レーザ光源ユニット及び光音響画像生成装置
【課題】レーザ光源ユニットにおいて、簡易な構成で、複数の波長を連続的に切り替えながらQスイッチパルス発振を得る。
【解決手段】レーザ光源ユニット13は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射する。フラッシュランプ52は、レーザロッド51に励起光を照射する。一対のミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向する。一対のミラー53、54により、光共振器が構成される。波長選択手段56は、光共振器内で共振する光の波長を、レーザ光源ユニット13が出射すべき複数の波長のうちの何れかに制御する。駆動手段57は、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段56を駆動する。
【解決手段】レーザ光源ユニット13は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射する。フラッシュランプ52は、レーザロッド51に励起光を照射する。一対のミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向する。一対のミラー53、54により、光共振器が構成される。波長選択手段56は、光共振器内で共振する光の波長を、レーザ光源ユニット13が出射すべき複数の波長のうちの何れかに制御する。駆動手段57は、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段56を駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源ユニットに関し、更に詳しくは、複数波長のレーザ光を切り替えて出射するレーザ光源ユニットに関する。
【0002】
また、本発明は、複数の波長のレーザ光を被検体に照射したときに各波長に対して検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響画像化装置が知られている。この光音響画像化装置においては、例えばパルスレーザ光等のパルス光が生体に照射される。このパルス光の照射を受けた生体内部では、パルス光のエネルギーを吸収した生体組織が熱によって体積膨張し、音響波が発生する。この音響波を超音波プローブなどで検出し、検出された信号(光音響信号)に基づいて生体内部を可視像化することが可能となっている。光音響画像化方法では、特定の光吸収体において音響波が発生するため、生体における特定の組織、例えば血管等を画像化することができる。
【0004】
ところで、生体組織の多くは光吸収特性が光の波長に応じて変わり、また一般に、その光吸収特性も組織ごとに特有のものとなっている。例えば図20に、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)と、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の光波長ごとの分子吸収係数を示す。動脈の光吸収特性は、酸素化ヘモグロビンのそれに対応し、静脈の光吸収特性は、脱酸素化ヘモグロビンのそれに対応する。この波長に応じた光吸収率の違いを利用して、互いに異なる2種の波長の光を血管部分に照射し、動脈と静脈とを区別して画像化する光音響画像化方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
複数波長のレーザ光を出射するレーザ装置は、例えば特許文献3や特許文献4に記載されたものが知られている。特許文献3では、特定のピーク波長光だけを選択的に透過させるフィルタを、レーザ活性媒体と光共振器ミラーのうちの一方との間の光路上に配置する。選択すべきピーク波長の分だけフィルタを用意し、用意されたフィルタのうちの何れかを光路上に配置することで、複数の波長のレーザ光を切り替えて出射することができる。また、特許文献4には、光共振器を構成する一方のミラーに、特定のピーク波長光だけを選択的に反射する特性を持たせることが記載されている。そのような特性を持つミラーを選択すべきピーク波長の分だけ用意し、用意されたミラーの何れかを用いて光共振器を構成することで、複数の波長のレーザ光を切り替えて出射することができる。
【0006】
光音響では、一般に、被検体にパルスレーザ光を照射する。レーザをパルス化する技術として、Qスイッチ法が知られており、Qスイッチの一種として、機械的な運動によりQスイッチ発振を生じさせるメカニカルQスイッチが知られている。メカニカルQスイッチとしては、例えば回転ミラーを使用して機械的にゲインを制御してQスイッチ動作を生じさせるものや、スリットや開口を設けたメカニカル・チョッパを回転させてゲインを調整するものなどが知られている。回転するメカニカル・チョッパを用いたQスイッチレーザは、例えば特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−21380号公報
【特許文献2】特開2010−046215号公報
【特許文献3】特開平10−65260号公報
【特許文献4】特開平10−65238号公報
【特許文献5】特開2007−235063号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A High-Speed Photoacoustic Tomography System based on a Commercial Ultrasound and a Custom Transducer Array, Xueding Wang, Jonathan Cannata, Derek DeBusschere, Changhong Hu, J. Brian Fowlkes, and Paul Carson, Proc. SPIE Vol. 7564, 756424 (Feb.23, 2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載されるレーザ装置では、複数の波長を切り替えることができる。しかしながら、特許文献3に記載されるのは、単に、光路中に挿入されるフィルタを切り替えることでレーザ光の波長を切り替えることでしかなく、特許文献3は、複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射するための手段を提供していない。特許文献4も同様に、光共振器を構成するミラーの一方を切り替えることでレーザ光の波長を切り替えることが記載されるのみで、複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射するための手段を提供していない。
【0010】
また、特許文献5は、メカニカル・チョッパの回転によりパルスレーザ光を得ることが記載されているだけであり、特許文献5においては、複数波長の切り替えは考慮されていない。仮に、引用文献5において、複数の波長のパルスレーザ光を得ることを考えると、メカニカル・チョッパとは別個に、波長を選択するための手段を設ける必要があり、構成部品が増加することとなる。
【0011】
本発明は、上記に鑑み、簡易な構成で、複数の波長を連続的に切り替えながらQスイッチパルス発振を得ることができるレーザ光源ユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなレーザ光源ユニットを含む光音響画像生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内で共振する光の波長を、複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするレーザ光源ユニットを提供する。
【0013】
本発明のレーザ光源ユニットにおいて、波長選択手段は、回転駆動可能で有り、波長選択手段の回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明のレーザ光源ユニットが、励起光源を制御する発光制御部を更に備え、該発光制御部が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻で励起光源に励起光を照射させる構成を採用することができる。
【0015】
本発明のレーザ光源ユニットでは、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える時刻と同時刻に励起光源が消灯することが好ましい。
【0016】
波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限をm回とし、駆動手段が波長選択手段を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数としたとき、発光制御部が、1秒あたりm×F/n回励起光を照射させることとしてもよい。
【0017】
本発明のレーザ光源ユニットにおいて、波長選択手段の駆動に伴って光共振器内の挿入損失が第1の損失から第2の損失へと切り替わる際の切り替え時間が、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短いことが好ましい。
【0018】
波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを含み、複数の透過領域が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させるフィルタ回転体を含み、駆動手段が、光共振器の光路上に不透過領域及び透過領域が交互に挿入されるようにフィルタ回転体を連続的に回転させるものであり、光共振器の光路上に挿入される領域が不透過領域から透過領域へと切り替わると、該切り替わった透過領域が透過させる光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振する構成を採用できる。この場合、フィルタ回転体が、光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転するようにしてもよい。透過領域がバンドパスフィルタを含む構成としてもよい。透過領域は、扇型に形成されていてもよいし、円形に形成されていてもよい。
【0019】
上記に代えて、波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含み、複数の反射領域が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、駆動手段が、光共振器の光路上に光を反射しない領域及び反射領域が交互に挿入されるようにミラー回転体を連続的に回転させるものであり、ミラー回転体の反射領域が一対のミラーのうちの一方として働き、光共振器の光路上に挿入される領域が光を反射しない領域から反射領域へと切り替わると、該切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振すること構成を採用してもよい。
【0020】
あるいは、波長選択手段が、一対のミラーのうちの一方として機能する複数の反射面を有し、該複数の反射面が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、駆動手段が、一対のミラーのうちの他方と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるようにミラー回転体を連続的に回転させるものであり、反射面が光共振器の光軸に対して垂直になるとき、該光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振することとしてもよい。
【0021】
光共振器内に配置され、光共振器内を波長選択手段に向けて進行する光のビーム径を縮小させる集光レンズを更に有する構成とすることが好ましい。
【0022】
集光レンズが、波長選択手段の位置における光のビーム径を100μm以下とすることとしてもよい。
【0023】
本発明は、また、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内で共振する光の波長を、複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段を駆動する駆動手段とを有するレーザ光源ユニットと、複数の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【0024】
本発明の光音響画像生成装置では、波長選択手段が、回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されており、波長選択手段の回転位置を検出する駆動状態検出手段と、波長選択手段が所定の回転速度で回転するように駆動手段を制御する回転制御部と、駆動状態検出手段が検出した回転位置が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、励起光源に励起光を照射させる発光制御部とを更に備える構成を採用することができる。
【0025】
回転制御部が、駆動状態検出手段が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように駆動手段を制御することとしてもよい。
【0026】
発光制御部が、駆動状態検出手段が検出した回転位置が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える回転位置になると同期信号を生成し、検出手段が、同期信号に基づいて光音響信号の検出を開始する構成としてもよい。
【0027】
各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、光音響画像構築手段が、光音響画像の各画素の階調値を強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を抽出された大小関係に基づいて決定することとしてもよい。
【0028】
レーザ光源ユニットが出射するパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、強度比抽出手段が再構成画像から大小関係としての位相情報を抽出し、強度情報抽出手段が再構成画像から強度情報を抽出する構成を採用することができる。
【0029】
検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える構成としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のレーザ光源ユニットでは、光共振器内で共振する光の波長を複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。本発明では波長選択手段がQスイッチとしても働くため、光共振器内に、Qスイッチと波長選択手段とを別個に配置する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】波長選択手段構成例を示す図。
【図4】透過領域における波長と透過率との関係を示すグラフ。
【図5】レーザ光源ユニットの一部を示しているブロック図。
【図6】フラッシュランプ発光のタイミングとパルスレーザ光のタイミングとを示すタイミングチャート。
【図7】パルスレーザ光出射を示すタイミングチャート。
【図8】第1実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すフローチャート。
【図9】フィルタ回転体の別の構成例を示す図。
【図10】透過領域付近の断面を示す断面図。
【図11】4つの波長を切り替えて出射する場合の波長選択手段の構成例を示す図。
【図12】パルスレーザ光出射を示すタイミングチャート。
【図13】波長選択手段がリアミラーを兼ねる場合のレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図14】反射領域における波長と反射率との関係を示すグラフ。
【図15】2つの面を持つミラー回転体を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図16】5つの面を持つミラー回転体(多面体)を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図17】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図18】第2実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すブロック図。
【図19】Qスイッチ繰り返しの周波数をフィルタ回転体の回転周波数よりも低くした例を示すタイミングチャート。
【図20】酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光波長ごとの分子吸収係数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置10は、超音波探触子(プローブ)11と、超音波ユニット12と、レーザ光源ユニット13とを備える。レーザ光源ユニット13は、被検体に照射すべきパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を切り替えて出射する。以下の説明においては、主に、レーザ光源ユニット13が、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とを順次に出射するものとして説明する。なお、本発明の実施形態では、音響波として超音波を用いるが、超音波に限定されるものでは無く、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択してさえいれば、可聴周波数の音響波を用いても良い。
【0033】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。先に説明した図20を参照すると、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0034】
レーザ光源ユニット13から出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。パルスレーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ11以外の場所からパルスレーザ光の照射を行ってもよい。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで超音波(音響波)が生じる。プローブ11は、超音波検出器を含む。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波検出器素子(超音波振動子)を有し、その一次元配列された超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響信号)を検出する。
【0035】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、複素数化手段24、光音響画像再構成手段25、位相情報抽出手段26、強度情報抽出手段27、検波・対数変換手段28、光音響画像構築手段29、トリガ制御回路30、及び制御手段31を有する。受信回路21は、プローブ11が検出した光音響信号を受信する。AD変換手段22は検出手段であり、受信回路21が受信した光音響信号をサンプリングし、デジタルデータである光音響データを生成する。AD変換手段22は、ADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で光音響信号のサンプリングを行う。
【0036】
AD変換手段22は、光音響データを受信メモリ23に格納する。AD変換手段22は、レーザ光源ユニット13から出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響データを受信メモリ23に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ23に格納する。
【0037】
複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、複素数化手段24が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0038】
光音響画像再構成手段25は、複素数化手段24から複素数データを入力する。光音響画像再構成手段25は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段25は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを位相情報抽出手段26と強度情報抽出手段27とに入力する。
【0039】
位相情報抽出手段26は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、位相情報抽出手段26は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を抽出する。位相情報抽出手段26は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0040】
強度情報抽出手段27は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段27は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段27は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段28は、強度情報抽出手段27で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0041】
光音響画像構築手段29は、位相情報抽出手段26から位相情報を入力し、検波・対数変換手段28から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段29は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段29は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段29は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段29は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0042】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第2の光音響データが第1の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。
【0043】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が青色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。画像表示手段14は、光音響画像構築手段29が生成した光音響画像を表示画面上に表示する。
【0044】
次いで、レーザ光源ユニット13の構成を詳細に説明する。図2は、レーザ光源ユニット13の構成を示す。レーザ光源ユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、集光レンズ55、波長選択手段56、駆動手段57、駆動状態検出手段58、及び制御部59を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源、例えば半導体レーザや固体レーザを、励起光源として用いてもよい。
【0045】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ここではミラー54が、出力側ミラーであるものとする。光共振器内には、集光レンズ55と波長選択手段56とが配置される。波長選択手段56は、光共振器内で共振する光の波長を、出射すべき複数の波長のうちの何れかに制御する。集光レンズ55は、レーザロッド51と波長選択手段56との間に配置され、レーザロッド51側から入射した光を収束して波長選択手段56側に出射する。つまり、集光レンズ55は、光共振器内を波長選択手段56に向けて進行する光のビーム径を縮小させる。
【0046】
波長選択手段56は、例えば、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを有する。複数の透過領域は、複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させる。波長選択手段56は、例えば2つの透過領域と2つの不透過領域とを有する。透過領域のうちの1つには、例えば波長750nm(中心波長)の光を透過させる第1のバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)が設けられ、もう1つには波長800nm(中心波長)の光を透過させる第2のバンドパスフィルタが設けられる。
【0047】
上記構成の波長選択手段56は、回転に伴って、複数のバンドパスフィルタの何れかを光共振器の光路上に選択的に挿入する。例えば波長選択手段56は、光共振器の光路上に、不透過領域→第1のバンドパスフィルタ→不透過領域→第2のバンドパスフィルタを順次に挿入する。光共振器の光路上に第1のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を750nmとすることができ、光共振器の光路上に第2のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を800nmとすることができる。
【0048】
波長選択手段56は、回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を損失大(第1の損失)から損失小(第2の損失)に変化させるように構成されている。第1又は第2のバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入されるとき、光共振器の挿入損失は損失小(高Q)となり、光路上に不透過領域が挿入されるとき、光共振器の挿入損失は損失大(低Q)となる。波長選択手段56はQスイッチを兼ねており、回転駆動に伴って、波長選択手段56が光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。
【0049】
駆動手段57は、波長選択手段56を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。つまり、駆動手段57は、波長選択手段56が光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させるように、波長選択手段56を駆動する。例えば波長選択手段56が円周方向に沿って透過領域(バンドパスフィルタ)と不透過領域とが交互に配置されたフィルタ回転体で構成される場合、駆動手段57は、光共振器の光路上に不透過領域及び透過領域が交互に挿入されるようにフィルタ回転体を連続的に回転させる。波長選択手段56の駆動に伴う、光共振器内の挿入損失が損失高から損失小へと切り替わる際の切り替え時間は、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短いことが好ましい。光共振器の光路上に挿入される領域を不透過領域から透過領域(第1又は第2のバンドパスフィルタ)へと切り替えることで、光路上に挿入された透過領域(バンドパスフィルタ)が透過させる光の波長に対応した波長で、光共振器をQスイッチパルス発振させることができる。
【0050】
駆動状態検出手段58は、波長選択手段56の駆動状態を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばフィルタ回転体である波長選択手段56の回転変位を検出する。駆動状態検出手段58は、フィルタ回転体の回転変位を示すBPF状態情報を制御部59に出力する。
【0051】
制御部59は、回転制御部60と発光制御部61とを含む。回転制御部60は、波長選択手段56が所定の回転速度で回転するように駆動手段58を制御する。波長選択手段56の回転速度は、例えばレーザ光源ユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長の数(フィルタ回転体におけるバンドパスフィルタの数)と、単位時間当たりのパルスレーザ光の個数とに基づいて決定できる。回転制御部59は、駆動状態検出手段58が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように駆動手段57を制御する。回転制御部59は、例えば所定時間の間におけるBPF状態情報の変化の量が所定のバンドパスフィルタの切替え速度(フィルタ回転体の回転速度)に応じた変化量となるように、駆動手段57を制御する。
【0052】
発光制御部61は、フラッシュランプ52を制御する。発光制御部61は、フラッシュランプ制御信号をフラッシュランプ52に出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。発光制御部61は、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を出力し、励起光を照射させる。つまり、発光制御部61は、駆動状態検出手段58が検出した回転位置が、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、励起光を照射させる。
【0053】
例えば発光制御部61は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入される波長選択手段56の駆動位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に波長選択手段56が変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプ制御信号を出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。発光制御部61は、フラッシュランプ制御信号の出力後、駆動状態検出手段58が検出した回転位置が、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える回転位置になると、Qスイッチがオンになるタイミングを示すQスイッチ同期信号を生成し、超音波ユニット12に出力する。
【0054】
図1に戻り、制御手段31は、超音波ユニット12内の各部の制御を行う。トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に対して、波長選択手段56の回転速度を制御するためのBPF制御信号を出力する。また、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に、フラッシュランプ52の発光を制御するためのフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。トリガ制御回路30は、例えばレーザ光源ユニット13の回転制御部60からフィルタ回転体の現在の回転変位位置を受け取っており、受け取った回転変位位置に基づくタイミングでフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。
【0055】
トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から、Qスイッチがオンになるタイミング、すなわちレーザ発光タイミングを示すQスイッチ同期信号を入力する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号(ADトリガ信号)を出力する。AD変換手段22は、サンプリングトリガ信号に基づいて光音響信号のサンプリングを開始する。
【0056】
図3は、波長選択手段56の構成例を示す。波長選択手段56は、例えば図3に示すような、透過波長が相互に異なる複数の透過領域(バンドパスフィルタ)を含むフィルタ回転体70として構成される。フィルタ回転体70は、波長750nmの光を選択的に透過させる第1の透過領域71と、波長800nmの光を選択的に透過させる第2の透過領域72と、光を透過しない不透過領域73、74とを有する。なお、不透過領域は、完全に光を遮光するまでの能力は要求されない。不要なレーザ発振が生じない程度に、わずかに光が透過してもよい。
【0057】
第1の透過領域71及び第2の透過領域72は、例えばそれぞれ中心角θの扇型に形成される。集光レンズ55(図2)で集光された光は、フィルタ回転体の周縁部に照射される。フィルタ回転体70を時計回りに回転させると、光共振器の光路上に、第1の透過領域71、不透過領域73、第2の透過領域72、及び不透過領域74をこの順に挿入できる。第1の透過領域71と第2の透過領域72とで、各領域を透過する光の波長を変える、すなわち各透過領域に設けるバンドパスフィルタの透過波長を変えることで、パルスごとに波長が異なるパルスレーザ光を得ることができる。
【0058】
図4は、透過領域における波長と透過率との関係を示す。第1の透過領域(第1のバンドパスフィルタ)71における中心波長750nmの光に対する透過率は90%以上あるものとする。帯域幅はおよそ10nmである。第2の透過領域(第2のバンドパスフィルタ)72における中心波長800nmの光に対する透過率は90%以上である。帯域幅はおよそ10nmである。
【0059】
ここで、フィルタ回転体70の回転周波数が100Hz(回転速度6000rpm)であるとする。その場合、1回転あたり2つの透過領域を通過することから、レーザ光源ユニット13が出射するパルスレーザ光の個数は1秒あたり200個となる(200Hz動作)。フィルタ回転体70として半径2インチ(50.4mm)のフィルタ回転体を考える。また、ビーム径は100μmとする。角速度はω=2πf=628.3[rad/sec]となり、線速度はv=rω=628.8[rad/sec]×50.4[mm]=31.7[m/s]となる。ビームを横切る時間(スイッチング時間)は3.15μsecとなる。
【0060】
Qスイッチの特性として、スイッチング時間(例えば不透過領域から第1又は第2の透過領域への切替時間)はおおよそ数μ秒以下であること(Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも小さいこと)が、シングルパルスを得るための条件である。透過領域の中心角θは、ビームを横切る時間+Qスイッチ遅延時間の間、ビームを妨げない条件で選ばれる。上記数値例では、3.15μsec+数μsec=おおよそ10μsecの間、透過領域が続けばよい。31.7[m/s]×10μsec=317μmが横幅の長さであり、角度にすると0.35°である。製作のことを考えると、中心角θは1°から数度あればよい。
【0061】
図5は、レーザ光源ユニット13の一部を示している。波長選択手段56は、例えば図3に示すような、2つのバンドパスフィルタ(透過する光の波長が異なる2つの透過領域)を含むフィルタ回転体70として構成される。フィルタ回転体70上でのビーム径は小さい方がよい。そこで、本実施形態では集光レンズ55を用いてビームを収束させている。フィルタ回転体70上でのビーム径は望ましくは100μm以下である。下限は回折限界で決まり、数μmφである。なお、フィルタ回転体70は、光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転するように、光軸に対して例えば0.5°から1°程度だけ傾けられる。このように光共振器の光軸に対してわずかに斜めに配置することで、不要な反射成分が寄生発振を起こすことを防止できる。
【0062】
駆動手段57は例えばサーボモータであり、波長選択手段56(フィルタ回転体70)を回転軸に沿って回転させる。フィルタ回転体70の回転周波数は高い方がよい。機械的には1kHz程度まで可能である。駆動状態検出手段58は、例えばロータリーエンコーダーで構成される。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとでフィルタ回転体の回転変位を検出し、フィルタ回転体70の回転を電気信号(BPF状態信号)に変換する。この電気信号をマスタークロックとし、発光制御部61に同期信号として送る。発光制御部61は、高精度に回転しているフィルタ回転体70の回転に合わせて、フラッシュランプ発光のタイミングを決定する。
【0063】
図6は、フラッシュランプ発光のタイミングとパルスレーザ光のタイミングとを示す。時刻t2は、回転しているフィルタ回転体70(波長選択手段56)が不透過領域から透過領域へと切り替わる回転位置に対応した時刻であるとする。時刻t1は、時刻t2から、レーザロッド51の励起に必要な時間を差し引いた時刻である。発光制御部61は、フィルタ回転体70の回転位置が時刻t1に対応した位置になると、フラッシュランプ52を発光させる(図6の(a))。フラッシュランプ52が発光することで、レーザロッド51が励起される。
【0064】
フラッシュランプ発光後、時刻t2で、フラッシュランプが消灯するのと同時刻に、フィルタ回転体70が不透過領域から透過領域(第1の透過領域71又は第2の透過領域72)へと切り替わっていく(図6の(b))。ここで、同時刻とは、ほぼ同じ時刻も含むものであり、フラッシュランプが消灯してから、フィルタ回転体70が不透過領域から透過領域へと切り替わっていく間の時間が、パルスレーザ光の発生に影響が無い時間内であることを意味する。この不透過領域から透過領域への替わりに要する時間(スイッチング時間)はできるだけ短い方がよく、数μ秒以下、より望ましくは0.5μ秒以下である。光共振器の光路上に750nmの光を透過する透過領域が挿入されると、時刻t3で、波長750nmの光がQスイッチパルス発振し、波長750nmのパルスレーザ光が得られる(図6の(c))。一方、光共振器の光路上に挿入された透過領域が800nmの光を透過する透過領域であった場合、波長800nmの光がQスイッチパルス発振し、波長800nmのパルスレーザ光が得られる。フィルタ回転体70の透過領域部分がおよそ10μ秒程度続いた後、時刻t4で、再び不透過領域へと切り替わる。
【0065】
図7は、パルスレーザ光出射を示す。図3に示すような、不透過領域73、74の間に第1の透過領域71と第2の透過領域72とが設けられているフィルタ回転体70を用いた場合、図7に示すように、パルスごとに、波長750nmと波長800nmとを切り替えたパルスレーザ光を得ることができる。フィルタ回転体の回転周波数を100Hzとすれば、波長を交互に切り替えつつ、1秒間に200個のパルスレーザ光を得ることができる。
【0066】
図8は、光音響画像生成装置10の動作手順を示す。ここでは、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の波長選択手段(フィルタ回転体)56を回転させる旨のBPF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップA1)。
【0067】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、1つ目の波長(例えば750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する(ステップA2)。レーザ光源ユニット13の発光制御部61は、フラッシュランプスタンバイ信号を受け取った後、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる(ステップA3)。発光制御部61は、BPF状態情報に基づいて、例えば波長選択手段56の回転変位位置が不透過領域74(図3)から波長750nmの光を透過させる第1の透過領域71へと切り替わるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ制御信号を出力する。フラッシュランプ52が点灯することで、レーザロッド51の励起が開始される。
【0068】
フラッシュランプの点灯後、波長選択手段56が回転を続け、光共振器の光路上に挿入される部分が不透過領域74から第1の透過領域71へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる(ステップA4)。このとき第1の透過領域71は波長750nmの光を選択的に透過させるため、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。発光制御部61は、Qスイッチがオンになるタイミング、言い換えるとパルスレーザ光が出射するタイミングを示すQスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する(ステップA5)。
【0069】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。プローブ11で検出された光音響信号は、受信回路21にて受信される。
【0070】
トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21で受信された光音響信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングする(ステップA6)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0071】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり出射すべき複数の波長のパルスレーザ光の全てを出射したか否かを判断する(ステップA7)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップA2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。発光制御部61は、ステップA3でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる。フラッシュランプの点灯後、ステップA4で、光共振器の光路上に挿入される部分が、不透過領域73から2つめの波長(800nm)に対応した第2の透過領域72へと切り替わり、Qスイッチパルス発振が起こる。これにより、波長800nmのパルスレーザ光が出射する。発光制御部61は、ステップA5で、Qスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する。
【0072】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、ステップA6で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、被検体に照射すべきパルスレーザ光の各波長に対してステップA1からA6を実行し、各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。
【0073】
制御手段31は、ステップA7で残りの波長がないと判断すると、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップA8)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップA2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップA2からA7を実行し、各部分領域に各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射し、各部分領域に対応した第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射及び光音響信号の検出を行うと、1フレームの光音響画像を生成するために必要な光音響データが揃う。
【0074】
制御手段31は、ステップA8で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像の生成に処理を移す。複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップA9)。光音響画像再構成手段25は、ステップA8で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップA10)。
【0075】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データ(再構成画像)から位相情報を抽出する(ステップA11)。位相情報抽出手段26は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として抽出する(ただし、X=0の場合はθ=90°)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップA12)。強度情報抽出手段27は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を強度情報として抽出する。
【0076】
検波・対数変換手段28は、ステップA12で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップA11で抽出された位相情報と、ステップA12で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップA13)。光音響画像構築手段29は、例えば強度情報に基づいて光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定し、位相情報に基づいて各画素の色を決定することで、光音響画像を生成する。生成された光音響画像は、画像表示手段14に表示される。
【0077】
本実施形態では、光共振器内で共振する光の波長を複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段56を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。例えば、透過波長が異なる2つのバンドパスフィルタを含む波長選択手段56を連続的に駆動することで、2つのバンドパスフィルタを連続的、かつ選択的に光共振器の光路上に挿入することができ、レーザ光源ユニット13から複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射することができる。また、本実施形態では波長選択手段56がQスイッチとしても働くため、光共振器内に別途Qスイッチを設けなくても、Qスイッチパルス発振を得ることができる。本実施形態では、光共振器内に、Qスイッチと波長選択手段とを別個に配置する必要がないため、部品点数を削減することができる効果がある。
【0078】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射し、各波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、例えば光照射領域が3つの部分領域に分かれているときには、第1の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、次いで、第2の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、その後、第3の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射する。本実施形態では、ある部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を連続的に照射した後に、次の部分領域に移っている。この場合、第1の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射した後に、第2の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射する場合に比して、同じ位置において第1の波長のパルスレーザ光を照射してから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短くすることができる。第1の波長のパルスレーザ光が照射されてから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短縮することで、第1の光音響データと第2の光音響データとの不整合を抑制することができる。
【0080】
ここで、図9に、フィルタ回転体の別の構成例を示す。図3では、透過領域を扇型に形成したが、透過領域の形状は扇型には限定されない。例えば図9に示すように、第1の透過領域71a及び第2の透過領域72aを、円形に形成することもできる。フィルタ回転体70aは、例えば不透過領域73aを構成する金属板で構成される。金属板の表面(特にレーザロッド側)には黒色処理を施し、低反射にしておくとよい。図10に、透過領域付近の断面を示す。不透過領域73aを構成する金属板に複数の開口を設け、それら開口に各波長に対応した光フィルタ75を貼り付けることで、第1の透過領域71aと第2の透過領域72aとを形成してもよい。開口(透過領域)の大きさは、少なくともビーム径の3倍から5倍程度あればよい。開口の大きさは、それより大きくても構わない。
【0081】
波長選択手段(フィルタ回転体)56が有する透過領域の数、言い換えると、レーザ光源ユニット13が出射するレーザ光の波長の数は2つには限定されない。レーザ光源ユニット13は、3つ以上の波長のパルスレーザ光を、パルスごとに切り替えて出射してもよい。図11に、4つの波長を切り替えて出射する場合の波長選択手段56の構成例を示す。この例では、波長選択手段56は、透過波長が異なる4つの透過領域81〜84と、4つの不透過領域85〜88とを有するフィルタ回転体80として構成される。例えば第1の透過領域81は波長740nmの光を選択的に透過し、第2の透過領域82は波長760nmの光を選択的に透過する。第3の透過領域83は波長780nmの光を選択的に透過し、第4の透過領域84は波長800nmの光を選択的に透過する。フィルタ回転体80において、透過領域と不透過領域とは交互に配置される。
【0082】
上記フィルタ回転体80を時計方向に回転させることで、光共振器の光路上に、第1の透過領域81、不透過領域85、第2の透過領域82、不透過領域86、第3の透過領域83、不透過領域87、第4の透過領域84、不透過領域88を順次にこの順で挿入できる。図12は、パルスレーザ光出射を示す。図11に示すような、4つの不透過領域85〜88の間に4つの透過領域81〜84が設けられているフィルタ回転体80を用いた場合、図12に示すように、パルスごとに、波長が740nm、760nm、780nm、800nmと順次に変化するパルスレーザ光を得ることができる。フィルタ回転体の回転周波数を100Hzとすれば、波長を交互に切り替えつつ、1秒間に400個のパルスレーザ光を得ることができる(400Hz動作)。
【0083】
なお、波長選択手段(フィルタ回転体)56が有する透過領域の数と、レーザ光源ユニット13が出射するパルスレーザ光の波長の数とは、必ずしも一致していなくてもよい。例えば図11に示した4つの透過領域を有するフィルタ回転体80において、第1の透過領域81と第3の透過領域83とが同じ波長の光を選択的に透過し、第2の透過領域82と第4の透過領域84とが同じ波長の光を選択的に透過するようにしてもよい。具体的には、第1の透過領域81及び第3の透過領域83が波長750nmの光を選択的に透過し、第2の透過領域82及び第4の透過領域84が波長800nmの光を選択的に透過するようにしてもよい。この場合、フィルタ回転体が1回転する間に、パルスごとに波長が750nmと800nmとの間で切り替わる4つのパルスレーザ光を得ることができる。
【0084】
上記実施形態では、波長選択手段56として、フィルタを光共振器を構成する一対のミラー53、54の間に配置するものとして説明したが、これには限定されない。波長選択手段56が光共振器を構成する一対のミラーのうちの1つ(例えばリアミラー)を兼ねる構成としてもよい。図13は、波長選択手段56がリアミラーを兼ねる場合のレーザ光源ユニット13aの一部を示す。波長選択手段56は、例えば円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含むミラー回転体として構成される。ミラー回転体の複数の反射領域は、複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射する。反射領域は、光共振器のリアミラー54として働く。
【0085】
ミラー回転体は、図3に示したフィルタ回転体における透過領域を反射領域に置き換え、不透過領域を光を反射しない領域に置き換えた構成とすることができる。図14は、反射領域における波長と反射率との関係を示す。例えば波長750nmと800nmのパルスレーザ光を切り替えて出射する場合、第1の反射領域が波長750nmの光を選択的に反射するように構成し、第2の反射領域が波長800nmの光を選択的に反射するように構成すればよい。各反射領域の750nm/800nmの光に対する反射率は98%以上であるとする。帯域幅はおよそ10nmである。
【0086】
駆動手段57は、波長選択手段(ミラー回転体)を、光共振器の光軸に対して垂直な面内で連続的に回転させる。駆動手段57は、光共振器の光路上に、ミラー回転体の光を反射しない領域及び反射領域が交互に挿入される挿入されるように、ミラー回転体を回転させる。反射領域の形状は、図3における透過領域と同様に扇型でもよいし、図9における透過領域と同様に円形でもよい。ミラー回転体の駆動に伴い、光共振器の光路上に挿入される領域が光を反射しない領域から反射領域へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大から損失小へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる。このとき、光共振器は、切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長でQスイッチパルス発振する。
【0087】
上記では、反射領域と光を反射しない領域とが交互に配置されたミラー回転体を用いる例について説明したが、リアミラーとして機能すべき複数の反射面を持ち、それら複数の反射面が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を用いることも可能である。図15に、2つの面を持つミラー回転体を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニット13bの一部を示す。波長選択手段(ミラー回転体)56bの一方の面は波長750nmの光を選択的に反射し、他方の面は波長800nmの光を選択的に反射する。
【0088】
駆動手段57は、ミラー(出力鏡)53と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるようにミラー回転体を連続的に回転させる。例えばミラー回転体が回転していき、波長750nmの光を反射する反射面が光共振器の光軸に対して垂直となると、光共振器内で波長750nmの光が共振する。また、波長800nmの光を反射する反射面が光共振器の光軸に対して垂直となると、光共振器内で波長800nmの光が共振する。それ以外の角度では共振は起こらない。このような駆動の仕方でも、光共振器内の挿入損失を急速に損失大から損失小へと急速に切り換えることができ、光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で光共振器をQスイッチパルス発振させることができる。
【0089】
図16に、5つの面を持つミラー回転体(多面体)を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニット13cの一部を示す。波長選択手段(ミラー回転体)56cは、波長740nmの光を選択的に反射する面と、波長760nmの光を選択的に反射する面と、波長780nmの光を選択的に反射する面と、波長800nmの光を選択的に反射する面と、波長820nmの光を選択的に反射する面とを有する。駆動手段57は、波長選択手段(ミラー回転多面体)56cを、ミラー53と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるように連続的に回転させる。このようにすることで、パルスごとに、波長が820nm、800nm、780nm、760nm、740nm、720nmと順次に変化するパルスレーザ光を得ることができる。
【0090】
引き続き、本発明の第2実施形態を説明する。図17は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置10aは、超音波ユニット12aが、図1に示す第1実施形態の光音響画像生成装置10における超音波ユニット12の構成に加えて、データ分離手段32、超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、超音波画像構築手段35、画像合成手段36、及び送信制御回路37を有する。本実施形態の光音響画像生成装置10は、光音響画像に加えて、超音波画像を生成する点で第1実施形態と相違する。その他の部分は、第1実施形態と同様でよい。
【0091】
本実施形態では、プローブ11は、光音響信号の検出に加えて、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び送信した超音波に対する被検体からの反射超音波の検出(受信)を行う。トリガ制御回路30は、超音波画像の生成時は、送信制御回路37に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路37は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、超音波の送信後、被検体からの反射超音波を検出する。
【0092】
プローブ11が検出した反射超音波は、受信回路21を介してAD変換手段22に入力される。トリガ制御回路30は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。AD変換手段22は、反射超音波のサンプリングデータ(反射超音波データ)を受信メモリ23に格納する。
【0093】
データ分離手段32は、受信メモリ23に格納された反射超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段32は、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡し、第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡す。第1及び第2の光音響データに基づく光音響画像の生成は第1実施形態と同様である。データ分離手段32は、分離した反射超音波のサンプリングデータを、超音波画像再構成手段33に入力する。
【0094】
超音波画像再構成手段33は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された反射超音波(そのサンプリングデータ)に基づいて、超音波画像の各ラインのデータを生成する。超音波画像再構成手段33は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。
【0095】
検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、及び超音波画像構築手段35は、反射超音波に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段を構成する。
【0096】
画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段36は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えて表示することも可能である。
【0097】
図18は、光音響画像生成装置10aの動作手順を示している。以下では、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の波長選択手段(フィルタ回転体)56を回転させる旨のBPF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップB1)。
【0098】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、1つ目の波長(例えば750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する(ステップB2)。レーザ光源ユニット13の発光制御部61は、フラッシュランプスタンバイ信号を受け取った後、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる(ステップB3)。発光制御部61は、BPF状態情報に基づいて、例えば波長選択手段56の回転変位位置が不透過領域74(図3)から波長750nmの光を透過させる第1の透過領域71へと切り替わるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ制御信号を出力する。フラッシュランプ52が点灯することで、レーザロッド51の励起が開始される。
【0099】
フラッシュランプの点灯後、波長選択手段56が回転を続け、光共振器の光路上に挿入される部分が不透過領域74から第1の透過領域71へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる(ステップB4)。このとき第1の透過領域71は波長750nmの光を選択的に透過させるため、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。発光制御部61は、Qスイッチがオンになるタイミング、言い換えるとパルスレーザ光が出射するタイミングを示すQスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する(ステップB5)。
【0100】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受けると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21を介してプローブ11で検出された光音響信号を受信し、所定のサンプリング周期で光音響信号をサンプリングする(ステップB6)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0101】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり出射すべき複数の波長のパルスレーザ光の全てを出射させたか否かを判断する(ステップB7)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップB2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。発光制御部61は、ステップA3でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる。フラッシュランプの点灯後、ステップB4で、光共振器の光路上に挿入される部分が、不透過領域73から2つめの波長(800nm)に対応した第2の透過領域72へと切り替わり、Qスイッチパルス発振が起こる。これにより、波長800nmのパルスレーザ光が出射する。発光制御部61は、ステップB5で、Qスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する。
【0102】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受けるとAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップB6で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、被検体に照射すべきパルスレーザ光の各波長に対してステップB1からB6を実行し、各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。ステップB1からB6は、図8のステップA1からA6と同様でよい。
【0103】
制御手段31は、ステップB7で残りの波長がないと判断すると、超音波の送受信に処理を移す。トリガ制御回路30は、送信制御回路37を介してプローブ11から被検体に超音波を送信させる(ステップB8)。ステップB8では、被検体のパルスレーザ光が照射された部分領域と同じ領域に対して超音波を送信する。プローブ11は、送信した超音波に対する反射超音波を検出する(ステップB9)。検出された反射超音波は、受信回路21を経てAD変換手段22でサンプリングされ、受信メモリ23に反射超音波データとして格納される。
【0104】
制御手段31は、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップB10)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップB2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップB2からB7を実行し、各部分領域に各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射して、第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。また、ステップB8及びB9を実行して、反射超音波データを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射と光音響信号の検出、及び超音波の送受信を行うと、1フレームの光音響画像及び超音波画像を生成するために必要なデータが揃う。
【0105】
制御手段31は、ステップB10で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像及び超音波画像の生成に処理を移す。データ分離手段32は、第1及び第2の光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段32は、分離した第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡す。複素数化手段24は、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップB11)。光音響画像再構成手段25は、ステップB11で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップB12)。
【0106】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データから位相情報を抽出する(ステップB13)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップB14)。検波・対数変換手段28は、ステップB14で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップB13で抽出された位相情報と、ステップB14で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップB15)。ステップB11からB15は、図8のステップA9からA13と同様でよい。
【0107】
超音波画像再構成手段33は、例えば遅延加算法により、超音波画像の各ラインのデータを生成する。検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する(ステップB16)。画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成し、合成した画像を画像表示手段14に表示する(ステップB17)。
【0108】
本実施形態では、光音響画像生成装置は、光音響画像に加えて超音波画像を生成する。超音波画像を参照することで、光音響画像では画像化することができない部分を観察することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0109】
なお、上記各実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。さらに、ここでは、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られる。また、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0110】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば位相情報抽出手段26は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段27は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0111】
ここで、フィルタ回転体の回転数を上げ、スイッチング時間をできるだけ短くすることで、ビーム径がフィルタ上にダメージを起こさない程度に大きい場合でも(>100μm)、Qスイッチを掛けることができる。しかしながら、そのような場合に、回転にフラッシュランプを追随させると、Qスイッチ繰り返しも上がり光音響に望ましくない。そのような場合は、フィルタ回転体の回転周波数に対するフラッシュランプ発光の周波数を下げ、Qスイッチ繰り返しを所望のレートに制御して、Qスイッチパルスの周波数が上がりすぎることを防げばよい。
【0112】
図19に、Qスイッチ繰り返しの周波数をフィルタ回転体の回転周波数よりも低くした例を示す。波長選択手段56が、図3に示すフィルタ回転体70で構成される場合、フィルタ回転体70の回転周波数を100Hzとすると、フィルタ回転体70は2つの透過領域を有するため、光共振器の光路上に透過領域が1秒間に200回挿入される(図19の(a))。発光制御部61(図2)は、透過領域が光共振器の光路上に挿入されるたびにフラッシュランプを発光するのに代えて、例えば5回に1回の割合いでフラッシュランプを発光させる(図19の(b))。この場合、レーザ光源ユニット13が1秒間あたりに出射するパルスレーザ光の個数を40個に落とすことができる(図19の(c))。
【0113】
上記のように、フィルタ回転体の回転周波数(1秒間あたりに挿入される透過領域の数)に対するフラッシュランプ発光の周波数を下げることで、Qスイッチパルスの周波数を低下させることができる。上記例のように、5回に1回の割合いでフラッシュランプを発光させた場合、透過領域が光共振器の光路上に挿入されるたびにフラッシュランプを発光すれば200Hz動作となるところ、その1/5の40Hz動作を実現できる。
【0114】
例えば波長選択手段56が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限(最大値)をm回とする。例えば波長選択手段56が図11に示した4つの透過領域を有するフィルタ回転体80で構成されるとき、フィルタ回転体80では不透過領域から透過領域への切り替えが1回転につき4回あるため、波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限は4回である。また、波長選択手段が図16に示した5つの反射面を有するミラー回転体で構成される場合、ミラー回転体を1回転させる間に、順次、5つの反射面が光共振器の光軸に対して垂直になるため、波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限は5回となる。駆動手段57が波長選択手段56を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数としたとき、発光制御部は、1秒あたりm×F/n回前記励起光を照射させる。その場合、Qスイッチパルスの周波数を1/nに下げることができる。
【0115】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のレーザ光源ユニット及び光音響画像生成装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10:光音響画像生成装置
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザ光源ユニット
14:画像表示手段
21:受信回路
22:AD変換手段
23:受信メモリ
24:複素数化手段
25:光音響画像再構成手段
26:位相情報抽出手段
27:強度情報抽出手段
28:検波・対数変換手段
29:光音響画像構築手段
30:トリガ制御回路
31:制御手段
32:データ分離手段
33:超音波画像再構成手段
34:検波・対数変換手段
35:超音波画像構築手段
36:画像合成手段
37:送信制御回路
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:集光レンズ
56:波長選択手段
57:駆動手段
58:駆動状態検出手段
59:制御部
60:回転制御部
61;発光制御部
70:フィルタ回転体
71、72:透過領域
73、74:不透過領域
75:光フィルタ
80:フィルタ回転体
81〜84:透過領域
85〜88:不透過領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源ユニットに関し、更に詳しくは、複数波長のレーザ光を切り替えて出射するレーザ光源ユニットに関する。
【0002】
また、本発明は、複数の波長のレーザ光を被検体に照射したときに各波長に対して検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、例えば特許文献1や非特許文献1に示されているように、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響画像化装置が知られている。この光音響画像化装置においては、例えばパルスレーザ光等のパルス光が生体に照射される。このパルス光の照射を受けた生体内部では、パルス光のエネルギーを吸収した生体組織が熱によって体積膨張し、音響波が発生する。この音響波を超音波プローブなどで検出し、検出された信号(光音響信号)に基づいて生体内部を可視像化することが可能となっている。光音響画像化方法では、特定の光吸収体において音響波が発生するため、生体における特定の組織、例えば血管等を画像化することができる。
【0004】
ところで、生体組織の多くは光吸収特性が光の波長に応じて変わり、また一般に、その光吸収特性も組織ごとに特有のものとなっている。例えば図20に、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)と、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の光波長ごとの分子吸収係数を示す。動脈の光吸収特性は、酸素化ヘモグロビンのそれに対応し、静脈の光吸収特性は、脱酸素化ヘモグロビンのそれに対応する。この波長に応じた光吸収率の違いを利用して、互いに異なる2種の波長の光を血管部分に照射し、動脈と静脈とを区別して画像化する光音響画像化方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
複数波長のレーザ光を出射するレーザ装置は、例えば特許文献3や特許文献4に記載されたものが知られている。特許文献3では、特定のピーク波長光だけを選択的に透過させるフィルタを、レーザ活性媒体と光共振器ミラーのうちの一方との間の光路上に配置する。選択すべきピーク波長の分だけフィルタを用意し、用意されたフィルタのうちの何れかを光路上に配置することで、複数の波長のレーザ光を切り替えて出射することができる。また、特許文献4には、光共振器を構成する一方のミラーに、特定のピーク波長光だけを選択的に反射する特性を持たせることが記載されている。そのような特性を持つミラーを選択すべきピーク波長の分だけ用意し、用意されたミラーの何れかを用いて光共振器を構成することで、複数の波長のレーザ光を切り替えて出射することができる。
【0006】
光音響では、一般に、被検体にパルスレーザ光を照射する。レーザをパルス化する技術として、Qスイッチ法が知られており、Qスイッチの一種として、機械的な運動によりQスイッチ発振を生じさせるメカニカルQスイッチが知られている。メカニカルQスイッチとしては、例えば回転ミラーを使用して機械的にゲインを制御してQスイッチ動作を生じさせるものや、スリットや開口を設けたメカニカル・チョッパを回転させてゲインを調整するものなどが知られている。回転するメカニカル・チョッパを用いたQスイッチレーザは、例えば特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−21380号公報
【特許文献2】特開2010−046215号公報
【特許文献3】特開平10−65260号公報
【特許文献4】特開平10−65238号公報
【特許文献5】特開2007−235063号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A High-Speed Photoacoustic Tomography System based on a Commercial Ultrasound and a Custom Transducer Array, Xueding Wang, Jonathan Cannata, Derek DeBusschere, Changhong Hu, J. Brian Fowlkes, and Paul Carson, Proc. SPIE Vol. 7564, 756424 (Feb.23, 2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載されるレーザ装置では、複数の波長を切り替えることができる。しかしながら、特許文献3に記載されるのは、単に、光路中に挿入されるフィルタを切り替えることでレーザ光の波長を切り替えることでしかなく、特許文献3は、複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射するための手段を提供していない。特許文献4も同様に、光共振器を構成するミラーの一方を切り替えることでレーザ光の波長を切り替えることが記載されるのみで、複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射するための手段を提供していない。
【0010】
また、特許文献5は、メカニカル・チョッパの回転によりパルスレーザ光を得ることが記載されているだけであり、特許文献5においては、複数波長の切り替えは考慮されていない。仮に、引用文献5において、複数の波長のパルスレーザ光を得ることを考えると、メカニカル・チョッパとは別個に、波長を選択するための手段を設ける必要があり、構成部品が増加することとなる。
【0011】
本発明は、上記に鑑み、簡易な構成で、複数の波長を連続的に切り替えながらQスイッチパルス発振を得ることができるレーザ光源ユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなレーザ光源ユニットを含む光音響画像生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内で共振する光の波長を、複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするレーザ光源ユニットを提供する。
【0013】
本発明のレーザ光源ユニットにおいて、波長選択手段は、回転駆動可能で有り、波長選択手段の回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明のレーザ光源ユニットが、励起光源を制御する発光制御部を更に備え、該発光制御部が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻で励起光源に励起光を照射させる構成を採用することができる。
【0015】
本発明のレーザ光源ユニットでは、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える時刻と同時刻に励起光源が消灯することが好ましい。
【0016】
波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限をm回とし、駆動手段が波長選択手段を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数としたとき、発光制御部が、1秒あたりm×F/n回励起光を照射させることとしてもよい。
【0017】
本発明のレーザ光源ユニットにおいて、波長選択手段の駆動に伴って光共振器内の挿入損失が第1の損失から第2の損失へと切り替わる際の切り替え時間が、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短いことが好ましい。
【0018】
波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを含み、複数の透過領域が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させるフィルタ回転体を含み、駆動手段が、光共振器の光路上に不透過領域及び透過領域が交互に挿入されるようにフィルタ回転体を連続的に回転させるものであり、光共振器の光路上に挿入される領域が不透過領域から透過領域へと切り替わると、該切り替わった透過領域が透過させる光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振する構成を採用できる。この場合、フィルタ回転体が、光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転するようにしてもよい。透過領域がバンドパスフィルタを含む構成としてもよい。透過領域は、扇型に形成されていてもよいし、円形に形成されていてもよい。
【0019】
上記に代えて、波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含み、複数の反射領域が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、駆動手段が、光共振器の光路上に光を反射しない領域及び反射領域が交互に挿入されるようにミラー回転体を連続的に回転させるものであり、ミラー回転体の反射領域が一対のミラーのうちの一方として働き、光共振器の光路上に挿入される領域が光を反射しない領域から反射領域へと切り替わると、該切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振すること構成を採用してもよい。
【0020】
あるいは、波長選択手段が、一対のミラーのうちの一方として機能する複数の反射面を有し、該複数の反射面が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、駆動手段が、一対のミラーのうちの他方と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるようにミラー回転体を連続的に回転させるものであり、反射面が光共振器の光軸に対して垂直になるとき、該光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で光共振器がQスイッチパルス発振することとしてもよい。
【0021】
光共振器内に配置され、光共振器内を波長選択手段に向けて進行する光のビーム径を縮小させる集光レンズを更に有する構成とすることが好ましい。
【0022】
集光レンズが、波長選択手段の位置における光のビーム径を100μm以下とすることとしてもよい。
【0023】
本発明は、また、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、光共振器内で共振する光の波長を、複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、光共振器がQスイッチパルス発振するように波長選択手段を駆動する駆動手段とを有するレーザ光源ユニットと、複数の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置を提供する。
【0024】
本発明の光音響画像生成装置では、波長選択手段が、回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されており、波長選択手段の回転位置を検出する駆動状態検出手段と、波長選択手段が所定の回転速度で回転するように駆動手段を制御する回転制御部と、駆動状態検出手段が検出した回転位置が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、励起光源に励起光を照射させる発光制御部とを更に備える構成を採用することができる。
【0025】
回転制御部が、駆動状態検出手段が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように駆動手段を制御することとしてもよい。
【0026】
発光制御部が、駆動状態検出手段が検出した回転位置が、波長選択手段が光共振器の挿入損失を第1の損失から第2の損失へと切り替える回転位置になると同期信号を生成し、検出手段が、同期信号に基づいて光音響信号の検出を開始する構成としてもよい。
【0027】
各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、光音響画像構築手段が、光音響画像の各画素の階調値を強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を抽出された大小関係に基づいて決定することとしてもよい。
【0028】
レーザ光源ユニットが出射するパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、強度比抽出手段が再構成画像から大小関係としての位相情報を抽出し、強度情報抽出手段が再構成画像から強度情報を抽出する構成を採用することができる。
【0029】
検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える構成としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のレーザ光源ユニットでは、光共振器内で共振する光の波長を複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。本発明では波長選択手段がQスイッチとしても働くため、光共振器内に、Qスイッチと波長選択手段とを別個に配置する必要がなく、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態のレーザ光源ユニットの構成を示すブロック図。
【図3】波長選択手段構成例を示す図。
【図4】透過領域における波長と透過率との関係を示すグラフ。
【図5】レーザ光源ユニットの一部を示しているブロック図。
【図6】フラッシュランプ発光のタイミングとパルスレーザ光のタイミングとを示すタイミングチャート。
【図7】パルスレーザ光出射を示すタイミングチャート。
【図8】第1実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すフローチャート。
【図9】フィルタ回転体の別の構成例を示す図。
【図10】透過領域付近の断面を示す断面図。
【図11】4つの波長を切り替えて出射する場合の波長選択手段の構成例を示す図。
【図12】パルスレーザ光出射を示すタイミングチャート。
【図13】波長選択手段がリアミラーを兼ねる場合のレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図14】反射領域における波長と反射率との関係を示すグラフ。
【図15】2つの面を持つミラー回転体を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図16】5つの面を持つミラー回転体(多面体)を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニットの一部を示すブロック図。
【図17】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図18】第2実施形態の光音響画像生成装置の動作手順を示すブロック図。
【図19】Qスイッチ繰り返しの周波数をフィルタ回転体の回転周波数よりも低くした例を示すタイミングチャート。
【図20】酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光波長ごとの分子吸収係数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置10は、超音波探触子(プローブ)11と、超音波ユニット12と、レーザ光源ユニット13とを備える。レーザ光源ユニット13は、被検体に照射すべきパルスレーザ光を出射する。レーザ光源ユニット13は、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を切り替えて出射する。以下の説明においては、主に、レーザ光源ユニット13が、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とを順次に出射するものとして説明する。なお、本発明の実施形態では、音響波として超音波を用いるが、超音波に限定されるものでは無く、被検対象や測定条件等に応じて適切な周波数を選択してさえいれば、可聴周波数の音響波を用いても良い。
【0033】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。先に説明した図20を参照すると、ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0034】
レーザ光源ユニット13から出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。パルスレーザ光の照射位置は特に限定されず、プローブ11以外の場所からパルスレーザ光の照射を行ってもよい。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで超音波(音響波)が生じる。プローブ11は、超音波検出器を含む。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波検出器素子(超音波振動子)を有し、その一次元配列された超音波振動子により、被検体内からの音響波(光音響信号)を検出する。
【0035】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、複素数化手段24、光音響画像再構成手段25、位相情報抽出手段26、強度情報抽出手段27、検波・対数変換手段28、光音響画像構築手段29、トリガ制御回路30、及び制御手段31を有する。受信回路21は、プローブ11が検出した光音響信号を受信する。AD変換手段22は検出手段であり、受信回路21が受信した光音響信号をサンプリングし、デジタルデータである光音響データを生成する。AD変換手段22は、ADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で光音響信号のサンプリングを行う。
【0036】
AD変換手段22は、光音響データを受信メモリ23に格納する。AD変換手段22は、レーザ光源ユニット13から出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響データを受信メモリ23に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ23に格納する。
【0037】
複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、複素数化手段24が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0038】
光音響画像再構成手段25は、複素数化手段24から複素数データを入力する。光音響画像再構成手段25は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段25は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを位相情報抽出手段26と強度情報抽出手段27とに入力する。
【0039】
位相情報抽出手段26は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、位相情報抽出手段26は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を抽出する。位相情報抽出手段26は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0040】
強度情報抽出手段27は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段27は、光音響画像再構成手段25で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段27は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段28は、強度情報抽出手段27で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0041】
光音響画像構築手段29は、位相情報抽出手段26から位相情報を入力し、検波・対数変換手段28から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段29は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段29は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段29は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段29は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0042】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第2の光音響データが第1の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。
【0043】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が青色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。画像表示手段14は、光音響画像構築手段29が生成した光音響画像を表示画面上に表示する。
【0044】
次いで、レーザ光源ユニット13の構成を詳細に説明する。図2は、レーザ光源ユニット13の構成を示す。レーザ光源ユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、集光レンズ55、波長選択手段56、駆動手段57、駆動状態検出手段58、及び制御部59を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源、例えば半導体レーザや固体レーザを、励起光源として用いてもよい。
【0045】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ここではミラー54が、出力側ミラーであるものとする。光共振器内には、集光レンズ55と波長選択手段56とが配置される。波長選択手段56は、光共振器内で共振する光の波長を、出射すべき複数の波長のうちの何れかに制御する。集光レンズ55は、レーザロッド51と波長選択手段56との間に配置され、レーザロッド51側から入射した光を収束して波長選択手段56側に出射する。つまり、集光レンズ55は、光共振器内を波長選択手段56に向けて進行する光のビーム径を縮小させる。
【0046】
波長選択手段56は、例えば、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを有する。複数の透過領域は、複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させる。波長選択手段56は、例えば2つの透過領域と2つの不透過領域とを有する。透過領域のうちの1つには、例えば波長750nm(中心波長)の光を透過させる第1のバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)が設けられ、もう1つには波長800nm(中心波長)の光を透過させる第2のバンドパスフィルタが設けられる。
【0047】
上記構成の波長選択手段56は、回転に伴って、複数のバンドパスフィルタの何れかを光共振器の光路上に選択的に挿入する。例えば波長選択手段56は、光共振器の光路上に、不透過領域→第1のバンドパスフィルタ→不透過領域→第2のバンドパスフィルタを順次に挿入する。光共振器の光路上に第1のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を750nmとすることができ、光共振器の光路上に第2のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を800nmとすることができる。
【0048】
波長選択手段56は、回転駆動に伴って、光共振器内の挿入損失を損失大(第1の損失)から損失小(第2の損失)に変化させるように構成されている。第1又は第2のバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入されるとき、光共振器の挿入損失は損失小(高Q)となり、光路上に不透過領域が挿入されるとき、光共振器の挿入損失は損失大(低Q)となる。波長選択手段56はQスイッチを兼ねており、回転駆動に伴って、波長選択手段56が光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。
【0049】
駆動手段57は、波長選択手段56を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。つまり、駆動手段57は、波長選択手段56が光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させるように、波長選択手段56を駆動する。例えば波長選択手段56が円周方向に沿って透過領域(バンドパスフィルタ)と不透過領域とが交互に配置されたフィルタ回転体で構成される場合、駆動手段57は、光共振器の光路上に不透過領域及び透過領域が交互に挿入されるようにフィルタ回転体を連続的に回転させる。波長選択手段56の駆動に伴う、光共振器内の挿入損失が損失高から損失小へと切り替わる際の切り替え時間は、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短いことが好ましい。光共振器の光路上に挿入される領域を不透過領域から透過領域(第1又は第2のバンドパスフィルタ)へと切り替えることで、光路上に挿入された透過領域(バンドパスフィルタ)が透過させる光の波長に対応した波長で、光共振器をQスイッチパルス発振させることができる。
【0050】
駆動状態検出手段58は、波長選択手段56の駆動状態を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばフィルタ回転体である波長選択手段56の回転変位を検出する。駆動状態検出手段58は、フィルタ回転体の回転変位を示すBPF状態情報を制御部59に出力する。
【0051】
制御部59は、回転制御部60と発光制御部61とを含む。回転制御部60は、波長選択手段56が所定の回転速度で回転するように駆動手段58を制御する。波長選択手段56の回転速度は、例えばレーザ光源ユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長の数(フィルタ回転体におけるバンドパスフィルタの数)と、単位時間当たりのパルスレーザ光の個数とに基づいて決定できる。回転制御部59は、駆動状態検出手段58が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように駆動手段57を制御する。回転制御部59は、例えば所定時間の間におけるBPF状態情報の変化の量が所定のバンドパスフィルタの切替え速度(フィルタ回転体の回転速度)に応じた変化量となるように、駆動手段57を制御する。
【0052】
発光制御部61は、フラッシュランプ52を制御する。発光制御部61は、フラッシュランプ制御信号をフラッシュランプ52に出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。発光制御部61は、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を出力し、励起光を照射させる。つまり、発光制御部61は、駆動状態検出手段58が検出した回転位置が、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、励起光を照射させる。
【0053】
例えば発光制御部61は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入される波長選択手段56の駆動位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に波長選択手段56が変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプ制御信号を出力し、フラッシュランプ52からレーザロッド51に励起光を照射させる。発光制御部61は、フラッシュランプ制御信号の出力後、駆動状態検出手段58が検出した回転位置が、波長選択手段56が光共振器の挿入損失を損失大から損失小へと切り替える回転位置になると、Qスイッチがオンになるタイミングを示すQスイッチ同期信号を生成し、超音波ユニット12に出力する。
【0054】
図1に戻り、制御手段31は、超音波ユニット12内の各部の制御を行う。トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に対して、波長選択手段56の回転速度を制御するためのBPF制御信号を出力する。また、トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13に、フラッシュランプ52の発光を制御するためのフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。トリガ制御回路30は、例えばレーザ光源ユニット13の回転制御部60からフィルタ回転体の現在の回転変位位置を受け取っており、受け取った回転変位位置に基づくタイミングでフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。
【0055】
トリガ制御回路30は、レーザ光源ユニット13から、Qスイッチがオンになるタイミング、すなわちレーザ発光タイミングを示すQスイッチ同期信号を入力する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号(ADトリガ信号)を出力する。AD変換手段22は、サンプリングトリガ信号に基づいて光音響信号のサンプリングを開始する。
【0056】
図3は、波長選択手段56の構成例を示す。波長選択手段56は、例えば図3に示すような、透過波長が相互に異なる複数の透過領域(バンドパスフィルタ)を含むフィルタ回転体70として構成される。フィルタ回転体70は、波長750nmの光を選択的に透過させる第1の透過領域71と、波長800nmの光を選択的に透過させる第2の透過領域72と、光を透過しない不透過領域73、74とを有する。なお、不透過領域は、完全に光を遮光するまでの能力は要求されない。不要なレーザ発振が生じない程度に、わずかに光が透過してもよい。
【0057】
第1の透過領域71及び第2の透過領域72は、例えばそれぞれ中心角θの扇型に形成される。集光レンズ55(図2)で集光された光は、フィルタ回転体の周縁部に照射される。フィルタ回転体70を時計回りに回転させると、光共振器の光路上に、第1の透過領域71、不透過領域73、第2の透過領域72、及び不透過領域74をこの順に挿入できる。第1の透過領域71と第2の透過領域72とで、各領域を透過する光の波長を変える、すなわち各透過領域に設けるバンドパスフィルタの透過波長を変えることで、パルスごとに波長が異なるパルスレーザ光を得ることができる。
【0058】
図4は、透過領域における波長と透過率との関係を示す。第1の透過領域(第1のバンドパスフィルタ)71における中心波長750nmの光に対する透過率は90%以上あるものとする。帯域幅はおよそ10nmである。第2の透過領域(第2のバンドパスフィルタ)72における中心波長800nmの光に対する透過率は90%以上である。帯域幅はおよそ10nmである。
【0059】
ここで、フィルタ回転体70の回転周波数が100Hz(回転速度6000rpm)であるとする。その場合、1回転あたり2つの透過領域を通過することから、レーザ光源ユニット13が出射するパルスレーザ光の個数は1秒あたり200個となる(200Hz動作)。フィルタ回転体70として半径2インチ(50.4mm)のフィルタ回転体を考える。また、ビーム径は100μmとする。角速度はω=2πf=628.3[rad/sec]となり、線速度はv=rω=628.8[rad/sec]×50.4[mm]=31.7[m/s]となる。ビームを横切る時間(スイッチング時間)は3.15μsecとなる。
【0060】
Qスイッチの特性として、スイッチング時間(例えば不透過領域から第1又は第2の透過領域への切替時間)はおおよそ数μ秒以下であること(Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも小さいこと)が、シングルパルスを得るための条件である。透過領域の中心角θは、ビームを横切る時間+Qスイッチ遅延時間の間、ビームを妨げない条件で選ばれる。上記数値例では、3.15μsec+数μsec=おおよそ10μsecの間、透過領域が続けばよい。31.7[m/s]×10μsec=317μmが横幅の長さであり、角度にすると0.35°である。製作のことを考えると、中心角θは1°から数度あればよい。
【0061】
図5は、レーザ光源ユニット13の一部を示している。波長選択手段56は、例えば図3に示すような、2つのバンドパスフィルタ(透過する光の波長が異なる2つの透過領域)を含むフィルタ回転体70として構成される。フィルタ回転体70上でのビーム径は小さい方がよい。そこで、本実施形態では集光レンズ55を用いてビームを収束させている。フィルタ回転体70上でのビーム径は望ましくは100μm以下である。下限は回折限界で決まり、数μmφである。なお、フィルタ回転体70は、光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転するように、光軸に対して例えば0.5°から1°程度だけ傾けられる。このように光共振器の光軸に対してわずかに斜めに配置することで、不要な反射成分が寄生発振を起こすことを防止できる。
【0062】
駆動手段57は例えばサーボモータであり、波長選択手段56(フィルタ回転体70)を回転軸に沿って回転させる。フィルタ回転体70の回転周波数は高い方がよい。機械的には1kHz程度まで可能である。駆動状態検出手段58は、例えばロータリーエンコーダーで構成される。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとでフィルタ回転体の回転変位を検出し、フィルタ回転体70の回転を電気信号(BPF状態信号)に変換する。この電気信号をマスタークロックとし、発光制御部61に同期信号として送る。発光制御部61は、高精度に回転しているフィルタ回転体70の回転に合わせて、フラッシュランプ発光のタイミングを決定する。
【0063】
図6は、フラッシュランプ発光のタイミングとパルスレーザ光のタイミングとを示す。時刻t2は、回転しているフィルタ回転体70(波長選択手段56)が不透過領域から透過領域へと切り替わる回転位置に対応した時刻であるとする。時刻t1は、時刻t2から、レーザロッド51の励起に必要な時間を差し引いた時刻である。発光制御部61は、フィルタ回転体70の回転位置が時刻t1に対応した位置になると、フラッシュランプ52を発光させる(図6の(a))。フラッシュランプ52が発光することで、レーザロッド51が励起される。
【0064】
フラッシュランプ発光後、時刻t2で、フラッシュランプが消灯するのと同時刻に、フィルタ回転体70が不透過領域から透過領域(第1の透過領域71又は第2の透過領域72)へと切り替わっていく(図6の(b))。ここで、同時刻とは、ほぼ同じ時刻も含むものであり、フラッシュランプが消灯してから、フィルタ回転体70が不透過領域から透過領域へと切り替わっていく間の時間が、パルスレーザ光の発生に影響が無い時間内であることを意味する。この不透過領域から透過領域への替わりに要する時間(スイッチング時間)はできるだけ短い方がよく、数μ秒以下、より望ましくは0.5μ秒以下である。光共振器の光路上に750nmの光を透過する透過領域が挿入されると、時刻t3で、波長750nmの光がQスイッチパルス発振し、波長750nmのパルスレーザ光が得られる(図6の(c))。一方、光共振器の光路上に挿入された透過領域が800nmの光を透過する透過領域であった場合、波長800nmの光がQスイッチパルス発振し、波長800nmのパルスレーザ光が得られる。フィルタ回転体70の透過領域部分がおよそ10μ秒程度続いた後、時刻t4で、再び不透過領域へと切り替わる。
【0065】
図7は、パルスレーザ光出射を示す。図3に示すような、不透過領域73、74の間に第1の透過領域71と第2の透過領域72とが設けられているフィルタ回転体70を用いた場合、図7に示すように、パルスごとに、波長750nmと波長800nmとを切り替えたパルスレーザ光を得ることができる。フィルタ回転体の回転周波数を100Hzとすれば、波長を交互に切り替えつつ、1秒間に200個のパルスレーザ光を得ることができる。
【0066】
図8は、光音響画像生成装置10の動作手順を示す。ここでは、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の波長選択手段(フィルタ回転体)56を回転させる旨のBPF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップA1)。
【0067】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、1つ目の波長(例えば750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する(ステップA2)。レーザ光源ユニット13の発光制御部61は、フラッシュランプスタンバイ信号を受け取った後、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる(ステップA3)。発光制御部61は、BPF状態情報に基づいて、例えば波長選択手段56の回転変位位置が不透過領域74(図3)から波長750nmの光を透過させる第1の透過領域71へと切り替わるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ制御信号を出力する。フラッシュランプ52が点灯することで、レーザロッド51の励起が開始される。
【0068】
フラッシュランプの点灯後、波長選択手段56が回転を続け、光共振器の光路上に挿入される部分が不透過領域74から第1の透過領域71へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる(ステップA4)。このとき第1の透過領域71は波長750nmの光を選択的に透過させるため、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。発光制御部61は、Qスイッチがオンになるタイミング、言い換えるとパルスレーザ光が出射するタイミングを示すQスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する(ステップA5)。
【0069】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。プローブ11で検出された光音響信号は、受信回路21にて受信される。
【0070】
トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21で受信された光音響信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングする(ステップA6)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0071】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり出射すべき複数の波長のパルスレーザ光の全てを出射したか否かを判断する(ステップA7)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップA2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。発光制御部61は、ステップA3でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる。フラッシュランプの点灯後、ステップA4で、光共振器の光路上に挿入される部分が、不透過領域73から2つめの波長(800nm)に対応した第2の透過領域72へと切り替わり、Qスイッチパルス発振が起こる。これにより、波長800nmのパルスレーザ光が出射する。発光制御部61は、ステップA5で、Qスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する。
【0072】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受け取ると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、ステップA6で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、被検体に照射すべきパルスレーザ光の各波長に対してステップA1からA6を実行し、各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。
【0073】
制御手段31は、ステップA7で残りの波長がないと判断すると、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップA8)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップA2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップA2からA7を実行し、各部分領域に各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射し、各部分領域に対応した第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射及び光音響信号の検出を行うと、1フレームの光音響画像を生成するために必要な光音響データが揃う。
【0074】
制御手段31は、ステップA8で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像の生成に処理を移す。複素数化手段24は、受信メモリ23から第1の光音響データと第2の光音響データとを読み出し、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップA9)。光音響画像再構成手段25は、ステップA8で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップA10)。
【0075】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データ(再構成画像)から位相情報を抽出する(ステップA11)。位相情報抽出手段26は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として抽出する(ただし、X=0の場合はθ=90°)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップA12)。強度情報抽出手段27は、例えば再構成された複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を強度情報として抽出する。
【0076】
検波・対数変換手段28は、ステップA12で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップA11で抽出された位相情報と、ステップA12で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップA13)。光音響画像構築手段29は、例えば強度情報に基づいて光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定し、位相情報に基づいて各画素の色を決定することで、光音響画像を生成する。生成された光音響画像は、画像表示手段14に表示される。
【0077】
本実施形態では、光共振器内で共振する光の波長を複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段56を、光共振器がQスイッチパルス発振するように駆動する。例えば、透過波長が異なる2つのバンドパスフィルタを含む波長選択手段56を連続的に駆動することで、2つのバンドパスフィルタを連続的、かつ選択的に光共振器の光路上に挿入することができ、レーザ光源ユニット13から複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射することができる。また、本実施形態では波長選択手段56がQスイッチとしても働くため、光共振器内に別途Qスイッチを設けなくても、Qスイッチパルス発振を得ることができる。本実施形態では、光共振器内に、Qスイッチと波長選択手段とを別個に配置する必要がないため、部品点数を削減することができる効果がある。
【0078】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射し、各波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、例えば光照射領域が3つの部分領域に分かれているときには、第1の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、次いで、第2の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射し、その後、第3の部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を順次に照射する。本実施形態では、ある部分領域に対して第1の波長のパルスレーザ光、第2の波長のパルスレーザ光を連続的に照射した後に、次の部分領域に移っている。この場合、第1の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射した後に、第2の波長のパルスレーザ光を3つの部分領域に照射する場合に比して、同じ位置において第1の波長のパルスレーザ光を照射してから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短くすることができる。第1の波長のパルスレーザ光が照射されてから第2の波長のパルスレーザ光が照射されるまでの間の時間を短縮することで、第1の光音響データと第2の光音響データとの不整合を抑制することができる。
【0080】
ここで、図9に、フィルタ回転体の別の構成例を示す。図3では、透過領域を扇型に形成したが、透過領域の形状は扇型には限定されない。例えば図9に示すように、第1の透過領域71a及び第2の透過領域72aを、円形に形成することもできる。フィルタ回転体70aは、例えば不透過領域73aを構成する金属板で構成される。金属板の表面(特にレーザロッド側)には黒色処理を施し、低反射にしておくとよい。図10に、透過領域付近の断面を示す。不透過領域73aを構成する金属板に複数の開口を設け、それら開口に各波長に対応した光フィルタ75を貼り付けることで、第1の透過領域71aと第2の透過領域72aとを形成してもよい。開口(透過領域)の大きさは、少なくともビーム径の3倍から5倍程度あればよい。開口の大きさは、それより大きくても構わない。
【0081】
波長選択手段(フィルタ回転体)56が有する透過領域の数、言い換えると、レーザ光源ユニット13が出射するレーザ光の波長の数は2つには限定されない。レーザ光源ユニット13は、3つ以上の波長のパルスレーザ光を、パルスごとに切り替えて出射してもよい。図11に、4つの波長を切り替えて出射する場合の波長選択手段56の構成例を示す。この例では、波長選択手段56は、透過波長が異なる4つの透過領域81〜84と、4つの不透過領域85〜88とを有するフィルタ回転体80として構成される。例えば第1の透過領域81は波長740nmの光を選択的に透過し、第2の透過領域82は波長760nmの光を選択的に透過する。第3の透過領域83は波長780nmの光を選択的に透過し、第4の透過領域84は波長800nmの光を選択的に透過する。フィルタ回転体80において、透過領域と不透過領域とは交互に配置される。
【0082】
上記フィルタ回転体80を時計方向に回転させることで、光共振器の光路上に、第1の透過領域81、不透過領域85、第2の透過領域82、不透過領域86、第3の透過領域83、不透過領域87、第4の透過領域84、不透過領域88を順次にこの順で挿入できる。図12は、パルスレーザ光出射を示す。図11に示すような、4つの不透過領域85〜88の間に4つの透過領域81〜84が設けられているフィルタ回転体80を用いた場合、図12に示すように、パルスごとに、波長が740nm、760nm、780nm、800nmと順次に変化するパルスレーザ光を得ることができる。フィルタ回転体の回転周波数を100Hzとすれば、波長を交互に切り替えつつ、1秒間に400個のパルスレーザ光を得ることができる(400Hz動作)。
【0083】
なお、波長選択手段(フィルタ回転体)56が有する透過領域の数と、レーザ光源ユニット13が出射するパルスレーザ光の波長の数とは、必ずしも一致していなくてもよい。例えば図11に示した4つの透過領域を有するフィルタ回転体80において、第1の透過領域81と第3の透過領域83とが同じ波長の光を選択的に透過し、第2の透過領域82と第4の透過領域84とが同じ波長の光を選択的に透過するようにしてもよい。具体的には、第1の透過領域81及び第3の透過領域83が波長750nmの光を選択的に透過し、第2の透過領域82及び第4の透過領域84が波長800nmの光を選択的に透過するようにしてもよい。この場合、フィルタ回転体が1回転する間に、パルスごとに波長が750nmと800nmとの間で切り替わる4つのパルスレーザ光を得ることができる。
【0084】
上記実施形態では、波長選択手段56として、フィルタを光共振器を構成する一対のミラー53、54の間に配置するものとして説明したが、これには限定されない。波長選択手段56が光共振器を構成する一対のミラーのうちの1つ(例えばリアミラー)を兼ねる構成としてもよい。図13は、波長選択手段56がリアミラーを兼ねる場合のレーザ光源ユニット13aの一部を示す。波長選択手段56は、例えば円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含むミラー回転体として構成される。ミラー回転体の複数の反射領域は、複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射する。反射領域は、光共振器のリアミラー54として働く。
【0085】
ミラー回転体は、図3に示したフィルタ回転体における透過領域を反射領域に置き換え、不透過領域を光を反射しない領域に置き換えた構成とすることができる。図14は、反射領域における波長と反射率との関係を示す。例えば波長750nmと800nmのパルスレーザ光を切り替えて出射する場合、第1の反射領域が波長750nmの光を選択的に反射するように構成し、第2の反射領域が波長800nmの光を選択的に反射するように構成すればよい。各反射領域の750nm/800nmの光に対する反射率は98%以上であるとする。帯域幅はおよそ10nmである。
【0086】
駆動手段57は、波長選択手段(ミラー回転体)を、光共振器の光軸に対して垂直な面内で連続的に回転させる。駆動手段57は、光共振器の光路上に、ミラー回転体の光を反射しない領域及び反射領域が交互に挿入される挿入されるように、ミラー回転体を回転させる。反射領域の形状は、図3における透過領域と同様に扇型でもよいし、図9における透過領域と同様に円形でもよい。ミラー回転体の駆動に伴い、光共振器の光路上に挿入される領域が光を反射しない領域から反射領域へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大から損失小へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる。このとき、光共振器は、切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長でQスイッチパルス発振する。
【0087】
上記では、反射領域と光を反射しない領域とが交互に配置されたミラー回転体を用いる例について説明したが、リアミラーとして機能すべき複数の反射面を持ち、それら複数の反射面が複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を用いることも可能である。図15に、2つの面を持つミラー回転体を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニット13bの一部を示す。波長選択手段(ミラー回転体)56bの一方の面は波長750nmの光を選択的に反射し、他方の面は波長800nmの光を選択的に反射する。
【0088】
駆動手段57は、ミラー(出力鏡)53と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるようにミラー回転体を連続的に回転させる。例えばミラー回転体が回転していき、波長750nmの光を反射する反射面が光共振器の光軸に対して垂直となると、光共振器内で波長750nmの光が共振する。また、波長800nmの光を反射する反射面が光共振器の光軸に対して垂直となると、光共振器内で波長800nmの光が共振する。それ以外の角度では共振は起こらない。このような駆動の仕方でも、光共振器内の挿入損失を急速に損失大から損失小へと急速に切り換えることができ、光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で光共振器をQスイッチパルス発振させることができる。
【0089】
図16に、5つの面を持つミラー回転体(多面体)を波長選択手段として用いたレーザ光源ユニット13cの一部を示す。波長選択手段(ミラー回転体)56cは、波長740nmの光を選択的に反射する面と、波長760nmの光を選択的に反射する面と、波長780nmの光を選択的に反射する面と、波長800nmの光を選択的に反射する面と、波長820nmの光を選択的に反射する面とを有する。駆動手段57は、波長選択手段(ミラー回転多面体)56cを、ミラー53と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるように連続的に回転させる。このようにすることで、パルスごとに、波長が820nm、800nm、780nm、760nm、740nm、720nmと順次に変化するパルスレーザ光を得ることができる。
【0090】
引き続き、本発明の第2実施形態を説明する。図17は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置10aは、超音波ユニット12aが、図1に示す第1実施形態の光音響画像生成装置10における超音波ユニット12の構成に加えて、データ分離手段32、超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、超音波画像構築手段35、画像合成手段36、及び送信制御回路37を有する。本実施形態の光音響画像生成装置10は、光音響画像に加えて、超音波画像を生成する点で第1実施形態と相違する。その他の部分は、第1実施形態と同様でよい。
【0091】
本実施形態では、プローブ11は、光音響信号の検出に加えて、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び送信した超音波に対する被検体からの反射超音波の検出(受信)を行う。トリガ制御回路30は、超音波画像の生成時は、送信制御回路37に超音波送信を指示する旨の超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路37は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、超音波の送信後、被検体からの反射超音波を検出する。
【0092】
プローブ11が検出した反射超音波は、受信回路21を介してAD変換手段22に入力される。トリガ制御回路30は、超音波送信のタイミングに合わせてAD変換手段22にサンプリグトリガ信号を送り、反射超音波のサンプリングを開始させる。AD変換手段22は、反射超音波のサンプリングデータ(反射超音波データ)を受信メモリ23に格納する。
【0093】
データ分離手段32は、受信メモリ23に格納された反射超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段32は、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡し、第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡す。第1及び第2の光音響データに基づく光音響画像の生成は第1実施形態と同様である。データ分離手段32は、分離した反射超音波のサンプリングデータを、超音波画像再構成手段33に入力する。
【0094】
超音波画像再構成手段33は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された反射超音波(そのサンプリングデータ)に基づいて、超音波画像の各ラインのデータを生成する。超音波画像再構成手段33は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。
【0095】
検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像再構成手段33、検波・対数変換手段34、及び超音波画像構築手段35は、反射超音波に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段を構成する。
【0096】
画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成する。画像合成手段36は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えて表示することも可能である。
【0097】
図18は、光音響画像生成装置10aの動作手順を示している。以下では、被検体のレーザ光が照射される領域が複数の部分領域に分割されているものとして説明する。トリガ制御回路30は、被検体に対するパルスレーザ光照射に先立って、所定の回転速度でレーザ光源ユニット13内の波長選択手段(フィルタ回転体)56を回転させる旨のBPF制御信号をレーザ光源ユニット13に出力する(ステップB1)。
【0098】
トリガ制御回路30は、光音響信号の受信準備が整うと、1つ目の波長(例えば750nm)のパルスレーザ光を出射させるべく、所定のタイミングでレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する(ステップB2)。レーザ光源ユニット13の発光制御部61は、フラッシュランプスタンバイ信号を受け取った後、フラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる(ステップB3)。発光制御部61は、BPF状態情報に基づいて、例えば波長選択手段56の回転変位位置が不透過領域74(図3)から波長750nmの光を透過させる第1の透過領域71へと切り替わるタイミングから逆算されたタイミングで、フラッシュランプ制御信号を出力する。フラッシュランプ52が点灯することで、レーザロッド51の励起が開始される。
【0099】
フラッシュランプの点灯後、波長選択手段56が回転を続け、光共振器の光路上に挿入される部分が不透過領域74から第1の透過領域71へと切り替わると、光共振器内の挿入損失が損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化し、Qスイッチパルス発振が起こる(ステップB4)。このとき第1の透過領域71は波長750nmの光を選択的に透過させるため、レーザ光源ユニット13は、波長750nmのパルスレーザ光を出射する。発光制御部61は、Qスイッチがオンになるタイミング、言い換えるとパルスレーザ光が出射するタイミングを示すQスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する(ステップB5)。
【0100】
レーザ光源ユニット13から出射した波長750nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の領域に照射される。被検体内では、光吸収体が照射されたパルスレーザ光のエネルギーを吸収することで、光音響信号が発生する。プローブ11は、被検体内で発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受けると、AD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力する。AD変換手段22は、受信回路21を介してプローブ11で検出された光音響信号を受信し、所定のサンプリング周期で光音響信号をサンプリングする(ステップB6)。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第1の光音響データとして格納される。
【0101】
制御手段31は、残りの波長があるか、つまり出射すべき複数の波長のパルスレーザ光の全てを出射させたか否かを判断する(ステップB7)。残りの波長がある場合、次の波長のパルスレーザ光を出射させるために、ステップB2に戻り、トリガ制御回路30からレーザ光源ユニット13にフラッシュランプスタンバイ信号を出力する。発光制御部61は、ステップA3でフラッシュランプ52にフラッシュランプ制御信号を送り、フラッシュランプ52を点灯させる。フラッシュランプの点灯後、ステップB4で、光共振器の光路上に挿入される部分が、不透過領域73から2つめの波長(800nm)に対応した第2の透過領域72へと切り替わり、Qスイッチパルス発振が起こる。これにより、波長800nmのパルスレーザ光が出射する。発光制御部61は、ステップB5で、Qスイッチ同期信号を超音波ユニット12に出力する。
【0102】
レーザ光源ユニット13から出射した波長800nmのパルスレーザ光は、例えばプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体の1つ目の部分領域に照射される。プローブ11は、被検体内の光吸収体が波長800nmのパルスレーザ光を吸収することで発生した光音響信号を検出する。トリガ制御回路30は、Qスイッチ同期信号を受けるとAD変換手段22にサンプリングトリガ信号を出力し、AD変換手段22は、ステップB6で光音響信号のサンプリングを行う。AD変換手段22でサンプリングされた光音響信号は、受信メモリ23に第2の光音響データとして格納される。光音響画像生成装置10は、被検体に照射すべきパルスレーザ光の各波長に対してステップB1からB6を実行し、各波長のパルスレーザ光を被検体に照射して、被検体から光音響信号を検出する。ステップB1からB6は、図8のステップA1からA6と同様でよい。
【0103】
制御手段31は、ステップB7で残りの波長がないと判断すると、超音波の送受信に処理を移す。トリガ制御回路30は、送信制御回路37を介してプローブ11から被検体に超音波を送信させる(ステップB8)。ステップB8では、被検体のパルスレーザ光が照射された部分領域と同じ領域に対して超音波を送信する。プローブ11は、送信した超音波に対する反射超音波を検出する(ステップB9)。検出された反射超音波は、受信回路21を経てAD変換手段22でサンプリングされ、受信メモリ23に反射超音波データとして格納される。
【0104】
制御手段31は、部分領域を全て選択したか否かを判断する(ステップB10)。選択すべき部分領域が残っているときは、ステップB2に戻る。光音響画像生成装置10は、各部分領域に対してステップB2からB7を実行し、各部分領域に各波長(750nm、800nm)のパルスレーザ光を順次照射して、第1の光音響データと第2の光音響データとを受信メモリ23に格納する。また、ステップB8及びB9を実行して、反射超音波データを受信メモリ23に格納する。全ての部分領域に対してパルスレーザ光の照射と光音響信号の検出、及び超音波の送受信を行うと、1フレームの光音響画像及び超音波画像を生成するために必要なデータが揃う。
【0105】
制御手段31は、ステップB10で全ての部分領域を選択したと判断すると、光音響画像及び超音波画像の生成に処理を移す。データ分離手段32は、第1及び第2の光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段32は、分離した第1及び第2の光音響データを複素数化手段24に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段33に渡す。複素数化手段24は、第1の光音響画像データを実部とし、第2の光音響画像データを虚部とした複素数データを生成する(ステップB11)。光音響画像再構成手段25は、ステップB11で複素数化された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う(ステップB12)。
【0106】
位相情報抽出手段26は、再構成された複素数データから位相情報を抽出する(ステップB13)。強度情報抽出手段27は、再構成された複素数データから強度情報を抽出する(ステップB14)。検波・対数変換手段28は、ステップB14で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施す。光音響画像構築手段29は、ステップB13で抽出された位相情報と、ステップB14で抽出された強度情報に対して検波・対数変換処理を施したものとに基づいて、光音響画像を生成する(ステップB15)。ステップB11からB15は、図8のステップA9からA13と同様でよい。
【0107】
超音波画像再構成手段33は、例えば遅延加算法により、超音波画像の各ラインのデータを生成する。検波・対数変換手段34は、超音波画像再構成手段33が出力する各ラインのデータの包絡線を求め、求めた包絡線を対数変換する。超音波画像構築手段35は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、超音波画像を生成する(ステップB16)。画像合成手段36は、光音響画像と超音波画像とを合成し、合成した画像を画像表示手段14に表示する(ステップB17)。
【0108】
本実施形態では、光音響画像生成装置は、光音響画像に加えて超音波画像を生成する。超音波画像を参照することで、光音響画像では画像化することができない部分を観察することができる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0109】
なお、上記各実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。さらに、ここでは、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られる。また、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0110】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば位相情報抽出手段26は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段27は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0111】
ここで、フィルタ回転体の回転数を上げ、スイッチング時間をできるだけ短くすることで、ビーム径がフィルタ上にダメージを起こさない程度に大きい場合でも(>100μm)、Qスイッチを掛けることができる。しかしながら、そのような場合に、回転にフラッシュランプを追随させると、Qスイッチ繰り返しも上がり光音響に望ましくない。そのような場合は、フィルタ回転体の回転周波数に対するフラッシュランプ発光の周波数を下げ、Qスイッチ繰り返しを所望のレートに制御して、Qスイッチパルスの周波数が上がりすぎることを防げばよい。
【0112】
図19に、Qスイッチ繰り返しの周波数をフィルタ回転体の回転周波数よりも低くした例を示す。波長選択手段56が、図3に示すフィルタ回転体70で構成される場合、フィルタ回転体70の回転周波数を100Hzとすると、フィルタ回転体70は2つの透過領域を有するため、光共振器の光路上に透過領域が1秒間に200回挿入される(図19の(a))。発光制御部61(図2)は、透過領域が光共振器の光路上に挿入されるたびにフラッシュランプを発光するのに代えて、例えば5回に1回の割合いでフラッシュランプを発光させる(図19の(b))。この場合、レーザ光源ユニット13が1秒間あたりに出射するパルスレーザ光の個数を40個に落とすことができる(図19の(c))。
【0113】
上記のように、フィルタ回転体の回転周波数(1秒間あたりに挿入される透過領域の数)に対するフラッシュランプ発光の周波数を下げることで、Qスイッチパルスの周波数を低下させることができる。上記例のように、5回に1回の割合いでフラッシュランプを発光させた場合、透過領域が光共振器の光路上に挿入されるたびにフラッシュランプを発光すれば200Hz動作となるところ、その1/5の40Hz動作を実現できる。
【0114】
例えば波長選択手段56が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限(最大値)をm回とする。例えば波長選択手段56が図11に示した4つの透過領域を有するフィルタ回転体80で構成されるとき、フィルタ回転体80では不透過領域から透過領域への切り替えが1回転につき4回あるため、波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限は4回である。また、波長選択手段が図16に示した5つの反射面を有するミラー回転体で構成される場合、ミラー回転体を1回転させる間に、順次、5つの反射面が光共振器の光軸に対して垂直になるため、波長選択手段が1回転する間に光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限は5回となる。駆動手段57が波長選択手段56を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数としたとき、発光制御部は、1秒あたりm×F/n回前記励起光を照射させる。その場合、Qスイッチパルスの周波数を1/nに下げることができる。
【0115】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のレーザ光源ユニット及び光音響画像生成装置は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10:光音響画像生成装置
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザ光源ユニット
14:画像表示手段
21:受信回路
22:AD変換手段
23:受信メモリ
24:複素数化手段
25:光音響画像再構成手段
26:位相情報抽出手段
27:強度情報抽出手段
28:検波・対数変換手段
29:光音響画像構築手段
30:トリガ制御回路
31:制御手段
32:データ分離手段
33:超音波画像再構成手段
34:検波・対数変換手段
35:超音波画像構築手段
36:画像合成手段
37:送信制御回路
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:集光レンズ
56:波長選択手段
57:駆動手段
58:駆動状態検出手段
59:制御部
60:回転制御部
61;発光制御部
70:フィルタ回転体
71、72:透過領域
73、74:不透過領域
75:光フィルタ
80:フィルタ回転体
81〜84:透過領域
85〜88:不透過領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、
レーザロッドと、
該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、
前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、
前記光共振器内で共振する光の波長を、前記複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、
前記光共振器がQスイッチパルス発振するように前記波長選択手段を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするレーザ光源ユニット。
【請求項2】
前記波長選択手段は、回転駆動可能であり、該波長選択手段の回転駆動に伴って、前記光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されているものである請求項1に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項3】
前記励起光源を制御する発光制御部を更に備え、該発光制御部が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻で前記励起光源に励起光を照射させるものである請求項2に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項4】
前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える時刻と同時刻に前記励起光源が消灯する請求項3に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項5】
前記波長選択手段が1回転する間に前記光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限をm回とし、前記駆動手段が前記波長選択手段を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数とした場合、前記発光制御部が、1秒あたりm×F/n回前記励起光を照射させるものである請求項3又は4に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項6】
前記波長選択手段の駆動に伴って前記光共振器内の挿入損失が第1の前記損失から前記第2の損失へと切り替わる際の切り替え時間が、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短い請求項2から5何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項7】
前記波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを含み、前記複数の透過領域が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させるフィルタ回転体を含み、
前記駆動手段が、前記光共振器の光路上に前記不透過領域及び前記透過領域が交互に挿入されるように前記フィルタ回転体を連続的に回転させるものであり、
前記光共振器の光路上に挿入される領域が前記不透過領域から前記透過領域へと切り替わると、該切り替わった透過領域が透過させる光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項8】
前記透過領域がバンドパスフィルタを含む請求項7に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項9】
前記透過領域が扇型に形成されている請求項7又は8に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項10】
前記透過領域が円形に形成されている請求項7又は8に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項11】
前記フィルタ回転体が、前記光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転させられるものである請求項7から10何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項12】
前記波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含み、前記複数の反射領域が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、
前記駆動手段が、前記光共振器の光路上に前記光を反射しない領域及び前記反射領域が交互に挿入されるように前記ミラー回転体を連続的に回転させるものであり、
前記ミラー回転体の反射領域が前記一対のミラーのうちの一方として働き、前記光共振器の光路上に挿入される領域が前記光を反射しない領域から前記反射領域へと切り替わると、該切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項13】
前記波長選択手段が、前記一対のミラーのうちの一方として機能する複数の反射面を有し、該複数の反射面が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、
前記駆動手段が、前記一対のミラーのうちの他方と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるように前記ミラー回転体を連続的に回転させるものであり、
前記反射面が前記光共振器の光軸に対して垂直になるとき、該光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項14】
前記光共振器内に配置され、前記光共振器内を前記波長選択手段に向けて進行する光のビーム径を縮小させる集光レンズを更に有する請求項1から13何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項15】
前記集光レンズが、前記波長選択手段の位置における光のビーム径を100μm以下とする請求項14に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項16】
相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、前記光共振器内で共振する光の波長を、前記複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、前記光共振器がQスイッチパルス発振するように前記波長選択手段を駆動する駆動手段とを有するレーザ光源ユニットと、
前記複数の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、
前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、
前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置。
【請求項17】
前記波長選択手段が、回転駆動に伴って、前記光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されており、
前記波長選択手段の回転位置を検出する駆動状態検出手段と、
前記波長選択手段が所定の回転速度で回転するように前記駆動手段を制御する回転制御部と、
前記駆動状態検出手段が検出した回転位置が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、前記励起光源に励起光を照射させる発光制御部とを更に備える請求項16に記載の光音響画像生成装置。
【請求項18】
前記回転制御部が、前記駆動状態検出手段が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように前記駆動手段を制御するものである請求項17に記載の光音響画像生成装置。
【請求項19】
前記発光制御部が、前記駆動状態検出手段が検出した回転位置が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える回転位置になると同期信号を生成し、
前記検出手段が、前記同期信号に基づいて前記光音響信号の検出を開始するものである請求項17又は18に記載の光音響画像生成装置。
【請求項20】
前記各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、
前記光音響画像構築手段が、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記抽出された大小関係に基づいて決定するものである請求項16から19何れか一項に記載の光音響画像生成装置。
【請求項21】
前記前記レーザ光源ユニットが出射するパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、
前記第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第1の光音響データと、前記第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、
前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、
前記強度比抽出手段が前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が前記再構成画像から前記強度情報を抽出するものである請求項20に記載の光音響画像生成装置。
【請求項22】
前記検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、
前記反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える請求項16から21何れか一項に記載の光音響画像生成装置。
【請求項1】
相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、
レーザロッドと、
該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、
前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、
前記光共振器内で共振する光の波長を、前記複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、
前記光共振器がQスイッチパルス発振するように前記波長選択手段を駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とするレーザ光源ユニット。
【請求項2】
前記波長選択手段は、回転駆動可能であり、該波長選択手段の回転駆動に伴って、前記光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されているものである請求項1に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項3】
前記励起光源を制御する発光制御部を更に備え、該発光制御部が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える時刻よりも所定時間だけ前の時刻で前記励起光源に励起光を照射させるものである請求項2に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項4】
前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える時刻と同時刻に前記励起光源が消灯する請求項3に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項5】
前記波長選択手段が1回転する間に前記光共振器をQスイッチパルス発振させることができる回数の上限をm回とし、前記駆動手段が前記波長選択手段を回転駆動する際の回転周波数をF[回転/秒]とし、nを所定の自然数とした場合、前記発光制御部が、1秒あたりm×F/n回前記励起光を照射させるものである請求項3又は4に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項6】
前記波長選択手段の駆動に伴って前記光共振器内の挿入損失が第1の前記損失から前記第2の損失へと切り替わる際の切り替え時間が、Qスイッチパルスの発生遅延時間よりも短い請求項2から5何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項7】
前記波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の透過領域と不透過領域とを含み、前記複数の透過領域が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に透過させるフィルタ回転体を含み、
前記駆動手段が、前記光共振器の光路上に前記不透過領域及び前記透過領域が交互に挿入されるように前記フィルタ回転体を連続的に回転させるものであり、
前記光共振器の光路上に挿入される領域が前記不透過領域から前記透過領域へと切り替わると、該切り替わった透過領域が透過させる光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項8】
前記透過領域がバンドパスフィルタを含む請求項7に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項9】
前記透過領域が扇型に形成されている請求項7又は8に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項10】
前記透過領域が円形に形成されている請求項7又は8に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項11】
前記フィルタ回転体が、前記光共振器の光軸に対して所定の角度で傾いた面内で回転させられるものである請求項7から10何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項12】
前記波長選択手段が、円周方向に沿って交互に配置された複数の反射領域と光を反射しない領域とを含み、前記複数の反射領域が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、
前記駆動手段が、前記光共振器の光路上に前記光を反射しない領域及び前記反射領域が交互に挿入されるように前記ミラー回転体を連続的に回転させるものであり、
前記ミラー回転体の反射領域が前記一対のミラーのうちの一方として働き、前記光共振器の光路上に挿入される領域が前記光を反射しない領域から前記反射領域へと切り替わると、該切り替わった反射領域が反射する光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項13】
前記波長選択手段が、前記一対のミラーのうちの一方として機能する複数の反射面を有し、該複数の反射面が前記複数の波長に対応した所定の波長の光を選択的に反射するミラー回転体を含み、
前記駆動手段が、前記一対のミラーのうちの他方と向かい合わせになる反射面が順次に切り替わるように前記ミラー回転体を連続的に回転させるものであり、
前記反射面が前記光共振器の光軸に対して垂直になるとき、該光軸に対して垂直になった反射面が反射する光の波長に対応した波長で前記光共振器がQスイッチパルス発振する請求項1から6何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項14】
前記光共振器内に配置され、前記光共振器内を前記波長選択手段に向けて進行する光のビーム径を縮小させる集光レンズを更に有する請求項1から13何れか一項に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項15】
前記集光レンズが、前記波長選択手段の位置における光のビーム径を100μm以下とする請求項14に記載のレーザ光源ユニット。
【請求項16】
相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を出射するレーザ光源ユニットであって、レーザロッドと、該レーザロッドに励起光を照射する励起光源と、前記レーザロッドを挟んで対向する一対のミラーを含む光共振器と、前記光共振器内で共振する光の波長を、前記複数の波長のうちの何れかに制御する波長選択手段と、前記光共振器がQスイッチパルス発振するように前記波長選択手段を駆動する駆動手段とを有するレーザ光源ユニットと、
前記複数の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに被検体内で生じた光音響信号を検出し、各波長に対応した光音響データを生成する検出手段と、
前記各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する強度比抽出手段と、
前記抽出された大小関係に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段とを備えたことを特徴とする光音響画像生成装置。
【請求項17】
前記波長選択手段が、回転駆動に伴って、前記光共振器内の挿入損失を第1の損失から該第1の損失よりも小さい第2の損失に変化させるように構成されており、
前記波長選択手段の回転位置を検出する駆動状態検出手段と、
前記波長選択手段が所定の回転速度で回転するように前記駆動手段を制御する回転制御部と、
前記駆動状態検出手段が検出した回転位置が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える回転位置よりも所定の量だけ前の位置になると、前記励起光源に励起光を照射させる発光制御部とを更に備える請求項16に記載の光音響画像生成装置。
【請求項18】
前記回転制御部が、前記駆動状態検出手段が検出する回転位置の所定時間あたりの変化量が一定となるように前記駆動手段を制御するものである請求項17に記載の光音響画像生成装置。
【請求項19】
前記発光制御部が、前記駆動状態検出手段が検出した回転位置が、前記波長選択手段が前記光共振器の挿入損失を前記第1の損失から前記第2の損失へと切り替える回転位置になると同期信号を生成し、
前記検出手段が、前記同期信号に基づいて前記光音響信号の検出を開始するものである請求項17又は18に記載の光音響画像生成装置。
【請求項20】
前記各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に備え、
前記光音響画像構築手段が、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記抽出された大小関係に基づいて決定するものである請求項16から19何れか一項に記載の光音響画像生成装置。
【請求項21】
前記前記レーザ光源ユニットが出射するパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、
前記第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第1の光音響データと、前記第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときに検出された光音響信号に対応する第2の光音響データとのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、
前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する光音響画像再構成手段とを更に備え、
前記強度比抽出手段が前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が前記再構成画像から前記強度情報を抽出するものである請求項20に記載の光音響画像生成装置。
【請求項22】
前記検出手段が、更に、被検体に送信された音響波に対する反射音響波を検出して反射音響波データを生成するものであり、
前記反射音響波データに基づいて音響波画像を生成する音響波画像生成手段を更に備える請求項16から21何れか一項に記載の光音響画像生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−84923(P2013−84923A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198099(P2012−198099)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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