説明

レーザによる自動塗装被膜剥離装置

【課題】レーザ光を用いて、デジタルカメラ等の筐体にあたる塗装成形品の、導通性等を必要とする所定部位の下地層(素地層および化成処理層)にダメージを与えることなく、前記所定部位の塗装被膜層のみをアブレーションすることで、高精度に前記塗装被膜層を剥離し、高品質の塗装成形品と塗装マスキングレス化を提供する。
【解決手段】レーザによる自動塗装被膜剥離装置は、塗装被膜層40cをアブレーションにより剥離するレーザ加工装置50とアブレーション現象の際に発生する前記塗装被膜層40cの微粉を集塵する装置と塗装成形品をセットする受治具を有する自動傾斜テーブルと前記自動調整テーブルへの前記塗装成形品の自動供給装置および自動取出し装置と所定部位70の塗装被膜剥離の加工品質を判定する画像処理装置等を主構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装成形品の所定部位の被膜を、レーザ光を用いて部分的に剥離する自動塗装被膜剥離装置に関する。
特に、塗装成形品において導通性等を必要とする塗装されるべきでない所定部位の塗装被膜層のみをレーザ光を用い剥離することで、従来の被塗装成形品における塗装マスキング治具の製造および塗装マスキング作業工程が不要となり、ひいては、塗装マスキング治具の製造過程における製品設計、金型設計、金型製作、塗装マスキング治具の成形および試作過程における塗装マスキング治具の形状評価などのイニシャルコストと塗装マスキング作業工程でのランニングコストの大幅な削減が可能となる。また、レーザ加工装置の塗装剥離加工プログラムは、被塗装成形品の形状CADデータおよび塗装被膜層に使用される各種塗料の最適なレーザ出力に関する過去の集積データ等を基に作成することにより、特に、三次元的複雑形状の塗装成形品に対して、下地層(素地層および化成処理層)にダメージを与えることなく、所定部位の塗装被膜層のみを高精度に剥離することを可能とする被塗装成形品の塗装マスキングレス化の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被塗装成形品の塗装工程においては、導通性等を必要とする所定部位には塗装マスキング治具等を装着後に塗装および塗装焼付が施されている。
また、現在、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体の塗装工程で用いられている金属製一体型塗装マスキング治具の製造においては、筐体にあたる被塗装成形品の現物合わせによる製造のため、金属製一体型塗装マスキング治具の製造着手時期が大幅に遅れ、受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムが長期間を要するのが現状である。
【0003】
また、一般的に、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体にあたる被塗装成形品に用いられている塗装マスキング材としては、単一型塗装マスキング材においては、耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールが主流であり、被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装されるべきでない所定部位への塗装マスキング作業は、技術を習得した人間がピンセット等を用いて手作業によって行なわれている。
【0004】
また、被塗装成形品の塗装マスキング治具を用いる塗装工程においては、塗装工程の前後の付随作業として、人間の手による塗装マスキング治具の被塗装成形品への着脱作業が行われ、作業効率が極めて低く、従来の塗装マスキング治具を用いる塗装方法では、人件費等のランニングコストの削減が困難であると共に、機械化などによる着脱作業の省力化を図ることが困難である。
【0005】
また、一般的に、一体型の塗装マスキング材には、ゴム系、エラストマー系、汎用樹脂系および金属系の材料が挙げられるが、ゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系の一体型塗装マスキング治具は、塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインの過酷な高温(170±10℃)雰囲気下での連続使用温度条件を満たす適当な塗装マスキング材を見つけることが困難である。
【0006】
また、塗装後の塗装焼付ラインの過酷な連続高温雰囲気下において、汎用樹脂系の塗装マスキング治具は、熱影響による変形を生じ易く、マスキング精度の低下による塗装工程における塗装歩留りの悪化が懸念されている。また、金属製一体型塗装マスキング治具は被塗装成形品との線膨張係数の物性値の差異により、被塗装成形品の変形等の課題が顕在している。
【0007】
また、金属系の材料を用いた塗装マスキング治具は、被塗装成形品の現物合わせによる板金加工品の重ね合わせで製造されているため、一般的には、被塗装成形品の形状に対するマスキング精度が低く、特に三次元的複雑形状の被塗装成形品に対する最適な塗装マスキング治具の製造が難しいのが現状である。
【0008】
また、塗装マスキング治具の塗装工程における必要な企画製造数は、被塗装成形品の月産ピーク時の生産数量を想定して設定されるため、特に対象ロットが大きい被塗装成形品に対しては、多量の塗装マスキング治具が必要となり、塗装マスキング治具の製作において高額なイニシャルコストが発生すると共に、月産ピーク後の減産、或いは量産打ち切り直前の少量生産において、余剰の塗装マスキング治具が大量に発生しているのが現状である。
【0009】
また、特に、従来の塗装方法で用いられる金属系の塗装マスキング治具は、被塗装成形品の形状変更に対する修正の対応が難しいため、スクラップとして破棄されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に述べた、従来の塗装マスキング治具を用いる塗装方法および一般的に使用されている各種の塗装マスキング材において、次のような課題が存在している。
たとえば、従来の金属製一体型塗装マスキング治具の製造においては、被塗装成形品の現物合わせによる板金加工法による製造のため、金属製一体型塗装マスキング治具の製造着手時期が大幅に遅れる。また、金属製一体型塗装マスキング治具は、マスキング精度が低いため試作回数が多く、コストもリード・タイムも多く必要となり、ひいては、受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムが長期間を要するのが現状である。故に、従来の塗装マスキング治具を用いる塗装方法における塗装マスキング治具の製品設計、金型設計、金型製作などの早期着手化、試作過程におけるリード・タイム圧縮化および早期量産化に対する改善が求められている。
【0011】
また、現在、工業的に用いられている塗装マスキング材の耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールによる被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装されるべきでない部位へのマスキング作業は、技術を習得した人間がピンセット等を用いて手作業によって行なわれているため、マスキング箇所が多数ある場合には、塗装工程における塗装前の塗装マスキング材の貼り付け及び塗装焼付後の塗装マスキング材の剥し作業に長時間を要し、塗装マスキング作業における作業効率性に対しての改善が求められている。
【0012】
また、ゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系の塗装マスキング材は、被塗装成形品の塗装工程における塗装焼付ラインの過酷な高温(170±10℃)連続雰囲気下での耐熱強度性に問題があり、最適な塗装マスキング材としての改善が求められている。
【0013】
また、金属系塗装マスキング治具は被塗装成形品の現物合わせによる板金加工品の重ね合わせで製造されているため、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対するマスク形状の自由度に制約があり、被塗装成形品の導通性等を必要とする塗装を必要としない部位に対する不要な塗装吹込みを完全に防ぐことは困難であり、新たな技術的方法による創出が期待されている。
【0014】
また、金属系塗装マスキング治具は、被塗装成形品の塗装工程における塗装後の塗装焼付ラインでの過酷な高温(170±10℃)連続雰囲気下において、被塗装成形品との線膨張係数の物性値の差異により、被塗装成形品の変形等の課題が存在している。故に、現在の工業的に用いられている塗装マスキング治具を用いる方法以外の新たな技術的方法による創出が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、このような従来の塗装マスキング治具を用いる塗装方法が抱えている問題を解決しようとするものであり、塗装マスキング治具を用いることなく、塗装成形品の導通性等を必要とする所定部位の下地層(素地層および化成処理層)にダメージを与えることなく、所定部位の塗装被膜層のみを剥離する新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)を実現することを目的とするものである。
そして、本発明は上記目的を達成するために、塗装被膜層が形成された塗装成形品の導通性等を必要とする所定部位の該表面に、レーザ光を照射し、塗装被膜層をアブレーション(塗装被膜層の分解・気化・蒸散)により剥離するレーザ加工装置とアブレーション現象の際に発生する塗装被膜層の微粉を集塵する装置と塗装成形品をセットする受治具を有する自動傾斜テーブルと自動傾斜テーブルへの塗装成形品の自動供給・取出し装置および塗装成形品の塗装剥離加工済品の加工品質を判定する画像処理装置などを主構成とするレーザによる自動塗装被膜剥離装置である。
【0016】
また、被塗装成形品の形状CADデータおよび塗装被膜層に使用される各種塗料の最適なレーザ出力に関する過去の集積データ等を有効活用することにより、レーザ加工装置の最適な塗装被膜剥離加工プログラムを作成することが出来、塗装成形品の導通性等を必要とする所定部位の下地層(素地層および化成処理層)にダメージを与えることなく、所定部位の塗装被膜層のみを高精度に剥離を可能とする新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)により、塗装マスキング治具を用いた従来の塗装方法が抱えていた、塗装マスキング治具の早期着手化、試作過程におけるリード・タイム圧縮化および早期量産化、または、塗装マスキング作業における作業効率の改善および塗装焼付ラインでの過酷な高温(170±10℃)連続雰囲気下におけるマスキング精度の改善などの課題が解決される。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明のレーザによる自動塗装被膜剥離装置のレーザ加工装置には、公知であるレーザ加工方法により、塗装成形品の所定部位の塗装被膜層の下地層、いわいる素地層および素地防錆と塗装密着性等を目的とした化成処理層にダメージを与えることなく、所定部位の塗装被膜層のみの剥離が可能な新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)が提供できる。
【0018】
また、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装工程後に行なうレーザ光を用いた所定部位の塗装被膜層のみの剥離であり、導通性等を必要とする所定部位の高精度加工の実現を可能にすることにより、従来の塗装マスキング部位のマスキング不良による塗装歩留りの大幅な改善が図られ、従来の塗装マスキング治具を用いる塗装方法における塗装マスキング部位の全数品質検査から塗装マスキング治具を用いない前述の新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)により抜取品質検査へ移行することが出来、品質検査における負荷の軽減と検査時間の短縮を達成し、ひいては導通性等を必要とする所定部位の品質不良の流出防止が図られる。
【0019】
また、前述の新たな技術的方法は、塗装マスキング治具の不要により塗装マスキング治具の製作に関するイニシャルコストと塗装被膜剥離装置の自動化による人件費等のランニングコストの大幅な改善が図られる。
【0020】
また、前述の新たな技術的方法は、塗装マスキング治具の不要により、塗装マスキング治具の製造リード・タイムの解消により、受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムの大幅な改善が図られる。
【0021】
また、従来の金属系塗装マスキング治具は、塗装工程における塗装焼付ラインでの過酷な高温連続雰囲気下において、被塗装成形品との線膨張係数における物性値の差異から生ずる被塗装成形品の変形の問題があったが、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装工程後に行なうレーザ光を用いた導通性等を必要とする所定部位の塗装被膜層のみの剥離により前述の問題を解決する。
【0022】
また、従来の耐熱性マスキングテープ、或いは耐熱性マスキングシールによる塗装マスキング作業は、マスキング箇所が多数ある場合には、作業の効率性に対する問題があったが、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装工程後に行なうレーザ光を用いた導通性等を必要とする所定部位の塗装被膜層のみの剥離により前述の問題を解決する。
【0023】
また、従来のゴム系、エラストマー系および汎用樹脂系塗装マスキング材は、特に、導通性を必要とする塗装マスキング治具において、塗装マスキング治具の設計要求条件としての導通性と耐熱性等を満足する適当な塗装マスキング材を見つけることが困難であったが、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装工程後に行なうレーザ光を用いた導通性等を必要とする所定部位の塗装被膜層のみの剥離により前述の問題を解決する。
【0024】
また、従来の金属系塗装マスキング治具は、被塗装成形品の形状に対するマスキング精度が低く、特に、三次元的複雑形状の被塗装成形品に対するマスク形状の自由度に制約があり、被塗装成形品の導通性を必要とする塗装を必要としない部位に対する不要な塗装吹込みの問題があったが、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装工程後に行なうレーザ光を用いた導通性等を必要とする所定部位の塗装被膜層のみの剥離により前述の問題を解決する。
【0025】
また、前述の新たな技術的方法は、被塗装成形品の塗装マスキング仕様の設計変更に対しても、レーザ加工装置の塗装被膜剥離加工プログラムの一部補正を加えることにより、短時間かつ容易に対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】塗装マスキング治具を不要とする新塗装工程のフローチャートである。
【図2】塗装マスキング治具を用いる従来塗装工程のフローチャートである。
【図3】塗装成形品の塗装被覆層のみを剥離する所定部位および被塗装成形品のマスキングを必要とする所定部位の概略平面図である。
【図4】図3の概略A−A断面図である。
【図5】図3の概略側面図である。
【図6】従来、塗装工程で用いられている塗装マスキング治具の概略平面図である。
【図7】図6の概略側面図である。
【図8】レーザによる塗装剥離の概念を示すレーザ加工前の図である。
【図9】レーザによる塗装剥離の概念を示すレーザ加工後の図である
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、従来の塗装方法における導通性等を必要とする塗装されるべきでない部位の塗装マスキング治具30と塗装マスキング作業を必要としない新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)であり、塗装成形品20の導通性等を必要とする塗装されるべきでない部位を、被塗装成形品10の形状CADデータおよび塗装被膜層40cに使用される各種塗料の最適なレーザ出力に関する過去の集積データ等を有効活用することにより、塗装成形品20の下地層(素地層40aおよび化成処理層40b)にダメージを与えることなく、所定部位の塗装被膜層40cのみをレーザ光60を用い、高精度に該部位を塗装剥離することを図る。ひいては従来の塗装マスキング治具30を用いる塗装方法における塗装マスキング治具30の製造に関するイニシャルコストと塗装マスキング作業におけるランニングコストの大幅な削減が可能となる。且つ、レーザによる自動塗装被膜剥離装置により塗装被膜剥離加工工程の省力化を可能とすることを目的とする。さらに前述の新たな技術的方法による塗装マスキングレス化を図ることにより、受注からエンドユーザーへの一次サンプル提出までのリード・タイムの大幅な短縮化を図ることを目的とする。
【実施例】
【0028】
以下、図面と共に本発明による被塗装成形品10の塗装マスキングレス化を図った、レーザ光60を用いた塗装被膜剥離方法の好適な実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施例による塗装被膜層40cが形成された塗装成形品20の導通性等を必要とする所定部位70の該表面に、レーザ光60を用いて塗装成形品20の所定部位70の塗装被膜層40cのみを剥離する新塗装工程のフローチャートを示す。また、図2は、従来の被塗装成形品10の塗装マスキング治具30を用いる従来塗装工程のフローチャートを示す。
【0030】
まず、図1の新たな技術的方法(塗装マスキングレス化)による新塗装工程のフローチャートについて説明する。
【0031】
また、図1のステップ1においては、デジタルカメラ等の筐体にあたる被塗装成形品10を準備する。
【0032】
また、図1のステップ2においては、被塗装成形品10 は、塗装マスキング治具30を装着せず(塗装マスキングレス)に、ループ形式の自動塗装ラインの塗装ハンガーに人間の手により取り付けられ、自動塗装および自動塗装焼付が施される。また、本工程終了後、塗装成形品20は人間の手により塗装ハンガーから取り外される。
【0033】
また、図1のステップ3においては、塗装被膜層40cが形成された図8に示すレーザ加工前の塗装成形品20は、自動傾斜テーブルを有するレーザ加工装置50にセットされ、図3、図4、図5に示す塗装成形品20の導通性等を必要とする所定部位70の該表面に、略30ワットの照射エネルギーのレーザ光60を照射し、図8、図9に示す塗装被膜層40cのみをアブレーションにより図8、図9に示す塗装成形品20の素地層40aおよび素地防錆と塗装密着性等を目的とした化成処理層40bにダメージを与えることなく、図9に示す所定部位70の塗装被膜層40cを剥離する。また、画像処理装置を介してレーザ加工後の所定部位70の加工品質を判定する。
【0034】
また、図1のステップ4においては、デジタルカメラ等の筐体における導通性等を必要とする所定部位70の塗装被膜層40cのみを剥離した塗装成形品20の完成品となる。
【0035】
また、レーザ加工装置50には、付帯装置としてアブレーション現象の際に発生する塗装被膜層40cの微粉を集塵する装置を有している。
【0036】
また、レーザ加工装置50には、付帯装置として塗装成形品20をセットする受治具を有する、前後・左右に任意の角度に傾斜する自動傾斜テーブルと塗装成形品20の自動傾斜テーブルへの自動供給・取出し装置および塗装成形品20の塗装被膜剥離加工済品の加工品質を判定する画像処理装置を有している。
【0037】
また、図2の従来塗装工程のフローチャートについて説明する。
まず、従来の塗装方法においては、図6、図7に示す塗装マスキング治具30を必要とし、一般的に塗装マスキング治具30の製品設計、金型設計、金型製作、塗装マスキング治具30の成形および試作・量産立ち上げ過程における塗装マスキング治具30の形状評価などの過程を経て製造される。
故に、前述の一連の製造過程において高額のイニシャルコストが発生する。また、塗装工程の前後の付随作業として、人間の手による前記塗装マスキング治具30の被塗装成形品10への着脱作業が行われるなど作業効率が極めて低く、省力化によるコスト改善を図ることが困難な問題が背景に顕在している。
以下に、図2のステップ1について述べる。
【0038】
まず、図2のステップ1においては、デジタルカメラ等の筐体にあたる被塗装成形品10を準備する。
【0039】
また、図2のステップ2においては、被塗装成形品10に塗装マスキング治具30を人間の手により装着される。
故に、本工程に於ける作業は、人間の手による作業のため、作業効率の向上によるコスト改善が強く求められているのが現状である。また、特に、金属製の塗装マスキング治具を使用する場合は、装着作業の不手際による被塗装成形品10の意匠面にキズを付け、外観品質不良の発生が懸念されている。
【0040】
また、図2のステップ3においては、塗装マスキング治具30を装着された被塗装成形品10 は、ループ形式の自動塗装ラインの塗装ハンガーに人間の手により取り付けられ、自動塗装および自動塗装焼付が施される。また、本工程終了後、塗装成形品20は人間の手により塗装ハンガーから取り外される。
故に、塗装後の塗装焼付ラインの過酷な連続高温雰囲気下(170±10℃)において、塗装マスキング治具30を装着した被塗装成形品10は、塗装マスキング治具30との線膨張係数の物性値の差異により、被塗装成形品10に変形等が生じ、マスキング精度の低下による塗装工程の歩留りの悪化が懸念されているのが現状である。
【0041】
また、図2のステップ4においては、塗装マスキング治具30が装着されている塗装成形品20は、人間の手により塗装マスキング治具30を取り外し、全数を対象に、塗装成形品20の導通性を必要とする所定部位の品質評価の判定を目視で行なう。
故に、前述の図2のステップ2の工程と同様に、人間の手による作業のため、作業効率の向上によるコスト改善が強く求められているのが現状である。また、特に、金属製の塗装マスキング治具を使用する場合は、取り外し作業の不手際による塗装成形品20の意匠面にキズを付け、外観品質不良の発生が懸念されている。
【0042】
また、図2のステップ5においては、デジタルカメラ等の筐体における導通性等を必要とする所定部位70の塗装被膜層40cのない塗装成形品20の完成品となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の筐体と構成部品および車両関連(自動車・バイク等)に使用される部品等において、導通性等を必要とする塗装されるべきでない部位の塗装被膜層40cのみを剥離する部品等への適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 被塗装成形品(塗装を施す前の成形品)
20 塗装成形品(塗装を施した成形品)
30 塗装マスキング治具
40a 塗装成形品の素地層
40b 塗装成形品の化成処理層
40c 塗装成形品の塗装被膜層
50 レーザ加工装置
60 レーザ光
70 塗装皮膜層のみを剥離する所定の部位またはマスキングを必要とする所定の部位を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光60の照射によるアブレーションにより、所定部位70の塗装被膜層40cを剥離するレーザ加工装置50と塗装成形品20の平面や側壁面における前記所定部位70に、前記レーザ光60の照射を可能にする機能を備えた自動傾斜テーブルを含むことを特徴とするレーザによる自動塗装被膜剥離装置。
【請求項2】
塗装成形品20を自動傾斜テーブルに供給する自動供給装置とアブレーション現象の際に発生する塗装被膜層40cの微粉を集塵する装置と前記塗装成形品20の塗装被膜剥離加工済品を自動傾斜テーブルより取り出す自動取出し装置を備えた請求項1記載のレーザによる自動塗装被膜剥離装置。
【請求項3】
塗装成形品20の所定部位70の塗装被膜層40cを剥離した塗装被膜剥離加工済品の加工品質を判定する画像処理装置を備えた請求項1記載のレーザによる自動塗装被膜剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131263(P2011−131263A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294858(P2009−294858)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(309039602)タイキ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】