説明

レベルシフト回路および表示装置

【課題】片チャネル構成のブートストラップ方式インバータを用いて負方向レベルシフタを構成する場合に、Hiレベル、Loレベルともに振幅落ちを防ぎ、十分なレベルの出力を得る。
【解決手段】レベルシフト回路10は、同一導電型TFTを用いたブートストラップ方式の負方向レベルシフタ300の後段に、ブートストラップ方式のバッファ240aおよび240bを備え、さらにその後段にブートストラップ方式のバッファ240cを備える。レベルシフタ300は2入力2出力の形式であり、バッファ240a、240b、および240cは2入力1出力の形式である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片チャネル構成でブートストラップ効果を利用したレベルシフト回路およびこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、片チャネル構成でブートストラップ効果を利用したインバータを2段接続して、レベルシフタを構成することが知られている。このようなレベルシフタは入力信号より高い電圧を電源として用いるインバータを複数用いることにより、入力信号より高い電圧の出力信号を生成する。このとき、ブートストラップ効果により、出力信号のHi側の振幅落ちを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2002−328643号公報(図6等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、入力信号の振幅を負方向にシフトする負方向レベルシフタについては言及されていないが、仮に、Nチャネルのトランジスタで構成されたブートストラップ方式のインバータを用いて負方向レベルシフタを構成すると、例えば図6(a)に示すような回路が考えられる。すなわち、2入力のレベルシフタ300と、2入力のバッファ240a、240bとを組み合わせて構成することができる。
【0004】
ここで、図6(b)は、2入力のレベルシフタ300の回路構成を示し、図6(c)は、2入力のバッファ240の回路構成を示している。なお、VDDは正電源であり、VEEは負電源である。入力信号「01」はGND−VDD間の振幅を有し、入力「/01」はその反転信号である。
【0005】
本図において、入力信号in(/01)がHiレベルになると、トランジスタTr101がオンしているため、トランジスタTr102のゲートがVDDとなりオンする。トランジスタTr102のゲート−ソース間電圧は容量C107に保持されているため、トランジスタTr102のゲート電圧は更に高まり、十分にオンとなる。容量C107によるブートストラップ効果により出力信号out(/02)はVDDとなりトランジスタTr106がオンするが、その時点のトランジスタTr105のゲート電圧はGNDレベルであり、Tr105のゲート−ソース間電圧はVEEとなるため、弱くオンする。出力信号/out(02)のレベルは、トランジスタTr105とトランジスタTr106のオン抵抗の比率できまる電圧となるため、出力信号/out(02)においてLoレベルがVEEより若干高くなる。
【0006】
図7は、図6(a)〜(c)に示した回路の動作時の波形図である。「01」「/01」が負方向レベルシフタ300の入力信号であり、「02」「/02」が負方向レベルシフタ300の出力信号である。また、「OA」「OB」がバッファ240a、240bの出力信号である。本波形図から、「02」「/02」のLoレベルの浮きと、その出力を受けたバッファ240a、240bにおける出力「OA」「OB」のHiレベル落ちが確認できる。
【0007】
このようなレベルシフタを、例えば薄膜トランジスタ(以下、TFT:Thin Film Transistorと称する)を用いた表示装置の駆動回路に適用した場合、制御信号がフルスイングしないため、例えば、画素回路におけるTFTのOFFリークが発生する等の問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、片チャネル構成のブートストラップ方式のインバータを用いて負方向のレベルシフト回路を構成する場合に、Hiレベル、Loレベルともに振幅落ちを防ぎ、十分なレベルの出力を得ることを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係るレベルシフト回路は、第1電位と第2電位との振幅レベルを有する入力信号に対して第2電位側の論理レベルの絶対値が前記第2電位より大きい出力信号を生成するレベルシフタと、前記レベルシフタの後段に直列に接続される少なくとも2個のバッファとを備え、前記レベルシフタと前記少なくとも2個のバッファとを構成する全てのトランジスタは、同一導電型であり、前記レベルシフタの出力信号における第2電位側の論理レベルは、前記少なくとも2個のバッファに供給される第2電位側電源よりも電位の絶対値が小さく、前記少なくとも2個のバッファの各々は、入力端子と、出力端子と、第1電位側電源が供給される第1電源端子と、前記第2電位側電源が供給される第2電源端子と、ドレインが前記第1電源端子と接続され、ソースが前記出力端子と接続される第1トランジスタと、ドレインが前記出力端子と接続されソースが前記第2電源端子と接続される第2トランジスタと、前記出力端子と前記第1トランジスタのゲートとの間に設けられた容量素子を備え、前記入力端子に供給される信号の論理レベルに応じて前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのゲート電圧が制御するゲート電圧制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、レベルシフタの出力で発生するLoレベルの浮きを原因とする1段目のバッファ出力のHiレベル落ちを、2段目のバッファを用いて解消することで、Hiレベル、Loレベルともに振幅落ちを防ぎ、十分なレベルの出力を得ることができる。つまり、片チャネルで構成されるレベルシフタにおけるソース側の電源電圧と同出力電圧の差分を解消することが可能となる。これによって、以降の回路におけるリークの発生を抑えることが可能となり、信頼性が高く消費電力の少ないレベルシフト回路を構成できる。ここで、トランジスタはnチャネル、pチャネルのいずれで構成されてもよいが、nチャネルのトランジスタでレベルシフト回路を構成する場合、レベルシフト回路は、第1低電位と第1高電位との振幅レベルを有する入力信号に対して低電位側の論理レベルが前記第1低電位より低い出力信号を生成するレベルシフタと、前記レベルシフタの後段に直列に接続される少なくとも2個のバッファとを備え、前記レベルシフタと前記少なくとも2個のバッファとを構成する全てのトランジスタは、同一導電型であり、前記レベルシフタの出力信号における低電位側の論理レベルは、前記少なくとも2個のバッファに供給される低電位電源よりも電位が高く、前記少なくとも2個のバッファの各々は、入力端子と、出力端子と、高電位電源が供給される第1電源端子と、前記低電位電源が供給される第2電源端子と、ドレインが前記第1電源端子と接続され、ソースが前記出力端子と接続される第1トランジスタと、ドレインが前記出力端子と接続されソースが前記第2電源端子と接続される第2トランジスタと、前記出力端子と前記第1トランジスタのゲートとの間に設けられた容量素子を備え、前記入力端子に供給される信号の論理レベルに応じて前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのゲート電圧が制御するゲート電圧制御部とを備えることが好ましい。
【0011】
ここで、前記第1電位側電源は、前記第1電位よりも電位の絶対値が大きくかつ極性が等しい第3電位であり、前記第2電位側電源は、前記第2電位よりも電位の絶対値が大きくかつ極性が等しい第4電位であることが好ましい。この場合は、入力信号のレベルを正負両方向にシフトさせることができる。なお、トランジスタをnチャネルで構成する場合、前記高電位電源は、前記第1高電位よりも電位が高い第2高電位であり、前記低電位電源は、前記第1低電位よりも電位が低い第2低電位であることが好ましい。

【0012】
上述したレベルシフト回路において、前記レベルシフタは、前記入力信号が供給される第1入力端子と、前記入力信号を反転した反転入力信号が供給される第2入力端子と、前記入力信号と同相の信号を出力する第1出力端子と、前記反転入力信号と同相の信号を出力する第2出力端子とを備え、前記少なくとも2つのバッファの各々は、2入力1出力の形式で構成された第1バッファ、第2バッファ、および第3バッファを含み、各バッファは正入力端子と負入力端子とを備え、前記第1バッファの正入力端子は前記レベルシフタの第2出力端子と接続され、前記第1バッファの負入力端子は前記レベルシフタの第1出力端子と接続され、前記第2バッファの正入力端子は前記レベルシフタの第1出力端子と接続され、前記第2バッファの負入力端子は前記レベルシフタの第2出力端子と接続され、前記第3バッファの正入力端子は前記1バッファの出力端子と接続され、前記第3バッファの負入力端子は前記2バッファの出力端子と接続されることが好ましい。
【0013】
より具体的には、前記第1バッファ、前記第2バッファ、および前記第3バッファの各々は、前記ゲート電圧制御部として、前記第1電源端子と前記第2電源端子との間に直列に接続された第3トランジスタと第4トランジスタとを備え、前記第3トランジスタのゲートは前記正入力端子と接続され、前記第4トランジスタのゲートは前記負入力端子と接続され、前記第2トランジスタのゲートは前記正入力端子と接続される、ことが好ましい。2入力タイプのバッファは、第3トランジスタをダイオード接続する必要がないので、準定常的な電流が流れない。よって、消費電力を削減することができる。
【0014】
また、上述したレベルシフト回路において、前記レベルシフタの前段に設けられた1入力1出力の第4バッファおよび第5バッファを備え、前記レベルシフタの第1入力端子に前記入力信号を供給する替わりに、前記第4バッファの入力端子に前記入力信号を供給して前記第4バッファの出力信号を前記レベルシフタの前記第1入力端子に供給し、前記レベルシフタの第2入力端子に前記反転入力信号を供給する替わりに、前記第5バッファの出力信号を供給し、前記第5バッファの入力端子に前記第4バッファの出力信号を供給することが好ましい。この場合には、第4バッファおよび第5バッファを用いて、第2電位方向にレベルシフトを実行し、その後、第1電位方向(負方向)にレベルシフトを実行する。第1電位方向(負方向)へのレベルシフトは一般的に難しいため、まず第2電位方向にレベルシフトを実施してから第1電位方向(西方向)へのレベルシフトを実施することによって、第1電位方向へのレベルシフトを先行して行い、後段のバッファで振幅補償を行った後に第2電位方向のレベルシフトをするよりも、回路規模、信頼性、消費電力の面で有利となる。
【0015】
また、上述したレベルシフト回路において、これを構成する全てのトランジスタは薄膜トランジスタであることが好ましい。薄膜トランジスタは、ゲート電圧が閾値電圧付近にある場合に発生する、いわゆるホットキャリアによる劣化が大きくなるが、この発明によれば、レベルシフト回路の出力信号をフルスイングさせることができるので、以降の回路における薄膜トランジスタの劣化を抑制することができる。この結果、トランジスタの信頼性向上に伴うプロセスの見直し、設計自由度の低下、レイアウト面積の増大、コストアップといった不都合を解消できる。
【0016】
次に、本発明に係る表示装置は、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素回路とを備えたものであって、前記複数の走査線の各々に走査信号を供給する走査線駆動回路と、前記複数のデータ線の各々にデータ信号を供給するデータ線駆動回路とを備え、前記走査線駆動回路の出力段に上述したレベルシフト回路を用いることを特徴とする。この発明によれば、走査線に付随する寄生容量に対して大きな振幅の走査信号を容易に供給することが可能となる。
【0017】
また、前記画素回路は、前記データ線を介して供給される前記データ信号を取り込むためのスイッチングトランジスタを備え、当該スイッチングトランジスタは、前記走査線を介して供給される前記走査信号に基づいてオン状態とオフ状態とが制御されることが好ましい。この場合には、走査信号の振幅をレベルシフト回路に供給される電源電圧までフルスイングさせることができるので、画素回路から、データ線に流れ出るリーク電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレベルシフト回路10の構成を示すブロック図である。このレベルシフト回路10は、振幅がVDD(第1高電位)−GND(第2電位)となる入力信号01,/01のレベルを負方向にシフトして、振幅がVDD(第1電位)−VEE(第4電位)となる出力信号OCを生成する。各電圧の大小関係は、VDD>GND>VEEとなる。なお、図6と同じ回路部には同じ符号を付している。本図に示すようにレベルシフト回路10は、2入力の片チャネルブートストラップ方式レベルシフタ300に、1段目のバッファとして2入力の片チャネルブートストラップ方式バッファ240a、240bを接続し、さらに、2段目のバッファとして2入力の片チャネルブートストラップ方式バッファ240cを接続して構成される。レベルシフタ300の回路構成は図6(b)と同様であり、バッファ240a、240b、240cの回路構成は図6(c)と同様である。
【0019】
すなわち、レベルシフタ300は、入力信号01が供給される第1入力端子/inと、入力信号01を反転した反転入力信号/01が供給される第2入力端子inと、入力信号01と同相の信号を出力する第1出力端子outと、反転入力信号/01と同相の信号を出力する第2出力端子/outとを備える。また、バッファ240aは、第2出力端子/outと接続される正入力端子inと、第1出力端子outと接続される負入力端子/inとを備える。また、バッファ240bは、第1出力端子outと接続される正入力端子inと、第2出力端子/outと接続される負入力端子/inとを備える。さらに、バッファ240cの正入力端子inはバッファ240aの出力端子outと接続され、その負入力端子/inはバッファ240bの出力端子outと接続される。
【0020】
本レベルシフト回路10において、片チャネルブートストラップ方式レベルシフタ300の出力信号/02は、入力信号/01がHiレベルの状態では、上述したようにトランジスタTr105のゲート−ソース間電圧はVEEとなるため完全なオン状態ではなく、トランジスタTr105のオン抵抗が高い状態となるため、トランジスタTr105とトランジスタTr106とのオン抵抗の比率できまる出力信号02のLoレベルは、VEEよりも若干高いVEE’となる。この点は、出力信号02についても同様である。
【0021】
このように出力信号02,/02のLoレベルに浮きが発生すると、1段目のバッファ240a、240bにおけるリークの原因となる。これは、図6に示す回路において、トランジスタTr204のゲート電圧としてVEEよりも若干高いVEE’が供給され、トランジスタTr204が完全にオフとならず、トランジスタTr204にリーク電流が流れる。この結果、出力信号OAおよびOBのHiレベルが低下する。出力信号OAおよびOBのHiレベルはVDDよりも若干レベルの低いVDD’となる。特に、トランジスタTr204として駆動能力の高いTFTを用いた場合には、その閾値電圧が低くなるので、Hiレベルの振幅落ちが無視できない。
そこで、本実施形態では、1段目のバッファ240a、240bの出力信号OAおよびOBを2段目のバッファ240cで受けることで、Hiレベル、Loレベルとも十分なレベルの出力信号OCを得ることができるようにしている。
【0022】
1段目のバッファ240a、240bおよび2段目のバッファ240cの具体的な動作について図1および図6(b)(c)を参照して説明する。Loレベルの浮いたレベルシフタ300の出力信号02,/02が1段目のバッファ240a、240bに入力すると、プルダウントランジスタTr204が弱くオンする。出力信号OAおよびOBのHiレベルは、駆動トランジスタTr203とプルダウントランジスタTr204のオン抵抗の比で決定され、結果として出力信号OAおよびOBのHiレベルが低下する。
【0023】
2段目のバッファ240cでは、駆動トランジスタTr203のゲート電圧がブートストラップ効果により(VDD−Vth+VDD)程度となるため、Tr203は十分にオンとなり、出力信号OCのHiレベルはVDDとなる。したがって、2段目のバッファ240cからはHiレベル、Loレベル共に十分な出力を得ることができる。
【0024】
図2は、レベルシフト回路10の動作時の波形を示す図である。「01」「/01」が負方向レベルシフタ300の入力信号、「02」「/02」が負方向レベルシフタ300の出力信号、「OA」「OB」が1段目のバッファ240a、240bの出力信号、「OC」が2段目のバッファ240cの出力信号である。本図から「02」「/02」のLoレベルの浮きと、「OA」「OB」のHiレベル落ちが発生しているが、2段目のバッファ240cの出力「OC」はフルスイングしていることが確認できる。
【0025】
このように、本実施形態では、片チャネルブートストラップ方式レベルシフタ300に2段のバッファを接続することにより、Hiレベル、Loレベル共に十分な出力を得ることができる。なお、レベルシフタに接続するバッファは3段以上としてもよい。また、ブートストラップ方式のレベルシフタに限られず、Loレベルの浮きが発生するレベルシフタであれば本発明を効果的に適用することができる。
【0026】
<2.第2実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るレベルシフト回路20の構成を示すブロック図である。図1と同じ回路部には同じ符号を付している。本実施形態では、第1の実施形態で説明した後段に2段のバッファを接続した負方向のレベルシフタ300の前段に、2つの1入力正方向レベルシフタ110a、110bを接続して構成される。レベルシフタ300の回路構成およびバッファ240a、240b、240cの回路構成は図6(b)および図6(c)と同様とすることができる。図4は、正方向レベルシフタ110の回路構成を示す図である。正方向レベルシフタ110は、一般に用いられているものであり、図6(c)に示したバッファ240において、Tr201をダイオード接続したものに等しい。
【0027】
正方向レベルシフタ110は、入力信号inから逆相信号を生成するために、入力信号inを入力する正方向レベルシフタ110bの出力を正方向レベルシフタ110bに入力する構成となっている。ブートストラップ効果を利用することで正方向へのレベルシフトは比較的容易に実施することができる。反面、負方向へのレベルシフトは一般的に難しい。このため、まず正方向レベルシフタ110a、110bを用いて正方向(ドレイン側基準電圧)へのレベルシフトを実施することでほぼHiレベルおよびLoレベルが出力可能な信号を生成してから負方向(ソース側基準電圧)へのレベルシフトを実施した方が、負方向へのレベルシフトを先行して行い、バッファで振幅補償を行った後に正方向のレベルシフトをするよりも、回路規模、信頼性、消費電力の面で有利である。本回路により、バッファ240cから、正方向、負方向ともにフルスイングした出力信号OCを得ることができる。
なお、第1実施形態、第2実施形態ではNchトランジスタで構成されたレベルシフタ及びバッファを取り上げて動作を説明してきたが、Pchトランジスタにおいても同様の効果を得ることができる。この場合、ブートストラップ効果を利用することで負方向へのレベルシフトは比較的容易に実施することができるが、正方向へのレベルシフトは一般的に難しくなる。
【0028】
<3.第3実施形態>
次に、上述したレベルシフト回路10,20を利用した電子機器を説明する。この例では、レベルシフタを液晶や有機発光ダイオード素子を用いた表示装置に適用する。この表示装置は、複数の走査線と、複数のデータ線と、これら交差に対応してマトリクス状に配置された複数の画素回路を備える。画素回路は、データ線を介して供給されるデータ信号を、走査線を介して供給される走査信号に従って取り込むスイッチングトランジスタを備える。また、表示装置は、複数の走査線を駆動する走査線駆動回路と、複数のデータ線を駆動するデータ線駆動回路とを備える。上述したバッファ回路1および2は、走査線駆動回路やデータ線駆動回路に適用することができる。以下、液晶表示装置の走査線駆動回路にバッファ回路1および2を用いる場合について説明する。なお、表示装置の全体が同一導電型のTFTで構成されている。
【0029】
図5に走査線駆動回路の構成の一部を示す。走査線駆動回路100は、開始パルスSPをYクロック信号YCKに従って順次転送して、転送信号y1、y2…ymを出力するシフトレジスタ110と、m個のドライバU1〜Unを備える。
また、画素回路Pは、スイッチングトランジスタ20と液晶素子21とを備える。液晶素子21は、スイッチングトランジスタ20と接続される画素電極と対向電極とを備え、画素電極と対向電極との間に液晶を挟持して構成される。データ線30を介して供給されるデータ信号Vdataは、走査信号YがHiレベルのときに画素回路Pに取り込まれ、液晶素子に印加される。そして、走査信号YがLoレベルに遷移しても液晶容量によって、印加電圧が保持される。なお、液晶素子21と並列に保持容量を設けてもよい。
【0030】
ここで、データ信号VdataはGNDとVDDとの間で変化する。この場合、スイッチングトランジスタ20を充分オン状態にして、充分オフ状態にするためには、走査信号Yの振幅をVEE(<GND)からVDH(>VDD)とすることが好ましい。シフトレジスタ20において、振幅がVEE〜VDHとなる転送信号yを生成し、これを走査信号Yとすることも可能である。しかしながら、そのような場合には、シフトレジスタ20の消費電力が増大してしまう。このため、シフトレジスタ20には第1高電位電源VDDおよび第1低電位電源GNDを供給し、振幅がGND〜VDDとなる転送信号yを生成する。
【0031】
ドライバU1〜Umは、上述したレベルシフト回路20によって構成される。したがって、走査信号Y1〜Ymの振幅は、VEE−VDHとなる。走査線には寄生容量が付随するため、図6に示すプルダウントランジスタTr204には、駆動能力が高く閾値電圧の低いものを用いる必要がある。この場合、走査信号Y1〜YmのHiレベルをVDHから落ちがないようにするためには、プルダウントランジスタTr204のゲート電圧をVEEにする必要がある。レベルシフト回路10または20は、上述したように2段のバッファを用いて負方向レベルシフタの出力信号を受けるので、走査信号Y1〜Ymを振幅VEE−VDHの間でフルスイングさせることができる。
仮に、走査信号Y1〜Ymの振幅が低下すると、スイッチングトランジスタ20が充分にオン・オフしなくなる。このため、スイッチングトランジスタ20からデータ線30にリーク電流が流れ出てしまう。これにより、液晶素子21の印加電圧が変動し、輝度が変動してしまう。本実施形態では、走査信号Y1〜Ymをフルスイングさせることができるので、正確に輝度を表示させることができ、表示品質を向上させることができる。
【0032】
また、上述したレベルシフト回路10または20をデータ線駆動回路に適用することもできる。例えば、データ線駆動回路の出力段にデマルチプレクサを備え、複数のデータ線を選択してデータ信号を供給する場合がある。この場合、デマルチプレクサは複数のトランジスタを備えることになるが、これらのトランジスタを確実にオン・オフさせるためには、大振幅の制御信号が必要となる。この制御信号は、低振幅で動作する制御信号生成回路の出力を上述したレベルシフト回路10または20を介してレベルシフトすることによって、VEE〜VDHといった大振幅でフルスイングさせる。これにより、近接するデータ線の間でクロストークを防止し、輝度むらを改善すると共に充分な書き込みマージンを確保することが可能となる。また、上述したレベルシフト回路10または20をシフトレジスタに組み込んでもよい。これらは、表示装置、特に、アモルファスTFTを用いた液晶表示装置、低温ポリシリコンTFTを用いた液晶表示装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係るレベルシフタの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るレベルシフタの出力波形を示す図である。
【図3】第2実施形態に係るレベルシフタの構成を示すブロック図である。
【図4】正方向レベルシフタの回路構成を示す回路図である。
【図5】走査線駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図6】負方向レベルシフタ回路の一例を示す図である。
【図7】負方向レベルシフタ回路の出力波形を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10…レベルシフタ、20…レベルシフタ、110…正方向レベルシフタ、240…片チャネルブートストラップ方式バッファ、300…負方向レベルシフタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位と第2電位との振幅レベルを有する入力信号に対して第2電位側の論理レベルの絶対値が前記第2電位より大きい出力信号を生成するレベルシフタと、
前記レベルシフタの後段に直列に接続される少なくとも2個のバッファとを備え、
前記レベルシフタと前記少なくとも2個のバッファとを構成する全てのトランジスタは、同一導電型であり、
前記レベルシフタの出力信号における第2電位側の論理レベルは、前記少なくとも2個のバッファに供給される第2電位側電源よりも電位の絶対値が小さく、
前記少なくとも2個のバッファの各々は、
入力端子と、
出力端子と、
第1電位側電源が供給される第1電源端子と、前記第2電位側電源が供給される第2電源端子と、
ドレインが前記第1電源端子と接続され、ソースが前記出力端子と接続される第1トランジスタと、
ドレインが前記出力端子と接続されソースが前記第2電源端子と接続される第2トランジスタと、
前記出力端子と前記第1トランジスタのゲートとの間に設けられた容量素子を備え、
前記入力端子に供給される信号の論理レベルに応じて前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタのゲート電圧が制御するゲート電圧制御部とを備える、
ことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項2】
前記第1電位側電源は、前記第1電位よりも電位の絶対値が大きくかつ極性が等しい第3電位であり、
前記第2電位側電源は、前記第2電位よりも電位の絶対値が大きくかつ極性が等しい第4電位である、
ことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項3】
前記レベルシフタは、
前記入力信号が供給される第1入力端子と、
前記入力信号を反転した反転入力信号が供給される第2入力端子と、
前記入力信号と同相の信号を出力する第1出力端子と、
前記反転入力信号と同相の信号を出力する第2出力端子とを備え、
前記少なくとも2つのバッファの各々は、2入力1出力の形式で構成された第1バッファ、第2バッファ、および第3バッファを含み、各バッファは正入力端子と負入力端子とを備え、
前記第1バッファの正入力端子は前記レベルシフタの第2出力端子と接続され、
前記第1バッファの負入力端子は前記レベルシフタの第1出力端子と接続され、
前記第2バッファの正入力端子は前記レベルシフタの第1出力端子と接続され、
前記第2バッファの負入力端子は前記レベルシフタの第2出力端子と接続され、
前記第3バッファの正入力端子は前記1バッファの出力端子と接続され、
前記第3バッファの負入力端子は前記2バッファの出力端子と接続される、
ことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項4】
前記第1バッファ、前記第2バッファ、および前記第3バッファの各々は、前記ゲート電圧制御部として、
前記第1電源端子と前記第2電源端子との間に直列に接続された第3トランジスタと第4トランジスタとを備え、
前記第3トランジスタのゲートは前記正入力端子と接続され、
前記第4トランジスタのゲートは前記負入力端子と接続され、
前記第2トランジスタのゲートは前記正入力端子と接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載のレベルシフト回路。
【請求項5】
前記レベルシフタの前段に設けられた1入力1出力の第4バッファおよび第5バッファを備え、
前記レベルシフタの第1入力端子に前記入力信号を供給する替わりに、前記第4バッファの入力端子に前記入力信号を供給して前記第4バッファの出力信号を前記レベルシフタの前記第1入力端子に供給し、
前記レベルシフタの第2入力端子に前記反転入力信号を供給する替わりに、前記第5バッファの出力信号を供給し、
前記第5バッファの入力端子に前記第4バッファの出力信号を供給した、
ことを特徴とするレベルシフト回路。
【請求項6】
前記レベルシフト回路を構成する全てのトランジスタは薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載のレベルシフト回路。
【請求項7】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との交差に対応して設けられた複数の画素回路とを備えた表示装置であって、
前記複数の走査線の各々に走査信号を供給する走査線駆動回路と、
前記複数のデータ線の各々にデータ信号を供給するデータ線駆動回路とを備え、
前記走査線駆動回路の出力段に請求項1乃至6に記載のレベルシフト回路のうちいずれか1つを用いる、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記画素回路は、前記データ線を介して供給される前記データ信号を取り込むためのスイッチングトランジスタを備え、
当該スイッチングトランジスタは、前記走査線を介して供給される前記走査信号に基づいてオン状態とオフ状態とが制御される、
ことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−17432(P2009−17432A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179314(P2007−179314)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】