説明

レゾルバ及びレゾルバの製造方法

【課題】高い検出精度を確保しつつも、小型化を図ることのできるレゾルバを提供する。
【解決手段】このレゾルバは、sin相巻線46a及びcos相巻線46bが巻回された複数のティース45aがロータを囲繞するようにして設けられたステータ42と、ロータに設けられて各相の巻線46a,46bに付与する磁界を形成する励磁巻線とを備える。そして、このレゾルバでは、ロータが回転するとき、励磁巻線により形成される磁界の変化に基づき各相の巻線46a,46bに誘起される電圧が変化することにより、各相の巻線46a,46bからロータの回転角に応じた電圧信号が出力される。ここでは、ティース45aに、sin相巻線46aが巻回されるとともに、その外側にsin相巻線46aよりも大きい線径を有するcos相巻線46bが巻回される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転角に応じた電気信号を出力するレゾルバ、及び同レゾルバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置のトルクセンサとして、例えば特許文献1に見られるように、インプットシャフトの回転角を検出するレゾルバと、ロアシャフトの回転角を検出するレゾルバとから構成される、いわゆるツインレゾルバ型のものが知られている。このトルクセンサは、一対のレゾルバを通じて検出される各シャフトの回転角の差分を演算することによりそれらの相対的な回転変位を求め、求められた相対的な回転変位に基づいてステアリングシャフトに付与される操舵トルクを検出するものである。なお、特許文献1に記載のトルクセンサにおいて、インプットシャフトの回転角を検出するレゾルバは、インプットシャフトと一体回転するロータと、ロータの外周に所定の間隙を隔てて配置されるステータとを備えている。このうち、ロータには、通電に基づき磁界を生成する励磁巻線が巻回されている。また、ステータには、sin相巻線及びcos相巻線が巻回された複数のティースがロータの周囲を囲繞するようにして設けられている。そして、このレゾルバでは、インプットシャフトの回転に伴いロータが回転すると、励磁巻線からsin相巻線及びcos相巻線に付与される磁界が変化して各相の巻線に誘起される電圧が変化し、各相の巻線からロータの回転角に応じた2相の電圧信号が出力される。これにより、レゾルバから出力される2相の電圧信号に基づいてインプットシャフトの回転角を検出することができる。
【0003】
ところで、車両の電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイールの操作性を確保するために、ステアリングシャフトに付与するアシスト力を高い精度で制御する必要がある。このため、トルクセンサでは、操舵トルクの検出精度を高めるべく、レゾルバの回転角の検出精度を高めることが要求される。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のレゾルバでは、図8に示すように、ステータ70のティース71の中央部に仕切板71aを設け、仕切板71aよりも外側の領域にsin相巻線72を巻回する一方、仕切板71aよりも内側の領域にcos相巻線73を巻回するようにしている。これにより、各相の巻線72,73の長さを管理し易くなるため、それぞれの巻線の長さを略一致させることが可能となる。よって、各相の巻線72,73のインダクタンスを略一致させることができるため、レゾルバによる回転角の検出精度を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−322132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のレゾルバのように、ステータ70のティース71に仕切板71aを設けた場合、その分だけティース71が長くなる。このため、ステータ70の大型化を招き、ひいてはレゾルバが大型化するおそれがある。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い検出精度を確保しつつも、小型化を図ることのできるレゾルバ、及び同レゾルバの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、多相の巻線が巻回された複数のティースがロータを囲繞するようにして設けられたステータと、前記多相の巻線に付与する磁界を形成する磁界形成部とを有して、前記ロータが回転するとき、前記磁界形成部から前記多相の巻線に付与される磁界が変化することにより前記多相の巻線から前記ロータの回転角に応じた電圧信号が出力されるレゾルバにおいて、前記ティースには、前記多相の巻線のうちの一相の巻線が巻回されるとともに、前記一相の巻線の外側に前記一相の巻線よりも大きい線径を有する他相の巻線が巻回されてなることを要旨とする。
【0009】
巻線のインダクタンスは、巻線の巻数(ターン数)及び直流抵抗により定まる。したがって、多相の巻線のそれぞれのインダクタンスを一致させるためには、各相の巻線の巻数及び直流抵抗をそれぞれ一致させればよい。このうち、直流抵抗は、巻線の長さに比例し、巻線の線径(巻線の直径)に反比例する。この点、上記構成によれば、ティースにおいて内側に巻回される一相の巻線の長さよりも、その外側に巻回される他相の巻線の長さの方が長くなる。したがって、このような各相の巻線の長さの関係に対し、一相の巻線の線径よりも他相の巻線の線径を大きく設定すれば、各相の巻線の直流抵抗を互いに一致させることが可能である。これにより、ティースに仕切板を設けずとも、各相の巻線のインダクタンスを互いに一致させることができるため、高い検出精度を確保しつつ、その小型化を図ることが可能となる。
【0010】
そしてこの場合、レゾルバの製造方法として、請求項2に記載の発明によるように、
・前記ティースに第1の張力でマグネットワイヤを巻回することにより前記多相の巻線のうちの一相の巻線を形成する工程と、前記一相の巻線の外側に前記第1の張力よりも弱い第2の張力で前記マグネットワイヤを巻回することにより前記一相の巻線とは別の他相の巻線を形成する工程とを備える、
といった製造方法、あるいは、請求項3に記載の発明によるように、
・前記ティースに前記第1のマグネットワイヤを巻回することにより前記多相の巻線のうちの一相の巻線を形成する工程と、前記一相の巻線の外側に前記第2のマグネットワイヤを巻回することにより前記一相の巻線とは別の他相の巻線を形成する工程とを備える、
といった製造方法を採用することが有効である。これにより、ティースにおいて内側に巻回される一相の巻線の線径よりも、外側に巻回される他相の巻線の線径を容易に大きくすることができるため、請求項1に記載のレゾルバを容易に実現することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるレゾルバ、及び同レゾルバの製造方法によれば、高い検出精度を確保しつつも、小型化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の電動パワーステアリング装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明にかかるレゾルバの一実施形態について同レゾルバを利用したトルクセンサの断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のレゾルバについてそのステータ本体の平面構造を示す平面図。
【図4】図2のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】(a)〜(c)は、同実施形態のレゾルバについてそのステータの製造プロセスの一部を示す正面図及び斜視図。
【図6】本発明にかかるレゾルバの他の例についてそのステータのティース周辺の断面構造を示す断面図。
【図7】本発明にかかるレゾルバの他の例についてそのステータのティース周辺の断面構造を示す断面図。
【図8】従来のレゾルバについてそのステータのティース周辺の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるレゾルバを、車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるトルクセンサに適用した一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態にかかる車両の電動パワーステアリング装置の概要について説明する。
【0014】
図1に示すように、車両では、ステアリングホイール1が運転者により操作されると、ステアリングホイール1に付与された操舵力に基づきステアリングシャフト2が回転する。ステアリングシャフト2は、コラムシャフト3、インターミディエイトシャフト4、及びピニオンシャフト5を連結してなる。ピニオンシャフト5の下端部にはラックアンドピニオン機構6が連結されており、ステアリングシャフト2の回転は、ラックアンドピニオン機構6を介してラック軸7の軸方向の直線運動に変換される。そして、このラック軸7の直線運動がその両端に連結されたタイロッド8を介して転舵輪9に伝達されることにより、転舵輪9の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0015】
このような車両において、本実施形態にかかる電動パワーステアリング装置10は、ギア機構12を介してコラムシャフト3に連結された電動モータ11を備えている。この電動パワーステアリング装置10は、電動モータ11の回転をギア機構12を介してコラムシャフト3に伝達することにより、モータトルクをアシスト力としてステアリングシャフト2に付与する。
【0016】
また、車両には、車両の状態やステアリングホイール1の操作量を検出する各種センサが設けられている。例えば車両には、車両の速度を検出する車速センサ13が設けられている。また、コラムシャフト3には、同シャフト3に作用するトルク(操舵トルク)を検出するトルクセンサ14が設けられている。そして、各センサ13,14の出力は、マイクロコンピュータを中心に構成される制御装置15に入力される。この制御装置15は、各センサ13,14を通じて検出される車両の速度及び操舵トルクに基づいて運転者の操舵トルクの目標値である目標トルクを設定するとともに、トルクセンサ14を通じて検出される操舵トルクが目標トルクとなるように電動モータ11に流される電流をフィードバック制御する。
【0017】
次に、図2を参照して、トルクセンサ14の構造について説明する。
図2に示すように、コラムシャフト3は、ステアリングホイール1に連結されるインプットシャフト20と、インターミディエイトシャフト4に連結されるロアシャフト21とがトーションバー22を介して同軸線m上に連結された構造からなる。このうち、インプットシャフト20は、連結ピン23を介してトーションバー22に連結されるとともに、ケース30の上方に設けられた軸受31により回転可能に支持されている。また、ロアシャフト21は、連結ピン24を介してトーションバー22に連結されるとともに、ケース30の下方に設けられた軸受32により回転可能に支持されている。そして、このコラムシャフト3では、ステアリングホイール1の操作に伴いインプットシャフト20に操舵トルクが付与されると、トーションバー22にねじれ変形が生じる。これにより、インプットシャフト20とロアシャフト21との間に操舵トルクに応じた相対的な回転変位が生じるようになっている。そして、これらインプットシャフト20及びロアシャフト21に沿ってトルクセンサ14が配置されている。
【0018】
このトルクセンサ14は、インプットシャフト20の回転角を検出する第1のレゾルバ40と、ロアシャフト21の回転角を検出する第2のレゾルバ50とを備えている。
第1のレゾルバ40は、インプットシャフト20の下端部に取り付けられるロータ41と、同ロータ41と所定の間隙を隔ててこれを囲繞するようにケース30に取り付けられたステータ42とを備えている。このうち、ロータ41は、インプットシャフト20の外周に固定されるロータコア43と、同ロータコア43の外周に巻回される磁界形成部としての励磁巻線44とから構成されている。なお、ロータコア43は、複数枚の磁性鋼板がインプットシャフト20の軸方向に積層されることにより形成されている。一方、ステータ42は、ケース30の内壁に固定されたステータ本体45と、同ステータ本体45に巻回される検出巻線46とから構成されている。なお、ステータ本体45も、複数枚の磁性鋼板がインプットシャフト20の軸方向に積層されることにより形成されている。また、ステータ本体45の平面構造を図3に示すと、ステータ本体45は、円環状に形成されるとともに、T字状の複数のティース45aが内周面45cに等間隔に形成された構造をなしている。さらに、図2のA−A線に沿った断面構造を図4に示すと、検出巻線46が接触するステータ本体45の内周面45c及びティース45aの外周面には、絶縁カバー47が取り付けられている。また、各ティース45aには、検出巻線46として、sin相巻線46aが内側に巻回されるとともに、その外側にcos相巻線46bが巻回されている。さらに、各ティースにおけるsin相巻線46a及びcos相巻線46bのそれぞれの巻数は、同一の巻数に設定されている。
【0019】
ところで、各相の巻線46a,46bのインダクタンスは、ティース45aにおける巻数(ターン数)及び直流抵抗により定まる。したがって、各相の巻線46a,46bのそれぞれのインダクタンスを一致させるためには、各相の巻線46a,46bの巻数及び直流抵抗を一致させればよい。このうち、直流抵抗Rは、巻線の抵抗率α、巻線の長さL、及び巻線の断面積Aから以下の関係式(1)により求めることができる。
【0020】
R=α×L/A・・・(1)
すなわち、直流抵抗は、巻線の長さに比例し、巻線の線径(巻線の直径)に反比例する。
【0021】
ここで、上述のように、ティース45aにsin相巻線46aを巻回するとともに、その外側にcos相巻線46bを巻回した場合、巻き数が同一であれば、sin相巻線46aの長さよりも、cos相巻線46bの長さの方が長くなる。したがって、各巻線46a,46bの長さの関係だけを見ると、cos相巻線46bの直流抵抗の方が、sin相巻線46aの直流抵抗よりも大きくなる。そこで、本実施形態では更に、図4に示すように、cos相巻線46bの線径R2を、sin相巻線46aの線径R1よりも大きく設定することとしている。これにより、各相の巻線46a,46bの直流抵抗を互いに一致させることができるため、従来のレゾルバのようにティースに仕切板を設けずとも、各相の巻線46a,46bのインダクタンスを互いに一致させることが可能となる。その結果、第1のレゾルバ40では、高い検出精度を確保しつつ、その小型化が図られている。
【0022】
そして、このような構成からなる第1のレゾルバ40では、図2に示すように、図示しない配線を介して励磁巻線44に交流電力が供給されると、同励磁巻線44の周辺に磁界が形成される。この磁界がsin相巻線46a及びcos相巻線46bにそれぞれ付与され、電磁誘導作用によって各相の巻線46a,46bに電圧が誘起される。また、インプットシャフト20の回転に伴いロータ41が回転すると、励磁巻線44及び各相の巻線46a,46bの相対的な位置関係が変化するため、各相の巻線46a,46bに付与される磁界も変化する。これにより、sin相巻線46aには、ロータ41の回転角に対して振幅が正弦波状に変化する電圧が誘起される。また、cos相巻線46bには、ロータ41の回転角に対して振幅が余弦波状に変化する電圧が誘起される。そして、各相の巻線46a,46bに誘起される電圧は、第1のレゾルバ40の2相の出力として、適宜の配線を介して先の図1に示した制御装置15に取り込まれる。制御装置15は、第1のレゾルバ40の2相の出力信号に基づいて、周知の逆正接値演算(アークタンジェント演算)を行うことにより、ロータ41の回転角、換言すればインプットシャフト20の回転角を検出する。
【0023】
一方、図2に示すように、第2のレゾルバ50は、ロアシャフト21の上端に取り付けられるロータ51と、同ロータと所定の間隙を隔ててこれを囲繞するようにしてケース30に取り付けられたステータ52とを備えている。このうち、ロータ51は、ロアシャフト21の外周に固定されるロータコア53と、同ロータコア53に巻回される励磁巻線54とから構成されている。また、ステータ52は、ケース30の内壁面に固定されたステータ本体55と、これに巻回される検出巻線56とから構成されている。なお、これらロータ51及びステータ52は、基本的には第1のレゾルバ40のロータ41及びステータ42と同様の構造を有しているため、便宜上、その詳細な説明は割愛する。そして、制御装置15は、第2のレゾルバ50の2相の出力信号に基づいて、周知の逆正接値演算(アークタンジェント演算)を行うことにより、ロータ51の回転角、換言すればロアシャフト21の回転角を検出する。
【0024】
また、制御装置15は、第1及び第2のレゾルバ40,50を通じてそれぞれ検出されるインプットシャフト20の回転角及びロアシャフト21の回転角の差分を演算することにより、それらの相対的な回転変位を求める。そして、求められた各シャフト20,21の相対的な回転変位に例えばトーションバー22のばね定数を乗算するなどして操舵トルクを算出する。
【0025】
次に、図5を参照して、第1のレゾルバ40の製造方法に関し、特にステータ42の製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、ステータ42の製造に際しては、上述したcos相巻線46bの線径R2よりも大きい線径Raを有するマグネットワイヤ60が予め用意されている。
【0026】
そして、ステータ42に検出巻線46を形成する工程では、まず、図5(b)に示すように、マグネットワイヤ60に第1の張力F1を加えつつ、ステータ本体45の各ティース45aにsin相巻線46aに対応する巻き方にてマグネットワイヤ60を巻回する。なお、第1の張力F1は、マグネットワイヤ60をティース45aに巻回する際にマグネットワイヤ60を伸ばして塑性変形させることで、その線径をsin相巻線46aに対応する線径R1まで縮小させることのできる大きさに設定されている。これにより、ステータ本体45へのsin相巻線46aの形成が完了する。
【0027】
次いで、図5(c)に示すように、マグネットワイヤ60に第2の張力F2を加えつつ、各ティース45aのsin相巻線46aの外側にcos相巻線46bに対応する巻き方にてマグネットワイヤ60を巻回する。なお、第2の張力F2は、第1の張力F1よりも弱い力であって、マグネットワイヤ60をティース45aに巻回する際にマグネットワイヤ60を伸ばして塑性変形させることで、その線径をcos相巻線46bに対応する線径R2まで縮小させることのできる大きさに設定されている。これにより、ステータ本体45へのcos相巻線46bの形成が完了する。
【0028】
なお、第2のレゾルバ50のステータ52も、同様の製造プロセスを経て製造される。
このような製造方法によれば、ステータ本体45,55の各ティースに線径の異なるsin相巻線及びcos相巻線を容易に巻回することができるため、先の図4に例示した構造からなるステータを容易に実現することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態にかかるレゾルバ、及びその製造方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ステータ本体45のティース45aに2相の検出巻線46を巻回するにあたり、ティース45aにsin相巻線46aを巻回するとともに、その外側にsin相巻線46aよりも大きい線径を有するcos相巻線46bを巻回することとした。これにより、ティースに仕切板を設けずとも、2相の巻線46a,46bのインダクタンスを互いに一致させることができるため、第1のレゾルバ40の高い検出精度を確保しつつ、その小型化を図ることが可能となる。また、第2のレゾルバ50でも、同様の効果を得ることが可能である。
【0030】
(2)ステータ42の製造に際しては、ステータ本体45の各ティース45aにマグネットワイヤ60を第1の張力F1で巻回することでsin相巻線46aを形成した後、sin相巻線46aの外側にマグネットワイヤ60を第2の張力F2で巻回することでcos相巻線46bを形成することとした。これにより、ステータ本体45の各ティース45aに線径の異なる2相の巻線を容易に巻回することができる。また、第2のレゾルバ50でも同等の効果を得ることが可能である。
【0031】
(3)本発明にかかるレゾルバを、車両の電動パワーステアリング装置10に搭載されるトルクセンサ14に適用することとした。これにより、トルクセンサ14の高い検出精度を確保しつつ、その小型化を図ることができるようになる。
【0032】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、線径の異なる2相の巻線46a,46bをティース45aに巻回するにあたり、ティース45aにマグネットワイヤ60を巻回する際の張力を変化させるといった方法を採用することとした。これに代えて、例えばsin相巻線46aの線径(第1の線径)R1を有する第1のマグネットワイヤ、及びcos相巻線46bの線径(第2の線径)R2を有する第2のマグネットワイヤといった2種類のマグネットワイヤを予め用意しておく。そして、ステータ42の製造に際しては、まず、ステータ本体45のティース45aに第1のマグネットワイヤを巻回することによりsin相巻線46aを形成する。次いで、各ティース45aのsin相巻線46aの外側に第2のマグネットワイヤを巻回することによりcos相巻線46bを形成する。このような製造方法であっても、先の図4に例示した構造からなるステータを容易に実現することが可能である。
【0033】
・T字状のティース45aに対して線径の異なるsin相巻線46a及びcos相巻線46bを整列巻きするような場合、先の図4に例示したように、線径の大きいcos相巻線46bの方が巻回層数が多くなり易く、各相の巻線46a,46b間で巻回層数が異なり易くなる。そしてこのように、各相の巻線46a,46b間で巻回層数が異なる場合、それぞれの長さを管理することが難しくなって、各相の巻線46a,46bのインダクタンスを一致させることが困難となるおそれがある。そこで、図6に示すように、ティース45aの横辺にあたる部分45bを、その両端に向かうほど、ステータ本体45の内周面45cから離間するように形成してもよい。これにより、ティース45aの横辺にあたる部分45bとステータ本体45の内周面45cとの間の隙間が、横辺にあたる部分45bの両端に向かうほど広がるため、線径の大きいcos相巻線46bをティース45aに整列巻回する場合であっても、cos相巻線46bの巻回層数が多くなることを抑制することができる。その結果、各相の巻線46a,46bのインダクタンスを高精度に一致させることができるため、第1のレゾルバ40の検出精度を高く維持することが可能となる。
【0034】
・上記実施形態では、ティース45aに対して2相の巻線46a,46bを巻回することとしたが、レゾルバの構造によっては、例えば3相以上の巻線をティース45aに巻回してもよい。なお、3相の巻線をティース45aに巻回する場合には、例えば図7に示すように、ティース45aに線径R3の第1相の巻線46cを巻回するとともに、その外側に第1相の巻線46cよりも大きい線径R4を有する第2相の巻線46dを巻回する。また、第2相の巻線46dの外側に、それよりも大きい線径R5を有する第3相の巻線46eを巻回する。このような構成であれば、3相の巻線のインダクタンスを一致させることができるため、レゾルバの検出精度を高く維持することが可能である。
【0035】
・上記実施形態では、本発明にかかるレゾルバを、ロータ41に励磁巻線44が設けられるレゾルバに適用することとしたが、これに代えて、ステータ42に励磁巻線が設けられる、いわゆる可変リラクタンス(VR)型レゾルバに適用してもよい。また、ステータに設けられた検出巻線に付与する磁界を形成する磁界形成部として例えば磁石などを用いるレゾルバにも、本発明にかかるレゾルバを適用することは可能である。
【0036】
・上記実施形態では、本発明にかかるレゾルバを、車両の電動パワーステアリング装置10に設けられるトルクセンサ14に適用することとしたが、本発明にかかるレゾルバは、所定の回転軸の回転角を検出するものであれば各種装置に適用することが可能である。
【0037】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項1に記載のレゾルバにおいて、前記ティースは、円環状のステータ本体の内周面に設けられるとともにT字状に形成されてなり、このT字状のティースの横辺にあたる部分が、その両端に向かうほど、前記ステータ本体の内周面から離間するように形成されてなることを特徴とするレゾルバ。レゾルバでは、通常、円環状に形成されたステータ本体の内周面にT字状のティースが形成されている。ところで、このようなT字状のティースに対して一相の巻線を例えば整列巻きした外側に、一相の巻線よりも線径の大きい他相の巻線を整列巻きするような場合、線径の大きい他相の巻線の方が巻回層数が多くなりやすく、各相の巻線間で巻回層数が異なりやすくなる。そしてこのように、各相の巻線間で層数が異なる場合、それぞれの長さを管理することが難しくなり、各相の巻線のインダクタンスを一致させることが困難となるおそれがある。この点、上記構成によれば、ティースの横辺にあたる部分とステータ本体の内周面との間の隙間が、横辺にあたる部分の両端に向かうほど広がるため、線径の大きい他相の巻線をティースに巻回する場合であっても、他相の巻線の巻回層数が多くなることを抑制することができる。これにより、各相の巻線のインダクタンスを高精度に一致させやすくなるため、レゾルバの検出精度を高く維持することが可能となる。
【0038】
(ロ)トーションバーを介して互いに連結された第1及び第2の回転軸の回転角を一対のレゾルバを通じてそれぞれ検出するとともに、検出された前記第1及び第2の回転軸の回転角から前記第1及び第2の回転軸の相対的な回転変位を求め、求められた前記第1及び第2の回転軸の相対的な回転変位に基づいて前記第1及び第2の回転軸のいずれか一方に付与されるトルクを検出するトルクセンサにおいて、前記一対のレゾルバとして、請求項1又は付記イに記載のレゾルバを用いるようにしたことを特徴とするトルクセンサ。本発明は、付記ロに記載の発明によるように、トルクセンサに適用すると特に有効である。これにより、検出精度が高く、小型のトルクセンサを提供することができるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…コラムシャフト、4…インターミディエイトシャフト、5…ピニオンシャフト、6…ラックアンドピニオン機構、7…ラック軸、8…タイロッド、9…転舵輪、10…電動パワーステアリング装置、11…電動モータ、12…ギア機構、13…車速センサ、14…トルクセンサ、15…制御装置、20…インプットシャフト、21…ロアシャフト、22…トーションバー、23,24…連結ピン、30…ケース、31,32…軸受、40,50…レゾルバ、41,51…ロータ、42,52,70…ステータ、43,53…ロータコア、44,54…励磁巻線、45,55…ステータ本体、45a,71…ティース、45b…横辺にあたる部分、46,56…検出巻線、46a,56a,72…sin相巻線、46b,56b,73…cos相巻線、46c〜46e…巻線、47…絶縁カバー、60…マグネットワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の巻線が巻回された複数のティースがロータを囲繞するようにして設けられたステータと、前記多相の巻線に付与する磁界を形成する磁界形成部とを有して、前記ロータが回転するとき、前記磁界形成部から前記多相の巻線に付与される磁界が変化することにより前記多相の巻線から前記ロータの回転角に応じた電圧信号が出力されるレゾルバにおいて、
前記ティースには、前記多相の巻線のうちの一相の巻線が巻回されるとともに、前記一相の巻線の外側に前記一相の巻線よりも大きい線径を有する他相の巻線が巻回されてなる
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
多相の巻線が巻回された複数のティースがロータを囲繞するようにして設けられたステータと、前記多相の巻線に付与する磁界を形成する磁界形成部とを有して、前記ロータが回転するとき、前記磁界形成部から前記多相の巻線に付与される磁界が変化することにより前記多相の巻線から前記ロータの回転角に応じた電圧信号が出力されるレゾルバの製造方法であって、
前記ティースに第1の張力でマグネットワイヤを巻回することにより前記多相の巻線のうちの一相の巻線を形成する工程と、
前記一相の巻線の外側に前記第1の張力よりも弱い第2の張力で前記マグネットワイヤを巻回することにより前記一相の巻線とは別の他相の巻線を形成する工程と
を備えることを特徴とするレゾルバの製造方法。
【請求項3】
多相の巻線が巻回された複数のティースがロータを囲繞するようにして設けられたステータと、前記多相の巻線に付与する磁界を形成する磁界形成部とを有して、前記ロータが回転するとき、前記磁界形成部から前記多相の巻線に付与される磁界が変化することにより前記多相の巻線から前記ロータの回転角に応じた電圧信号が出力されるレゾルバの製造方法であって、
第1の線径を有する第1のマグネットワイヤと、前記第1の線径よりも大きい第2の線径を有する第2のマグネットワイヤとが予め用意され、
前記ティースに前記第1のマグネットワイヤを巻回することにより前記多相の巻線のうちの一相の巻線を形成する工程と、
前記一相の巻線の外側に前記第2のマグネットワイヤを巻回することにより前記一相の巻線とは別の他相の巻線を形成する工程と
を備えることを特徴とするレゾルバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110819(P2013−110819A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252783(P2011−252783)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】