を有するまたは発症のリスクを有する患者、またはリーリン欠損症もしくは機能障害または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した発達欠損を有するまたは発症のリスクを有する患者が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0020】
本発明のさらにもう一つの態様は、患者の脳におけるDHAレベルをモニターする方法に関する。方法には、患者の生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを測定する段階、およびリーリンの測定に基づいて患者の脳におけるDHAレベルを推定する段階が含まれる。一つの局面において、方法には、測定されたリーリン発現または生物活性レベルに対応するDHA量を患者に投与する段階がさらに含まれる。好ましくは、投与されるDHA量は、患者における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するために、または患者における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために十分である。方法にはまた、患者の生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを、リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較する段階が含まれうる。リーリン発現または生物活性の基準値レベルは、被験者の脳におけるDHAの基準値レベルに相関して、基準値レベルは:(a)同じ細胞タイプ、組織タイプ、もしくは体液タイプである患者の過去の試料におけるリーリン発現もしくは活性に関する過去の測定から、リーリン発現もしくは活性の基準値レベルを確立すること;または(b)マッチさせた個体の集団から得られた、患者の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、もしくは体液タイプの対照試料からのリーリン発現または活性の基準値レベルを確立すること、から選択される方法によって確立される。DHAの基準値レベルと比較して患者の脳における推定DHAレベルが低ければ、患者の脳におけるDHAレベルを代償する量のDHAを患者に投与しなければならないことが示される。
【0021】
本発明のもう一つの態様は患者におけるDHA欠損症を診断する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)患者の生体試料におけるリーリンまたは生物活性を測定する段階;(b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および(c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料中のリーリン発現または活性レベルに差が検出されれば、患者におけるDHA欠損症の診断陽性であることが示される、患者の診断を行う段階。一つの局面において、リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して、生体試料においてより低いレベルのリーリン発現または生物活性が検出されれば、患者におけるDHA欠損症の診断陽性であることが示される。生体試料は、細胞試料、組織試料、および体液試料から選択することができ、好ましくは血液試料である。測定段階(a)には、逆転写酵素-PCR(RT-PCT)、インサイチューハイブリダイゼーション、ノザンブロット、配列分析、マイクロアレイ分析、またはレポーター遺伝子の検出のような、リーリンmRNAの転写を測定する段階が含まれうる。測定段階(a)には、イムノブロット、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈殿、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、ホスホレッセンス、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、またはタンパク質マイクロチップもしくはマイクロアレイによるような、リーリンタンパク質発現を測定する段階が含まれうる。測定段階(a)には、受容体-リガンドアッセイおよび燐酸化アッセイのような、リーリンの生物活性を測定する段階が含まれうる。
【0022】
この態様の一つの局面において、基準値レベルは、以下から選択される方法によって確立される:(a)段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプである、患者からの自己対照試料におけるリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階;(b)それぞれが段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプである、患者からの過去の試料におけるリーリン発現または活性の少なくとも2回の過去の測定からの平均値である、リーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階;または(c)マッチさせた個体の集団から得られた、段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプの対照試料からのリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、患者におけるリン脂質膜へのHUFAの取り込み効率を予測する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;(b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性を、リーリンの基準値レベルと比較する段階;および(c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して、生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差があれば、予測される患者のリン脂質膜へのHUFAの有効な取り込み能が改変されていることが示される、患者のリン脂質膜へのHUFAの取り込み効率を予測する段階。一つの局面において、方法には、予想される患者のリン脂質膜へのHUFAの有効な取り込み能に基づいて決定されるDHAの量を、患者に処方するさらなる段階が含まれる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、妊娠および授乳中の女性においてPUFAsを補給する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)胎児または乳児の片親または両親からの生体試料においてリーリンの発現または生物活性を測定する段階;および(b)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を投与する段階であって、投与されるPUFAの量が親からの試料におけるリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定され、PUFAが女性およびその胎児または乳児におけるPUFAを補給する段階。好ましくはPUFAは、胎児もしくは乳児における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するために、または胎児もしくは乳児における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために十分な量で投与される。一つの局面において、PUFAはリーリン欠損症または機能障害を有する乳児、特に男児を出産するリスクを低下させるために十分な量で投与される。もう一つの局面において、PUFAは、母親、乳児、もしくは胎児における自閉症の症状を予防、その発症を遅延、もしくは減少させるために十分な量で;母親、乳児、もしくは胎児におけるニューロン移動障害の症状を予防、その発症を遅延、もしくは減少させるために十分な量で;または母親、乳児、もしくは胎児におけるリーリン欠損症または機能障害に関連した症状を予防、その発症を遅延、または減少させるために十分な量で投与される。
【0025】
本発明のもう一つの態様は、リーリン欠損症または機能障害を有するまたは発症のリスクを有する乳児を出産するリスクを低下させるために、妊娠および授乳期の女性においてPUFAを補給する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)妊娠女性が胎内に有する胎児の性別を同定する段階;および(b)胎児がリーリン欠損症または機能障害を持って生まれる、または出生後に発症するリスクを低下させるために、妊娠および授乳期の全てまたは一部の期間、女性にω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を投与する段階であって、胎児が女児である場合と比較して男児である場合にはPUFAの投与が増加される段階。
【0026】
本発明のさらにもう一つの態様は、小児におけるリーリン欠損症または機能障害に関連した症状または障害を予防、その発症を遅延、または減少させる方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)小児からの生体試料におけるリーリンの発現および/または生物活性を測定する段階;および(b)投与されるPUFAの量が、試料中のリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定される、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を小児に投与する段階。一つの局面において、PUFAは、DHAおよびARAを含む脂肪酸を添加した小児用処方において提供される。一つの局面において、PUFAは、小児における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するために、または小児における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために;自閉症の症状を予防、その発症を遅延、もしくは減少させるために;またはニューロンの移動障害の症状を予防、その発症を遅延、もしくは減少させるために十分な量で投与される。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、低分子量リーリン表現型に関連したアルツハイマー病の症状を予防、その発症を遅延、または減少させる方法に関する。方法には、以下の段階が含まれる:(a)低分子量リーリン表現型を有する患者を含む、リーリン欠損症または機能障害を有する患者を同定する段階;および(b)患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償するために十分な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される(a)多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、患者における脂肪酸結合タンパク質(FABP)をアップレギュレートする方法に関する。方法には、FABPをアップレギュレートするために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階が含まれる。
【0029】
本発明のさらにもう一つの態様は、リーリンの発現または活性をアップレギュレートするために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、患者におけるリーリン発現または活性をアップレギュレートする方法に関する。
【0030】
本発明のさらにもう一つの態様は、患者におけるニューロンの移動を改善するために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、患者におけるニューロンの移動を改善する方法に関する。この局面において、ニューロンの移動は、患者におけるリーリンの発現または活性レベルを測定することによって測定することができる。神経機能は、例えば造影技術および表現型の評価によって測定することができる。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、リーリンの発現または生物活性が神経前駆細胞に関連している、細胞集団におけるリーリン発現または生物活性を検出する段階を含む、神経前駆細胞を同定する方法に関する。方法にはさらに、リーリン発現または生物活性が検出される神経前駆細胞を選択する段階が含まれうる。
【0032】
本発明のさらにもう一つの態様は、神経の発達をモニターする方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)神経前駆細胞を含む細胞集団を提供する段階;(b)細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出する段階;(c)神経前駆細胞が分化した神経細胞に発達する条件に細胞集団を曝露する段階;および(d)神経前駆細胞の分化神経細胞への発達を評価するために、段階(c)の後に細胞におけるリーリンの発現または活性をモニターする段階。方法にはさらに段階(a)の細胞集団を、段階(b)の前または同時に推定の発達調節化合物に接触させる段階、および細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出することによって、推定の調節化合物が神経前駆細胞の分化神経細胞への発達に影響を及ぼすか否かを決定する段階が含まれうる。
【0033】
本発明のもう一つの態様は、脂肪酸結合タンパク質における欠損または機能障害に関連した障害を治療または予防する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)少なくとも一つの脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の減少を有する患者を同定する段階;および(b)脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の低下の効果を代償するために十分であると決定された量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。脂肪酸結合タンパク質は、一つの局面において、脳脂質結合タンパク質(BLBP)である。脂肪酸結合タンパク質は、一つの局面において、心臓における脂肪酸結合タンパク質である。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害に関連した障害を治療または予防する方法である。方法には以下の段階が含まれる:(a)脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害を有する患者を同定する段階;および(b)脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害の効果を代償するために十分であると決定された量のω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。
【0035】
本発明のさらにもう一つの局面は、リーリン欠損症を有するまたは発症のリスクを有する患者における脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の低下を代償するために十分な量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)の量と、リーリン欠損症に関連した障害を治療または予防するための少なくとも一つの治療化合物とを含む薬学的組成物に関する。一つの局面において、治療化合物は甲状腺治療薬である。
【0036】
本発明のもう一つの態様は、患者におけるDHA欠損症を診断する方法に関する。方法には、以下の段階が含まれる:(a)患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;(b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;(c)患者の生体試料における甲状腺刺激ホルモン(TSH)発現および/または生物活性を測定する段階;(d)生体試料におけるTSH発現または生物活性をTSH基準値レベルと比較する段階;および(e)基準値レベルのリーリン発現または生物活性と比較して生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルの差が検出されれば、および基準値レベルのTSH発現または生物活性と比較して生体試料におけるTSH発現または生物活性レベルの差が検出されれば、患者がDHA欠損症の診断陽性であることが示される、患者の診断を下す段階。生体試料には、細胞試料、組織試料、および体液試料が含まれうる。一つの局面において、患者は妊娠している、または妊娠が疑われる。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、妊娠および授乳期の女性におけるPUFAsを補給する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)胎児または乳児の母親の生体試料におけるリーリンの発現および/または生物活性を測定する段階;(b)生体試料における甲状腺刺激ホルモンの発現および/または生物活性を測定する段階;(c)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、胎児または乳児の母親に投与する段階であって、投与されるPUFAの量が、親からの試料におけるリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定され、PUFAが女性およびその胎児または乳児におけるPUFAを補給する段階;ならびに(d)母親の試料におけるリーリンおよび甲状腺刺激ホルモンの測定が、基準値レベルのリーリンおよび甲状腺刺激ホルモンと比較して低いことが決定されれば、胎児または乳児の母親に少なくとも一つの甲状腺治療薬を投与する段階。
【0038】
本発明のさらにもう一つの態様は、胎児の神経発達障害を診断する方法に関する。方法には以下の段階が含まれる:(a)胎児の羊水試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;(b)試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および(c)基準値レベルのリーリン発現または生物活性と比較して、試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差が検出されれば、胎児における神経発達障害の診断陽性が示される、胎児の診断を下す段階。一つの局面において、(c)において診断陽性である胎児に、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンまたはリーリン遺伝子の量を子宮内に投与する。もう一つの局面において、(c)において診断陽性である胎児に、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンを生後投与する(例えば、乳児用処方によって)。
【0039】
本発明のさらにもう一つの態様は、リーリン欠損症もしくは機能障害、またはそれに関連した疾患もしくは病態の発症を遅延または予防するために十分な量のリーリンを含む、栄養補助剤または経口医用薬剤に関する。一つの局面において、補助剤または医用薬剤は、乳児処方で提供される。もう一つの局面において、補助剤または医用薬剤は、乳児の母親に授乳前または授乳時にリーリンが補給される、乳児の母親が産生した乳汁によって乳児に提供される。
【0040】
PUFAが投与される上記の任意の方法において、PUFAは、一つの局面において、高度不飽和脂肪酸(HUFA)である。もう一つの局面において、PUFAは以下から選択される:アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸(DPA)。もう一つの局面において、PUFAは、ARA、EPA、およびDHAから選択される。さらにもう一つの局面において、PUFAはDHAである。もう一つの局面において、PUFA源は、魚油、海藻、および植物油から選択される。さらにもう一つの局面において、PUFAがDHAである場合、DHAの前駆体は、α-リノレン酸(LNA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ならびにLNA、EPA、およびDPAからなる群より選択される前駆体混合物から選択される。もう一つの局面において、PUFAは以下から選択される形で投与される:トリグリセリド型のPUFAを含む高度精製型藻類油、PUFAを含むトリグリセリド油、PUFAを含むリン脂質、タンパク質とPUFAを含むリン脂質との組み合わせ、乾燥海洋微小藻類、PUFAを含むスフィンゴリピッド、エステル、遊離の脂肪酸、PUFAともう一つの生物活性分子との結合物、およびその組み合わせ。生体活性分子には、タンパク質、アミノ酸、薬物、または炭化水素が含まれうるがこれらに限定されない。一つの局面において、PUFAは経口投与される。もう一つの局面において、PUFAは、咀嚼錠、急速溶解錠、発泡錠、溶解用粉末、エリキシル剤、液剤、溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠、二層錠、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、ロゼンジ、咀嚼ロゼンジ、ビーズ、粉剤、顆粒剤、粒子、微粒子、分散型顆粒、カシェ剤、潅注、坐剤、クリーム、局所塗布剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、パッチ、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、経口摂取物、注射用剤、注入剤、棒状健康食品、菓子、シリアル、シリアルコーティング、食品、栄養食品、機能的食品またはその組み合わせから選択されるPUFAまたはその前駆体もしくは供給源を含む製剤として投与される。この局面において、製剤におけるPUFAは、以下から選択される剤形で提供されてもよい:PUFAを含む高度精製藻類油、PUFAを含むトリグリセリド油、PUFAを含むリン脂質、タンパク質とPUFAを含むリン脂質との組み合わせ、PUFAを含む乾燥海洋微小藻類、PUFAを含むスフィンゴリピッド、PUFAのエステル、遊離の脂肪酸、PUFAともう一つの生体活性分子の結合体、またはその組み合わせ。もう一つの局面において、PUFAは患者の体重1 kgあたりPUFA約0.05 mg〜患者の体重1 kgあたりPUFA約200 mgの用量で投与される。もう一つの局面において、PUFAは、リーリン欠損症または機能障害に関連した病態を治療するために一つまたはそれ以上のさらなる治療物質と併用して、患者または被験者に投与することができる。
【0041】
発明の詳細な説明
本発明は一般的に、リーリン欠損症または機能障害の影響および体内における、および一つの態様において脳における脂肪酸結合タンパク質のレベルの低下を緩和または代償するために、脂肪酸の補給、特にω-3および/またはω-6多価不飽和脂肪酸(PUFA)の補給(例えば、DHA)を用いる方法に関する。本発明の方法は好ましくは、リーリン欠損症または機能障害および/または脂肪酸結合タンパク質の減少に関連した様々な疾患および病態の予防、その発症の遅延、または治療の形で患者に対して利益を提供する。より詳しく述べると、本発明は、脳脂質結合タンパク質の減少を緩和または代償するために、および糖タンパク質リーリンの低レベル、不適切な発現、または調節障害によって引き起こされた、またはそれらに関連する脳における不適切なニューロンの移動を緩和または代償するために、DHAのようなPUFAを患者に補給することに向けられる。不適切なニューロンの移動は、失読症、統合運動障害、発作、てんかん、および注意欠陥多動障害(ADHD)を含む多様な神経障害と共に、統合失調症、双極性障害、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)および無虹彩症のような精神障害に関連している。
【0042】
適切に機能するリーリンシグナル伝達経路は、発達中の脳の大脳皮質における適切なニューロンの移動にとって肝要である。この経路からそれると、放射状グリア細胞および星状細胞における多価不飽和脂肪酸特異的結合タンパク質または脳脂質結合タンパク質(BLBP)の過小発現が引き起こされ、それによって放射状グリアの突起の伸長が短くなり、それによって不適切なニューロンの移動が起こりうる。理論に拘束されたくないが、本発明者らは、BLBPは、発達中の脳において酸化およびホスホリパーゼ活性から多価不飽和脂肪酸、および特にDHAを保存および保護するために発現されると考えられる。本発明において、発達中のグリア細胞およびニューロンにおけるリン脂質膜に取り込まれうる機能的DHAの適切な量を脳に供給することによって、低いBLBP発現の影響を相殺するために、ω-3脂肪酸補助剤が、リーリン欠損症および/または機能障害を有する患者に提供される。
【0043】
したがって、一つの態様において、本発明は一般的に、脳および現在到達できないまたは到達することが困難な中枢神経系(CNS)の他の重要な成分におけるDHAレベルを非破壊的に評価または予測するために、バイオマーカーとしてリーリンを測定する方法に関する。例えば、リーリンの発現および/または生物活性レベルを含む、リーリンのサイズ型(リーリン部分)を測定して、脳におけるDHAレベルの相対的量を定性的に推定することができる。この測定は、個体の人生を通して脳におけるDHAレベルを間接的に追跡するために用いることができ、ライフサイクルにおける特定の時点でDHAによる栄養的介入の必要性に関する指標として用いることができる。本発明の前に、おそらく患者に害を与えることなく、脳におけるDHAレベルを評価することは難しかった。
【0044】
本発明はまた、リーリン欠損症または機能障害を有すると診断された、または有することが疑われる患者に、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償する量の、PUFAおよび特にω-3 PUFA、およびより詳しくはドコサヘキサエン酸(DHA)またはその前駆体もしくは供給源を投与する段階を含む、リーリン欠損症または機能障害、および/またはリーリン欠損症または機能障害に関連する疾患または病態を予防、その発症を遅延、または治療する方法に関する。本発明の前に、DHAはいくつかの神経変性障害の治療において用いることが提唱されていたが、DHAまたは他のPUFAの投与が現在特に有効であると予測される神経変性障害を有する患者の特異的サブセットが存在するとは認識されていなかった。本発明は、患者におけるリーリンレベルの測定によって、そのような患者の同定を可能にする。
【0045】
本発明はまた、患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下を代償するために;患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下を代償するために;患者における脂肪酸結合タンパク質の活性を改善するために;患者における脳脂質結合タンパク質(BLBPs)の発現を増加させるために;患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータを改善するために;中枢神経系(CNS)構造におけるDHAの欠損を克服して、その得られた機能を改善するために;機能的DHAおよび他のPUFAsの、患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜への取り込みを増加させるために;リーリンレベルを増加するおよび/または患者におけるリーリンの活性を改善するために;および/またはリーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態の少なくとも一つの症状を改善するために、多価不飽和脂肪酸(PUFAs−二つまたはそれ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸)および特に高度不飽和脂肪酸(HUFAs−三つまたはそれ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸)、より詳しくはアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸(DPA)から選択されるHUFA、さらにより詳しくはω-3 HUFAsおよびより詳しくはDHAの補給的使用を通して、リーリン機能障害または欠損症に関連した発達的欠損または障害を予防または減少させる方法に関する。
【0046】
本発明の特定の態様には、小児におけるリーリン欠損症または機能障害に関連した障害(例えば、自閉症、ニューロンの移動障害)を予防するために、妊娠中および/または授乳期に少なくとも一つのPUFAおよび/またはその前駆体もしくは供給源を補給すること;神経障害または神経精神障害、発作、および神経機能障害に関連した自己免疫障害、または抗リン脂質障害が含まれるがこれらに限定されない様々な病態および疾患を予防、その発症を減少、または治療するために、低分子量リーリン表現型を成人に補給することが含まれるがそれらに限定されるわけではない。より詳しくは、そのような障害および疾患には、統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、てんかん、自閉症、パーキンソン病、老人性痴呆、アルツハイマー病、ペルオキシソーム増殖剤活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病性ニューロパシー、黄斑変性、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脳麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)および無虹彩症が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0047】
本発明の一つの態様において、妊娠または授乳期の女性にPUFAを補給することは、リーリン欠損または機能障害を有する、または発症のリスクを有する乳児を出産するリスクを低下させるために十分である。一つの局面において、PUFAの補給は、リーリン欠損症または機能障害を有するまたはその発症のリスクを有する男児を出産するリスクを低下させるために特に有用である。本発明の一つの態様において、妊娠女性にPUFAを補給するめに、胎児の性別を最初に決定する。本発明者らは、PUFAの補給が、リーリン欠損症または機能障害を有する乳児を出産するリスクを低下させることができること、および本発明の一つの局面において、この影響は胎児が男児である場合に特に有効である可能性があることを発見した。この態様において、妊娠女性に、ω-3 PUFAおよび/またはω-6 PUFA、またはその前駆体もしくはその供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を妊娠および/または授乳期間の全てまたは一部のあいだ補給する。妊娠女性が少なくとも1人の男児を有する場合、妊娠女性が女児を有する場合と比較して、PUFA補給を増加させることができる。
【0048】
本発明はまた、患者におけるDHAレベルが、特に妊娠中に補給されるべきであるか否かを非破壊的に評価または予測するためにリーリンおよび甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定する方法に関する。甲状腺は、大きいフィードバックプロセスの一部である。脳における視床下部は、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)を放出する。TRHの放出は、下垂体に甲状腺刺激ホルモン(TSH)を放出させる。血流中を循環するTSHは甲状腺に甲状腺ホルモンを産生させて、その血流中に放出させる。TSHはリーリンの産生を増加させうる。したがって、妊娠中のTSHレベルが正常より低ことは、発達中の胎児に負の影響を及ぼす可能性がある不十分なリーリンレベルに相関する、または関与する可能性がある。妊娠中に用いられる女性におけるTSHに関して既存の検査(例えば、Abbott Laboratories)があるが、TSHレベルおよびリーリンレベルの併用に関して試験することは、本発明の前に記述されていない。TSHはいくつかの生物学的機能に影響を及ぼしうるが、本発明者らは、患者におけるTSHおよびリーリンレベルの試験を併用すると、不適切な神経発達に関する患者(および妊娠女性の場合には胎児)のリスクのより正確な評価が得られるであろうと考えている。したがって、そのような二重試験は、妊娠女性におけるリスクを評価するために、および胎児に対して正の発達的影響を有する可能性があるPUFA補給戦略を提供するために有用である。リーリンレベルは、本明細書に記述のように測定することができ、甲状腺刺激ホルモンレベルと同時、またはその前もしくは後に測定される。患者におけるTSHレベルを測定する方法は、当技術分野において公知であり、多様なTSH試験キットが市販されている(例えば、Biosafe, Abbott Laboratories)。リーリンおよびTSHレベルが基準値対照レベルより低いことが決定された場合、DHAまたは他のPUFA補給は、単独、または甲状腺治療薬と併用して患者に処方される。PUFA補給は、本明細書において他所で詳細に記述されている。リーリン基準値レベルを設定および評価する方法は、本明細書において記述されており(下記を参照されたい)、当技術分野で公知である(例えば、PCT出願国際公開公報第03/063110号を参照されたい)。ヒトに関するTSH基準値レベルは当技術分野において公知である。例えば、TSHレベル約0.3〜0.5、および約5.0〜6.0 MU/L、または2003年以降(ごく最近、全米臨床内分泌学会によって改訂)は、約0.3〜約3.0 MU/Lが個体におけるTSHに関する正常(基準値)範囲であると考えられている。
【0049】
本発明はまた、少なくとも一つのω-3および/またはω-6 PUFAおよび/またはその前駆体もしくは供給源を用いることによって幹細胞の増殖を促進するために、組織におけるリーリン発現を調節する方法にも関する。
【0050】
本発明はまた、患者からの生体試料におけるリーリン発現および/または生物活性レベルを測定する段階、およびリーリンの測定に基づいて患者の脳におけるDHAレベルを推定する段階を含む、患者の脳におけるDHAレベルをモニターする方法にも関する。
【0051】
本発明者らはまた、患者の生体試料におけるリーリン濃度の検出を利用して、CNSおよび生殖組織を含む他の組織のDHA含有量を予測することができることを証明した(実施例の章を参照されたい)。例えば、患者の試料におけるリーリン発現および/または生物活性は、本明細書において他所で記述されているように測定する、得る、または決定することができる。リーリンレベルは、同様に本明細書において他所で記述されているように、基準値対照と比較することができる。本発明者らは、リーリン欠損症または機能障害が、機能的HUFAの体内への有効な取り込み能の低下を示していることを示したが、予測される患者の体組織および細胞への機能的HUFAの取り込み能を代償する量のHUFAの補給(例えば、栄養または治療組成物として投与される)を処方することができる。例えば、リーリン欠損症または機能障害を有しない患者と比較して、リーリン欠損症または機能障害を示す患者にHUFAのより高用量を処方してもよく、同様に、患者に適応されるHUFAの量は、患者におけるリーリン発現および/または生物活性の新たな評価に従って、経時的に調節または改変することができる。したがって、本発明のもう一つの態様は、以下の段階を含む、患者におけるリン脂質膜への機能的HUFAの取り込み効率を予測する方法に関する:(a)患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;(b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および(c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差があれば、予想される患者のリン脂質膜への機能的HUFAな有効な取り込み能が改変されていることが示される、患者の機能的HUFAのリン脂質膜への取り込み効率を予測する段階。一つの局面において、方法には患者に、予測される患者のリン脂質膜への機能的HUFAの有効な取り込み能に基づいて決定されるHUFAの量を処方する段階がさらに含まれる。
【0052】
本発明はまた、患者におけるニューロンの移動および/または神経機能の少なくとも一つのパラメータを改善するために、少なくとも一つのω-3および/またはω-6 PUFAおよび/またはその前駆体もしくは供給源の量を患者に投与する段階を含む、患者におけるニューロンの移動および/またはニューロンの機能を改善する方法にも関する。
【0053】
本発明はまた、リーリン発現または生物活性の既定レベルが神経前駆細胞に関連している、細胞集団におけるリーリン発現および/または生物活性を検出する段階を含む、神経前駆細胞を同定する方法にも関する。
【0054】
本発明はまた、以下の段階を含む、神経発達をモニターする方法にも関する:(a)神経前駆細胞を含む細胞集団を提供する段階;(b)細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出する段階;(c)神経前駆細胞が分化神経細胞に発達する条件に細胞集団を曝露する段階;および(d)神経前駆細胞の分化神経細胞への発達を評価するために、段階(c)の後に細胞におけるリーリンの発現または活性をモニターする段階。
【0055】
本発明はまた、上記の任意の方法において他の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)(例えば、EPA、ARA、DPA)と併用してDHAを用いることに関する。
【0056】
本発明はまた、リーリン欠損症を有する、または発症するリスクを有する患者における脂肪酸結合タンパク質の発現および/または活性の減少を代償するために十分な量の、少なくとも一つのω-3および/またはω-6 PUFAおよび/またはその前駆体もしくは供給源を含む治療組成物に関する。
【0057】
本発明はまた、リーリン欠損症を有する、または発症するリスクを有する患者における脂肪酸結合タンパク質の発現および/または活性の減少を代償するために十分な量の、少なくとも一つのω-3および/またはω-6 PUFAおよび/またはその前駆体もしくは供給源と、リーリン欠損症に関連した障害の治療または予防のための少なくとも一つの治療化合物とを含む治療組成物に関する。
【0058】
本発明はまた、これらの場所における脂肪酸脂質結合タンパク質の欠損を予防、その発症を遅延、または治療するために、CNS以外の場所(例えば、心臓および/または免疫/リンパ系に関連した)でDHAを含むPUFA補給を用いることに関する。
【0059】
本発明のもう一つの態様は、以下を含む、胎児の神経発達障害を診断する方法に関する:(a)胎児からの羊水試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;(b)試料中のリーリンまたは生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および(c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して試料中のリーリン発現または生物活性レベルに差が検出されれば、胎児における神経発達障害の診断陽性であることが示される、胎児の診断を下す段階。リーリン発現または活性を測定する方法は、本明細書において他所で考察される。一つの局面において、(c)において診断陽性であった胎児に、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンまたはリーリン遺伝子を子宮内に投与する。もう一つの態様において、(c)において診断陽性であった胎児に、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンを生後に投与する。例えば、リーリンは乳児処方で投与することができる。患者に投与されるリーリンの量には、0.1 μg/日の増加(例えば、1μg/日、1.1μg/日、1.2μg/日等)を含む、約1μg/日〜約10,000 μg/日またはそれ以上が含まれる。
【0060】
本発明のさらにもう一つの態様は、リーリン欠損症もしくは機能障害、またはそれに関連した疾患もしくは病態の発症を遅延または予防するために十分な量のリーリンを含む、栄養補給剤または経口医用薬剤に関する。そのような補給剤は、乳児処方または他の食品として提供することができ、一つの局面において、乳児の母親に授乳前または授乳期にリーリンが補給される、乳児の母親が産生する乳汁によって乳児に提供される。
【0061】
本発明の様々な局面を以下により詳細に記述する。
【0062】
リーリンは、カハール-レッチウス細胞によって脳の新皮質の辺縁帯に分泌される細胞外シグナル伝達糖タンパク質(>400 kDa)であり、リーリンがカドヘリン関連神経受容体およびβ1-クラスインテグリンに結合するという証拠があるが、リーリンは、受容体アポER2に対してより親和性を有する、低密度リポタンパク質受容体ファミリーの二つのメンバー、すなわちVLDLRおよびアポER2に主に結合する。リーリンがVLDLRまたはアポER2のいずれかの細胞外ドメインに結合すると、cdk5/p35、例えばセリン/トレオニンキナーゼによる、シグナル伝達経路における細胞質アダプタータンパク質であるDab1のチロシン燐酸化を許容または誘導する。
【0063】
リーリン分子は、集合して大きいタンパク質複合体を形成するが、同様に自己触媒特性を有して、リーリン複合体をより小さい実体に切断する可能性がある。哺乳類の中枢神経系(CNS)において、リーリンおよび特にその特異的なサイズ変種のいくつか(本明細書においてリーリンサイズ型またはリーリン部分とも呼ばれる)は、VLDLRおよびアポER2によってDab1の燐酸化を誘導することによって、適切なニューロンの移動および配置を制御することが判明している。このニューロンの移動は、脳の正常な皮質発達にとって必要である。
【0064】
リーリンシグナル伝達におけるDab1チロシン燐酸化の重要性は深遠である。例えば、これはホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)、Akt、およびSrcファミリーキナーゼ(SFKs)を活性化する可能性がある(Ballif et al., Molecular Brain Research, 2003, 117, pp 152〜159)。これらのキナーゼの活性化またはシグナル伝達カスケードにおける下流の他のタンパク質(Notch、NckB、erbB2、erbB4、可溶性ニューレギュリンを含むニューレギュリン、GGF等)のアップレギュレーションにより、星状細胞は、放射状グリア細胞への伸長によって形態学的に形質転換して、脳脂質結合タンパク質(BLBPs)と共に他の神経受容体の発現をアップレギュレートするであろう(Brody, T.「The Interactive Fly : Gene networks, development」, 1996)。
【0065】
リーリンをコードするヌクレオチド配列は、ヒトおよびマウスの双方においてクローニングされており、リーリンのcDNAおよびコードされるアミノ酸配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)データベースのような公共のデータベースにおいて認められうる。例えば、ヒトまたはマウスリーリンのヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ、一次アクセッション番号U24703号およびU79716号によってNCBIデータベースにおいて認められうる(これらのデータベースアクセッション番号における情報は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる)。マウスおよびヒトからのアミノ酸配列は94%同一であり、マウスおよびヒトリーリンポリペプチドが非常に構造的および機能的に類似であることを示唆している。その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、PCT出願国際公開公報第03/063110号において考察されるように、リーリンは、その後にF-スポンジンと類似のセグメントが続く切断可能なシグナルペプチドをそのN-末端で有する。リーリンはまた、それぞれが、二つの関連するセグメントによって隣接される上皮細胞増殖因子様モチーフを含む、アミノ酸350〜390個の内部反復配列8個を有する。一連の内部反復配列の前にヒンジドメインが存在し、非常に塩基性の高いアミノ酸33個のC-末端ドメインが後に続く。
【0066】
リーリンは、本明細書において「リーリン部分」と呼ばれる一つまたはそれ以上の異なる「サイズ型」(異なる分子量を有するリーリンタンパク質)として天然において認められる。完全長のリーリンの分子量は約410 kDであり、分子量が例えば約330 kD〜180 kDである天然のタンパク質分解切断産物が存在する。個体において検出することができる任意の他のリーリンサイズ型も同様に本発明に含まれる。これらのサイズ型は、イムノブロッティング技術が含まれるがそれらに限定されるわけではない当技術分野で公知の方法を用いて容易に検出することができる。
【0067】
本発明のいくつかの態様には、一つまたはそれ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)、およびより好ましくは高度不飽和脂肪酸(HUFAs)およびさらにより好ましくはDHAまたはその前駆体もしくは供給源の量を患者に投与する段階が含まれる。多価不飽和脂肪酸(PUFAs)は、ほとんどの真核細胞における膜脂質の重要な成分であり(Lauritzen et al., Prog. Lipid Res. 40:1(2001);McConn et al., Plant J. 15, 521(1998))、特定のホルモンおよびシグナル伝達分子の前駆体である(Heller et al., Drugs 55, 487(1998);Creelman et al., Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 48, 355(1997))。本発明に従って、好ましいPUFAは、炭素18個またはそれ以上を有するPUFAとして定義される長鎖PUFAである。
【0068】
例えば動物、植物、および微生物供給源を含む、如何なる供給源のPUFAも本発明の組成物および方法において用いることができる。好ましい多価不飽和脂肪酸(PUFA)起源は、本発明において用いることが適した如何なる起源のPUFAsとなりうる。好ましい多価不飽和脂肪酸源には、動物、植物、および/または微生物供給源のような、バイオマス供給源が含まれる。本明細書において用いられるように、「脂質」という用語には、リン脂質;遊離の脂肪酸;脂肪酸のエステル;トリアシルグリセロール;ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;リゾホスホリピッド;石けん;ホスファチド、ステロールおよびステロールエステル;カロテノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド);炭化水素;および当業者に公知の他の脂質が含まれる。動物供給源の例には、水生動物(例えば、魚、海洋哺乳類、甲殻類、輪虫類等)および動物組織(例えば、脳、肝臓、眼等)から抽出した脂質が含まれる。植物供給源の例には、巨大藻類、亜麻仁、ナタネ、トウモロコシ、オオマツヨイグサ、ダイズおよびルリヂサが含まれる。微生物の例には、藻類、原生生物、細菌、および真菌(酵母を含む)が含まれる。藻類のような微生物供給源を用いることは、感覚受容性の長所を提供しうる、すなわち微生物供給源からの脂肪酸は魚供給源の脂肪酸が有する傾向がある魚のような味および臭いを有しない可能性がある。より好ましくは、長鎖脂肪酸供給源は藻類を含む。
【0069】
好ましくは、微生物が長鎖脂肪酸の供給源である場合、微生物を発酵器において発酵培地において培養する。または、微生物は光バイオリアクターまたは池において光合成によって培養することができる。好ましくは微生物は脂質に富む微生物であり、より好ましくは微生物は藻類、細菌、真菌、および原生生物からなる群より選択され、より好ましくは微生物は、黄金藻類、緑藻類、渦鞭毛藻類、酵母、クサレケカビ(Mortierella)属およびストラメノピレス(Stramenopiles)属の真菌から選択される。好ましくは、微生物は、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)属およびヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)、ならびにクサレケカビ属の糸状菌を含み、より好ましくは微生物は、ヤブレツボカビ、シゾキトリウム(Schizochytrium)またはその混合物からなる群より選択され、より好ましくは微生物は、ATCC番号20888、ATCC番号20889、ATCC番号20890、ATCC番号20891、およびATCC番号20892、モルティエレラ・スムッケリ(Mortierella schmuckeri)、およびモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)、前述の任意に由来する変異体株、およびその混合物の同定特徴を有する微生物からなる群より選択される。
【0070】
本発明に従って、「ヤブレツボカビ」または「ヤブレツボカビ微生物」、および「ヤブレツボカビ目の微生物」という用語は互換的に用いることができ、ヤブレツボカビ科およびラビリンツラ(Labyrinthulaceae)科の双方が含まれるヤブレツボカビ目の任意のメンバーを指す。「ラビリンツラ目」および「ラビリンツラ科」という用語は、本明細書においてラビリンツラ科のメンバーを特に指すために用いられる。ヤブレツボカビ科のメンバーであるヤブレツボカビを特に言及するために、本明細書において「ヤブレツボカビ科」という用語を用いる。このように、本明細書に関して、ラビリンツラ科のメンバーはヤブレツボカビに含まれると考えられる。
【0071】
発達によってツボカビの分類学はしばしば改訂されてきた。分類学の理論家は、ツボカビを一般的に藻類または藻類様原生生物と共に置く。しかし、分類学上の不確かさから、本発明においてヤブレツボカビとして記述される種は、以下の生物を含めると考えることが本発明の目的にとって最善であろう:ヤブレツボカビ目、ヤブレツボカビ科(属:ヤブレツボカビ、シゾキトリウム、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)、もしくはエリナ(Elina))、またはラビリンツラ科(ラビリンツラ属、ラビリンツロイデス(Labyrinthuloides)またはラビリントミキシア(Labyrinthomyxa))。同様に、以下の属は時にヤブレツボカビ科またはラビリンツラ科のいずれかに含まれ:アルソルニア(Althornia)、コラロキトリウム(Corallochytrium)、ディプロフィリス(Diplophyrys)、およびピロソルス(Pyrrhosorus)、本発明の目的に関して、ヤブレツボカビまたはヤブレツボカビ目のメンバーを参照することによって含まれる。本発明の時点で、ヤブレツボカビの分類の改訂により、ラビリンツロイデス属はラビリンツラ科に置かれ、ストラメノピレス系列内に二つの科、すなわちヤブレツボカビ科とラビリンツラ科を置くことを確認すると認識される。ラビリンツラ科は、時に一般的にラビリンツリド、ラビリンツラ、またはラビリンツロイデスと呼ばれ、ヤブレツボカビ科は、一般的にヤブレツボカビと呼ばれるが、先に考察したように、本発明の明確さという目的に関して、ヤブレツボカビという言及には、ヤブレツボカビ目の任意のメンバーを含み、および/またはヤブレツボカビ科とラビリンツラ科の双方のメンバーが含まれる。最近の分類学上の変更を下記に要約する。
【0072】
本明細書において開示される特定の単細胞微生物の系統は、ヤブレツボカビ目のメンバーである。ヤブレツボカビは、進化した分類学上の歴史を有する海洋真核生物である。ヤブレツボカビの分類学上の位置に関する問題は、Moss(「The Biology of Marine Fungi」, Cambridge University Press p. 105(1986)、Bahnweb and Jackle(同書、p 131))、およびChamberlain and Moss(Biosystems 21:341(1988))によって論評されている。
【0073】
便宜上、ヤブレツボカビは、他の無色の遊走子形成真核生物と共に分類学者によって藻菌類(藻類様の真菌)に最初に置かれた。しかし、藻菌類という名称は最終的には分類学上の状態からなくなり、ヤブレツボカビは、卵菌類(双鞭毛遊走子形成菌)に残された。当初、卵菌類は、不等毛藻類に関連すると仮定されたが、最終的にBarr(Barr. Biosystems 14:359(1981))によって要約された広範な微細構造および生化学研究により、この仮定は支持された。卵菌類は実際に、Leedale(Leedale, Taxon 23:261(1974))および他の藻類学者によって不等毛藻類の一部であると容認された。しかし、その従属栄養的性質に起因する簡便性の問題として、卵菌類およびヤブレツボカビは、藻類学者(藻類を研究する科学者)よりむしろ菌類学者(真菌を研究する科学者)によって大きく研究されてきた。
【0074】
もう一つの分類学的見通しから、進化生物学者は、真核生物がどのように進化したかに関して二つの一般的な考え方を発展させた。一つの理論は、一連の内部共生を通して膜結合オルガネラの外因性の起源を提唱する(Margulis, 1970, 「Origin of Eukaryotic Cells」Yale University Press, New Haven);例えばミトコンドリアは細菌の内部共生体に由来し、葉緑素は藍色植物に由来し、鞭毛はスピロヘータに由来した。他の理論は、自原性プロセスによって原核細胞祖先の非膜結合系からの膜結合オルガネラの段階的進化を示唆する(Cavalier-Smith, 1975, Nature(Lond.)256:462〜468)。しかし、双方のグループの進化生物学者は、真菌から卵菌およびヤブレツボカビを削除して、それらを黄色藻類と共に褐色植物界に加えるか(Cavalier-Smith, Biosystems 14:461(1981))(この界は最近、他の原生生物を含めるように拡大され、この界のメンバーは今ではストラメノピレスと呼ばれている)、または全ての藻類と共に原生生物界に加えている(Margulis and Sagen, Biosystems 18:141(1985))。
【0075】
電子顕微鏡の発達によって、二つのヤブレツボカビ属、すなわちヤブレツボカビとシゾキトリウムの遊走子の微細構造に関する研究(Perkins, 1976, pp.279〜312 in 「Recent Advances in Aquatic Mycology」(ed. E.B.G. Jones)、John Wiley & Sons, New York;Kazama, Can. J. Bot. 58:2434(1980);Barr, 1981, Biosystems 14:359〜370)から、ヤブレツボカビは、卵菌類とは遠縁であるに過ぎないという良好な証拠が提供された。さらに、5-SリボソームRNA配列の対応分析(ある種の多分散分析)を表す遺伝子データから、ヤブレツボカビは真菌とは完全に異なる明らかに独自のグループの真核生物であること、そして紅藻類および褐藻類ならびに卵菌類のメンバーに最も近縁であることが示された(Mannella et al., Mol. Evol. 24:228(1987))。ほとんどの分類学者は卵菌類からヤブレツボカビを削除することに同意している(Bartnicki-Garcia, p 389「Evolutionary Biology of the Fungi」(eds. Rayner, A.D.M., Brasier, C.M. & Moore, D.), Cambridge University Press, Cambridge)。
【0076】
要約すると、Cavalier-Smith(Cavalier-Smith, Biosystems 14:461(1981);Cavalier-Smith, Microbiol. Rev. 57:953(1993))の分類系を用いて、ヤブレツボカビは、褐色植物界(ストラメノピレス)において黄色藻類と共に分類されている。この分類学上の位置は、不等毛藻類の18s rRNA特徴を用いて、ヤブレツボカビが真菌ではなくてクロミスタ(chromist)界に属することを証明したCavalier-Smithらによって最近、再確認されている(Cavalier-Smith et al., Phil. Tran. Roy. Soc. London Series BioSciences 346:387(1994))。これは、全て真正真菌界に置かれる真菌とは完全に異なる界にヤブレツボカビを置く。
【0077】
現在、真核生物には異なる71の群が存在し(Patterson, Am. Nat. 154:S96(1999))、これらの群の中に主要な4系列がある程度の確信を持って同定されている:(1)アルベオレート(Alveolates)、(2)ストラメノピレス、(3)陸生植物-緑藻-紅藻-灰色植物(「植物」)分岐群、および(4)オピストコント(Opisthokont)分岐群(真菌および動物)。これまで、これらの主要な4系列は、界と呼ばれていたが、何人かの研究者によって「界」という概念を用いることはもはや有用ではない。
【0078】
Armstrongによって注目されたように、ストラメノピレスは、三裂の細管状の毛を指し、この系列のほとんどのメンバーがそのような毛を有する鞭毛を有する。ストラメノピレスの運動性の細胞(単細胞生物、精子、遊走子)は、後方に付着した鞭毛2本を有する非対称であって、鞭毛の一つは長く、鞭毛の推力を逆転させる三裂細管状の毛を有し、もう1本は短く滑らかである。これまで、群があまり広くない場合、ストラメノピレスは、クロミスタ界または不等毛(=異なる鞭毛)藻類と呼ばれており、これらの群は、黄緑藻類、黄藻類、ユースティグマトフィテス(Eustigmatophytes)および珪藻類と共に、褐藻または褐藻類からなった。その後いくつかの従属栄養の真菌様生物である水カビおよびラビリンツリド(スライム真正アメーバ)は、類似の運動性細胞を有することが判明し、光合成色素または藻類を指す群は不適当となった。現在、ストラメノピレス系列内の二つの科はラビリンツラ科およびヤブレツボカビ科である。歴史的に、これらの独自の微生物に関して多数の分類状の戦略があり、それらはしばしば同じ目(すなわち、ヤブレツボカビ目)に分類されている。これらの群におけるメンバーの関係はなおも発展中である。Porter and Leanderは、単系発生におけるヤブレツボカビ-ラビリンツラ分岐群を示す、18S小サブユニットリボソームDNAに基づくデータを発表した。しかし、分岐群は、二つの枝によって支持されている:最初は、ヤブレツボカビおよびウルケニア・プロフンダ(Ulkenia profunda)の三つの種を含み、第二は、ラビリンツラの三つの種、ラビリンツロイデスの二つの種、およびシゾキトリウム・アグレガツム(Schizochytrium aggregatum)を含む。
【0079】
したがって、本発明において用いられるヤブレツボカビの分類学上の位置は、以下のように要約される:
界:褐色植物(ストラメノピレス)
門:不等毛類
目:ヤブレツボカビ(ヤブレツボカビ)
科:ヤブレツボカビまたはラビリンツラ
属:ヤブレツボカビ、シゾキトリウム、ジャポノキトリウム、アプラノキトリウム、エリナ、ラビリンツラ、ラビリンツロイデス、またはラビリンツロミキシア。
【0080】
いくつかの初期の分類学者は、ヤブレツボカビ属の少数の最初のメンバー(アメーバ様のライフステージを有するもの)をウルケニアと呼ばれる異なる属に分けていた。しかし、全てではないがほとんどのヤブレツボカビ(ヤブレツボカビおよびシゾキトリウムを含む)は、アメーバ様の段階を示し、そのため、ウルケニアは、研究者によっては有効な属ではないと見なされている。本明細書において用いられるように、ヤブレツボカビ属にはウルケニアが含まれるであろう。
【0081】
門および界のより高等な分類における分類学上の位置の不確かさにもかかわらず、ヤブレツボカビはなおも、そのメンバーがヤブレツボカビ目において分類可能である明確で特徴的な分類である。そのような微生物およびそのような微生物を培養する方法に関する情報は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,407,957号、第5,130,242号、および第5,340,594号において認められうる。
【0082】
本発明に含まれる脂質には、多価不飽和脂肪酸、より詳しくは長鎖多価不飽和脂肪酸、およびさらにより詳しくは炭素原子少なくとも18、20、または22個の長さを有する該脂質に存在する多価不飽和脂肪酸を含む脂質が含まれる。そのような多価不飽和脂肪酸は、少なくとも3個または少なくとも4個の二重結合を有しうる。より詳しくは、多価不飽和脂肪酸には、ドコサヘキサエン酸(少なくとも10、20、30、または35重量%)、ドコサペンタエン酸(少なくとも5、10、15、または20重量%)、および/またはアラキドン酸(少なくとも20、30、40、または50重量%)が含まれうる。多価不飽和脂肪酸には、遊離の脂肪酸およびリン脂質;脂肪酸のエステル;トリアシルグリセロール;ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;リゾホスホリピッド;ホスファチド等を含むPUFA残基を含む化合物が含まれる。
【0083】
リン脂質源には、鶏卵、栄養強化鶏卵、海藻、魚、魚卵、および遺伝子操作された(GE)植物種子または海藻が含まれる。
【0084】
特に好ましい、DHAを含むPUFA供給源には、魚油、海藻、および植物油が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0085】
PUFA、DHAの好ましい前駆体には、α-リノレン酸(LNA);エイコサペンタエン酸(EPA);ドコサペンタエン酸(DPA);LNA、EPA、および/またはDPAの混合物が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0086】
本発明の一つの態様において、脂肪酸および特にω-3脂肪酸およびω-6脂肪酸の混合物を本発明の方法において用いることができる。好ましいPUFAsには、3個またはそれ以上の二重結合を有するω-3およびω-6多価不飽和脂肪酸が含まれる。ω-3 PUFAsは、最終的なエチレン結合が脂肪酸の末端のメチル基からのおよびそれを含む炭素3個であるポリエチレン脂肪酸であり、これには例えばドコサヘキサエン酸C22:6(n-3)(DHA)、およびω-3ドコサペンタエン酸C22:5(n-3)(DPAn-3)が含まれる。ω-6 PUFAは、最終的なエチレン結合が脂肪酸の末端のメチル基からのおよびそれを含む炭素6個であるポリエチレン脂肪酸であり、これにはアラキドン酸C20:4(n-6)(ARA)、C22:4(n-6)、ω-6ドコサペンタエン酸C22:5(n-6)(DPAn-6)およびジホモγリノレン酸C20:3(n-6)(ジホモGLA)が含まれる。
【0087】
本発明に従って、本明細書に記述の補助剤および治療組成物において用いられる長鎖脂肪酸は、多様な形である。例えば、そのような型には、PUFAを含む高度精製藻類油、PUFAを含むトリグリセリド油、PUFAを含むリン脂質、タンパク質とPUFAを含むリン脂質との組み合わせ、PUFAを含む乾燥海洋微小藻類、PUFAを含むスフィンゴリピッド、PUFAのエステル、遊離の脂肪酸、PUFAともう一つの生物活性分子との結合体、およびその組み合わせが含まれるがそれらに限定されるわけではない。生物活性分子には、タンパク質、アミノ酸(例えば、DHA-グリシン、DHA-リジン、またはアミノ酸類似体のような天然に存在するアミノ酸)、薬物、および糖質を含む任意の適した分子が含まれうる。
【0088】
本明細書において概要した形状によって、高い知覚的品質を有する食品、食品補助剤、および医用薬剤を調製する場合に柔軟性が得られる。例えば、現在利用可能な微小藻類の油は約40%DHAを含む。これらの油をエステル型に変換して分子蒸留のような技術を用いて精製して、DHA含有量を70%およびそれ以上に高めることができ、大きさの制限を有する製品、すなわち乳児用食品または実現可能な丸剤の大きさが制限される食事補助剤のような提供サイズが小さい製品において有用となりうる濃縮製品が提供される。油およびリン脂質の組み合わせを用いることは、酸化的安定性を増強するために役立ち、したがって、微小藻類の油の知覚的および栄養的品質を増強するために役立つ。酸化的切断は、トリグリセリド型のPUFAsの栄養および感覚的品質を損なう。リン脂質型を用いることによって、望ましいPUFAsは、より安定で、脂肪酸はトリグリセリド型の場合より生物学的利用率が高い。微生物の油は典型的な魚油より安定であるが、いずれも酸化的分解を受けやすい。酸化的分解は、これらの脂肪酸の栄養的価値を低下させる。さらに、酸化された脂肪酸は、健康にとって有害であると考えられている。より安定な脂肪酸系であるリン脂質DHA/DPA/ARA/ジホモ-GLAを用いることは、これらの補助剤の健康および栄養的価値を増強する。リン脂質はまた、トリグリセリド油より水溶性システムに容易に混合される。タンパク質およびリン脂質の組み合わせを用いることによって、タンパク質および脂肪酸の双方が提供されることから、より栄養的に複雑な食品製剤が得られる。乾燥海洋微小藻類を用いることは、その中の油の高温安定性を提供し、高温で焼く食品の製造にとって都合がよい。
【0089】
本発明の一つの態様において、望ましいリン脂質源には、DHA、DPA、ARA、および/またはジホモ-GLAが濃縮された栄養補助製品を調製するための、Friolexプロセスおよびリン脂質抽出プロセス(PEP)(または関連プロセス)によって調製した鶏卵、植物油、および動物臓器からの精製リン脂質が含まれる。FriolexおよびPEP、ならびに関連プロセスは、そのそれぞれの全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2001年4月12日に提出された「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials」と題する、2001年10月18日に国際公開公報第01/76715号として公表されたPCT特許出願PCT/IB01/00841号;2001年4月12日に提出された「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Alcohol and Centrifugation」と題する、2001年10月18日に国際公開公報第01/76385号として公表されたPCT特許出願PCT/IB01/00963号;および1995年8月12日に提出された「Process For Extracting Native Products Which Are Not Water-Soluble From Native Substance Mixtures By Centrifugal Force」と題する、1996年2月22日に国際公開公報第96/05278号として公表されたPCT特許出願PCT/DE95/01065号においてより詳細に記述されている。
【0090】
好ましくは、トリグリセリド型の望ましいPUFA、リン脂質と配合したトリグリセリド油、リン脂質単独、タンパク質とリン脂質との組み合わせ、または乾燥海洋微小藻類を含む高度精製藻類油は、DHAおよび/またはDPA(n-3)および/またはDPA(n-6)および/またはARAおよび/またはジホモ-GLAで構成される群より選択される脂肪酸残基を含む。より好ましくは、トリグリセリド型の望ましいPUFA、リン脂質と配合したトリグリセリド油、リン脂質単独、タンパク質とリン脂質との組み合わせ、または乾燥海洋微小藻類を含む高度精製海藻油は、DHA、ARA、またはDPA(n-6)で構成される群から選択される脂肪酸残基を含む。より好ましくは、トリグリセリド型の望ましいPUFA、リン脂質と配合したトリグリセリド油、リン脂質単独、タンパク質とリン脂質との組み合わせ、または乾燥海洋微小藻類を含む高度精製海藻油は、DHAおよびDPA(n-6)で構成される群より選択される脂肪酸残基を含む。最も好ましい態様において、トリグリセリド型の望ましいPUFA、リン脂質と配合したトリグリセリド油、リン脂質単独、タンパク質とリン脂質との組み合わせ、または乾燥海洋微小藻類を含む高度精製海藻油は、DHAの脂肪酸残基を含む。
【0091】
DHAのような脂肪酸は、局所または注射剤として投与することができるが、最も好ましい投与経路は経口投与である。好ましくは、脂肪酸(例えば、PUFAs)は、栄養補助剤および/または食品および/または医用製剤および/または飲料の形で患者に投与され、より好ましくは食品、飲料、および/または栄養補助剤、より好ましくは食品、飲料、より好ましくは食品の形で患者に投与される。
【0092】
乳児に関して、脂肪酸は乳児処方、離乳食、ジャーに入ったベビーフード、および乳児用シリアルとして乳児に投与される。
【0093】
如何なる生物学的に許容される投与剤形およびその配合剤も、本発明の主題であると企図される。そのような投与剤形の例には、咀嚼錠、急速溶解錠、発泡錠、溶解用粉末、エリキシル剤、液剤、溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠、二層錠、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、ロゼンジ、咀嚼ロゼンジ、ビーズ、粉剤、顆粒剤、粒子、微粒子、分散型顆粒、カシェ剤、潅注、坐剤、クリーム、局所塗布剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、パッチ、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、経口摂取物、注射用剤、注入剤、棒状健康食品、菓子、シリアル、シリアルコーティング、食品、栄養食品、機能的食品またはその組み合わせが含まれるがそれらに限定されるわけではない。上記の投与剤形の調製は当業者に周知である。好ましくは、望ましいPUFAを濃縮した食品は、焼いた商品およびミクス;チューインガム;朝食用シリアル;チーズ製品;ナッツおよびナッツに基づく製品;ゼラチン、プディング、および充填剤;凍結酪農製品;乳製品;乳製品類似体;ソフトキャンディ;スープおよびスープミクス;スナック食品;加工果汁;加工野菜ジュース;脂肪および油;魚製品;植物タンパク質製品;家禽製品;および食肉製品が含まれるがそれらに限定されるわけではない群より選択される。
【0094】
患者に投与されるPUFAの量は、以下の望ましい結果を提供するために適した任意の量となりうる:患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下の代償;患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下の代償;患者における脂肪酸結合タンパク質の活性の改善;患者における脳脂質結合タンパク質(BLBPs)の発現;患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータの改善;中枢神経系(CNS)構造におけるDHAのような脂肪酸の欠損症および得られたその機能の克服;患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜へのDHAのような機能的脂肪酸の取り込みの増加;患者におけるリーリンレベルの増加および/またはリーリン活性の改善;ならびに/またはリーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態の少なくとも一つの症状の改善。一つの態様において、脂肪酸(PUFA)は、経口、注射、乳剤、または全非経口栄養、局所、腹腔内、胎盤、経皮、または頭蓋内送達によって、0.01 mgの任意の増加(例えば、0.06 mg、0.07 mg等)、または約50 mg〜約20,000 mg/被験者/日の範囲の量を含む、患者の体重1 kgあたりPUFA約0.05 mg〜患者の体重1 kgあたりPUFA約200 mgまたはそれ以上の用量で投与される。例えば、典型的なカプセルDHA補助剤は、100 mg〜200 mg用量/カプセルで製造することができるが、本発明は、DHAまたはもう一つのPUFAのこれらの量を含むカプセル剤形またはカプセルに限定されない。本発明の一つの態様において、PUFA補助剤は、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患を治療するために一つまたはそれ以上のさらなる治療化合物と併用して患者に投与される。そのような治療化合物は、治療される特定の疾患または病態に関して当業者に周知であろう。
【0095】
先に考察したように、DHAのようなPUFA補助剤を選択された患者に投与すると、以下の結果の一つまたはそれ以上を提供する:患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下の代償;患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下の代償;患者における脂質結合タンパク質の活性の改善;患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータの改善;患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜への機能的DHAの取り込みの増加;患者におけるリーリンレベルの増加および/またはリーリン活性の改善。一つの態様において、患者は、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態を有し、患者へのPUFAの投与は、疾患または病態の少なくとも一つの症状を改善する。
【0096】
治療される患者は、リーリン欠損症または機能障害に関連した任意の疾患または病態を発症するリスクを有しうる、または既に有してもよい。そのような疾患および病態には、神経障害または神経精神障害、発作、神経機能障害に関連した自己免疫障害、および抗リン脂質障害が含まれるがそれらに限定されるわけではない。より詳しくは、そのような疾患または病態には、統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、てんかん、自閉症、パーキンソン病、老人性痴呆、アルツハイマー病、ペルオキシソーム増殖剤活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病性ニューロパシー、黄斑変性、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脳麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)および無虹彩症が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0097】
好ましくは、DHAのようなPUFAを患者に投与することは、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態の少なくとも一つの症状を予防、その発症を遅らせる、その重症度または期間を減少させる。好ましい態様において、患者は本発明の方法の結果として、もはや不適当なリーリンレベルまたは機能に起因する、または関連した不快感および/または機能の変化を示さない。
【0098】
そのため、治療利益は、特定の疾患または病態に関して必ずしも治癒ではなくて、むしろ好ましくは、最も典型的に、疾患または病態の緩和、疾患または病態の消失、疾患または病態に関連した症状の減少、細胞または細胞内メカニズムの代償または正常への回復、原発性疾患または病態の発生に起因する二次疾患または病態の予防または緩和、および/または疾患または病態の予防が含まれる結果を含む。本明細書において用いられるように、「疾患から保護される」という句は、疾患の症状の減少;疾患の発生の減少;および/または疾患の重症度の減少を指す。患者の保護は、患者に投与した場合に、本発明の組成物の疾患発生の予防能、および/または疾患の症状、徴候、もしくは原因の治癒もしくは緩和能を指しうる。そのため、患者を疾患から保護することには、疾患の発生の予防(予防的治療)および疾患を有する患者の治療の双方が含まれる(治療的治療)。有益な作用は、当業者によって、および/または患者を治療する訓練された医師によって容易に評価されうる。「疾患」という用語は、哺乳類の正常な健康からの如何なる逸脱も指し、これには、疾患の症状が存在する状態と共に、逸脱(例えば、感染症、遺伝子変異、遺伝的欠損等)が起こったがまだ症状は発現していない状態が含まれる。本発明に従って、「患者」は、疾患、病態、もしくはリーリン欠損症もしくは機能障害を必ずしも有しない、または発症のリスクを必ずしも有しないが、この用語は、「被験者」、「個体」と互換的に用いることができ、最も一般的に、本発明の方法または組成物によって評価、診断、治療、またはそうでなければ影響を受けるであろう個々の動物(例えば、ヒト被験者または家畜動物)を指す。
【0099】
本明細書に記述の本発明の先に同定された方法の多くの一つの段階には、患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性を検出、測定、または評価する段階が含まれる。試料は細胞試料、組織試料、および/または体液試料となりうる。本発明に従って、「細胞試料」という用語は、一般的に、単離された細胞、組織試料、および/または体液試料が含まれるがそれらに限定されるわけではない、本発明によって評価される細胞を含む任意のタイプの試料を指すために用いることができる。本発明に従って、単離された細胞の試料は、本発明の方法によって評価するために適した数の細胞が収集される任意の適した方法によって臓器、組織、または液体から回収されている、典型的に浮遊状態である、または組織内でインビボで細胞を結合させる可能性がある結合組織から分離されている細胞の標本である。細胞試料における細胞は、必ずしも同じタイプである必要はないが、好ましくは評価される細胞のタイプを濃縮するために精製法を用いることができる。細胞は、例えば組織を剥離させることによって、個々の細胞を放出するために組織試料を処理することによって、または体液からの単離によって得ることができる。単離された細胞の試料と類似であるが、組織試料は、本明細書において、体の臓器または組織の切片として定義され、これには典型的に細胞を共に保持するいくつかの細胞タイプおよび/または細胞骨格構造が含まれる。当業者は、「組織試料」という用語を、いくつかの状況において「細胞試料」と互換的に用いてもよいが、好ましくは、この用語は細胞試料より複雑な構造を示すために用いられることを認識するであろう。組織試料は、例えば切断、切片、または穿孔を含む生検によって得ることができる。体液試料は、組織試料と同様に、細胞を含んでもよく、採取される特定の体液に適した任意の方法によって得られる液体である。採取に適した体液には、血液、粘液、精液、唾液、乳汁、胆汁、および尿が含まれるがそれらに限定されるわけではない。本発明の好ましい態様において、生体試料は任意の血液分画(例えば、全血、血漿、血清)を含む血液試料である。
【0100】
一般的に、試料タイプ(すなわち、細胞、組織、または体液)は、試料の到達可能性および方法の目的に基づいて選択される。典型的に、最小の侵襲的方法によって得ることができる生物試料が好ましい(例えば、血液)が、いくつかの態様において、評価のために細胞または組織試料を得ることが有用または必要である可能性がある。試料が患者から得られた場合、試料は試料の細胞におけるリーリン発現または生物活性の検出に関して評価される。「リーリン発現」という句は、一般的に、リーリンmRNA転写またはリーリンタンパク質翻訳を指しうる(例えば、試料中のリーリンタンパク質の量の検出)。好ましくは、患者におけるリーリン発現または生物活性を検出する方法は、リーリンの基準値または対照レベルを確立するために用いられる試料中のリーリン発現または生物活性を検出するために用いられる方法と同じ、または定性的に同等である。
【0101】
リーリン転写を検出するために適した方法には、液体、細胞、または細胞抽出物からmRNAレベルを検出および/または測定するための任意の適した方法が含まれる。そのような方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、インサイチューハイブリダイゼーション、ノザンブロット、配列分析、マイクロアレイ分析、およびレポーター遺伝子の検出が含まれるがそれらに限定されるわけではない。転写レベルを検出するそのような方法は当技術分野において周知であり、そのような方法の多くは、例えば、Sambrookら「Molecular Cloning : A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Labs Press, 1989および/またはGlickら、「Molecular Biotechnology : Principles and Applications of Recombinant DNA」、ASM Press, 1998に記述される;Sambrookら、同書およびGlickら同書はその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。リーリン転写の測定は主に、試料が細胞または組織試料である場合に特に適している;したがって、試料が細胞または細胞抽出物を含む体液試料である場合、細胞は典型的に、発現アッセイを行うために体液から単離される。
【0102】
リーリン発現はまた、リーリン翻訳の検出(すなわち、試料中のリーリンタンパク質の検出)によって同定することができる。リーリンタンパク質を検出するために適した方法には、液体、細胞、または細胞抽出物からタンパク質を検出および/または測定するための任意の適した方法が含まれる。そのような方法には、ウェスタンブロット、イムノブロット、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈殿、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、ホスホレッセンス、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、およびタンパク質マイクロチップまたはマイクロアレイが含まれるがそれらに限定されるわけではない。そのような方法は当技術分野で周知である。リーリンに対する抗体が産生されて、当技術分野において記述されており(例えば、Ogawa et al., 1995, Neuron, 14:890〜912;DeBergeyck et al., 1998, J. Neurosci. 15 Meth., 82:17〜24を参照されたい)、リーリンタンパク質の検出のためのアッセイの多くにおいて用いることができる。PCT出願国際公開公報第03/063110号において、例えばイムノブロッティング技術を用いて、様々な神経/精神疾患の患者からの血液試料のリーリンサイズ型の量を検出して、基準値対照集団におけるリーリンレベルと比較する。そのような方法は、生体試料においてリーリンを検出するために有用であるが、多様なリーリン検出および測定技術を用いて個体のリーリン状態を評価することができることは当業者に明らかであろう。
【0103】
または、当技術分野で周知の技術を用いて、リーリンに対する抗体を容易に産生することができる。試料中のリーリンに対して選択的に結合する抗体は、当技術分野で利用可能なリーリンタンパク質情報を用いて産生することができる。より詳しくは、「選択的に結合する」という句は、一つのタンパク質のもう一つのタンパク質(例えば、抗体、その断片、または抗原に対する結合パートナー)に対する特異的結合を指し、任意の標準的なアッセイ(例えば、イムノアッセイ)によって測定した結合レベルは、アッセイのバックグラウンド対照より統計学的に有意に高い。例えば、イムノアッセイを行う場合、対照には典型的に、抗体または抗原結合断片単独(すなわち、抗原の非存在下)を含む反応ウェル/チューブが含まれ、抗原の非存在下での抗体またはその抗原結合断片による反応性の量(例えば、ウェルに対する非特異的結合)は、バックグラウンドであると考えられる。結合は、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、イムノブロットアッセイ等を含む当技術分野において標準的な多様な方法を用いて測定することができる。本発明のアッセイキットおよび方法において有用な抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、二価および一価抗体、二重または多重特異的抗体、そのような抗体を含む血清、様々な程度に精製された抗体、および抗体全体の任意の機能的同等物が含まれうる。本発明の単離抗体には、そのような抗体を含む血清、または様々な程度に精製されている抗体が含まれる。本発明の抗体全体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体となりうる。または、一つまたはそれ以上の抗体ドメインが切断または存在しない抗原結合断片(例えば、Fv、Fab、Fab'またはF(ab)2断片)と共に、一本鎖抗体または一つより多いエピトープに結合することができる抗体(例えば、二重特異的抗体)、または一つまたはそれ以上の異なる抗原に結合することができる抗体(例えば、二重または多重特異的抗体)を含む、遺伝子操作抗体またはその抗原結合断片のような抗体全体の機能的同等物も同様に、本発明において用いてもよい。
【0104】
遺伝子操作抗体には、抗体の可変および/または定常領域をコードするDNAの操作または再発現を含む標準的な組換えDNA技術によって産生された抗体が含まれる。特定の例には、抗体のVHおよび/またはVLドメインが抗体の残りの部分とは異なる供給源に由来するキメラ抗体、および少なくとも一つのCDR配列および少なくとも一つの可変領域ネットワークアミノ酸が一つの供給源に由来し、可変および定常領域(適当であれば)の残りの部分が異なる供給源に由来するCDR移植抗体(およびその抗原結合部分)が含まれる。キメラおよびCDR移植抗体の構築は、例えば欧州特許出願第EP-A 0194276号、EP-A 0239400号、EP-A 0451216号、EP-A 0460617号に記述される。
【0105】
一般的に、抗体の産生において、例えばウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット、またはニワトリのような、しかしこれらに限定されない適した実験動物を、それに対する抗体が望ましい抗原に曝露する。典型的に、動物は、動物に注射される抗原の有効量によって免疫される。抗原の有効量は、動物による抗体産生を誘導するために必要な量を指す。次に、動物の免疫系を一定期間反応させる。免疫プロセスは、免疫系が抗原に対する抗体を産生することが判明するまで繰り返すことができる。抗原に対して特異的なポリクローナル抗体を得るため、望ましい抗体を含む動物(または、ニワトリの場合、抗体は卵から採取することができる)から血清を採取する。そのような血清は試薬として有用である。ポリクローナル抗体は、血清を例えば硫酸アンモニウムによって処置することによって、血清(または卵)からさらに精製することができる。
【0106】
Kohler and Milstein(Nature 256:495〜497, 1975)の方法論に従ってモノクローナル抗体を産生してもよい。例えば、免疫した動物の脾臓(または任意の適した組織)からBリンパ球を回収した後、骨髄細胞と融合させて、適した培養培地において持続的に増殖することができるハイブリドーマ細胞の集団を得る。望ましい抗体を産生するハイブリドーマは、ハイブリドーマによって産生される抗体の望ましい抗原に対する結合能を試験することによって選択される。
【0107】
先に記述したように、リーリンは、一つまたはそれ以上の異なる「サイズ型」(異なる分子量を有するリーリンタンパク質)で患者において認められる。これらの「リーリン部分」または「サイズ型」はまた、基準値または対照試料における同じリーリン部分(同じ分子量のリーリン部分)と比較することができる。さらに、患者の生体試料における異なるリーリンサイズ型の比、またはプロフィールを検出して、プロフィールを基準値対照のプロフィールと比較することができる。検出するために特に有用なリーリンサイズ型(部分)には、見かけの分子量約410 kDを有する型(完全長のリーリン)、ならびに約330 kDおよび180 kDの天然に存在するタンパク質分解産物が含まれる。リーリンサイズ型は、リーリンタンパク質の検出のための上記の方法の多くを用いて検出および互いに区別することができる。リーリンサイズ型を含む試料中のリーリンタンパク質レベルを検出する方法も同様に、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、PCT出願国際公開公報第03/063110号に記述されている。例えば、本出願において、うつ病、統合失調症、双極性障害を有する患者におけるリーリンサイズ型の比および量は、正常(非罹患)対照におけるリーリンサイズ型のレベルより統計学的に有意に異なった。類似の結果が、家族に自閉症を有しない対照被験者と比較して、自閉症患者およびその家族メンバーにおいて認められた。したがって、リーリンサイズ型の相対的レベルの変化と共に、試験被験者の生体試料におけるリーリンの全体的なレベルの検出は、所定の試験被験者におけるリーリン状態を評価するために対照または基準値レベルと容易に比較して、それによってリーリン異常を含むリーリン欠損または機能障害を同定することができる。
【0108】
「リーリン生物活性」という用語は、リーリン受容体(例えば、カドヘリン関連神経受容体、β1-クラスインテグリン、低密度リポタンパク質受容体、および特にVLDLRおよびアポER2)に対する結合、リーリン受容体の活性化、リーリン細胞シグナル伝達経路の活性化(例えば、cdk5/p35によるDab1のチロシン燐酸化)、受容体に対するリーリン結合の結果として起こる下流の生物学的事象(例えば、ホスホイノシチド-3-キナーゼ(PI3K)、Akt、およびSrcファミリーキナーゼ(SFKs)の活性化;Notch、NckB、erbB2、erbB4、ニューレギュリンのようなタンパク質のアップレギュレーション;放射状グリア細胞への星状細胞の形態学的形質転換;神経受容体の発現のアップレギュレーション;脳脂質結合タンパク質(BLBPs)のアップレギュレーション等)が含まれるがそれらに限定されるわけではない、リーリンタンパク質の任意の生物学的作用を指す。リーリン生物活性を検出する方法は当技術分野で公知であり、受容体-リガンドアッセイおよび燐酸化アッセイが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0109】
本発明の診断およびモニタリング法は、いくつかの異なる用途を有する。第一に、方法を用いて、所定の病態(例えば、神経学的病態)を有するより大きいプールの患者において、本発明の方法によって(例えば、PUFAsの補給によって)利益を受ける可能性が最も高い、リーリン欠損症または機能障害を有する患者のサブセットを診断およびモニターすることができる。方法はまた、患者における、DHAもしくは他のPUFA欠損症、または脂肪酸結合タンパク質(FABP)の欠損症もしくは機能障害、またはDHAもしくは他のPUFA欠損症、FABP欠損症もしくは機能障害の可能性を有する患者を同定することによって、患者を診断およびモニターするために用いることができる。患者は、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害を有することが疑われる人、または健康であるように思われるが、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害に関する一般的なスクリーニングを受けている人となりうる。患者はまた、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害であると既に診断されていて、現在、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害の再発に関して一般的な検査を受けている人となりうる。
【0110】
「診断する」、「診断」、「診断する」という用語およびその変種は、その徴候および症状に基づく疾患または病態の同定を指す。本明細書において用いられるように、「診断陽性」は、疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態を発症する可能性、または例えばPUFA補給の必要性が同定されていることを示す。対照的に、「診断陰性」は、疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態を発症する可能性、または例えばPUFA補給の必要性が同定されていないことを示す。したがって、本発明において、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害またはその可能性に関する診断陽性(すなわち、正の評価)は、本発明に従うDHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害(例えば、リーリン欠損症または機能障害)の指標(例えば、徴候、症状)が、患者から得た試料において同定されていることを意味する。そのような患者に、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害を減少または消失させるための治療を処方することができる。同様に、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害またはその可能性に関する診断陰性(すなわち、負の評価)は、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害の指標、または本明細書において記述されたDHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害(例えば、リーリン欠損症または機能障害)を発症する可能性の指標が、患者から得られた試料において同定されなかったことを意味する。この場合、患者には典型的に如何なる治療も処方しない、または低レベルDHAもしくは他のPUFA補給を行ってもよいが、DHAもしくは他のPUFA欠損症またはFABP欠損症もしくは機能障害を再度評価するために将来に1回またはそれ以上の時点で再度評価してもよい。本発明の評価方法のこの特定の態様の基準値レベルは典型的に、下記に詳細に考察するように、試験試料と同じ体液供給源(すなわち、同じ組織、細胞、または体液)の「正常」または「健康な」試料に基づく。
【0111】
本発明のこの方法の一つの態様において、方法を用いて、上記の病態の一つを有すると診断されている患者における、リーリン欠損症もしくは機能障害、PUFA欠損症、脂肪酸結合タンパク質欠損症もしくは機能障害、またはそれらに関連する病態もしくは疾患の治療の成功、またはその欠如をモニターする。この態様において、リーリン発現または生物活性の基準値レベルには典型的に、過去の試料または第一の試料と比較して、リーリン、PUFAおよび/または脂肪酸結合タンパク質発現または機能が減少している、増加している、または実質的に不変であるか否かを決定するために、新しいレベルのリーリン発現または生物活性を比較することができるように、モニターされる患者からの試料において検出されたリーリン発現または生物活性の過去のレベルが含まれる。さらに、もしくはまたは、リーリン発現または生物活性の「正常」または「健康な」レベルとして確立された基準値を、この態様において用いることができる。この態様によって、医師または治療担当者は、患者が所定の病態(例えば、神経障害)のために受けている治療(例えば、PUFA補給)の成功または成功の欠如をモニターすることができ、治療を改変すべきか否か(例えば、PUFA補給を増加、減少、または実質的に同じままにすべきか否か)を決定するために医師のために役立ちうる。本発明の一つの態様において、方法には、PUFA欠損症の増加または減少が患者におけるリーリン発現および/または生物活性の評価によって示されるか否かに基づいて患者のPUFA補給治療を改変するさらなる段階が含まれる。
【0112】
したがって、本発明の診断およびモニタリング法には、患者の試料において検出されたリーリン発現または生物活性レベルを、リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較する段階が含まれる。本発明に従って、「基準値レベル」は対照レベルであり、いくつかの態様において、それに対してリーリン発現または生物活性の試験レベル(すなわち、患者の試料における)を比較することができるリーリン発現または活性の正常レベルである。したがって、リーリン発現または生物活性の対照または基準値レベルに基づいて、基準値レベルと比較して、評価される試料が測定可能な増加、減少を有する、または実質的に変化しないか否かを決定することができる。本明細書において考察されるように、基準値レベルは、患者における脂肪酸結合タンパク質のレベルおよび/または機能、特に患者におけるPUFA(例えば、DHA)のレベルを示すことができ、患者におけるDHAおよび/または他のPUFA補給に関するプロトコールを確立するために用いることができる。例えば、リーリンの基準値レベルは、正常な患者(すなわち、健康または陰性対照)において期待される脳または他の組織におけるDHAレベルまたは他のPUFAレベルを示すことができる。したがって、リーリンの発現または生物活性の基準値レベルを参照して用いられる「陰性対照」という用語は、リーリン発現および/または機能に関して正常であると考えられる患者または個体集団からの試料において確立された基準値レベルを指す。もう一つの態様において、基準値は、DHA欠損症または脂肪酸結合タンパク質欠損症または機能障害の診断陽性を示すことができる。本明細書において「陽性対照」基準値と呼ばれるそのような基準値レベルは、患者、別の患者、または個体集団からの試料において確立されたリーリン発現または生物活性レベルを指し、試料におけるリーリンレベルまたは機能は、DHAもしくは他のPUFAの欠損症、またはリーリン欠損症もしくは機能障害に関連した疾患もしくは病態に対応すると考えられた。さらにもう一つの態様において、基準値レベルは、患者のリーリン状態およびPUFA状態を経時的にモニターすることができるように、試験される患者からの過去の試料から確立することができる。リーリン発現または生物活性を検出する方法は、先に詳細に記述されている。
【0113】
リーリン発現または活性の基準値レベルを確立する方法は、そこから試料が得られる同じタイプの組織または臓器、評価される患者の状態、および先に考察したように、アッセイの焦点または目標(例えば、初回診断、モニタリング)に基づいて選択される。好ましくは、方法は患者における試料を評価するために用いられる方法と同じ方法である。
【0114】
一つの態様において、リーリン発現または生物活性の基準値レベルは、患者から得られる自己対照試料において確立される。自己対照試料は、単離された細胞の試料、組織試料、または体液試料となりえて、好ましくは体液試料である。本発明に従って、および当技術分野において用いられるように、「自己」という用語は、評価される試料がそこから得られる同じ患者から得られる。好ましくは、対照試料は、対照試料が、評価される試料に関して最善の可能性がある基準値として役立つように、評価される試料と同じ液体、臓器、または組織から得られる。この態様は、患者の過去の値が、リーリン欠損症もしくは機能障害、またはDHA欠損症の診断陽性または陰性のいずれかとして確立されている場合に最もしばしば用いられる。この基準値は、現在の疾患もしくは病態の進行もしくは抑制をモニターするために、または治療(例えば、PUFA補給)の成功をモニターするために用いることができる。この態様において、新しい試料が定期的(例えば、毎年の検査時)に評価され、脂肪酸補給による予防的または治療的治療が各時点で決定される。初回評価に関して、以下に記述するように、代わりの対照を用いることができ、または望ましければリーリン欠損または機能障害の初回陰性または陽性診断を確認するためにさらなる試験を行ってもよく、患者の試料のリーリン発現または生物活性に関する値をその後の基準値として用いることができる。このタイプの基準値対照は、「正常」レベルが患者によって異なる可能性があるおよび/または診断時に自己対照試料を得ることが可能ではない、実際的ではない、または有益ではない他の臨床診断技法においてしばしば用いられる。
【0115】
リーリン発現または生物活性の基準値レベルを確立するもう一つの方法は、対照試料、および好ましくはマッチさせた対照集団から得られた対照試料のリーリン発現または生物活性の基準値レベルを確立することである。対照試料は、リーリン発現または生物活性に関して評価される試料タイプと同じ試料タイプであることが好ましい。本発明に従って、「マッチさせた個体」は、評価される細胞または腫瘍の増殖のパラメータタイプにとって適している一つまたはそれ以上の特徴に基づいて対照個体をマッチさせることを指す。例えば、対照個体は、性別、年齢、人種、または対照個体および患者の基準値に影響を及ぼす可能性がある任意の関連する生物学的もしくは社会学的要因(例えば、既存の病態、特定の物質の摂取、他の生物学的または生理的要因のレベル)に基づいて評価される患者とマッチさせることができる。例えば、正常な個体の血液中のリーリン発現レベルは、所定の分類の個体(例えば、高齢者対ティーンエージャー、女性対男性)ではより高い可能性がある。リーリン発現または生物活性の対照または基準値レベルを確立するために、マッチさせた多くの個体からの試料を得て、リーリン発現または生物活性に関して評価する。試料タイプは好ましくは、同じ試料タイプであり、試験患者において評価されるタイプと同じ臓器、組織、または体液から得られる。適した対照レベル(例えば、集団)を確立するためにそれに対して対照試料を得なければならないマッチさせた個体の数は、当業者によって決定されうるが、評価される患者(すなわち、試験患者)と比較するために適した基準値を確立するために統計学的に適当でなければならない。対照試料から得られた値は、そのような値を確立するために当技術分野において標準的な方法を用いて適した基準値レベルを確立するために統計学的に処理される。
【0116】
先に記述したような、基準値は、見かけ上は正常な対照者の集団から確立された基準値のような、陰性対照基準値となりうる。または、先に記述したように、そのような基準値は、患者を評価するために用いられる一つまたはそれ以上の基準値レベルを確立することができるように、リーリン欠損症または機能障害を有すると陽性診断されている個体の集団から確立することができる。次に、患者の試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを、患者のリーリンレベルのどのタイプの基準値(陽性または陰性)が統計学的に最も近いかを決定するために、基準値レベルのそれぞれと比較する。所定の患者試料は、最善の診断が、患者が少なくとも何らかの脂肪酸補給を必要とすることを示すリーリン欠損症または機能障害をおそらく示し始めて、おそらくより高等な段階に進行するプロセスであるように、基準値レベル内に入る可能性があると認識されるであろう。本発明の目的は、そのような進行疾患を逆転、補正、または代償することである。
【0117】
基準値は、アッセイが行われる各アッセイ毎に確立する必要はなく、基準値は、上記の任意の方法によって確立された基準値レベルのような、所定の対照試料のリーリン発現に関する既に決定された基準値レベルに関する保存された情報の形を参照することによって確立することができることは、当業者によって認識されるであろう。そのような型の保存された情報には、例えば、参照チャート、「正常」(陰性対照)または陽性リーリン発現に関する集団または個々のデータの電子ファイルの一覧;過去の評価からのデータを記録した患者のカルテ;または診断される患者にとって有用である基準値リーリン発現に関するデータの任意の他の供給源が含まれうるがそれらに限定されるわけではない。
【0118】
リーリン発現または生物活性のレベルが、評価される試料において検出された後、そのようなレベルを上記のように決定されたリーリン発現または生物活性の確立された基準値レベルと比較する。同様に、先に記述したように、好ましくは、評価される試料に関して用いられる検出法は、試験試料と基準値のレベルを直接比較することができるように、基準値レベルを確立するために用いられる検出法と同じである、または定性的および/または定量的に同等である。試験試料を基準値対照と比較する場合、試験試料が基準値レベルに対してリーリン発現または生物活性の測定可能な減少もしくは増加を有するか否か、または試験レベルと基準値レベルのあいだに統計学的に有意差がないか否かが決定される。試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを比較した後、患者の診断、モニタリング、または治療を決定する最終段階を行うことができる。
【0119】
基準値レベルと比較して、評価される試料(すなわち、試験試料)におけるリーリン発現または生物活性(または少なくともいくつかのリーリンサイズ型)のレベルが低下していることが検出されれば、一般的に、基準値試料と比較して、患者はFABPレベルが低下して、DHAまたは他のPUFAの脳組織への取り込みが減少するであろうことを示している。より詳しく述べると、基準値が正常または陰性対照試料である場合、対照試料と比較して試験試料中のリーリン発現または生物活性の低下が検出されれば、患者は低下した、そしておそらく不適当なDHAまたは他のPUFAレベル(DHAまたは他のPUFA欠損症)を有することが示される。基準値試料が患者からの過去の試料(または集団対照)である場合、そして患者におけるリーリン欠損症または機能障害の診断陽性の代表である場合、基準値と比較して試料におけるリーリン発現または生物活性の低下が検出されれば、患者の状態が、改善よりむしろ悪化していること、そして治療を再評価または調節すべきであることを示している。
【0120】
基準値レベルと比較して、評価される試料(すなわち、試験試料)においてリーリン発現または生物活性(または少なくともいくつかのリーリンサイズ型)のレベルの増加が検出されれば、基準値試料と比較して、患者はより少ないFABP発現または機能を有すること、そしてより少ないDHAまたは他のPUFA欠損症を有することが示される。より詳しく述べると、基準値が正常または陰性対照である場合、対照試料と比較して試験試料におけるリーリン発現または生物活性の増加が検出されれば、試験試料が正常である可能性が最も高く、おそらく患者は正常患者の平均値より多くのDHAまたは他のPUFAを産生および/または消費することを示している。基準値試料が患者(または集団対照)からの過去の試料であって、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の診断陽性を表す場合(すなわち、陽性対照)、基準値と比較して試料におけるリーリン発現または生物活性の増加が検出されれば、試験試料がFABPのレベルまたは機能の改善を予測すること、および患者の脳におけるDHAまたは他のPUFAsの増加を予測することが示される。
【0121】
最後に、基準値試料におけるリーリン発現または生物活性と有意差を示さないリーリン発現が検出されれば、基準値試料と比較して、試験試料においてFABP状態またはDHA(または他のPUFA)状態に差がないことが示されることを示している。より詳しく述べると、基準値が正常または陰性対照である場合、試験試料において基準値試料と統計学的に有意差がないリーリン発現または生物活性が検出されれば、試験試料が本質的に正常であり、現在のところ、FABPもしくはDHAまたは他のPUFA欠損症またはリーリン欠損症もしくは機能障害に関連した疾患もしくは病態を示していないことを示している。基準値試料が患者(または集団対照)からの過去の試料であって、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の診断陽性を表す場合(すなわち陽性対照)、試料において、基準値と統計学的に有意差がないリーリン発現または生物活性が検出されれば、患者が実質的に類似のリーリン欠損症または機能障害を有し、それに従って治療しなければならないことを示している。そのような診断は、例えば現在処方されている治療が病態の制御において無効であることを臨床医に示唆する可能性がある。
【0122】
リーリン発現または活性の基準値レベルと比較して変化の診断を確立するために、リーリン発現または活性レベルは、確立された基準値と比較して統計学的に有意である量、変化している(すなわち、少なくとも95%信頼レベル、またはp<0.05)。好ましくは、基準値レベルと比較して試料中のリーリン発現または生物活性に、少なくとも約5%の変化、より好ましくは少なくとも10%の変化、より好ましくは少なくとも約20%の変化、より好ましくは少なくとも約30%の変化、より好ましくは少なくとも約40%の変化、およびより好ましくは少なくとも約50%の変化が検出されれば、試験試料と基準値試料とのあいだに差があるという診断が得られる。一つの態様において、基準値レベルと比較して試料中のリーリン発現または生物活性の1.5倍の変化、より好ましくは基準値レベルと比較して少なくとも約3倍の変化、より好ましくは少なくとも約6倍の変化、さらにより好ましくは少なくとも約12倍の変化、およびさらにより好ましくは少なくとも約24倍の変化が検出されれば、基準値試料と比較してリーリン発現または活性が有意に変化しているという診断が得られる。
【0123】
いくつかの条件において、個々のサイズ型のリーリンのレベルが実際に血液中で増加して、例えば脳におけるリーリン欠損症または機能障害を示す可能性があることは注目すべきである。これらの態様において、方法は、それに従って調節される。その上、より感度のよい診断またはモニタリングアッセイに関して、個々のリーリンサイズ型が検出され、これを基準値対照と比較する。このようにして、リーリンサイズ型の全プロフィールを対応する基準値プロフィールに対して評価することができる。この態様において、リーリンの特定の型は、基準値と比較して試料において増加する可能性があるが、他の型は同時に減少する、または実質的に同じのままである可能性がある。この態様において、リーリン発現または活性の変化の比較およびこの変化が患者におけるFABPもしくはDHAまたは他のPUFA欠損症を示しているか否かの決定は、少なくとも一つのサイズ型の比較によって、または全プロフィールを基準値と比較することによって行われる。患者におけるリーリン型のプロフィールの評価は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、PCT出願国際公開公報第03/063110号において詳細に記述されている。
【0124】
リーリン欠損症または機能障害の診断陽性が本発明の方法を用いてなされた後、望ましければ、DHA(または他のPUFA)またはFABP欠損症もしくは機能障害に関する任意の適した代わりの検出法を用いて実証することができる。
【0125】
リーリン欠損症または機能障害と診断された患者の治療は、PUFA補給、一つの態様において、好ましくはDHA補給の投与によって提供される。本発明は、患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償するためにDHAおよび/または他のPUFAの適当な用量を提供するために用いられる、患者の脳または他の組織におけるDHAレベルを予測するためにリーリン発現および活性を用いることを記述する。患者に提供されるPUFAの量は、先に記述した通りであり、患者の試料を確立された対照試料との比較に基づいて決定することができ、対照試料は脳または他の組織におけるDHAレベル、および患者に対して利益を提供するために必要なPUFAの量と相関している。PUFAの好ましい用量は先に考察した通りである。一つの態様において、最小量のPUFA補給を患者に提供して、患者を一定期間(例えば、数日、数週間、または数ヶ月)の後再評価して、リーリン発現もしくは活性に及ぼす、またはリーリン欠損症に関連した症状、疾患、もしくは病態に及ぼすPUFA補給の影響を評価する。患者において有意な変化または改善を認めない場合、臨床医または医師は、PUFA補給プロトコールを上方に調節して、後の時点でリーリン発現または活性に関して患者を再評価する。PUFA補給量を評価する他に、患者に投与されるPUFAの比およびタイプも定期的に調節してもよい。
【0126】
本発明の一つの態様において、神経前駆細胞を同定する方法が提供される。方法には、リーリン発現または生物活性の既定レベルが神経前駆細胞に関連している、細胞集団におけるリーリン発現および/または生物活性を検出する段階が含まれる。一つの態様において、方法はさらに、それに関してリーリン発現または生物活性が検出される神経前駆細胞を選択する段階が含まれる。
【0127】
もう一つの態様において、本発明は、(a)神経前駆細胞を含む細胞集団を提供する段階;(b)細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出する段階;(c)神経前駆細胞が分化神経細胞に発達する条件に、細胞集団を曝露する段階;および(d)神経前駆細胞の分化神経細胞への発達を評価するために、段階(c)の後に細胞におけるリーリンの発現または活性をモニターする段階を含む、神経の発達をモニターする方法を提供する。この態様において、方法には、段階(a)の細胞集団を、段階(b)の前または同時に、推定の発達調節化合物に接触させる段階、および細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出することによって、神経前駆細胞の分化神経細胞への発達に影響を及ぼすか否かを決定する段階が含まれうる。
【0128】
細胞におけるリーリン発現または活性の検出は、本明細書において考察したように行うことができる。本明細書において用いられたように、「推定の調節化合物」という用語は、特定のプロセスにおいてわかっていないまたはこれまで認識されていない調節活性を有する化合物を指す。先に記述した本発明の化合物の同定法には、神経細胞の分化および発達を追跡するためのマーカーとしてリーリン発現を用いて、神経前駆細胞の発達の調節能に関して試験される化合物を、試験細胞に接触させる段階が含まれる。例えば、試験細胞は、試験される化合物を含む液体培養培地または固体培地において増殖させることができる。さらに、液体または固体培地は、同化可能な炭素、窒素、および微量栄養素のような、細胞増殖にとって必要な成分を含む。
【0129】
一つの局面において、上記の方法は、推定の調節化合物と、細胞における発達に影響を及ぼす要素との相互作用を可能にするために十分な期間、試験される化合物を細胞に接触させる段階を含む。本明細書において用いられるように、「接触期間」という用語は、試験される化合物に細胞が接触している期間を指す。「インキュベーション期間」という用語は、評価の前に細胞を増殖させる全ての期間を指し、接触期間を含みうる。このように、インキュベーション期間には、全ての接触期間が含まれ、試験される化合物が存在しないが、試験前に増殖が継続しているさらなる期間が含まれてもよい。本発明の細胞を推定の調節化合物に、例えば混合によって接触させる条件は、任意の適した培養またはアッセイ条件であり、これには、細胞を培養することができる、または推定の調節化合物の存在下および非存在下で細胞を評価することができる有効な培地が含まれる。本発明の細胞は、組織培養フラスコ、試験管、マイクロタイタープレート、およびペトリ皿が含まれるがそれらに限定されるわけではない多様な容器において培養することができる。培養は、細胞にとって適当な温度、pH、および二酸化炭素含有量で行われる。そのような培養条件も同様に、当業者の範囲内である。細胞は、接触される容器あたりの細胞数、細胞に投与される推定の調節化合物の濃度、細胞と共に推定の調節化合物をインキュベートする期間、および細胞に投与される化合物の濃度を考慮に入れる条件で、推定の調節化合物に接触される。有効なプロトコールの決定は、容器の大きさ、容器中の液体の容積、アッセイにおいて用いられる特定の細胞タイプの培養にとって適していることが公知の条件、および試験される推定の調節化合物の化学的組成(すなわち、大きさ電荷等)のような変数に基づいて当業者が行うことができる。推定の調節化合物の好ましい量は、96ウェルプレートのウェルあたり約1 nM〜約10 mMの推定の調節化合物を含む。
【0130】
本発明に従って、本発明の方法は、霊長類、家畜、およびペット(例えば、コンパニオン動物)が含まれるがそれらに限定されるわけではない脊椎動物綱、哺乳類のメンバーである患者において用いるために適している。最も典型的に、患者はヒト患者である。
【0131】
以下の実施例は、説明する目的で提供され、本発明の範囲を制限すると解釈されない。
【0132】
実施例
実施例1
神経機能障害の特性および治療に対する受容性を確認するための、幼児患者試料におけるリーリンレベルの定量的測定
以下の実施例は、自閉症の診断および得られたDHAによる治療経過を、リーリンの濃度に関して患者の試料を試験することによってどのように決定することができるかを示す。
【0133】
患者の試料
患者の血液試料は、生後1ヶ月〜18ヶ月の幼児の静脈穿刺または踵の穿刺によって得た。試料を、抗凝固剤(EDTAまたはヘパリン)を含む試験管に採取して、遠心し、細胞沈降物から血漿を分離した。得られた血漿は、必要になるまで−80℃で保存する。
【0134】
対照試料
血液試料を、試験被験者の場合と同様に、適した疾患陰性対照被験者から採取する。得られた血漿を同様に、必要になるまで−80℃で保存する。
【0135】
定量的ウェスタンブロッティングによるリーリンレベルの定量的決定
各患者の血漿5μlを、SDS-PAGE試料緩衝液において希釈して、95℃で10分間加熱して試料を完全に変性させた。適当量の各試料を、固定濃度の分解ゲルの上部の固定濃度のスタッキングゲルのレーン1本にローディングする。試料を、適当な分子量マーカーと共に、多数の既知濃度に希釈した血漿対照試料と並べてローディングする。ゲルを標準的な条件で電気泳動して、分解したタンパク質をニトロセルロースメンブレンにエレクトロブロットする。得られたブロットを1%BSAおよび0.1%Tween-20を含むPBSにおいて室温で2時間ブロックする。緩衝液を除去して、ブロットを5〜10μg/mlウサギ抗リーリンIgG抗体を含むブロッキング緩衝液と共に一晩インキュベートする。翌日、ブロットを洗浄して、5〜10 μg/ml西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgGを含む緩衝液と共に室温で1時間インキュベートする。ブロットを再度洗浄して、フィルムに露出した化学発光物質によって検出する。抗リーリン抗体によって、患者および対照試料において、リーリンの異なるサイズ変種に対応するいくつかの異なる分子量のバンドが検出される。患者の試験試料および公知の対照試料において得られたリーリン反応性バンドの密度測定を行う。これらの試料に関する密度測定結果を、リーリンの多数の既知濃度を含む試料によって、患者の試料におけるリーリンの定量的レベルを作製した曲線と比較することによって決定する。
【0136】
分析
自閉症の診断は、患者の試料における異なるリーリンサイズ型(リーリン部分)のそれぞれのレベルを、疾患陰性対照試料におけるレベルと比較することによって行う。対照試料と比較して、患者の試料におけるリーリンの一つまたはそれ以上の型のレベルが増加または減少すれば、その患者が自閉症であることが示される。
【0137】
治療およびモニタリング
先に決定されたリーリンレベルに基づいて、治療レジメを患者に関してデザインする。予防的介入は、乳児が生後12ヶ月に達するまで通常の乳児処方(例えば、約0.2 g/日から約1 g/日の用量)より高レベルのDHAおよびARAを添加した乳児処方によって投与される。この後、乳児が3歳に達するまで、補給を1回使用のカプセルとして提供されるDHA約1 g/日に切り替える。
【0138】
リーリンレベルを3ヶ月毎に評価して、リーリンレベルが平均基準値データの85%以内まで増加しなければ、投与をそれに従って改変する。
【0139】
実施例2
統合失調症を診断する目的での患者におけるリーリンレベルの定量的決定
以下の実施例は、統合失調症の診断、およびDHAによる得られた治療経過を、末梢血試料におけるリーリンレベルを定量的に測定することによって、どのように容易にすることができるかを示す。
【0140】
患者試料
血液試料は、静脈穿刺によって得て、試料を抗凝固剤(EDTAまたはヘパリン)を含む試験管に採取する。試料を遠心して、全細胞から血漿を分離した。得られた血漿を、必要になるまで−80℃で保存する。
【0141】
対照試料
血液試料を、試験被験者の場合と同様に、適した疾患陰性対照被験者から採取する。得られた血漿を、同様に必要になるまで−80℃で保存する。
【0142】
蛍光マイクロプレートイムノアッセイによるリーリンレベルの定量的決定
各患者の血漿50 μlを、PBSプラス0.5%BSAおよび0.05%Tween-20からなるアッセイ緩衝液の等量において2倍希釈する。リーリンの公知の濃度を含む対照試料も同様に、公知の標準曲線を構築するために、アッセイ緩衝液において連続希釈する。希釈した試料および対照を、ウサギ抗リーリンN-末端IgG抗体によってコーティングした後、PBSプラス1%BSAおよび0.1%Tween-20からなるブロッキング緩衝液によってブロックした黒いポリスチレンマイクロプレートの個々のウェルに加える。用いた抗リーリンコーティング抗体は、アッセイにおいて測定されるリーリンの三つ全てのサイズ型に対して汎特異的である。希釈した試料をマイクロプレートのウェルにおいて37℃で2時間インキュベートして、その時点でそれらをウェルから吸引して、ウェルをPBSプラス0.1%Tween-20からなる洗浄緩衝液によって4回洗浄する。ウェルの水分を除去して、それぞれが異なる蛍光プローブに結合して、アッセイ緩衝液において1〜10 μg/mlに希釈された異なる三つのウサギ抗リーリンIgG抗体の混合物100 μLを、プレートの各ウェルに加える。異なる抗リーリン検出抗体のそれぞれは、測定されるリーリンの三つの異なるサイズ型の一つに対して特異的である。ウェルを37℃で1時間インキュベートした後、洗浄緩衝液によって4回洗浄する。それらの水分を除去して、PBS 100μLを各ウェルに加える。次に、マイクロプレートを、抗体-蛍光プローブ結合体のそれぞれに関して適した組の励起および放射フィルターを用いて即時蛍光を測定するように設定された蛍光マイクロプレートリーダーにおいて読み取る。各蛍光プローブの放射強度を測定して、これらの測定値を公知の標準曲線において得られた測定値と比較することによって、各患者または対照試料におけるリーリンの各サイズ型の濃度を決定することができる。
【0143】
分析
統合失調症の診断は、患者の試料におけるリーリンの異なるサイズ型の各レベルを疾患の陰性対照試料におけるレベルと比較することによって行う。対照試料と比較して患者の試料におけるリーリンの一つまたはそれ以上の型のレベルが増加または減少すれば、その患者が統合失調症であることが示される。
【0144】
治療およびモニタリング
先に決定したリーリンレベルに基づいて、患者に関する治療レジメを設計する。治療的介入は、用量0.2〜1 g/日のカプセル型のDHAを投与することによって行われる。次に、循環中のリーリンレベルを2ヶ月毎に試験することによってモニターして、臨床症状と相関させる。リーリンレベルが有意に増加しない場合、または臨床症状が6〜8ヶ月以内に改善または緩解しない場合、DHAの用量を増加させて、他のn-3脂肪酸前駆体を含む他の脂肪酸化合物をさらに補給することができる。
【0145】
実施例3
双極性障害を診断する目的のための患者におけるリーリンレベルの定量的決定
本実施例は、末梢血試料におけるリーリンレベルを定量的に測定することによって、双極性障害の診断および得られたDHAの治療経過をどのように容易にすることができるかを示す。
【0146】
患者試料
血液試料を、静脈穿刺によって得て、試料を抗凝固剤(EDTAまたはヘパリン)を含む試験管に採取する。試料を遠心して、全細胞から血漿を分離した。得られた血漿を、必要になるまで−80℃で保存する。
【0147】
対照試料
血液試料を、試験被験者に関する場合と同様に、適した疾患陰性対照被験者から採取する。得られた血漿を同様に必要になるまで−80℃で保存する。
【0148】
マルチウェル蛍光タンパク質マイクロチップイムノアッセイを用いるリーリンレベルの定量的決定
各患者の血漿25 μlをPBSプラス0.5%BSAおよび0.05%Tween-20からなるアッセイ緩衝液75 mLにおいて4倍希釈する。リーリンの公知の濃度を含む対照試料も同様に、公知の標準曲線を構築するために、アッセイ緩衝液において連続希釈する。希釈した試料および対照を、異なるウサギ抗リーリンIgG捕獲抗体が不連続なスポットとしてプリントされているスライドガラスに結合させた個々のウェルに加える。各ウェルは、測定されるリーリンの異なるサイズ型に対して特異的な三つの捕獲抗体の一つからなり、二次元に配置された多数の個々のスポットを含む。個々の捕獲抗体がプリントされているほかに、スライドガラスの各ウェルはPBSプラス1%BSAおよび0.1%Tween-20によってブロックされている。希釈した試料および対照をスライドガラスのウェルにおいて、湿潤チャンバーにおいて37℃で2時間インキュベートする。このインキュベーション後、ウェルを吸引して、PBSプラス0.1%Tween-20からなる洗浄緩衝液によって4回洗浄する。ウェルの水分を除去して、測定されるリーリンの三つのサイズ型のすべてに対して汎特異的である0.5〜5 mg/mlビオチン結合ウサギ抗リーリンIgG抗体を含むアッセイ緩衝液100 mLを各ウェルに加える。次に、スライドガラスを湿潤チャンバーにおいて37℃で1時間インキュベートする。インキュベーション後、ウェルを吸引して、洗浄緩衝液によって4回洗浄して、水分を除去する。この時点で、蛍光プローブに結合させた10〜20 mg/mlストレプトアビジンを含むアッセイ緩衝液100 mLを各ウェルに加える。次に、スライドガラスをインキュベーターにおいて室温で1時間インキュベートして、この時点でウェルを吸引して、洗浄緩衝液によって4回洗浄する。ウェルをスライドガラスから注意深く除去して、スライドガラス全体を脱イオン水においてすすぎ、窒素流の下で乾燥させる。乾燥後、スライドガラスを、アッセイにおいて用いられるストレプトアビジン-蛍光プローブにとって適した放射フィルターを備えたレーザー装備共焦点スキャナにおいて走査する。スライドガラスのデジタルビットマップ型の画像を作製して、マイクロアレイ画像分析ソフトウェアを用いて、全てのスポットの強度を決定する。患者の試料ウェルにおける個々のリーリンスポットのそれぞれの強度を、公知の標準曲線ウェルにおける対応するスポットの強度と比較することによって、各患者または対照試料におけるリーリンの各サイズ型の濃度を決定することができる。
【0149】
分析
双極性障害の診断は、患者の試料におけるリーリンの異なるサイズ型(リーリン部分)の各レベルを疾患の陰性対照試料におけるレベルと比較することによって行う。対照試料と比較して患者の試料におけるリーリンの一つまたはそれ以上の型のレベルが増加または減少すれば、患者が双極性障害であることが示される。
【0150】
治療およびモニタリング
先に決定したリーリンレベルに基づいて、患者に関する治療レジメを設計する。治療的介入は、用量0.2〜1 g/日の乳剤型としてDHAを補給する食品を患者に摂取させることによって行うことができる。患者を精神的または行動の変化に関してモニターして、血液試料を3ヶ月毎に採取して、循環中のリーリンレベルを決定する。患者の持続的な精神および行動学的状態、ならびにそのリーリンレベルに応じて、異なる用量のDHAまたはDHAおよび他の脂質の異なる処方を提供するように、治療を改変することができる。
【0151】
実施例4
本実施例は、雄性ホモ接合ミュータントリーラーマウスが野生型およびヘテロ接合動物または雌性双物と比較して側頭葉におけるDHA含有量が有意に上昇していること、ならびにホモ接合変異体リーラー動物が、野生型およびヘテロ接合動物と比較して側頭葉のARAが有意に増加していることを証明する。
【0152】
「リーラーマウス」(Relnrl)は、細胞外シグナル伝達糖タンパク質リーリンを発現する遺伝子に関してホモ接合劣性であり、不適当なリーリンレベルによる発達欠損および明白な運動欠損を示す「変異体リーラー表現型」を示すマウスである。リーリンタンパク質は、脳、肝臓、腎臓、網膜、および脊髄を含む体の様々な組織を通して発現される可能性がある。リーリンは、脳および他の組織におけるDHAレベルのバイオマーカーであることから、リーリン欠損症はまた、DHAの治療的使用を通して補正することができる。
【0153】
Jackson Laboratories、Bar Harbor、Maineの材料において記述されているように、ホモ接合リーラーマウスは、約2週齢で運動失調歩行、ジストニー姿勢、および振せんを示す。これらの変異体は、その後部4分の1を直立に維持することができず、その運動活性の際にしばしば転倒する。生存率および受精率は大きく低下している。ヘテロ接合体は、野生型対照とは肉眼的に区別できず、したがって、リーラー遺伝子の存在を確認するために、遺伝子型の評価を行わなければならない。行動学的表現型は、小脳の重度形成不全による。
【0154】
本発明者らが行った以下の試験は、リーリンが中枢神経系における長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の血清に基づくバイオマーカーとして役立ちうるか否かを決定した。
【0155】
特異的目的:
正常または異常なリーリン発現を有するマウスの脳組織において、長鎖多価不飽和脂肪酸の状態の差が明白であるか否かを評価する。
【0156】
材料および方法:
6〜12週齢の動物36匹を本実験において試験した。群は、リーリン遺伝子変異2コピーを有するマウス(ホモ接合体、n=12):リーリン遺伝子変異1コピーを有するマウス(ヘテロ接合体、n=12);およびリーリン遺伝子の変異を有しないマウス(野生型;n=12、対照)を含んだ。各遺伝子型の群において、雄性および雌性マウスほぼ同数を試験した。ホモ接合リーラー変異体マウスは表現型によって同定した。ヘテロ接合リーラー変異体マウスおよび正常野生型対照は、遺伝子型分析によって同定した。マウスには、試験期間中、通常の齧歯類用飼料を与えた。
【0157】
マウス脳組織脂肪酸分析:
マウス脳組織を脂肪酸含有量に関して直接分析した。試料中の総脂質を鹸化して、脂肪酸メチルエステルに変換した後、分析した。簡単に説明すると、マウス側頭葉を分析するまで−80℃で凍結保存した。試料を分析前に凍結乾燥した。凍結乾燥した試料をスクリューキャップ試験管に直接量り取ってガラス棒で粉砕した。内部標準(メチルノナデカノエート)を含むトルエン1.0 mLを0.5 N NaOH 1.0 mLと共に試料に加えた。チューブ内の空気を窒素に置換して、キャップし、加熱ブロックにおいて約5分間約100℃に加熱した。試験管を除去して冷却した。14%BF3のメタノール溶液2 mLを試験管に加えて、試験管内の空気を窒素に置換してキャップした。試験管を、加熱ブロックにおいて約100℃に約30分間加熱した。30分後、試験管を除去して冷却させた。塩化ナトリウム飽和水溶液1 mlを試験管に加えて、試験管を攪拌した。層を分離させて、有機層(上層)の一部を分析のために採取した。脂肪酸メチルエステルを、水素炎イオン化検出器を備えたAgilent Technologiesガスクロマトグラフ(モデル5890)において水素炎イオン化検出(GLC-FID)によるガス-液体クロマトグラフィーによって分析した。脂肪酸メチルエステルを、ヘリウムを用いて流速2.0 mL/分でスプリット比15:1によって、30メートルのFAMEWAXキャピラリーカラム(Restek, Bellefonte, PA;直径0.25 mm、コーティングの厚さ0.25μm)において分離した。クロマトグラフィー実施パラメータには、オーブン開始温度130℃が含まれ、このオーブンを5℃/分で225℃まで上昇させて、これを20分維持してから15℃/分で250℃に上昇させて、最終的に5分間維持した。注入器および検出器の温度はそれぞれ、220℃および230℃で一定であった。ピークは、保持時間を、NuCheck Prep(Elysian, MN, U.S.A.)からの脂肪酸メチルエステル標準混合物と比較することによって同定した。個々の脂肪酸は、存在する総脂肪酸の百分率(重量%)として表記した。
【0158】
データは、二元配置一般線型モデルANOVAによってp<0.05で分析した。交互作用が存在する場合、平均値の有意差をt-検定によって評価した。
【0159】
結果:
側頭葉のドコサヘキサエン酸含有量
主効果:
側頭葉DHA含有量のデータを表1に示す。異なるリーリン発現能を有するマウスの側頭葉のDHA脂肪酸組成に有意な主効果の差を認めなかった(p=0.406)。雄性または雌性マウスの側頭葉のDHA脂肪酸組成には差を認めなかった(P=0.267)。しかし、有意な群および性の交互作用が明白であり(P=0.019)、これによって各遺伝子型-性サブグループの特異的統計学的比較が可能となった。この比較によって、側頭葉DHAの最高レベルは、ホモ接合雄性リーラーにおいて明白であり、ホモ接合雌性リーラーには最低レベルのDHAが存在した(P=0.006)。
【0160】
ホモ接合雄性リーラーマウスは、ヘテロ接合雄性マウスと比較して有意に大きい側頭葉DHA含有量を有したが、野生型雄性マウスと比較すると有意差を示さなかった。ホモ接合雌性動物の側頭葉DHA含有量は、遺伝子型による有意差を認めなかった。
【0161】
(表1)側頭葉DHA含有量(総脂肪酸の重量%)

注意:平均値±semは、異なる上付き文字がp<0.05で有意差があることを示している。雄性動物の場合、野生型動物の側頭葉におけるDHA含有量は、ホモ接合動物より低かったが、本試験に関して明記された有意水準に達しなかった(p=0.055)。ホモ接合雌性動物は、p<0.05でホモ接合雄性動物とは異なる。
【0162】
結論:
雄性のホモ接合変異体リーラーマウスは、側頭葉においてDHA含有量が有意に上昇していた。
【0163】
結果:
側頭葉のアラキドン酸含有量
主効果:
側頭葉DHA含有量における有意差は異なる遺伝子型のマウスにおいて明白であった(P=0.004)。ホモ接合リーラー動物は、野生型動物と比較して有意に多い側頭葉ARAを有した(P<0.001)が、ヘテロ接合動物と比較すると類似の側頭葉ARAを有した。ヘテロ接合マウスの側頭葉ARA含有量は、野生型動物においてより大きかったが、統計学的有意水準に達しなかった(P=0.061)。雄性および雌性動物における側頭葉のARA含有量に有意差を認めなかった。
【0164】
交互作用:
遺伝子型と性別のあいだに有意な交互作用を認めなかった。
【0165】
(表2)側頭葉のアラキドン酸含有量(総脂肪酸の重量%)

データは平均値±semである。ホモ接合変異体リーラーマウスは、野生型またはヘテロ接合群と比較して、側頭葉ARAの有意な上昇を示した。雄性および雌性動物における側頭葉のARA含有量に有意差を認めなかった。
【0166】
結論:
ホモ接合変異体リーラー動物は側頭葉ARAが有意に上昇していた。
【0167】
実施例5
以下の実施例は、リーリンと赤血球HUFA状態の関係を示す。特に、本発明者らは、異なるレベルのリーリン発現を有する動物が、赤血球において異なるDHAおよびARA含有量を示すか否かを決定した。
【0168】
材料および方法:
先の実施例4の記載と同じ。
結果:
(表3)性差/赤血球脂肪酸含有量(総脂肪酸の重量%)

各欄において異なる上付き文字を有する平均値は有意差がある(p<0.05)。
【0169】
要約:
RBC DHA
主効果:
異なる遺伝子型の動物のRBC DHA含有量に統計学的に有意差を認めなかった。雄性動物は、雌性動物より有意に高いRBC DHA含有量を有した(6.06±0.76対4.57±1.29%)。
【0170】
交互作用:
RBC DHA含有量に関して遺伝子型と性の変数のあいだに交互作用を認めなかった。
【0171】
結論:
RBCのDHA含有量はリーリン状態が異なるマウスにおいて差がなかった。雄性動物からのRBCのDHA含有量は、雌性動物からのRBCのDHA含有量より高い。
【0172】
RBC ARA
主効果:
異なる遺伝子群(P<0.01)および性(P<0.005)の動物においてRBC ARA含有量に統計学的有意差を認めた。変異体リーリン遺伝子2コピーを有するマウスは、変異体リーリン遺伝子1コピーを有するマウスと比較して有意に低いレベルのRBC ARAを示した。野生型対照におけるRBC ARA含有量は、変異体リーリン遺伝子1コピーまたは2コピーを有するマウスと有意差を示さなかった。雄性動物は、雌性動物と比較して有意に高いRBC ARAを示した。
【0173】
交互作用:
RBC ARAに関して遺伝子型と性の変数のあいだに交互作用を認めなかった。
【0174】
結論:
マウスのRBC ARA含有量はリーリン状態によって改変される。低いリーリン状態を有するマウスはより低いRBCのARAレベルを有する傾向がある。雄性動物は、雌性動物より有意に高いRBC ARAを有する傾向がある。
【0175】
実施例6
以下の実施例は、異常なリーラー遺伝子発現を有するマウスにDHAを提供すると、リーラー表現型症状を有する雄性子孫の数を減少させることができることを証明する。以下の実験において、本発明者らは、一つまたはそれ以上の正常リーリン遺伝子を欠損するマウスに関するLC-PUFAの食事による強化(DHA)が、リーリンの組織病理学/症状を修正し、リーリン欠損マウスにおいて認められる脂肪酸プロフィールを正常化するか否かを試験した。詳しく述べると、本発明者らは、長鎖多価不飽和脂肪酸(DHA)の食事による強化がリーリン欠損マウスにおけるリーリン組織病理学/症状を修正または調節するか否かを評価した。
【0176】
材料および方法:
リーリン食餌試験は、Martek Biosciences Corporationの支援を受けて、Jackson Labs、Bar harbor、Maineにおいて開始した(用いた系統:300235 B6C3Fe a/a-Reln<rl>J)。ヘテロ接合雌性動物をヘテロ接合雄性動物と交配させて、二つの実験飼料の一つを与えた:DHA DEFICIENT DIET(重量で0%DHA;重量で0.14%αリノレン酸)、またはDHA ADEQUATE DIET(重量で0.462%DHA、重量で0.115%αリノレン酸)。雌性動物には、妊娠および授乳中も特殊な試料を与え続けた。妊娠雌性動物から生まれたホモ接合、ヘテロ接合、および野生型の仔に、離乳時に同じ特殊な乳児用飼料を与えた。リーラーマウスの数を各飼料群に関して記録した。リーラー表現型を示さない仔をそのリーラー遺伝子状態の確認のために遺伝子タイピングした。仔を8〜14週齢で屠殺して、組織を脂肪酸分析のために採取した。
【0177】
結果:
DHA 適量飼料
生まれた仔94匹中、マウス14匹(雌性10匹、雄性4匹)が、リーラー表現型を有することが認められた(14.8%)。40匹中4匹(10%)がリーラー表現型を示した。雌性動物54匹中10匹(18.5%)がリーラー表現型を示した。
【0178】
DHA 欠乏飼料
生まれた仔89匹中、マウス19匹(雌性8匹、雄性11匹)がリーラー表現型を有することが認められた(または21.3%)。40匹中11匹の雄性マウス(27.5%)がリーラー表現型を示したのに対し、リーラー表現型を示した雌性マウスは48匹中8匹(16.6%)であった。
【0179】
カイ二乗分析により、DHA 欠乏飼料群と比較してDHA 適量飼料群では、生まれたリーラーマウスがより少ないことが判明した。その上、雄性リーラーマウスの発生率を検出するためのカイ二乗分析から、妊娠および授乳期の仔、ならびに離乳後の仔にDHAを提供すると、雄性リーラー動物の発生率が約3倍減少することが示された(P=0.04)。DHA 欠乏飼料を与えた雄性マウス全体で40匹中11匹、または27.5%がリーラー表現型を示したのに対し、DHA 適量飼料を与えた雄性マウスではリーラー表現型を示したのは全体で40匹中4匹のみ、または10%に過ぎなかった。
【0180】
(表4)DHA 適量飼料およびDHA 欠乏飼料対%リーラー表現型

【0181】
結論:
妊娠中にリーリン欠損マウスにDHAを補給すると、リーラー表現型を示す雄性子孫の数を有意に減少させることができる。
【0182】
実施例7
食餌によるDHAによる赤血球脂肪酸含有量の調節
以下の実施例は、リーリン状態および食餌中のDHA曝露が異なるマウスにおける赤血球DHAおよびARAの変化を示す。詳しく述べると、本発明者らは、食餌中の含有量が異なるリーリン状態のマウスにおけるRBCの脂肪酸組成の差を補正できるか否かを決定した。本発明者らは、変異体リーリン遺伝子発現を有する雄性マウスが異常に高いRBC ARA含有量を有する傾向があることを示しているが、DHAの補給が変異体リーリン遺伝子を有する雄性マウスのRBCにおいてARA発現を調節できるか否かを決定した。
【0183】
材料および方法:
リーリン投与試験は、Martek Biosciences Corporationの支援を受けて、Jackson Labs、Bar harbor、Maineにおいて開始した(用いた系統:300235 B6C3Fe a/a-Reln<rl>J)。ヘテロ接合雌性動物をヘテロ接合雄性動物と交配させて、二つの実験食の一つ:DHA DEFICIENT DIET(重量で0%DHA;重量で0.14%αリノレン酸)、またはDHA ADEQUATE DIET(重量で0.462%DHA、重量で0.115%αリノレン酸)を与えた。雌性動物には、妊娠および授乳中も特殊な試料を与え続けた。6〜12週齢の動物36匹を本実験において試験した。群は、リーリン遺伝子変異2コピーを有するマウス(ホモ接合体、n=12):リーリン遺伝子変異1コピーを有するマウス(ヘテロ接合体、n=12);およびリーリン遺伝子の変異を有しないマウス(野生型;n=12、対照)を含んだ。各遺伝子型の群において、雄性および雌性マウスほぼ同数を試験した。リーラーマウスの数を各飼料群に関して記録した。リーラー表現型を示さない仔をそのリーラー遺伝子状態の確認のために遺伝子タイピングした。仔を8〜14週齢で屠殺して、組織を脂肪酸分析のために採取した。
【0184】
マウス脂肪酸赤血球分析:
マウス赤血球(RBCs)を抽出して、脂肪酸含有量に関して分析した。試料中の総脂質を鹸化して、脂肪酸メチルエステルに変換した後分析した。簡単に説明すると、RBCsを分析するまで−80℃で凍結保存した。内部標準(メチルトリコサノエート)を含むクロロホルム50μlをスクリューキャップ試験管に加えた。クロロホルムを、窒素流下で蒸発させた。試料約300μlを、1:2クロロホルム:メタノール1.5 mLと共に内部標準に加えた。試験管のキャップをして、約30秒間攪拌した。試験管を氷中に入れて、約20分間超音波浴に入れた。20分後、試験管を除去して、クロロホルム1 mlおよび水1 mlを試験管に加えた。試験管を約30秒間攪拌して、約2000 rpmで約10分間遠心した。底の層をもう一つのスクリューキャップ試験管に移して、溶媒を窒素下で蒸発させた。トルエン1 mlを0.5 N NaOH 1.0 mLと共に試料に加えた。試験管内の空気を窒素に置換してキャップして、加熱ブロックにおいて約100℃で約5分間加熱した。試験管を除去して冷却させた。14%BF3のメタノール溶液2 mLを試験管に加えて、試験管内の空気を窒素に置換してキャップした。試験管を、加熱ブロックにおいて約100℃に約30分間加熱した。30分後、試験管を除去して冷却させた。塩化ナトリウム飽和水溶液1 mlを試験管に加えて、試験管を攪拌した。層を分離させて、有機層(上層)の一部を分析のために採取した。脂肪酸メチルエステルを、水素炎イオン化検出器を備えたAgilent Technologiesガスクロマトグラフ(モデル5890)において水素炎イオン化検出(GLC-FID)によるガス-液体クロマトグラフィーによって分析した。脂肪酸メチルエステルを、ヘリウムを用いて流速2.0 ml/分でスプリット比15:1によって、30メートルのFAMEWAXキャピラリーカラム(Restek, Bellefonte, PA;直径0.25 mm、コーティングの厚さ0.25μm)において分離した。クロマトグラフィー実施パラメータには、オーブン開始温度130℃が含まれ、このオーブンを5℃/分で225℃まで上昇させて、これを20分維持してから15℃/分で250℃に上昇させて、最終的に5分間維持した。注入器および検出器の温度はそれぞれ、220℃および230℃で一定であった。ピークは、保持時間を、NuCheck Prep(Elysian, MN, U.S.A.)からの脂肪酸メチルエステル標準混合物と比較することによって同定した。個々の脂肪酸は、存在する総脂肪酸の百分率(重量%)として表記した。
【0185】
結果
DHA
予め形成されたDHAを欠損する飼料を与えた動物は、予め形成されたDHAを重量で0.5%含む飼料を与えた動物より有意に低レベルのRBC DHAを有した。ホモ接合体および雄性ヘテロ接合体は、野生型対照雄性および雌性動物、ならびにDHAを含まない飼料を与えたヘテロ接合雌性動物と比較して、有意に低いRBC DHAを有したことから、これらの動物は、食餌によるDHA欠損症の影響を受けやすかった。飼料にDHAを添加すると、全ての群におけるRBC DHAレベルが有意に増加した。しかし、DHA補給飼料は、変異体リーリン遺伝子を有する雌性動物においてRBC DHAレベルを、野生型対照動物において認められるレベルほどには十分に回復しなかった。特に、DHA添加飼料を与えたホモ接合雌性動物は、DHA 適量飼料を与えた他の全ての遺伝子型/性別亜群と比較して、有意に低いRBC DHAを有した。DHA添加飼料を与えたヘテロ接合雌性動物は、野生型対照飼料より有意に低いRBC DHAを有した。DHA添加飼料は、雄性ヘテロ接合およびホモ接合動物において、野生型雄性動物において認められる類似のレベルまでRBC DHAレベルを回復した。
【0186】
(表5)赤血球/DHA含有量(総脂肪酸における重量%)

【0187】
結論:
リーリン遺伝子1または2コピーを有する雌性動物における赤血球DHA含有量は、重量で0.5%DHAを含む飼料を与えることによっても、完全に標準化することができない。リーリン遺伝子1または2コピーを有する雄性動物におけるRBC DHA含有量は、重量で0.5%DHAを含む飼料を与えた場合の野生型対照動物と同様に調節される。
【0188】
ARA
予め形成されたDHAを含まない飼料を与えた動物の赤血球ARAレベルは、重量で0.5%DHAを含む飼料を与えた動物のRBC ARAレベルより有意に大きかった。予め形成されたDHAを欠損する飼料を与えた動物において、野生型対照およびヘテロ接合リーラーマウスのRBC ARAレベルは、ホモ接合リーラーマウスにおいて検出された値より有意に大きかった。0.5%DHAを含む飼料を与えると、RBC ARAレベルが約2倍抑制され、遺伝子型亜群におけるRBC ARAレベルの差が消失した。動物に重量で0.5%DHAを与えた場合に、遺伝子型の亜群内または亜群間で雄性および雌性動物のあいだでRBC ARAレベルに有意差が検出されなかった。
【0189】
(表6)赤血球/ARA含有量(総脂肪酸における重量%)

【0190】
結論:
予め形成された食餌DHAを与えなかった動物は、高レベルのRBC ARAを有する傾向がある。低いリーリン発現は、より低いRBC DHA含有量に関連する。食餌中のDHAは、RBC膜へのARAの取り込みを抑制して、野生型対照およびリーリン発現がより低い動物(すなわちヘテロ接合体およびホモ接合体)においてRBC ARAレベルを同等にした。
【0191】
本明細書において引用した各参考文献および出版物は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。2004年1月19日に提出された米国特許出願第60/537,600号、および2004年8月27日に提出された米国特許出願第60/605,219号は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【0192】
本発明の様々な態様を詳細に記述してきたが、それらの態様の改変および適応が当業者に想起されるであろうことは明らかである。しかし、そのような改変および適合は以下の請求の範囲に記載される本発明の範囲に含まれると、明白に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償する量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、リーリン欠損症または機能障害を有すると診断されたまたは有することが疑われる患者に投与する段階を含む、リーリン欠損症または機能障害を治療する方法。
【請求項2】
リーリン欠損症または機能障害が、患者における脂肪酸結合タンパク質の発現または機能の低下に関連している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脂肪酸結合タンパク質が脳脂質結合タンパク質(BLBP)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
患者に対するPUFAの投与が、患者における脂肪酸結合タンパク質またはその機能の低下を代償する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
患者に対するPUFAの投与が、患者における脳脂質結合タンパク質またはその機能の低下を代償する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者に対するPUFAの投与が、患者における脂肪酸結合タンパク質の活性を改善する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
患者に対するPUFAの投与が、患者における脳脂質結合タンパク質の作用機序の少なくとも一つのパラメータを改善する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
患者に対するPUFAの投与の結果、患者におけるグリア細胞およびニューロンのリン脂質膜への機能的DHAの取り込みの増加が起こる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者に対するPUFAの投与が、患者におけるリーリンのレベルを増加させる、またはリーリンの活性を改善する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
患者が、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態を有し、患者に対するPUFAの投与が、疾患または病態の少なくとも一つの症状を改善する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
患者が、リーリン欠損症または機能障害に関連した疾患または病態を発症するリスクを有し、患者に対するPUFAの投与が、疾患または病態の発症を予防または遅らせる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
投与段階の前に、患者からの生体試料におけるリーリンの量または生物活性を測定する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
基準値量と比較して患者の試料におけるリーリンの量が変化すれば、患者がリーリン欠損症を有することが示される、患者の試料におけるリーリンの量を、同じタイプの試料におけるリーリンの基準値と比較する段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
測定する段階が、mRNA転写分析、ウェスタンブロット、イムノブロット、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈殿、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、ホスホレッセンス、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、およびタンパク質マイクロチップまたはマイクロアレイからなる群より選択される方法によって行われる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
患者の試料におけるリーリンサイズ型プロフィールを確立するために、患者における異なるリーリンサイズ型の相対的発現または活性を決定する段階、および患者のリーリンサイズ型プロフィールを、同じタイプの試料におけるリーリンサイズ型の基準値プロフィールと比較する段階をさらに含む方法であって、基準値プロフィールにおけるサイズ型の相対的発現または活性と比較した場合にリーリンの一つまたはそれ以上のサイズ型の発現が変化すれば、患者がリーリン欠損症または機能障害を有することが示される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
測定する段階が、mRNA転写分析、ウェスタンブロット、イムノブロット、およびキャピラリー電気泳動からなる群より選択される技術を用いて行われる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
患者の試料におけるリーリンの活性レベルが基準値レベルと比較して変化すれば、患者がリーリン機能障害を有することが示される、患者の試料におけるリーリンの活性を同じタイプの試料におけるリーリンの基準値活性と比較する段階をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項18】
活性を測定する段階が、受容体-リガンドアッセイ、および燐酸化アッセイからなる群より選択される技術によって行われる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
患者の試料における甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルを測定する段階、および患者の試料におけるTSHの量を同じタイプの試料におけるTSHの基準値量と比較する段階をさらに含む方法であって、患者の試料におけるTSHの量が基準治療と比較して変化すれば、患者がTSH欠損症を有することが示される、請求項12記載の方法。
【請求項20】
PUFAと共に甲状腺治療薬を患者に投与する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
生体試料が、細胞試料、組織試料、および体液試料からなる群より選択される、請求項12〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
生体試料が血液試料である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
投与段階の後に少なくとも1回、患者におけるリーリンレベルまたは生物活性に及ぼすPUFA投与の有効性をモニターする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
投与段階の後に少なくとも1回、患者における一つまたはそれ以上のリーリンサイズ型の発現または生物活性の変化に及ぼすPUFA投与の有効性をモニターする段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
治療の有効性のモニタリング結果に基づいて、その後の治療において患者に対するPUFAの投与を調節する段階をさらに含む、請求項23または請求項24記載の方法。
【請求項26】
患者が神経障害または神経精神障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
患者が発作を有する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
患者が神経機能障害に関連した自己免疫障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
患者が抗リン脂質障害を有する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
患者が、統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、てんかん、自閉症、パーキンソン病、老人性痴呆、アルツハイマー病、ペルオキシソーム増殖剤活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病性ニューロパシー、黄斑変性、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、色素性網膜炎、脳麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、うつ病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋-眼-脳病、ウォーカー-ワールブルク症候群、シャルコー-マリー-ツース病、封入体筋炎(IBM)および無虹彩症からなる群より選択される障害を有する、有することが疑われる、または発症のリスクを有する、請求項1記載の方法。
【請求項31】
患者が、甲状腺障害を有する、請求項1記載の方法。
【請求項32】
PUFAがリーリン欠損症または機能障害に関連した病態を治療するために、一つまたはそれ以上のさらなる治療物質と併用して患者に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項33】
患者の組織または体液におけるリーリン発現を調節するために有効な量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、組織または体液におけるリーリン発現を調節する方法。
【請求項34】
PUFAの量が、患者の組織または体液におけるリーリン発現を増加させるために十分である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
網膜発達欠損または障害を予防、減少、または発症を遅らせるために、および患者におけるリーリン欠損症または機能障害の影響を代償するために有効な量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、網膜発達欠損または障害を予防、減少、またはその発症を遅らせる方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、リーリン欠損症または機能障害に関連した発達欠損または障害を予防、減少、またはその発症を遅らせる方法:
a)患者の生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階;
b)投与されるPUFAの量が、試料中のリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定される、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。
【請求項37】
リーリンの発現または活性を測定する段階が、試料におけるリーリンの個々のサイズ型の相対的発現または活性を決定する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
患者に投与されるPUFAの量が、患者の試料におけるリーリンの発現または生物活性レベルを、PUFAの推奨量に対応するリーリン発現または活性に関する基準値レベルと比較する段階、および患者に関するPUFAの用量をそれに従って調節する段階によって決定される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
患者に投与されるPUFAの量が、患者におけるリーリンの発現または生物活性が基準値レベルと比較して減少している場合、PUFAの推奨用量と比較して増加される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
患者に投与されるPUFAの量が、患者の試料における異なるリーリンサイズ型の発現または活性を、PUFAの推奨量に対応するリーリンサイズ型の基準値レベルと比較する段階、および患者に関するPUFAの用量をそれに従って調節する段階によって決定される、請求項36記載の方法。
【請求項41】
患者に投与されるPUFAの量が、患者の試料における一つまたはそれ以上のリーリンサイズ型の相対的発現または活性が、基準値プロフィールにおけるリーリンサイズ型の相対的発現または活性とは異なる場合に、PUFAの推奨用量と比較して増加される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
患者からの生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階が、患者に対するPUFAの投与後に1回またはそれ以上繰り返される、請求項36記載の方法。
【請求項43】
患者に投与されるPUFAの量が、患者におけるリーリンの発現または生物活性の繰り返し測定に従って調節される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
患者からの生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階が、患者の一生の一定期間、または患者の一生を通して間欠的に繰り返され、患者に投与されるPUFAの量が、患者におけるリーリンの発現または生物活性のそれぞれの新しい測定に対応するように調節される、請求項36記載の方法。
【請求項45】
患者におけるリーリンの発現または生物活性が実質的に正常であって、PUFAがリーリン欠損症または機能障害の発症を予防またはそのリスクを減少させるための補助剤として投与される、請求項36記載の方法。
【請求項46】
患者が妊娠女性である、請求項36記載の方法。
【請求項47】
患者が授乳期の女性である、請求項36記載の方法。
【請求項48】
患者がヒト成人である、請求項36記載の方法。
【請求項49】
患者がヒトの小児または青年である、請求項36記載の方法。
【請求項50】
患者がヒト胚または胎児であって、胚または胎児の母親にPUFAを投与することによって、PUFAが胚または胎児に投与される、請求項36記載の方法。
【請求項51】
患者がリーリン欠損症もしくは機能障害、または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した神経障害または神経精神障害を有する、または発症のリスクを有する、請求項36記載の方法。
【請求項52】
患者がリーリン欠損症もしくは機能障害、または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した自己免疫疾患を有するまたは発症のリスクを有する、請求項36記載の方法。
【請求項53】
患者がリーリン欠損症もしくは機能障害、または脂肪酸結合タンパク質欠損症に関連した発達欠損を有するまたは発症のリスクを有する、請求項36記載の方法。
【請求項54】
患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを測定する段階、およびリーリンの測定に基づいて患者の脳におけるDHAレベルを推定する段階を含む、患者の脳におけるDHAレベルをモニターする方法。
【請求項55】
リーリン発現または生物活性の測定レベルに対応するDHAの量を患者に投与する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
投与されるDHAの量が、患者における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するため、または患者における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために十分である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルを、リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較する段階をさらに含む方法であって、リーリン発現または生物活性の基準値レベルが被験者の脳におけるDHAの基準値レベルに相関して、基準値レベルが以下からなる群より選択される方法によって確立される、請求項54記載の方法:
a)同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプである患者の過去の試料におけるリーリン発現または活性の過去の測定から、リーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階;および
b)マッチさせた個体の集団から得られた、患者の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプの対照試料からリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階。
【請求項58】
DHAの基準値レベルと比較して患者の脳におけるDHAの推定レベルが低ければ、患者の脳におけるDHAレベルを代償する量のDHAを患者に投与すべきであることが示される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
以下の段階を含む、患者におけるリン脂質膜へのHUFAの取り込みの有効性を予測する方法:
a)患者の生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;
b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および
c)患者のリン脂質膜へのHUFAの取り込み効率を予測する段階であって、リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差があれば、予測された患者のHUFAのリン脂質膜への有効な取り込み能が改変されていることが示される段階。
【請求項60】
予測される患者のHUFAのリン脂質膜への有効な取り込み能に基づいて決定される量のHUFAを患者に処方する段階をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
以下の段階を含む、患者におけるDHA欠損症を診断する方法:
a)患者からの生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;
b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および
c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差が検出されれば、患者におけるDHA欠損症の診断陽性が示される、患者の診断を下す段階。
【請求項62】
リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して、生体試料におけるリーリン発現または生物活性のより低いレベルが検出されれば、患者におけるDHA欠損症の診断陽性が示される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
生体試料が細胞試料、組織試料、および体液試料からなる群より選択される、請求項61記載の方法。
【請求項64】
生体試料が血液試料である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
測定する段階(a)がリーリンmRNA転写を測定する段階を含む、請求項61記載の方法。
【請求項66】
測定する段階(a)が、逆転写-PCR(RT-PCR)、インサイチューハイブリダイゼーション、ノザンブロット、配列分析、マイクロアレイ分析、およびレポーター遺伝子の検出からなる群より選択される方法によって行われる、請求項65記載の方法。
【請求項67】
測定する段階(a)がリーリンタンパク質発現を測定する段階を含む、請求項61記載の方法。
【請求項68】
測定する段階(a)が、イムノブロット、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈殿、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、ホスホレッセンス、免疫組織化学分析、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、フローサイトメトリー、およびタンパク質マイクロチップまたはマイクロアレイからなる群より選択される方法によって行われる、請求項67記載の方法。
【請求項69】
測定する段階(a)がリーリン生物活性を測定する段階を含む、請求項61記載の方法。
【請求項70】
測定する段階(a)が受容体-リガンドアッセイおよび燐酸化アッセイからなる群より選択される方法によって行われる、請求項69記載の方法。
【請求項71】
基準値レベルが以下からなる群より選択される方法によって確立される、請求項61記載の方法:
a)段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプである、患者からの自己対照試料におけるリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階;
b)患者の過去の試料におけるリーリン発現または活性の少なくとも2回の過去の測定からの平均値であるリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階であって、過去の試料のそれぞれが、段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプであって、過去の測定によって診断陰性が得られた段階;
c)マッチさせた個体集団から得られている、段階(a)の試料と同じ細胞タイプ、組織タイプ、または体液タイプの対照試料のリーリン発現または活性の基準値レベルを確立する段階。
【請求項72】
以下の段階を含む、妊娠および授乳期の女性においてPUFAを補給する方法:
a)胎児または乳児の片親または両親からの生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階;
b)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を胎児または乳児の母親に投与する段階であって、投与されるPUFAの量が親の試料におけるリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定され、PUFAが女性およびその胎児または乳児におけるPUFAを補給する段階。
【請求項73】
PUFAが、胎児もしくは乳児における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するために十分な、または胎児もしくは乳児における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
PUFAが、リーリン欠損症または機能障害を有する乳児を出産するリスクを低下させるために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項75】
PUFAが、リーリン欠損症または機能障害を有する男児を出産するリスクを低下させるために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項76】
PUFAが母親、乳児、または胎児における自閉症の症状を予防、その発症を遅延、または低下させるために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項77】
PUFAが母親、乳児、または胎児におけるニューロン移動障害の症状を予防、その発症を遅延、または低下させるために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項78】
PUFAが母親、乳児、または胎児におけるリーリン欠損症または機能障害に関連した症状を予防、その発症を遅延、または低下させるために十分な量で投与される、請求項72記載の方法。
【請求項79】
以下の段階を含む、リーリン欠損症または機能障害を有する、または発症するリスクを有する乳児を出産するリスクを低下させるために、妊娠および授乳期の女性においてPUFAを補給する方法:
a)妊娠女性が有する胎児の性別を同定する段階;
b)胎児がリーリン欠損症または機能障害を持って生まれるまたは生後に発症するリスクを低下させるために、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、妊娠および授乳期の全てまたは一部のあいだ、女性に投与する段階であって、胎児が女児である場合と比較して胎児が男児である場合にPUFAの投与を増加させる段階。
【請求項80】
以下の段階を含む、小児におけるリーリン欠損症または機能障害に関連した症状または障害を予防、その発症を遅延、または減少させる方法:
a)小児からの生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階;および
b)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を小児に投与する段階であって、投与されるPUFAの量が、試料中のリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定される段階。
【請求項81】
PUFAがDHAおよびARAを含む脂肪酸を添加した乳児処方において提供される、請求項80記載の方法。
【請求項82】
PUFAが、小児における脳脂質結合タンパク質の発現もしくは活性の低下を代償するために、または小児における脳脂質結合タンパク質の活性を改善するために十分な量で投与される、請求項80記載の方法。
【請求項83】
PUFAの投与が、自閉症の症状を予防、その発症を遅延、または減少させるために十分である、請求項80記載の方法。
【請求項84】
PUFAの投与が、ニューロンの移動障害の症状を予防、その発症を遅延、または減少させるために十分である、請求項80記載の方法。
【請求項85】
以下の段階を含む、低分子量リーリン表現型に関連したアルツハイマー病の症状を予防、その発症を遅延、または減少させる方法:
a)低分子量リーリン表現型を有する患者を含む、リーリン欠損症または機能障害を有する患者を同定する段階;および
b)患者におけるリーリン欠損症または機能障害の効果を代償するために十分な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を(a)の患者に投与する段階。
【請求項86】
FABPをアップレギュレートするために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、患者における脂肪酸結合タンパク質をアップレギュレートする方法。
【請求項87】
リーリン発現または活性をアップレギュレートするために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、患者におけるリーリン発現または活性をアップレギュレートする方法。
【請求項88】
患者におけるニューロン移動を改善するために有効な、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階を含む、患者におけるニューロンの移動を改善する方法。
【請求項89】
患者におけるリーリン発現または活性のレベルを測定することによって、ニューロンの移動が測定される、請求項88記載の方法。
【請求項90】
神経機能が造影技術および表現型評価によって測定される、請求項88記載の方法。
【請求項91】
リーリン発現または生物活性の既定レベルが神経前駆細胞に関連している、細胞集団におけるリーリン発現または生物活性を検出する段階を含む、神経前駆細胞を同定する方法。
【請求項92】
リーリン発現または生物活性が検出される神経前駆体細胞を選択する段階をさらに含む、請求項91記載の方法。
【請求項93】
以下の段階を含む、神経の発達をモニターする方法:
a)神経前駆細胞を含む細胞集団を提供する段階;
b)細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出する段階;
c)神経前駆細胞が分化神経細胞に発達する条件に細胞集団を曝露する段階;および
d)神経前駆体細胞の分化神経細胞への発達を評価するために、段階(c)の後に細胞におけるリーリンの発現または活性をモニターする段階。
【請求項94】
段階(b)の前、または同時に、段階(a)の細胞集団を推定の発達調節化合物に接触させる段階、および細胞集団におけるリーリン発現または活性を検出することによって、推定の調節化合物が分化神経細胞への神経前駆細胞の発達に影響を及ぼすか否かを決定する段階をさらに含む、請求項93記載の方法。
【請求項95】
以下の段階を含む、脂肪酸結合タンパク質の欠損症または機能障害に関連した障害を治療または予防する方法:
a)少なくとも一つの脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の低下を有する患者を同定する段階;および
b)脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の低下の効果を代償するために十分であると決定された量の、ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。
【請求項96】
脂肪酸結合タンパク質が脳脂質結合タンパク質(BLBP)である、請求項95記載の方法。
【請求項97】
脂肪酸結合タンパク質が、心臓における脂肪酸結合タンパク質である、請求項95記載の方法。
【請求項98】
以下の段階を含む、脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害に関連した障害を治療または予防する方法:
a)脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害を有する患者を同定する段階;および
b)脂肪酸結合タンパク質の受容体の活性の低下または機能障害の効果を代償するために十分であると決定された量のω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を患者に投与する段階。
【請求項99】
リーリン欠損症に関連した障害を治療または予防するための少なくとも一つの治療化合物と共に、リーリン欠損症を有するまたは発症のリスクを有する患者における脂肪酸結合タンパク質の発現または活性の低下を代償するために十分な量のω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む薬学的組成物。
【請求項100】
治療化合物が甲状腺治療薬である、請求項99記載の薬学的組成物。
【請求項101】
以下の段階を含む、患者におけるDHA欠損症を診断する方法:
a)患者の生体試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する方法;
b)生体試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;
c)患者の生体試料における甲状腺刺激ホルモン(TSH)発現または生物活性を測定する段階;
d)生体試料におけるTSH発現または生物活性をTSHの基準値レベルと比較する段階;および
e)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料におけるリーリン発現または生物活性レベルに差が検出されれば、およびTSH発現または生物活性の基準値レベルと比較して生体試料におけるTSH発現または生物活性のレベルの差が検出されれば、患者におけるDHA欠損症の診断陽性が示される、患者の診断を下す段階。
【請求項102】
生体試料が細胞試料、組織試料、および体液試料からなる群より選択される、請求項102記載の方法。
【請求項103】
患者が妊娠している、または妊娠が疑われる、請求項102記載の方法。
【請求項104】
以下の段階を含む、妊娠および授乳期の女性にPUFAsを補給する方法:
a)胎児または乳児の母親の生体試料におけるリーリンの発現または生物活性を測定する段階;
b)生体試料における甲状腺刺激ホルモンの発現または生物活性を測定する段階;
c)ω-3 PUFAおよびω-6 PUFA、またはその前駆体もしくは供給源からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸(PUFA)を胎児もしくは乳児の母親に投与する段階であって、投与されるPUFAの量が、親の試料におけるリーリンの発現または生物活性の測定に基づいて決定され、PUFAが女性およびその胎児または乳児におけるPUFAを補給する段階;
d)母親の試料におけるリーリンおよび甲状腺刺激ホルモンの測定が、リーリンおよび甲状腺刺激ホルモンの基準値レベルと比較して低いことが決定されれば、胎児または乳児の母親に少なくとも一つの甲状腺治療薬を投与する段階。
【請求項105】
以下の段階を含む、胎児の神経発達障害を診断する方法:
a)胎児からの羊水試料におけるリーリン発現または生物活性を測定する段階;
b)試料におけるリーリン発現または生物活性をリーリンの基準値レベルと比較する段階;および
c)リーリン発現または生物活性の基準値レベルと比較して、試料におけるリーリン発現または生物活性レベルの差が検出されれば、胎児における神経発達障害の診断陽性が示される、胎児の診断を下す段階。
【請求項106】
(c)において診断陽性を有する胎児が、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンまたはリーリン遺伝子を子宮内に投与される、請求項105記載の方法。
【請求項107】
(c)において診断陽性を有する胎児が、神経発達障害を治療するために十分な量のリーリンを生後に投与される、請求項105記載の方法。
【請求項108】
リーリンが乳児処方において投与される、請求項107記載の方法。
【請求項109】
リーリン欠損症もしくは機能障害、またはそれに関連した疾患もしくは病態の発症を遅延または予防するために十分な量のリーリンを含む栄養補助剤または経口医用薬剤。
【請求項110】
補助剤が乳児処方として提供される、請求項109記載の栄養補助剤または経口医用薬剤。
【請求項111】
補助剤が乳児の母親によって産生される乳汁によって乳児に提供され、乳児の母親が授乳前または授乳時にリーリンを補給される、請求項109記載の栄養補助剤または経口医用薬剤。
【請求項112】
PUFAが高度不飽和脂肪酸(HUFA)である、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項113】
PUFAが、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびドコサペンタエン酸(DPA)からなる群より選択される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
PUFAがARA、EPA、およびDHAからなる群より選択される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項115】
PUFAがDHAである、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項116】
PUFAの供給源が魚油、海藻、および植物油からなる群より選択される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項117】
PUFAがDHAであって、DHAの前駆体が、α-リノレン酸(LNA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、ならびにLNA、EPA、およびDPAからなる群より選択される前駆体混合物から選択される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項118】
PUFAが、トリグリセリド型のPUFAを含む高度精製型藻類油、PUFAを含むトリグリセリド油、PUFAを含むリン脂質、タンパク質とPUFAを含むリン脂質との組み合わせ、乾燥海洋微小藻類、PUFAを含むスフィンゴリピッド、エステル、遊離の脂肪酸、PUFAともう一つの生物活性分子との結合物、およびその組み合わせからなる群より選択される型で投与される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
生物活性分子が、タンパク質、アミノ酸、薬物、および炭化水素からなる群より選択される、請求項118記載の方法。
【請求項120】
PUFAが経口投与される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
PUFAが、咀嚼錠、急速溶解錠、発泡錠、溶解用粉末、エリキシル剤、液剤、溶液、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠、二層錠、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、カプレット、ロゼンジ、咀嚼ロゼンジ、ビーズ、粉剤、顆粒剤、粒子、微粒子、分散型顆粒、カシェ剤、潅注、坐剤、クリーム、局所塗布剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、パッチ、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、経口摂取物、注射用剤、注入剤、棒状健康食品、菓子、シリアル、シリアルコーティング、食品、栄養食品、機能的食品またはその組み合わせからなる群より選択されるPUFAまたはその前駆体もしくは供給源を含む製剤として投与される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
製剤におけるPUFAが、PUFAを含む高度精製型藻類油、PUFAを含むトリグリセリド油、PUFAを含むリン脂質、タンパク質とPUFAを含むリン脂質との組み合わせ、PUFAを含む乾燥海洋微小藻類、PUFAを含むスフィンゴリピッド、PUFAのエステル、遊離の脂肪酸、PUFAともう一つの生物活性分子との結合物、およびその組み合わせからなる群より選択される型で提供される、請求項121記載の方法。
【請求項123】
PUFAが患者の体重1 kgあたりPUFA約0.05 mgから患者の体重1 kgあたりPUFA約200 mgの用量で投与される、請求項1、33、35、36、60、72、79、80、81、85、86、87、88、95、98、99、または104のいずれか一項記載の方法。

【公表番号】特表2007−524674(P2007−524674A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551363(P2006−551363)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/002177
【国際公開番号】WO2005/072306
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(501316356)マーテック・バイオサイエンシーズ・コーポレーション (11)
【Fターム(参考)】