レーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法
【課題】透光性基板にひびが生じることを抑制可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】本発明のレーザー加工装置は、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、を備える。
【解決手段】本発明のレーザー加工装置は、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法に関し、特には、透光性基板上に形成された太陽電池膜にレーザーを照射して、太陽電池膜を部分的に除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜型の太陽電池パネルでは、ガラス等の透光性基板上に、透明電極膜、半導体膜および裏面電極膜などを含む太陽電池膜が形成されている。この透光性基板の縁部には、フレームが取り付けられることから、太陽電池膜を除去して絶縁領域を確保する必要がある。
【0003】
こうした太陽電池膜を除去する手段の1つとして、透光性基板越しにレーザーを照射して太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−540950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のレーザー加工装置では、図9A及び図9Bに示されるように、強度が一様かつ矩形状にビーム整形されたレーザーパルスが用いられ、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように照射位置が制御されることで、ハッチング加工が行われる。
【0006】
しかしながら、太陽電池膜の除去には比較的高強度のレーザーパルスが用いられることから、レーザーパルスが重複して照射されると、その部分に印加されるエネルギーの合計が過剰となって、透光性基板にひびが生じやすいことが判明した。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、透光性基板にひびが生じることを抑制可能なレーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のレーザー加工装置は、透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置であって、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、前記レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の太陽電池パネルの製造方法は、透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去する太陽電池パネルの製造方法であって、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する、ことを特徴とする。
【0010】
上記本発明によると、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが用いられるので、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複しても、その部分に印加されるエネルギーの合計が抑制されて、透光性基板にひびが生じることが抑制される。
【0011】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスは、前記光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有する。具体的な例では、前記レーザーパルスの強度分布がガウス分布を示す。これによると、レーザー発振器で生成されるレーザー光を、複雑な整形を施すことなく利用できる。なお、前記レーザーパルスは、中央部の強度が一様な強度分布を有してもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスが照射される領域が円状である。これによると、レーザー発振器で生成されるレーザー光を、複雑なビーム整形を施すことなく利用できる。
【0013】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスが照射される領域が千鳥状に配列する。これによると、レーザーパルスが照射される領域の隙間を抑制できる。
【0014】
また、この態様では、前記レーザーパルスが照射される領域と、この領域と縁部が重複する複数の領域との各中心間距離が等しいことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様では、前記透光性基板は、前記太陽電池膜が上側に位置した姿勢で、下面の一部に当接するテーブル上に載置され、前記照射位置制御部は、前記透光性基板の下側から前記レーザーパルスを照射する。これによると、透光性基板の太陽電池膜が形成される側に触れることなく、レーザーパルスを照射できる。
【0016】
本発明の一態様では、前記照射位置制御部と前記透光性基板とを相対移動させる搬送部を更に備える。これによると、レーザーパルスの照射方向を大きく変えることなく、太陽電池膜が除去される部分を相対移動方向に延ばすことができる。
【0017】
また、この態様では、前記照射位置制御部は、相対移動方向と交差する方向に離れて複数配置されてもよい。これによると、透光性基板の両側の縁部で太陽電池膜を同時に除去できる。
【0018】
また、この態様では、前記複数の照射位置制御部の間隔を調整する間隔調整部を更に備えてもよい。これによると、透光性基板の幅が異なる場合であっても、透光性基板の両側の縁部で太陽電池膜を同時に除去できる。
【0019】
また、この態様では、前記搬送部は、前記透光性基板を面内方向に回転させてもよい。これによると、太陽電池膜が除去される部分を異なる方向に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を表すブロック図である。
【図2】透光性基板の搬送の説明図である。
【図3】透光性基板の搬送の説明図である。
【図4A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図4B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図5】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図6】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図7A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図7B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図8A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図8B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図9A】従来技術におけるレーザーパルスの説明図である。
【図9B】従来技術におけるレーザーパルスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のレーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、レーザー加工装置1の構成例を表すブロック図である。レーザー加工装置1では、装置全体の制御を司る制御部2に、レーザー出力部3、照射位置制御部4、基板搬送部5及び間隔調整部6が接続されている。
【0023】
レーザー出力部3は、例えばYAGレーザー又はファイバーレーザー等からなるレーザー発振器と、発振制御回路とを含み、所定の出力周期でレーザーパルスを出力する。照射位置制御部4は、レーザー出力部3から光ファイバーを介して入力されるレーザーパルスの照射方向を、レーザーパルスの出力周期と同期して変化させる。照射位置制御部4は、例えばガルバノスキャナからなる。これに限られず、ポリゴンスキャナ等の他のレーザー走査系であってもよい。
【0024】
基板搬送部5は、図2及び図3に示されるように、一方の面上に太陽電池膜94が形成されたガラス等からなる透光性基板92を支持する平行移動可能なテーブル50を有している。透光性基板92は、太陽電池膜94が上側に位置する姿勢でテーブル50上に載置され、照射位置制御部4の上方を通過するように移動される。透光性基板92は、下面の中央部がテーブル50に当接し、下面の縁部が露出するように配置される。照射位置制御部4は、透光性基板92よりも下方に配置され、透光性基板92の縁部に向けてレーザーパルスを出射する。出射されたレーザーパルスは、透光性基板92を透過して、太陽電池膜94に照射される。
【0025】
具体的に、照射位置制御部4は、テーブル50によって移動される透光性基板92に対し、主にその移動方向と直交する方向にレーザーパルスを走査する。こうして、太陽電池膜94のうち透光性基板92の移動方向に延びる帯状の部分Sが除去されて、絶縁領域が形成される。本例では、透光性基板92の移動方向と直交する方向に離れて2つの照射位置制御部4が設けられており、矩形状の透光性基板92の対となる2つの縁部に絶縁領域が一斉に形成される。
【0026】
また、透光性基板92の対となる2つの縁部に絶縁領域が形成された後、基板搬送部5は、透光性基板92を90度回転させた上で、それまでの移動方向とは逆方向に移動させる。このとき、間隔調整部6は、2つの照射位置制御部4の間隔を調整して、これらを透光性基板92の別の2つの縁部に対して位置決めする。これにより、透光性基板92の全ての縁部に絶縁領域が形成される。
【0027】
以上のような透光性基板92の縁部に絶縁領域を形成する工程は、薄膜型太陽電池パネル製造の後工程の一部として行われる。本工程の後には、透光性基板92の縁部にフレームを取り付ける等の、モジュール化のための所定の工程が実施されて、薄膜型太陽電池パネルが完成する。
【0028】
なお、太陽電池膜94は、ITO,SnO2,ZnO等からなる透明電極膜と、アモルファスシリコン等からなる半導体膜と、Al,Ag,Ti−Ag等からなる裏面電極膜とを含んでいる。太陽電池膜94は、半導体膜が1層のみ設けられるシングル型に限られず、半導体膜が複数層設けられるタンデム型やトリプル型であってもよい。
【0029】
以下、レーザーパルスの照射について具体的に説明する。まず、レーザー出力部3にYAGレーザーを用いた場合の例について説明する。図4A及び図4Bは、太陽電池膜94に照射されるレーザーパルスの説明図である。レーザー出力部3から出力され、照射位置制御部4から太陽電池膜94に照射されるレーザーパルスは、光軸を中心とする円状のビーム形状を有し、その強度分布は、光軸を中心とするガウス分布を示す。こうしたレーザーパルスの特性は、レーザー発振器で生成されるレーザーパルスの特性とほぼ共通することから、本例では、レーザー出力部3に強度の均一化といった複雑な整形を施す光学系が必要とならず、レーザー発振器で生成されるレーザーパルスをほぼそのまま利用できる。
【0030】
照射位置制御部4は、レーザーパルスが照射される円状の照射領域10の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を順次移動させていく。レーザーパルスが照射された照射領域10では、太陽電池膜94が除去されて、絶縁領域が形成される。具体的に、照射位置制御部4は、図4B中の矢印SDの方向にレーザーパルスを走査し、照射領域10の列を延ばしていく。また、矢印CDの方向は、透光性基板92の搬送方向であり、これとは逆方向に照射領域10の列が増加していく。照射領域10の各列は、隣接列に対して照射領域10の中心間距離の半分だけ矢印SDの方向にずれている。すなわち、照射領域10は、千鳥状に配列している。
【0031】
図5に示されるように、各照射領域10は、これに縁部が重複する6つの照射領域10と各中心間距離Pが等しくなるように形成されている。具体的には、各照射領域10は、矢印SDの方向に隣接する2つの照射領域10の中心と、これらと矢印CDの方向に隣接する照射領域10の中心とを結んだ三角形が正三角形となるように形成されている。すなわち、矢印SDの方向に延びる照射領域10の列は、隣接列に対して照射領域10の中心間距離Pの√3/2倍の距離だけ矢印CDの方向にずれている。また、照射領域10の中心間距離Pは、隙間を抑制するために、照射領域10の半径の√3倍以下であることが好ましい。
【0032】
以上のように照射領域10が形成されるとき、レーザーパルスの強度は、図6のように示される。すなわち、各レーザーパルスのうち、比較的強度の高い中央部は単独で照射され、比較的強度の低い縁部は重複して照射され、レーザーパルスの強度の合計は、図6中の破線に示されるように均一化される。このため、レーザーパルスが重複して照射される部分では、印加されるエネルギーの合計が抑制されることとなり、透光性基板92にひびが生じることを抑制することができる。
【0033】
照射位置制御部4によるレーザーパルスの照射手順について説明する。図7Aは、照射領域10が形成される順番を表している。照射位置制御部4は、矢印SDの方向に沿って往復するように、レーザーパルスの照射領域10を順次形成していく。ここで、透光性基板92は、矢印CDの方向に相対移動していることから、照射位置制御部4は、図7Bに示されるように、1本の照射領域10の列を形成する間、レーザーパルスの照射方向を相対移動と同じ側へ順次ずらしていく。その後、照射位置制御部4は、レーザーパルスの照射方向を相対移動とは逆側へずらし、再び照射領域10の列の形成を開始する。すなわち、照射位置制御部4は、∞字状にレーザーパルスの照射方向を調整しながら、照射領域10を順次形成していく。
【0034】
次に、レーザー出力部3にファイバーレーザーを用いた場合の例について説明する。ファイバーレーザーとは、ファイバーを発振器として利用したレーザーである。この場合、レーザー出力部3から出力されるレーザーパルスは、図8Aに示されるように、光軸を含む中央部の強度が一様であると共に、縁部では光軸から離れるに従って強度が低くなる強度分布を有する。中央部で強度が一様になるのは、ファイバーで発振を行うためであり、強度が一様な部分の幅は、ファイバーの径に対応する。本例でも、レーザー出力部3に複雑な整形を施す光学系が必要とならず、ファイバーレーザーから出力されるレーザーパルスをほぼそのまま利用できる。
【0035】
照射位置制御部4は、上記の例と同様に、レーザーパルスが照射される円状の照射領域10の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を順次移動させていく。このように照射領域10が形成されるとき、レーザーパルスの強度は、図8Bのように示される。すなわち、各レーザーパルスのうち、強度が一様な中央部は単独で照射され、それよりも強度の低い縁部は重複して照射される。このため、レーザーパルスが重複して照射される部分では、印加されるエネルギーの合計が抑制されることとなり、透光性基板92にひびが生じることを抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1 レーザー加工装置、2 制御部、3 レーザー出力部、4 照射位置制御部、5 基板搬送部、6 間隔調整部、10 照射領域、50 テーブル、92 透光性基板、94 太陽電池膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法に関し、特には、透光性基板上に形成された太陽電池膜にレーザーを照射して、太陽電池膜を部分的に除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜型の太陽電池パネルでは、ガラス等の透光性基板上に、透明電極膜、半導体膜および裏面電極膜などを含む太陽電池膜が形成されている。この透光性基板の縁部には、フレームが取り付けられることから、太陽電池膜を除去して絶縁領域を確保する必要がある。
【0003】
こうした太陽電池膜を除去する手段の1つとして、透光性基板越しにレーザーを照射して太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−540950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のレーザー加工装置では、図9A及び図9Bに示されるように、強度が一様かつ矩形状にビーム整形されたレーザーパルスが用いられ、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように照射位置が制御されることで、ハッチング加工が行われる。
【0006】
しかしながら、太陽電池膜の除去には比較的高強度のレーザーパルスが用いられることから、レーザーパルスが重複して照射されると、その部分に印加されるエネルギーの合計が過剰となって、透光性基板にひびが生じやすいことが判明した。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであり、透光性基板にひびが生じることを抑制可能なレーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のレーザー加工装置は、透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置であって、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、前記レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の太陽電池パネルの製造方法は、透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去する太陽電池パネルの製造方法であって、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する、ことを特徴とする。
【0010】
上記本発明によると、少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが用いられるので、レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複しても、その部分に印加されるエネルギーの合計が抑制されて、透光性基板にひびが生じることが抑制される。
【0011】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスは、前記光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有する。具体的な例では、前記レーザーパルスの強度分布がガウス分布を示す。これによると、レーザー発振器で生成されるレーザー光を、複雑な整形を施すことなく利用できる。なお、前記レーザーパルスは、中央部の強度が一様な強度分布を有してもよい。
【0012】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスが照射される領域が円状である。これによると、レーザー発振器で生成されるレーザー光を、複雑なビーム整形を施すことなく利用できる。
【0013】
本発明の一態様では、前記レーザーパルスが照射される領域が千鳥状に配列する。これによると、レーザーパルスが照射される領域の隙間を抑制できる。
【0014】
また、この態様では、前記レーザーパルスが照射される領域と、この領域と縁部が重複する複数の領域との各中心間距離が等しいことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様では、前記透光性基板は、前記太陽電池膜が上側に位置した姿勢で、下面の一部に当接するテーブル上に載置され、前記照射位置制御部は、前記透光性基板の下側から前記レーザーパルスを照射する。これによると、透光性基板の太陽電池膜が形成される側に触れることなく、レーザーパルスを照射できる。
【0016】
本発明の一態様では、前記照射位置制御部と前記透光性基板とを相対移動させる搬送部を更に備える。これによると、レーザーパルスの照射方向を大きく変えることなく、太陽電池膜が除去される部分を相対移動方向に延ばすことができる。
【0017】
また、この態様では、前記照射位置制御部は、相対移動方向と交差する方向に離れて複数配置されてもよい。これによると、透光性基板の両側の縁部で太陽電池膜を同時に除去できる。
【0018】
また、この態様では、前記複数の照射位置制御部の間隔を調整する間隔調整部を更に備えてもよい。これによると、透光性基板の幅が異なる場合であっても、透光性基板の両側の縁部で太陽電池膜を同時に除去できる。
【0019】
また、この態様では、前記搬送部は、前記透光性基板を面内方向に回転させてもよい。これによると、太陽電池膜が除去される部分を異なる方向に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を表すブロック図である。
【図2】透光性基板の搬送の説明図である。
【図3】透光性基板の搬送の説明図である。
【図4A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図4B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図5】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図6】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図7A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図7B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図8A】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図8B】太陽電池膜に照射されるレーザーパルスの説明図である。
【図9A】従来技術におけるレーザーパルスの説明図である。
【図9B】従来技術におけるレーザーパルスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のレーザー加工装置および太陽電池パネルの製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、レーザー加工装置1の構成例を表すブロック図である。レーザー加工装置1では、装置全体の制御を司る制御部2に、レーザー出力部3、照射位置制御部4、基板搬送部5及び間隔調整部6が接続されている。
【0023】
レーザー出力部3は、例えばYAGレーザー又はファイバーレーザー等からなるレーザー発振器と、発振制御回路とを含み、所定の出力周期でレーザーパルスを出力する。照射位置制御部4は、レーザー出力部3から光ファイバーを介して入力されるレーザーパルスの照射方向を、レーザーパルスの出力周期と同期して変化させる。照射位置制御部4は、例えばガルバノスキャナからなる。これに限られず、ポリゴンスキャナ等の他のレーザー走査系であってもよい。
【0024】
基板搬送部5は、図2及び図3に示されるように、一方の面上に太陽電池膜94が形成されたガラス等からなる透光性基板92を支持する平行移動可能なテーブル50を有している。透光性基板92は、太陽電池膜94が上側に位置する姿勢でテーブル50上に載置され、照射位置制御部4の上方を通過するように移動される。透光性基板92は、下面の中央部がテーブル50に当接し、下面の縁部が露出するように配置される。照射位置制御部4は、透光性基板92よりも下方に配置され、透光性基板92の縁部に向けてレーザーパルスを出射する。出射されたレーザーパルスは、透光性基板92を透過して、太陽電池膜94に照射される。
【0025】
具体的に、照射位置制御部4は、テーブル50によって移動される透光性基板92に対し、主にその移動方向と直交する方向にレーザーパルスを走査する。こうして、太陽電池膜94のうち透光性基板92の移動方向に延びる帯状の部分Sが除去されて、絶縁領域が形成される。本例では、透光性基板92の移動方向と直交する方向に離れて2つの照射位置制御部4が設けられており、矩形状の透光性基板92の対となる2つの縁部に絶縁領域が一斉に形成される。
【0026】
また、透光性基板92の対となる2つの縁部に絶縁領域が形成された後、基板搬送部5は、透光性基板92を90度回転させた上で、それまでの移動方向とは逆方向に移動させる。このとき、間隔調整部6は、2つの照射位置制御部4の間隔を調整して、これらを透光性基板92の別の2つの縁部に対して位置決めする。これにより、透光性基板92の全ての縁部に絶縁領域が形成される。
【0027】
以上のような透光性基板92の縁部に絶縁領域を形成する工程は、薄膜型太陽電池パネル製造の後工程の一部として行われる。本工程の後には、透光性基板92の縁部にフレームを取り付ける等の、モジュール化のための所定の工程が実施されて、薄膜型太陽電池パネルが完成する。
【0028】
なお、太陽電池膜94は、ITO,SnO2,ZnO等からなる透明電極膜と、アモルファスシリコン等からなる半導体膜と、Al,Ag,Ti−Ag等からなる裏面電極膜とを含んでいる。太陽電池膜94は、半導体膜が1層のみ設けられるシングル型に限られず、半導体膜が複数層設けられるタンデム型やトリプル型であってもよい。
【0029】
以下、レーザーパルスの照射について具体的に説明する。まず、レーザー出力部3にYAGレーザーを用いた場合の例について説明する。図4A及び図4Bは、太陽電池膜94に照射されるレーザーパルスの説明図である。レーザー出力部3から出力され、照射位置制御部4から太陽電池膜94に照射されるレーザーパルスは、光軸を中心とする円状のビーム形状を有し、その強度分布は、光軸を中心とするガウス分布を示す。こうしたレーザーパルスの特性は、レーザー発振器で生成されるレーザーパルスの特性とほぼ共通することから、本例では、レーザー出力部3に強度の均一化といった複雑な整形を施す光学系が必要とならず、レーザー発振器で生成されるレーザーパルスをほぼそのまま利用できる。
【0030】
照射位置制御部4は、レーザーパルスが照射される円状の照射領域10の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を順次移動させていく。レーザーパルスが照射された照射領域10では、太陽電池膜94が除去されて、絶縁領域が形成される。具体的に、照射位置制御部4は、図4B中の矢印SDの方向にレーザーパルスを走査し、照射領域10の列を延ばしていく。また、矢印CDの方向は、透光性基板92の搬送方向であり、これとは逆方向に照射領域10の列が増加していく。照射領域10の各列は、隣接列に対して照射領域10の中心間距離の半分だけ矢印SDの方向にずれている。すなわち、照射領域10は、千鳥状に配列している。
【0031】
図5に示されるように、各照射領域10は、これに縁部が重複する6つの照射領域10と各中心間距離Pが等しくなるように形成されている。具体的には、各照射領域10は、矢印SDの方向に隣接する2つの照射領域10の中心と、これらと矢印CDの方向に隣接する照射領域10の中心とを結んだ三角形が正三角形となるように形成されている。すなわち、矢印SDの方向に延びる照射領域10の列は、隣接列に対して照射領域10の中心間距離Pの√3/2倍の距離だけ矢印CDの方向にずれている。また、照射領域10の中心間距離Pは、隙間を抑制するために、照射領域10の半径の√3倍以下であることが好ましい。
【0032】
以上のように照射領域10が形成されるとき、レーザーパルスの強度は、図6のように示される。すなわち、各レーザーパルスのうち、比較的強度の高い中央部は単独で照射され、比較的強度の低い縁部は重複して照射され、レーザーパルスの強度の合計は、図6中の破線に示されるように均一化される。このため、レーザーパルスが重複して照射される部分では、印加されるエネルギーの合計が抑制されることとなり、透光性基板92にひびが生じることを抑制することができる。
【0033】
照射位置制御部4によるレーザーパルスの照射手順について説明する。図7Aは、照射領域10が形成される順番を表している。照射位置制御部4は、矢印SDの方向に沿って往復するように、レーザーパルスの照射領域10を順次形成していく。ここで、透光性基板92は、矢印CDの方向に相対移動していることから、照射位置制御部4は、図7Bに示されるように、1本の照射領域10の列を形成する間、レーザーパルスの照射方向を相対移動と同じ側へ順次ずらしていく。その後、照射位置制御部4は、レーザーパルスの照射方向を相対移動とは逆側へずらし、再び照射領域10の列の形成を開始する。すなわち、照射位置制御部4は、∞字状にレーザーパルスの照射方向を調整しながら、照射領域10を順次形成していく。
【0034】
次に、レーザー出力部3にファイバーレーザーを用いた場合の例について説明する。ファイバーレーザーとは、ファイバーを発振器として利用したレーザーである。この場合、レーザー出力部3から出力されるレーザーパルスは、図8Aに示されるように、光軸を含む中央部の強度が一様であると共に、縁部では光軸から離れるに従って強度が低くなる強度分布を有する。中央部で強度が一様になるのは、ファイバーで発振を行うためであり、強度が一様な部分の幅は、ファイバーの径に対応する。本例でも、レーザー出力部3に複雑な整形を施す光学系が必要とならず、ファイバーレーザーから出力されるレーザーパルスをほぼそのまま利用できる。
【0035】
照射位置制御部4は、上記の例と同様に、レーザーパルスが照射される円状の照射領域10の縁部同士が重複するように、レーザーパルスの照射位置を順次移動させていく。このように照射領域10が形成されるとき、レーザーパルスの強度は、図8Bのように示される。すなわち、各レーザーパルスのうち、強度が一様な中央部は単独で照射され、それよりも強度の低い縁部は重複して照射される。このため、レーザーパルスが重複して照射される部分では、印加されるエネルギーの合計が抑制されることとなり、透光性基板92にひびが生じることを抑制することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が当業者にとって可能であるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1 レーザー加工装置、2 制御部、3 レーザー出力部、4 照射位置制御部、5 基板搬送部、6 間隔調整部、10 照射領域、50 テーブル、92 透光性基板、94 太陽電池膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置であって、
少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、
前記レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記レーザーパルスは、前記光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記レーザーパルスの強度分布がガウス分布を示す、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記レーザーパルスは、中央部の強度が一様な強度分布を有する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記レーザーパルスが照射される領域が円状である、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記レーザーパルスが照射される領域が千鳥状に配列する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
前記レーザーパルスが照射される領域と、この領域と縁部が重複する複数の領域との各中心間距離が等しい、
請求項6に記載のレーザー加工装置。
【請求項8】
前記透光性基板は、前記太陽電池膜が上側に位置した姿勢で、下面の一部に当接するテーブル上に載置され、
前記照射位置制御部は、前記透光性基板の下側から前記レーザーパルスを照射する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項9】
前記照射位置制御部と前記透光性基板とを相対移動させる搬送部を更に備える、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項10】
前記照射位置制御部は、相対移動方向と交差する方向に離れて複数配置される、
請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項11】
前記複数の照射位置制御部の間隔を調整する間隔調整部を更に備える、 請求項10に記載のレーザー加工装置。
【請求項12】
前記搬送部は、前記透光性基板を面内方向に回転させる、
請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項13】
透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去する太陽電池パネルの製造方法であって、
少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する、
ことを特徴とする太陽電池パネルの製造方法。
【請求項1】
透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去するレーザー加工装置であって、
少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスを順次出力するレーザー出力部と、
前記レーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する照射位置制御部と、
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
前記レーザーパルスは、前記光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
前記レーザーパルスの強度分布がガウス分布を示す、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
前記レーザーパルスは、中央部の強度が一様な強度分布を有する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
前記レーザーパルスが照射される領域が円状である、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
前記レーザーパルスが照射される領域が千鳥状に配列する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
前記レーザーパルスが照射される領域と、この領域と縁部が重複する複数の領域との各中心間距離が等しい、
請求項6に記載のレーザー加工装置。
【請求項8】
前記透光性基板は、前記太陽電池膜が上側に位置した姿勢で、下面の一部に当接するテーブル上に載置され、
前記照射位置制御部は、前記透光性基板の下側から前記レーザーパルスを照射する、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項9】
前記照射位置制御部と前記透光性基板とを相対移動させる搬送部を更に備える、
請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項10】
前記照射位置制御部は、相対移動方向と交差する方向に離れて複数配置される、
請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項11】
前記複数の照射位置制御部の間隔を調整する間隔調整部を更に備える、 請求項10に記載のレーザー加工装置。
【請求項12】
前記搬送部は、前記透光性基板を面内方向に回転させる、
請求項9に記載のレーザー加工装置。
【請求項13】
透光性基板上に形成された太陽電池膜に、前記透光性基板を透過してレーザーパルスを照射して、前記太陽電池膜を部分的に除去する太陽電池パネルの製造方法であって、
少なくとも縁部において光軸に近づくに従って強度が高くなる強度分布を有するレーザーパルスが照射される領域の縁部同士が重複するように、前記レーザーパルスの照射位置を制御する、
ことを特徴とする太陽電池パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2011−62714(P2011−62714A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214057(P2009−214057)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【出願人】(509045313)日清紡アルプステック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【出願人】(509045313)日清紡アルプステック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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