説明

レベチラセタムの調製法

【解決手段】本発明はレベチラセタムの調製方法に関し、より詳細には(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸アミドのジアステレオ異性体混合物の結晶化誘導による動的分割を特徴とするレベチラセタムの改良調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレベチラセタムの調製法に関し、より詳細には、(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド誘導体のジアステレオ異性体混合物の結晶化誘導による動的分割によって特徴付けられる、レベチラセタムを調製するための改良方法に関する。
【0002】
また、本発明は、新規な中間体及び鏡像異性的に純粋な最終生成物の調製における該中間体の使用についても開示する。
【0003】
レベチラセタム((−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド)は、中枢神経系の低酸素性侵襲や虚血性侵襲の治療や予防のための保護剤として有用な薬物である。レベチラセタムは、癲癇を有する四歳以上の小児や成人における部分発作を治療する上での補助的療法として知られているケプラ(KEPRATM)(錠剤及び矯味液剤)の有効成分である。
【0004】
レベチラセタムは特許文献1(UCB株式会社)にて最初に記載されたが、該特許においては、公知のラセミ体(一般名:エチラセタム)と比べてレベチラセタムが特定の治療特性を有することが示されている。このS鏡像異性体は、例えば、ラセミ混合物と比べて、低酸素症に対する保護活性が十倍高く、脳虚血に対する保護活性が四倍高い。
【0005】
特許文献2には、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸をハロギ酸アルキル及びアンモニアと順次反応させることを含むレベチラセタムの調製方法が記載されている。前記酸中間体は、公知の方法に従った古典的な光学分割によってラセミの(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸から得られる。上述の米国特許の実施例1においては、次の反応スキームに示すように、(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸エチルを水酸化ナトリウムの存在下で加水分解して対応するラセミ酸を生成し、この酸を、光学活性塩基である(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミンと反応させ、そのジアステレオ異性体塩を選択的に結晶化し、所望の鏡像異性体の単離によって化学分割に付し、最後に、得られた(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を、クロロギ酸エチルを用いたカルボキシル残基の活性化によって対応するアミドに変換する。
【0006】
【化1】

【0007】
当該技術分野においては、他の幾つかのレベチラセタムの調製方法が開示されている。
【0008】
特許文献3(UCB株式会社)には、レベチラセタム及びその類似物を調製するための改良方法であって、対応するエステル誘導体のアンモノリシス反応を水の存在下で行うことを含む方法が記載されている。
【0009】
特許文献4(ダイセル化学、UCB)及び特許文献5(UCB)には、分取用高速液体クロマトグラフィーや連続擬似移動床クロマトグラフィーシステムを用いたエチラセタムの光学分割によるレベチラセタムの調製について記載されている。
【0010】
特許文献6(UCB)には、脱硫剤(NaBH4/NiCl2 6H2OやラネーニッケルW−2、ラネーニッケルT−1等)の存在下、(S)−α−[2−(メチルチオ)−エチル]−(2−オキソ−1−ピロリジン)−アセトアミドの水素化分解によるレベチラセタム調製法が記載されている。
【0011】
特許文献7(UCBファーキム)には、キラル触媒を用いた(Z)又は(E)−2−(2−オキソテトラヒドロ−1H−1−ピロリル)−2−ブテンアミドの不斉水素化によるレベチラセタムの調製について記載されている。
【0012】
特許文献8(UCB)には、(S)−2−アミノブタンアミドを4−ハロ酪酸アルキル又は4−ハロブチリルハライドと反応させた後、得られた(S)−4−[[1−(アミノカルボニル)−プロピル]−アミノ−酪酸アルキル又は(S)−N−[1−(アミノカルボニル)−プロピル]−4−ハロブタンアミドを環化してレベチラセタムを調製することについて記載されている。
【0013】
特許文献9(テーヴァ・ファーマシュ−ティカル・インダストリーズ)には、アセトニトリル及びメチルtertブチルエーテルから選択される溶媒中、強塩基の存在下で(S)−2−アミノブチルアミド塩酸塩と塩化4−クロロブチルを反応させることと、粗生成物を回収することとを含むレベチラセタム調製法が記載されている。
【0014】
特許文献10(ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ)には、塩化4−クロロブチルとの反応によってレベチラセタムを製造するのに有用な中間体である(S)−2−アミノブチルアミド塩酸塩の調製について記載されている。
【0015】
特許文献11(ファルマレポーリ株式会社)には、次式:
【0016】
【化2】

【0017】
で表わされる十分に純粋な鏡像異性体のS中間体又はその塩の脱アミノメチル化によってレベチラセタムを調製する方法が記載されている。
【0018】
前記中間体は、対応するラセミ混合物から、アミン分割剤を用いた反応及びそのジアステレオ異性体塩の選択的結晶化によって得られる。
【0019】
レベチラセタム調製用の多くの方法においては、正しい立体化学的配置の最終生成物を得るために光学分割の補足的ステップが必要となる。
【0020】
特許文献12によると、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミドは、所望の鏡像異性体を分離することによってはラセミ混合物から直接得ることができない。
【0021】
従って、上で強調したように、特許文献2においては、中間体である(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸に対して分割ステップを行っている。
【0022】
前述の手順の場合、S鏡像異性体を対応するラセミ混合物から古典的な光学分割によって分離することに起因する固有の問題、即ち、用いた酸基質が必然的に50%損失してしまうという問題が生じる。
【0023】
当該技術分野で開示されている方法においては、特定の中間体の不斉合成やエナンチオ選択的還元、クロマトグラフィー分離、古典的分割においてキラル基質を用い、逆に不要の(R)鏡像異性体を再利用できるようにして、分割方法に由来するレベチラセタムの収率低下に関する上述の問題を回避する試みが行われている。
【0024】
また、報告されている文献においては、本発明の目的に類似の分割方法に関する記載がわずかしかない。
【0025】
以下、最も重要なものを列挙する。
【0026】
特許文献13(住友化学株式会社)には、化合物IIを化合物IIIと塩基の存在下で反応させてジアステレオマー混合物(I)を得る第一のステップと、塩基の存在下で混合物(I)を平衡エピメリ化させながら混合物(I)から光学活性化合物(Ia)又は(Ib)を結晶化させる第二のステップとを含む光学活性化合物(Ia)又は(Ib)を製造するための方法が記載されていると共に、上述の方法を利用した光学活性化合物(IVa)又は(IVb)を製造するための方法が記載されている。
【0027】
【化3】

【0028】
特許文献14には、同一出願人の名義で、次式:
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R1及びR2は該明細書に記載の意味を有し、アスタリスクはキラル炭素原子を示し、α及びβを付した不斉原子はR配置及びS配置の両方を有する)で表わされるケタールの二次分割を含む2−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−プロピオン酸鏡像異性体調製法が記載されている。
【0031】
しかし、前記方法は様々な光学活性アミン及び/又は分割条件によって行われる。
【0032】
従って、好適な光学異性体の分離に関する問題を、特に、主要中間体の分割に起因する収率低下を防ぐことによって克服することができ、工業規模でレベチラセタムを調製するための他の新しい方法を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第4,837,223号明細書
【特許文献2】米国特許第223号明細書
【特許文献3】国際公開第03/014080号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,107,492号明細書
【特許文献5】米国特許第6,124,473号明細書
【特許文献6】GB第2,225,322号
【特許文献7】国際公開第01/64637号パンフレット
【特許文献8】EP第162,036号
【特許文献9】国際公開第2004/069796号パンフレット
【特許文献10】US2005/0182262
【特許文献11】国際公開第2004/076416号パンフレット
【特許文献12】米国特許第223号明細書
【特許文献13】国際公開第WO2005/121117076416号パンフレット
【特許文献14】EP第0719755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
驚くべきことに、本発明者らは、先行技術における問題を呈さず、公知の出発原料から収率よく高純度で所望の鏡像異性体を得ることが可能な動的分割方法によってレベチラセタムを調製するための改良方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0035】
従って、本発明の目的は、レベチラセタム調製法であって、次式:
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、R1は水素又はベンジル基であり、R2は、フェニル環上にてニトロ又は(C1〜C4)−アルコキシで置換されていてもよい1−フェニルエチル基;1−フェニルプロピル基;1−ナフチルエチル基;3−ピニルメチル基であるか、又は、R1とR2は一緒になって、窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜3のヘテロ原子を含み、一以上の(C1〜C4)−アルキル基で置換されている五員又は六員の飽和へテロ環を形成している)で表わされる(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸アミドのジアステレオ異性体混合物の塩基触媒作用に基づく結晶化誘導による動的分割を含む方法である。
【0038】
式Iで表わされる酢酸アミドにおいては、ピロリジン部分の窒素原子に結合している炭素原子が構造内の一個の不斉中心となっている。その不斉中心を式Iにアスタリスクで示す。
【0039】
更に、式Iで表わされる化合物は、残基R1及びR2の意味内において少なくとも第二の不斉中心を有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
動的分割においては、基質に対する立体異性体の反応速度の差によって前記立体異性体を互いに分離させることができる。動的方法(DKR)においては、出発立体異性体は相互交換することができ、それらの内の一種のみを反応させて分離生成物のジアステレオ異性体過剰率が非常に高く収率が非常に高い状況をもたらすことができる。結晶化誘導による動的分割(CIDR、アンダーソン N.G.、Org.Proc.Res.&Dev.、2005、9、800)とは、一種の立体異性体の結晶化が動的方法の駆動力となる方法(即ち、立体異性体の相互交換)を意味する。
【0041】
本発明の目的である改良方法は、生成物の収率を上げるために更なるステップ(例えば、逆の鏡像異性体のラセミ化や更なる分割等)を行う必要がないという利点を有する。
【0042】
本発明の目的である方法によって、当該技術分野で公知の基質から従来の方法で容易に得られるアミド中間体から鏡像異性的に純粋なレベチラセタムを簡単且つ容易に工業的に調製する他の方法が提供される。
【0043】
実際、本発明の分割方法で用いることができるジアステレオ異性体アミドは、公知の方法に従い、基質である(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸又はその誘導体(例えば、(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸(C1〜C4)−アルキル等)をジアステレオ異性体混合物の生成が可能な好適な光学活性アミンと単に反応させることによって得られる。
【0044】
本発明によると、アミド化反応は、次式:
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、残基R1及びR2は式Iで定義した意味を有する)で表わされるアミンを用いて行うが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、他の光学活性アミンが使用可能であることを理解するであろう。
【0047】
本発明の目的である方法においては、式IIで表わされる光学活性アミンは、残基R1が水素原子であるアミン(即ち、一級アミン)が好ましい。
【0048】
一級アミンの内、(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミン、(−)−(S)−(1−フェニルエチル)−アミン、(+)−(R)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミン、(−)−(S)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミン、(+)−(R)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミン、(−)−(S)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミン、(+)−(R)−(1−フェニルプロピル)−アミン、(−)−(S)−(1−フェニルプロピル)−アミン、(+)−(R)−(1−ナフチルエチル)−アミン、(−)−(S)−(1−ナフチルエチル)−アミン、(+)−3−アミノメチルピナン及び(−)−3−アミノメチルピナンが好ましい。
【0049】
或いは、式IIにおいて残基R1が水素ではないアミン(即ち、二級アミン)を本発明の方法で用いることができる。式IIで表わされる二級アミンの例としては、(R)−(+)−N−ベンジル−(1−フェニルエチル)−アミンや(S)−(−)−N−ベンジル−(1−フェニルエチル)−アミン、また、残基R1及びR2がヘテロ環を形成しているもの、例えば、(−)−(R)−3−メチル−ピペリジンや(+)−(S)−3−メチル−ピペリジン、(−)−(R)−2−メチル−ピペリジン、(+)−(S)−2−メチル−ピペリジン、(−)−(R)−2−メチルピロリジン、(+)−(S)−2−メチルピロリジン、(2R,5S)−2,5−ジメチル−ピロリジン、(2R,6R)−2,6−ジメチルピペリジンが挙げられる。しかし、前記二級アミンを用いた場合、動的分割においては効率が良いが、レベチラセタム調製方法の次のステップ時に多少の問題が生じ得る。
【0050】
特に好ましいアミンは(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミンであり、よって、塩基触媒作用に基づく動的分割は化合物(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン−アセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミドのジアステレオ異性体混合物に対して行うのが好ましい。
【0051】
基質である(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸は、米国特許第’223号に開示される教示に従い、対応するアルキルエステルを塩基の存在下で鹸化することによって調製できる。
【0052】
一方、GB第1,309,692号には、強塩基存在下での2−オキソ−ピロリジンとカルボン酸ハロアルキルとの縮合反応による前記アルキルエステルの合成について記載されている。
【0053】
例えば、アミド化反応は、不活性溶媒及び塩基の存在下でラセミの2−オキソピロリジン酪酸低級アルキルを好適な光学活性アミンと反応させることによって行うことができる。
【0054】
エステル誘導体を反応基質として使用することに由来する利点は当業者には明白である。合成ステップの低減を可能にする使用については米国特許第’223号に開示されている。
【0055】
本発明によると、前記ジアステレオ異性体アミド中間体を好適な溶媒又はその混合物の存在下で塩基触媒作用条件に付した場合、二次分割方法が生じる。
【0056】
本発明の目的である方法によって、ジアステレオ異性体混合物はα位のキラル中心が所望のS配置を有する立体異性体に非常に効率よく変換される。また、前記立体異性体は反応混合物から収率よく高ジアステレオ異性体過剰率で容易に単離される。本発明の動的分割は触媒量の塩基(好ましくは有機塩基)の存在下で行う。
【0057】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)や1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、アルカリ金属アルコキシド等の有機塩基を用いるのが好ましい。
【0058】
(C1〜C4)−アルカリ金属アルコキシドの存在下で動的反応を行うのがより好ましい。
【0059】
有機塩基はナトリウムメトキシドであるのが更に好ましい。
触媒量の塩基はアミド基質に対して5%〜15%であるのが好ましい。
触媒量の塩基は約10%であるのが好ましい。
【0060】
反応は一以上の不活性有機溶媒又はその混合物の存在下で行う。
好適な有機溶媒としては芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂肪族エーテルが挙げられる。
好ましい有機溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン及びメチルtert−ブチルエーテルである。
ヘプタンとトルエンの混合物中で反応を行うのが好ましく、ヘプタンとトルエンの体積比は約9:1(v/v)であるのがより好ましい。
【0061】
分割方法の反応温度は室温と用いる溶媒系の還流温度との間である。
反応は30℃〜60℃の温度で行うのが好ましい。
反応を約50℃の温度で行った後、冷却段階を制御して、生成物が高ジアステレオ異性体過剰率で単離されるようにするのがより好ましい。
【0062】
本発明の好ましい実施形態は、10%ナトリウムメトキシドの存在下でヘプタン/トルエン(9/1(v/v))中、約50℃の温度で中間体アミドを反応させることを含む。
【0063】
本発明によると、レベチラセタム調製用合成スキームは、動的方法によって得られたアミド(以下、「分割されたアミド」と称する)の加水分解反応を行って鏡像異性的に純粋な(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を得ることと、それを最終生成物に変換することを更に含む。
【0064】
従って、本発明の他の目的は、分割されたアミドを加水分解して(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を得ることを更に含むレベチラセタム調製法である。
【0065】
一般には、α位のキラル中心が所望の光学配置を有するジアステレオ異性体アミドを従来法によって加水分解して前記酸中間体を得る。
【0066】
出発物質のジアステレオ異性体過剰率の低下を招き得るアミド中間体の非制御的異性化を回避し、反応生成物である(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸のラセミ化を防止するため、加水分解反応は酸性条件下で行うのが好ましい。
【0067】
好適な酸としては、塩酸や硫酸等の強無機酸、又は酢酸やトリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、アルキル−チオフェニルスルホン酸等の有機酸が挙げられるが、これらは好適なポリマーマトリックスや無機マトリックスに担持されていてもよい。
【0068】
有機酸を用いるのが好ましいが、それは、上述の反応条件下では加水分解方法の化学選択性の改善(即ち、ピロリジン環の開環による副生成物量の低下(前記副生成物が完全になくなるまで))が得られるためである。
【0069】
また、有機酸の内、p−トルエンスルホン酸やアルキル−チオフェニルスルホン酸等の強有機酸が特に好ましいが、これらはポリマーマトリックスや無機マトリックスに担持されていてもよい。
【0070】
加水分解反応は有機溶媒の存在下で行う。
好適な有機溶媒としては芳香族炭化水素や低級アルコール、アセトニトリルが挙げられる。
好ましい有機溶媒はメタノール及びトルエンである。
ジアステレオ異性体アミドの加水分解はトルエン中、還流温度で行うのが好ましい。
【0071】
一般には、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸の対応するアミド(即ち、レベチラセタム)への変換は、従来の技法に従ったカルボキシル残基の活性化によって行う。
【0072】
米国特許第223号で報告されているように、レベチラセタムは前記酸をハロギ酸アルキル及びアンモニアと順次反応させることによって調製する。
【0073】
或いは、例えば、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を酸の存在下で低級アルコールと反応させることによって、カルボキシル基をエステル誘導体として活性化することができる。
続くアンモノリシス反応は水性媒体中で行うのが好ましい。
【0074】
従って、本発明の他の目的は、分割されたアミドを加水分解して(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を得ることと、前記酸のカルボキシル残基をエステル化によって活性化することと、得られたエステル誘導体のアンモノリシスを行うことと、粗最終生成物を回収することとを更に含む、レベチラセタム調製法である。
【0075】
特に、加水分解反応が酸性条件下で行えることを考慮すると、上述の教示に基づき、前記酸性条件下でのカルボキシル残基の活性化がいかに重要な手順上の利点をもたらすかについては当業者には明白である。
【0076】
実用的な観点からは、加水分解が終了した際に適量の低級アルコールを反応混合物に添加し、中間体である(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を単離せずに対応するピロリジン酢酸エステル誘導体が得られるようにすると十分である。
【0077】
換言すれば、加水分解とカルボキシル残基の活性化は、ジアステレオ異性体アミドの酸触媒による「ワンポット」加水分解−エステル化反応によって行う。
【0078】
「ワンポット」加水分解−エステル化反応は、p−トルエンスルホン酸やアルキル−チオフェニルスルホン酸(これらはポリマーマトリックスや無機マトリックスに担持されていてもよい)の存在下で行うのが好ましい。
スチレンジビニルベンゼンポリマーに結合したp−トルエンスルホン酸やシリカに担持されたアルキル−チオフェニルスルホン酸を用いるのがより好ましい。
【0079】
加水分解の終了時にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール又はn−ブチルアルコールを添加するのが好ましく、メチルアルコールがより好ましい。
【0080】
本発明の好ましい実施形態においては、「ワンポット」加水分解−エステル化反応をポリマーマトリックスに担持されたp−トルエンスルホン酸又はシリカに担持されたアルキル−チオフェニルスルホン酸の存在下でトルエン中、還流温度で行った後、メタノールを添加する。
【0081】
異種の酸試薬を用いて「ワンポット」加水分解−エステル化シーケンスを行うことに由来する利点については当業者には明白である。実際、殆ど純粋な所望のエステル誘導体の反応溶媒溶液は固定化触媒を単にろ過することによって得られる。
【0082】
アンモノリシス反応は水の存在下で行うのが好ましい。
必要であれば、公知の方法に従って有機溶媒又は混合有機溶媒から結晶化することによって粗レベチラセタムを精製することができる。
【0083】
本発明の更なる様相は、次式:
【0084】
【化7】

【0085】
(式中、R1は水素又はベンジル基であり、R2は、フェニル環上にてニトロ又は(C1〜C4)−アルコキシで置換されていてもよい1−フェニルエチル基;1−フェニルプロピル基;3−ピニルメチル基であるか、又は、R1とR2は一緒になって、窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜3のヘテロ原子を含み、一以上の(C1〜C4)−アルキル基で置換されている五員又は六員の飽和へテロ環を形成する)で表わされる中間体化合物、その立体異性体、その混合物及び酸付加塩である。
【0086】
本発明は、式Iで表わされる化合物の全ての立体異性体(光学的ジアステレオ異性体等)及びその混合物を包含する。
残基R1が水素原子である化合物が好ましい。
【0087】
特に、次の化合物:
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルプロピル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルプロピル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−(1−フェニルプロピル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−(1−フェニルプロピル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−1−[(4−メトキシフェニル)−エチル]−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミド;
(−)−(S)−α-エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−(S)−1−[(4−ニトロフェニル)−エチル]−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−3−ピニルメチル−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−3−ピニルメチル−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−3−ピニルメチル−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(−)−3−ピニルメチル−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−ベンジル−N−(−)−(S)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−ベンジル−N−(−)−(S)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−ベンジル−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−ベンジル−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(3−メチルピペリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(3−メチルピペリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(3−メチルピペリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(3−メチルピペリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(2−メチルピペリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(2−メチルピペリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(2−メチルピペリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(2−メチルピペリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(2R,6R)−(2,6−ジメチルピペリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(2R,6R)−(2,6−ジメチルピペリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(2−メチルピロリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(−)−(R)−(2−メチルピロリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(2−メチルピロリジン)−アミド;
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(+)−(S)−(2−メチルピロリジン)−アミド;
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(2R,5S)−(2,5−ジメチルピロリジン)−アミド;及び
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−(2R,5S)−(2,5−ジメチルピロリジン)−アミドがレベチラセタムの調製に有用な中間体である。
【0088】
本発明の目的である化合物は、当該技術分野で公知の技法に従って、例えば、対応する酸又はその誘導体のアミド化反応によって調製する。
【0089】
本発明の方法は、所望の光学異性体への変換が良好で(ジアステレオ異性体過剰率:約96〜99%)、出発物質の収率低下を防ぐことができ、工業的観点から非常に効率のよい分割方法を提供する。
【0090】
従って、本発明の方法の場合、従来の方法に比べて合成ステップ数を少なくして高収率でレベチラセタムを得ることができ、その結果、時間とコストを削減することができる。
【0091】
また、本発明の更なる利点は、ポリマーに結合したp−トルエンスルホン酸を「ワンポット」加水分解−エステル化ステップで用いた際に光学活性アミンが定量的に回収される機会によって示される。
【0092】
従って、本発明の方法が当該技術分野で既に示された方法に対して有利であることは容易に分かる。
【0093】
本発明の目的である方法の実用的一実施形態は、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸低級アルキルと好適な光学活性アミンのアミド化反応と、得られたジアステレオ異性体アセトアミドの塩基触媒作用に基づく結晶化誘導による動的分割と、分割されたアセトアミドの加水分解と、レベチラセタムへの変換とを含む。
【0094】
本発明の他の実用的実施形態は、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸低級アルキルと好適な光学活性アミンのアミド化反応と、得られたジアステレオ異性体アセトアミドの塩基触媒作用に基づく動的分割と、分割されたアセトアミドのワンポット加水分解−エステル化反応と、レベチラセタムへの変換とを含む。
【0095】
本発明の好ましい実用的一実施形態は、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルを(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミンとトルエン中、塩基(水素化ナトリウムやナトリウムメトキシド等)の存在下で反応させることと、得られた(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミドの結晶化誘導による動的分割をヘプタン/トルエン(9/1(v/v))中、10%ナトリウムメトキシドの存在下、約50℃で行うことと、ポリマーマトリックスに担持されたp−トルエンスルホン酸又はシリカに担持されたアルキル−チオフェニル−スルホン酸の存在下でトルエン中、還流温度で行う酸加水分解によって、分割された(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミドの「ワンポット」加水分解−エステル化反応を行った後にメタノールを添加することと、水の存在下でアンモノリシス反応を行うこととを含む。
【0096】
本発明についてその好ましい実施形態と共に説明したが、当業者であれば本発明の精神を逸脱せずに他の実施形態も実施可能であることに気付くことを理解するべきである。
【0097】
以下、実施例によって本発明を更によく説明する。
【実施例1】
【0098】
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド
機械攪拌器、温度計及びバブルコンデンサーを備える100mLの反応装置内に、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(13.4g、71.6mmol)、(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミン(8.8g、72.5mmol)及びテトラヒドロフラン(45mL)を入れた。窒素雰囲気下でNaH(3.4g、60%鉱油分散液、85.6mmol)を少量ずつ添加した。反応液を室温で約2時間維持した。その後反応液を35℃まで加熱し、一晩攪拌しつつ維持した。薄層クロマトグラフィー(Rf=0.5、AcOEt/シリカゲル)を用いて反応を制御した。
【0099】
35℃一晩の反応終了後、反応液を室温に冷却し、水(30mL)を徐々に加えた。反応液を分液漏斗に移し、水(30mL)とジクロロメタン(80mL)とで希釈した。相を分離し、水相をジクロロメタン(50mL)で洗浄した。有機相を集め、酸性水溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下濃縮した。
【0100】
得られた油性残渣(19.5g)は徐々に凝固した。その固形物をヘキサン/ジクロロメタン(9/1(v/v))混液(20mL)に懸濁した。懸濁液を濾過し、同様の溶媒混液(10mL)で洗浄した後40℃で乾燥し、標記化合物(12.1g、44.1mmol、収率61.6%)を乾燥固体で得た。
【0101】
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3, 25 ℃): δ (ppm, TMS) 7.35-7.19 (1OH, m), 6.49 (2H, br s), 5.09-5.00 (2H, m), 4.41 (IH, dd, J = 8.3, 7.4 Hz), 4.36 (IH, dd, J = 8.6, 7.1 Hz), 3.49 (IH, ddd, J = 9.8, 7.7, 6.6 Hz), 3.41 (IH, ddd, J = 9.8, 7.7, 6.2 Hz), 3.30 (IH, ddd, J = 9.6, 8.3, 5.5 Hz), 3.13 (IH, ddd, 9.7, 8.5, 6.1 Hz), 2.47-2.38 (2H, m), 2.41 (IH, ddd, J = 17.0, 9.6, 6.3 Hz), 2.26 (IH, ddd, 17.0, 9.5, 6.6 Hz), 2.10-1.98 (2H, m), 2.01-1.89 (IH, m), 1.99-1.88 (IH, m), 1.98-1.85 (IH, m), 1.88-1.78 (IH, m), 1.75- 1.62 (IH, m), 1.72-1.59 (IH, m), 1.45 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.44 (3H, d, J = 7.1 Hz), 0.90 (3H, t, J = 7.4 Hz), 0.86 (3H, t, J = 7.4 Hz). 13C NMR (100.62 MHz, CDCl3, 25 ℃): δ (ppm, TMS) 176.05 (CO), 176.00 (CO), 169.08 (CO), 168.81 (CO), 143.59 (Cquat), 143.02 (Cquat), 128.66 (2 x CH), 128.55 (2 x CH), 127.33 (CH), 127.19 (CH), 126.05 (2 x CH), 125.80 (2 x CH), 56.98 (CH), 56.61 (CH), 48.90 (CH), 48.84 (CH), 44.08 (CH2), 43.71 (CH2), 31.19 (CH2), 31.07 (CH2), 22.08 (CH3), 22.04 (CH3), 21.21 (CH2), 20.68 (CH2), 18.28 (CH2), 18.08 (CH2), 10.50 (CH3), 10.45 (CH3).
【実施例2】
【0102】
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(代替法1)
機械攪拌器、温度計及びコンデンサーを備える500mLの反応装置内に、(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミン(24.2g、199.51mmol)とトルエン(40mL)とを入れた。反応液を窒素雰囲気下で0℃に維持しつつ、NaH(9.5g、60%鉱油懸濁液、237.50mmol)を少量ずつ添加した。同温で19.28%(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(36.63g、197.77mmolに相当)トルエン溶液(190.0g)を加えた。その後反応液を35℃まで加熱し、メチルエステル試薬の消失が完了するまでその状態を維持した(約14時間;HPLCにより確認)。
【0103】
反応終了後、反応液を冷却して温度が室温まで下がった時に水(100mL)を徐々に加えた。水相を分離しトルエンで抽出した(2×75mL)。有機相を集め、pHが中性になるまで酸性水で処理した。溶媒を蒸発させ、残渣をヘプタン(約100mL)に約30分間懸濁した。生成物を濾過により単離し、減圧下40℃のオーブンで一晩乾燥させた。その結果、標記化合物(45.2g、164.54mmol、収率83.2%、d.e.=0.0%)を白色の微粉末状の固体で得た。
【実施例3】
【0104】
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(代替法2)
機械攪拌器、温度計及びディーン・スターク蒸留器を備えた500mLの反応装置内に、(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミン(24.2g、199.51mmol)とトルエン(40mL)とを入れた。反応液を0℃に維持しつつ、窒素雰囲気下でナトリウムメトキシド(42.7g、30%メタノール溶液、237.14mmol)を添加した。同温で19.28%(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(36.63g、197.77mmolに相当)トルエン溶液(190.0g)を加えた。その後反応液を65〜70℃まで加熱し、メチルエステル試薬の消失が完了するまでその状態を維持した(約4時間;HPLCにより確認)。実施例2に記載の手続きに従って後処理を行った後、標記化合物(40.2g、146.53mmol、収率74.1%、d.e.=0.0%)を白色の微粉末状の固体で得た。
【実施例4】
【0105】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド
バブルコンデンサーと機械攪拌器とを備える25mLの反応装置内に、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(1.5g、5.47mmol)とn−ヘプタン/トルエン(9/1(v/v))混液(15mL)とを窒素雰囲気下で投入した。反応液を50℃まで加熱し、ナトリウムメトキシド(約100mg、30%メタノール溶液、0.55mmol)を添加した。急速に懸濁液が溶解し、油分を生成した。
【0106】
反応液を40℃に冷却し、維持しつつ一晩攪拌した後に生じた懸濁液を、20℃で約4時間冷却した。懸濁液に酢酸(50mg)を添加した後濾過した。得られた固体をn−ヘプタン(1×5mL)で洗浄し、減圧下50℃で一晩乾燥し、標記化合物(1.1g、4.0mmol、収率73.3%、d.e.=91.8%)を白色の固体で得た。
【0107】
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3, 25 ℃):δ (ppm, TMS) 7.33-7.18 (5H, m), 6.54 (IH, br d, J = 7.4 Hz), 5.04 (IH, dt, J = 7.4, 7.1 Hz), 4.41 (IH, dd, J = 8.3, 7.4 Hz), 3.30 (IH, ddd, J = 9.6, 8.3, 5.5 Hz), 3.13 (IH, ddd, 9.7, 8.5, 6.1 Hz), 2.41 (IH, ddd, J = 17.0, 9.6, 6.3 Hz), 2.26 (IH, ddd, 17.0, 9.5, 6.6 Hz), 2.01-1.89 (IH, m), 1.99-1.88 (IH, m), 1.88-1.78 (IH, m), 1.72-1.59 (IH, m), 1.45 (3H, d, J = 7.1 Hz), 0.90 (3H, t, J = 7.4 Hz). 13C NMR (100.62 MHz, CDCl3, 25 ℃): δ (ppm, TMS) 176.05 (CO), 168.81 (CO), 143.59 (Cquat), 128.55 (2 x CH), 127.19 (CH), 125.80 (2 x CH), 56.61 (CH), 48.84 (CH), 43.71 (CH2), 31.07 (CH2), 22.08 (CH3), 20.68 (CH2), 18.08 (CH2), 10.45 (CH3).
【実施例5】
【0108】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸
機械攪拌器とバブルコンデンサーとを備える25mLのフラスコ内に、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(1.0g、3.65mmol、d.e.=98%)、ポリマーマトリックスに担持したp−トルエンスルホン酸(7.3g、30.00〜60.00メッシュ、2.0〜3.0mmol/g)、水(0.263mL、14.60mmol)及びトルエン(14.5mL)を窒素雰囲気下で投入した。
【0109】
反応液を油浴で110℃まで加熱し、出発材料の消失が完了するまで還流温度を維持した(約6時間;HPLCで確認)。液相の一部とレジンの一部の両方を採取して反応の確認を行った;混合物を濾過し、アンモニア溶液(約2mL、7.0M MeOH溶液)で洗浄し、減圧下で溶媒を除去した。
【0110】
変換完了後、反応液をグーチ(gootch)で濾過し、レジンを1M NaOH水溶液(2×15mL)とトルエン(10mL)とで洗浄した。相を分離し、トルエン溶液を1Mソーダ水(15mL)でpH値が約10〜12になるまで洗浄した。得られた塩基性の水相を更にトルエン(20mL)で洗浄し、3%HCl水溶液でpH値が約1になるまで酸性化した。酸性水溶液をジクロロメタン(5×50mL)で抽出した。有機相を集め、Na2SO4上で乾燥させ、残渣が得られるまで減圧下濃縮した。得られた白色の固体を25℃一晩減圧下で乾燥させ、標記化合物(304.0mg、1.78mmol、収率48.7%、e.e.=91.9%)を得た。
【実施例6】
【0111】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド(レベチラセタム)
温度計、機械攪拌器及びバブルコンデンサーを備える25mLのフラスコ内に、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸(3.344g、19.58mmol、e.e.=95.0%)、濃硫酸(0.11mL、95.6%m/m、1.97mmol)及びメタノール(17mL)を窒素雰囲気下、室温で投入した。
【0112】
反応液を油浴で65℃まで加熱し、出発材料の消失が完了するまで還流温度を維持した(約2.5時間;薄層クロマトグラフィーで確認、Rf=0.58、CH2Cl2:MeOH:AcOH=80:20:1/シリカゲル)。残渣が生成されるまで反応液を減圧下濃縮し、その後水(2.0mL)を加えた。電磁攪拌器とコンデンサーとを備える25mLのフラスコ内に、30%アンモニア水(7.5mL)を入れ、0℃に冷却し、攪拌を維持しつつ、粗(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル水溶液を滴下した。添加終了時、反応液を20℃の温度に一定に保ち、この状態を一晩維持した。
【0113】
変換完了後(約10時間)、真空蒸発装置を用いて過剰のアンモニアを除去した。反応液をジクロロメタンで抽出し(2×3.5mL)、連続液-液抽出器に移し、その後ジクロロメタン(7mL)と共に6時間還流した。有機相を集め、残渣が得られるまで減圧下濃縮した。得られた黄色固体(2.666g)をアセトン(15.0mL)に懸濁した。反応液を60℃まで加熱し、それにより固体を完全に溶解した。その後、反応液を徐々に冷却した。濾過により白色固体を単離し、それを母液、次に冷アセトン(3mL)で洗浄し、最後に減圧下40℃のオーブンで4時間乾燥し、レベチラセタム(2.259g、13.274mmol、収率67.8%、e.e.=99.9%)を得た。
【実施例7】
【0114】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル
機械攪拌器、温度計及びコンデンサーを備える250mLの反応装置内に、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(2.5g、9.112mmol、d.e.=99.3%)、ポリマーマトリックスに担持したp−トルエンスルホン酸(24.85g(6eq.)、30.00〜60.00メッシュ、2.2mmol/g)及びトルエン(75mL)を入れた。反応液中に攪拌下、水(0.660mL、36.64mmol)を添加し、反応液を還流温度まで加熱した。反応液をHPLCで観察し、出発材料の変換が完了した時点(約6時間)で反応液を60℃に冷却し、メタノール(75mL)を加えた。(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステルの生成が完了するまで、反応液を同温で3時間維持した。反応液を冷却し、その後レジンから生成物を分離するためグーチ(gootch)を用いて濾過した。レジンをメタノール(2×75mL)で洗浄し、有機相を集めて0.462%(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(1.69g、9.110mmol、収率100.0%)有機溶液(365.1g)を得た。この溶液を次の合成段階に用いた。
【0115】
(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミンを回収するため、レジンを30%アンモニア水(100mL)、メタノール(100mL)、30%ソーダ水溶液(100mL)、再びメタノール(100mL)で処理した。その後溶出相のpH値が中性になるまで6M HCl(100mL)と水とで洗浄することにより、レジンを再生した。最後にレジンをメタノール(100mL)で洗浄し、減圧下50℃のオーブンで一晩乾燥した。
【実施例8】
【0116】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド(レベチラセタム)(代替法1)
実施例7で得られた0.462%(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(1.69g、9.110mmol)溶液(365.1g)をフラスコ内に入れ、残渣が得られるまで濃縮した。その結果、褐色の油状物(2.482g)が得られた。
【0117】
電磁攪拌器とコンデンサーとを備える10mLのフラスコ内に、残渣を入れた。反応物を0℃に冷却し、攪拌を維持しつつ、水(0.8mL)と30%アンモニア水(3.2mL)とを約10分間かけて滴下した。添加が完了した後、反応液を20℃の温度に一定に保ち、この状態を一晩維持した。
【0118】
変換が完了した後(約14時間)、真空蒸発装置を用いて過剰のアンモニアを除去した。その後反応液をジクロロメタン(10×5mL)で抽出した。有機相を集め、Na2SO4上で乾燥し、残渣が得られるまで減圧下濃縮した。得られた黄色固体(1.999g)をアセトン(5mL)に懸濁した。反応液を60℃まで加熱し、それにより固体を完全に溶解した。その後反応液を徐々に冷却した。濾過により白色固体が単離された。それを母液、次に冷アセトン(1mL)で洗浄し、最後に減圧下25℃のオーブンで一晩乾燥し、レベチラセタム(0.965g、5.669mmol、収率62.2%、e.e.=94.2%)を得た。
【実施例9】
【0119】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセトアミド(レベチラセタム)(代替法2)
機械攪拌器、温度計及びコンデンサーを備える50mLの反応装置内に、(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド(0.275g、1.0mmol、d.e.=99.3%)、シリカ上に担持したエチル−チオフェニル−スルホン酸(10.0g、0.6mmol/g、PhosphonicsTM)及びトルエン(15mL)を入れた。反応液中に攪拌下、水(0.075mL、4.0mmol)を添加し、反応液を還流温度まで加熱した。HPLCを用いて反応を観察し、出発材料の変換が完了した時(約5時間)反応液を60℃まで冷却し、メタノール(10mL)を加えた。(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステルの生成が完了するまで、反応液を同温で3時間維持した。反応液を冷却し、次に実施例7に記載の手続きに従って後処理を行った。その結果、0.280%(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸メチルエステル(0.162g、0.875mmol、収率87.5%)有機溶液(57.9g)を得た。この溶液をフラスコ内に入れ、残渣が得られるまで濃縮し、褐色の油状物(0.486g)を得た。電磁攪拌器とコンデンサーとを備える5mLのフラスコ内に残渣を入れた。反応液を0℃に冷却し、維持しつつ攪拌下、30%アンモニア水(1.5mL)を滴下した。添加が完了した時、反応液を20℃の温度に一定に保ち、この状態を一晩維持した。
【0120】
変換が完了した後(約15時間)、真空蒸発装置を用いて過剰のアンモニアを除去した。その後、実施例8に記載の通りに反応液をジクロロメタンで抽出した。アセトンで還流して得られた粗生成物の再結晶により、レベチラセタム(0.076g、0.447mmol、収率44.6%(出発材料のアミドと比較)、e.e.=99.9%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベチラセタムを調製する方法であって、次式:
【化1】

(式中、R1は水素又はベンジル基であり、R2は、フェニル環上にてニトロ又は(C1〜C4)−アルコキシで置換されていてもよい1−フェニルエチル基;1−フェニルプロピル基;1−ナフチルエチル基;3−ピニルメチル基であるか、又は、R1とR2は一緒になって、窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜3のヘテロ原子を含み、一以上の(C1〜C4)−アルキル基で置換されている五員又は六員の飽和へテロ環を形成している)で表わされる(±)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸アミドのジアステレオ異性体混合物の塩基触媒作用に基づく結晶化誘導による動的分割を含む方法。
【請求項2】
1が水素原子である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式Iの酢酸アミドが、(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミドである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
動的分割は触媒量の有機塩基の存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
有機塩基が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン及びアルカリ金属アルコキシドから選択されるものである請求項4記載の方法。
【請求項6】
有機塩基が(C1−C4)-アルカリ金属アルコキシドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
有機塩基がナトリウムメトキシドである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
触媒量の塩基が5%〜15%含まれる、請求項1〜7の何れか一項記載の方法。
【請求項9】
触媒量の塩基が約10%である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
分割されたアミドの加水分解反応を行って(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を得ることを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
加水分解が酸性条件下で行われる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
加水分解反応は、ポリマーマトリックス又は無機マトリックスに担持されていてもよいp−トルエンスルホン酸又はアルキル−チオフェニルスルホン酸の存在下で行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
分割されたアミドを加水分解して(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジン酢酸を得ることと、前記酸のカルボキシル残基をエステル化によって活性化することと、得られたエステル誘導体のアンモノリシスを行うことと、粗最終生成物を回収することとを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
加水分解とカルボキシル残基の活性化は、酸触媒による「ワンポット」加水分解−エステル化反応によって行う、請求項13記載の方法。
【請求項15】
「ワンポット」加水分解−エステル化反応は、スチレンジビニルベンゼンポリマーに結合したp−トルエンスルホン酸又はシリカに担持されたアルキル−チオフェニルスルホン酸の存在下で行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
加水分解終了時にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール又はn−ブチルアルコールを添加する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
メチルアルコールを添加する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
アンモノリシス反応は水の存在下で行う、請求項13記載の方法。
【請求項19】
次式:
【化2】

(式中、R1は水素又はベンジル基であり、R2は、フェニル環上にてニトロ又は(C1−C4)−アルコキシで置換されていてもよい1−フェニルエチル基;1−フェニルプロピル基;3−ピニルメチル基であるか、又は、R1とR2は一緒になって、窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜3のヘテロ原子を含み、一以上の(C1−C4)−アルキル基で置換されている五員又は六員の飽和へテロ環を形成する)で表わされる化合物、その立体異性体、その混合物及び酸付加塩。
【請求項20】
1が水素原子である請求項19記載の化合物。
【請求項21】
(−)−(S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド。
【請求項22】
(±)−(R,S)−α−エチル−2−オキソ−1−ピロリジンアセト−N−(+)−(R)−(1−フェニルエチル)−アミド。

【公表番号】特表2009−544656(P2009−544656A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521237(P2009−521237)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057503
【国際公開番号】WO2008/012268
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(307041023)
【氏名又は名称原語表記】ZaCh System S.p.A.
【Fターム(参考)】