レンズ、レンズアレイ及び光レシーバ
【課題】光レシーバ等において、光通信の阻害要因となる信号反射を低減する。
【解決手段】光ファイバ110からの光をフォトデテクタ125に導くレンズ135の、像側表面160の面形状は、レンズ135の光軸に沿う平面で断面をとったときに、円状、放物線形状、あるいは双曲線形状などの円錐曲線の形と、二等辺三角形の形とを複合させた形状となっている。フォトデテクタ125の表面で反射された光は、レンズ135に再度に入射するが光ファイバ110の端面150には入射しない。
【解決手段】光ファイバ110からの光をフォトデテクタ125に導くレンズ135の、像側表面160の面形状は、レンズ135の光軸に沿う平面で断面をとったときに、円状、放物線形状、あるいは双曲線形状などの円錐曲線の形と、二等辺三角形の形とを複合させた形状となっている。フォトデテクタ125の表面で反射された光は、レンズ135に再度に入射するが光ファイバ110の端面150には入射しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズおよびこのレンズを用いた光レシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて望ましくない信号反射(すなわち背面反射)が生じ得る箇所は多数ある。一般的な信号反射箇所としては、光ファイバの接続部及び光ファイバコネクタとインターフェース(例えば光レシーバで言えば光信号がフォトデテクタの表面に当たる部分)が挙げられる。
【0003】
信号反射により生じ得る副産物の1つはパワーロスである(例えば、光レシーバにより検出される際の光信号強度が低減する)。もう1つの可能性のある副産物としては、光通信を生じさせる光源(発光ダイオード(LED)又はレーザー)の乱れが挙げられる。システムの光源の乱れは劣悪な信号品質とノイズを生む。信号反射により生じ得る更に他の副産物としては、ゴースト信号(例えば意図した信号に重なってしまうスプリアス信号、又は光伝送が終わった後も続く信号反射)が挙げられる。これらの副産物(例えばパワーロス、劣悪な信号品質及びゴースト信号)は全て光レシーバが誤った、又は存在しない信号を誤って識別してしまい、データ伝送に悪影響を及ぼす可能性を高めるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光レシーバでの背面反射は通常、入射信号パワーに対する反射信号パワーの比である反射減衰量(リターンロス)で評価される。光レシーバにおいては30%程度の反射減衰量はめずらしいことではない。
【0005】
信号反射に関わる問題の幾つかは、光アイソレータを光リンクのトランスミッタ付近に導入することにより解消することが出来る。しかしながら、より低コストのトランスミッタにとってはアイソレータを付加するとコストがかかってしまう。更に、アイソレータはリンクのレシーバにおけるゴースト信号の検出を防ぐものではない。
【0006】
光信号反射に関わる問題を低減する為の他の技術としては、光サーキュレータ又は回折レンズ部品の導入が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態においては、レンズは物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の形状はコニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。
【0008】
他の実施の形態においては、レンズアレイが、共通の構造体へとモールディングされた複数のレンズを含んでいる。各レンズは、物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の少なくとも一部の形状が、コニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。
【0009】
更に他の実施の形態においては、光レシーバがレンズとフォトデテクタを含んでいる。レンズは物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の形状はコニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。フォトデテクタはレンズの像側の面から放射される光を受けるように配置される。
【0010】
他の実施の形態も開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図は、本発明を説明する為の現在推奨される実施の形態を描いたものである。
【0012】
図1は、光トランスミッタ105、光ファイバ110及び光レシーバ115を含む光通信システム100の一例を描いたものである。ファイバ110はトランスミッタ105へと光学的に結合したトランスミッタ端面145と、レシーバ115へと光学的に結合したレシーバ端面150とを含んでいる。ファイバ110は通信システム100のアプリケーションに応じ、62.5/125μm、50/125μm、又は100/140μmマルチモードファイバ、9/125μmシングルモードファイバ、又は200μmHCS(ハードクラッドシリカ)ファイバ等を含むがこれらに限られないマルチモード、シングルモード、又はその他のタイプのファイバとすることが出来る。光通信システム100は、ファイバ110という手段を通じてトランスミッタ105及びレシーバ115間における信号(データ等)の伝送を実施することが出来るものである。
【0013】
光レシーバ115はレンズ135及びフォトデテクタ125を含んでいる。図示したように、フォトデテクタ125はトランジスタアウトライン(TO)缶120の基部に搭載することが出来る。レンズ135及びフォトデテクタ125は複合ハウジング、又は複数部品ハウジング165a、165bという手段により相対的に位置決めされて支持される。ハウジング165a、165bは少なくともレンズ135を支持し、フォトデテクタ125及び光ファイバ110をこのレンズ135に対して位置決めする為の造作(例えば窪み、レセプタクル、ブラケット又はカプラー)を含んでいる。一実施の形態においては、ハウジングの一部(例えば部品165b)又は全体がレンズ135と一体化されている。この説明において重要なのは、ハウジング165a、165bの特定の構成ではなく、レンズ135、フォトデテクタ125及びファイバ110を位置決めすることを可能とするハウジングの機能だけである。システム100においては、ハウジング165bはレンズ135とフォトデテクタ125の間にある空洞140(例えばエアギャップ)を画定している。
【0014】
レンズ135は物体(入力、入射)側の面155と像(出力、射出)側の面160を含んでいる。レンズ135は物体側の面155がファイバ110から放射される入射光を受け、像側の面160が光をフォトデテクタへと放射することになるようにアライメントされている。
【0015】
物体側の面155は様々な形状とすることが出来、一実施の形態においては式1(下記)により定義されるコニック形状の面等の凸面をしている。
【0016】
像側の面160は、コニック要素と円錐要素を有する式により定義される。図2はコニック面200の一例を示す等角図である。図2に例示したコニック面は、以下の式により定義される。なお、本明細書中において、レンズ形状を説明する際に「コニック」、「円錐」という言葉について、次のように使い分けをする。
1) レンズの光軸に沿う断面をとったときに、そのレンズの断面形状を円錐曲線で表すことができるとき、そのレンズは「コニック形状を有する」と云う。
2) レンズの光軸に沿う断面をとったときに、そのレンズの断面形状が三角形となるとき、そのレンズは「円錐形状を有する」、あるいは「円錐表面を有する」と云う。
【0017】
【数2】
【0018】
ここでzは面200のサグ量、即ちz座標であり、x及びyは面200の横方向の座標であり、kは円錐定数、そしてcは面200の曲率半径の逆数である。一例として、コニック要素は半球、放物線形又は双曲線形とすることが出来る。
【0019】
図3は、円錐表面300の一例を描いた等角図である。図3に例示した円錐の表面は、以下の式により定義される。
【0020】
【数3】
【0021】
ここでzは面300のサグ量、即ちz座標であり、x及びyは面300の横方向の座標であり、そしてdは定数である。
【0022】
図4は像側の面160の等角図である。像側の面160はコニック要素と円錐要素を含む式により次のように定義される。
【0023】
【数4】
【0024】
像側の面160はまた、以下の式により定められる通りに一次奇数次非球面(一次の非球面係数あるいは補正係数を有する非球面)としても説明することが出来る。
【0025】
【数5】
【0026】
ここでrは像側の面160の動径座標(例えば√x2+y2)であり、β1は非球面の一次定数(一次の非球面係数)である。
【0027】
特定の光ファイバ110(例えばファイバタイプやコア径等)に対応するレンズ135、光ファイバ110を経て受光するものとして想定される光(例えば光の波長、モードプロファイル、及び光がレーザLEDにより作られたのかどうか等)、そしてハウジング165a、165bによる光ファイバ110及びフォトデテクタ125のレンズ135に対する配置位置などを要因とするリターンロスを緩和すべく、レンズ135の面155及び160、特に像側の面160を最適化することが出来る。面155及び160は更に、開口数、カップリング効率及び許容背面反射についても最適化することが出来る。
【0028】
コニック要素と円錐要素を含む式により定義される像側の面160を持つレンズ135は、そのアプリケーションに応じて様々な有用な機能を提供することが出来る。その機能の1つが、入射光をフォトデテクタ125へと収束することである。他の機能としては、フォトデテクタ125での反射によりファイバ110へと再入射してしまう光の緩和である。レシーバ115における背面反射を緩和することにより、1)トランスミッタ105の作用と干渉する;又は2)ゴースト信号を生成してしまう;可能性のある信号反射が許容レベルにまで低減され、これによってシステム100の信頼性と最大帯域幅を増大させることが出来るのである。
【0029】
一実施の形態においては、光学システム100は、850nmの光源波長;ファイバ110が62.5μmのコア径と125μmのクラッド径を持つマルチモードファイバ;物体側の面155の頂点から像側の面160の頂点までのレンズ135の長さ(厚み)が0.8mm;物体側の面155の径(絞り径)が0.5mm;像側の面160の径(絞り径)が0.3mm;像側の面160の頂点からフォトデテクタ125までの距離が0.4mm;物体側の面155の頂点からファイバ110のレシーバ端面150までの距離が0.5mm;像側の面160の定数(面形状を決める定数)が、d=−0.23、k=0、c=2(曲率半径0.5mm:式3);そしてレンズ135の物体側の面155の定数が、k=0及びc=4(曲率半径0.25mm:式1);という特性を持っている。
【0030】
図5Aは、上記段落において説明したシステム100の実施の形態(システム100a)の順方向の(レンズ135へ入射する方向の)光線追跡500を描いたものである。放射された光はファイバ110を通じて進み、物体側の面155を通ってレンズ135へと入り、像側の面160と空洞140を通じてフォトデテクタ125へと入る。図5Bはフォトデテクタ125へと入射する光の輪帯状光線プロファイル550を示している。
【0031】
図6Aは図5Aに示したシステム100aの戻り方向光線トレース600を描いたものである。図示したように、フォトデテクタ125はそれに入射した光のうちのあるパーセンテージを反射する。一部の例においては、反射光は30%程度である。しかしながら、このパーセンテージはフォトデテクタ125の特性(その材料、又は反射防止コーティングがあるかないか等)によって異なる。像側の面160は光をフォトデテクタ125へと収束することに加え、背面反射される光を(フォトデテクタ125に入射する前に)曲げることによりこの光がファイバ110へと戻らないようにしている。更には、背面反射された光が(レンズ135を経て)ファイバ端面150の平面に結像されることがないように、像側の面160の開口部(絞り)は物体側の面155の径よりも小さくすることが出来る。
【0032】
図6Bはファイバ110のレシーバ端面150における背面反射された光の輪帯状光線プロファイル650を描いたものである。この光線プロファイルにおいては背面反射がファイバ110径の外側に散乱している(そしてファイバ110へは入り込んでいない)点に注目されたい。従前のレシーバレンズを採用した光学システムの一部では背面反射した光の10%程度がファイバへと結合してしまうものであるが、図5Aに示した光学システム100aがファイバ110へと結合してしまう背面反射光は1%程度である。
【0033】
図7は、システム100の、第二の実施の形態(システム100b)における順方向(伝送方向)及び戻り方向(背面反射方向)の両光線経路を示す光線追跡700を描いたものである。この第二の実施の形態100bにおけるシステムの特性は、先の実施の形態100aに関して説明したものと同様であるが;物体側の面155の頂点から像側の面160の頂点までのレンズ135の長さ(厚さ)が0.7mm;像側の面160の直径(絞り径)が0.5mm(物体側の面155と同じ);像側の面160の頂点からフォトデテクタ125までの距離が0.5mm;物体側の面155の頂点からファイバ110のレシーバ端面150までの距離が0.43mm;レンズ135の像側の面160の定数が、d=−0.23、k=−2.66、c=3.33(曲率半径0.3mm);であるという点が異なる。
【0034】
このシステム100bにおいては、像側の面160がより大きな径(絞り径)を持っており、より大量の背面反射光がレンズ135へと入射する。しかしながら、このレンズ135の構成によれば、それでも尚、背面反射光をファイバ110の直径の外側へと散乱させているものである(そしてファイバ110の中へは入れさせていない)。
物体側の面155及び像側の面160を含むレンズ135は、例えばポリエーテルイミド(PEI)等のポリマーを、ダイアモンド旋削処理することにより形成された金型のキャビティ中へと射出することにより成形出来る。好適なポリマーの1つは、General Electric Companyが販売する非晶質熱可塑性PEI樹脂のUltem(登録商標)である。Ultem(登録商標)は、850nm及び1300nm波長において高い透過係数を持っており、光レシーバ、トランスミッタ、及びトランシーバモジュールにおける利用に好適である。Ultem(登録商標)は約215℃の高いガラス転移温度を持ち、製造においてモジュールの高温はんだ処理や他の高温処理が可能である。レンズ135はまた、好適な光学特性を持つ他の材料(他のポリマー又はガラス等)を使って射出成形、研磨又は他の処理により製造することが出来る。
【0035】
図8はコニック要素及び円錐要素により画定される像側の面160を持つ角度をつけた(屈曲部を有する)レンズ800の一例を描いたものである。レンズ135と異なり、レンズ800の物体及び像側の面155、160は相互に対して角度(約90°等)を以て配置されている。レンズ800は更に、物体側の面155にて受けた光を像側の面160へと向けなおす(反射させる)為に、物体側の面155と像側の面160の間に反射面805を含んでいる。光線を屈曲させる点以外は、レンズ800の機能はレンズ135と同様である。
【0036】
一部の例においては、複数のレンズ135又は800を共通の構造体へとモールディングしてレンズアレイを形成することも出来る。例えば、図9に示したレンズ135a、135bのアレイ900を参照されたい。各レンズにより放射された光を受けるように、別々のフォトデテクタを配置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】光通信システムの一例を描いた図である。
【図2】コニック表面の一例を描いた等角図である。
【図3】円錐表面の一例を描いた等角図である。
【図4】コニック形状及び円錐形状を組み合わせた表面の一例を描いた等角図である。
【図5A】図1に示したシステムの、第一の実施の形態に係る順方向光線経路トレースを描いた図である。
【図5B】図5Aに描いたシステムにおけるフォトデテクタ上に入射する環状ビーム形状を描いた図である。
【図6A】図5Aに示したシステムにおける戻り光線経路トレースを描いた図である。
【図6B】図5Aに示した光ファイバのレシーバ端面における背面反射光の環状ビーム形状を描いた図である。
【図7】図1に示したシステムの、第二の実施の形態に係る順方向及び戻り光線経路トレースを描いた図である。
【図8】図1に示したレンズの、コニック及び円錐形状を組み合わせた像側の面を含む角度付きレンズの一例を描いた図である。
【図9】図1に示したレンズのアレイ例を描いた図である。
【符号の説明】
【0038】
110 光ファイバ
115 光レシーバ
125 フォトデテクタ
135 レンズ
155 物体側の面
160 像側の面
165a、165b ハウジング
805 反射面
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズおよびこのレンズを用いた光レシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて望ましくない信号反射(すなわち背面反射)が生じ得る箇所は多数ある。一般的な信号反射箇所としては、光ファイバの接続部及び光ファイバコネクタとインターフェース(例えば光レシーバで言えば光信号がフォトデテクタの表面に当たる部分)が挙げられる。
【0003】
信号反射により生じ得る副産物の1つはパワーロスである(例えば、光レシーバにより検出される際の光信号強度が低減する)。もう1つの可能性のある副産物としては、光通信を生じさせる光源(発光ダイオード(LED)又はレーザー)の乱れが挙げられる。システムの光源の乱れは劣悪な信号品質とノイズを生む。信号反射により生じ得る更に他の副産物としては、ゴースト信号(例えば意図した信号に重なってしまうスプリアス信号、又は光伝送が終わった後も続く信号反射)が挙げられる。これらの副産物(例えばパワーロス、劣悪な信号品質及びゴースト信号)は全て光レシーバが誤った、又は存在しない信号を誤って識別してしまい、データ伝送に悪影響を及ぼす可能性を高めるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光レシーバでの背面反射は通常、入射信号パワーに対する反射信号パワーの比である反射減衰量(リターンロス)で評価される。光レシーバにおいては30%程度の反射減衰量はめずらしいことではない。
【0005】
信号反射に関わる問題の幾つかは、光アイソレータを光リンクのトランスミッタ付近に導入することにより解消することが出来る。しかしながら、より低コストのトランスミッタにとってはアイソレータを付加するとコストがかかってしまう。更に、アイソレータはリンクのレシーバにおけるゴースト信号の検出を防ぐものではない。
【0006】
光信号反射に関わる問題を低減する為の他の技術としては、光サーキュレータ又は回折レンズ部品の導入が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態においては、レンズは物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の形状はコニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。
【0008】
他の実施の形態においては、レンズアレイが、共通の構造体へとモールディングされた複数のレンズを含んでいる。各レンズは、物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の少なくとも一部の形状が、コニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。
【0009】
更に他の実施の形態においては、光レシーバがレンズとフォトデテクタを含んでいる。レンズは物体側の面と像側の面とを含み、像側の面の形状はコニック要素及び円錐要素を持つ式により定義されている。フォトデテクタはレンズの像側の面から放射される光を受けるように配置される。
【0010】
他の実施の形態も開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図は、本発明を説明する為の現在推奨される実施の形態を描いたものである。
【0012】
図1は、光トランスミッタ105、光ファイバ110及び光レシーバ115を含む光通信システム100の一例を描いたものである。ファイバ110はトランスミッタ105へと光学的に結合したトランスミッタ端面145と、レシーバ115へと光学的に結合したレシーバ端面150とを含んでいる。ファイバ110は通信システム100のアプリケーションに応じ、62.5/125μm、50/125μm、又は100/140μmマルチモードファイバ、9/125μmシングルモードファイバ、又は200μmHCS(ハードクラッドシリカ)ファイバ等を含むがこれらに限られないマルチモード、シングルモード、又はその他のタイプのファイバとすることが出来る。光通信システム100は、ファイバ110という手段を通じてトランスミッタ105及びレシーバ115間における信号(データ等)の伝送を実施することが出来るものである。
【0013】
光レシーバ115はレンズ135及びフォトデテクタ125を含んでいる。図示したように、フォトデテクタ125はトランジスタアウトライン(TO)缶120の基部に搭載することが出来る。レンズ135及びフォトデテクタ125は複合ハウジング、又は複数部品ハウジング165a、165bという手段により相対的に位置決めされて支持される。ハウジング165a、165bは少なくともレンズ135を支持し、フォトデテクタ125及び光ファイバ110をこのレンズ135に対して位置決めする為の造作(例えば窪み、レセプタクル、ブラケット又はカプラー)を含んでいる。一実施の形態においては、ハウジングの一部(例えば部品165b)又は全体がレンズ135と一体化されている。この説明において重要なのは、ハウジング165a、165bの特定の構成ではなく、レンズ135、フォトデテクタ125及びファイバ110を位置決めすることを可能とするハウジングの機能だけである。システム100においては、ハウジング165bはレンズ135とフォトデテクタ125の間にある空洞140(例えばエアギャップ)を画定している。
【0014】
レンズ135は物体(入力、入射)側の面155と像(出力、射出)側の面160を含んでいる。レンズ135は物体側の面155がファイバ110から放射される入射光を受け、像側の面160が光をフォトデテクタへと放射することになるようにアライメントされている。
【0015】
物体側の面155は様々な形状とすることが出来、一実施の形態においては式1(下記)により定義されるコニック形状の面等の凸面をしている。
【0016】
像側の面160は、コニック要素と円錐要素を有する式により定義される。図2はコニック面200の一例を示す等角図である。図2に例示したコニック面は、以下の式により定義される。なお、本明細書中において、レンズ形状を説明する際に「コニック」、「円錐」という言葉について、次のように使い分けをする。
1) レンズの光軸に沿う断面をとったときに、そのレンズの断面形状を円錐曲線で表すことができるとき、そのレンズは「コニック形状を有する」と云う。
2) レンズの光軸に沿う断面をとったときに、そのレンズの断面形状が三角形となるとき、そのレンズは「円錐形状を有する」、あるいは「円錐表面を有する」と云う。
【0017】
【数2】
【0018】
ここでzは面200のサグ量、即ちz座標であり、x及びyは面200の横方向の座標であり、kは円錐定数、そしてcは面200の曲率半径の逆数である。一例として、コニック要素は半球、放物線形又は双曲線形とすることが出来る。
【0019】
図3は、円錐表面300の一例を描いた等角図である。図3に例示した円錐の表面は、以下の式により定義される。
【0020】
【数3】
【0021】
ここでzは面300のサグ量、即ちz座標であり、x及びyは面300の横方向の座標であり、そしてdは定数である。
【0022】
図4は像側の面160の等角図である。像側の面160はコニック要素と円錐要素を含む式により次のように定義される。
【0023】
【数4】
【0024】
像側の面160はまた、以下の式により定められる通りに一次奇数次非球面(一次の非球面係数あるいは補正係数を有する非球面)としても説明することが出来る。
【0025】
【数5】
【0026】
ここでrは像側の面160の動径座標(例えば√x2+y2)であり、β1は非球面の一次定数(一次の非球面係数)である。
【0027】
特定の光ファイバ110(例えばファイバタイプやコア径等)に対応するレンズ135、光ファイバ110を経て受光するものとして想定される光(例えば光の波長、モードプロファイル、及び光がレーザLEDにより作られたのかどうか等)、そしてハウジング165a、165bによる光ファイバ110及びフォトデテクタ125のレンズ135に対する配置位置などを要因とするリターンロスを緩和すべく、レンズ135の面155及び160、特に像側の面160を最適化することが出来る。面155及び160は更に、開口数、カップリング効率及び許容背面反射についても最適化することが出来る。
【0028】
コニック要素と円錐要素を含む式により定義される像側の面160を持つレンズ135は、そのアプリケーションに応じて様々な有用な機能を提供することが出来る。その機能の1つが、入射光をフォトデテクタ125へと収束することである。他の機能としては、フォトデテクタ125での反射によりファイバ110へと再入射してしまう光の緩和である。レシーバ115における背面反射を緩和することにより、1)トランスミッタ105の作用と干渉する;又は2)ゴースト信号を生成してしまう;可能性のある信号反射が許容レベルにまで低減され、これによってシステム100の信頼性と最大帯域幅を増大させることが出来るのである。
【0029】
一実施の形態においては、光学システム100は、850nmの光源波長;ファイバ110が62.5μmのコア径と125μmのクラッド径を持つマルチモードファイバ;物体側の面155の頂点から像側の面160の頂点までのレンズ135の長さ(厚み)が0.8mm;物体側の面155の径(絞り径)が0.5mm;像側の面160の径(絞り径)が0.3mm;像側の面160の頂点からフォトデテクタ125までの距離が0.4mm;物体側の面155の頂点からファイバ110のレシーバ端面150までの距離が0.5mm;像側の面160の定数(面形状を決める定数)が、d=−0.23、k=0、c=2(曲率半径0.5mm:式3);そしてレンズ135の物体側の面155の定数が、k=0及びc=4(曲率半径0.25mm:式1);という特性を持っている。
【0030】
図5Aは、上記段落において説明したシステム100の実施の形態(システム100a)の順方向の(レンズ135へ入射する方向の)光線追跡500を描いたものである。放射された光はファイバ110を通じて進み、物体側の面155を通ってレンズ135へと入り、像側の面160と空洞140を通じてフォトデテクタ125へと入る。図5Bはフォトデテクタ125へと入射する光の輪帯状光線プロファイル550を示している。
【0031】
図6Aは図5Aに示したシステム100aの戻り方向光線トレース600を描いたものである。図示したように、フォトデテクタ125はそれに入射した光のうちのあるパーセンテージを反射する。一部の例においては、反射光は30%程度である。しかしながら、このパーセンテージはフォトデテクタ125の特性(その材料、又は反射防止コーティングがあるかないか等)によって異なる。像側の面160は光をフォトデテクタ125へと収束することに加え、背面反射される光を(フォトデテクタ125に入射する前に)曲げることによりこの光がファイバ110へと戻らないようにしている。更には、背面反射された光が(レンズ135を経て)ファイバ端面150の平面に結像されることがないように、像側の面160の開口部(絞り)は物体側の面155の径よりも小さくすることが出来る。
【0032】
図6Bはファイバ110のレシーバ端面150における背面反射された光の輪帯状光線プロファイル650を描いたものである。この光線プロファイルにおいては背面反射がファイバ110径の外側に散乱している(そしてファイバ110へは入り込んでいない)点に注目されたい。従前のレシーバレンズを採用した光学システムの一部では背面反射した光の10%程度がファイバへと結合してしまうものであるが、図5Aに示した光学システム100aがファイバ110へと結合してしまう背面反射光は1%程度である。
【0033】
図7は、システム100の、第二の実施の形態(システム100b)における順方向(伝送方向)及び戻り方向(背面反射方向)の両光線経路を示す光線追跡700を描いたものである。この第二の実施の形態100bにおけるシステムの特性は、先の実施の形態100aに関して説明したものと同様であるが;物体側の面155の頂点から像側の面160の頂点までのレンズ135の長さ(厚さ)が0.7mm;像側の面160の直径(絞り径)が0.5mm(物体側の面155と同じ);像側の面160の頂点からフォトデテクタ125までの距離が0.5mm;物体側の面155の頂点からファイバ110のレシーバ端面150までの距離が0.43mm;レンズ135の像側の面160の定数が、d=−0.23、k=−2.66、c=3.33(曲率半径0.3mm);であるという点が異なる。
【0034】
このシステム100bにおいては、像側の面160がより大きな径(絞り径)を持っており、より大量の背面反射光がレンズ135へと入射する。しかしながら、このレンズ135の構成によれば、それでも尚、背面反射光をファイバ110の直径の外側へと散乱させているものである(そしてファイバ110の中へは入れさせていない)。
物体側の面155及び像側の面160を含むレンズ135は、例えばポリエーテルイミド(PEI)等のポリマーを、ダイアモンド旋削処理することにより形成された金型のキャビティ中へと射出することにより成形出来る。好適なポリマーの1つは、General Electric Companyが販売する非晶質熱可塑性PEI樹脂のUltem(登録商標)である。Ultem(登録商標)は、850nm及び1300nm波長において高い透過係数を持っており、光レシーバ、トランスミッタ、及びトランシーバモジュールにおける利用に好適である。Ultem(登録商標)は約215℃の高いガラス転移温度を持ち、製造においてモジュールの高温はんだ処理や他の高温処理が可能である。レンズ135はまた、好適な光学特性を持つ他の材料(他のポリマー又はガラス等)を使って射出成形、研磨又は他の処理により製造することが出来る。
【0035】
図8はコニック要素及び円錐要素により画定される像側の面160を持つ角度をつけた(屈曲部を有する)レンズ800の一例を描いたものである。レンズ135と異なり、レンズ800の物体及び像側の面155、160は相互に対して角度(約90°等)を以て配置されている。レンズ800は更に、物体側の面155にて受けた光を像側の面160へと向けなおす(反射させる)為に、物体側の面155と像側の面160の間に反射面805を含んでいる。光線を屈曲させる点以外は、レンズ800の機能はレンズ135と同様である。
【0036】
一部の例においては、複数のレンズ135又は800を共通の構造体へとモールディングしてレンズアレイを形成することも出来る。例えば、図9に示したレンズ135a、135bのアレイ900を参照されたい。各レンズにより放射された光を受けるように、別々のフォトデテクタを配置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】光通信システムの一例を描いた図である。
【図2】コニック表面の一例を描いた等角図である。
【図3】円錐表面の一例を描いた等角図である。
【図4】コニック形状及び円錐形状を組み合わせた表面の一例を描いた等角図である。
【図5A】図1に示したシステムの、第一の実施の形態に係る順方向光線経路トレースを描いた図である。
【図5B】図5Aに描いたシステムにおけるフォトデテクタ上に入射する環状ビーム形状を描いた図である。
【図6A】図5Aに示したシステムにおける戻り光線経路トレースを描いた図である。
【図6B】図5Aに示した光ファイバのレシーバ端面における背面反射光の環状ビーム形状を描いた図である。
【図7】図1に示したシステムの、第二の実施の形態に係る順方向及び戻り光線経路トレースを描いた図である。
【図8】図1に示したレンズの、コニック及び円錐形状を組み合わせた像側の面を含む角度付きレンズの一例を描いた図である。
【図9】図1に示したレンズのアレイ例を描いた図である。
【符号の説明】
【0038】
110 光ファイバ
115 光レシーバ
125 フォトデテクタ
135 レンズ
155 物体側の面
160 像側の面
165a、165b ハウジング
805 反射面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側の面と像側の面を含むレンズであって、前記像側の面の形状が、コニック要素及び円錐要素を含む式により定義されるものであることを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記像側の面の形状が、
【数1】
により定義されるものであり、ここでzは像側の面の、光軸方向に沿うz座標であり、x及びyは像側の面の像面に沿う横方向の座標であり、kは円錐定数、cはコニック表面の曲率半径の逆数、dは円錐定数であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記物体側の面の形状が凸形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記像側の面の絞り径が、前記物体側の面の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項5】
前記物体側の面で受けた光の向きを変えて前記像側の面へと向ける為に、前記物体側の面と前記像側の面との間に配置された反射面を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項6】
物体側の面及び像側の面を含むレンズであって、前記像側の面の形状が、コニック要素及び円錐要素を含む式により定義される、レンズと、
前記レンズの像側の面から放射される光を受けるように配置されたフォトデテクタと
を具備することを特徴とする光レシーバ。
【請求項7】
ハウジングを更に具備し、前記ハウジングが少なくとも前記レンズを支持するものであり、前記ハウジングが前記フォトデテクタ及び光ファイバを前記レンズに相対的に位置決めする為の形状的特徴を含むことを特徴とする請求項6に記載の光レシーバ。
【請求項8】
特定の光ファイバに対応する前記レンズ、前記光ファイバを介して受光するものとして想定される光、及びハウジングにより前記光ファイバ及びフォトデテクタが前記レンズに対して配置される位置、によって生じる反射減衰を緩和するように前記レンズの表面が最適化されることを特徴とする請求項7に記載の光レシーバ。
【請求項9】
前記レンズの表面が、合成ポリマー材料中にモールディングされたものであることを特徴とする請求項6、7又は8に記載の光レシーバ。
【請求項10】
前記ポリマー材料がポリエーテルイミドを含むものであることを特徴とする請求項9に記載の光レシーバ。
【請求項1】
物体側の面と像側の面を含むレンズであって、前記像側の面の形状が、コニック要素及び円錐要素を含む式により定義されるものであることを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記像側の面の形状が、
【数1】
により定義されるものであり、ここでzは像側の面の、光軸方向に沿うz座標であり、x及びyは像側の面の像面に沿う横方向の座標であり、kは円錐定数、cはコニック表面の曲率半径の逆数、dは円錐定数であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記物体側の面の形状が凸形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記像側の面の絞り径が、前記物体側の面の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項5】
前記物体側の面で受けた光の向きを変えて前記像側の面へと向ける為に、前記物体側の面と前記像側の面との間に配置された反射面を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項6】
物体側の面及び像側の面を含むレンズであって、前記像側の面の形状が、コニック要素及び円錐要素を含む式により定義される、レンズと、
前記レンズの像側の面から放射される光を受けるように配置されたフォトデテクタと
を具備することを特徴とする光レシーバ。
【請求項7】
ハウジングを更に具備し、前記ハウジングが少なくとも前記レンズを支持するものであり、前記ハウジングが前記フォトデテクタ及び光ファイバを前記レンズに相対的に位置決めする為の形状的特徴を含むことを特徴とする請求項6に記載の光レシーバ。
【請求項8】
特定の光ファイバに対応する前記レンズ、前記光ファイバを介して受光するものとして想定される光、及びハウジングにより前記光ファイバ及びフォトデテクタが前記レンズに対して配置される位置、によって生じる反射減衰を緩和するように前記レンズの表面が最適化されることを特徴とする請求項7に記載の光レシーバ。
【請求項9】
前記レンズの表面が、合成ポリマー材料中にモールディングされたものであることを特徴とする請求項6、7又は8に記載の光レシーバ。
【請求項10】
前記ポリマー材料がポリエーテルイミドを含むものであることを特徴とする請求項9に記載の光レシーバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−133774(P2006−133774A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319327(P2005−319327)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
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