説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】装置構造を複雑化せずに、不具合が発生の原因がレーザ光を発振する発振部にあるのか、発振されたレーザ光をワークに照射する照射部の光学部品にあるのかを容易に判別することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】ワーク10を保持する保持手段2と、レーザ光6を発振する発振器31を備えた発振部と、発振されたレーザ光6をワーク10の加工点10aに向けて照射する照射部とを有するレーザ加工装置に、加工点10aにおけるレーザ光6の出力を検出する第1の検出手段4と、発振部と照射部との間の位置において発振器から発振されたレーザ光の出力を検出する第2の検出手段5とを設け、第1の検出手段4においてレーザ光6の出力が所定の範囲から外れていることが検出された場合に、第2の検出手段5により発振部と照射部との間におけるレーザ光6の出力を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光により半導体ウエハなどのワークを加工する装置及び方法に関する。より詳しくは、レーザ加工装置及びレーザ加工方法において、レーザビームの出力を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状の半導体ウエハの表面に、IC(integrated circuit:集積回路)又はLSI(large-scale integration:大規模集積回路)などの回路をマトリクス状に形成し、その後、この複数の回路が形成された半導体ウエハを、所定のストリート(切断ライン)に沿って格子状に切断し、各回路を分割することにより、個々の半導体チップ(デバイス)を製造している。
【0003】
通常、半導体ウエハの切断(ダイシング)には、ダイサーと称される切断装置が使用されている。また、近年、レーザ光を利用して、半導体ウエハなどのワークを切断する方法も開発されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、特許文献1に記載の加工方法では、酸化物単結晶からなるワークにレーザ光を照射し、光化学的な反応によって酸化物単結晶の分子を解離及び蒸発させることにより、ワークの所定位置に溝を形成し、この溝に沿ってワークを劈開している。
【0004】
一方、レーザ光を利用した加工方法では、レーザ光の強度が重要な加工要素であるため、加工点においてレーザ出力低下などの問題が生じた場合は、早急な原因究明が必要となる。そこで、従来、レーザ加工装置において、レーザ出力の低下を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献2〜6参照。)。
【0005】
例えば、特許文献2,3に記載のレーザ加工装置では、各部にセンサを設け、各センサの出力を一定周期でサンプリングすることにより、各部の動作状態を観察している。また、特許文献4には、加工エリアとは別の領域にレーザビーム照射面を設け、このレーザビーム照射面にレーザ光を照射して、その出力状態を診断するレーザ加工機が開示されている。
【0006】
一方、特許文献5に記載のレーザ加工装置では、レーザ発振器から発振されたレーザ光を、ビームスプリッタにより加工用と出力検出用とに分割し、出力検出用のレーザ光の照射エネルギーをモニタすることで、加工用レーザ光の出力変化をリアルタイムで検出している。また、本出願人も、特許文献6において、ビームスプリッタでパルスレーザ光の一部を分岐し、この分岐されたレーザ光をフォトディテクターでモニタすることにより、パルスエネルギーの強弱が所定の範囲内にあるか否かを、リアルタイムで判断するレーザ加工装置を提案している。
【0007】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開平11−156570号公報
【特許文献3】特開平11−156571号公報
【特許文献4】特開2008−114228号公報
【特許文献5】特開2004−63879号公報
【特許文献6】特開2008−18464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的なレーザ加工装置では、レーザ光を発振する発振器から加工点までの間に、レーザ光を集光するための集光器、レーザ光の光路を変更するための反射ミラーなど複数の光学部品が配置されている。このため、加工点においてレーザ光の出力低下などの不具合が発生した場合は、その原因が、発振器にあるのか、光学部品にあるのかを判別する必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献4〜6に記載されているような従来のレーザ加工装置では、このような判別を行うことはできず、不具合の原因の究明及びその対応に多大な労力と時間を要するという問題点がある。更に、特許文献5,6に記載のレーザ加工装置は、レーザ光の一部を検出用に分岐しているため、発振器から発振された全出力を加工に使用することができないという問題点もある。
【0010】
一方、特許文献2,3に記載の加工装置は、不具合が発生した箇所を特定することができるが、各部にセンサを設ける必要があるため、装置構造が複雑になり、製造コストが増加するという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、装置構造を複雑化せずに、不具合が発生の原因がレーザ光を発振する発振部にあるのか、発振されたレーザ光をワークに照射する照射部の光学部品にあるのかを容易に判別することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置は、レーザ光によりワークを加工するレーザ加工装置であって、前記ワークを保持する保持手段と、前記レーザ光を発振する発振部と、前記レーザ光を前記ワークの加工点に向けて照射する照射部と、前記加工点における前記レーザ光の出力を検出する第1の検出手段と、前記発振部と前記照射部との間の位置において前記発振器から発振されたレーザ光の出力を検出する第2の検出手段とを有するものである。
【0013】
本発明においては、第1の検出手段でレーザ光の出力低下が検出された場合に、第2の検出手段で発振部と照射部との間の位置のレーザ光の出力を検出することで、不具合が発生の原因が発振部にあるのか、照射部にあるのかを容易に判別でき、装置構造も複雑化しない。
【0014】
このレーザ加工装置は、前記第2の検出手段を、前記レーザ光の出力を検出する検出位置と、前記レーザ光の光路から離れた待機位置とに位置づける位置付け手段を有していてもよい。
【0015】
また、前記発振部に複数のレーザ発振器が設けられている場合は、前記第2の検出手段は、前記位置づけ手段によって、各レーザ発振器から発振された複数のレーザ光の出力を個別に検出可能な検出位置に、選択的に位置付けられることが望ましい。
【0016】
更に、このレーザ加工装置における前記照射部は、例えば、前記レーザ光の光路を変更するためのミラーと、前記レーザ光を加工点に向けて集光する集光器とを備えている。
【0017】
本発明に係るレーザ加工方法は、レーザ光を使用してワークを加工するレーザ加工方法であって、前記ワークの加工点に向けて1又は複数のレーザ光を照射する工程と、前記加工点における前記レーザ光の出力を検出する加工点出力検出工程と、該加工点出力検出工程において前記レーザ光の出力の低下が検知された場合に、前記レーザ光を発振する発振部と、前記レーザ光を前記加工点に向けて照射する照射部との間の位置で、前記レーザ光の出力を検出する発振部出力検出工程とを有する。
【0018】
本発明においては、加工点出力検出工程でレーザ光の出力低下が検出された場合に、発振部と照射部との間の位置のレーザ光の出力を検出しているため、不具合が発生の原因が発振部にあるのか、照射部にあるのかを容易に判別でき、装置構造も複雑化しない。
【0019】
また、この検出方法では、前記ワークに対して複数のレーザ光を照射する場合、前記加工点出力検出工程において一のレーザ光の出力が所定の範囲から外れていること検知されたときは、前記発振部と前記照射部との間で、前記一のレーザ光の出力を個別に検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発振部と光学部品を照射部との間の位置でレーザ光の出力を検出するため、加工点においてレーザ光の出力低下が発生した際に、その原因が発振部にあるのか、照射部にあるのかを容易に判別することができ、不具合の原因究明及び対策を早急に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照して説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図1は本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図であり、図2は図1に示す加工装置1によりワーク10を加工する方法を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1は、リングフレーム11の開口部に粘着テープ12を介して支持されたワーク10を加工する装置であり、少なくとも、ワーク10を保持する保持手段2と、ワーク10の所定位置にレーザ光を照射する加工手段3とを備えている。
【0022】
本実施形態のレーザ加工装置1により加工されるワーク10としては、例えば、半導体ウエハ、DAF(Die Attach Film)などの粘着テープ、ガラス及びシリコンなどの無機材料、金属材料又はプラスチックなどからなる各種基板、半導体製品のパッケージ、並びにミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料などが挙げられる。また、このようなワーク10を保持する保持手段2としては、例えば、負圧を利用してワークを吸着保持するチャックテーブルなどが挙げられる。
【0023】
また、図2に示すように、本実施形態のレーザ加工装置1には、ワーク10に照射されたレーザ光の加工点における出力を検出する加工点出力検出手段4が設けられている。この加工点出力検出手段4としては、例えばセンサなどからなる検出部4aに入射したレーザ光の光エネルギーを測定するレーザパワーメータを適用することができる。また、加工点出力検出手段4は、例えば検出部4aがワーク10の表面と同じ高さになるように配置されており、この検出部4aにレーザ光6を照射することによって、ワーク10の加工点10aにおけるレーザ光強度が測定できるようになっている。なお、図2に示すレーザ加工装置1では、加工点出力検出手段4が保持手段2に取付けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、独立して設置されていてもよい。また、検出部4aの位置も特に限定されるものではなく、加工点10aにおけるレーザ光強度が測定できる範囲で適宜設定することができる。
【0024】
一方、本実施形態のレーザ加工装置1における加工手段3には、少なくとも発振器31を備え、所定波長のレーザ光6を発振する発振部と、発振されたレーザ光6をワーク10の加工点10aに向けて照射する照射部とが設けられている。この加工手段3における発振器31としては、例えばYAGレーザ及びYVOレーザなどを使用することができる。
【0025】
また、加工装置3における照射部には、例えば、1又は複数のミラー32と、1又は複数の集光レンズ33からなる集光器とを備えている。そして、発振部から発振されたレーザ光6は、照射部において、ミラー32により光路が変更された後、集光レンズ33により集光され、ワーク10の加工点10aに照射される。なお、この照射部には、上述したミラー32及び集光レンズ33以外に、例えば、ビームスプリッタ及び偏光板などで構成される出力調整手段、ビームスプリッタ、並びにシリンドリカルレンズ及びビーム径を拡大するレンズなどのビーム形状形成用レンズなどが設けられていてもよい。
【0026】
更に、本実施形態のレーザ加工装置1においては、上述した発振部と照射部との間の位置、例えば発振器31とミラー32との間の位置において、発振器31から発振されたレーザ光6の出力を検出する発振部出力検出手段5が設けられている。この発振部出力検出手段5には、例えばレーザパワーメータなどを適用することができる。また発振部出力検出手段5は、通常はレーザ光6の光路から外れた待機位置に配置されており、レーザ光6の出力を検出する必要がある場合にのみ、検出部5aにレーザ光6が照射され、レーザ光6の強度が検出可能となる検出位置に位置づけられる。
【0027】
具体的には、本実施形態のレーザ加工装置1では、ボールねじ8とモータ7とを備える位置づけ手段が設けられており、そのボールねじ8上に発振部出力検出器5が配置されている。そして、モータ7によりボールねじ8を駆動することにより、発振部出力検出手段5を待機位置からレーザ光6の光路上の検出位置に移動可能となっている。
【0028】
次に、本実施形態のレーザ加工装置1の動作、即ち、レーザ加工装置1を使用したレーザ加工方法について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1を使用して、ワーク10を加工する場合は、リングフレーム11に保持されたワーク10を保持手段2上に載置し、加工手段3の発振部に設けられた発振器31から所定波長のレーザ光6を発振する。その際、発振部出力検出手段5は待機位置に位置づけておく。発振器31から発振されたレーザ光6は、加工手段3の照射部に入射し、ミラー32によりその光路がワーク10の方向に変更され、更に集光レンズ33により集光されて、ワーク10の加工点10aに照射される。
【0029】
このとき、例えば、加工開始前、ワーク交換時、又は加工に不具合が生じたときなど、必要に応じてレーザ光6を加工点出力検出手段4の検出部4aに照射し、加工点10aにおけるレーザ光6の出力を測定する。そして、測定されたレーザ光6の出力が所定の範囲内にある場合は、引き続きワーク10の加工を行う。一方、レーザ光6の出力が所定の範囲から外れている場合、例えば、加工点出力検出手段4においてレーザ光6の出力低下が検出された場合は、発振部出力検出手段5により、発振部と照射部との間の位置におけるレーザ光6の出力を測定する。具体的には、モータ7によりボールねじ8を駆動して、発振部出力検出手段5を待機位置からレーザ光6の光路上の検出位置に移動させ、検出部5aにレーザ光6が照射されるようにする。
【0030】
そして、発振部出力検出手段5による測定の結果、例えば、レーザ光6の出力低下が検出された場合は、加工点10aにおけるレーザ光6の出力低下の原因は、発振部の発振器31などにあると判断することができる。一方、レーザ光6の出力が低下していなかった場合は、加工点10aにおけるレーザ光6の出力低下の原因は、照射部に設けられたミラー32及び集光レンズ33などの光学系にあると判断することができる。
【0031】
更に、発振部出力検出手段5により測定されたレーザ光出力の値からその低下率を求め、加工点出力検出手段4で測定されたレーザ光出力の低下率と比較することで、発振部及び照射部における出力低下割合を判断することもできる。例えば、加工点出力検出手段4において測定されたレーザ光の出力が初期値の60%であり、発振部出力検出手段5で測定されたレーザ光出力が初期値の90%であった場合、発振部において10%低下し、更に照射部において30%低下していることがわかる。これにより、例えば、低下率が少ない発振部はそのままにして、劣化率が高い照射部のみを修理・交換するという判断をすることもできる。
【0032】
上述の如く、本実施形態のレーザ加工装置1は、発振部と照射部との間でレーザ光6の出力を検出する発振部出力検出手段5を備えているため、加工点においてレーザ光6の出力が所定の範囲から外れていることが検出された場合に、この発振部出力検出手段5でレーザ光6の出力を検出することにより、この不具合の原因が発振部にあるか、照射部にあるかを容易に判断することが可能となる。
【0033】
また、特許文献2,3に記載の発明でも不具合の原因箇所は特定可能であるが、本実施形態のレーザ加工装置1では、各検出手段4,5で測定されたレーザ光出力の低下率を比較することにより、発振部及び照射部がどの程度レーザ光の出力低下に影響しているかを個別に検出することもできる。これにより、メンテナンス効率を向上させると共に、維持管理費を低減することができる。
【0034】
更に、本実施形態のレーザ加工装置1は、ワーク10の加工時には、レーザ光6の出力検出を行わないため、レーザ光10の出力の全てを加工に利用することができる。更にまた、このレーザ加工装置1では、出力検出を行っていないときはレーザ光6の光路から外れた待機位置に位置づけられているため、ワーク10の加工には影響しない。
【0035】
なお、本実施形態のレーザ加工装置1においては、発振器31とミラー32との間で、レーザ光6の出力検出を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、照射部のミラー32と集光レンズ33との間などのように、切り分けたい部分毎にレーザ光6の出力を検出することもできる。その場合、検出箇所毎に検出手段を設けてもよいが、位置づけ手段によって、一の検出手段を複数の検出箇所に選択的に位置づけられるようにしてもよい。このように、照射部の複数位置でレーザ光出力を検出することにより、光学部品毎のレーザ出力への影響を確認することができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工装置について説明する。図3は本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図であり、図4は図3に示す加工装置21によりワーク10を加工する方法を模式的に示す図である。なお、図3及び図4に示すレーザ加工装置21においては、図1及び図2に示すレーザ加工装置1の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図1及び図2に示すように、本実施形態のレーザ加工装置21は、複数のレーザ光26a,26bにより、ワーク10の複数箇所を同時に加工するものであり、加工手段23の発振部に複数の発振器31a,31bが設けられると共に、加工手段23の照射部に複数のミラー42a,42b及び集光レンズ43a,43bが設けられている。
【0038】
また、本実施形態のレーザ加工装置21には、上述した発振部と照射部との間の位置、具体的には、発振器41aとミラー42aとの間又は発振器41bとミラー42bとの位置において、レーザ光26a又はレーザ光26bの出力を検出する発振部出力検出手段25が設けられている。更に、本実施形態のレーザ加工装置21には、ボールねじ28とモータ27とを備える位置づけ手段が設けられており、そのボールねじ28上に発振部出力検出器25が配置されている。そして、モータ27によりボールねじ28を駆動することにより、発振部出力検出手段25がレーザ光26a及びレーザ光26bの光路から外れた待機位置から、検出部25aにレーザ光26a又はレーザ光26bが照射される検出位置に位置づけられる。
【0039】
なお、本実施形態のレーザ加工装置21における上記以外の構成は前述した第1の実施形態のレーザ加工装置1と同様である。
【0040】
次に、本実施形態のレーザ加工装置21の動作、即ち、レーザ加工装置21を使用したレーザ加工方法について説明する。本実施形態のレーザ加工装置21を使用して、ワーク10を加工する場合は、リングフレーム11に保持されたワーク10を保持手段2上に載置し、加工手段23の発振部に設けられた発振器31a,31bからそれぞれ所定波長のレーザ光26a,26bを発振する。その際、発振部出力検出手段25は待機位置に位置づけておく。一方、発振器31a,31bからから発振されたレーザ光26a,26bは、加工手段3の照射部に入射し、それぞれミラー42a,42bによりその光路がワーク10の方向に変更され、更に集光レンズ43a,43bにより集光されて、ワーク10の加工点10aに照射される。
【0041】
このとき、必要に応じてレーザ光26a及びレーザ光26bを加工点出力検出手段4の検出部4aに照射し、加工点10aにおけるこれらの出力を測定する。そして、測定されたレーザ光26a,26bの出力がいずれも所定の範囲内である場合は、引き続きワーク10の加工を行う。一方、レーザ光26a,26bの一方又は両方の出力が所定の範囲から外れていた場合は、そのレーザ光について、発振部出力検出手段25により、発振部と照射部との間の位置で個別に出力を測定する。具体的には、モータ27によりボールねじ28を駆動して、発振部出力検出手段25を待機位置からレーザ光26a又はレーザ光26bの光路上の検出位置に選択的に移動させて、検出部25aにレーザ光26a又はレーザ光26bが照射されるようにする。
【0042】
そして、発振部出力検出手段25による測定の結果、例えば、レーザ光26a,26bの出力低下が検出された場合は、加工点10aにおけるレーザ光の出力低下の原因は、発振部の発振器41a又は発振器41bなどにあると判断することができる。一方、発振部出力検出手段25では出力低下が検出されなかった場合は、加工点10aにおけるレーザ光の出力低下の原因は、照射部に設けられたミラー42a,42b及び集光レンズ43a,43bなどの光学系にあると判断することができる。更に、各検出手段4,25で測定されたレーザ光出力の低下率を比較することにより、発振部及び照射部がどの程度出力低下に影響しているかを個別に検出することもできる。
【0043】
上述の如く、本実施形態のレーザ加工装置21は、発振部と照射部との間でレーザ光26a,26bの出力を個別に検出可能な発振部出力検出手段25を備えているため、複数のレーザ光を照射する場合であっても、不具合の原因が発振部及び照射部のどちらにあるかの判断、並びに発振部及び照射部がどの程度レーザ光の不具合に影響しているかの検出を、容易に行うことができる。また、本実施形態のレーザ加工装置21は、ワーク10の加工時には、レーザ光26a,26bの出力検出を行わないため、レーザ光10の出力の全てを加工に利用することができる。
【0044】
更に、このレーザ加工装置21では、出力検出を行っていないときはレーザ光26a,26bの光路から外れた待機位置に位置づけられているため、ワーク10の加工には影響しない。更にまた、本実施形態のレーザ加工装置21においては、一の発振器出力検出手段25で、複数のレーザ光を個別に検出しているため、発振器毎にセンサなどを取り付ける場合に比べて、装置構造を簡素化することができると共に、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す加工装置1によりワーク10を加工する方法を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示す加工装置21によりワーク10を加工する方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1、21 レーザ加工装置
2 保持手段
3、23 加工手段
4 加工点出力検出手段
4a、5a、25a 検出部
5、25 発振部出力検出手段
6、26a、26b レーザ光
7、27 モータ
8、28 ボールねじ
10 ワーク
10a 加工点
11 リングフレーム
12 粘着テープ
31、41a、41b 発振器
32、42a、42b ミラー
33、43a、43b 集光レンズ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によりワークを加工するレーザ加工装置であって、
前記ワークを保持する保持手段と、
前記レーザ光を発振する発振部と、
前記レーザ光を前記ワークの加工点に向けて照射する照射部と、
前記加工点における前記レーザ光の出力を検出する第1の検出手段と、
前記発振部と前記照射部との間の位置において、前記発振器から発振されたレーザ光の出力を検出する第2の検出手段と、
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
更に、前記第2の検出手段を、前記レーザ光の出力を検出する検出位置と、前記レーザ光の光路から離れた待機位置とに位置づける位置付け手段を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記発振部に複数のレーザ発振器が設けられており、
前記第2の検出手段は、前記位置づけ手段によって、各レーザ発振器から発振された複数のレーザ光の出力を個別に検出可能な検出位置に、選択的に位置付けられることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記照射部は、前記レーザ光の光路を変更するためのミラーと、前記レーザ光を加工点に向けて集光する集光器とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
レーザ光を使用してワークを加工するレーザ加工方法であって、
前記ワークの加工点に向けて1又は複数のレーザ光を照射する工程と、
前記加工点における前記レーザ光の出力を検出する加工点出力検出工程と、
該加工点出力検出工程において前記レーザ光の出力の低下が検知された場合に、前記レーザ光を発振する発振部と、前記レーザ光を前記加工点に向けて照射する照射部との間の位置で、前記レーザ光の出力を検出する発振部出力検出工程と、
を有するレーザ加工方法。
【請求項6】
前記ワークに対して複数のレーザ光を照射する場合は、前記加工点出力検出工程において一のレーザ光の出力が所定の範囲から外れていることが検知されたときは、前記発振部と前記照射部との間で、前記一のレーザ光の出力を個別に検出することを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291818(P2009−291818A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148769(P2008−148769)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】