説明

レーザマーキング装置、及びレーザマーキングシステム

【課題】食品の表層にある水分に反応して蒸散されるため、食品の傷みを最小限にしつつ、食品表面に印字することができるレーザマーキング装置を提供する。
【解決手段】このレーザマーキングシステム110は、制御装置28、冷却器5、及びレーザヘッド4で構成されるレーザマーキング装置と、物品24を載置して所定速度で移動させるベルトコンベア(移動手段)25と、ベルトコンベア25上の物品24の表面にレーザビーム11を合焦させるレンズ(合焦手段)20と、ベルトコンベア25上の物品24の有無を検出するセンサ(検出手段)22と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマーキング装置、及びレーザマーキングシステムに関し、さらに詳しくは、食品、医薬品等のトレーサビリティを管理するために、レーザビームにより画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食の安全性の観点から、生産者から消費者に流通する過程を遡及可能とするために、トレーサビリティといった考え方が普及している。これは、一般には工業製品や食品、医薬品などの商品・製品や部品、素材などを個別(個体)ないしはロットごとに識別して、調達、加工、生産、流通、販売、廃棄などの各行程にまたがって履歴情報を参照できるようにすること、又は、それを実現する制度やシステムをいう。このトレーサビリティを実現する上で重要なことは、商品・製品や部品、素材などに付与する履歴情報の構成と、マーキング技術の確立である。
特許文献1には、納豆製品におけるトレーサビリティを実施するため、生産者から消費者に到る流通過程における追跡履歴情報を容器本体又は蓋体にレーザ加工により印字する技術が開示されている。
また、特許文献2には、食品の表面に形成された可食体にレーザによりドットマーキングを施すレーザマーキング装置について開示されている。
また、特許文献3には、レーザビームにより卵の殻にマーキングを行なうマーキング方法について開示されている。
【特許文献1】特開2008−35828公報
【特許文献2】特開2005−138140公報
【特許文献3】特開2000−168157公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、食品を収容する容器に追跡履歴情報を印字するに過ぎないため、食品が容器から出された場合、食品そのものの追跡調査が不可能になるといった問題がある。
また、特許文献2に開示されている従来技術によれば、食品に直接印字することは可能であるが、対象食品が比較的表面が柔らかいチョコレート等に限定されるため、適用範囲が狭いといった問題がある。
また、特許文献3に開示されている従来技術は、特許文献2とは逆に、対象食品となるのが比較的表面が固い卵の殻等であるため、柔らかい食品へ印字した場合、食品が不必要に傷つけられる虞がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、波長2.94μmのEr:YAGレーザを使用することにより、レーザ照射を受けた食品表面の部位が表層にある水分に反応して蒸散されるため、食品の傷みを最小限にしつつ、食品表面にマーキングすることが可能なレーザマーキング装置を提供することを目的とする。
また、他の目的は、このレーザマーキング装置を利用して、大量の食品へのマーキングを自動化することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、レーザビームにより物品表面に画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングするレーザマーキング装置であって、前記レーザビームを出射するレーザヘッドと、該レーザヘッドに電力を供給するレーザ電源と、前記レーザビームを変調する変調部と、前記レーザヘッドから出射されるパワーをモニタするパワーモニタ部と、を備え、前記レーザビームの波長を2.6μm乃至3.5μm、又は5.6μm乃至6.8μm若しくは水の吸収が1000cm-1、及びエネルギを30mJ乃至150mJに設定することを特徴とする。
本発明のレーザマーキング装置の最も大きな特徴は、レーザの波長を2.94μmのEr:YAGレーザを使用した点である。このレーザによれば、物品の表層に含有されている水分に最も大きく反応して水を蒸散させることにより、物品の表層にだけビームが到達する。これにより、物品の傷みを最小限にしつつ、物品表面にマーキングすることができる。また、物品の種類に応じて最適なレーザビームのエネルギ(30mJ〜150mJ)を選択することができる。また、Er:YAGレーザに限らず、2.6μm乃至3.5μm、又は5.6μm乃至6.8μm若しくは水の吸収が1000cm-1の条件を満足するレーザであれば使用が可能である。
【0005】
請求項2は、前記変調部は、前記レーザビームを間欠的に出射するように動作することを特徴とする。
レーザビームは連続的に出射すると、レーザヘッドが過熱してレーザパワーが低下したりレーザヘッドを破損する虞がある。そこで本発明では、レーザビームを間欠的に出射するように変調部を構成する。例えば、デューティ50%のパルスに変調すれば、発熱量は1/2になる。これにより、レーザヘッドの温度上昇を抑制することができる。
請求項3は、前記レーザヘッドが所定の温度を超えた場合に、該レーザヘッドを冷却する冷却部を備えたことを特徴とする。
デューティ50%で変調しても、大量の物品に連続的にレーザビームを出射した場合、レーザヘッドの過熱は避けられない。そこで本発明では、レーザヘッドに温度センサを設け、この温度センサを監視することにより、レーザヘッドが所定の温度を超えた場合に、レーザヘッドを冷却できるように冷却部を備える。これにより、温度の過熱によるレーザヘッドの破損、又はレーザパワーの低下を防止することができる。
請求項4は、前記レーザヘッドは、複数のレーザビーム出射口がマトリックス状に配置されていることを特徴とする。
1本のレーザビームでマーキングする場合、レーザヘッドを動かすか、或いは物品を動かしてマーキングしなければならない。従って、マーキングの速度をあまり早くすることはできないので、マーキングに多くの時間を要してしまう。そこで本発明では、レーザヘッドに複数のレーザビーム出射口を備え、それらをマトリックス状に配置してコードをマーキングする。これにより、マーキングの速度を速めることができる。
【0006】
請求項5は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のレーザマーキング装置と、前記物品を載置して所定速度で移動させる移動手段と、該移動手段上の物品表面に前記レーザビームを合焦させる合焦手段と、前記移動手段上の物品を検出する検出手段と、制御手段と、を備えたレーザマーキングシステムであって、前記制御手段は、前記検出手段により前記移動手段上の物品を検出し、且つ前記合焦手段により前記物品の表面にレーザビームが合焦したことを検出したとき、前記レーザマーキング装置により所定の画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングすることを特徴とする。
本発明のシステムは、本発明のレーザマーキング装置を使用し、移動手段(例えばベルトコンベア等)に載置した物品にレーザによりマーキングする。そのとき、物品上の被照射部位の高さ位置は物品の部位により異なるため、常にレーザビームが物品の表面に合焦するように合焦手段を備える。合焦手段は例えば、カメラの自動焦点(AF)機能を利用してもよい。また、移動手段上に物品が有るか否かを検出する検出手段を備える。そして制御手段が、物品が移動手段上に有ることを検出し、且つ合焦手段により物品の表面にレーザビームが合焦したことを検出したとき、レーザマーキング装置により所定の画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングする。これにより、大量の物品へのマーキングを自動化することができる。
【0007】
請求項6は、前記制御手段は、前記検出手段が所定の時間に亘って前記物品を検出しない場合、前記移動手段を停止することを特徴とする。
物品を載置した移動手段を駆動して順番に物品にマーキングしていく。しかし、移動手段に物品が載置されていない場合は、移動手段を無駄に駆動する必要はない。そこで本発明では、所定の時間に亘って物品を検出しない場合、移動手段を停止する。これにより、無駄な移動手段の駆動を無くすことができる。
請求項7は、前記制御手段は、前記検出手段により物品が検出された場合は、前記移動手段を一旦停止し、該物品表面に前記レーザビームを合焦して前記移動手段を再度駆動させながらマーキングを行なうことを特徴とする。
物品表面の合焦動作には所定の時間が必要となる。また、物品が移動したまま合焦動作を行なうことは難しい。そこで本発明では、合焦動作のときは、一旦移動手段を停止し、合焦が成立したら再び移動手段を駆動しながらレーザビームによりマーキングを行う。これにより、合焦動作とマーキングを確実に行うことができる。
【0008】
請求項8は、前記所定のコードは、uコードにより構成されていることを特徴とする。
大量の物品のトレーサビリティを確実に行なうには、各物品にマーキングされたコードが全て1対1に対応していることが重要である。そのためには、コード体系が枯渇しないことが好ましい。それには、公知のuコードが最適である。uコードの最大の特徴は、コード自体に意味を持たせず、コードを発行された対象に関する様々な属性情報は、uコードによって検索されるデータベースに全て格納されている点にある。これにより、コード体系を維持しながら大量の物品のトレーサビリティを実現することができる。
請求項9は、前記合焦手段は、前記レーザヘッドを移動するヘッド移動手段を備え、前記移動手段上の物品の高さに応じて前記ヘッド移動手段を上下に駆動することにより、前記移動手段上の物品表面に前記レーザビームを合焦させることを特徴とする。
物品はその種類により高さが異なる場合がある。そこで本発明では、レーザヘッドを上下に移動するヘッド移動手段を備え、物品の高さに対応してレーザヘッドを上下に移動して合焦を行なう。これにより、光学系の焦点深度を浅くすることができ、光学系のコストを安価にすることができる。
請求項10は、前記レーザヘッドをXY軸方向に移動させる軸方向移動手段を備え、前記移動手段上の物品が移動中に前記軸方向移動手段により前記レーザヘッドをXY軸方向に移動することにより、前記物品表面にマーキングを行なうことを特徴とする。
移動手段を停止したままマーキングするのが一般的であるが、その結果、マーキングに要する時間が長くなり、生産性が低下する。そこで本発明では、移動手段を駆動したまま、XY軸方向にレーザヘッドを移動することによりマーキングを行なう。これにより、マーキングの速度を速めて生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザの波長を2.94μmのEr:YAGレーザを使用し、物品の表層に含有されている水分に最も大きく反応して、水を蒸散させることにより物品の表層だけレーザビームを到達させるので、物品の傷みを最小限にしつつ、食品表面にマーキングすることができると共に、物品の種類に応じて最適なレーザビームのエネルギ(30mJ〜150mJ)を選択することができる。
また、レーザビームを間欠的に出射するように変調部を構成するので、レーザヘッドの温度上昇を抑制することができる。
また、レーザヘッドに温度センサを設け、この温度センサを監視することにより、レーザヘッドが所定の温度を超えた場合に、レーザヘッドを冷却する冷却部を備えるので、温度の過熱によるレーザヘッドの破損、又はレーザパワーの低下を防止することができる。
また、レーザヘッドに複数のレーザビーム出射口を備え、それらをマトリックス状に配置するので、マーキングの速度を速めることができる。
また、制御手段が、物品が移動手段上に有ることを検出し、且つ合焦手段により物品の表面にレーザビームが合焦したことを検出したとき、レーザマーキング装置により所定の画像、又は/及び、コード又は/及び、文字をマーキングするので、大量の物品へのマーキングを自動化して生産性を高めることができる。
【0010】
また、所定の時間に亘って物品を検出しない場合、移動手段を停止するので、無駄な移動手段の駆動を無くすことができる。
また、合焦動作のときは、一旦移動手段を停止し、合焦が成立したらレーザビームによりマーキングを行い、再び移動手段を駆動して次の物品に移るので、合焦動作とマーキングを確実に行うことができる。
また、uコードを使用するので、コード体系を維持しながら大量の物品のトレーサビリティを実現することができる。
また、レーザヘッドを上下に移動するヘッド移動手段を備え、物品の高さに対応してレーザヘッドを上下に移動して合焦を行なうので、光学系の焦点深度を浅くすることができ、光学系のコストを安価にすることができる。
また、移動手段を駆動したまま、XY軸方向にレーザヘッドを移動することのよりマーキングを行なうので、マーキングの速度を速めて生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の一実施形態に係るレーザマーキング装置の構成を示すブロック図である。このレーザマーキング装置100は、レーザビーム11により物品表面に画像、又は/及び、コード又は/及び、文字をマーキングするレーザマーキング装置100であって、レーザビーム11を出射するレーザヘッド4と、レーザヘッド4に電力を供給するレーザ電源ユニット3と、レーザヘッド4の動作を制御するコントローラ2と、コントローラ2を操作するためのデータを入力する操作パネル1と、レーザヘッド4が所定の温度を超えた場合に、レーザヘッド4を冷却する冷却器(冷却部)5と、を備えて構成されている。尚、コントローラ2は、レーザビーム11を変調する変調部2aと、レーザヘッド4から出射されるレーザパワーをモニタするパワーモニタ部2bと、レーザヘッド4に取り付けた温度センサ14によりレーザヘッド4の温度を検出する温度検出部2cと、を備えている。また、本実施形態では、操作パネル1、コントローラ2、及びレーザ電源ユニット3を総称して制御装置28と呼ぶ。また、本実施形態に係るレーザマーキング装置100のレーザビーム11の波長を2.94μm、エネルギを30mJ〜150mJの範囲で設定可能とした。
即ち、本発明のレーザマーキング装置100の最も大きな特徴は、レーザビーム11の波長を2.94μmのEr:YAGレーザを使用した点である。このレーザは、物品の表層に含有されている水分に最も大きく反応して、水を蒸散させることにより物品の表層だけレーザビーム11を到達させる。これにより、物品の傷みを最小限にしつつ、物品表面に画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字を印字することができる。また、物品の種類に応じて最適なレーザビームのエネルギ(30mJ〜150mJ)を選択することができる。また、Er:YAGレーザに限らず、2.6μm乃至3.5μm、又は5.6μm乃至6.8μm若しくは水の吸収が1000cm-1の条件を満足するレーザであれば使用が可能である。
【0012】
また、レーザビーム11は連続的に出射すると、レーザヘッド4が過熱してレーザパワーが低下したりレーザヘッド4を破損する虞がある。そこで本発明では、レーザビーム11を間欠的に出射するように変調部2aを構成する。例えば、デューティ50%のパルスであれば、発熱量は1/2になる。これにより、レーザヘッド4の温度上昇を抑制することができる。
また、デューティ50%で変調しても、大量の物品に連続的にレーザビーム11を出射した場合、レーザヘッド4の過熱は避けられない。そこで本発明では、レーザヘッド4に温度センサ14を設け、この温度センサ14を監視することにより、レーザヘッド4が所定の温度を超えた場合に、レーザヘッド4を冷却するための冷却器5を備える。これにより、温度の過熱によるレーザヘッド4の破損、又はレーザパワーの低下を防止することができる。
また、1本のレーザビームでマーキングする場合、レーザヘッド4を動かすか、物品を動かしてマーキングしなければならない。従って、マーキングの速度をあまり早くすることはできないので、マーキングに多くの時間を要してしまう。そこで本発明では、図示は省略するが、レーザヘッド4に複数のレーザビーム出射口を備え、それらをマトリックス状に配置する。これにより、マーキングの速度を速めることができる。
【0013】
図2は本発明のレーザマーキング装置100を使用して、大量の物品に自動的にマーキングするレーザマーキングシステム110の概略的な構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。このレーザマーキングシステム110は、図1の制御装置28、冷却器5、及びレーザヘッド4で構成されるレーザマーキング装置100と、物品24を載置して所定速度で移動させるベルトコンベア(移動手段)25と、ベルトコンベア25上の物品24の表面にレーザビーム11を合焦させるレンズ(合焦手段)20と、ベルトコンベア25上の物品24の有無を検出するセンサ(検出手段)22と、を備えて構成されている。尚、本実施形態では、合焦手段としてセンサ21により物品24の表面までの距離を測定して、その結果に基づいてレンズ20を調整することにより物品24のマーキング面までの焦点を算出する。また、レーザヘッド4は支柱23により支持され、レーザヘッド4から出射したレーザビームがレンズ20により合焦されて物品24にマーキング可能としている。また、ベルトコンベア25は、モータ32が制御装置28からの駆動信号33のON/OFFによりスタート、ストップが制御される。
即ち、本発明のレーザマーキングシステム110は、本発明のレーザマーキング装置100を使用し、ベルトコンベア25に載置した物品24にレーザビーム11により画像、又は/及び、コード又は/及び、文字をマーキングする。そのとき、物品24の高さ方向は物品により異なるため、常にレーザビーム11が物品24の表面に合焦するように、レンズ20とセンサ21を備える。合焦手段は例えば、カメラの自動焦点(AF)機能を利用してもよい。また、ベルトコンベア25上に物品24が有るか否かを検出するセンサ22を備える。そして制御装置28が、物品24がベルトコンベア25上に有ることを検出し、且つレンズ20により物品の表面にレーザビーム11が合焦したことを検出したとき、レーザマーキング装置100により所定の画像、又は/及び、コード又は/及び、文字をマーキングする。これにより、大量の物品へのマーキングを自動化することができる。
【0014】
図3は本発明に係るレーザマーキングシステムの動作を説明するフローチャートである。制御装置28はセンサ22から物品24を検出したか否かを監視する(S1)。センサ22が物品24を検出しない場合は(S1でNO)所定時間が経過したかを監視し(S10)、所定の時間が経過しても物品24を検出しない場合は(S10でYES)ベルトコンベア25を停止する(S11)。ステップS10で所定時間が経過しなければ(S10でNO)ステップS1に戻って繰り返す。そして、制御装置28はセンサ22により物品24を検出すると(S1でYES)、ベルトコンベア25を一旦停止し(S2)、当該物品のコードをメモリから読み出す(S3)。そして、そのコードを物品24にマーキングするために、センサ21によりレーザビーム11が物品表面に焦点が合っているか否かをチェックする(S4)。焦点が合っていなければ、レンズ20を移動して合焦点をさがす(S12)。レーザビーム11が合焦されると(S4でYES)、停止したベルトコンベア25を再び移動させる(S5)。そして読み出したコードに変調したレーザビーム11をレーザヘッド4から出射する(S6)。このとき、物品24はX軸方向に移動しているので、レーザヘッド4をY軸方向に移動することにより、コードをマーキングすることができる。或いは、レーザヘッド4を複数のドットマトリクスに構成してもよい。
ベルトコンベア25上に物品24が通過中は(S7でNO)、温度センサ14によりレーザヘッド4の温度を検出し、もし、規定の温度以上になった場合(S8でNO)冷却器5から冷却水10を供給して(S9)レーザヘッド4を冷却する。ベルトコンベア25上の物品24はそのまま移動し続けると、センサ22が物品の後端を検出して移動が完了したことを認識するので(S7でYES)、ステップS1に戻って次の物品のマーキングに移行する。
【0015】
即ち、ベルトコンベア25には物品24が載置されていることで、ベルトコンベア25を駆動して順番に物品24にマーキングしていく。しかし、ベルトコンベア25に物品24が載置されていない場合は、ベルトコンベア25を無駄に駆動する必要はない。そこで本発明では、所定の時間に亘って物品24を検出しない場合(S10でYES)、ベルトコンベア25を停止する(S11)。これにより、無駄なベルトコンベア25の駆動を無くすことができる。
また、物品24表面の合焦動作には所定の時間が必要となる。また、物品24が移動したまま合焦動作を行なうことは難しい。そこで本発明では、合焦動作のときは、一旦ベルトコンベア25を停止し(S2)、合焦が成立したら再びベルトコンベア25を駆動しながら(S5)レーザビーム11によりマーキングを行う(S6)。これにより、合焦動作とマーキングを確実に行うことができる。
また、大量の物品のトレーサビリティを確実に行なうには、各物品にマーキングされたコードが全て1対1に対応していることが重要である。そのためには、コード体系が枯渇しないことが好ましい。それには、公知のuコードが最適である。uコードの最大の特徴は、コード自体に意味を持たせず、コードを発行された対象に関する様々な属性情報は、uコードによって検索されるデータベースに全て格納されている点にある。これにより、コード体系を維持しながら大量の物品のトレーサビリティを実現することができる。
また、ステップS6でマーキングする場合、ベルトコンベア25を停止したままマーキングするのが一般的であるが、その結果、マーキングに要する時間が長くなり、生産性が低下する。そこで本発明では、ベルトコンベア25を駆動したまま、XY軸方向にレーザヘッド4を移動することによりマーキングを行なう。これにより、マーキングの速度を速めて生産性を高めることができる。このとき、ベルトコンベア25の移動速度に比べてマーキングの速度を速くすることにより、画像の歪みを最小限にすることができる。
【0016】
図4はレーザ波長と水に対する吸収スペクトルの関係を示す図である。縦軸に水への吸収性(1/mm)を示し、横軸にレーザ波長(μm)を示す。この図から明らかな通り、Er:YAGレーザに限らず、2.6μm乃至3.5μm、又は5.6μm乃至6.8μm若しくは水の吸収が1000cm-1の条件を満足するレーザであれば使用が可能であることが解る。
好適には、水の吸収性は波長2.94μm(Er:YAGLASER)のときが最大となることが解る。即ち、Er:YAGLASERは、水を含んだ生体組織に対する蒸散能力が高く、しかも、それは表層のみに起こると考えられている。この原理を利用して本発明では、水を含んだ食料品の表層にEr:YAGLASERによりマーキングを施す。
【0017】
図5は図2のレーザマーキングシステムのレーザヘッドが物品表面に合焦する方法を説明する図である。図5では、レーザヘッド4は支柱23に固定されており、レンズ20を移動させることによりレーザビーム11の焦点深度を変えている。即ち、図5(a)は物品24の高さが高いため焦点深度d1は浅くなっている。また、図5(b)は物品24の高さが低いため焦点深度d2は深くなっている。その結果、物品の高さによりd1>d2の関係となる。また、図5(c)は物品24が包装袋30に収容されている場合であり、包装袋30が透明であれば、物品24に焦点深度を合わせることにより、包装袋30の外から物品24のみにマーキングを行うことができる。
【0018】
図6は図2のレーザマーキングシステムのレーザヘッドが物品表面に合焦する他の方法を説明する図である。図6では、レーザヘッド4の焦点深度は固定され、レーザヘッド4を支柱23に沿って上下に移動させることにより、レーザビーム11の焦点深度を変えている。即ち、図6(a)は物品24の高さが高いためレーザヘッド4を殆ど移動させることなく焦点深度はd1となっている。また、図6(b)は物品24の高さが低いためレーザヘッド4を下方に移動することにより焦点深度d2としている。その結果、物品の高さに関係なくd1=d2となる。また、図6(c)は物品24が包装袋30に収容されている場合であり、包装袋30が透明であれば、物品24に焦点深度を合わせることにより、包装袋30の外から物品24のみにマーキングを行うことができる。
尚、物品を所定の大きさの箱等に梱包したり、或いは、大きさが均等な物品については、一定の焦点深度にレンズ20を固定しておくことができるので、物品24がベルトコンベア25上に存在するか否かを検出するのみで、物品24にマーキングすることができる。
【0019】
図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)、は本発明のレーザマーキング装置100により、手動で食品の表面にマーキングした実施例を説明する図である。各図に記す左側の数字は1秒間のパルス数を表し、右側の数字はエネルギ(mJ)を表している。例えば、10−100は1秒間に10回のパルス照射で1回のパルスのエネルギが100mJであることを表している。
図7(a)は茄子の表面に、10−100の条件で「なす」とマーキングした例である。同様に、図7(b)はキュウリの表面に、10−100の条件で「キュウリ」とマーキングした例である。図7(c)はピーマンの表面に、10−100の条件で「ピーマン」とマーキングした例である。図8(a)はスルメイカの表面に、10−100の条件で「イカ」とマーキングした例である。図8(b)はコンブの表面に、10−50の条件で「コンブ」とマーキングした例である。図8(c)はせんべいの表面に、10−70の条件で「せんべい」とマーキングした例である。図9(a)はネギの表面に、10−150の条件で「ネギ」とマーキングした例である。以上は、食品の表面に直接マーキングした例を示したが、直接マーキングすると商品価値が低下する食品については、図9(b)のような、透明な可食体(例えばイカシート)を食品の表面に貼付してマーキングすることも可能である。また、図9(c)は、ポリプロピレンの袋で包装したせんべいに10−70の条件でマーキングした例である。レーザビームの焦点をせんべいに合焦することにより、袋には全く傷つけることなくマーキングすることができる。
即ち、波長が2.94μmのレーザは、水分に最も大きく反応することにより、物品表面の水分を蒸散して、物品の表層だけにレーザビームが到達する。従って、対象となる物品の表面に水分が含有することが好ましい。これにより、大部分の物品にレーザによりマーキングすることができる。
【0020】
以上の説明では、マーキングの対象を食品に限って説明したが、表面に水分を含有する物品であれば、食品に限定されることなくマーキングが可能である。また、パルス数とレーザのエネルギは、マーキングする物品の種類により本実施例で説明した数値に限定されることなく、変更しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザマーキング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のレーザマーキング装置100を使用して、大量の物品に自動的にマーキングするレーザマーキングシステム110の概略的な構成を示す図である。
【図3】本発明に係るレーザマーキングシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】レーザ波長と水に対する吸収スペクトルの関係を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は図2のレーザマーキングシステムのレーザヘッドが物品表面に合焦する方法を説明する図である。
【図6】(a)〜(c)は図2のレーザマーキングシステムのレーザヘッドが物品表面に合焦する他の方法を説明する図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明のレーザマーキング装置100により、手動で食品の表面にマーキングした実施例を説明する図である(その1)。
【図8】(a)〜(c)は本発明のレーザマーキング装置100により、手動で食品の表面にマーキングした実施例を説明する図である(その2)。
【図9】(a)〜(c)は本発明のレーザマーキング装置100により、手動で食品の表面にマーキングした実施例を説明する図である(その3)。
【符号の説明】
【0022】
1 操作パネル、2 コントローラ、2a 変調部、2b パワーモニタ部、2c 温度検出部、3 レーザ電源ユニット、4 レーザヘッド、5 冷却器、6 シャッタ制御信号、7 パワーモニタ信号、8 AC100V、9 ランプ電圧、10 冷却水、11 レーザビーム、冷却器制御信号、13 制御信号、14 温度センサ、20 レンズ、21、22 センサ、23 支柱、24 物品、25 ベルトコンベア、28 制御装置、100 レーザビーム装置、110 レーザビームシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームにより物品表面に画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングするレーザマーキング装置であって、前記レーザビームを出射するレーザヘッドと、該レーザヘッドに電力を供給するレーザ電源と、前記レーザビームを変調する変調部と、前記レーザヘッドから出射されるパワーをモニタするパワーモニタ部と、を備え、
前記レーザビームの波長を2.6μm乃至3.5μm、又は5.6μm乃至6.8μm若しくは水の吸収が1000cm-1、及びエネルギを30mJ乃至150mJに設定することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
前記変調部は、前記レーザビームを間欠的に出射するように動作することを特徴とする請求項1に記載のレーザマーキング装置。
【請求項3】
前記レーザヘッドが所定の温度を超えた場合に、該レーザヘッドを冷却する冷却部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザマーキング装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドは、複数のレーザビーム出射口がマトリックス状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のレーザマーキング装置と、前記物品を載置して所定速度で移動させる移動手段と、該移動手段上の物品表面に前記レーザビームを合焦させる合焦手段と、前記移動手段上の物品を検出する検出手段と、制御手段と、を備えたレーザマーキングシステムであって、
前記制御手段は、前記検出手段により前記移動手段上の物品を検出し、且つ前記合焦手段により前記物品の表面にレーザビームが合焦したことを検出したとき、前記レーザマーキング装置により所定の画像、又は/及び、コード、又は/及び、文字をマーキングすることを特徴とするレーザマーキングシステム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段が所定の時間に亘って前記物品を検出しない場合、前記移動手段を停止することを特徴とする請求項5に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出手段により物品が検出された場合は、前記移動手段を一旦停止し、該物品表面に前記レーザビームを合焦して前記移動手段を再度駆動させながらマーキングを行なうことを特徴とする請求項5又は6に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項8】
前記所定のコードは、uコードにより構成されていることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項9】
前記合焦手段は、前記レーザヘッドを移動するヘッド移動手段を備え、前記移動手段上の物品の高さに応じて前記ヘッド移動手段を上下に駆動することにより、前記移動手段上の物品表面に前記レーザビームを合焦させることを特徴とする請求項5乃至8の何れか一項に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項10】
前記レーザヘッドをXY軸方向に移動させる軸方向移動手段を備え、前記移動手段上の物品が移動中に前記軸方向移動手段により前記レーザヘッドをXY軸方向に移動することにより、前記物品表面にマーキングを行なうことを特徴とする請求項5乃至9の何れか一項に記載のレーザマーキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−29909(P2010−29909A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195208(P2008−195208)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000222026)東北電子産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】