説明

レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート及びそれらの用途

レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、レゾルシノール樹脂と、少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物との間の反応に由来している。該レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、2つ以上の脱ブロッキング温度及び/又は融解特性を有し、これにより、ゴムコンパウンドへの補強材料の改良された接着性などのいくつかの独特の特性を提供できる。該レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、改良された特性を有するファブリック浸漬用配合物及び/又はゴム組成物中に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、レゾルシノール樹脂と少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物との間の反応に由来する、少なくとも1種の反応生成物を含むレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物、それらの合成方法、並びにそれらの用途、特にゴムコンパウンド配合物、及び繊維、フィラメント、ファブリック又はコードを処理してゴムコンパウンドへの接着性を高めるファブリック浸漬用配合物におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
レゾルシノール化合物は、ゴムの配合及びファブリック浸漬技術を含む種々の用途に広く使用されている。ゴムコンパウンド配合物において、レゾルシノール樹脂は、メチレン受容体として広く使用されている。レゾルシノール樹脂は一般に十分な接着性特性をもたらすが、新規なレゾルシノール化合物を使用することによって、ゴムコンパウンドの貯蔵弾性係数及びタンジェントデルタなどの動的特性を改良することは一層望ましいことである。
【0003】
浸漬技術は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)など)、ポリアミド(ナイロン及びアラミドなど)、炭素又はポリベンゾオキサゾール(polybenzoxazole)(PBO)の繊維、フィラメント、ファブリック又はコードなどのゴム補強材料の、天然並びに合成ゴムへの接着性を高めるため、ゴム及びタイヤ工業全体で広範に使用されている。ポリエステル又はポリアミドの繊維への、ゴムの接着性を向上させるため、これらの浸漬用配合物における数多くの改良が行われている。これらの改良の中では、ブロック芳香族ジイソシアネートの添加が、ゴムへのPETの接着性を高めるようであった。一般に、ブロックジイソシアネート、特にカプロラクタム-及びフェノール-ブロックジイソシアネートは、ゴム及びタイヤ工業によって広く使用されている。カプロラクタム-及びフェノール-ブロックジイソシアネートのいくつかの一般的な例は、カプロラクタム-及びフェノール-ブロック4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI)である。
【0004】
浸漬用配合物におけるフェノールブロック4,4'-MDIなどのフェノールブロックジイソシアネートの使用は、それらの脱ブロッキング(unblocking)温度が高い可能性があるため、制約されている。さらに、一般に150℃と240℃の間にあるファブリック処理技術の工程温度下では、脱ブロッキング反応によりフェノールブロック芳香族ジイソシアネートからフェノールが生成され、このため毒性及び危険性の問題が提起されることがある。さらに、放出されたフェノールが反応せずに残留し、もしかするとファブリック処理装置及び他の設備内に腐食性フェノール環境をもたらすことがある。
【0005】
カプロラクタムブロック4,4'-MDI(例えばEMS-Primid社製のGRILBOND(登録商標)IL-6)などのカプロラクタムブロックジイソシアネートは、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)を含まないゴム補強材料のイソシアネート処理向け浸漬用配合物中の成分として;又はゴム補強材料処理向け単一-若しくは二重ステップRFL浸漬用配合物などの他の浸漬用配合物における浸漬液添加剤として;広範に使用されている。フェノールブロック4,4'-MDIのように、カプロラクタムブロック4,4'-MDIは一般に高い脱ブロッキング温度を有する。いくつかの例において、ゴムコンパウンドへのPETコードの接着性は、フェノール-及びカプロラクタムブロック4,4'-MDIを一緒にブレンドし、かつRFL配合物で使用することにより増強できる。
【0006】
フェノール及びカプロラクタムブロックジイソシアネートの他に、レゾルシノール又はレゾルシノール樹脂いずれかでブロックされた4,4'-MDIなどのジイソシアネートを、ファブリック浸漬用配合物(fabric dipping formulations)中に使用することができる。レゾルシノールブロック及びレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートは、浸漬用配合物中の成分又は添加剤としていくつかの独特の特性を提供できる。例えば、レゾルシノール若しくはレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートの脱ブロッキング反応から放出されるレゾルシノール又はレゾルシノール樹脂は、フェノール又はカプロラクタムなどの大抵の他のブロック剤よりも反応性がある。したがって、レゾルシノール若しくはレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートは、RFL型配合物中の主な反応性成分であるさらに反応性のあるレゾルシノール又はレゾルシノール樹脂を提供する。さらに、レゾルシノール若しくはレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートは末端フェノール性ヒドロキシル基を有し、これらが、レゾルシノール若しくはレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートと、浸漬用配合物中に存在するエポキシ化合物との間の反応を促進することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のフェノール-、カプロラクタム-、レゾルシノール-又はレゾルシノール樹脂-ブロックジイソシアネートは、いくつかの用途において満足できる結果をもたらすことができるが、タイヤ、ゴム及び他の業界に、ゴムコンパウンドへの種々の合成繊維材料の改良された接着性などの改良された特性を有する新たなブロックイソシアネートを提供することは、常に望ましいことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本明細書において開示しているのは、ゴム材料又はコンパウンドへのゴム補強材料の改良された接着性などの独特の特性を有するレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物である。一態様において、本明細書において開示しているのは、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物であって、
(a)式(VI')を有する第1の化合物:
【化1】

(b)式(VII')を有する第2の化合物:
【化2】

(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含み; n、m及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を含む前記組成物である。
【0009】
一実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(VIII')を有する第3の化合物:
【化3】

(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含み; x、y及びzのそれぞれは独立に、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)をさらに含む。
【0010】
別の態様において、本明細書において開示しているのは、少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物と、レゾルシノール樹脂との間の反応から得ることが可能なレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物である。
別の態様において、本明細書において開示しているのは、少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物を、レゾルシノール樹脂と反応させることを含む、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物の製造方法である。
【0011】
一実施態様において、このレゾルシノール樹脂は、式(V)、式(V')又はこれらの組合せ:
【化4】

(式中、n及びn'のそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数であり;A、B、A'及びB'のそれぞれは独立に、末端基である。)を有する。請求項5記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物であって、A、B、A'及びB'のそれぞれが独立に、H、式(V-1)又は式(V-2)である:
【化5】


【0012】
別の実施態様において、これらの少なくとも2種のイソシアネート化合物は、式O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=O(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含む。)を有する。
【0013】
別の実施態様において、X及びYのそれぞれは独立に、下記の式の内の1つを有する2価基である:
【化6】


【0014】
別の実施態様において、前記方法は、溶媒が存在しない状態で行われる。
別の実施態様において、前記方法は、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド又はジブチルスズジラウレートとすることができる触媒の存在下で行われる。
別の実施態様において、前記方法は、触媒の不在下で行われる。
別の態様において、本明細書において開示しているのは、ゴム材料、メチレン供与体、及び本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含むメチレン受容体を含む、加硫可能なゴム組成物である。
【0015】
一実施態様において、ゴム材料は、天然若しくは合成ゴムである。
【0016】
別の実施態様において、加硫可能なゴム組成物はゴム補強材料をさらに含み、いくつかの例では繊維、フィラメント、ファブリック若しくはコードの形態であってよく;及び/又は、ポリエステル、ポリアミド、炭素、ガラス、鋼、ポリベンゾオキサゾール又はレーヨンで作ることができる。
別の実施態様において、加硫可能なゴム組成物は、加硫剤をさらに含む。
【0017】
別の実施態様において、加硫可能なゴム組成物は、少なくとも1種の添加剤をさらに含み、この場合この添加剤は、カーボンブラック、酸化亜鉛、シリカ、酸化防止剤、ステアレート、促進剤、接着増進剤、コバルト塩、ステアリン酸、充填剤、可塑剤、ワックス、プロセスオイル、遅延剤、オゾン劣化防止剤又はこれらの組合せとすることができる。
別の態様において、本明細書において開示しているのは、請求項1記載のレゾルシノール樹脂-ブロックイソシアネート組成物を含む浸漬用配合物である。
【0018】
一実施態様において、浸漬用配合物は、溶媒をさらに含む。
別の実施態様において、浸漬用配合物は添加剤をさらに含み、いくつかの例において、エポキシ含有化合物、増粘剤、消泡剤又はこれらの組合せであってよい。
別の実施態様において、浸漬用配合物は、ポリ(ビニルピリジン/ブタジエン/スチレン)ラテックスをさらに含む。
別の実施態様において、浸漬用配合物は樹脂溶液をさらに含み、いくつかの例において、レゾルシノール-ホルムアルデヒド溶液であってよい。
【0019】
別の実施態様において、浸漬用配合物は添加剤をさらに含み、、いくつかの例において、消泡剤であってよい。
別の態様において、本明細書において開示しているのは、ゴム材料と、本明細書において開示している浸漬用配合物で処理したゴム補強材料とを含む二次加工物品である。
一実施態様において、ゴム材料は、天然若しくは合成ゴムである。
別の実施態様において、ゴム補強材料は繊維、フィラメント、ファブリック若しくはコードの形態におけるものであり、いくつかの例において、ポリエステル、ポリアミド、炭素、ガラス、鋼、ポリベンゾオキサゾール又はレーヨンで作ることができる。
別の実施態様において、前記二次加工物品は、タイヤ、動力伝達装置ベルト、コンベヤベルト、V-ベルト、ホース印刷ロール、ゴム製靴ヒール、ゴム製靴底、自動車用床マット、トラック用泥除けフラップ又はボールミルライナーである。
【0020】
別の態様において、本明細書において開示しているのは、式(B)、(B')、(C)又はこれらの組合せ:
【化7】

(式中、Xは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン又はこれらの組合せであり;n及びmのそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を、熱、放射線又はこれらの組合せにより硬化させることによって調製される樹脂を含むコーティングである。
一実施態様において、式(B)、(B')、(C)又はこれらの組合せの硬化は、開始剤の存在下で起こる。
【0021】
別の態様において、本明細書において開示しているのは、式(B)、(D)又はこれらの組合せ:
【化8】

(式中、Xは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン又はこれらの組合せであり;かつRはアルキル、アリール、アラルキル、シロキサニル、シリルエーテル又はこれらの組合せであり;かつn及びmのそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を、ジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの組合せにより硬化させることによって調製される樹脂を含むコーティングである。
一実施態様において、本明細書において開示しているコーティングは添加剤をさらに含み、いくつかの例において、充填剤、レオロジー調整剤、増粘剤、界面活性剤、湿潤剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、レべリング剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤又はこれらの組合せであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の実施態様の説明)
以下の記述において、本明細書において開示している全ての数は、これに関連して語「約」又は「およそ」を使用しているかどうかに拘らず概略値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント又は時には10〜20パーセント変動できる。下限RL及び上限RUを有する数範囲を開示している場合はいつでも、その範囲内に収まる任意の数を具体的に開示している。特に、範囲内の次の数:R=RL+k*(RU-RL)(式中、kは、1パーセント刻みに1パーセント〜100パーセントの範囲にある変数であり、すなわち、kは1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、・・・、50パーセント、51パーセント、52パーセント、・・・、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント又は100パーセントである。)を具体的に開示している。さらに、上記で定義した2つのRの数によって規定される任意の数範囲も、具体的に開示している。
【0023】
一般に、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、ゴムコンパウンドへの種々の合成繊維材料の接着性を改良することができる。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、レゾルシノール樹脂を少なくとも2種のイソシアネート化合物と反応させることにより調製可能若しくは得ることが可能であろう。
イソシアネートに反応性のある任意のレゾルシノール樹脂を使用して、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を調製できる。このレゾルシノール樹脂は、少なくとも1種のレゾルシノール化合物を、少なくとも1種のアルデヒドと反応させることにより調製若しくは得ることができる。適切なレゾルシノール樹脂のいくつかの非限定的例は、米国特許第6875807号、第5945500号、第5936056号、第5075414号、第5075413号、第5049641号、第5030692号、第5021522号及び第4889891号に; 米国特許出願第20040162391号、第20040147712号及び第20040116592号に;又Raj B. Durairajの著書「レゾルシノール:化学、技術及び用途(Resorcinol:Chemistry, Technology and Applications)」第5章、179〜261頁(2005)に記載され、全ての上述の特許、特許出願及び参考文献は引用により本明細書に組み込まれている。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂は、レゾルシノールノボラック樹脂である。
【0024】
アルデヒドと反応してレゾルシノール樹脂を形成し得る任意のレゾルシノール化合物を使用することができる。適切なレゾルシノール化合物のいくつかの非限定的例は、引用により本明細書に組み込まれているRaj B. Durairajの著書「レゾルシノール:化学、技術及び用途」第1〜4章、1〜175頁(2005)に記載されている。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール化合物は、式(I):
【化9】

(式中、Ra、Rb、Rc及びRdのそれぞれは独立に、水素;ヒドロキシ;フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲン化物;ニトロ;ベンゾ;カルボキシ;ホルミル、アルキルカルボニル(例えばアセチル)及びアリールカルボニル(例えばベンゾイル)などのアシル;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどのアルキル;非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル; 非置換の若しくは置換されたメタクリレート; 非置換の若しくは置換されたアクリレート;シリルエーテル;シロキサニル;フェニル及びナフチルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;又はアルキルフェニルなどのアルカリール;であり、但し、Ra、Rc及びRdの内の2つはそれぞれHである。)を有し得る。いくつかの実施態様において、式(1)のレゾルシノール化合物のRa、Rb、Rc及びRdのそれぞれは、Hである。
【0025】
いくつかの実施態様において、式(I)のレゾルシノール化合物は官能基化されていない。すなわち、式(I)のレゾルシノール化合物のRa、Rb、Rc及びRdのそれぞれは、Hである。一般に、非官能基化レゾルシノール化合物を使用してレゾルシノール樹脂を調製し、その後それをイソシアネートと反応させると、非官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートを得ることができる。他の実施態様において、式(I)のレゾルシノール化合物は官能基化され、その場合Ra、Rb、Rc及びRdの少なくとも1つが、ヒドロキシ;フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲン化物;ニトロ;ベンゾ;カルボキシ;ホルミル、アルキルカルボニル(例えばアセチル)及びアリールカルボニル(例えばベンゾイル)などのアシル;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどのアルキル;非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル;非置換の若しくは置換されたメタクリレート;非置換の若しくは置換されたアクリレート;シリルエーテル;シロキサニル;フェニル及びナフチルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;又はアルキルフェニルなどのアルカリール;などの官能基である。一般に、官能基化レゾルシノール化合物を使用してレゾルシノール樹脂を調製し、次いでこれをイソシアネートと反応させると、官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートを得ることができる。
【0026】
官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートは、ゴム用途向け、並びにポリウレタン及びポリ尿素用などの非ゴム用途向けのいずれにも硬化剤として使用することができる。さらに、後述するように、官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートを使用して、コーティング用途などの様々な用途向けの官能基化メタクリレート、アクリレート、ビニル及びアリルなどのアルケニル(例えば、ビニル及びアリル)、アルキル、アリール、アラルキル、シロキサニル及びシリルエーテル化合物などの官能基化誘導体を調製することもできる。
【0027】
いくつかの非限定的な適切なレゾルシノール化合物の例には、レゾルシノールなどの非官能基化レゾルシノール化合物;並びに、オルシノール、2-メチルレゾルシノール、フロログルシノール、1,2,4-ベンゼントリオール、ピロガロール、3,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、4-エチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、5-メチルベンゼン-1,2,3-トリオール、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール、2,4,6-トリヒドロキシトルエン、4-クロロレゾルシノール、2',6'-ジヒドロキシアセトフェノン、2',4'-ジヒドロキシアセトフェノン、3',5'-ジヒドロキシアセトフェノン、2,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,6-トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2',4'-ジヒドロキシプロピオフェノン、2',4'-ジヒドロキシ-6'-メチルアセトフェノン、1-(2,6-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタノン、3-メチル3,5-ジヒドロキシベンゾエート、2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、ガラセトフェノン、2,4-ジヒドロキシ-3-メチル安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸メチル、2-メチル-4-ニトロレゾルシノール、2,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、2-ニトロフロログルシノール又はこれらの組合せなどの官能基化レゾルシノール化合物;が含まれる。いくつかの実施態様において、レゾルシノール化合物は、レゾルシノール、オルシノール、2-メチルレゾルシノール、フロログルシノール、1,2,4-ベンゼントリオール、ピロガロール、3,5-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、4-エチルレゾルシノール、4-クロロレゾルシノール又はこれらの組合せである。さらなる実施態様において、レゾルシノール化合物は、レゾルシノールである。
【0028】
ジイソシアネートと反応してレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートを形成する場合、レゾルシノール樹脂は、フェノール化合物(例えばフェノール、p-クロロフェノール、o-ニトロフェノール及びm-クレゾール)、アルコール、オキシム、ベータ-ジカルボニル化合物(例えばマロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン及びマロノニトリル)、ラクタム(例えばカプロラクタム)、メルカプタン、アミン、カルバメート、アミド、イミン、カルボン酸、イミダゾール(例えばベンズイミダゾール、2-フェニルイミダゾール)などの少なくとも別のイソシアネートブロック剤で、部分的に若しくは完全に、場合によって置き換えることができる。いくつかの実施態様において、レゾルシノール樹脂は、カプロラクタム、フェノール化合物又はこれらの組合せにより部分的に又は完全に置き換えられる。他の実施態様において、レゾルシノール樹脂は、式(IA):
【化10】

を有するフェノール化合物により部分的に又は完全に置き換えられ、この場合、式(IA)のフェノール化合物のRa、Rb、Rc、Rd及びReのそれぞれは独立に、水素;ヒドロキシ;フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物などのハロゲン化物;ニトロ;ベンゾ;カルボキシ;ホルミル、アルキルカルボニル(例えばアセチル)及びアリールカルボニル(例えばベンゾイル)などのアシル;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどのアルキル;フェニル及びナフチルなどのアリール;ベンジルなどのアラルキル;又はアルキルフェニルなどのアルカリール;である。他の実施態様において、式(IA)のフェノール化合物のRa、Rb、Rc、Rd及びReのそれぞれは独立に、H、ハロゲン化物又はアルキルである。特定の実施態様において、式(I)のフェノール化合物のRa、Rb、Rc、Rd及びReのそれぞれは、Hである。いくつかのブロック剤は、引用により本明細書中に組み込まれているZeno W. Wickers, Jr.の論文「ブロックイソシアネート(Blocked Isocyanates)」(Progress in Organic Coatings, 第3巻, 73〜79頁(1973))中に開示されている。いくつかのブロック剤は、米国特許第6509433号;第6368669号;第6242530号;第6063860号;第5986033号;第5352755号;第5246557号;第4976837号;及び第3987033号中にも開示され、これらの全ては、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0029】
レゾルシノール樹脂対少なくとも別のイソシアネートブロック剤の重量比は、約1:99〜約99:1、又は当業者により認められる任意の他の比率とすることができる。いくつかの実施態様において、レゾルシノール樹脂対少なくとも他のイソシアネートブロック剤のモル比は、約5:95〜約95:5、約10:90〜約90:10、約15:85〜約85:15、約20:80〜約80:20、約25:75〜約75:25、約70:30〜約30:70、約40:60〜約60:40、又は約50:50である。他の実施態様において、レゾルシノール樹脂は、少なくとも他のイソシアネートブロック剤により完全に置き換えられている。さらなる実施態様において、レゾルシノール樹脂は、他のイソシアネートブロック剤により置き換えられていない。
【0030】
本明細書において開示しているレゾルシノール化合物と反応してレゾルシノール樹脂を形成することができる任意のアルデヒドを使用することができる。いくつかの実施態様において、このアルデヒド化合物は、式R-CHO(式中、RはH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又は、アルカリール及びアラルキルなどのこれらの組合せとすることができる。)を有し得る。適切なアルデヒドのいくつかの非限定的例には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール及びこれらの組合せが含まれる。
いくつかの例において、1種以上の改質剤を、レゾルシノール化合物とアルデヒドとを含有する反応混合物に添加して、硬化若しくは未硬化レゾルシノール樹脂の機械的、化学的及び/又は物理的特性を調節することができる。適切な改質剤のいくつかの非限定的例には、スチレンなどのビニル化合物、不飽和ヒドロキシ化合物、不飽和脂肪族アルデヒド化合物、脂肪族ジアルデヒド化合物、シラン及びこれらの組合せが含まれる。
【0031】
レゾルシノール樹脂を改質するのに適した不飽和ヒドロキシ化合物のいくつかの非限定的例は、式(II)により表される:
【化11】

(式中、Re、Rf及びRgのそれぞれは独立に、水素、ヒドロキシル又はヒドロカルビル基であり、但し、Re、Rf及びRgの内の1つが水素である。)。いくつかの実施態様において、このヒドロカルビル基は、脂肪族直鎖若しくは分岐鎖アルキルである。他の実施態様において、Re、Rf及びRgのそれぞれは独立に、-H、-CH3、-C2H5、-C3H7、-C4H9、-C5H11、-C6H13、-OH、-CH2OH、-CH3CH2OHである。さらなる実施態様において、Re及びRgのそれぞれは水素であり、Rfは、水素1個が-OH基により置換されているC1〜C5のアルキルである。いくつかの実施態様において、脂肪族不飽和ヒドロキシ化合物は、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ペンテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ヘキセン、1,4-ジヒドロキシ-2-ヘプテン、1,4-ジヒドロキシ-2-オクテン、1,5-ジヒドロキシ-2-ペンテン、1,6-ジヒドロキシ-2-ヘキセン、1,7-ジヒドロキシ-2-ヘプテン、1,8-ジヒドロキシ-2-オクテン又はこれらの組合せである。
【0032】
レゾルシノール樹脂を改質するのに適した不飽和脂肪族アルデヒド化合物のいくつかの非限定的例は、式(III)により表される:
【化12】

(式中、Ri、Rh及びRjのそれぞれは独立に、水素又はヒドロカルビル基である。)。いくつかの実施態様において、このヒドロカルビル基は、脂肪族直鎖若しくは分岐鎖アルキルである。他の実施態様において、Ri、Rh及びRjのそれぞれは独立に、-H、-CH3、-C2H5、-C3H7、-C4H9、-C5H11、-C6H13、である。さらなる実施態様において、Rjは、水素又は直鎖若しくは分岐鎖C1〜C5アルキルである。いくつかの実施態様において、不飽和脂肪族アルデヒド化合物は、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン又はこれらの組合せである。
【0033】
レゾルシノール樹脂を改質するのに適した脂肪族ジアルデヒド化合物のいくつかの非限定的例は、式(IV)により表される:
O=HC-(CH2)n-CH=O (IV)
(式中、nは1以上である。)。いくつかの実施態様において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10である。他の実施態様において、nは、1、2、3、4及び5である。さらなる実施態様において、脂肪族ジアルデヒド化合物は、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒド又はこれらの組合せである。
【0034】
レゾルシノール樹脂を改質するのに適したシランのいくつかの非限定的例には、3-(アミノプロピル)トリエトキシシラン、3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3-(アミノエチル)トリエトキシシラン、3-(グリシジルオキシエチル)トリエトキシシラン、3-(メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、N-ベータ-アミノエチル-3-(アミノエチル)-トリメトキシシラン、3-(アミノブチル)トリエトキシシラン、3-(アミノエチル)トリメトキシシラン、3-(アミノプロピル)メチルジエトキシシラン、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)尿素、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2'-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3'-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3'-ビス(トリオクトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3'-ビス(トリヘキソキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス-シリル-アミノシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルエトキシシラン及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
いくつかの実施態様において、レゾルシノール樹脂は、レゾルシノール化合物とアルデヒドとを含む反応混合物から調製される。他の実施態様において、レゾルシノール樹脂は、レゾルシノールとホルムアルデヒドとを含む反応混合物から調製される。さらなる実施態様において、レゾルシノール-ホルムアルデヒド反応は、少なくとも1種の改質剤の存在下で起こる。さらなる実施態様において、レゾルシノール-ホルムアルデヒド反応は、酸触媒の存在下で起こる。特定の実施態様において、レゾルシノール-ホルムアルデヒド反応は、レゾルシノール対ホルムアルデヒドが、約1対1を超える、約1.05対1を超える、約1.1対1を超える、約1.2対1を超える、約1.3対1を超える、約1.4対1を超える又は約1.5対1を超えるモル比で起こる。さらなる実施態様において、レゾルシノール樹脂は、式(V)、(V')又はこれらの組合せを有し得る:
【化13】

(式中、n及びn'のそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数であり;A、B、A'及びB'のそれぞれは独立に、末端基である。)。
【0036】
一般に、n又はn'値の分布及び平均は、出発材料のモル比;反応時間及び温度;連鎖停止剤、酸触媒又は塩基触媒の存在若しくは不在;重合条件など;の種々の因子によって決まる。n又はn'によって特定される重合範囲が、得られたレゾルシノール樹脂の特性に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施態様において、n又はn'の平均値は、約1から約100まで変動する。考察の対象である他の実施態様において、n又はn'の平均値は、約1から約50まで変動する。さらなる実施態様において、nの平均値は、約1から約10まで変動する。さらなる実施態様において、n'の平均値は、約1から約20まで変動する。当業者は、n又はn'の平均値のさらなる範囲を認識し、本開示の範囲内にあることを理解するであろう。さらに、レゾルシノール樹脂(V)又は(V')の存在は、レゾルシノール樹脂内における全ての未反応モノマー(すなわちレゾルシノール化合物、アルデヒド及び/又は改質剤)の存在を、該未反応アルデヒド又は他の改質剤の濃度が、極めて低くはない又は検出不可能ではないにしても一般に低いであろうが、排除するものではない。
【0037】
末端基A、B、A'及びB'は、出発材料のモル比;連鎖停止剤、酸触媒又は塩基触媒の存在若しくは不在;重合ステップ終結時におけるレゾルシノール-アルデヒド重合過程の状態など;の多くの因子に応じて、種々のポリマー単位間で変化し得る。いくつかの実施態様において、A、B、A'及びB'のそれぞれは独立にHであり、又は式(V-1)若しくは(V-2):
【化14】

を有する。いくつかの実施態様において、レゾルシノール樹脂は、AがHであり;Bが式(V-1)を有し;及びnが約1〜約10の平均値を有する分布のある整数;である式(V)を有する。他の実施態様において、レゾルシノール樹脂は、A'がHであり;B'が式(V-1)を有し;及びn'が約1〜約20の平均値を有する分布のある整数;である式(V')を有する。
【0038】
いくつかの実施態様において、式(V)又は(V')のフェニル環は、場合によって、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、カルボキシ、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシなどを含むがこれらに限定されない、少なくとも1個の置換基を含む。他の実施態様において、式(V)又は(V')のメチレン基は、場合によって、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリルなどを含むがこれらに限定されない、1若しくは2個の置換基を含む。
【0039】
レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を調製するために、ヒドロキシル化合物と反応することができる任意のイソシアネート化合物を使用できる。適切なイソシアネート化合物のいくつかの非限定的な例には、アルキルイソシアネート(例えば、メチルイソシアネート及びエチルイソシアネート)、シクロアルキルイソシアネート(例えば、シクロプロピルイソシアネート、シクロブチルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート及びトランス-4-メチルシクロヘキシルイソシアネート)、アリールイソシアネート(例えば、フェニルイソシアネート、4-クロロフェニルイソシアネート、2,4-ジフルオロフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、及びナフチルイソシアネート)、アラルキルイソシアネート(例えば、メチルベンジルイソシアネート)、不飽和イソシアネート、ハロゲン化アルキル及びアリールイソシアネート、カルボニル、チオカルボニル及びイミドイルイソシアネート、硫黄イソシアネート、リンイソシアネート、並びに無機イソシアネートなどのモノイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート;4,4',4''-トリフェニルメタントリイソシアネート(例えば、Bayer MaterialScience社、Pittsburgh、PA(ペンシルバニア)州製のDESMODUR(登録商標)R)、トリス-(4-イソシアナトフェニル)チオホスフェート(例えば、Bayer MaterialScience社製のDESMODUR(登録商標)RF)及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(例えば、Bayer MaterialScience社製のDESMODUR(登録商標)N)などのトリイソシアネート;並びにBayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)MRSポリイソシアネート、MONDUR(登録商標)MR Lightポリイソシアネート、MONDUR(登録商標)MRS 2ポリイソシアネート、MONDUR(登録商標)MRS 4ポリイソシアネート、MONDUR(登録商標)MRS 5ポリイソシアネート、BAYHYDUR(登録商標)ポリイソシアネート、BAYMIDUR(登録商標)ポリイソシアネート及びDESMODUR(登録商標)ポリイソシアネート並びにRhodia社、Cranbury、NJ(ニュージャージー)州製のTOLONATE(登録商標)X C3ポリイソシアネートなどの他のイソシアネート;が含まれる。いくつかの実施態様において、ポリイソシアネートは、MONDUR(登録商標)MRS、MONDUR(登録商標)MR Light、MONDUR(登録商標)MRS 2、MONDUR(登録商標)MRS 4及びMONDUR(登録商標)MRS 5を含む、MDI系ポリイソシアネート(PMDI)である。本発明に適したいくつかのイソシアネートは、その全体を引用により本明細書に組み込んでいるHenri Ulrichの著書「イソシアネートの化学及び技術(Chemistry and Technology of Isocyanates)」(John Wiley & Sons(1997))中に開示されている。
【0040】
適切な芳香族ジイソシアネートのいくつかの非限定的例には、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI;例えば、Bayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)TDS)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2'-MDI)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-MDI、例えば、Bayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)M及びMONDUR(登録商標)CD、並びにDow社製のISONATE(登録商標)125)、2,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'-MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI;例えば、Bayer社製のDESMODUR(登録商標)15、及びMitsui Takeda Chemicals, Inc.、東京、日本、製のTAKENATE(登録商標)700)、1,4-フェニレンジイソシアネート(PDI)、二量化トルエンジイソシアネート(例えば、Bayer MaterialScience社製のDESMODUR(登録商標)TT)、エチレンジフェニレンジイソシアネート(EDI)並びにこれらの組合せ(例えば、Bayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)MLなどの、2,4'-MDIと4,4'-MDIとを含むイソシアネート混合物)が含まれる。
【0041】
適切な脂肪族ジイソシアネート若しくはトリイソシアネートのいくつかの非限定的例には、4,4'-シクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI;例えば、Bayer社製のDESMODUR(登録商標)W)、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(1,6-HDI;例えば、Bayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)HX、及びMitsui Takeda Chemicals, Inc.製のCOSMONATE(登録商標)ND)、イソホロンジイソシアネート(IPDI;Huels America Inc.,Somerset、NJ(ニュージャージー)州から入手可能)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4-TMDI;Huels America Inc.から入手可能)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,4,4-TMDI;Huels America Inc.から入手可能)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートの三量体(例えば、Bayer Material Science社製のDESMODUR(登録商標)N3300)、イソホロンジイソシアネートの三量体(例えば、Huels America Inc.製のISOCYANATE(登録商標)T 1890)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI;Akzo社、Chicago、IL(イリノイ)州から入手可能)、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI;American Cyanamid社、Wayne、NJ(ニュージャージー)州から入手可能)、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI;American Cyanamid社から入手可能)、キシレンジイソシアネート(XDI;例えばTAKENATE(登録商標)500; Mitsui Takeda Chemicals, Inc.から入手可能)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI;例えばMitsui Takeda Chemicals, Inc.製のCOSMONATE(登録商標)NBDI)、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI;例えばTAKENATE(登録商標)600; Mitui Takeda Chemicals, Inc.から入手可能)が含まれる。
【0042】
いくつかの実施態様において、少なくとも2種のイソシアネート化合物のそれぞれが独立に、モノイソシアネート、ジイソシアネート、トリイソシアネート又は多価ポリイソシアネートである。他の実施態様において、少なくとも2種のイソシアネート化合物の一方がモノイソシアネートであり、かつ他方がジイソシアネートである。さらなる実施態様において、少なくとも2種のイソシアネート化合物の一方がモノイソシアネートであり、かつ他方がトリイソシアネートである。さらなる実施態様において、少なくとも2種のイソシアネート化合物の一方がジイソシアネートであり、かつ他方がトリイソシアネートである。
【0043】
ある実施態様において、少なくとも2種のイソシアネート化合物のそれぞれがジイソシアネートである。さらなる実施態様において、2種のジイソシアネート化合物のそれぞれが、MDI、TDI、PDI及びEDIなどの芳香族ジイソシアネートである。さらなる実施態様において、2種のジイソシアネート化合物のそれぞれが、H12MDI、1,6-HDI、IPDI、2,2,4-TMDI、2,4,4-TMDI、CHDI、m-TMXDI、p-TMXDI、XDI及びH6XDIなどの脂肪族ジイソシアネートである。さらなる実施態様において、少なくとも2種のジイソシアネート化合物の一方が芳香族ジイソシアネートであり、かつ他方が脂肪族ジイソシアネートである。さらなる実施態様において、少なくとも2種のジイソシアネート化合物の一方がMDI(例えば2,4'-MDI及び4,4'-MDI)である又はこれを含み、かつ他方がTDI(例えば2,4-TDI及び2,6-TDI)であるか又はこれを含む。特定の実施態様において、2種のジイソシアネート化合物はBayer MaterialScience社製のMONDUR(登録商標)MLなどの2,4'-MDI及び4,4'-MDIであるか又はこれを含む。
【0044】
2種のイソシアネート化合物を使用する場合、2種のイソシアネート化合物のモル比は、約99:1と約1:99の間、約95:5と約5:95の間又は約90:10と約10:90の間であり得る。いくつかの実施態様において、2種のイソシアネート化合物のモル比は、約85:15と約15:85の間又は約80:20と約20:80の間、約75:25と約25:75の間にある。さらなる実施態様において、2種のイソシアネート化合物のモル比は、約70:30と約30:70の間にある。さらなる実施態様において、2種のイソシアネート化合物のモル比は、約65:35と約35:65の間にある。さらなる実施態様において、2種のイソシアネート化合物のモル比は、約60:40と約40:60の間、約55:45と約45:55の間にあり、又は約50:50である。
【0045】
2種以上のイソシアネート化合物を使用する場合、全体のイソシアネート化合物に対するそれぞれのイソシアネート化合物のモル分率は、約0.01以上、約0.02以上、約0.04以上、約0.05以上、約0.075以上、約0.10以上、約0.15以上、約0.20以上又は約0.25以上とすることができる。いくつかの実施態様において、全体のイソシアネート化合物に対するそれぞれのイソシアネート化合物のモル分率は、約0.05以上、約0.15以上又は約0.25以上である。2種以上のイソシアネート化合物を使用する場合、全体のイソシアネート化合物に対するそれぞれのイソシアネート化合物のモル分率は、約0.99以下、約0.975以下、約0.95以下、約0.90以下、約0.85以下、約0.80以下、約0.75以下、約0.70以下、約0.65以下、約0.60以下、約0.55以下又は約0.50以下とすることができる。いくつかの実施態様において、全体のイソシアネート化合物に対するそれぞれのイソシアネート化合物のモル分率は、約0.85以下、約0.75以下、約0.65以下である。さらなる実施態様において、全体のイソシアネート化合物に対するそれぞれのイソシアネート化合物のモル分率は、約0.01と約0.99の間、約0.02と約0.98の間、約0.05と約0.95の間、約0.10と約0.90の間、約0.15と約0.85の間、約0.20と約0.80の間又は約0.25と約0.75の間にある。
【0046】
レゾルシノール樹脂と、少なくとも2種のイソシアネート化合物との間の反応は、溶媒の存在下又は不在下で起き得る。いくつかの実施態様において、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトンアセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド又はこれらの組合せなどの溶媒中で、反応が起こる。他の実施態様において、反応は溶媒の不在下で起こる。
レゾルシノール樹脂と、少なくとも2種のイソシアネート化合物との間の反応に適している任意の反応温度を用いることができる。いくつかの実施態様において、反応温度は、約25℃、約35℃、約45℃、約55℃、約65℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃又は約120℃を超えることができる。溶媒の存在下で、反応温度は溶媒の沸点とすることができる。
【0047】
レゾルシノール樹脂と、イソシアネート化合物との間の反応に適している任意の触媒を用いることができる。いくつかの実施態様において、この触媒は、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、ジブチルスズジラウレート、ウレタン触媒、第三級アミン触媒、スズ塩又はこれらの組合せである。他の実施態様において、この触媒は、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、又はジブチルスズジラウレートである。他の実施態様において、この反応は、触媒の不在下で起こる。
【0048】
いくつかの実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、このレゾルシノール樹脂を、式O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=O(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン若しくはこれらの組合せであるか、又はアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン若しくはこれらの組合せを含む。)を有する2種のジイソシアネートと反応させることにより、得ることが可能若しくは調製可能である。これらのアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルカリーレン基、シクロアルカリーレン基、アラルキレン基、ヘテロシクリレン基、ヘテロアリーレン基は、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、カルボニル、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシ、-N=C=O、-N=C=S又はこれらの組合せにより場合によって置換することができる。他の実施態様において、X及びYのそれぞれは独立に、下記の式の内の1つを有する2価基である:
【化15】


【0049】
いくつかの例において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(V)のレゾルシノール樹脂と、O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=Oを含むイソシアネート混合物との間の反応から調製され若しくは得られる。式(V)のレゾルシノール樹脂の任意のヒドロキシル基が、末端基にあるそれら(すなわち末端ヒドロキシル基)を含めて、イソシアネートと反応できる。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(VI)、(VII)、(VIII)又はこれらの組合せを含む:
【化16】

(式中、A、B、X及びYは、上記において定義した通りであり;及びx、y、z、n、m、l及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約20又は約1〜約10の平均値を有する分布のある整数である。)。いくつかの実施態様において、式(VI)、(VII)及び(VIII)のそれぞれは、場合によって且つ独立に、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル、シロキサニル、アルキニル、アシル、カルボキシ、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシ、非置換の若しくは置換されたメタクリレート、非置換の若しくは置換されたアクリレート、シリルエーテル又はこれらの組合せにより置換されている。他の実施態様において、式(VI)、(VII)及び/又は(VIII)は1つ以上の置換基を有する。さらなる実施態様において、式(VI)、(VII)及び/又は(VIII)は置換基を有しない。
【0050】
いくつかの実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VI)及び(VII)を有する。式(VI)対式(VII)の重量比は、約1:99〜約99:1とすることができる。いくつかの実施態様において、式(VI)対式(VII)の重量比は、約5:95と約95:5の間、約10:90と約90:10の間、約15:85と約85:15の間、約20:80と約80:20の間、約25:75と約75:25の間、約30:70と約70:30の間、約35:65と約65:35の間又は約40:60と約60:40の間にある。他の実施態様において、式(VI)対式(VII)の重量比は、約10:90と約90:10の間にある。他の実施態様において、式(VI)対式(VII)の重量比は、約10:90と約90:10の間にある。さらなる実施態様において、式(VI)対式(VII)の重量比は、約20:80と約80:20の間にある。さらなる実施態様において、式(VI)対式(VII)の重量比は、約35:65と約65:35の間にある。
他の実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VIII)を含む。さらなる実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VI)、(VII)及び(VIII)を含む。
【0051】
他の例において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(V')のレゾルシノール樹脂(式中、AはHであり、かつBは式(V-1)を有する)と、O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=O(式中X及びYのそれぞれは上記において定義した通りである。)を含むイソシアネート混合物との間の反応から調製若しくは得ることができる。他の実施態様において、式(V)のレゾルシノール樹脂の末端ヒドロキシル基が、イソシアネートと反応する。さらなる実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(VI')、(VII')、(VIII')又はこれらの組合せを含む:
【化17】

(式中、X及びYは、上記において定義した通りであり;かつx、y、z、n、m及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約20又は約1〜約10の平均値を有する分布のある整数である。)。いくつかの実施態様において、式(VI')、(VII')及び(VIII')のそれぞれは、場合によって且つ独立に、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル、シロキサニル、アルキニル、アシル、カルボキシ、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシ、非置換の若しくは置換されたメタクリレート、非置換の若しくは置換されたアクリレート、シリルエーテル又はこれらの組合せにより置換されている。他の実施態様において、式(VI')、(VII')及び/又は(VIII')は1つ以上の置換基を有する。さらなる実施態様において、式(VI')、(VII')及び/又は(VIII')は置換基を有しない。
【0052】
いくつかの実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VI')及び(VII')を有する。式(VI')対式(VII')の重量比は、約1:99〜約99:1であり得る。いくつかの実施態様において、式(VI')対式(VII')の重量比は、約5:95と約95:5の間、約10:90と約90:10の間、約15:85と約85:15の間、約20:80と約80:20の間、約25:75と約75:25の間、約30:70と約70:30の間、約35:65と約65:35の間又は約40:60と約60:40の間にある。他の実施態様において、式(VI')対式(VII')の重量比は、約10:90と約90:10の間にある。他の実施態様において、式(VI')対式(VII')の重量比は、約10:90と約90:10の間にある。さらなる実施態様において、式(VI')対式(VII')の重量比は、約20:80と約80:20の間にある。さらなる実施態様において、式(VI')対式(VII')の重量比は、約35:65と約65:35の間にある。
他の実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VIII')を含む。さらなる実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(VI')、(VII')及び(VIII')を含む。
【0053】
本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物のいくつかの実施態様において、式(VI)及び(VIII)又は式(VI')及び(VIII')のそれぞれのXは独立に式(C)を有する2価基であり、かつ式(VII)及び(VIII)又は式(VII')及び(VIII')のそれぞれのYは独立に式(D)を有する2価基である。さらなる実施態様において、式(VI)及び(VIII)又は式(VI')及び(VIII')のそれぞれのXは独立に式(C)及び/又は式(D)を有する少なくとも1種の2価基を含み、かつ式(VII)及び(VIII)又は式(VII')及び(VIII')のそれぞれのYは独立に式(A)及び/又は式(B)を有する少なくとも1種の2価基を含む。式(VI)及び(VII)を含むレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物の特定の実施態様において、Xは式(C)を有する2価基であり;かつYは式(D)を有する2価基である。式(VI')及び(VII')を含むレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物の別の特定の実施態様において、Xは式(C)を有する2価基であり;かつYは式(D)を有する2価基である。
【0054】
さらなる例において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、レゾルシノール樹脂を、2,4'-MDI[すなわちXが式(C)であるO=C=N-X-N=C=O]及び4,4'-MDI[すなわちYが式(D)であるO=C=N-Y-N=C=O]などのMDI異性体の混合物;2,4-TDI[すなわちXが式(B)であるO=C=N-X-N=C=O]及び2,6-TDI[すなわちYが式(A)であるO=C=N-Y-N=C=O]などのTDI異性体の混合物;或いはMDI異性体とTDI異性体との混合物;を含むイソシアネート混合物と反応させることによって得ることが可能若しくは調製可能であろう。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(V)と、2,4'-MDI及び4,4'-MDIを含むイソシアネート混合物との間の反応から調製される。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(IX)、(X)、(XI)又はこれらの組合せを含む:
【化18】

(式中、A及びBは、上記において定義した通りであり;かつ又x、y、z、n、m、l及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約20又は約1〜約10の平均値を有する分布のある整数である。)。いくつかの実施態様において、式(IX)、(X)及び(XI)のそれぞれは、場合によって且つ独立に、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル、シロキサニル、アルキニル、アシル、カルボキシ、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシ、非置換の若しくは置換されたメタクリレート、非置換の若しくは置換されたアクリレート、シリルエーテル又はこれらの組合せにより置換されている。他の実施態様において、式(IX)、(X)又は(XI)は1つ以上の置換基を有する。さらなる実施態様において、式(IX)、(X)又は/及び(XI)は置換基を有しない。
いくつかの実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(IX)及び(X)を含む。他の実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(XI)を含む。さらなる実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(IX)、(X)及び(XI)を含む。
【0055】
さらなる例において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、AがHであり且つBが式(V-1)を有する式(V')のレゾルシノール樹脂と、2,4'-MDI及び4,4'-MDIを含むイソシアネート混合物との間の反応から調製若しくは得ることができる。いくつかの実施態様において、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、式(IX')、(X')、(XI')又はこれらの組合せを含む:
【化19】

(式中、x、y、z、n、m、l及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約20又は約1〜約10の平均値を有する分布のある整数である。)。いくつかの実施態様において、式(IX')、(X')及び(XI')のそれぞれは、場合によって且つ独立に、アルキル、アリール、アルカリール、シクロアルカリール、アラルキル、非置換の若しくは置換されたビニル及びアリルなどのアルケニル、シロキサニル、アルキニル、アシル、アルコキシカルボニル、カルボキシ、ヘテロシクリル、ハロゲン化物、ニトロ、ヒドロキシ、非置換の若しくは置換されたメタクリレート、非置換の若しくは置換されたアクリレート、シリルエーテル又はこれらの組合せにより置換されている。他の実施態様において、式(IX')、(X')及び/又は(XI')は1つ以上の置換基を有する。さらなる実施態様において、式(IX')、(X')及び/又は(XI')は置換基を有しない。
いくつかの実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(IX')及び(X')を有する。他の実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(XI')を有する。さらなる実施態様において、本レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は式(IX')、(X')及び(XI')を有する。
【0056】
当業者には、式(VI)〜(XI)及び(VI')〜(XI')のフェノール性酸性水素のいずれかが、知られているフェノール反応によりアシル、アルキル又はアルケニルなどの他の基に変換し得ることを理解することができる。例えば、フェノール性酸性水素のそれぞれは、場合によって且つ独立に、(1)ジアゾアルカンと;(2)塩基の存在下でハロゲン化アルキル若しくはアルケニル;硫酸アルキル若しくはアルケニル;亜硫酸アルキル若しくはアルケニルと;又は(3)酸触媒の存在下で、オレフィン;と反応することによって、アルキル若しくはアルケニル基に変換することができる。同様に、フェノール性酸性水素は、塩基の存在下でハロゲン化アシル若しくは無水カルボン酸と反応することにより、アシル基に変換することができる。
【0057】
同様に、上述のフェノール性酸性水素のそれぞれは、場合によって且つ独立に、フェノール性酸性水素を、メタクリレート又はアクリレート基をも含むエポキシ化合物のエポキシ基と反応させることにより、置換された若しくは非置換のメタクリレート又はアクリレート基に官能基化又は変換することができる。適切なエポキシ化合物のいくつかの非限定的例には、メタクリル酸グリシジル及びアクリル酸グリシジルが含まれ、これらは両方共Aldrich社、Milwaukee、WI(ウイスコンシン)州などの商業的供給業者から入手することができる。Xが上記において定義した通りである式(A)のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートと、メタクリル酸グリシジルとの間の可能な反応を下記に示す。
【化20】

【0058】
別法として、フェノール性酸性水素のそれぞれは、場合によって且つ独立に、フェノール性酸性水素を置換された若しくは非置換のハロゲン化メタクリロイル又はハロゲン化アクリロイルと反応させることにより、置換された若しくは非置換のメタクリレート又はアクリレート基に変換することができる。適切な置換された若しくは非置換のハロゲン化メタクリロイル又はハロゲン化アクリロイルのいくつかの非限定的例には、塩化アクリロイル、3,3-ジメチルアクリロイルクロリド、塩化メタクリロイル、塩化クロトノイル及び塩化シンナモイルが含まれ、これらの全てはAldrich社、Milwaukee、WI(ウイスコンシン)州などの商業的供給業者から入手することができる。Xが上記において定義した通りである式(A)のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートと、塩化アクリロイルとの間の可能な反応を下記に示す。
【化21】

【0059】
さらに、上述のフェノール性酸性水素のそれぞれは、場合によって且つ独立に、フェノール性酸性水素を、アルケニル基も含むイソシアネート化合物のイソシアネートと反応させることにより、置換された若しくは非置換のアルケンに官能基化又は変換することができる。適切なイソシアネート化合物の非限定的例には、3-イソプロペニル-アルファ,アルファ-ジメチルベンジルイソシアネートが含まれ、これらはAldrich社、Milwaukee、WI(ウイスコンシン)州などの商業的供給業者から入手することができる。Xが上記において定義した通りである式(A)のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートと、3-イソプロペニル-アルファ,アルファ-ジメチルベンジルイソシアネートとの間の可能な反応を下記に示す。
【化22】

【0060】
式(B)(B')及び(C)で表される化合物などの上述の官能基化メタクリレート、アクリレート及びアルケニル化合物は、開始剤の存在下又は不在下で、熱、又はUV光及びe-ビームなどの放射線により架橋させて、樹脂又はポリマー性材料を形成することができ、それを種々のコーティング配合物の結合剤として使用することができる。適切な開始剤のいくつかの非限定的例には、過酸化アシル(例えば、過酸化アセチル及びベンゾイル)、過酸化アルキル(例えば、過酸化t-ブチル及び過酸化クミル)、ヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド及びクミルペルオキシド)、過酸エステル(例えば、過安息香酸t-ブチル)などの過酸化物、アゾ化合物(例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル)、二硫化物、テトラゼン及びこれらの組合せが含まれる。さらに、式(B)で表される化合物は、本明細書において開示している任意のジイソシアネート又はポリイソシアネートによって硬化させることができる。場合によって、これらのコーティング配合物は、溶媒、充填剤、レオロジー調整剤、増粘剤、界面活性剤、湿潤剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、レべリング剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤などの、1種以上の適切な添加剤を含むことができる。
【0061】
さらに、上述のフェノール性酸性水素のそれぞれは、場合によって且つ独立に、フェノール性酸性水素を、それぞれアルキル、アリール、アラルキル、ビニル、シロキサニル又はシリルエーテル基をも含むエポキシ化合物のエポキシ基と反応させることにより、アルキル、アリール、アラルキル、ビニル、シロキサニル又はシリルエーテル基に官能基化又は変換することができる。これらの官能基化アルキル、アリール、アラルキル、ビニル、シロキサニル又はシリルエーテル化合物は、種々のコーティング用途に用いることができる。フェノール性酸性水素の化学的性質は、その全体が引用により本明細書に組み込まれているZvi Rappoportの著書「フェノールの化学(The Chemistry of Phenols)」(John Wiley & Sons、199〜258,605〜660及び1015〜1106頁(2003))中で記述されている。Xが上記において定義した通りであるレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート(A)と、Rがアルキル、アリール、アラルキル、ビニル、シロキサニル又はシリルエーテルであるエポキシ化合物(D)との間の可能な反応を下記に示す。
【化23】

【0062】
式(E)で表される化合物などの上述の官能基化アルキル、アリール、アラルキル、ビニル、シロキサニル又はシリルエーテル化合物は、本明細書において開示しているジイソシアネート及びポリイソシアネートなどの硬化剤により架橋させて、樹脂又はポリマー材料を形成することができ、それを種々のコーティング配合物の結合剤として使用することができる。場合によって、これらのコーティング配合物は、溶媒、充填剤、レオロジー調整剤、増粘剤、界面活性剤、湿潤剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、レべリング剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤などの、1種以上の適切な添加剤を含むことができる。
【0063】
レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、ゴム組成物配合物のメチレン受容体として使用することができる。天然ゴム、合成ゴム又はこれらの組合せなどの任意のゴム又はゴム材料は、本明細書において開示しているゴム組成物向けに使用することができる。適切な合成ゴムポリマーの非限定的例には、ポリブタジエンなどのブタジエンポリマー、イソブチレンゴム(ブチルゴム)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリイソプレン、1,3-ブタジエン又はイソプレンと、スチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルなどのモノマー並びにエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)とのコポリマー、並びに特にエチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーが含まれる。適切なブタジエンポリマーの非限定的例には、ゴム様特性を有するそれらのポリマーが含まれ、これはブタジエン単独で、又は、スチレン、メチルスチレン、メチルイソプロペニルケトン及びアクリロニトリルなどの1種以上の他の重合可能なエチレン性不飽和化合物と一緒に重合させることによって調製される。ブタジエンは、全重合可能材料の少なくとも40%の量で混合物中に存在できる。
【0064】
このゴム組成物に、当技術分野で知られている任意の適切なメチレン供与体を場合によって添加することができる。一般に、メチレン供与体は、ゴム材料を加硫する間、加熱によりホルムアルデヒドを発生することが可能である。適切なメチレン供与体の非限定的例には、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)、ジ-〜ヘキサメチロールメラミン又はこれらの完全若しくは部分エーテル化若しくはエステル化誘導体、例えばヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)、オキサゾリジン誘導体、N-メチル-1,3,5-ジオキサジンなどが含まれる。
【0065】
ゴム組成物の第1のメチレン受容体として本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートが使用されることに加えて、ホルムアルデヒドと反応することができる第2の適切なメチレン受容体を、ゴム組成物に場合によって添加することができる。適切な第2のメチレン受容体のいくつかの非限定的例には、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物;PENACOLITE(登録商標)樹脂B-16及びB-1A;PENACOLITE(登録商標)樹脂B-18-S、B-19-S及びB-19-M;並びにPENACOLITE(登録商標)樹脂B-20-S及びB-21-S;などの種々のレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂が含まれる。全ての上述のPENACOLITE(登録商標)樹脂は、INDSPEC Chemical Corporation, Pittsburgh, PA(ペンシルバニア)州から市販されている。いくつかの実施態様においてメチレン受容体は、第2のメチレン受容体を含まない、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物である。他の実施態様では、第2のメチレン受容体が存在しており、PENACOLITE(登録商標)B-20-Sとすることができる。さらなる実施態様において、第1のメチレン受容体は、ゴム成分100重量部に対して約1〜5重量部(すなわち1〜5phr)の量で、ゴム成分に配合される。
【0066】
一般に、メチレン受容体対メチレン供与体の重量比は、約1:10〜10:1、より好ましくは1:3〜3:1である。メチレン供与体がHMTAである場合、この重量比は少なくとも約2:1であることが好ましい。
ゴム組成物は、硫黄などの架橋又は加硫剤を含有できる。適切な硫黄加硫剤の例には、元素硫黄、又は硫黄供与性加硫剤が含まれる。いくつかの実施態様において、硫黄加硫剤は元素硫黄である。他の架橋剤も使用できる。
【0067】
ゴム組成物は、カーボンブラック、酸化亜鉛、シリカ、酸化防止剤、ステアレート、促進剤、油、接着性増進剤、コバルト塩、ステアリン酸、充填剤、可塑剤、ワックス、プロセスオイル、遅延剤、オゾン劣化防止剤などの1種以上の添加剤をも含有できる。促進剤は、加硫に要する時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を向上させるために使用することができる。適切な促進剤には、アミン、二硫化物、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチカーボネート(dithicarbonates)及びザンテート(zanthates)が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施態様において、一次促進剤は、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゼンチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミドである。ステンレス鋼などの金属へのゴム材料の接着性を増進することができる任意のコバルト化合物を使用できる。適切なコバルト化合物には、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸及び他のカルボン酸のコバルト塩;ネオデカン酸コバルトなどの炭素原子6〜30個を有する脂肪族又は脂環式炭素環状酸のコバルト塩;ナフテン酸コバルトなどの芳香族炭素環状酸のコバルト塩;塩化コバルトなどのハロゲン化コバルト;並びにOM Group, Inc.,Cleveland, Ohio(オハイオ)州、製のMANOBOND(登録商標)680Cなどの有機-コバルト-ホウ素錯体;が含まれるがこれらに限定されない。
【0068】
ゴム組成物は、ゴム材料、カーボンブラック、酸化亜鉛、滑剤及びメチレン受容体を、温度約150℃でBanburyミキサー中において混合することにより調製することができる。得られたマスターバッチは、次いで少なくとも1種の加硫促進剤及びメチレン供与体と、標準的2-ロール型ゴムミルで配合する。次に、ゴム組成物を成形及び加硫することができる。ゴム組成物及びそれらの配合物の他の調製方法は、米国特許第6875807号;第6605670号;第6541551号;第6472457号;第5945500号;及び第5936056号中に記載され、これらの全ては引用により本明細書に組み込まれている。
【0069】
いくつかの実施態様において、このゴム組成物は、(a)ゴム材料、(b)加熱によりホルムアルデヒドを発生するメチレン供与体化合物;(c)本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物である又はこれを含むメチレン受容体;及び(d)架橋又は加硫剤;を含む加硫可能なゴム組成物である。さらなる実施態様において、このゴム組成物は、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム又はこれらの混合物である。
【0070】
いくつかの実施態様において、この加硫可能なゴム組成物は、ゴム補強材料をさらに含む。ポリエステル、ポリアミド(例えばナイロン及びアラミド)、ポリビニルアルコール、炭素、ガラス、鋼(黄銅、亜鉛又は青銅めっきした)、ポリベンゾオキサゾール、レーヨン及び他の有機若しくは無機組成物を含むがこれらに限定されない、ゴムを強化することができる任意のゴム補強材料を使用することができる。これらのゴム補強材料は、フィラメント、繊維、コード又はファブリックの形態とすることができる。いくつかの実施形態において、ゴム補強材料は、黄銅、亜鉛、青銅又はこれらの組合せにより被覆した鋼コードとすることができる。
【0071】
必ずしも必要ではないが、ゴム補強材料は、未加硫ゴム組成物と組み合わせる前に接着剤組成物で被覆することができる。補強材料と加硫ゴム成分との間の接着性を高めることができる任意の接着剤組成物を使用することができる。例えば、ゴム材料とゴム補強材料との間の接着性を高めるためのある種の適切な接着剤組成物は、米国特許第6416869号;第6261638号;第5789080号;第5126501号;第4588645号;第4441946号;第4236564号;第4051281号;第4052524号;及び第4333787号中に記載され、これらの全ては引用により本明細書に組み込まれている。これらの接着剤組成物は、修正を加えて若しくは加えずに、これらの中で教示されている方法により使用することができる。
【0072】
本明細書において開示している加硫可能なゴム組成物から二次加工物品を製造することができる。二次加工物品の非限定的例には、タイヤ、動力伝達装置ベルト、コンベヤベルト及びV-ベルトなどのベルト、空気圧及び水圧ホースなどのホース、印刷ロール、ゴム製靴ヒール、ゴム製靴底、自動車用床マット、トラック用泥除けフラップ及びボールミルライナーが含まれる。
いくつかの実施態様において、この二次加工ゴム物品は次の方法により調製することができる。その方法は、(1)架橋剤と混合した上述の加硫可能なゴム組成物を得るステップ;(2)ゴム補強材料を加硫可能なゴム組成物内に埋め込むステップ;及び(3)ゴム組成物の架橋を行うステップを含み、この場合、架橋させる前に、該補強材料を該加硫可能なゴム組成物に埋め込む。
【0073】
本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、ゴム補強材料を処理する種々の浸漬用配合物を調製するのにも使用することができる。いくつかの実施態様において、この浸漬用配合物は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスを含まずに、該レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含む。他の実施態様において、浸漬用配合物は、種々の工業的用途向けのレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)をさらに含む1回浸漬用(すなわち単一ステップ)又は2回浸漬用(すなわち二ステップ)配合物である。例えば、1回又は2回浸漬用RFL配合物のいずれかを、ゴム組成物中に使用されるゴム補強材料を処理するのに使用することができる。ポリエステル、ポリアミド(例えばナイロン及びアラミド)、ポリビニルアルコール、炭素、ガラス、ポリベンゾオキサゾール、レーヨン及び他の有機又は無機組成物を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意のゴム補強材料を使用することができる。これらのゴム補強材料は、フィラメント、繊維、コード又はファブリックの形態であってよい。
【0074】
レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物と、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスとを含む浸漬用RFL配合物でゴム補強材料を処理した後、処理されたゴム補強材料は、高温度のオーブンなどにおいて熱処理又は硬化させることができる。この高温度は約50℃〜約200℃とすることができる。この熱処理は、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物の脱ブロッキングを引き起こして、レゾルシノール樹脂によりブロックされていたイソシアネートを生成させることができる。次にこのイソシアネートが、高温度でレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスと反応して、架橋したレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスを形成できる。
【0075】
H-引張り接着特性などの、1回又は2回浸漬用配合物により提供される接着特性は、配合物中に本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を用いることにより改良することができる。1回浸漬用配合物では、本発明のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートは、標準的RFL配合物への添加剤として使用される。場合によって、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートは、RFL配合物における唯一のレゾルシノール供給源として使用することができる。その上、このレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートは、浸漬用配合物における唯一の成分として使用することができる。2回浸漬用配合物では、第1浸漬液中に、しばしば溶媒、増粘剤、エポキシなどの他の材料と一緒にこのレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートを使用し、続いて第2浸漬液として従来のRFL配合物を使用する。動力伝達装置ベルトなどのいくつかの用途では、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート浸漬液が唯一の処理液であり;第2の、RFL処理液は使用しない。ゴム被覆率%、ピーク荷重、試験に要するエネルギー及び破断コード%などのH-引張り接着性特性は、ASTM D4776により測定することができる。試料は、加硫して、未老化条件、蒸気老化条件及び/又は湿度老化条件について試験することができる。レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス(RFL)配合物において、レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、フェノールブロック又はカプロラクタムブロックイソシアネートを部分的に又は完全にのいずれかで置き換えることができる。また、配合物においてレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物がR/F樹脂を部分的に置き換える場合、いくらかの剛性なメチレン架橋構造を柔軟な長鎖架橋レゾルシノールで置き換えるため、配合物の柔軟性も改良できる。
【0076】
いくつかの1回浸漬方法において、水性アルカリ性浸漬用配合物は、レゾルシノール性ノボラック樹脂溶液などの樹脂溶液を十分な水と混合して、樹脂固形分の濃度を約10重量%未満に低下させることによって作ることができる。pH調節は、苛性水溶液の添加により行うことができる。水酸化ナトリウム又は水酸化アンモニウムなどのアルカリ性物質を浸漬液に添加して、pHを約7.0〜約12.0に調節することができる。溶液のpHを調節した後、ホルムアルデヒド水溶液を添加できる。次いでこの樹脂溶液に、合成ゴムラテックスを添加することができる。こうして調製したRFL浸漬液は直ぐに使用できる準備が整っているが、使用する前に浸漬液を室温で約16〜24時間熟成すると一般により良好な結果が示される。1回浸漬用配合物の調製において、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、接着性増進剤として使用することができる。場合によって、ポリエポキシド化合物、他のブロックイソシアネート化合物又はエチレン-尿素化合物などの他の接着性増進剤が使用できる。一般に、RFL中の接着性増進剤は、表面拡散又は浸透により、或いは化学的及び物理的相互作用により、ゴム補強材料へのゴム材料の結合性を改良できる。
【0077】
浸漬液に使用するゴムラテックスは、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、及びビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックスとすることができる。これらのラテックスは単独で又は混合物として使用することができる。浸漬用配合物において、ゴムラテックスの使用の型についての制約は存在しない。一般に、このゴムラテックスの主なゴム成分としてビニルピリジン-スチレン-ブタジエンコポリマーラテックスを使用することが好ましい。
【0078】
いくつかの1回浸漬処理において、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスは使用されない。1回浸漬用配合物は、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネートだけを、及び場合によって溶媒を含有できる。さらに、この型の1回浸漬用配合物は、エポキシ含有化合物、増粘剤、消泡剤又は1種以上の他の添加剤を場合によって含有できる。一般に、ゴム材料へのコード及びファブリックなどのゴム補強材料の接着性は、ゴム補強材料を、レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックスを含まないこのような1回浸漬用配合物中に浸漬することにより増進され得る。
【0079】
2回浸漬方法では、ゴム補強材料を、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含む第1の浸漬溶液で処理する。場合によって、ポリエポキシド化合物、他のブロックイソシアネート化合物又はエチレン-尿素化合物などの他の接着性増進剤を使用してよい。使用に適したポリエポキシド化合物は、一般に、1つ以上のエポキシ基を含有する分子を含み、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール及びレゾルシノールから製造したエポキシ化合物を含むことができる。いくつかの実施態様において、ポリエポキシド化合物は、多価アルコールのポリエポキシドである。他の実施態様において、ブロックイソシアネートは、トルエンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートを含む、ラクタム、フェノール及びオキシムブロックイソシアネートから選択される。この第1の浸漬処理により、一般に繊維表面が活性化されて、第2の浸漬溶液、すなわちRFL配合物との相互作用を増進することができる。2回浸漬用配合物のRFLに本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物をさらに使用することにより、ゴムコンパウンドへのゴム補強材料の接着性をさらに改良することができる。
1回浸漬又は2回浸漬用配合物は、種々の用途に使用することができる。例えば、これらをポリエステルタイヤコードをゴム材料に結合させるために使用し、従来の配合物よりも改善された結果を得ることができる。
【0080】
ポリエステルコードをゴムコンパウンドに接着させる一方法において、本発明の実施態様に従って製造した樹脂を使用して調製した1ステップ浸漬用配合物を含有する浸漬浴からコードを連続的に引き出す従来の浸漬機が使用される。コードに空気ジェットを吹き付け、次いで170℃に設定したオーブンで120秒コードを乾燥することにより過剰の浸漬液が除去される。次いで、このポリエステルコードに浸漬液が浸透するのに必要な十分な時間だけコードを230℃で硬化(cure)させる。約60秒の許容し得る硬化時間が適切であることが見出されている。
ポリエステルコードがゴム材料に首尾良く結合したことを試験する方法において、接着剤処理したコードを、配合され且つ未加硫のゴムコンパウンド中に埋め込み、次いでこのゴムコンパウンドを十分な時間及び圧力で加硫し良好な接着性を増進させる。H-引張り接着性試験を実施し、ゴムへのテキスタイルタイヤコードの静的接着性を測定する。この試験はASTM D4776法として規定され、試験目的で使用している。
【0081】
接着剤を含有するポリエステル補強用繊維又はコードは、天然ゴム、ポリブタジエンゴム及びゴム性ブタジエン-スチレンコポリマーの加硫可能なコンパウンドなどのゴムに接着させることができるが、ポリエステル補強用繊維又はコードは、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレン、アクリルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム及びイソプレン-アクリロニトリルゴムを含む群からの他の加硫可能なゴム材料にも接着させることができる。これらの加硫前のゴムは、硫黄、ステアリン酸、酸化亜鉛、促進剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤及び他の加硫剤を含む通常の配合剤と混合することができる。
本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含む浸漬用配合物で被覆したポリエステル繊維、糸、フィラメント、コード又はファブリックは、ラジアル、バイアス又はベルトバイアス乗用車タイヤ、トラックタイヤ、自動二輪車又は自転車タイヤ、オフロードタイヤ、飛行機タイヤ、動力伝達装置ベルト、V-ベルト、コンベヤベルト、ホース及びガスケットの製造において使用することができる。
【0082】
ゴムコンパウンド及びファブリック浸漬用配合物の成分としての使用のほかに、本明細書において開示しているレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、種々の硬化反応に使用することができ、これには、フェノール性ヒドロキシル基と、特にエポキシ環などの反応性環基との反応が含まれる。適切な反応性環基の非限定的例には、その対応する開環構造よりも高い歪みエネルギーを有する複素環基が含まれる。歪みエネルギーの従来の定義は、実際の分子と、該同一の構成からなる実際の分子と完全に歪みのない分子との間のエネルギー差を表すということである。歪みエネルギーの由来に関するより多くの情報は、引用により本明細書に組み込まれているWibergらの論文「炭化水素特性の理論的解析:II基特性の加成性及び歪みエネルギーの由来(A Theoretical Analysis of Hydrocarbon Properties: II Additivity of Group Properties and the Origin of Strain Energy)」(J. Am. Chem. Soc. 109, 985(1987))中に見出すことができる。複素環基は、3、4、5、7、8、9、10、11又は12員を、さらなる実施態様では3、4、5、7又は8員を、いくつかの実施態様では3、4又は8員を、又さらなる実施態様では3又は4員を有することができる。このような複素環の非限定的例は、環状エーテル(例えば、エポキシド及びオキセタン)、環状アミン(例えば、アジリジン)、環状スルフィド(例えば、チイラン)、環状アミド(例えば、2-アゼチジノン、2-ピロリドン、2-ピペリドン、カプロラクタム、エナントラクタム及びカプリルラクタム)、N-カルボキシ-α-アミノ酸無水物、ラクトン及び環状シロキサンである。上記の複素環の化学は、引用により本明細書に組み込まれているGeorge Odianの著書「重合の原理(Principle of Polymerization)」第2版、第7章、508〜552頁(1981)中に記載されている。
さらなる例において、反応性の環は、ブチロラクトン、N-メチルブチロラクタム、N-メチルカプロラクタム及びカプロラクトンなどの-COO-基又は-CONR-基を含む5又は7員環とすることができる。
【0083】
いくつかの実施態様において、ジイソシアネート又はポリイソシアネート化合物から調製した非官能基化若しくは官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を、マスクされたジイソシアネート又はポリイソシアネート化合物として使用することができる。マスクされたジイソシアネート又はポリイソシアネート化合物は、ジオール、ジチオール、ジアミン、ジカルボン酸、ヒドロキシルアミン、アミノ酸、ヒドロキシル酸、チオール酸、ヒドロキシチオール又はチオアミンなどの二官能性化合物と一緒に加熱すると反応して、ポリマー性材料又は物品を形成することができる。例えば、ジオール又はジアミンを用いる場合、それぞれポリウレタン又はポリ尿素材料を形成できる。適切なジチオールの非限定的例は、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、エリスロ-1,4-ジメルカプト-2,3-ブタンジオール、(±)-トレオ-1,4-ジメルカプト-2,3-ブタンジオール、4,4'-チオビスベンゼンチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、スルホニル-ビス(ベンゼンチオール)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール及び1,6-ヘキサンジチオールである。適切なジオールの非限定的例は、2,2'-ビ-7-ナフトール、1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン、4,4'-スルホニルジフェノール、ビスフェノール、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジフェノール、1,10-デカンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、4,4'-(9-フルオレニリデン)ビス(2-フェノキシエタノール)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、ヒドロキノン-ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、及びビス(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンである。適切なジアミンの非限定的例は、1,4-フェニレンジアミン、4,4-ジアミノベンゾフェノン及び4,4-ジアミノジフェニルスルホンなどのジアミノアレーン、並びに1,2-エタンジアミン及び1,4-ブタンジアミンなどのジアミノアルカン、ジベンゾ[b,d]フラン-2,7-ジアミン、並びに3,7-ジアミノ-2(4),8-ジメチルジベンゾチオフェン5,5-ジオキシドである。適切なジカルボン酸の非限定的例は、フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸及び4,4'-ビフェニルジカルボン酸である。適切なヒドロキシルアミンの非限定的例は、p-アミノフェノール及びフルオレセインアミンである。適切なアミノ酸の非限定的例は、4-アミノ酪酸、フェニルアラニン及び4-アミノ安息香酸である。適切なヒドロキシル酸の非限定的例は、サリチル酸、4-ヒドロキシ酪酸及び4-ヒドロキシ安息香酸である。適切なヒドロキシチオールの非限定的例は、モノチオヒドロキノン及び4-メルカプト-1-ブタノールである。適切なチオアミンの非限定的例は、p-アミノベンゼンチオールである。適切なチオール酸の非限定的例は、4-メルカプト安息香酸及び4-メルカプト酪酸である。ほとんど全ての上記の架橋性化合物は、Aldrich Chemicals社及び他の薬品供給業者から市販されている。
【0084】
さらに、官能基化レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシなどの有用な官能基を含有でき、コーティング及び複合体などの他の用途向けに使用できる。前述の式(B)、(B')、(C)及び(E)の化合物などの官能基化メタクリレート又はアクリレート、アルケニル、アルキル、アリ-ル、ビニル、アラルキル、シロキサニル及びシリルエーテル化合物も架橋させて、種々のコーティング用途に適した樹脂又はポリマー性材料を形成できる。
下記の実施例は、本発明の実施態様を例示するために提示している。全ての数値は、近似値である。数範囲を示している場合、記述範囲外の実施態様でも本発明の範囲内に当たるものと理解されたい。各実施例で記述している特定の細部を、本発明の必須な特徴として解釈すべきではない。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
機械的撹拌機、温度計、添加用漏斗及び還流冷却器を取り付けた500ml反応がま中に、143.1グラム(1.3モル)のレゾルシノールを装入し、約120〜130℃まで加熱して、レゾルシノールを融解させた。次いで、融解したレゾルシノール中に、温度条件約95〜120℃で約1〜2時間、65.9グラム(0.806モル)のホルムアルデヒド水溶液(36.7%)をゆっくり添加した。ホルムアルデヒドを添加した後、反応混合物を約30〜60分間還流させた。次いで、シュウ酸(1.7グラム、触媒)を添加し、反応混合物中に存在する水を、真空下で蒸留した(約26〜28"Hg(約660.4〜711.2mmHg)及び約155〜160℃において)。レゾルシノール-ホルムアルデヒド反応生成物(RF樹脂)の脱水が完結した後、4.3グラム(0.0172モル)のMONDUR(登録商標)ML(Bayer Corporation, Pittsburgh,PA(ペンシルバニア)州、米国から入手可能な2,4'-及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物を主として含む)を、温度条件150〜160℃で約15〜45分間にわたって融解したRF樹脂中にゆっくり添加した。150〜160℃で約15〜30分間撹拌を継続して、RF樹脂とのMONDUR(登録商標)MLの反応を完結させた。
【0086】
次に、絶えず撹拌しながらMONDUR(登録商標)ML改質RF樹脂中に、90〜125℃で約1〜2時間にわたって極めてゆっくりと159.8グラムの蒸留水を添加した。水を添加した後、反応混合物は、均質な暗赤色溶液の外観をしていた。40%水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、このMONDUR(登録商標)ML改質RF樹脂溶液のpHを約7〜9に調節した。最後に、この溶液を冷却し、貯蔵した。
図1に、MONDUR(登録商標)ML改質RF樹脂溶液の合成を概説する工程流れ図を示している。
【0087】
最終反応混合物について行ったpH測定は、7.6の値を示した。この材料の溶液粘度は、Brookfield粘度計LV型を使用して23℃で#4スピンドルにより測定し、120センチポアズ(cps)の値を示した。液体クロマトグラフィ(LC)及びガスクロマトグラフィ(GC)測定は、反応混合物が8.6重量パーセントの未反応(遊離)レゾルシノールを含有することを示した。
レゾルシノール、ホルムアルデヒド及びMondur MLの反応から得られた液体樹脂は、FT-IR及びプロトン/炭素-13 NMRによって構造分析及び特性付けの試験を行った。試料は、水、RF樹脂、未反応レゾルシノール及びウレタン構造の混合物の赤外吸収特性を示した。ウレタン構造は、波数1716付近の弱いカルボニル吸収として観察された。未反応のイソシアネート構造は検出されなかった。
【0088】
実施例1のプロトンNMRデータは、下記の表1に掲げる構造結果を示した。
【表1】

FT-IR及びNMR特性付けデータに基づき、MONDUR(登録商標)MLとRF樹脂との間の反応から形成され得ているいくつかの可能性のある化学構造には、式(IX)、(X)、(XI)、(IX')、(X')、(XI')及び図2中に概略的に示しているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
(実施例2〜5)
実施例2〜5は、イソシアネート混合物との反応の前の脱水ステップの終わりに、触媒を化学量論的量の苛性物で中和した実施例4を除いて、実施例1及び図1に概説した合成手順により調製した。それらの配合物を、下記の表2に示している。
【表2】

実施例1〜5におけるMONDUR(登録商標)ML含量は3から10重量パーセントまで増加させたが、最終樹脂溶液中の遊離レゾルシノールの量は、一定のままであった。これは、MONDUR(登録商標)MLが、反応生成物中に存在する遊離レゾルシノールとよりも、RF樹脂構造と主として反応し得ることを示唆した。
【0090】
(実施例6)
市販のGRILBOND(登録商標)IL-6に対するレゾルシノール樹脂ブロックジイソシアネートの試験及び評価に使用されるゴム組成物の配合物(すなわち実施例6)を、表3に示している。実施例6のムーニー粘度及びムーニースコーチ特性を、引用により本明細書に組み込まれているASTM D1646-04により、Alpha Technologies社MV2000ムーニー粘度計を使用して測定した。ムーニー粘度は、円筒形空洞内でゴムにはまり込んだ円筒形金属ディスク(又は回転子)の回転に抵抗する剪断トルクと定義される。実施例6の硬化特性を、引用により本明細書に組み込まれているASTM D5289に従い、Alpha Technologies社MDR2000レオメーターにより160℃、0.5°アーク及び1.67Hzで測定した。ムーニー粘度、ムーニースコーチ及び硬化特性測定のため、試料をそれぞれ100℃、125℃及び160℃で硬化させた。実施例6のムーニー粘度、ムーニースコーチ及び硬化特性を、下記の表3に示している。
【表3】

【0091】
(比較例A、実施例7A、7B及び7C)
GRILBOND(登録商標)IL-6、及び異なる量のMONDUR(登録商標)ML含量を含むRF樹脂ブロックMONDUR(登録商標)ML溶液から、単一ステップRFL接着剤浸漬液配合物を調製した。該浸漬液配合物に関する詳細を表4に提示している。
【表4】

実施例7A、7B及び7Cでは、単一ステップ浸漬液において、PENACOLITE(登録商標)R-50の代わりにRF樹脂ブロックMONDUR(登録商標)ML溶液(すなわち実施例1〜3)を使用した。比較例Aでは、GRILBOND(登録商標)IL-6を使用した。比較例A、実施例7A、7B及び7Cでは、ホルムアルデヒド/レゾルシノール(F/R)比を一定の1.21に維持した。実施例7A、7B及び7Cの合計樹脂及びイソシアネートレベルは、比較例Aのそれよりも約25重量パーセント低かった。
【0092】
KOSA社製の非接着剤活性化PETコード(コードT-792,1500×2、8.25×8.25)を、上記の表4に収載した単一ステップ配合物(すなわち比較例A、実施例7A、7B及び7C)に浸漬し、下記の表5に示す条件のもとに設定したエアオーブンで乾燥及び硬化させた。次いでこれらのコードを、上記表3に示す組成を有する未硬化ゴムコンパウンドに埋め込み、加硫し、かつ、ASTM D4776方法による未老化、蒸気及び湿度老化H-引張り接着性について試験した。得られた結果を、下記の表5に要約している。
【表5】

【0093】
表5における結果から、RF樹脂及びイソシアネートの合計レベルを著しく低減させたにも拘らず、RF樹脂ブロックMONDUR(登録商標)ML組成物を含有するRFL配合物は、PETコード接着性において良好な結果を提供したことがわかるであろう。
【0094】
(実施例8)
浸漬液老化(ageing)に関するRFL配合物の性能を評価するため、単一ステップ浸漬液配合物(すなわち比較例B及び実施例8)を調製し、1及び6日老化させ、次いで無接着剤活性化PETコード上を処理するのに使用した。次いで、RFL処理したコードを、それらの未老化H-引張り接着性について試験した。比較例B及び実施例8の配合及び試験結果を、下記の表6に要約している。
【表6】

表6におけるデータは、実施例8が、比較例Bよりも高いH-引抜き力及びエネルギー値を有することを示している。
【0095】
(実施例9)
GRILBOND(登録商標)IL-6(すなわち比較例C)又はRFブロックMONDUR(登録商標)ML(すなわち実施例9)を含有するRFLについて、H-引張り接着性に及ぼす接着剤処理温度の効果を評価した。乾燥オーブン温度を170℃に保持し、接着剤処理オーブン温度を174と230℃の間で変化させた。Trevira及びKOSA社の非接着剤活性化PETコードを比較例C及び実施例9に浸漬して、接着剤性能評価に用いた。それらの結果を、表7に提示している。
【表7】

より高い処理温度で、実施例9が、比較例Cよりも著しく高い接着性をもたらした。RFL配合物中に使用したRF樹脂及びイソシアネートの合計レベルを低減させたことにより、RF-ブロックMONDUR(登録商標)ML溶液に関連したコスト節約の可能性があり得るであろう。
【0096】
(実施例10)
非接着剤活性化PETコードにおける単一ステップ浸漬液の接着剤性能も評価した。その結果を表8に提示している。
【表8】

非接着剤活性化PETコードで試験した場合、該接着性値は、改質RF樹脂を含有する浸漬液配合物について、著しくより良好であった。
(実施例11)
接着性性能に及ぼすRFL浸漬液固形分の効果も測定した。この検討において、接着剤-活性化PETコードを使用し、かつRFL浸漬液固形分含量を16と22重量パーセントの間で変動させた。PENACOLITE(登録商標)R-50樹脂を、対照標準配合物に使用した。ストラップ剥離及びH-引張り接着性測定を行った。これらの結果を表9に提示している。
【表9】

比較例Eと比較すると、実施例11は約5〜10%高い接着性値をもたらした。接着性値がより高いため、対照標準接着剤浸漬液と同様な接着性値を保持して、RF-ブロックMONDUR(登録商標)MLを含有するRFLの全固形分含量を低減させることができるであろう。これにより、本発明の樹脂溶液を含有するRFL配合物におけるコスト節約の可能性をもたらし得るであろう。
【0097】
本発明を限られた数の実施態様に関して記述してきたが、一実施態様の特定の特徴が本発明の他の実施態様に帰せられるべきではない。1つの実施態様が、本発明の全ての態様を代表するわけではない。いくつかの実施態様において、本組成物又は方法は、本明細書において言及されない数多くの化合物又はステップを含んでよい。他の実施態様において、本組成物又は方法は、本明細書において挙げていない任意の化合物又はステップを含まず、或いは実質的に含まない。記述された実施態様からの変更及び改変が存在する。難燃剤の製造方法は、いくつかの行為又はステップを含むものとして記述できる。特に規定しない限り、これらのステップ又は行為は、任意の順序又は順番で実行できる。最後に、本明細書において開示している数は、その数を記述するのに「約」又は「およそ」の語が用いられるかどうかに拘らず、概略値を意味すると解釈すべきである。添付している特許請求の範囲は、全てのこれらの改変及び変更を、本発明の範囲内に収まるものとして扱うことを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
(図面の簡単な説明)
【図1】レゾルシノール、ホルムアルデヒド、並びに2,4'-及び4,4'-MDIの混合物に由来するレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を調製する工程ステップを示す工程流れ図である。
【0099】
【図2】レゾルシノール、ホルムアルデヒド、並びに2,4'-及び4,4'-MDIの混合物に由来するレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を調製する化学反応ステップを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物であって、
(a)式(VI')を有する第1の化合物:
【化1】

(b)式(VII')を有する第2の化合物:
【化2】

(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含み;n、m及びkのそれぞれは独立に、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を含む、前記組成物。
【請求項2】
式(VIII')を有する第3の化合物:
【化3】

(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、シクロアルカリーレン、アルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含み;x、y及びzのそれぞれは独立に、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)をさらに含む、請求項1記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物。
【請求項3】
少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物と、レゾルシノール樹脂との間の反応から得ることが可能なレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記レゾルシノール樹脂が、式(V)、式(V')又はこれらの組合せ:
【化4】

(式中、n及びn'のそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数であり;A、B、A'及びB'のそれぞれは独立に、末端基である。)を有する、請求項3記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物。
【請求項5】
A、B、A'及びB'のそれぞれが、独立に、H、式(V-1)又は式(V-2):
【化5】

である、請求項4記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2種のイソシアネート化合物が、式O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=O(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含む。)を有する、請求項3記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物。
【請求項7】
少なくとも2種の異なるイソシアネート化合物を、レゾルシノール樹脂と反応させることを含む、請求項1又は3記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物の製造方法。
【請求項8】
前記レゾルシノール樹脂が、式(V)、式(V')又はこれらの組合せ:
【化6】

(式中、n及びn'のそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数であり;A、B、A'及びB'のそれぞれは独立に、末端基である。)を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、溶媒の不在下で起こる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド又はジブチルスズジラウレートから選択される触媒の存在下で起こる、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2種のイソシアネート化合物が、式O=C=N-X-N=C=O及びO=C=N-Y-N=C=O(式中、X及びYは異なっており、かつX及びYのそれぞれは独立に、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン、ヘテロアリーレン又はこれらの組合せを含む。)を有する、請求項7記載の方法。
【請求項12】
ゴム材料と、メチレン供与体と、請求項1から12のいずれか1項に記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含むメチレン受容体とを含む混合物を含む、又は該混合物から得ることが可能である、加硫可能なゴム組成物。
【請求項13】
ゴム補強材料をさらに含む、請求項12記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム補強材料が、繊維、フィラメント、ファブリック又はコードの形態にあるものである、請求項13記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項15】
前記ゴム補強材料が、ポリエステル、ポリアミド、炭素、ガラス、鋼、ポリベンゾオキサゾール又はレーヨンで作られる、請求項13記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項16】
加硫剤をさらに含む、請求項12から15のいずれか1項に記載の、加硫可能なゴム組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の添加剤をさらに含み、前記添加剤が、カーボンブラック、酸化亜鉛、シリカ、酸化防止剤、ステアレート、促進剤、接着増進剤、コバルト塩、ステアリン酸、充填剤、可塑剤、ワックス、プロセスオイル、遅延剤、オゾン劣化防止剤又はこれらの組合せである、請求項12から16のいずれか1項に記載の加硫可能なゴム組成物。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか1項に記載のレゾルシノール樹脂ブロックイソシアネート組成物を含む浸漬用配合物。
【請求項19】
溶媒をさらに含む、請求項18記載の浸漬用配合物。
【請求項20】
ポリ(ビニルピリジン/ブタジエン/スチレン)ラテックスをさらに含む、請求項18又は19記載の浸漬用配合物。
【請求項21】
樹脂溶液をさらに含む、請求項18から20のいずれか1項に記載の浸漬用配合物。
【請求項22】
前記樹脂溶液が、レゾルシノール-ホルムアルデヒド溶液である、請求項21記載の浸漬用配合物。
【請求項23】
エポキシ含有化合物、増粘剤、消泡剤又はこれらの組合せから選択される添加剤をさらに含む、請求項18から22のいずれか1項に記載の浸漬用配合物。
【請求項24】
ゴム材料と、請求項18から23のいずれか1項に記載の浸漬用配合物で処理したゴム補強材料とを含む二次加工物品。
【請求項25】
前記二次加工物品が、タイヤ、動力伝達装置ベルト、コンベヤベルト、V-ベルト、ホース印刷ロール、ゴム製靴ヒール、ゴム製靴底、自動車用床マット、トラック用泥除けフラップ又はボールミルライナーである、請求項24記載の二次加工物品。
【請求項26】
式(B)、(B')、(C)又はこれらの組合せ:
【化7】

(式中、Xは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン又はこれらの組合せであり;n及びmのそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を、熱、放射線又はこれらの組合せにより硬化させることによって調製される樹脂を含むコーティング。
【請求項27】
式(B)、(D)又はこれらの組合せ:
【化8】

(式中、Xは、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、シクロアルカリーレン、アラルキレン、ヘテロシクリレン又はこれらの組合せであり;Rはアルキル、アリール、アラルキル、シロキサニル、シリルエーテル又はこれらの組合せであり;n及びmのそれぞれは、約1〜約100の平均値を有する分布のある整数である。)を、ジイソシアネート、ポリイソシアネート又はこれらの組合せにより硬化させることによって調製される樹脂を含むコーティング。
【請求項28】
前記硬化が、開始剤の存在下で起こる、請求項26又は27記載のコーティング。
【請求項29】
添加剤をさらに含む、請求項26又は27記載のコーティング。
【請求項30】
前記添加剤が、充填剤、レオロジー調整剤、増粘剤、界面活性剤、湿潤剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、滑剤、レべリング剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤又はこれらの組合せである、請求項29記載のコーティング。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−528422(P2009−528422A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557258(P2008−557258)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/061353
【国際公開番号】WO2007/106186
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(394025751)インドスペック ケミカル コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】