説明

レーザパルスのチャーピング及びストレッチング、及びそれに続くパワー増幅に基づく狭スペクトル線幅を有するレーザパルスの生成

【課題】比較的狭いスペクトルバンド幅を有するレーザパルスを生成する方法及び装置を提供する。
【解決手段】狭スペクトルバンド幅レーザパルス130を生成する装置100は、シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成するためのシードパルスレーザ101と、シードレーザパルスを受け取り、シードレーザパルスを修正し、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成するための光ストレッチャ110と、修正されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成された光増幅器120とを備える。光増幅器120は、正チャープを有する修正されたレーザパルスをあるパワーレベルまで増幅する。このパワーレベルにおいては、自己位相変調により、増幅され修正されたレーザパルスのスペクトルバンド幅を圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、光パルス増幅器及びパルスレーザを用いたレーザパルスの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる技術的特性を有するパルスレーザは、幅広い用途がある。幾つかの例は、光通信、光イメージング、レーザ材料処理、レーザ外科及び生物医学アプリケーション、分光測定及び光センシングアプリケーション、ならびに、レーザディスプレイである。幾つかのアプリケーションでは、フェムトセカンドパルスレーザ等の1ピコ秒未満のパルス長を有する超短パルス(USP)レーザは魅力的であり、そのようなアプリケーションの例は、特定の材料プロセス、光センシング、光アブレーション、眼科等の精密手術、生物医学、非線形研究、及び分光法である。そのような超短パルス(USP)レーザ等の超短パルスの持続時間に関連して、レーザパルスは、比較的広いスペクトル幅にわたるスペルトル成分を含んでいる。
【0003】
特定のアプリケーションにおいては、狭スペクトルバンド幅を有する光を用いることが望ましく、このため、USPレーザの短いレーザパルスの比較的広いスペクトル幅は、有益でない場合がある。
【0004】
本明細書は、短いシードレーザパルスのチャーピング及びストレッチング、ならびに、それに続くパワー増幅に基づいた、比較的狭いスペクトルバンド幅(例えば、1nm未満)を有するレーザパルスを生成する技術及び装置に関する。比較的狭いスペクトルバンド幅を有するそのようなレーザパルスは、狭スペクトルバンド幅レーザパルスが有益である特定のレーザアプリケーションで使用され得る。本明細書において開示した例においては、パルス生成におけるストレッチング動作によって、比較的狭いスペクトル幅を有する生成されたレーザパルスは、比較的長いパルス持続期間(例えば、1psより長い)を有し得る。
【0005】
1つの側面においては、レーザパルスを生成するための方法は、シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成すること、シードレーザパルスを修正して、シードパルスの持続期間より大きいパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成すること、正チャープを有する修正された光パルスをあるパワーレベルまで増幅すべく、修正されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成された光増幅器の中に、修正されたレーザパルスを導くことを含むように実施されてもよい。このパワーレベルにおいては、自己位相変調により、増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮することができ、シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができる。
【0006】
別の側面においては、レーザパルスを生成する装置は、シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成するためのシードパルスレーザと、シードレーザパルスを受け取り、シードレーザパルスを修正し、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成するための光ストレッチャと、修正されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成された光増幅器とを備えるように実施されてもよい。光増幅器は、光ストレッチャから修正されたレーザパルスを受け取るように結合され、正チャープを有する修正された光パルスをあるパワーレベルまで増幅するように構成されてもよい。このパワーレベルにおいては、自己位相変調により、増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮することができ、シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができる。
【0007】
また別の側面においては、レーザパルスを生成するためのファイバベース装置は、シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成するためのシードパルスファイバレーザと、シードパルスファイバレーザに結合され、シードレーザパルスを受け取り、異常光分散を与えるチャープファイバブラッググレーティングを含むように構成された光ファイバストレッチャとを備えるように実施されてもよい。光ファイバストレッチャは、シードレーザパルスを修正して、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成するように動作可能である。当装置は、修正されたレーザパルスに正常光分散を与え、光ファイバストレッチャから修正されたレーザパルスを受け取るように結合された光ファイバ増幅器を含む。光ファイバ増幅器は、正チャープを有する修正された光パルスをあるパワーレベルまで増幅するように構成される。このパワーレベルにおいては、自己位相変調により、増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮することができ、シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができる。
【0008】
これら及び他の側面において、これらの実施及び他の特徴は、図面、以下の記載及び請求項の中で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パワー増幅に先立ったパルスストレッチング及びパルスチャープに基づいたパルスレーザ装置の一例を示す。
【図2】図1に示した装置の実行例を示す。
【図2A】図2に示したメインパワー増幅器240を実施するためのダブルクラッド大モード面積(LMA)ファイバ増幅器の例を示す。
【図3】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図4A】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図4B】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図5A】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図5B】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図6A】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図6B】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図6C】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図6D】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図7A】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図7B】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図7C】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図8A】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図8B】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図9】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図10】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図11】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【図12】図1及び2に示した構造の多様な側面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
USPレーザでの比較的広いスペクトル幅にわたったスペクトル成分の広がりは、狭スペクトルバンド幅レーザパルスが有利である特定のレーザアプリケーションにおいては好ましくないであろう。そのようなアプリケーションの例は、例えば、ラマン分光法、非線形高調波生成に基づいた緑及びUV光生成等のレーザ光のスペクトルバンド幅の増加とともに効率を低下させる多種の非線形光学効果に基づいた装置及びシステムである。非線形高調波の生成に対して、狭スペクトル幅は、非線形高調波の生成に関連した非線形波混合における光学位相マッチング条件に起因して、変換効率を増加させること、及び、出力ビーム品質を向上させることに有効である。
【0011】
比較的狭いスペクトルバンド幅を有するレーザパルスの生成のための本技術及び装置は、狭スペクトルバンド幅光を必要とするこれらの及びその他のアプリケーションを促進するために用いられ得る。ここに記した技術及び装置に組み込まれた光増幅メカニズムは、狭スペクトルバンド幅を有する生成されたレーザパルスに高いパワーレベルを提供することができる。そのような高い光パワーは、多種のスペクトル範囲における非線形光学波長変換等の効率的非線形光学効果を可能にする。特定の例として、高パワーパルスレーザは、近赤外領域等の特定のスペクトル領域に現在用いられている。1um近くのYAG、Yb又はNdパルスレーザ及び0.7から1.1um近くのTi:サフィアパルスレーザがそのような高パワーパルスレーザの例である。このようなレーザは、非線形光学波長変換を介してUV又は深UVスペクトル領域で生成されたレーザパルスに対するポンプレーザとして用いられ得る。高光パワーを有するUV又は深UVスペクトル領域の短波長パルスレーザのアプリケーションは、例えば、材料プロセス及び外科的用途の多様なレーザアブレーションプロセスを含む。狭スペクトルバンド幅を有するレーザパルスを生成するためのここに記した技術及び装置は、近赤外レーザパルスからUVへの効率的非線形波長変換を提供するために用いられ得る。
【0012】
レーザパルスを生成するためのレーザ及び光増幅器は、概して、光学媒体中の非線形カー効果に起因する自己位相変調(SPM)等の特定の非線形光学効果を回避又は低減するために構成される。光パルスのSPMのレベルは、パルスが伝播するにつれて蓄積され得り、新たなスペクトル成分及び非線形チャープの生成に繋がり、このため、短いパルスの取得及び変換限界近くのスペクトル幅を維持するのが困難になる。本明細書におけるレーザパルスを生成するための技術及び装置の一つの側面は、周波数チャーピングを適切に制御すること、光増幅の前にシードレーザパルスの時間的持続を引き延ばすこと、及び、増幅されたレーザパルスの異なるスペクトル成分のスペクトル広がりを低減すべく、光増幅ステージにおいてSPMを優位に活用することである。特に、光増幅の前のシードレーザパルスにおける周波数チャーピングは、レーザパルスごとに光周波数が時間とともに増加するところでは正である。この正チャープ及びパルスストレッチングは、異常光分散(D>0)を有する光学ストレッチャを用いることによって達成され得る。
【0013】
図1に、狭スペクトルバンド幅レーザパルス130を生成する装置100の一例を示す。装置100は、シードパルス持続時間を有するシードレーザパルスを生成するシードパルスレーザ101を含む。シードレーザ101の下流には、シードレーザパルスを受け取り、シードパルス持続時間より長いパルス持続時間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成するためにシードレーザパルスを修正する光ストレッチャ110が設けられる。光ストレッチャ110は、異常光分散を有するグレーティングペアストレッチャ、異常光分散を有するチャープミラー又はプリズムベースの分散的機構、及び、異常光分散を有するボリュームブラッググレーティング又はその他の分散素子等の多様な構成において実施され得る。
【0014】
次に、光増幅器120は、光ストレッチャ110から修正されたレーザパルスを受け取るために結合される。光増幅器120は、修正されたレーザパルスに正常光分散(D<0)をもたらす光利得媒体により形成される。光増幅器120は、非線形自己位相変調(SPM)によって、増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮して、シードパルスの持続期間より長いパルス持続期間を有しながらもシードレーザパルスのスペクトル幅未満にすることができるパワーレベルに、正チャープを有する修正された光パルスを増幅する。増幅器120の出力パルス130は、追加のパワー増幅又はスペクトル圧縮を経る等して、さらなる処理がされてもよい。
【0015】
図1の装置100は、多様な構成によって実施されてもよい。図2に、レーザパルスを生成するための図1に示した構成に基づいたファイバ装置200を示す。オールファイバ構造を有するそのようなファイバ装置は、特定のアプリケーションにおいて、光デバイス重量、良好な動作信頼性、及び、その他のファイバ装置との容易な集積化等の多様な利点を提供するように構成され得る。
【0016】
図2において、シードファイバレーザ201は、シードレーザパルスを生成するために設けられる。例えば、シードファイバレーザ201は、0.6mW、25MHz、2.7nmバンド幅線形チャープであり、出力パルス持続期間が約1psである出力を有するフェムトセカンドモードロックファイバレーザであってもよい。フェムトセカンドモードロックレーザは、最初に、光パルスが、パルスピークパワーを減らすべく、負周波数チャープを有する正常光分散下のタイムドメインにおいて、引き伸ばされ、次に、引き伸ばされた光パルスが、安定した出力を生成すべく、正常光分散を有する光増幅器において増幅され、最後に、増幅された光パルスが、望ましい短い光パルスを生成すべく、時間的に圧縮される、チャープパルス増幅(CPA)に基づいたファイバレーザであってもよい。
【0017】
いくつかの形態では、ファイバレーザ201は、偏光保持(PM)ファイバを使用することによって、偏光保持出力を有するように構成されてもよい。これにより、レーザパルスの出力偏光は、好ましい偏光状態で安定化され得る。他のアプリケーションにおいては、非PMファイバレーザが、ファイバレーザ201の出力に用いられてもよい。
【0018】
プリチャープを有する光ストレッチャ110は、チャープファイバブラッググレーティング(CFBG)220によって実施されてもよい。CFBG220は、青の光が反射されるファイバの一端(青側端)から、赤の光が反射されるファイバの他端(赤側端)に向かって増加する、空間的チャープグレーティングピッチを有する。光サーキュレータ222が、レーザ201からレーザパルスを導く入力ファイバと、光増幅器120にその下流で接続する出力ファイバとに結合される。光サーキュレータ222は、入力ファイバ内の光をファイバレーザ201からCFBG220に導き、CFBG220からの反射光を光増幅器120に向けて出力ファイバに導く。特に、CFBG220は、その青側端が光サーキュレータ22に結合するように方向付けられる。これにより、パルススペクトル幅内の短い波長を有するスペクトル成分が、最初に、より短い時間遅れを有するように反射され、一方で、パルススペクトル幅内の長い波長を有するスペクトル成分が、後に、より長い時間遅れを有するように反射される。この構成は、CFBG220によって生成された反射光に異常光分散をもたらし、このため、サーキュレータ222に対して反射光パルスの光周波数正チャープを生成する。特定の例として、CFBG220は、パルスを18psに広げるべく、1064nmの光波長において6.63ps/nm(又は−3760000fs^2)の分散を有するチャープファイバブラッググレーティングであってもよい。サーキュレータ222は、その低挿入損失のために有利である。その他の実施例では、光サーキュレータ222は、ファイバカプラに置き換えられてもよい。
【0019】
動作中、CFBG220は、ファイバレーザ201からシードレーザパルスを受け取り、周波数チャープ、及び異なるスペクトル成分に対して異なる遅れを与えることによって、受け取った光を反射して戻す。この動作によって、シードレーザパルスは修正され、シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有し、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスが生成される。
【0020】
ファイバ装置200内において、光増幅器120は、修正されたレーザパルスに対して正常光分散を与えるオールファイバベースの増幅器である。光増幅器120は、装置200に対する光増幅の要求に応じて、1つ以上のファイバ増幅器を含んでもよい。図2に、2つのファイバ増幅器:プリ増幅器としての第1のファイバ増幅器230及びメインパワー増幅器としての第2のファイバ増幅器240、の例を示す。それぞれのファイバ増幅器は、望ましいポンプ光を生成するポンプレーザ(231又は241)と、ポンプ光をメインファイバラインに結合するポンプカプラ(232又は242)とを含む。メインファイバラインにおいては、ドープファイバ利得媒体(233又は243)が結合され、受け取ったポンプ光による光ポンピング下でのパワー増幅のための光利得を提供する。光増幅器120は、増幅器120のSPMが、パルスのスペクトル幅を低減するスペクトル圧縮をもたらすのに十分強いように、パルスピークパワーを上昇させる。増幅器における自己位相変調及び関連したスペクトル圧縮は、パルス持続期間に著しく影響を与えず、パルス持続期間はシードパルス持続期間より長いままである。
【0021】
図2に適したファイバ増幅器の一例は、400mW976nmダイオードレーザによって励起されるCoractive製4メートル長YbドープファイバYb500等のコアポンプファイバ増幅器である。976nmポンプ光と1064nm信号光は、PMWDMにおいて結合される。パワーの入力及び出力は、通常、1つ又は2つのアイソレータを備える。図2に適したファイバ増幅器の別の例は、976nm又は915nmにおいてマルチモードポンプレーザによって励起されるダブルクラッドファイバ増幅器である。
【0022】
図2Aに、図2に示したメインパワー増幅器240を実施するためのダブルクラッド大モード面積(LMA)ファイバ増幅器の一例を示す。そのような大モード面積ファイバ増幅器は、他のファイバ増幅器と比べてより小さい非線形効果を有したより高い出力パワーを生成することができ、このため、図2に示した構成を実際的に実行するのに有利であろう。ダブルクラッド構成により、費用を抑えて、望ましい光ポンピングのために、2つの低輝度ポンプダイオード241−A及び241−Bを使用することができる。図2Aに示した例では、シングルモードファイバは、LMAファイバ増幅器の入力に設けられ、プリ増幅器230からレーザパルスを受け取る。モード変換器−ポンプ合成器242−Aは、利得イオンでドープされておらず、受動光学ファイバである1つの大モード面積ファイバ244の中に向けて、2つのポンプダイオード241−A及び241−Bからのポンプ光と入力レーザパルスとを合成するために設けられる。大モード面積ファイバ243Aは、受動LMAファイバ244に結合され、合成されたポンプ光から光ポンプ下における光増幅に対して望ましい光利得を生成するために、利得イオンがドープされる。増幅された出力レーザパルスは、増幅器240の出力として、ドープLMAファイバ243Aによって外部に出力される。
【0023】
増幅器120の出力に、任意の光スペクトル圧縮装置250が、特定のアプリケーションに対して出力レーザパルスのスペクトル幅をさらに圧縮するために設けられてもよい。例えば、正常光分散(D<0)を有するスペクトル圧縮ファイバ、スペクトルを圧縮するのに適合した適切な長さを有するSPM等の、多様なスペクトル圧縮技法が用いられてもよい。スペクトル圧縮ファイバは、出力偏光を安定させるために、偏光保持ファイバ(例えば、Corning製のPM980)であってもよい。
【0024】
図3に、狭スペクトルバンド幅レーザパルスから高調波信号を生成する非線形光結晶等の非線形光材料310の非線形波長変換のための、図1及び図2に示した装置構成に基づく装置を示す。非線形光効果は、非線形変換効率を達成するために特定の位相マッチング条件を要求する。チャーピング制御及びスペクトル圧縮のために、本技術に基づいて生成された狭スペクトルバンド幅レーザパルスは、効率的な非線形波長変換及び光波混合に適しているだろう。非線形高調波生成においては、非線形結晶における分散に起因して、狭バンド幅により、長い非線形結晶を、位相マッチング条件に適するように使用することができる。非線形結晶の長さが増えるにつれて変換効率は増加するので、長い結晶を用いるこの能力は、有利である。図3において、パワー増幅器は、高出力パワーを得るためにLMAを有するファイバ増幅器であってもよく、或いは、ダイオードレーザ又はフラッシュランプによって光学的に励起されるNd:YAG、YLF、Ndガラス材料に基づく固体素子増幅器であってもよい。非線形結晶は、LBO、第2高調波生成のために用いられるKTP結晶であってもよく、或いは、LBO結晶、第3高調波生成又はより高位の高調波生成のために用いられるBBO結晶であってもよい。
【0025】
図1に戻って、ラマン効果を有さない装置の動作のための非線形シュレディンガ方程式は以下のように表され得る。
【数1】

【0026】
望ましい出力から要求される入力を得るための逆方程式を取得するために、zは、上記式において、−zに置き換えられ得る。
【数2】

【0027】
この式は、光分散、SPM及び利得/損失のための符号を変更することによって、逆動作が達成され得ることを示唆している。このため、レーザパルスの正チャープは、光分散によってもたらされるスペクトル幅の広がりを反転するために、及び、狭スペクトルバンド幅を達成するために、正常光分散のSPMと組み合わせて用いられ得る。
【0028】
この効果を示すために、多様なシミュレーションが実施されている。このシミュレーションは、スプリットステップフーリエ変換方法による、自己位相変調、色分散、ラマン効果、及び、均一利得係数を有する光利得の効果を含む拡張非線形シュレディンガ(NLS)方程式を解くことに基づいて線形及び非線形パルス伝播を取り扱うことができるFiberDesk(http://www.fiberdesk.com/)製の商業用ソフトウエアツールを用いて実行されてきた。
【0029】
図4Aに、ファイバ光増幅器に入る前のプリチャープレーザパルスの時間的及びスペクトルプロファイルを示す。線形のチャープであり、−65000fsである。図4Bに、低減されたスペクトルバンド幅及び実質的に変化しないパルス持続時間を有するファイバ光増幅器の出力パルスの時間的及びスペクトルプロファイルを示す。ここで、モードフィールド直径(MFD)は、20μmであり、利得は、20dBであり、分散は、−41.9ps/nm/kmである。
【0030】
比較して、図5A及び図5Bに、増幅器に対する入力パルスに正チャープが無いシミュレーションを示す。ここで、ファイバ増幅器からの出力パルスのスペクトルは、望ましくないスペクトル特性で広げられている。
【表1】

【0031】
表1に、スペクトル圧縮ファイバを有する図2に示した装置の構成(A)、(B)、(C)及び(D)の4つの構成を示す。図6A、図6B、図6C、図6D、図7A、図7B及び図7Cに、図2に示した装置の4つの構成のシミュレートされた性能を示す。 パルス幅は、ピコ秒未満から10ピコ秒に変換される(10倍に増加)一方で、バンド幅は、数nmから約0.2nm(10分の1倍に低減)に変換される。また、図7A、図7B及び図7Cに示されたとおり、この構成は、入力パルスの小欠陥に対して頑強である。図7A及び図7Bのシミュレーションは、入力レーザパルス内の小さいスペクトルリップルが、出力の変化に著しく影響を与えないことを示している。図7Cは、入力パルスの小さいサイドピークが、出力特性を著しく変更しないことを示している。
【0032】
図8A及び図8Bに、2つの装置を示す。図8Aは、図1に示した構成に基づき、図8Bは、図1に示した本願の技術を用いずに、2つのカスケードファイバ増幅器を用いる構成である。表2に、同じ高パワーファイバパワー増幅器を用いた2つの構成のシミュレーション結果を示す。図9、図10、図11及び図12に、シミュレーションの時間的及びスペクトルプロファイルを示す。これらの図は、図8Aに示した装置が、図8Bに示した装置より優れていることを実証している。
【表2】

【0033】
当明細書は、多くの細目を含んでいるが、これらは、請求された、又は請求されるであろう発明の範囲の限定として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施例に対する特定の特徴の記載として解釈されるべきである。別個の実施例との関連で本明細書に記載された特定の特徴はまた、単一の実施例として組み合わされて実施されてもよい。反対に、単一の実施例に関連して記載された多様な特徴はまた、複数の実施例において独立して実施されてもよく、または、ある適切なサブコンビネーションとして実施されてもよい。さらに、上記において、特徴は、特定の実施例に作用するもの、及び最初に請求されたものとさえ記載されうるが、請求された組み合わせからの1つ以上の特徴は、ある場合には、組み合わせから削除されてもよく、請求された組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形を対象としてもよい。
【0034】
ほんの数個の例及び実施形態を記載してきた。その他の実施形態、上記例及び実施形態に対する変形、改良及び向上がなされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成する段階と、
前記シードレーザパルスを修正し、前記シードパルス持続期間より大きいパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成する段階と、
前記正チャープを有する前記修正された光パルスを一のパワーレベルまで増幅するために、前記修正されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成される光増幅器の中に、前記修正されたレーザパルスを導く段階と、
を備え、
前記一のパワーレベルは、自己位相変調により、前記増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮して、前記シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、前記シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができるパワーレベルである
レーザパルスを生成する方法。
【請求項2】
前記光増幅器から出力された前記増幅された光パルスを、正常光分散を与える光媒体の中に導き、前記増幅された光パルスのスペクトル幅を、前記光媒体の自己位相変調に基づいて、さらに圧縮する段階を備える
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光媒体は、偏光保持光ファイバである
請求項2の記載の方法。
【請求項4】
前記シードパルス持続期間より大きい前記パルス持続期間を有し、且つ、前記光周波数正チャープを有する前記修正されたレーザパルスを生成するために、前記シードレーザパルスの修正において異常光分散を与える光デバイスを用いる段階を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シードレーザパルスの修正において異常光分散を与える前記光デバイスは、偏光保持ファイバを含む
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光増幅器から出力された前記増幅された光パルスを、第2の光増幅器の中に導き、前記増幅された光パルスのパワーをさらに増幅する段階を備える
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の光増幅器を、前記増幅された光パルスに高出力パワーを生成するためのダブルクラッド大モード面積ファイバ増幅器を含むように構成する段階を備える
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の光増幅器は、前記増幅されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成され、前記増幅された光パルスのスペクトル幅をさらに圧縮するために、自己位相変調を与える
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の光増幅器から出力されたレーザパルスを、非線形光材料の中に導き、前記第2の光増幅器から出力された前記レーザパルスの圧縮されたスペクトル幅及び増幅されたパワーに基づいた効率的非線形光効果を生成する段階を備える
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非線形光効果は、光高調波信号の生成である
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成するシードパルスレーザと、
前記シードレーザパルスを受け取り、前記シードレーザパルスを修正し、前記シードパルス持続期間より大きいパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成する光ストレッチャと、
前記修正されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成される光増幅器と
を備え、
前記光増幅器は、前記光ストレッチャから前記修正されたレーザパルスを受け取るように結合され、前記正チャープを有する前記修正された光パルスを一のパワーレベルまで増幅し、
前記一のパワーレベルは、自己位相変調により、前記増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮して、前記シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、前記シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができるパワーレベルである
レーザパルスを生成する装置。
【請求項12】
前記シードパルスレーザは、モードロックファイバレーザである
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記シードパルスレーザは、パルスレーザであり、
前記シードレーザパルスのスペクトル幅は、約1ピコ秒又は1ピコ秒未満のパルス持続期間をサポートし、
前記光増幅器から出力された前記増幅され修正された光パルスは、約3ピコ秒又は3ピコ秒より長いパルス持続期間を有する
請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記光ストレッチャは、
前記光増幅器から出力された前記増幅され修正された光パルスを受け取る入力ファイバと、
前記入力ファイバから光を受け取るように結合されたチャープファイバブラッググレーティングと、
前記チャープファイバブラッググレーティングから反射光を受け取り、前記受け取った光を前記光増幅器に導くように結合された出力ファイバと
を備え、
前記チャープファイバブラッググレーティングは、前記出力ファイバによって受け取られた前記反射光に、周波数正チャープをもたらすように、方向付けられている
請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記光ストレッチャは、
前記入力ファイバからの光を前記チャープファイバブラッググレーティングに結合し、前記チャープファイバブラッググレーティングからの反射光を前記出力ファイバの中に結合する光サーキュレータを含む
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記光ストレッチャは、
前記入力ファイバからの光を前記チャープファイバブラッググレーティングに結合し、前記チャープファイバブラッググレーティングからの反射光を前記出力ファイバの中に結合する光カプラを含む
請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記光ストレッチャは、2つのグレーティングを有するグレーティングペアを含む
請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記光ストレッチャは、偏光保持デバイスである
請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記光増幅器から出力された前記増幅された光パルスを受け取るように結合され、前記増幅された光パルスのパワーをさらに増幅する第2の光増幅器を備え、
前記第2の光増幅器は、前記増幅されたレーザパルスに正常光分散を与える光利得媒体により形成され、前記増幅された光パルスのスペクトル幅をさらに圧縮するために自己位相変調を与える
請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記光増幅器から出力された前記増幅された光パルスを受け取るように結合され、正常光分散を与える光媒体を備え、
前記光媒体は、前記光媒体の自己位相変調に基づいて、前記増幅された光パルスのスペクトル幅をさらに圧縮する
請求項14に記載の装置。
【請求項21】
前記光増幅器から出力された前記増幅された光パルスを受け取り、前記増幅された光パルスのパワーをさらに増幅するように結合された第2の光増幅器と、
前記第2の光増幅器から前記増幅された光パルスを受け取るように配置された非線形光材料と
を備え、
前記非線形光材料は、前記受け取ったレーザパルスの圧縮されたスペクトル幅及び増幅されたパワーに基づいた効率的非線形光効果を生成する
請求項14に記載の装置。
【請求項22】
シードパルス持続期間を有するシードレーザパルスを生成するシードパルスファイバレーザと、
前記シードレーザパルスを受け取るために前記シードパルスファイバレーザに結合され、異常光分散を与えるチャープファイバブラッググレーティングを含み、前記シードレーザパルスを修正して、前記シードパルス持続期間より大きいパルス持続期間を有し、且つ、光周波数正チャープを有する修正されたレーザパルスを生成する光ファイバストレッチャと、
前記修正されたレーザパルスに正常光分散を与え、前記光ファイバストレッチャから前記修正されたレーザパルスを受け取るように結合された光ファイバ増幅器と
を備え、
前記光ファイバ増幅器は、前記正チャープを有する前記修正された光パルスを一のパワーレベルまで増幅し、
前記一のパワーレベルは、自己位相変調により、前記増幅され修正された光パルスのスペクトル幅を圧縮して、前記シードレーザパルスのスペクトル幅より小さく、且つ、前記シードパルス持続期間より長いパルス持続期間を有するものにすることができるパワーレベルである
レーザパルスを生成する装置。
【請求項23】
前記光ファイバ増幅器は、前記修正された光パルスの増幅において、高出力パワーを生成するダブルクラッド大モード面積ファイバ増幅器を有する
請求項22に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図8A】
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【図8B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−256035(P2012−256035A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−109770(P2012−109770)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(512123547)カルマー オプトコム、インコーポレイティッド ディービーエー カルマー レーザー (1)
【Fターム(参考)】