説明

レーザ加工システム及びソーラパネル製造方法

【課題】レーザ加工付近の気流の流れを制御して加工時に発生する加工デブリを効率的に除去できるようにする。
【解決手段】レーザ加工装置は、ワークに対してレーザ光を相対的に移動させながら照射することによってワークに所定の加工を施す。恒温室はこのレーザ加工装置の加工エリアを覆うように設けられる。恒温室には、上方から下方の加工エリアに向かうように恒温エアを供給するエア供給部と、加工エリア側から恒温室外に排気するエア排気部とを備えている。加工エリアを覆うように恒温室手段を設け、上方から下方に向けて恒温エアを流すことによって、恒温エアをワーク表面に接触させると共にワーク表面から横方向の流れによって、加工デブリを効率的にワーク表面から除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて基板上の薄膜等を加工するレーザ加工システム及びソーラパネル製造方法に係り、特にレーザ加工時に発生するデブリを効率的に除去することのできるレーザ加工システム及びソーラパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラパネルの製造工程では、透光性基板(ガラス基板)上に透明電極層、半導体層、金属層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光で短冊状に加工してソーラパネルモジュールを完成している。このようにしてソーラパネルモジュールを製造する場合、ガラス基板上の薄膜に例えば約10mmピッチでレーザ光でスクライブ線を形成している。このスクライブ線の線幅は約30μmで、線と線の間隔は約30μmとなるような3本の線で構成されている。レーザ光でスクライブ線を形成する場合、通常は定速度で移動するガラス基板上にレーザ光を照射していた。これによって、深さ及び線幅の安定したスクライブ線を形成することが可能であった。
一方、レーザ加工を行う際、被加工部となる薄膜物質が融解あるいは蒸発した後に再固化し、あるいは固体のまま飛び散る飛沫や加工残渣等の加工デブリが発生することが知られている。そこで、従来は、レーザ加工時にこうした加工デブリを除去することを目的として、集塵装置を加工部近傍に設けている。このように集塵装置については、特許文献1に記載のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−114075号公報
【特許文献2】特許第4231538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレーザ加工装置は、ガス供給手段から供給されるガスを、吸気口から集塵部へ供給し、排気手段の排気動作によって、排気口を経て排気するように構成されている。この集塵装置は、集塵部の内部に、吸気口から排気口へ向けたガスの流れを生じさせて、加工部付近に存在する加工デブリを、集塵部へと引き込み、ガスともども排気口から排出している。特許文献2に記載のレーザ加工装置は、基板の下方から傾斜した斜め上方に向けて気体を吹出させる吹出ノズルを集塵ノズルの両隣に設け、加工の際に生じる粉塵を効率よく収集し、粉塵の飛散及び被加工面への再付着を抑制するものである。しかしながら、特許文献1又は2に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工の態様に応じて、不活性ガス供給手段の吸気口から加工部に吹き付けられるガスや排気されるガスの流量を適宜調整することは可能であるが、加工部に吹き付けられる不活性ガスの吹き付け角度等を調整することはできず、また、ガス供給手段や吹出ノズルから吹き出されるスリット部の開口面積は固定されているため加工デブリの除去効果は比較的低いという欠点を有し、さらにレーザ加工付近の全体的な気流の流れを制御することのできない部分が存在するため、この部分で光学系及び雰囲気中に発生する温度ムラに起因するレーザ光の屈折や熱レンズ効果等によってレーザ光焦点面におけるビーム強度分布に差が生じ、レーザ加工が不安定になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、レーザ加工付近の気流の流れを制御して加工時に発生する加工デブリを効率的に除去することのできるレーザ加工システム及びソーラパネル製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工システムの第1の特徴は、ワークに対してレーザ光を相対的に移動させながら照射することによって前記ワークに所定の加工を施すレーザ加工手段と、前記レーザ加工手段における前記レーザ光の照射によって所定の加工の施される加工エリアを覆うように設けられた恒温室手段と、前記恒温室手段の少なくとも上方から下方の前記恒温室手段内の前記加工エリアに向かうように恒温エアを供給するエア供給手段と、前記恒温室手段内の前記恒温エアを前記加工エリアから前記恒温室手段外に排気するエア排気手段とを備えたことにある。これは、加工エリアを覆うように恒温室手段を設け、上方から下方に向けて恒温エアを流すことによって、恒温エアをワーク表面に接触させると共にワーク表面から横方向の流れによって、加工デブリを効率的にワーク表面から除去するようにしたものである。
【0007】
本発明に係るレーザ加工システムの第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のレーザ加工システムにおいて、前記エア供給手段が前記恒温室手段の上面の複数個所に設けられた供給ダクト手段から構成され、前記加工エリアの移動に対応して前記複数の供給ダクト手段を選択して前記恒温エアを前記恒温室手段内の前記加工エリアに供給することにある。これは、加工エリアの移動に併せて恒温エアを供給する複数の供給ダクト手段を適宜選択可能とし、加工エリアに恒温エアを効率的に供給できるようにしたものである。
【0008】
本発明に係るレーザ加工システムの第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークの加工エリアから発生する残渣をエアパージ・吸引するエアパージ・残渣吸引手段を備えたことにある。レーザ光による第2スクライブ線P2及び第3スクライブ線P3の加工は、レーザ光をワーク表面に略垂直に照射して、ワーク裏面側の薄膜を加工することによって行なわれる。この第2スクライブ線P2及び第3スクライブ線P3の加工時には、その加工部から加工残渣が薄膜面から発生するので、この加工残渣が膜面へ再付着しないように膜面側(ワーク裏面側)からエアパージすると共にその残渣を吸引除去するようにしている。
【0009】
本発明に係るレーザ加工システムの第4の特徴は、前記第1、第2又は第3の特徴に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ加工手段がハーフミラー及び反射ミラーからなる分岐手段によって複数のレーザ光に分岐された複数のレーザ光を前記ワークに照射することにある。これは、レーザ光をハーフミラー及び反射ミラーからなる分岐手段によって4分岐または8分岐し、効率的にレーザ加工を行えるようにしたものである。
【0010】
本発明に係るレーザ加工システムの第5の特徴は、前記第4の特徴に記載のレーザ加工システムにおいて、前記エアパージ・残渣吸引手段が前記複数のレーザ光に対してそれぞれ設けられることにある。これは、分岐手段によって分岐されたレーザ光毎にエアパージ・残渣吸引手段を設けることによって残渣(デブリ)を効率良く除去できるようにしたものである。
【0011】
本発明に係るレーザ加工システムの第6の特徴は、前記第1から第5の特徴までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークに所定の加工を施す際に前記ワーク表面の加工個所にエアを吹き付けることによって、前記ワーク表面の粉塵等をパージする第1のエアナイフ手段を備えたことにある。これは、レーザ加工時に相対的に移動するワークの近傍にエアナイフ手段を設け、レーザ加工処理中にワーク表面にエアを吹き付けて、ワーク表面の粉塵等をパージし、粉塵等を効率的に除去するようにしたものである。エアナイフ手段はエア噴出ノズルでもよい。
【0012】
本発明に係るレーザ加工システムの第7の特徴は、前記第6の特徴に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークを前記加工エリアに搬送する際に前記ワーク表面にエアを吹き付けることによって、前記ワーク表面の粉塵等をパージする第2のエアナイフ手段を備えたことにある。これは、ワークをレーザ加工位置に搬入する際にエアナイフ手段からエアを吹き付け、ワーク表面に付着している粉塵等をパージし、粉塵等を効率的に除去するようにしたものである。
【0013】
本発明に係るレーザ加工システムの第8の特徴は、前記第1の特徴から前記第7の特徴までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ加工手段が両辺の保持された前記ワークを前記レーザ光による加工箇所の準備位置にエア浮上させながら移動させ、前記ワークを保持した状態でエア浮上させながら相対的に移動させて前記レーザ光を照射することによって前記ワークに所定のレーザ加工を施し、前記レーザ加工の施された前記ワークを排出準備位置にエア浮上させながら移動させて搬出することにある。
【0014】
本発明に係るレーザ加工システムの第9の特徴は、前記第1から第8の特徴までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ガラス基板の形状変化部分に倣って前記レーザ加工を行なうことにある。これは、最初のレーザ加工によってワーク上に形成された形状変化部分(スキライブ線P1)をトラッキング等に方法によって検出しながら倣い加工を行なうことによって、2回目以降のレーザ加工によって形成されるスクライブ線P2,P3は、スクライブ線P1と常にその間隔を一定とすることができ、複数の加工線同士は重なり交差することがないので、最適なレーザ加工を行なうことができるようにしたものである。
【0015】
本発明に係るソーラパネル製造方法の特徴は、前記第1から第9の特徴のいずれか1に記載のレーザ加工システムを用いて、ソーラパネルを製造することにある。これは、前記レーザ加工システムのいずれか1を用いて、ソーラパネルを製造するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ加工付近の気流の流れを制御して加工時に発生する加工デブリを効率的に除去することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明で採用したエアグリップ方式のグリッパ部の一例を示す図であり、図1のグリッパ部を加工エリア部側から見た側面図である。
【図3】図2のグリッパ部に保持されたガラス基板をレーザ加工ステーションのエア浮上ステージとの関係を示す斜視図である。
【図4】グリッパ部の一部分(図3の点線円で囲んだ箇所)を拡大して示した図である。
【図5】スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部及びアライメント部を斜め上方から見た外観斜視図である。
【図6】図5から恒温室及びダクトを省略し、加工エリア部及びアライメント部の詳細構成を示した斜視図である。
【図7】図6の光学系部材の詳細構成を示す図である。
【図8】図7のフォーカス調整用駆動機構の詳細構成を示す断面図である。
【図9】フォーカス調整用駆動機構の一部分を抜き出して示した斜視図である。
【図10】アライメントカメラ装置、第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成並びに基板表面のエアパージ手段の構成を示す模式図である。
【図11】ワークであるガラス基板の歪みや捩じれ(うねり等)によって加工線が曲がって形成される場合の一例を示す図である。
【図12】図5の恒温室内のエア流の樣子を模式的に示す図である。
【図13】図6の制御装置の処理の詳細を示すブロック図である。
【図14】図13のパルス抜け判定手段の動作の一例を示す図である。
【図15】図6の高速フォトダイオードから出力される波形の一例を示す図である。
【図16】図13の加工線検出手段の動作の一例を示す図である。
【図17】グレーティングを用いて3分割スポットにより加工線P1をトラッキングする方式の一例を示す図である。
【図18】図6のアライメント部に設けられる基板検出カメラシステムの一例を示す図である。
【図19】本発明に係るソーラパネル製造装置の別の実施例を示す図である。
【図20】図19の加工エリア部を横方向から見た側面図である。
【図21】エアパージ・残渣吸引部の概略構成を示す図である。
【図22】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムを用いたソーラパネル製造システムの動作の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムの概略構成を示す図である。このレーザ加工システムは、ソーラパネル製造装置のレーザ光加工処理(レーザスクライブ)工程を行なうものである。本発明に係るレーザ加工システムは、アライメント処理を行うアライメント部をレーザ加工ステーションの両側2箇所に設けて、レーザ加工処理中に同時にアライメント処理を行い、待ち時間を大幅に短縮化できると共に基板のソリを強制することができ、さらに、大型の基板を高速に移動することもでき、レーザ加工付近の気流の流れを制御して加工時に発生する加工デブリを効率的に除去しながら正確で高速かつ効率的にスクライブ線を加工することができるように構成されたものである。
【0019】
図1に示す本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムを用いたソーラパネル(光電変換装置)製造装置は、リターン方式を採用している。このソーラパネル製造装置は、搬入出ロボットステーション141とレーザ加工ステーション101とから構成される。ローラコンベア121は、成膜装置(図示せず)やレーザスクライブ加工処理を行う製造装置間でガラス基板1x〜1zを順次搬送するものである。搬入出ロボットステーション141は、ローラコンベア121上を搬送される前段の成膜装置(図示せず)にて成膜されたガラス基板1xを搬入してガラス基板1mとして一時的に保持すると共にガラス基板1mの表裏を反転する表裏反転機構部143を備えており、レーザ加工処理の内容(スクライブ線P1加工、P2加工又はP3加工)及びガラス基板1mが下に凸の曲がり(反り)となるように、ガラス基板1mを表裏反転してレーザ加工ステーション101に搬送する。
【0020】
このとき、搬入出ロボットステーション141は、表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをそのままレーザ加工ステーション101に搬送すると共に表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mをレーザ加工ステーション101の右端位置までローラ搬送してからレーザ加工ステーション101に搬送するように構成されている。また、搬入出ロボットステーション141は、レーザ加工ステーション101で加工されたガラス基板を表裏反転機構部143で直接受取るか又はレーザ加工ステーション101の右端位置で受け取ったガラス基板1rを表裏反転機構部143までローラ搬送又はエア浮上搬送し、表裏反転機構部143でレーザ加工処理後のガラス基板を表裏反転して又は表裏反転せずにローラコンベア121に搬出する。
【0021】
レーザ加工ステーション101は、搬入出ロボットステーション141から搬入されたガラス基板上の薄膜にスクライブ線を形成するものであり、アライメント部102,104、グリッパ部106〜109、グリッパ支持駆動部110,111、加工エリア部112を備えている。アライメント部102は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143上のガラス基板1mを受取り、受け取ったガラス基板1nを所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1nを搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143に搬出する。一方、アライメント部104は、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143で表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板であって右端までローラ搬送又はエア浮上搬送されたガラス基板1rを受取り、受け取ったガラス基板を所定の位置にアライメント処理すると共に加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1qを搬入出ロボットステーション141の右端の位置に搬出する。
【0022】
グリッパ部106は、アライメント部102でアライメント処理されたガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の一方側(図Bにおけるガラス基板1oの下辺側)保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1oの搬送方向に沿った辺の他方側(図Bにおけるガラス基板1oの上辺側)を保持する。グリッパ部108は、アライメント部104でアライメント処理されたガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の一方側(図Bにおけるガラス基板1qの下辺側)を保持し、グリッパ部107は、同じガラス基板1qの搬送方向に沿った辺の他方側(図Bにおけるガラス基板1qの上辺側)を保持する。グリッパ支持駆動部110,111は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されたガラス基板1o,1qを加工エリア部112のレーザ光に同期させてし、レーザ加工時にガラス基板1oと点線のガラス基板1pとの間を移動させる。この移動に同期させて加工エリア部112は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されエア浮上搬送されるガラス基板1o,1qにレーザ光を照射して所定のスクライブ線の加工処理を行う。図Bでは、グリッパ部106,107に保持されたガラス基板1oを、点線で示されたガラス基板1pの位置までエア浮上した状態で移動させながら、所定のスクライブ線加工を行う状態が示してある。
【0023】
図2は、本発明で採用したエアグリップ方式のグリッパ部の一例を示す図であり、図1のグリッパ部106,107を加工エリア部112側から見た側面図である。図3は、図2のグリッパ部106,107に保持されたガラス基板をレーザ加工ステーション101のエア浮上ステージ101aとの関係を示す斜視図である。図4は、グリッパ部107の一部分(図3の点線円で囲んだ箇所)を拡大して示した図である。なお、図2〜図4では、グリッパ部に関する箇所以外の構成については図示を省略してある。
【0024】
グリッパ部106は、把持(挟持)プレート部1061、エアシリンダ部1062、グリッパ本体部1063及びガイドレール部1064から構成される。把持(挟持)プレート部1061は、ガラス基板1oをグリッパ本体部1063の上面(図の下向き(−Z)方向)に向かって押し付けて把持(挟持)して保持する。把持(挟持)プレート部1061において、ガラス基板1oと接触する部分には樹脂コーティングが施してある。これによって、ガラス基板1oはグリッパ部106に把持(挟持)固定される。グリッパ本体部1063の下側に設けられた案内溝はガイドレール部1064に沿って移動可能となっており、グリッパ本体部1063とガイドレール部1064との間ではリニアモータによる駆動系が構成されている。従って、グリッパ本体部1063は、ガイドレール部1064に沿って駆動制御される。
【0025】
グリッパ部107は、エアプレート部1071、エアプレート支持部1072、グリッパ本体部1073及びガイドレール部1074から構成される。エアプレート部1071は、ガラス基板1oをグリッパ本体部1073の上面(図の下向き(−Z)方向)に向かってエアを噴出させるエア吹き出し口を複数個備えており、このエア吹き出し口から噴出される、図4の下向き矢印のような流れのエア噴流によって、ガラス基板1oをグリッパ本体部1073の上面に押し付けて把持(挟持)して保持するようになっている。エアプレート部1071とガラス基板1oとのギャップは約0.05〜0.2[mm]程度とする。エアプレート支持部1072は、このエアプレート部1071にエアを供給すると共にエアプレート部1071とガラス基板1oとの間のギャップを所定値に保持する働きをする。なお、エアプレート支持部1072をエアシリンダ部1062で構成し、エアプレート部1071からエアを噴出しながらエアシリンダ部1062で所定圧力となるように押し付けて保持するようにしてもよい。なお、エア吹き出し口の大きさや個数についてはガラス基板1oの大きさなどに応じて適宜変更設定すればよい。エアプレート部1071においてもガラス基板1oと接触する可能性があるので、その部分には樹脂コーティングを施すことが望ましい。グリッパ本体部1073の下側に設けられた案内溝はガイドレール部1074に沿って移動可能となっており、グリッパ本体部1073とガイドレール部1074との間ではリニアモータによる駆動系を構成してもよい。また、このグリッパ部107の案内溝とガイドレール部1074との間は摺動自在とし、グリッパ部106の駆動力に従って自在に移動可能な従動構造としてもよい。
【0026】
図1のリターン方式のソーラパネル製造装置の動作の一例を説明する。まず、前段の成膜装置からローラコンベア121を介して搬送されて来たガラス基板1xは、搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表示反転されなかったガラス基板1mは、レーザ加工ステーション101にガラス基板1nとして一時的に保持され、アライメント部102に搬送され、そこでアライメント処理される。アライメント処理されたガラス基板1oは、グリッパ部106,107に保持され、ガラス基板1o,1pとして加工エリア部112においてエア浮上移動されて、所定のスクライブ線の加工処理が施される。一方、アライメント部102のアライメント処理時及び加工エリア部112の加工処理時に、ローラコンベア121を介して搬送されて来た次のガラス基板1yは搬入出ロボットステーション141によって表裏反転機構部143上にガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されるか又は表裏反転されない。表裏反転された又は表裏反転されなかったガラス基板1mは、ガラス基板1rとして、レーザ加工ステーション101のアライメント部104に対応した右端位置までローラ搬送される。ガラス基板1rは、レーザ加工ステーション101にガラス基板1qとして一時的に保持され、グリッパ部108,109に保持され、ガラス基板1o,1pへの加工処理が終了するまで待機される。
【0027】
グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1o,1pに対するレーザ加工処理が終了すると、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oは、アライメント部102を介してガラス基板1nの位置から表裏反転機構部143上のガラス基板1mとして一時的に保持され、そこで表裏反転されて又は表裏反転されずに次段の成膜装置へ搬送されるために、ローラコンベア121上に搬送される。一方、グリッパ部106,107に保持されているガラス基板1oがアライメント部102上にガラス基板1nとしてエア浮上移動した時点で、グリッパ部108,109に保持されているガラス基板1qはアライメント部104にてアライメント処理が行なわれ、ガラス基板1o,1pとして加工エリア部112にエア浮上移動されて、所定のスクライブ線の加工処理が施される。このように、図1のリターン方式のソーラパネル製造装置では、上述の処理を交互に繰り返すことによって、アライメント処理による待ち時間等を大幅に短縮している。また、いずれか一方のアライメント部が故障した場合でも、他方のアライメント部によって処理を続行することが可能となる。
【0028】
図5は、スクライブ線の加工処理を行う図1の加工エリア部及びアライメント部を斜め上方から見た外観斜視図である。図5に示すように、加工エリア部112は、恒温室1121によって全体が覆われ、その中に収納される形になっている。恒温室1121の上部には恒温室1121内に恒温エアを供給する恒温エア供給ダクト1122〜1124が取り付けられている。恒温エア供給ダクト1122〜1124は加工エリア部112のY方向に沿って3本設けられている。これは、加工エリア部112のY方向のいずれの領域に対しても上方から下方に向かう均一なエア流を形成するためである。なお、この本数は一例であり、3本より多くてもよいことは言うまでもない。また、加工時のエリアに対応付けて複数の中から適当な恒温エア供給ダクトを選択するようにしてもよい。排気ダクト1125,1126は、レーザ加工の実際に行われる加工エリア付近であって恒温室1121の左右横面下部側にそれぞれ2本設けられている。図5では紙面奥側の排気ダクトには符号を付していない。恒温エア供給ダクト1122〜1124から供給された恒温エアは、恒温室1121内を上方から下方に向い、横面下部側の排気ダクト1125,1126から規則的に排気されるようになる。なお、排気ダクトは、恒温エア供給ダクト1122〜1124に対応付けて恒温室1121の下面側にそれぞれ設けてもよい。そのときには、恒温エアを供給する恒温エア供給ダクトに対応付けて排気ダクトを選択するようにしてもよい。
【0029】
図6は、図5から恒温室及びダクトを省略し、加工エリア部及びアライメント部の詳細構成を示した斜視図である。加工エリア部112は、X軸駆動手段20、グリッパ部106,107、レーザ発生装置40、光学系部材50、リニアエンコーダ70、制御装置80及び検出光学系部材等によって構成されている。アライメント部104は、アライメント用フレーム1041,1042、基板検出カメラ65〜68及び図示していない位置決めピンなどによって構成されている。
【0030】
X軸駆動手段20は、台座10の上に設けられており、グリッパ部106,107(図示していないグリッパ部108,109)をX方向へ移動制御する。なお、X軸駆動手段20は、ボールネジやリニアモータ等が用いられるが、これらの図示は省略してある。X軸駆動手段20の上側にはレーザ加工の対象となるガラス基板1がグリッパ部106,107によって保持されている。また、台座10の上には光学系部材50を保持しながらY軸方向にスライド駆動するスライドフレーム30及び基板検出カメラ65〜68を保持しながらY軸方向にスライド駆動するアライメント用フレーム1041,1042が設けられている。X軸駆動手段20は、Z軸を回転軸としてθ方向に回転可能に構成されていてもよい。なお、スライドフレーム30によりY軸方向の移動量が十分に確保できる場合には、X軸駆動手段20は、X軸方向の移動だけを行なう構成であってもよい。この場合、X軸駆動手段20はX軸テーブルの構成でもよい。
【0031】
スライドフレーム30は、台座10上の四隅に設けられた移動台に取り付けられている。スライドフレーム30は、この移動台によってY方向へ移動制御される。ベース板31と移動台との間には除振部材(図示せず)が設けられている。スライドフレーム30のベース板31には、レーザ発生装置40、各種の光学系部品や光学系部材50及び制御装置80が設置されている。光学系部材50は、ミラーやレンズの組み合わせで構成され、レーザ発生装置40で発生したレーザ光は各種光学系によって光学系部材50に導入される。光学系部材50は、導入されたレーザ光を4系列に分割してX軸駆動手段20上のガラス基板1上に導くものである。なお、レーザ光の分割数は4系列に限るものではなく、2系列以上であればよい。
【0032】
リニアエンコーダ70は、X軸駆動手段20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と、グリッパ部106,107に取り付けられた検出部(図示せず)で構成される。リニアエンコーダ70の検出信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてグリッパ部106,107のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御する。
【0033】
光学系部材50は、図示のように、ベース板31の側面に設けられており、ベース板31の側面に沿ってY軸方向に移動するように構成されている。光学系部材50は、先端部がZ軸を中心に回転可能となっている。レーザ発生装置40から出射されるレーザ光を光学系部材50に導くためのガルバノミラー33はベース板31上に設けられている。ガルバノミラー33は、2つのモータ(ロータリーエンコーダー)を使用してXZ2次元エリアにレーザ光を走査させるものである。ガルバノミラー33は、2軸式(X,Z)で構成され、2個のモータと、このモータに取り付けられるミラーとで構成される。ガルバノ制御裝置331は、モータを動かすためのドライバおよび電源、これらを制御するマイクロコンピュータなどで構成される。
【0034】
ミラー34,35は、光学系部材50上に設けられており、光学系部材50のスライド移動に連動するようになっている。レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、ガルバノミラー33によってミラー34へ向かって反射され、ミラー34に向かうレーザ光はミラー34によってミラー35に向かって反射される。ミラー35は、ミラー34からの反射レーザ光をベース板31に設けられた貫通穴を介して光学系部材50内に導く。なお、レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、ベース板31に設けられた貫通穴から光学系部材50に対して上側から導入されるように構成されれば、どのような構成のものであってもよい。例えば、レーザ発生装置40を貫通穴の上側に設け、貫通穴を介して光学系部材50に直接レーザ光を導くようにしてもよい。
【0035】
ビームサンプラ332は、ガルバノミラー33と反射ミラー34との間の光学系部材50上に、光学系部材50のスライド移動と共に移動するように設けられている。ビームサンプラ332はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約1割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。4分割フォトダイオード333は、ビームサンプラ332で分岐されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置されている。4分割フォトダイオード333によって検出されたレーザ光の強度に対応した4種類の出力信号がガルバノ制御裝置331に出力される。ガルバノ制御裝置331は、4分割フォトダイオード333からの4種類の出力信号に応じてガルバノミラー33の2個のモータ33xy,33yzをリアルタイムで駆動制御する。モータ33xyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面(XY平面)と平行な面内で回転移動するように制御し、モータ33zyは、ガルバノミラー33の反射レーザ光がベース板31の上面と直交する面(YZ平面)と平行な面内で回転移動するようにリアルタイムで制御する。
【0036】
図7は、図6の光学系部材50の詳細構成を示す図である。実際の光学系部材50の構成は、複雑であるが、ここでは説明を簡単にするために図示を簡略化して示している。図7は、光学系部材50の内部を図6の−X軸方向から見た図である。図7に示すようにベース板31にはミラー35で反射されたレーザ光を光学系部材50内に導入するための貫通穴37を有する。この貫通穴37の直下には、ガウシアン強度分布のレーザ光をトップハット強度分布のレーザ光に変換する位相型回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)500が設けられている。
【0037】
DOE500によってトップハット強度分布のレーザ光(トップハットビーム)に変換されたレーザ光はハーフミラー511によって反射ビームと透過ビームにそれぞれ分岐され、反射ビームは右方向のハーフミラー512に向かって、透過ビームは下方向の反射ミラー524に向かって進む。ハーフミラー511で反射したビームは、ハーフミラー512によってさらに反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー522に向かって、透過ビームは右方向の反射ミラー521に向かって進む。ハーフミラー512を透過したビームは反射ミラー521によって反射され、下方向の集光レンズ541を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー512で反射したビームは、反射ミラー522,523によって反射され、下方向の集光レンズ542を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー511を透過したビームは、反射ミラー524によって反射され、左方向に向かって進む。反射ミラー524で反射したビームは、ハーフミラー513によって反射ビームと透過ビームに分岐され、反射ビームは下方向の反射ミラー526に向かって、透過ビームは左方向の反射ミラー528に向かって進む。ハーフミラー513で反射したビームは、反射ミラー526,527によって反射され、下方向の集光レンズ543を介してガラス基板1に照射される。ハーフミラー513を透過したビームは反射ミラー528によって反射され、下方向の集光レンズ544を介してガラス基板1に照射される。
【0038】
DOE500によって変換されたトップハットビームは、上述のハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528によって、透過・反射されて集光レンズ541〜544に導かれる。このとき、DOE500から各集光レンズ541〜544までの光路長は等しくなるように設定されている。すなわち、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラー512を透過して反射ミラー521で反射して集光レンズ541に到達するまでの光路長、ハーフミラー511で反射したビームがハーフミラー512、反射ミラー522,523でそれぞれ反射して集光レンズ542に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523、ハーフミラー513、反射ミラー526,527でそれぞれ反射して集光レンズ543に到達するまでの光路長、ハーフミラー511を透過したビームが反射ミラー523で反射してハーフミラー513を透過して反射ミラー528で反射して集光レンズ544に到達するまでの光路長は、それぞれ等しい距離である。これによって、ビームが分岐される直前にDOE500を配置しても、トップハット強度分布のレーザ光を集光レンズ541〜544に同様に導くことが可能となる。なお、図7の実施例では、光路長が完全に一致する場合について説明したが、レーザ光のトップハット強度分布を維持することが可能な範囲で光路長を若干異ならせることは可能である。
【0039】
シャッター機構531〜534は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光がガラス基板1から外れた場合にレーザ光の出射を遮蔽するものである。測長システム52,54は、図示していない検出光照射用レーザとオートフォーカス用フォトダイオードとから構成され、検出光照射用レーザから照射された光の中でガラス基板1の表面から反射した反射光を受光し、その反射光量に応じて光学系部材50の下端部とガラス基板1の表面との間の距離すなわち光学系部材50の高さを調整する。
【0040】
上述のハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528によって構成される光学系は、レーザ発生装置40から発生される波長1064[nm]の加工用のレーザ光を透過・反射させて集光レンズ541〜544の各光軸、すなわちそれぞれの加工位置に導くものである。
【0041】
各集光レンズ541〜544の光軸上であって、各反射ミラー521,523,527,528の上側には、各加工位置における加工状態を観察するための加工状態検出光学系が設けられている。加工状態検出光学系は、照明用レーザ551〜554、平行光変換用レンズ561〜564、光学部品571〜574、集光用レンズ581〜584及びモニタ装置591〜594から構成されている。
【0042】
照明用レーザ551〜554は、波長685[nm]の加工状態観察用の検査光を発生するものであり、集光レンズ541〜544の光軸上から離れた位置から各光学部品571〜574に対してレーザ光を出射する。平行光変換用レンズ561〜564は、照明用レーザ551〜554から出射されるレーザ光を平行光線に変換し、光学部品571〜574に導入する。光学部品571〜574は、それぞれ集光レンズ541〜544の光軸の延長上に配置され、照明用レーザ551〜554から出射されたレーザ光を、加工用レーザ光の光軸にほぼ一致させ、かつ、集光レンズ541〜544に向かうように反射させる。光学部品571〜574は、波長685[nm]の光に対しては、透過率50パーセント、反射率50パーセントであり、波長1064[nm]の光に対しては透過率0パーセント、反射率100パーセント(全反射)の部品である。
【0043】
一方、集光用レンズ581〜584は、光学部品571〜574で反射された照明用レーザ551〜554からのレーザ光を集光して、加工箇所に照明光として照射する。すなわち、光学部品571〜574で反射された照明用レーザ551〜554からのレーザ光は、集光用レンズ581〜584、反射ミラー521,523,527,528及び集光レンズ541〜544を介してそれぞれの加工箇所に照射される。
【0044】
従って、光学部品571〜574で反射された照明用レーザ551〜554からのレーザ光は、集光レンズ541〜544及び集光用レンズ581〜584の2枚のレンズによって集光されることになる。照明用レーザ551〜554からのレーザ光によって照射された加工箇所は、集光レンズ541〜544及び集光用レンズ581〜584によってモニタ装置591〜594の撮像面に結像され、その結像情報は、制御装置80に出力される。制御装置80は、モニタ装置591〜594から結像情報に基づいてレーザ発生装置40で発生したレーザ光によるガラス基板1の加工状態を検出し、加工不良、加工条件等の問題を分析して、レーザ発生装置40の出力条件、雰囲気温度等にフィードバックして加工状態を制御する。
【0045】
フォーカス調整用駆動機構46〜49は、ガラス基板1に対する各集光レンズ541〜544の高さ方向(フォーカス)及びY方向(倣い方向)の各制御を個別に行うものである。図8は、図7のフォーカス調整用駆動機構の詳細構成を示す断面図であり、図9は、フォーカス調整用駆動機構の一部分を抜き出して示した斜視図である。図において、フォーカス調整用駆動機構46は、駆動部本体461、駆動部カバー462、マグネット保持部463a〜463d、マグネット464a〜464d、可動部465、垂直駆動力発生コイル群466、水平駆動力発生コイル群467とから構成される。図9において、駆動部本体461は省略してある。
【0046】
図8において、可動部465は、集光レンズ541を保持すると共に垂直駆動力発生コイル群466、水平駆動力発生コイル群467,468が巻き回されている。垂直駆動力発生コイル群466は、略正方形状(矩形状)となるように可動部465の下端部に巻き回されている。マグネット保持部463a〜463dは、略コの字形をしており、内側内壁面に直方体形状のマグネット464a〜464dをそれぞれ保持している。図9に示すように、略正方形状に巻き回された垂直駆動力発生コイル群466は、マグネット保持部463a〜463dとマグネット464a〜464dとの間の間隙に挿入され、駆動部本体461内に収納される。一方、水平駆動力発生コイル群467,468は、図9に示すように、可動部465の対向する頂辺同士を結ぶように交差して巻き回され、マグネット保持部463c,463dとマグネット464c,464dとの間の間隙に挿入されている。従って、垂直駆動力発生コイル群466に流れる電流に応じて可動部465は垂直方向(Z方向)に駆動制御され、水平駆動力発生コイル群467,468に流れる電流に応じて可動部465は水平方向(Y方向)に駆動制御される。
【0047】
図8に示すように、駆動部本体461の側面には、エア供給部461a,461bが設けられている。エア供給部461a,461bから供給されるエアはエア流路461c,461dを介して駆動部本体461内に導入される。エア流路461c,461dは、終端部がY字に分岐されており、Y字分岐路の一方であって上斜め方向に向かうものは、可動部465の傾斜部(テーパ部)にエアを吹き付けられるようになっており、Y字分岐路の他方であって水平方向に向かうものは、駆動部本体461内にエアを導入するようになっている。可動部465の傾斜部に吹き付けられるエアによって、可動部465と駆動部本体461との接触が回避され、可動部465の水平方向(Y方向)の移動量も規制される。また可動部465の傾斜部に吹き付けられるエアは、可動部465の初期位置を設定するカウンターバランスとして機能する。一方、駆動部本体461内に導入されるエアは、集光レンズ541の冷却及びパージ用のエアとして利用される。なお、図示していないが、可動部465の上側四隅には、X方向(図面の前後方向)に延びたスプリング部材が駆動部本体461の内壁面に取り付けられている。このスプリング部材は、可動部465を初期位置に復帰させる復元力を与えるものである。
【0048】
図10は、アライメントカメラ装置、第1検出光学系部材及び第2検出光学系部材の構成並びに基板表面のエアパージ手段の構成を示す模式図である。アライメントカメラ装置60は、前述のように光学系部材50の側面に設けており、ガラス基板1上に施されたスクライブ線P1加工線の画像を取得し、その情報を制御装置80に出力し、各集光レンズ541〜544のフォーカス位置及びY方向位置、すなわち2回目以降のスクライブ線P2,P3加工時のアライメント処理に利用される。このアライメントカメラ装置60は、レーザ光の分割数に対応して設けられている。この実施の形態では、4系列分のアライメントカメラ装置60が設けられている。
【0049】
図11は、ワークであるガラス基板の歪みや捩じれ(うねり等)によって加工線が曲がって形成される場合の一例を示す図である。最初の加工線となるスクライブ線P1がガラス基板1の歪みや捩じれ(うねり等)によって図11に示すように湾曲(蛇行)した場合、この実施の形態では、スクライブ線P2及びP3は、この最初のスクライブ線P1の湾曲(蛇行)線に倣って加工処理される。この実施の形態では、スクライブ線P1〜P3の幅が約30[μm]、スクライブ線P1−P2間,P2−P3間の間隔は約40[μm]となっており、スクライブ線P1に倣って、スクライブ線P2,P3のレーザ加工が行なわれる。
【0050】
第1検出光学系部材は、図10に示すようにレーザ光状態検査用CCDカメラ28から構成される。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ101aに形成された間隙部(図示せず)からガラス基板1を介してレーザ光を受光するようになっている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ101aに形成された間隙部(図示せず)からステージ面のガラス基板1の裏面側に位置するように設けられている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、エア浮上ステージ101aの上空側を視認可能に設置されている。レーザ光状態検査用CCDカメラ28によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、各集光レンズ541〜544から出射されるレーザ光のスポット径、形状、出力等が適正であるか否かの判定を行なう。すなわち、レーザ光状態検査用CCDカメラ28は、光学系部材50の各集光レンズ541〜544から出射するレーザ光を直接観察することができるので、これを画像化することによって、制御装置80は、分岐後のレーザ光のそれぞれについて、その加工箇所におけるレーザ光の特性を測定することができる。また、レーザ発生装置40、光学系部材50などのレーザ光に係わる各光学系の交換した時に、交換前と交換後の画像を取得し数値化しておくことによって、交換後のフォーカス及び光軸の調整などを容易に行なうことができる。さらに、各光学ヘッドから出力される各レーザ光の画像を取得して数値化することによって、各光学ヘッドのバラツキなどを適正に調整することができる。
【0051】
第2検出光学系部材は、図10に示すように、ビームサンプラ91,93、高速フォトダイオード94及び光軸検査用CCDカメラ96から構成される。ビームサンプラ91,93は、光学系部材50内に導入されるレーザ光の光路中に設けられている。この実施の形態では、レーザ発生装置40とガルバノミラー33との間に設けられている。ビームサンプラ91,93はレーザ光の一部(例えば、レーザ光の約0.4割程度又はそれ以下の光量)をサンプリングして外部に分岐出力する素子である。高速フォトダイオード94は、ビームサンプラ91で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。高速フォトダイオード94によって検出されたレーザ光の強度に対応した出力信号は、制御装置80に出力される。光軸検査用CCDカメラ96は、ビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を受光面のほぼ中央付近で受光するように配置される。光軸検査用CCDカメラ96によって撮像された映像は、制御装置80に出力される。なお、光軸検査用CCDカメラ96は、高速フォトダイオード94に照射されるレーザ光の位置を示す画像を取り込み、その画像を制御装置80に出力するようにしてもよい。
【0052】
制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてグリッパ部106,107のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御し、高速フォトダイオード94及び光軸検査用CCDカメラ96から出力される信号に基づいてレーザ発生装置40から出射されるレーザ光のパルス抜けを検出したり、レーザ光の光軸ずれ量に基づいてレーザ発生装置40の出射条件を制御したり、光学系部材50内のレーザ光を導入するためのガルバノミラー33、反射ミラー34,35の配置等をフィードバック制御する。
【0053】
このソーラパネル製造装置によるレーザスクライブ処理時には薄膜からスクライブ痕が発生する。この薄膜の蒸気が大気中に飛散し、ガラス基板1上に付着することがあり、これによってレーザスクライブが不良となる。また、ガラス基板1の表面に付着した種々の粉塵等が存在することによってレーザスクライブ不良が発生する。そこで、この実施の形態では、ガラス基板1の表面にエアナイフ装置97,98を用いて、ガラス基板1の表面に付着している粉塵等をエアでパージし、粉塵等を除去する。すなわち、この実施の形態では、レーザ加工時に+X軸方向(図面右方向)に移動するガラス基板1のレーザスクライブ加工直前にエアナイフ装置97を用いてガラス基板1の表面の粉塵等を除去し、加工中にはエアナイフ装置98を用いて加工中に発生する粉塵等をパージする。なお、ガラス基板1が−X軸方向(図面左方向)に移動する場合には、エアナイフ装置97,98をレーザ光41〜44を対象線として反転させるように構成してもよいし、予めエアナイフ装置97,98の反転した位置に別のエアナイフ装置を設けていてもよい。また、加工時にはエアナイフ装置98の反転位置に同様のエアナイフ装置を設けることによって、加工個所に交差するようにエアを吹き付けることができ、エアパージの効果を向上させることができる。
【0054】
図12は、図5の恒温室内のエア流の樣子を模式的に示す図である。図12において、光学系部材50内の各構成部品の符号は省略して示してある。恒温室1121の上側に設けられた恒温エア供給ダクト1122〜1124(図12では図示せず)からは供給された恒温エアは、図12の点線で示すように、恒温室1121の上部から下部に向かって流れ、エア浮上ステージ101a上を浮上移動するガラス基板1の表面に接触すると共にガラス基板1の表面に沿って横方向に流れ、恒温室1121の左右に設けられた排気ダクト1125,1126から排出される。一方、エア浮上ステージ101aから噴出されるエアはガラス基板1の下面に吹き付けられ、そのまま横方向に流れ、同じく恒温室1121の左右に設けられた排気ダクト1125,1126から排出される。恒温室1121内は、点線で示すようなエア流が安定的に発生しており、このエア流によって、パージされた粉塵等は、大気中に散乱することなく、排気ダクト1125,1126から効率的に除去されることとなり、また、光学系に対して蒸発した膜が付着することを防止することも可能となる。なお、光学系部材50内にも安定的にエア流が発生するように、光学系部材50はフレーム枠にて構成するようにしてもよいし、又は光学系部材50の上面及び下面側に天板及び床板を設けないようにして、恒温エア流が光学系部材50内を通過するような構成としてもよい。
【0055】
図13は、図6の制御装置80の処理の詳細を示すブロック図である。制御装置80は、分岐手段81、パルス抜け判定手段82、アラーム発生手段83、基準CCD画像記憶手段84、光軸ずれ量計測手段85、レーザコントローラ86、照射レーザ状態検査手段89、照射レーザ調整手段8A、加工状態検査手段8B、加工条件調整手段8C、加工線検出手段8D及び倣い加工調整手段8Eから構成される。
【0056】
分岐手段81は、リニアエンコーダ70の検出信号(クロックパルス)を分岐して後段のレーザコントローラ86に出力する。パルス抜け判定手段82は、高速フォトダイオード94からのレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)と分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)とを入力し、それに基づいてレーザ光のパルス抜けを判定する。図14は、図13のパルス抜け判定手段82の動作の一例を示す図である。図14において、図14(A)は分岐手段81から出力される検出信号(クロックパルス)の一例、図14(B)は高速フォトダイオード94から出力されるレーザ光強度に対応した出力信号(ダイオード出力)の一例、図14(C)はパルス抜け判定手段82がパルス抜け検出時に出力するアラーム信号の一例をそれぞれ示す。
【0057】
図14に示すように、パルス抜け判定手段82は、分岐手段81からのクロックパルスの立ち下がり時点をトリガ信号として、ダイオード出力値が所定のしきい値Th以上であるか否かの判定を行い、ダイオード出力値がしきい値Thよりも小さい場合には、ハイレベル信号をアラーム発生手段83に出力する。アラーム発生手段83は、パルス抜け判定手段82からの信号がローレベルからハイレベルに変化した時点でパルス抜けが発生したことを示すアラームを外部に報知する。アラームの報知は、画像表示、発音等の種々の方法で行なう。アラームの発生によって、オペレータはパルス抜けが発生したことを認識することができる。また、このアラームが頻繁に発生する場合には、レーザ発生装置の性能が劣化したか又は寿命になったことを意味する。
【0058】
基準CCD画像記憶手段84は、図13に示すような基準CCD画像84aを記憶している。この基準CCD画像84aは、光軸検査用CCDカメラ96の受光面の中央にレーザ光が受光した状態の画像を示すものである。光軸検査用CCDカメラ96からは、図13に示すような被検査画像85aが出力される。光軸ずれ量計測手段85は、光軸検査用CCDカメラ96からの被検査画像85aを取り込み、これと基準CCD画像84aとを比較し、光軸のずれ量を計測し、そのずれ量をレーザコントローラ86に出力する。例えば、図13に示す被検査画像85aのような画像が光軸検査用CCDカメラ96から出力された場合には、光軸ずれ量計測手段85は、両者を比較して、X軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それをレーザコントローラ86に出力する。レーザコントローラ86は、被検査画像85aと基準CCD画像84aとが一致するように、レーザ光の光軸に関係する装置、すなわちレーザ発生装置40の出射条件や光学系部材50内にレーザ光を導入するためのガルバノミラー33、反射ミラー34,35の配置等をフィードバックして調整する。
【0059】
照射レーザ状態検査手段89は、レーザ光状態検査用CCDカメラ28からの画像89aを取り込み、これに基づいてレーザ光の特性(スポット径、形状、出力等)を計測し、その計測値を照射レーザ調整手段8Aに出力する。例えば、図13に示すような画像89aがレーザ光状態検査用CCDカメラから出力された場合には、照射レーザ状態検査手段89は、画像89a内の円状の輪郭線89b(集光レンズ541〜544の外縁に対応した線)を基準にフォーカス円89c(画像89a内の小円)の位置を検出し、フォーカス円89cが輪郭線89bのほぼ中央に位置しているか否かに基づいて光軸のX軸及びY軸方向のずれ量を計測し、それを照射レーザ調整手段8Aに出力する。また、照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス円89cの大きさ(スポット径・照射面積)を計測し、それも基づいたフォーカス位置を照射レーザ調整手段8Aに出力する。さらに、照射レーザ状態検査手段89は、フォーカス円89cの輝度レベルに基づいたレーザ光出力を照射レーザ調整手段8Aに出力する。照射レーザ調整手段8Aは、照射レーザ状態検査手段89からの光軸のずれ量、フォーカス位置及び光出力に対応した信号に基づいて、光学系部材50内の各ハーフミラー511〜513及び反射ミラー521〜528の配置等をフィードバックして調整し、レーザコントローラ86を介してレーザ発生装置40の出射条件等を制御する。なお、照射レーザ調整手段8Aを省略して、これらの機能をレーザコントローラ86に持たせるようにしてもよい。
【0060】
加工状態検査手段8Bは、モニタ装置591〜594からの結像情報を取り込み、これに基づいてレーザ光によるガラス基板1の加工状態、すなわち加工不良が発生していないか否かを検出し、その分析結果を加工条件調整手段8Cに出力する。加工条件調整手段8Cは、加工状態検査手段8Bからの分析結果に基づいて、レーザ加工条件であるレーザ発生装置40の出力条件、雰囲気温度等をレーザコントローラ86にフィードバックしてレーザ加工状態を適切に制御する。なお、加工条件調整手段8Cを省略して、これらの機能をレーザコントローラ86に持たせるようにしてもよい。
【0061】
上述の実施の形態では、レーザ加工(スクライブ加工)時に光軸ずれ量計測手段85でレーザ光の光軸ずれを、パルス抜け判定手段82でパルス抜けを、加工状態検査手段8Bで加工状態を、それぞれ検査する場合について説明したが、図15に示すように高速フォトダイオード94からの出力波形に基づいてレーザ光のパルス状態を検査するようにしてもよい。例えば、図15では、レーザ光のパルス幅及びパルス高さを計測し、これらに異常が発生した場合にはアラームを発生するようにしてもよいし、加工状態検査手段8Bで検出された加工状態に基づいてアラームを発生するようにしてもよい。なお、レーザ光のパルス幅は、高速フォトダイオード94からの出力波形が所定値以上になっている期間が所定の範囲にある場合を正常とし、この範囲よりも大きいか小さい場合にはパルス幅異常と判定し、アラームを出力する。また、レーザ光のパルス高さは、高速フォトダイオード94からの出力波形の最大値が許容範囲内に存在する場合を正常とし、この許容範囲よもも大きいか小さい場合にはパルス高さ異常と判定し、アラームを出力する。このように、レーザ光を常時サンプリングしているので、リアルタイムでパルス幅、パルス高さ(パワー)などのレーザ光の品質を管理することができる。上述のようなパルス抜けが頻発するようになったら、レーザ発生装置40の劣化あるいは寿命と判断できる。
【0062】
上述の実施の形態では、パルス抜けの発生だけを見ているが、パルス抜けが発生した箇所の座標データ(位置データ)を取得して記憶することによって、スクライブ線のリペア処理を行なうことが可能となる。上述の実施の形態では、光軸検査用CCDカメラ96を用いてビームサンプラ93で分岐出力されたレーザ光の一部(サンプリングビーム)を直接受光して、それを画像処理することによって、光軸ずれを検査する場合について説明したが、高速フォトダイオード94の受光面の中央にレーザ光が受光した状態を示す画像を被検査画像として光軸検査用CCDカメラ96あるいは分割型フォトダイオードで取得することによって光軸ずれを検査するようにしてもよい。上述の実施の形態では、レーザ光の光軸ずれ及びパルス抜けを検査する場合について説明したが、光軸ずれ、パルス抜け、パルス幅及びパルス高さのそれぞれを適宜組み合わせてレーザ光の状態を検査するようにしてもよい。
【0063】
図13において、加工線検出手段8Dは、アライメントカメラ装置60からの画像に基づいて加工線P1の画像認識処理を実行する。図16は、図13の加工線検出手段8Dの動作の一例を示す図である。図16(A)に示すようにガラス基板1を載置した状態でガラス基板1上の金属層にレーザ光を照射し、スクライブ処理(スクライブ線P1加工)を実行する。最初のスクライブ処理の結果、ガラス基板1上には、約ピッチ10mmで加工線が形成される。なお、図16では複数の加工線P1のうちの1本の加工線90のみを示す。線100は、加工線90が直線に加工される場合の期待線である。アライメントカメラ装置60は、この期待線100上の複数の点、すなわち図16(B)に示すような撮影点61〜64付近の画像61a〜64aを取得する。各画像61a〜64aを見ると分かるように、画像の中に実際の加工線90の画像を含んでいる。この各画像61a〜64aと期待線100との差により、加工線90の曲りの状態を画像認識することができる。
【0064】
倣い加工調整手段8Eは、加工線検出手段8Dの画像処理の結果に応じて、各画像61a〜64aと期待線100とを比較してアライメント処理を行い、その結果をレーザコントローラ86に出力する。レーザコントローラ86は、倣い加工調整手段8Eのアライメン処理の結果に基づいて前回の加工線90から約30μmはなれた位置にレーザ光が照射されるように、フォーカス調整用駆動機構46〜49を駆動制御して、各集光レンズ541〜544の高さ方向(フォーカス)及びY方向を調整して、スクライブ処理(スクライブ線P2加工)を実行する。これによって、図16(C)に示すように、加工線90から約30μmはなれた位置に加工線92が形成される。また、このスクライブ処理(スクライブ線P2加工)が終了すると、別の装置で半導体層の上に透明電極層を形成する処理が行なわれる。再び、レーザ加工システムにガラス基板1が搬入され、前回と同様のアライメント処理が行なわれ、ガラス基板1に対して同様にレーザ光によるスクライブ処理(スクライブ線P3加工)が実行される。これによって、ガラス基板1には、図11に示すような3本の加工線P1〜P3が形成される。
【0065】
上述の実施の形態では、アライメントカメラ装置60を用いて画像処理にて倣い加工を行なう場合について説明したが、スクライブ線P1をトラッキング処理して加工線P2,P3を加工するようにしてもよい。図17は、グレーティングを用いて加工線P1をトラッキングする方式の一例を示す図である。図において、グレーティングを用いて1個のレーザ光を3個に分割してレーザ光123〜125として、ガラス基板1の加工線P1に照射する。反射光検出用センサである4分割センサ126〜128は各レーザ光123〜125の反射光を図17(A)のように受光する。膜面反射強度は加工線P1以外の箇所が高いので、4分割センサ126〜128からの各出力に応じて、レーザ光123〜125が加工線P1上を正確にトラッキングしているか否かを検出することができる。このトラッキング用レーザ光及び反射光検出用センサをフォーカス調整用駆動機構46〜49に固定的に設けて、加工線P1を正確にトラッキングさせることによって、加工線P1を正確に倣った加工線P2,P3を形成することが可能になる。図17(B)及び図17(C)は、加工線P1に対してトラッキング用レーザ光及び反射光検出用センサが横方向(Y方向)ずれた場合を示す。このように加工線P1に対してレーザ光123〜125がずれると、反射光検出用センサである4分割センサからの出力信号の平衡状態がくずれるので、フォーカス調整用駆動機構46〜49は集光レンズを541〜544を±Y方向に駆動制御して、図17(A)の関係となるようにトラッキング制御することによって、加工線P1を倣った加工線P2,P3を加工することが可能となる。
【0066】
上述の実施の形態では、薄膜の形成されたガラス基板1の表面からレーザ光を照射して薄膜に加工線(溝)を形成する場合について説明したが、ガラス基板1の裏面からレーザ光を照射して、ガラス基板表面の薄膜に加工線を形成するようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、最初の加工処理の結果、ガラス基板1上に形成された最初の加工線を含む画像を取得する場合について説明したが、2回目のスクライブ処理(スクライブ線P2加工処理)の結果、ガラス基板1上に形成された2本の加工線(スクライブ線P1,P2)を含む画像を取得して、その画像にある2本のスクライブ線P1及び/又はスクライブ線P2を用いてアライメント処理を行なうようにしてもよい。
【0067】
図18は、図6のアライメント部102,104に設けられる基板検出カメラシステムの一例を示す図である。図18(A)は、ガラス基板と基板検出カメラとの関係を示す側面図であり、図18(B)はその上面図である。アライメント部102,104には、基板検出カメラシステムとアライメントカメラシステムが設けられ、ガラス基板の検出とそのアライメント処理を行っている。基板検出カメラ65〜68は、エア浮上搬送されるガラス基板1がアライメント部102,104上に載置されるときに、ガラス基板1の四隅付近の画像をその上側から取得するものである。図18では、ガラス基板1がアライメント部102,104上に載置され、グリッパ部106〜108に保持されてX軸方向にエア浮上移動して、レーザ加工ステーション10に投入される直前の様子を示す。図18(B)に示す画像65a〜68aは、基板検出カメラ65〜68によって取得されたガラス基板1の四隅付近の画像である。基板検出カメラ65〜68の相対的な位置関係は予め設定された既知の値なので、画像65a〜68aに示すように、曲がりや反りのないガラス基板1の四隅の各頂点は、基板検出カメラ65〜68の撮像範囲のほぼ中央付近に位置するように設定されている。従って、画像65a〜68aの中で各頂点の位置がずれていた場合、そのずれ量に基づいてガラス基板1の曲がり(反り)を検出することができるようになっている。また、画像65a〜68aに基づいてガラス基板1の四隅付近の欠けを検出することができる。なお、基板検出カメラ65〜68をガラス基板1の各辺に沿って移動させることによってガラス基板1の各辺の欠けを検出することができる。
【0068】
図19は、本発明に係るソーラパネル製造装置の別の実施例を示す図である。図20は、図19の加工エリア部112を横方向から見た側面図である。図19において、図Bと同じ構成のものには同一の符号が付してあるので、その説明は省略する。この製造装置が図Bのものと異なる点は、図Bの製造装置のレーザ加工ステーション101の加工エリア部112の加工箇所(光学系部材50)の両側にエアプレート部1121,1122を設け、図20の下向き矢印のような流れのエア噴流によって、ガラス基板1oの曲がり(反り)を矯正するようにしたものである。すなわち、ガラス基板1oは、エア浮上ステージ101aからのエア噴流(図20の上向き矢印のような流れ)とエアプレート部1121,1122からのエア噴流(図20の下向き矢印のような流れ)とによって、その曲がりや反りが矯正されるようになっている。
【0069】
図21は、エアパージ・残渣吸引部の概略構成を示す図である。レーザ加工ステーション101において、第2及び第3スクライブ線P2、P3の加工を行なう工程ではレーザ光をガラス基板1の表面(ガラス面)から入射させ、ガラス基板1の裏面に存在する膜面に対してスクライブ加工を行なっている。この加工時に、図21に示すように、加工部から加工残渣610が発生する。この加工残渣610が膜面へ再付着することを防ぐため、エアパージ・残渣吸引部60aは、ガラス基板1の裏面(膜面)側からエアパージ62を行い、これらの残渣610を吸引部63から吸引除去している。このとき、吸引部63に吸引除去できなかった残渣610は、恒温室1121内のエア流によって、大気中に散乱することなく、排気ダクト1125,1126から効率的に除去される。
【0070】
図22は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムを用いたソーラパネル製造システムの動作の一例を示すフローチャート図である。ステップS1の基板搬入処理では、図1又は図19に示すように、図示していない成膜装置で成膜され、ローラコンベア121上を搬送されてきたガラス基板1xは、搬入出ロボットステーション141によってガラス基板1mとして表裏反転機構部143に搬入される。なお、ここでは、搬入出ロボットステーション141によって基板搬入処理が行なわれる場合を示したが、ローラ搬送によって搬入してもよい。
【0071】
ステップS2の基板受取り処理では、表裏反転機構部143によって表裏反転されたガラス基板1m又は表裏反転されなかったガラス基板1mをレーザ加工ステーション101に搬送する処理を行なう。このとき、搬入出ロボットステーション141では、表裏反転機構部143によって表裏反転されたガラス基板1m又は表裏反転されなかったガラス基板1mをレーザ加工ステーション101に搬送する際に、ガラス基板1mをレーザ加工ステーション101の右端位置までローラ搬送する場合もあれば、そのままレーザ加工ステーション101に搬送する場合がある。
【0072】
ステップS3の基板アライメント処理では、搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143上から搬送されて来たガラス基板1nをアライメント部102に搬送し、アライメント部102で所定の位置にアライメント処理する。また、レーザ加工ステーション101の右端位置から搬送されて来たガラス基板1qに対してはアライメント部104に搬送し、そのアライメント部104で図18に示すようなアライメント処理を行なう。
【0073】
ステップS4の基準側グリッパ拘束処理では、前のステップS3のアライメント処理によって所定位置にアライメントされたガラス基板1oに対して、図1〜図3及び図19に示すように、基準側のグリッパ部106が搬送方向に沿った辺の一方側を拘束する。一方、前のステップS3のアライメント処理によって所定位置にアライメントされたのが、ガラス基板1qの場合は、このガラス基板1qに対して、図1及び図19に示すように、基準側のグリッパ部108が搬送方向に沿った辺の一方側を拘束する。
【0074】
ステップS5の従動側グリッパ拘束処理では、図1〜図3及び図19に示すように、前のステップS4の基準側グリッパ拘束処理によってグリッパ部106に拘束された辺の他方側を従動側のグリッパ部107が拘束する。一方、前のステップS4の基準側グリッパ拘束処理によってグリッパ部108に拘束されたのがガラス基板1qの場合は、図1及び図19に示すように、このガラス基板1qの他方側を従動側のグリッパ部109が拘束する。
【0075】
ステップS6の加工準備位置移動処理では、前のステップS4及びS5で両辺の拘束されたガラス基板1oをグリッパ部106,107で拘束しながら所定の加工準備位置に移動する。一方、前のステップS4及びS5で拘束されたのがガラス基板1qの場合は、このガラス基板1qをグリッパ部108,109で拘束しながら所定の加工準備位置に移動する。
【0076】
ステップS7のレーザ加工処理では、図1及び図19に示すように、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されたガラス基板1o,1qを加工エリア部112のレーザ光に同期させて、ガラス基板1oと点線のガラス基板1pとの間をX方向に移動させ、この移動に同期させて加工エリア部112は、グリッパ部106,107又はグリッパ部108,109に保持されエア浮上搬送されるガラス基板1o,1qにレーザ光を照射して所定のスクライブ線の加工処理を行う。図1には、グリッパ部106,107に保持されたガラス基板1oを、点線で示されたガラス基板1pの位置までエア浮上した状態で移動させながら、所定のスクライブ線加工を行う状態が示してある。なお、スクライブ線P1の加工処理の後に、ガラス基板をY方向に2スキャン分(すなわち、スクライブ線P2,P3の加工位置)移動させて、フォーカス調整用駆動機構46〜49のフォーカス用データを採集し、図16に示すように、採集したフォーカス用データに基づいてスクライブ線P2,P3の倣い加工を行なう。また、図1のレーザ加工ステーションがガラス基板裏面の薄膜面に対して加工を行なうスクライブ線P2,P3の加工を行っている時に、その加工部から加工残渣が薄膜面から発生するので、各加工箇所で発生する加工残渣を図21に示すようなエアパージ・残渣吸引部60a〜60dでエアパージして吸引除去する。
【0077】
ステップS8の加工ライン確認処理では、加工状態検査手段8Bがモニタ装置591〜594からの結像情報を取り込み、これに基づいてレーザ光によるガラス基板1の加工状態、すなわち加工不良が発生していないか否かを検出し、その分析結果を加工条件調整手段8Cに出力し、加工条件調整手段8Cがその分析結果に基づいて、レーザ加工条件であるレーザ発生装置40の出力条件、雰囲気温度等をレーザコントローラ86にフィードバックしてレーザ加工状態を適切に制御する。なお、薄膜の形成されたガラス基板1の表面からレーザ光を照射して薄膜に加工線(溝)を形成する第1スクライブ線P1の加工後に、レーザ光をガラス基板1の表面(ガラス面)から入射させ、ガラス基板1の裏面に存在する膜面に対してスクライブ加工を行なう第2及び第3スクライブ線P2、P3の加工を行なう場合には、第1スクライブ線P1の加工状態をガラス基板1の表面側に位置するアライメントカメラカステムを構成する基板検出カメラ65〜68を用いて検出し、第2及び第3スクライブ線P2、P3の加工状態をガラス基板1の裏面側に位置するレーザ光状態検査用CCDカメラ28などを用いて検出するようにしてもよい。
【0078】
ステップS9の基板排出準備処理では、図1及び図19に示すように、加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1nを搬入出ロボットステーション141の表裏反転機構部143に搬送するための排出準備を行なう。一方、加工エリア部112でスクライブ加工処理の施されたガラス基板1qを搬入出ロボットステーション141の右端の位置に搬送するための排出準備を行なう。
【0079】
ステップS10の排出処理では、搬入出ロボットステーション141が、レーザ加工ステーション101で加工されたガラス基板を表裏反転機構部143で直接受取るか又はレーザ加工ステーション101の右端位置で受け取ったガラス基板1rを表裏反転機構部143までローラ搬送又はエア浮上搬送し、表裏反転機構部143でレーザ加工処理後のガラス基板を表裏反転して又は表裏反転せずにローラコンベア121に搬出する。以上の一連の処理を経てガラス基板1に所定のレーザ加工が施される。
【0080】
上述の実施の形態では、ソーラパネル製造装置を例に説明したが、本発明はELパネル製造装置、ELパネル修正装置、FPD修正装置などのレーザ加工を行なう装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,1m〜1r,1x,1y…ガラス基板、
10…台座、
101…レーザ加工ステーション、
101a…エア浮上ステージ、
102,104…アライメント部、
1041…アライメント用フレーム、
106,107,108,109…グリッパ部
1061…把持(挟持)プレート部、
1062…エアシリンダ部、
1063…グリッパ本体部、
1064…ガイドレール部、
1071…エアプレート部、
1072…エアプレート支持部、
1073…グリッパ本体部、
1074…ガイドレール部、
110…グリッパ支持駆動部、
112…加工エリア部、
1121…恒温室、
1122…恒温エア供給ダクト、
1125…排気ダクト、
121…ローラコンベア、
123〜125…レーザ光、
126〜128…分割センサ、
141…搬入出ロボットステーション、
143…表裏反転機構部、
20…X軸駆動手段、
28…レーザ光状態検査用CCDカメラ、
30…スライドフレーム、
31…ベース板、
33…ガルバノミラー、
331…ガルバノ制御裝置、
332…ビームサンプラ、
333…4分割フォトダイオード、
33xy,33zy…モータ、
34,35…反射ミラー、
37…貫通穴、
40…レーザ発生装置、
41…レーザ光、
46…フォーカス調整用駆動機構、
461…駆動部本体、
461a…エア供給部、
461c…エア流路、
462…駆動部カバー、
463a,463c…マグネット保持部、
464a,464c…マグネット、
465…可動部、
466…垂直駆動力発生コイル群、
467…水平駆動力発生コイル群、
50…光学系部材、
500…位相型回折光学素子(DOE)
511〜513…ハーフミラー、
52,54…測長システム、
521〜528…反射ミラー、
531〜534…シャッター機構、
541〜544…集光レンズ、
551…照明用レーザ、
561…平行光変換用レンズ、
571…光学部品、
581〜584…集光用レンズ、
591…モニタ装置、
60…アライメントカメラ装置、
60a…エアパージ・残渣吸引部、
610…加工残渣、
61〜64…撮影点、
61a〜64a…画像、
62…エアパージ、
63…吸引部、
65〜68…基板検出カメラ、
65a〜68a…画像、
70…リニアエンコーダ、
80…制御装置、
81…分岐手段、
82…パルス抜け判定手段、
83…アラーム発生手段、
84…基準CCD画像記憶手段、
84a…基準CCD画像、
85…光軸ずれ量計測手段
85a…被検査画像、
86…レーザコントローラ、
89…照射レーザ状態検査手段、
89a…画像、
89b…輪郭線、
89c…フォーカス円、
8A…照射レーザ調整手段、
8B…加工状態検査手段、
8C…加工条件調整手段、
8D…加工線検出手段、
8E…加工調整手段、
90,92…加工線
91,93…ビームサンプラ
94…高速フォトダイオード、
96…光軸検査用CCDカメラ、
97…エアナイフ装置、
98…エアナイフ装置、
P1,P2,P3…スクライブ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してレーザ光を相対的に移動させながら照射することによって前記ワークに所定の加工を施すレーザ加工手段と、
前記レーザ加工手段における前記レーザ光の照射によって所定の加工の施される加工エリアを覆うように設けられた恒温室手段と、
前記恒温室手段の少なくとも上方から下方の前記恒温室手段内の前記加工エリアに向かうように恒温エアを供給するエア供給手段と、
前記恒温室手段内の前記恒温エアを前記加工エリアから前記恒温室手段外に排気するエア排気手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記エア供給手段が前記恒温室手段の上面の複数個所に設けられた供給ダクト手段から構成され、前記加工エリアの移動に対応して前記複数の供給ダクト手段を選択して前記恒温エアを前記恒温室手段内の前記加工エリアに供給することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークの加工エリアから発生する残渣をエアパージ・吸引するエアパージ・残渣吸引手段を備えたことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ加工手段がハーフミラー及び反射ミラーからなる分岐手段によって複数のレーザ光に分岐された複数のレーザ光を前記ワークに照射することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザ加工システムにおいて、前記エアパージ・残渣吸引手段が前記複数のレーザ光に対してそれぞれ設けられることを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークに所定の加工を施す際に前記ワーク表面の加工個所にエアを吹き付けることによって、前記ワーク表面の粉塵等をパージする第1のエアナイフ手段を備えたことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工システムにおいて、前記ワークを前記加工エリアに搬送する際に前記ワーク表面にエアを吹き付けることによって、前記ワーク表面の粉塵等をパージする第2のエアナイフ手段を備えたことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ加工手段が両辺の保持された前記ワークを前記レーザ光による加工箇所の準備位置にエア浮上させながら移動させ、前記ワークを保持した状態でエア浮上させながら相対的に移動させて前記レーザ光を照射することによって前記ワークに所定のレーザ加工を施し、前記レーザ加工の施された前記ワークを排出準備位置にエア浮上させながら移動させて搬出することを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1に記載のレーザ加工システムにおいて、前記レーザ光による2回目以降の加工において、前記レーザ加工によって形成された前記ガラス基板の形状変化部分に倣って前記レーザ加工を行なうことを特徴とするレーザ加工システム。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1に記載のレーザ加工システムを用いて、ソーラパネルを製造することを特徴とするソーラパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−43194(P2013−43194A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181875(P2011−181875)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】