説明

レンズの製造方法

【課題】レンズの製造方法において、精度の高いレンズの作製と製造コストの低減とを可能にする。
【解決手段】本発明に係る製造方法は、ランナー50を介して複数のレンズ中間体51が互いに連結された構造物から、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法である。ここで、成型ユニットにおいては、同軸配置された第1開口部31及び第2開口部32と、成型室33とが、保持部3に形成されており、第1開口部31及び第2開口部32にそれぞれ第1成形型1及び第2成形型2が挿入されている。又、保持部3には、成型室33へのレンズ中間体51の導入を可能にする通路35が形成されている。そして、本発明に係る製造方法においては、前記構造物を操作して、レンズ中間体51及びランナー50を通路53に沿って移動させることにより、レンズ中間体51を成型室33内の所定位置Qへ導く。その後、レンズ中間体51に対してプレス圧力を加えて成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの製造方法に関し、特に樹脂製レンズを作製するための成型技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図18は、ガラス製レンズの作製に用いられる従来の成型ユニットを示した断面図である。図18に示す様に、該成型ユニットは、第1金型81と第2金型82とを有している。該第1金型81及び第2金型82はそれぞれ、これらの成型面810,820を互いに対向させた姿勢で、2つの保持部84,85に保持されている。ここで、第1金型81は保持部84に固定される一方、第2金型82は、プレス方向83(図18では下向きの方向)において往復移動することが可能となる様に保持部85に保持されている。従って、第1金型81及び第2金型82は、プレス方向83において相対的に近接離間することが可能である。又、第1金型81及び第2金型82の成型面810,820にはそれぞれ、レンズの光学機能面を形成するための光学機能転写面811,821が形成されている。
【0003】
図19(a)及び図19(b)は、上記成型ユニットを用いたレンズの製造方法を説明するために用いられる断面図である。先ず、図19(a)に示す様に、レンズとなるガラス球体86を、第1金型81の光学機能転写面811上に載置する。次に、ガラス球体86を、その温度が屈伏点より高くなるまで加熱する。その後、図19(b)に示す様に、第2金型82を下方へ移動させて該第2金型82を第1金型81に近接させることにより、該ガラス球体86にプレス圧力を加える。これにより、ガラス球体86の表面には、光学機能面が転写され、その結果、ガラス製レンズが作製されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した様に、上記レンズの作製方法においては、ガラス球体86が屈伏点より高い温度まで加熱される。ここで、ガラスの屈伏点は樹脂等の材料の屈伏点に比べて高い。このため、レンズの製造過程でガラス球体86を加熱したとき、第1金型81及び第2金型82までもが高温に加熱されることになる。このため、第1金型81及び第2金型82は熱の影響を受け易く、該第1金型81及び第2金型82に変形や損傷が生じる虞がある。
【0006】
そこで、屈伏点の低い樹脂を用いてレンズを成型する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、樹脂製レンズとなるレンズ中間体を射出成型により作製し、その後、成型ユニットを用いて該レンズ中間体に対してプレス成型を施し、これによって樹脂製レンズを作製する。ここで、成型ユニットには、図18に示す従来の成型ユニットを用いることが出来る。
【0007】
しかしながら、従来の成型ユニット(図18)においては、第1金型81及び第2金型82をそれぞれ保持する2つの保持部84,85が、個別に作製されていた。このため、第1金型81及び第2金型82の位置や傾きの調整が難しく、精度の高いレンズを作製することが困難であった。
【0008】
一方で、成型ユニットとして、2つの保持部84,85が一体に形成されている成型ユニット(例えば、特許文献1参照)を用いることが出来る。この成型ユニットにおいては、保持部となる一体の部材に対して1つの貫通孔を開設し、この貫通孔に対して第1金型81及び第2金型82を挿入すればよい。従って、該成型ユニットによれば、第1金型81及び第2金型82において、これらの中心軸が互いにずれ難く、又、これらの中心軸に傾きが生じ難くなる。よって、精度の高いレンズを作製することが可能となる。
【0009】
しかしながら、この成型ユニット(例えば、特許文献1参照)では、1回のプレス成型で1つのレンズが作製されるに過ぎない。又、プレス成型の実行後、作製されたレンズを成型ユニットから取り出し、更に次の成型対象となるレンズ中間体を成型ユニットへ投入するためには、第1金型81又は第2金型82を保持部から取り外さなければならない。このため、プレス成型の実行サイクルを短縮化することが難しく、従って製造コストを低減することが困難である。
【0010】
そこで本発明の目的は、レンズの製造方法において、精度の高いレンズの作製と製造コストの低減とを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンズの製造方法は、ランナーを介して複数のレンズ中間体が互いに連結された構造物から、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法であり、準備工程と、導入工程と、加熱工程と、プレス成型工程と、離型工程と、切断工程とを有している。ここで、前記成型ユニットは、複数の第1成形型と、複数の第2成形型と、該第1成形型及び第2成形型を保持する保持部とを備えている。前記保持部には、その複数箇所にそれぞれ、所定の軸に沿って並んで配置されると共に該所定の軸に対して同軸配置された第1開口部及び第2開口部と、該第1開口部と第2開口部との間に存在する成型室とが形成されており、各第1開口部には前記第1成形型が挿入される一方、各第2開口部には前記第2成形型が挿入され、該第1成形型及び第2成形型は、前記所定の軸に沿って相対的に近接離間することが可能である。前記保持部には更に、保持部の外部から各成型室へのレンズ中間体の導入を可能にするべく該レンズ中間体及びランナーを通過させる通路が形成されている。
【0012】
そして、前記準備工程では前記構造物を準備する。前記導入工程では、前記構造物を操作して、該構造物のレンズ中間体及びランナーを前記通路に沿って移動させることにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の所定位置へ導く。前記加熱工程では前記レンズ中間体を加熱する。前記プレス成型工程は、前記導入工程の実行後、前記加熱工程に並行して実行される工程であり、該プレス成型工程では、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に近接させることにより、各レンズ中間体に対してプレス圧力を加え、これによって該レンズ中間体を成型してレンズ成型体を作製する。前記離型工程は、前記プレス成型工程の実行後に行われる工程であり、該離型工程では、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に離間させて、該第1成形型及び第2成形型から各レンズ成型体を離脱させる。前記切断工程は、前記離型工程の実行後に行われる工程であり、該切断工程では、構造物に対して切断加工を施すことにより、各レンズ成型体をランナーから切り離す。
【0013】
上記製造方法にて用いられる成型ユニットにおいては、各第1開口部及びこれに対応する第2開口部が同軸配置されている。従って、各第1開口部及びこれに対応する第2開口部にそれぞれ挿入された第1成形型及び第2成形型において、これらの中心軸が互いにずれ難く、又、これらの中心軸に前記所定の軸からの傾きが生じ難い。特に、第1成形型と第2成形型とによりレンズ中間体の両面に光学機能面を形成した場合、形成された光学機能面の光軸が互いにずれ難く、又、これらの光軸には傾きが生じ難い。よって、上記製造方法によれば、精度の高いレンズを作製することが出来る。
【0014】
更に、上記製造方法においては、成型ユニットの保持部に形成された通路を利用することにより、導入工程では、複数のレンズ中間体をランナーによって互いに連結させた状態のまま、各レンズ中間体を、これに対応する成型室内の所定位置へ導入することが出来、又、離型工程では、複数のレンズ成型体をランナーによって互いに連結させた状態のまま、各レンズ成型体を保持部の外部へ取り出すことが出来る。従って、1回のプレス成型で複数のレンズを作製することが出来る。又、導入工程及び離型工程の何れの工程においても、第1成形型又は第2成形型を保持部から取り外す必要がない。従って、プレス成型の実行サイクルが短縮化されることになる。よって、上記製造方法によれば、製造コストを低減することが出来る。
【0015】
上記製造方法の具体的態様にて用いられる成型ユニットは、前記保持部において、該保持部の中心軸周りの複数箇所に、第1開口部及び第2開口部の配置の基準となる前記所定の軸が前記中心軸に対して略平行に設定されると共に、前記保持部の同一端面に第2開口部が開口している。又、前記通路が、第1通路部と、第2通路部と、第3通路部とから構成されている。ここで、前記第1通路部は、前記中心軸に沿って前記端面から前記成型室と略同一の深さ位置まで延びている。前記第2通路部は、前記中心軸周りにて互いに隣接する2つの第2開口部の間の位置を、前記端面から前記成型室と略同一の深さ位置まで延びると共に、前記第1通路部に通じている。前記第3通路部は、前記第2通路部から前記中心軸周りに前記成型室まで延びると共に、前記第1通路部に通じている。
【0016】
そして、上記具体的態様においては、前記準備工程にて準備される構造物において、前記ランナーは、複数の第1ランナー部と、該構造物を操作するための第2ランナー部とから構成され、該複数の第1ランナー部は第2ランナー部から放射状に延び、各第1ランナー部の先端に前記レンズ中間体が形成されている。又、前記導入工程は、前記構造物の第2ランナー部を操作することにより実行される工程であって、第1工程と第2工程とを含んでいる。前記第1工程では、保持部の前記端面側から該保持部の中心軸に沿って第2ランナー部を移動させることにより、該第2ランナー部を前記第1通路部に挿入すると共に、レンズ中間体及び第1ランナー部をそれぞれ前記第2通路部に挿入し、その後、第2ランナー部を、レンズ中間体が前記第3通路部に到達する深さ位置まで、前記中心軸に沿って更に移動させる。前記第2工程は、前記第1工程の実行後に行われる工程であり、該第2工程では、前記中心軸周りに第2ランナー部を回転させることにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ、前記第3通路部を通過させて移動させる。
【0017】
本発明に係る他の製造方法は、ランナーを介して複数のレンズ中間体が互いに連結された構造物から、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法であり、準備工程と、導入工程と、加熱工程と、プレス成型工程と、離型工程と、切断工程とを有している。ここで、前記成型ユニットは、複数の第1成形型と、複数の第2成形型と、該第1成形型及び第2成形型を保持する保持部とを備えている。前記保持部には、その複数箇所にそれぞれ、所定の軸に沿って並んで配置されると共に該所定の軸に対して同軸配置された第1開口部及び第2開口部と、該第1開口部と第2開口部との間に存在する成型室とが形成される一方、前記保持部は、複数の構成体を互いに分離可能に接合して構成され、各構成体の接合面には、該構成体に属する成型室へのレンズ中間体の導入を可能にするべく該レンズ中間体及びランナーを通過させる通路が開口している。各第1開口部には前記第1成形型が挿入される一方、各第2開口部には前記第2成形型が挿入され、該第1成形型及び第2成形型は、前記所定の軸に沿って相対的に近接離間することが可能である。
【0018】
そして、前記準備工程では前記構造物を準備する。前記導入工程では、前記保持部を構成する複数の構成体を分離させた状態から組み立てつつ、前記通路を利用して、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の所定位置へ導く。前記加熱工程では前記レンズ中間体を加熱する。前記プレス成型工程は、前記導入工程の実行後、前記加熱工程に並行して実行される工程であり、該プレス成型工程では、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に近接させることにより、各レンズ中間体に対してプレス圧力を加え、これによって該レンズ中間体を成型してレンズ成型体を作製する。前記離型工程は、前記プレス成型工程の実行後に行われる工程であり、該離型工程では、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に離間させて、該第1成形型及び第2成形型から各レンズ成型体を離脱させる。前記切断工程は、前記離型工程の実行後に行われる工程であり、該切断工程では、構造物に対して切断加工を施すことにより、各レンズ成型体をランナーから切り離す。
【0019】
上記他の製造方法にて用いられる成型ユニットにおいては、各第1開口部及びこれに対応する第2開口部が同軸配置されている。従って、各第1開口部及びこれに対応する第2開口部にそれぞれ挿入された第1成形型及び第2成形型において、これらの中心軸が互いにずれ難く、又、これらの中心軸に前記所定の軸からの傾きが生じ難い。特に、第1成形型と第2成形型とによりレンズ中間体の両面に光学機能面を形成した場合、形成された光学機能面の光軸が互いにずれ難く、又、これらの光軸には傾きが生じ難い。よって、上記他の製造方法によれば、精度の高いレンズを作製することが出来る。
【0020】
更に、上記他の製造方法においては、成型ユニットの保持部を構成する各構成体に形成された通路を利用することにより、導入工程では、複数のレンズ中間体をランナーによって互いに連結させた状態のまま、各レンズ中間体を、これに対応する成型室内の所定位置へ導入することが出来、又、離型工程では、複数のレンズ成型体をランナーによって互いに連結させた状態のまま、各レンズ成型体を保持部の外部へ取り出すことが出来る。従って、1回のプレス成型で複数のレンズを作製することが出来る。又、導入工程及び離型工程の何れの工程においても、第1成形型又は第2成形型を保持部から取り外す必要がない。従って、プレス成型の実行サイクルが短縮化されることになる。よって、上記他の製造方法によれば、製造コストを低減することが出来る。
【0021】
上記製造方法の他の具体的態様にて用いられる成型ユニットにおいて、各成型室内には、これに対応する前記所定の軸に沿って移動可能な可動体が設けられており、該可動体は、該成型室内の前記所定位置へのレンズ中間体の導入が可能となる第1位置と、レンズ中間体が前記所定の軸に沿って前記所定位置から僅かにずれることとなる第2位置との間で往復移動することが可能である。
【0022】
そして、上記他の具体的態様においては、前記導入工程において、前記第1位置に可動体を設定した状態で前記構造物を操作することにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ導く。又、前記離型工程において、前記第2位置へ可動体を移動させて前記レンズ成型体を前記所定位置からずらすことにより、前記第1成形型又は第2成形型から各レンズ成型体を離脱させる。
【0023】
上記他の具体的態様によれば、第1成形型又は第2成形型からのレンズ成型体の離型が容易となり、その結果、精度の高いレンズの作製が容易となる。又、レンズ1つあたりの製造サイクルがより短縮化され、その結果、製造コストがより低減されることになる。
【0024】
上記製造方法の更なる他の具体的態様において、前記準備工程にて準備される構造物のランナーには係合部が突設されている。一方、該具体的態様にて用いられる成型ユニットにおいて、前記可動体には、前記係合部が係合する係合受け部が凹設されており、該係合受け部は、これに係合部が係合したときに各レンズ中間体が前記所定位置に略一致することとなる様に配置されている。そして、該具体的構成においては、前記導入工程において、前記構造物を操作して前記係合部をこれに対応する係合受け部に係合させることにより、前記複数のレンズ中間体がそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ導かれる。
【0025】
上記更なる他の具体的構成によれば、各レンズ中間体が、これに対応する成型室内の所定位置に一致し易く、又、該所定位置からずれ難くなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るレンズの製造方法によれば、精度の高いレンズの作製と製造コストの低減とが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るレンズの製造方法の内、準備工程にて準備される構造物を示した斜視図である。
【図2】該製造方法にて用いられる成型ユニットを示した斜視図である。
【図3】該成型ユニットの上面図である。
【図4】図3に示されるA−A線に沿う断面図である。
【図5】図4に示されるC領域の拡大図である。
【図6】図3に示されるB−B線の断面図である。
【図7】図4に示されるD−D線に沿う断面図である。
【図8】上記製造方法の内、導入工程の第1工程の説明に用いられる斜視図である。
【図9】該第1工程の説明に用いられる上面図である。
【図10】図9に示されるE−E線に沿う断面図である。
【図11】上記製造方法の内、導入工程の第2工程の説明に用いられる上面図である。
【図12】図11に示されるF−F線に沿う断面図である。
【図13】図12に示されるG領域の拡大図である。
【図14】上記製造方法の内、プレス成型工程の説明に用いられる拡大断面図である。
【図15】上記製造方法の内、離型工程の説明に用いられる拡大断面図である。
【図16】上記製造方法の変形例にて用いられる成型ユニットを示した上面図である。
【図17】該変形例に係る製造方法の内、導入工程の説明に用いられる上面図である。
【図18】レンズの作製に用いられる従来の成型ユニットを示した断面図である。
【図19】該従来の成型ユニットを用いたレンズの製造方法を説明するために用いられる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法である。以下、本発明を、光学機能面である2つの凸面を有した樹脂製レンズの作製に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0029】
本実施形態に係る製造方法では、準備工程、導入工程、加熱工程、プレス成型工程、離型工程、及び切断工程が実行される。
図1は、準備工程にて準備される構造物5を示した斜視図である。図1に示す様に、該構造物5は、ランナー50と、該ランナー50を介して互いに連結された8つのレンズ中間体51〜51とを有している。ここで、構造物5は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を用いて射出成型により作製されたものである。又、ランナー50は、8つの第1ランナー部501〜501と、構造物5を操作するための第2ランナー部502とから構成されている。
【0030】
各レンズ中間体51は、本実施形態の製造方法の実行により樹脂レンズとなるものであり、該レンズ中間体51の下面と上面にはそれぞれ、樹脂レンズの光学機能面(凸面)となる表面を有した隆起部511,512(図1及び図13参照)が形成されている。第1ランナー部501〜501はそれぞれ、第2ランナー部502の下端部502aの8箇所から放射状に延びており、又、第2ランナー部502の周りに45°の等角度で配置されている。そして、各第1ランナー部501の先端に、レンズ中間体51が形成されている。これにより、8つレンズ中間体51〜51は、第1ランナー部501〜501を介して第2ランナー部502に連結されている。又、図1に示す様に、各第1ランナー部501には、その先端近傍の位置に係合部53が下向きに突設されている。
【0031】
ここで、次の導入工程の説明を行う前に、本実施形態に係る製造方法にて用いられる成型ユニットについて、図2〜図7を用いて説明する。尚、図2は、該成型ユニットを示した斜視図である。図3は、該成型ユニットの上面図である。図4は、図3に示されるA−A線に沿う断面図であり、図5は、図4に示されるC領域の拡大図である。図6は、図3に示されるB−B線の断面図である。図7は、図4に示されるD−D線に沿う断面図である。
【0032】
図2〜図7に示す様に、成型ユニットは、8つの第1成形型1〜1(図4及び図7参照)と、8つの第2成形型2〜2と、該第1成形型1〜1及び第2成形型2〜2を保持する保持部3とを備えている。保持部3には、該保持部3の中心軸301周りの8箇所にそれぞれ、第1開口部31〜31(図4及び図7参照)、第2開口部32〜32、及び成型室33〜33(図4参照)が形成されている。そして、図4及び図5に示す様に、各第1開口部31の上方に、該第1開口部31に対応させて第2開口部32が形成されており、該第1開口部31と第2開口部32との間に成型室33が設けられている。
【0033】
ここで、図2に示す様に、保持部3において、該保持部3の中心軸301周りの8箇所に、該中心軸301に対して略平行に延びた所定の軸302〜302が設定されている。具体的には、所定の軸302〜302はそれぞれ、保持部3の中心軸301から同じ距離だけ離れており、又、該中心軸301周りに等間隔で配置されている。そして、図4及び図5に示す様に、各所定の軸302に沿って第1開口部31及びこれに対応する第2開口部32が並んで配置されると共に、該第1開口部31及び第2開口部32は、所定の軸302に対して同軸配置されている。従って、各所定の軸302は、第1開口部31及び第2開口部32の配置の基準となっている。尚、各第1開口部31及びこれに対応する第2開口部32は、保持部3に対して同軸加工を施すことにより形成されたものである。
【0034】
8つの第1開口部31〜31は何れも、図5に示す様に保持部3の下端面3aに開口している。又、各第1開口部31内の空間は、該第1開口部31に対応する成型室33に通じている。そして、各第1開口部31において、所定の軸302に直交する断面の形状は円形である(図7参照)。
【0035】
一方、8つの第2開口部32〜32は何れも、図5に示す様に保持部3の上端面3bに開口している。又、各第2開口部32内の空間は、該第2開口部32に対応する成型室33に通じている。そして、各第2開口部32において、所定の軸302に直交する断面の形状は円形である(図3参照)。ここで、各第2開口部32の内面には段差が形成されており、これにより、第2開口部32の下端部の内径が、該第2開口部32の上部の内径より小さくなっている。
【0036】
又、図5及び図7に示す様に、各成型室33内には、これに対応する所定の軸302に沿って移動可能な可動体4が設けられている。ここで、該可動体4には、その上面4aから下面4bまで所定の軸302に沿って貫通した貫通孔41が開設されている。更に、可動体4の上面4aには、構造物5の係合部53が係合することとなる係合受け部42が凹設されている。そして、該係合受け部42に係合部53が係合したときに、該係合部53を有する第1ランナー部501の先端に形成されているレンズ中間体51が、成型室33内の所定位置Q(図11及び図12参照)に略一致することとなる様に、係合受け部42は配置されている。ここで、所定位置Qは、後述するプレス成型工程においてレンズ中間体51に対してプレス成型が実行される位置である。具体的には、所定位置Qは、図13に示す如く第1成形型1の成型面120上にレンズ中間体51が設置されることとなる位置である。
【0037】
図5に示す様に、各第1成形型1は、第1開口部31の断面形状よりも僅かに小さい断面形状を有する第1円柱体11と、該第1円柱体11の上端面に突設された第2円柱体12とから構成されている。ここで、第2円柱体12は、第1円柱体11の中心軸に対して同軸配置されている。又、第2円柱体12の半径は、第1円柱体11の半径よりも小さくなっている。そして、第2円柱体12の上端面には成型面120が形成されており、該成型面120には、レンズの光学機能面(凸面)を形成するための光学機能転写面121が形成されている。
【0038】
一方、各第2成形型2は、第2開口部32の断面形状よりも僅かに小さい断面形状を有する第1円柱体21と、該第1円柱体21の下端面に突設された第2円柱体22と、第1円柱体21の上端部側面に突設された鍔部23とから構成されている。ここで、第2円柱体22は、第1円柱体21の中心軸に対して同軸配置されている。又、第2円柱体22の半径は、第1円柱体21の半径よりも小さくなっている。そして、第2円柱体22の下端面には成型面220が形成されており、該成型面220には、レンズの光学機能面(凸面)を形成するための光学機能転写面221が形成されている。
【0039】
尚、本実施形態においては、第1成形型1〜1及び第2成形型2〜2として金属製の金型が用いられている。勿論、第1成形型1〜1及び第2成形型2〜2には、金属に限らない種々の材料から形成された成形型を用いることが出来る。
【0040】
図5に示す様に、各第1開口部31には、第1成形型1がその第2円柱体12を上方へ向けた姿勢で挿入される一方、各第2開口部32には、第2成形型2がその第2円柱体22を下方へ向けた姿勢で挿入されている。従って、各第1成形型1の上方に、該第1成形型1に対応させて第2成形型2が配置されている。
【0041】
ここで、第1成形型1の第1円柱体11は第1開口部31に嵌合されており、これにより第1成形型1は、第1開口部31内に固定されている。又、第1成形型1の第2円柱体12は、可動体4に開設された貫通孔41に、該第2円柱体12が貫通孔41の内面に沿って相対的に摺動自在となる様に挿入されている。従って、可動体4は、成型室33内にて、所定の軸302に沿って往復移動することが可能である。
【0042】
一方、第2成形型2は、第2開口部32に、該第2成形型2が第2開口部32の内面に沿って摺動自在となる様に挿入されている。具体的には、第2開口部32の内、内径の大きい上部に第2成形型2の第1円柱体21が摺動自在に挿入され、内径の小さい下端部に第2成形型2の第2円柱体22が摺動自在に挿入されている。従って、第2成形型2は、これに対応する所定の軸302に沿って往復移動することが可能である。よって、第1成形型1及びこれに対応する第2成形型2は、所定の軸302に沿って相対的に近接離間することが可能である。
【0043】
図2に示す様に、保持部3には更に、保持部3の外部から各成型室33(図5参照)へのレンズ中間体51の導入を可能にする通路35が形成されている。ここで、該通路35は、構造物5のレンズ中間体51〜51及びランナー50を、該ランナー50の各第1ランナー部501にレンズ中間体51を連結させた状態のまま通過させる通路である。
【0044】
具体的には、図3及び図6に示す様に、通路35は、第1通路部351と、第2通路部352と、第3通路部353とから構成されている。ここで、第1通路部351は、保持部3の中心軸301に沿って該保持部3の上端面3bから成型室33(図5参照)と略同一の深さ位置Pまで延びている。第2通路部352は、保持部3において、該保持部3の中心軸301周りの8箇所に形成されている。そして、各第2通路部352は、保持部3の中心軸301周りにて互いに隣接する2つ第2開口部32,32の間の位置を、保持部3の上端面3bから成型室33(図5参照)と略同一の深さ位置Pまで延びている。又、第1通路部351の内面351aには、該第1通路部351の延在方向についての全域に亘って各第2通路部352が開口しており、これにより、該第2通路部352は第1通路部351に通じている。
【0045】
第3通路部353は、8つの成型室33〜33(図5参照)を通過することとなる様に、成型室33と略同一の深さ位置Pにて、該保持部3の中心軸301周りに環状に延びている。従って、各第2通路部352は、第3通路部353を介して、保持部3の中心軸301周りに成型室33へ通じている。又、第1通路部351の内面351aには、保持部3の中心軸301周りの全周に亘って第3通路部353が開口しており、これにより、該第3通路部353は第1通路部351に通じている。
【0046】
次に、導入工程について説明する。導入工程には、第1工程と第2工程とが含まれており、該導入工程では、第1工程と第2工程とがこの順に実行される。
図8及び図9はそれぞれ、導入工程の第1工程の説明に用いられる斜視図及び上面図である。又、図10は、図9に示されるE−E線に沿う断面図である。ここで、導入工程は、構造物5の第2ランナー部502を操作して、該構造物5のレンズ中間体51〜51及びランナー50を、保持部3に形成された通路35に沿って移動させることにより、各レンズ中間体51を、これに対応する成型室33内の所定位置Q(図11及び図12参照)へ導く工程である。又、導入工程においては、可動体4の上面4aの位置を、各成型室33内の所定位置Qへのレンズ中間体51の導入が可能となる第1位置R1(図10参照)に設定しておく。
【0047】
図8に示す様に、導入工程の第1工程では先ず、構造物5の第2ランナー部502を操作することにより、保持部3の上端面3b側の位置に構造物5を配置する。このとき、第2ランナー部502の下端部502aを保持部3の上端面3bの方へ向けると共に、該第2ランナー部502を保持部3の中心軸301に沿って配置する。又、8つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ第2通路部352〜352に対向させる。
【0048】
次に、第2ランナー部502を保持部3の中心軸301に沿って下方へ移動させることにより、該第2ランナー部502を第1通路部351に挿入すると共に、8つのレンズ中間体51〜51及び8つの第1ランナー部501〜501をそれぞれ第2通路部352〜352に挿入する。その後、図10に示す様に、第2ランナー部502を、レンズ中間体51〜51が第3通路部353に到達する深さ位置Pまで、保持部3の中心軸301に沿って更に下方へ移動させる。これにより、構造物5の各係合部53は可動体4の上面4aに当接し、その結果、該係合部53を有する第1ランナー部501の先端に形成されているレンズ中間体51は、可動体4の上面4aから上方へ僅かに離間して配置されることになる。
【0049】
図11は、導入工程の第2工程の説明に用いられる上面図である。又、図12は、図11に示されるF−F線に沿う断面図であり、図13は、図12に示されるG領域の拡大図である。図11に示す様に、導入工程の第2工程では、保持部3の中心軸301周りに第2ランナー部502を所定の角度θだけ回転させることにより、8つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ、これらに対応する成型室33〜33内の所定位置Q〜Qへ、第3通路部353(図10参照)を通過させて移動させる。
【0050】
ここで、上述した様に、各レンズ中間体51は、可動体4の上面4aから上方へ僅かに離間して配置されている。よって、第2ランナー部502の回転時において、レンズ中間体51は可動体4の上面4aに接触することがなく、従って、レンズ中間体51は損傷することがない。そして、第2ランナー部502の回転により、図13に示す様に、各係合部53が、これに対応する係合受け部42に係合し、その結果、各第1成形型1の成型面120上にレンズ中間体51が設置される。これによって、8つのレンズ中間体51〜51はそれぞれ、これらに対応する所定位置Q〜Qに導かれることになる。
【0051】
上記導入工程の実行後、加熱工程において、第1成形型1及び/又は第2成形型2の温度を上昇させることにより、該第1成形型1及び/又は第2成形型2を介して8つのレンズ中間体51〜51を加熱する。これによって、各レンズ中間体51の温度を、外力によって該レンズ中間体51が変形し易くなる所定温度、即ち屈伏点より高い所定温度まで上昇させる。これにより、各レンズ中間体51内の残留応力が緩和され、その結果、該レンズ中間体51に存在していた多くの光学歪みが消滅することになる。
【0052】
図14は、プレス成型工程の説明に用いられる拡大断面図である。図14に示す様に、プレス成型工程では、8つの第2成形型2〜2をそれぞれ、これらに対応する所定の軸302〜302に沿って下方へ移動させる。そして、各第1成形型1及びこれに対応する第2成形型2を所定の軸302に沿って相対的に近接させることにより、各レンズ中間体51に対してプレス圧力を加え、これによって該レンズ中間体51を成型してレンズ成型体54を作製する。ここで、プレス成型工程は、上記加熱工程に並行して実行される。
【0053】
上記プレス成型工程の実行により、各レンズ中間体51の下面に形成されている隆起部511の表面には、第1成形型1の光学機能転写面121の形状が転写される一方、該レンズ中間体51の上面に形成されている隆起部512の表面には、第2成形型2の光学機能転写面221の形状が転写される。その結果、各レンズ中間体51の上面と下面にそれぞれ光学機能面(凸面)が形成され、これにより、該レンズ中間体51からレンズ成型体54が作製されることになる。
【0054】
図15は、離型工程の説明に用いられる拡大断面図である。該離型工程は、プレス成型工程の実行後に行われる。図15に示す様に、離型工程では先ず、8つの第2成形型2〜2をそれぞれ、これらに対応する所定の軸302〜302に沿って上方へ移動させることにより、各第1成形型1及びをこれに対応する第2成形型2を所定の軸302に沿って相対的に離間させる。これにより、各レンズ成型体54が第2成形型2から離脱することになる。
【0055】
次に、図15に示す様に、可動体4に対して下方から上方へ向けて押圧力を加えることにより、可動体4の上面4aの位置を、各レンズ成型体54が所定の軸302に沿って成型室33内の所定位置Qから上方へ僅かにずれることとなる第2位置R2へ移動させる。これにより、各レンズ成型体54は、所定の軸302に沿って成型室33内の所定位置Qから上方へ僅かにずれ、その結果、各レンズ成型体54が第1成形型1から離脱することになる。
【0056】
その後、8つのレンズ成型体54〜54を保持部3の外部へ取り出す。このとき、導入工程とは逆の過程を経ることにより、8つのレンズ成型体54〜54を、これらが第1ランナー部501〜501に連結された状態のまま取り出すことが出来る。
【0057】
離型工程の実行後、切断工程において構造物5に対して切断加工を施すことにより、各レンズ成型体54を第1ランナー部501から切り離す。これにより、各レンズ成型体54から樹脂製レンズが作製されることになる。
【0058】
上記製造方法にて用いられる成型ユニットにおいては、各第1開口部31及びこれに対応する第2開口部32が同軸配置されている。従って、各第1開口部31及びこれに対応する第2開口部32にそれぞれ挿入された第1成形型1及び第2成形型2において、これらの中心軸が互いにずれ難く、又、これらの中心軸に所定の軸302からの傾きが生じ難い。特に、本実施形態の如く第1成形型1と第2成形型2とにより各レンズ中間体51の両面に光学機能面を形成した場合、形成された光学機能面の光軸が互いにずれ難く、又、これらの光軸には傾きが生じ難い。よって、上記製造方法によれば、精度の高い樹脂製レンズを作製することが出来る。
【0059】
又、上記製造方法においては、成型ユニットの保持部3に形成された通路35を利用することにより、導入工程では、8つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ第1ランナー部501〜501に連結させた状態のまま、各レンズ中間体51を、これに対応する成型室33内の所定位置Qへ導入することが出来、又、離型工程では、8つのレンズ成型体54〜54をそれぞれ第1ランナー部501〜501に連結させた状態のまま、各レンズ成型体54を保持部3の外部へ取り出すことが出来る。従って、1回のプレス成型で複数の樹脂製レンズを作製することが出来る。又、導入工程及び離型工程の何れの工程においても、第1成形型1〜1又は第2成形型2〜2を保持部3から取り外す必要がない。従って、プレス成型の実行サイクルが短縮化されることになる。よって、上記製造方法によれば、製造コストを低減することが出来る。
【0060】
更に、上記製造方法においては、可動体4を用いて各レンズ成型体54を第1成形型1から離脱させている。従って、上記製造方法によれば、各第1成形型1からのレンズ成型体54の離型が容易である。又、上記製造方法においては、各係合部53をこれに対応する係合受け部42に係合させることにより、8つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ、これらに対応する所定位置Q〜Qへ導いている。従って、上記製造方法によれば、各レンズ中間体51は、これに対応する所定位置Qに一致し易く、又、該所定位置Qからずれ難い。よって、上記製造方法によれば、精度の高いレンズの作製が容易となる。
【0061】
更に又、可動体4を用いて各レンズ成型体54を第1成形型1から離脱させることにより、レンズ1つあたりの製造サイクルがより短縮化され、その結果、製造コストがより低減されることになる。
【0062】
図16は、上記製造方法の変形例にて用いられる成型ユニットを示した上面図である。図16に示す様に、該成型ユニットは、上述した成型ユニット(図2〜図7)において、2つの構成体36,36を互いに分離可能に接合することによって保持部3が構成されるものである。ここで、本変形例にて用いられる成型ユニットにおいては、保持部3に第2通路部352が形成されておらず、その一方で保持部3には、上述した成型ユニット(図2〜図7)の第1通路部351及び第3通路部353と同じ形状を有した空洞37が形成されている。そして、2つの構成体36,36にはそれぞれ、該構成体36,36が互いに接合されたときに空洞37を構成する空間371,371が形成されており、各空間371は、構成体36の接合面に開口している。そして、本変形例においては、各構成体36に形成されている空間371が、該構成体36に属する成型室33へのレンズ中間体51の導入を可能にする通路として用いられる。具体的には、空間371は、構造物5のレンズ中間体51〜51及びランナー50を、各第1ランナー部501にレンズ中間体51を連結させた状態のまま通過させる通路である。
【0063】
図17は、本変形例に係る製造方法の内、導入工程の説明に用いられる上面図である。尚、導入工程以外の工程については上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。図17に示す様に、本変形例の導入工程では先ず、保持部3を2つの構成体36,36に分離し、この状態で構造物5の第2ランナー部502を操作することにより、一方の構成体36の空間371内へ、4つのレンズ中間体51〜51及びこれらが連結されている4つの第1ランナー部501〜501を挿入する。そして、該空間371を通路として利用することにより、4つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ、これらに対応する成型室33〜33内の所定位置Q〜Qへ導く。
【0064】
その後、上記一方の構成体36に対して他方の構成体36を接合することにより、2つの構成体36,36を組み立てる。このとき、他方の構成体36の空間371内へ、残りの4つのレンズ中間体51〜51及びこれらが連結されている4つの第1ランナー部501〜501を挿入する。そして、該空間371を通路として利用することにより、4つのレンズ中間体51〜51をそれぞれ、これらに対応する成型室33〜33内の所定位置Q〜Qへ導く。これにより、8つのレンズ中間体51〜51がそれぞれ、これらに対応する所定位置Q〜Qに設置されることになる。
【0065】
本変形例に係る製造方法においても、上記実施形態に係る製造方法と同様、精度の高い樹脂製レンズの作製と製造コストの低減とが可能になる。尚、本変形例に用いられる成型ユニットにおいて、保持部3は、3つ以上の複数の構成体36〜36を互いに接合することにより構成されたものであってもよい。
【0066】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、構造物5の形状には、上記実施形態の形状に限らない種々の形状を採用することが出来る。例えば、第2ランナー部502に連結されるレンズ中間体51の個数は、8つに限らない複数であってもよい。又、第1ランナー部501〜501は、第2ランナー部502の周りに等角度で配置されていなくてもよい。そして、構造物5の形状に応じて、成型ユニットを種々の形状に変形することが出来る。
【0067】
上記実施形態においては、図1に示す様に、構造物5の各第1ランナー部501は、第2ランナー部502の下端部502aから水平方向へ延びている。そして、該構造物5の形状に応じて、各第2通路部352の底面(上記実施形態では可動体4の上面4a)は、図10に示す様に、保持部3の中心軸301に対して略垂直な方向へ拡がっている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、構造物5の各第1ランナー部501は、第2ランナー部502の下端部502aから斜め下方或いは斜め上方へ向けて延びていてもよい。そして、該構造物5の形状に応じて、各第2通路部352の底面が、保持部3の中心軸301から離れるに従って下端面3a或いは上端面3bへ近づく斜面になっていてもよい。但し、各第2通路部352の底面が保持部3の中心軸301に対して略垂直な方向へ拡がっている態様の方が、他の態様よりも、成型ユニットの製造コストが低いので好ましい。
【0068】
又、上記成型ユニットにおいて、通路35は、次の様な形状を有していてもよい。例えば、各第2通路部352が、保持部3の上端面3bから、成型室33と略同一の深さ位置Pよりも浅い位置までしか延びておらず、その一方で、第3通路部353が、第2通路部352の下端部から成型室33まで、保持部3の中心軸301周りに斜め下方へ延びていてもよい。或いは、第1通路部351及び各第2通路部352が、保持部3の上端面3bから、成型室33と略同一の深さ位置Pよりも深い位置まで延びており、第3通路部353が、第2通路部352の下端部から成型室33まで、保持部3の中心軸301周りに斜め上方へ延びていてもよい。
【0069】
更に、上記成型ユニットは、第1成形型1〜1及び第2成形型2〜2が何れもこれらに対応する所定の軸302〜302に沿って移動可能であって、その結果として、各第1成形型1及びこれに対応する第2成形型2が、所定の軸302に沿って相対的に近接離間するものであってもよい。
【0070】
更に又、上記製造方法において、センサによって各レンズ中間体51の位置を検出又は検知することにより、該レンズ中間体51を、これに対応する所定位置Qに一致させてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 第1成形型
2 第2成形型
3 保持部
3a 下端面
3b 上端面
301 中心軸
302 所定の軸
31 第1開口部
32 第2開口部
33 成型室
35 通路
351 第1通路部
352 第2通路部
353 第3通路部
36 構成体
37 空洞
371 空間
4 可動体
4a 上面
4b 下面
42 係合受け部
5 構造物
50 ランナー
501 第1ランナー部
502 第2ランナー部
51 レンズ中間体
53 係合部
54 レンズ成型体
P 深さ位置
Q 所定位置
R1 第1位置
R2 第2位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナーを介して複数のレンズ中間体が互いに連結された構造物から、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法において、前記成型ユニットは、複数の第1成形型と、複数の第2成形型と、該第1成形型及び第2成形型を保持する保持部とを備え、
前記保持部には、その複数箇所にそれぞれ、所定の軸に沿って並んで配置されると共に該所定の軸に対して同軸配置された第1開口部及び第2開口部と、該第1開口部と第2開口部との間に存在する成型室とが形成されており、各第1開口部には前記第1成形型が挿入される一方、各第2開口部には前記第2成形型が挿入され、該第1成形型及び第2成形型は、前記所定の軸に沿って相対的に近接離間することが可能であり、
前記保持部には更に、保持部の外部から各成型室へのレンズ中間体の導入を可能にするべく該レンズ中間体及びランナーを通過させる通路が形成されている、
レンズの製造方法であって、
前記構造物を準備する準備工程と、
前記構造物を操作して、該構造物のレンズ中間体及びランナーを前記通路に沿って移動させることにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の所定位置へ導く導入工程と、
前記レンズ中間体を加熱する加熱工程と、
前記導入工程の実行後、前記加熱工程に並行して実行される工程であって、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に近接させることにより、各レンズ中間体に対してプレス圧力を加え、これによって該レンズ中間体を成型してレンズ成型体を作製するプレス成型工程と、
前記プレス成型工程の実行後、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に離間させて、該第1成形型及び第2成形型から各レンズ成型体を離脱させる離型工程と、
前記離型工程の実行後、構造物に対して切断加工を施すことにより、各レンズ成型体をランナーから切り離す切断工程と
を有する、レンズの製造方法。
【請求項2】
前記保持部において、該保持部の中心軸周りの複数箇所に、第1開口部及び第2開口部の配置の基準となる前記所定の軸が前記中心軸に対して略平行に設定されると共に、前記保持部の同一端面に第2開口部が開口しており、
前記通路が、
前記中心軸に沿って前記端面から前記成型室と略同一の深さ位置まで延びた第1通路部と、
前記中心軸周りにて互いに隣接する2つの第2開口部の間の位置を、前記端面から前記成型室と略同一の深さ位置まで延びると共に、前記第1通路部に通じた第2通路部と、
前記第2通路部から前記中心軸周りに前記成型室まで延びると共に、前記第1通路部に通じた第3通路部と
から構成されている、請求項1に記載のレンズの製造方法であって、
前記準備工程にて準備される構造物において、前記ランナーは、複数の第1ランナー部と、該構造物を操作するための第2ランナー部とから構成され、該複数の第1ランナー部は第2ランナー部から放射状に延び、各第1ランナー部の先端に前記レンズ中間体が形成されており、
前記導入工程は、前記構造物の第2ランナー部を操作することにより実行される工程であって、
保持部の前記端面側から該保持部の中心軸に沿って第2ランナー部を移動させることにより、該第2ランナー部を前記第1通路部に挿入すると共に、レンズ中間体及び第1ランナー部をそれぞれ前記第2通路部に挿入し、その後、第2ランナー部を、レンズ中間体が前記第3通路部に到達する深さ位置まで、前記中心軸に沿って更に移動させる第1工程と、
前記第1工程の実行後、前記中心軸周りに第2ランナー部を回転させることにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ、前記第3通路部を通過させて移動させる第2工程と
を含んでいる、
レンズの製造方法。
【請求項3】
ランナーを介して複数のレンズ中間体が互いに連結された構造物から、成型ユニットを用いてレンズを製造する方法において、前記成型ユニットは、複数の第1成形型と、複数の第2成形型と、該第1成形型及び第2成形型を保持する保持部とを備え、
前記保持部には、その複数箇所にそれぞれ、所定の軸に沿って並んで配置されると共に該所定の軸に対して同軸配置された第1開口部及び第2開口部と、該第1開口部と第2開口部との間に存在する成型室とが形成される一方、前記保持部は、複数の構成体を互いに分離可能に接合して構成され、各構成体の接合面には、該構成体に属する成型室へのレンズ中間体の導入を可能にするべく該レンズ中間体及びランナーを通過させる通路が開口しており、
各第1開口部には前記第1成形型が挿入される一方、各第2開口部には前記第2成形型が挿入され、該第1成形型及び第2成形型は、前記所定の軸に沿って相対的に近接離間することが可能である、
レンズの製造方法であって、
前記構造物を準備する準備工程と、
前記保持部を構成する複数の構成体を分離させた状態から組み立てつつ、前記通路を利用して、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の所定位置へ導く導入工程と、
前記レンズ中間体を加熱する加熱工程と、
前記導入工程の実行後、前記加熱工程に並行して実行される工程であって、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に近接させることにより、各レンズ中間体に対してプレス圧力を加え、これによって該レンズ中間体を成型してレンズ成型体を作製するプレス成型工程と、
前記プレス成型工程の実行後、前記第1成形型及び第2成形型を前記所定の軸に沿って相対的に離間させて、該第1成形型及び第2成形型からレンズ成型体を離脱させる離型工程と、
前記離型工程の実行後、構造物に対して切断加工を施すことにより、各レンズ成型体をランナーから切り離す切断工程と
を有する、レンズの製造方法。
【請求項4】
各成型室内には、これに対応する前記所定の軸に沿って移動可能な可動体が設けられており、該可動体は、該成型室内の前記所定位置へのレンズ中間体の導入が可能となる第1位置と、レンズ中間体が前記所定の軸に沿って前記所定位置から僅かにずれることとなる第2位置との間で往復移動することが可能である、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のレンズの製造方法であって、
前記導入工程では、前記第1位置に可動体を設定した状態で前記構造物を操作することにより、前記複数のレンズ中間体をそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ導き、
前記離型工程では、前記第2位置へ可動体を移動させて前記レンズ成型体を前記所定位置からずらすことにより、前記第1成形型又は第2成形型から各レンズ成型体を離脱させる、
レンズの製造方法。
【請求項5】
前記準備工程にて準備される構造物のランナーには係合部が突設される一方、前記可動体には、前記係合部が係合する係合受け部が凹設されており、該係合受け部は、これに係合部が係合したときに各レンズ中間体が前記所定位置に略一致することとなる様に配置されている、請求項4に記載のレンズの製造方法であって、
前記導入工程では、前記構造物を操作して前記係合部をこれに対応する係合受け部に係合させることにより、前記複数のレンズ中間体がそれぞれ、これらに対応する成型室内の前記所定位置へ導かれる、
レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−153049(P2012−153049A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15053(P2011−15053)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】