説明

レーザ加工装置及び光軸調整方法

【課題】 交換性、拡張性、及び調整容易性に優れたレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】 レーザビームを出射する光源と、光源を出射したレーザビームのビーム径を変化させるエキスパンダ光学系と、エキスパンダ光学系を出射したレーザビームの断面形状を整形するマスク光学系と、マスク光学系で整形されたレーザビームの断面形状を加工点に転写倍率可変に転写する転写倍率変化光学系と、転写倍率変化光学系を出射したレーザビームを、集光して加工点に入射させる集光光学系と、光源と加工点との間のレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームの通過と遮蔽とを切り替えることができるシャッタ光学系とを有し、エキスパンダ光学系、マスク光学系、転写倍率変化光学系、集光光学系、シャッタ光学系の少なくとも一つは、一体化されたモジュールとして構成されているレーザ加工装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工を行うレーザ加工装置、及び、ビームの光軸を調整する光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のレーザ加工装置を示す概略図である。たとえばCOレーザ発振器であるレーザ光源10がパルスレーザビーム20を出射する。パルスレーザビーム20は、入射するレーザビーム20のビーム径を変化させて出射するエキスパンダ11等の光学系を経由して加工点に伝搬される。加工点のビームプロファイルを調整する際には、レーザ光源10から加工点までのレーザビーム20の光軸上に、直接、レンズやアパーチャ等の光学部品が挿入される。また、光学部品の一部に不具合が生じた場合、たとえばエキスパンダ11を構成する3枚のレンズのうちの1枚の不具合に対して、不具合のあるレンズだけの交換が行われる。レーザビーム20の光軸上に、直接、光学部品が挿入されるため、一つの光学部品を交換するだけでも、交換の際に生じる光軸のずれに対して、レーザ光源10から加工点までの全光路の光軸をアライメントし直す必要がある。更に、たとえばマスクの透光領域の形状を加工点に倍率可変に転写する転写倍率変化光学系を構成するレンズを交換する場合等には、加工点までの光路長が変化するため、レンズの焦点距離に応じて、マスクからレンズまでの距離を調整しなければならない。
【0003】
レーザビームの光軸の位置を監視する光軸位置検出器を備え、光軸のずれを補正することのできるレーザ加工装置の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレーザ加工装置においては、光軸位置検出器の受光素子で受光されたレーザビームの光強度に基き、ファジイ推論を利用して光軸が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、交換性、拡張性、及び調整容易性に優れたレーザ加工装置を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、容易に光軸の調整を行うことが可能な光軸調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、レーザビームを出射する光源と、前記光源を出射したレーザビームのビーム径を変化させるエキスパンダ光学系と、前記エキスパンダ光学系を出射したレーザビームの断面形状を整形するマスク光学系と、前記マスク光学系で整形されたレーザビームの断面形状を加工点に転写倍率可変に転写する転写倍率変化光学系と、前記転写倍率変化光学系を出射したレーザビームを、集光して加工点に入射させる集光光学系と、前記光源と加工点との間のレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームの通過と遮蔽とを切り替えることができるシャッタ光学系とを有し、前記エキスパンダ光学系、前記マスク光学系、前記転写倍率変化光学系、前記集光光学系、前記シャッタ光学系の少なくとも一つは、一体化されたモジュールとして構成されているレーザ加工装置が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、光源を出射したレーザビームを加工点に伝搬する光学系の少なくとも一部が、一体化されたモジュールとして構成されているレーザ加工装置において、前記光源を出射するレーザビームの光軸を調整する方法であって、(a)モジュールについて光軸の調整を行う工程と、(b)前記工程(a)で光軸の調整を行ったモジュールを、レーザビームの出射位置と加工点との間に配置して、ビーム出射位置から加工点までの光軸の調整を行う工程とを有する光軸調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交換性、拡張性、及び調整容易性に優れたレーザ加工装置を提供することができる。
【0010】
また、容易に光軸の調整を行うことが可能な光軸調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。
【図2】集光モジュール80の他の例を示す概略図である。
【図3】エキスパンダモジュール40の配設位置を示す平面図である。
【図4】(A)〜(C)は、モジュールの配置について説明するための概略図である。
【図5】変形例によるレーザ加工装置の一部概略図である。
【図6】従来のレーザ加工装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。実施例によるレーザ加工装置は、レーザ光源30、ガイド光源31、エキスパンダモジュール40、マスクモジュール50、シャッタモジュール60、転写倍率変化光学系モジュール70、集光モジュール(ガルバノモジュール)80、及びステージ90を含んで構成される。各モジュール40〜80においては、光学部品が基材に一単位として一体化されている。
【0013】
レーザ光源30は、たとえばCOレーザ発振器を含んで構成され、パルスレーザビーム30aを出射する。また、ガイド光31aを出射するガイド光源31を含む。ガイド光源31は、たとえば半導体レーザ(laser diode; LD)であり、ガイド光31aは、一例として赤色波長領域の光である。レーザビーム30aとガイド光31aとは、レーザ光源30の同一位置から出射される、相互に波長の異なる光である。両者30a、31aの光軸は一致している。
【0014】
レーザビーム30aとガイド光31aとは、ともに、エキスパンダモジュール40、マスクモジュール50、シャッタモジュール60、転写倍率変化光学系モジュール70、集光モジュール80をこの順に経由して、たとえばXYステージであるステージ90上に保持された加工対象物であるプリント基板95上の加工点に入射可能である。
【0015】
各モジュール40〜70は、モジュール入口に切り出し用ミラー40a〜70a、モジュール出口に戻し入れ用ミラー40d〜70dを有する。切り出し用ミラー40a〜70a、戻し入れ用ミラー40d〜70dは、たとえば偏光ビームスプリッタであり、レーザビーム30aの波長の光に対しては全反射ミラー、ガイド光31aの波長の光に対してはハーフミラーの機能を有する。
【0016】
ガイド光源31を出射したガイド光31aは、エキスパンダモジュール40の入口に設置された切り出し用ミラー40aに入射し、一部がこれを透過し、一部がこれに反射される。切り出し用ミラー40aを透過したガイド光31aの一部は戻し入れ用ミラー40dを透過する。切り出し用ミラー40aに反射されたガイド光31aは、エキスパンダモジュール40内に配置された光学部品を経由し、その一部が戻し入れ用ミラー40dで反射される。切り出し用ミラー40aと戻し入れ用ミラー40dの双方を透過するガイド光31aと、エキスパンダモジュール40内の光学部品を経由した後、戻し入れ用ミラー40dで反射されるガイド光31aとは同一光軸上に重畳され、マスクモジュール50に入射する。
【0017】
マスクモジュール50、シャッタモジュール60、転写倍率変化光学系モジュール70においても同様で、各モジュール50〜70の切り出し用ミラー50a〜70aと、戻し入れ用ミラー50d〜70dの双方を透過するガイド光31aと、各モジュール50〜70内の光学部品を経由した後、戻し入れ用ミラー50d〜70dで反射されるガイド光31aとは同一光軸上に重畳され、次のモジュール60〜80に入射する。集光モジュール80を出射したガイド光31aは加工点に入射する。
【0018】
各モジュール40〜70内部を直進するガイド光31a(切り出し用ミラー40a〜70aと、戻し入れ用ミラー40d〜70dの双方を透過するガイド光31a)の光路によって、レーザ光源30のビーム(レーザビーム30a及びガイド光31a)出射位置と、加工点との間に基準光軸が定められる。
【0019】
レーザ光源30を出射するレーザビーム30aは、加工用のレーザビームである。レーザ光源30を出射し、各モジュール40〜80を経由したレーザビーム30aは、たとえばステージ90に保持されたプリント基板95の樹脂層に入射し、樹脂層を貫通する貫通孔を形成する。なお、プリント基板95の加工時には、ガイド光源31からガイド光31aは出射されない。
【0020】
レーザ光源30を出射したレーザビーム30aは、基準光軸上を進行してエキスパンダモジュール40に入射する。エキスパンダモジュール40は、それぞれ一軸ステージ42、44、46に、レーザビーム30aの光軸方向(進行方向)に沿って移動可能に保持された3枚のレンズ41、43、45を含んで構成され、入射するレーザビーム30aのビーム径を変化させて出射する。エキスパンダモジュール40に入射したレーザビーム30aは、切り出し用ミラー40aで反射され、エキスパンダ光学系を経た後、戻し入れ用ミラー40dで反射されて、エキスパンダモジュール40を出射する。すなわち切り出し用ミラー40aで反射され、レンズ41を透過した後、折り返しミラー40bで反射される。更に、レンズ43を透過し、折り返しミラー40cで反射された後、レンズ45を透過する。最後に、戻し入れ用ミラー40dで反射されて、エキスパンダモジュール40を出射する。エキスパンダモジュール40を出射するレーザビーム30aの光軸は、基準光軸と一致する。
【0021】
マスクモジュール50は、マスク51及びモータ52を含んで構成される。マスク51は、たとえば遮光領域に、相互に異なるサイズまたは形状の複数の透光領域が形成された円盤である。モータ52でマスク51を回転軸の周囲に回転させることにより、加工に応じた透光領域をレーザビーム30aの光路上に配置することができる。
【0022】
基準光軸に沿ってマスクモジュール50に入射したレーザビーム30aは、切り出し用ミラー50a、マスク光学系、戻し入れ用ミラー50dを経て、マスクモジュール50を出射する。すなわち切り出し用ミラー50a、折り返しミラー50bで反射され、マスク51の透光領域を透過することで断面形状を整形される。その後、折り返しミラー50c、戻し入れ用ミラー50dで反射され、基準光軸に沿ってマスクモジュール50を出射する。
【0023】
シャッタモジュール60は、遮光機能を有するシャッタ61及びモータ62を含んで構成される。シャッタ61の開閉は、モータ62を用いて行われる。シャッタ61が開状態のとき、シャッタ61に入射するレーザビーム30aはこれを通過し、閉状態のとき、これに遮られる。シャッタ61は、入射するレーザビーム30aの通過と遮蔽を選択的に切り替えることができる。
【0024】
基準光軸に沿ってシャッタモジュール60に入射したレーザビーム30aは、切り出し用ミラー60a、シャッタ光学系、戻し入れ用ミラー60dを経て、シャッタモジュール60を出射する。すなわち切り出し用ミラー60a、折り返しミラー60bで反射され、開状態のシャッタ61を通過する。その後、折り返しミラー60c、戻し入れ用ミラー60dで反射され、基準光軸に沿ってシャッタモジュール60を出射する。
【0025】
転写倍率変化光学系モジュール70は、マスク51の透光領域の形状を加工点に転写倍率可変に転写する転写倍率変化光学系を含むモジュールである。転写倍率変化光学系モジュール70は、凹レンズ71、凸レンズ72、フィールドレンズ73、74を含む。フィールドレンズ73、74は、たとえばエアシリンダによってレーザビーム30aの光路上に着脱が可能である。レーザビーム30aの光路上へのフィールドレンズ73、74の配置、非配置によって、転写倍率を変化させることができる。
【0026】
基準光軸に沿って転写倍率変化光学系モジュール70に入射したレーザビーム30aは、切り出し用ミラー70aで反射され、凹レンズ71及び凸レンズ72を透過した後、折り返しミラー70bで反射される。更に、フィールドレンズ73を透過し、折り返しミラー70cで反射された後、フィールドレンズ74を透過する。なお、フィールドレンズ73、74は、転写倍率に応じて配置される。最後に、戻し入れ用ミラー70dで反射され、基準光軸に沿って転写倍率変化光学系モジュール70を出射する。
【0027】
集光モジュール80は、2枚のガルバノミラー82、84及びfθレンズ86を含んで構成される。モータ83、85は、それぞれガルバノミラー82、84の向きを変化させる。基準光軸に沿って集光モジュール80に入射したレーザビーム30aは、折り返しミラー81で反射され、ガルバノミラー82、84とモータ83、85とで構成されるガルバノスキャナによって、出射方向を2次元方向に変化されて、fθレンズ86に入射する。レーザビーム30aは、fθレンズ86によって集光され、鉛直上方からプリント基板95上の加工点に入射し、プリント基板95の穴あけ加工が行われる。
【0028】
各モジュール40〜80は、たとえば外箱(モジュールボックス)と、その内部に配置された光学部品、たとえばエキスパンダモジュール40であれば、切り出し用ミラー40a、折り返しミラー40b、40c、戻し入れ用ミラー40d、レンズ41、43、45、一軸ステージ42、44、46を含んで構成される。光学部品は箱の内部に限らず、たとえば板上等、多様な基材に配置することが可能である。
【0029】
図2は、集光モジュール80の他の例を示す概略図である。本図に示す集光モジュール80は、ガルバノスキャナ及びfθレンズ86を含まず、集光レンズ87を備える。また、集光モジュール80の入射口に切り出し用ミラー80a、出射口に戻し入れ用ミラー80dが配置される。切り出し用ミラー80a、戻し入れ用ミラー80dは、レーザビーム30aの波長の光に対しては全反射ミラーであり、ガイド光31aの波長の光に対してはハーフミラーである。切り出し用ミラー80a、戻し入れ用ミラー80dの機能及び作用は、他のモジュール40〜70におけるそれらと等しい。
【0030】
基準光軸は、各モジュール40〜80内部を直進するガイド光31a(切り出し用ミラー40a〜80aと、戻し入れ用ミラー40d〜80dの双方を透過するガイド光31a)の光路によって、レーザ光源30のビーム出射位置と加工点との間に定められる。
【0031】
基準光軸に沿って集光モジュール80に入射した加工用のレーザビーム30aは、切り出し用ミラー80aで反射され、集光光学系を経た後、戻し入れ用ミラー80dで反射されて集光モジュール80を出射する。すなわち切り出し用ミラー80a、折り返しミラー80bで反射され、集光レンズ87で集光された後、折り返しミラー80c、戻し入れ用ミラー80dで反射され、基準光軸に沿って集光モジュール80を出射し、加工点に入射する。
【0032】
図3は、エキスパンダモジュール40の配設位置を示す平面図である。実施例によるレーザ加工装置においては、基準光軸の長さが一定である。また、その長さは任意に定めることができる。レーザ光源30と加工点との間の、モジュール(モジュールボックス)外の光路長が一定である実施例によるレーザ加工装置においては、各モジュール(モジュールボックス)40〜80の配設される(取り付けられる)位置が画定(規定)されている。各配設位置においては、各モジュール40〜80の配置の微調整が可能である。各モジュール40〜80は、たとえばノックピン47〜49を用いて、画定された配設位置に位置決めされ、配置される。
【0033】
図4(A)〜(C)を参照して、モジュールの配置について説明する。図4(A)に示すように、各モジュール(モジュールボックス)40〜80は、レーザ加工装置の台上に相互に相対位置を、高精度に取り決められている。また、各モジュール40〜80は、モジュール単位で、それぞれの配設位置に着脱可能であり、特に取り外した状態で個別のメンテナンスができる。更に、各モジュール40〜80の配設位置は、その位置に各モジュール40〜80を配置したとき、ビーム(レーザビーム30a及びガイド光31a)の光路に沿って隣接する2つのモジュールについて、上流側モジュールを出射するビームの光軸と下流側モジュールに入射するビームの光軸とが、一致するように画定されている。したがって、たとえばシャッタモジュール60を取り外してメンテナンスを実施した後、画定されたシャッタモジュール60の配設位置に配置すると、マスクモジュール50とシャッタモジュール60との間の光学的な調整、及び、シャッタモジュール60と転写倍率変化光学系モジュール70との間の光学的な調整が完了する。
【0034】
図4(B)及び(C)を参照する。各モジュール(モジュールボックス)40〜80のサイズは相互に異なっていてもよい。ボックス内部の光射出位置(戻し入れ用ミラー設置位置)、光入射位置(切り出し用ミラー設置位置)に応じて各モジュール(モジュールボックス)40〜80の配置をずらすこともできる。あらかじめ互いの相対位置を規定する規定位置が、レーザ加工装置の台に画定されていればよい。
【0035】
実施例によるレーザ加工装置においては、基準光軸からレーザビーム30aに対する折り返しミラー(切り出し用ミラー40a〜80a及び戻し入れ用ミラー40d〜80d)を用いて、各モジュール40〜80内にレーザビーム30aの光路が形成され、その光路上に光学部品が配置されている。また、切り出し用ミラー40a〜80aから、戻し入れ用ミラー40d〜80dまでの光学部品はモジュール化されている。更に、各モジュール40〜80の入射口と出射口において、レーザビーム30aの光軸は基準光軸と一致している。
【0036】
各モジュール40〜80内に配置される光学部品については、レーザ加工装置の設置前に、モジュール40〜80単位でアライメント(光軸調整)を完了させておく。アライメントは、ガイド光31aと等しい波長の光を、各モジュール40〜80に導入し、切り出し用ミラー40a〜80aで反射され、各モジュール40〜80内の他の光学部品を経由した後、戻し入れ用ミラー40d〜80dで反射される光と、各モジュール40〜80内を直進する光(切り出し用ミラー40a〜80aと、戻し入れ用ミラー40d〜80dの双方を透過する光)の光軸を一致させることで行う。
【0037】
実施例によるレーザ加工装置の設置にあたっては、アライメントの終了した各モジュール40〜80の位置決めのみを行えばよい。このため、レーザ加工装置のアライメント時間、設置時間を短縮することができる。
【0038】
また、実施例によるレーザ加工装置は、モジュール単位の光学部品交換が可能である。このため、たとえば光軸合わせの容易さの点から、装置故障時のダウンタイムを削減することができる。なおこの際、交換用のモジュールを準備しておいてもよい。
【0039】
更に、装置の拡張性が向上される。一例として、小径加工等、要求される加工に応じて最適なモジュールを配置することが可能である。光学部品のオプションの追加等も容易に可能である。レーザビーム30aの光路長は全体として変化するが、その調整はモジュール内で行うことができる。光学部品を交換する場合においても、装置の機能を拡張する場合においても、光学部品の配置や光軸のアライメントなど、装置の調整が容易である。
【0040】
実施例によるレーザ加工装置は、交換性、拡張性、及び調整容易性に優れたレーザ加工装置である。
【0041】
上述した内容と一部重複するが、実施例によるレーザ加工装置を設置し、レーザ加工を行うに当たって、レーザビーム30aの光軸を調整する方法について説明する。レーザビーム30aの光軸の調整は、ガイド光31aを用いて行う。
【0042】
まず、各モジュール40〜80について光軸の調整を行う。上述のように、ガイド光31aと等しい波長の光を、各モジュール40〜80に導入し、各モジュール40〜80内の光学部品を、切り出し用ミラー40a〜80aで反射されたガイド光31aの光路上に配置して、切り出し用ミラー40a〜80aで反射され、各モジュール40〜80内の他の光学部品を経由した後、戻し入れ用ミラー40d〜80dで反射される光と、各モジュール40〜80内部を直進する光(切り出し用ミラー40a〜80aと、戻し入れ用ミラー40d〜80dの双方を透過する光)の光軸を一致させることで、各モジュール40〜80について光軸の調整を行う。両光軸の一致はたとえば目視で判定することができる。
【0043】
次に、レーザビーム30aとガイド光31aの光軸を一致させる。
【0044】
続いて、レーザ光源30を設置するとともに、画定された各モジュール40〜80の配設位置に、対応するモジュール40〜80を配置し、配置位置の微調整を行って、レーザ加工装置全体(ビーム出射位置から加工点まで)の光軸を合わせる。この光軸合わせに際しては、ガイド光31aを出射し、レーザビーム30aは出射しない。また、同時に複数のモジュール40〜80を配置して光軸の調整を行うより、たとえば加工点に近いモジュール40〜80から一つずつ、光軸調整を行うのが望ましい。
【0045】
初めに集光モジュール80を、集光モジュール80の配設位置に配置し、ガイド光源31からガイド光31aを出射させ、集光モジュール80に入射させる。集光モジュール80を出射したガイド光31aが加工点に伝搬されるように、集光モジュール80の配置位置の微調整を行う。
【0046】
転写倍率変化光学系モジュール70を、対応する配設位置に配置する。ガイド光源31からガイド光31aを出射させ、転写倍率変化光学系モジュール70に入射させる。転写倍率変化光学系モジュール70を出射したガイド光31aが、集光モジュール80を経由して加工点に伝搬されるように、転写倍率変化光学系モジュール70の配置位置の微調整を行う。
【0047】
以下同様に、シャッタモジュール60、マスクモジュール50、エキスパンダモジュール40を、順に対応する配設位置に配置し、ガイド光源31を出射したガイド光31aが加工点に伝搬されるように、各モジュール40〜60の配置位置の微調整を行う。このようにして、レーザ光源30(ビーム出射位置)から加工点までの光軸合わせを行う。レーザビーム30aとガイド光31aの光軸が一致しているため、この状態でレーザビーム30aを出射させ、たとえばプリント基板95に対する穴あけ加工を行うことが可能である。
【0048】
光学部品の一部を交換した場合も、まず交換した光学部品を含むモジュールについて光軸の調整を行う。たとえばエキスパンダモジュール40のレンズ43を交換した場合には、レンズ43交換の終了したエキスパンダモジュール40に、ガイド光31aと等しい波長の光を導入し、切り出し用ミラー40aで反射され、モジュール40内の他の光学部品を経由した後、戻し入れ用ミラー40dで反射される光と、モジュール40内を直進する光(切り出し用ミラー40aと、戻し入れ用ミラー40dの双方を透過する光)の光軸を一致させることで、エキスパンダモジュール40について光軸の調整を行う。
【0049】
次に、レーザビーム30aとガイド光31aの光軸を一致させる。
【0050】
続いて、エキスパンダモジュール40の配設位置に、エキスパンダモジュール40を配置し、ガイド光源31から出射したガイド光31aが加工点に伝搬されるように、モジュールの配置位置の微調整を行って、レーザ加工装置全体(ビーム出射位置から加工点まで)の光軸を合わせる。この場合、エキスパンダモジュール40以外のモジュール50〜80が適正に配置されているときには、エキスパンダモジュール40の配置位置の微調整のみを行えばよい。そうでないときには、必要に応じてモジュール50〜80の配置位置も微調整する。
【0051】
上述の光軸調整方法においては、モジュール単位で光軸を調整した後、モジュール相互間の光軸合わせを行う。各モジュール40〜80では、切り出し用ミラー40a〜80aでガイド光31aを二分岐させ、モジュール内の光学部品を経由する一方の光路を進行するガイド光31aと、他方の直進光路を進行するガイド光31aとを、同一光軸上に重畳させる光軸調整を行う。この光軸調整方法によれば、ビーム出射位置から加工点までのレーザビーム30aの光軸合わせを、容易に行うことができる。
【0052】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0053】
たとえば、実施例においては、エキスパンダモジュール40、マスクモジュール50、シャッタモジュール60、転写倍率変化光学系モジュール70、集光モジュール80のすべてをモジュール化したが、このうちの少なくとも一つがモジュール化されていればよい。たとえばマスク51及びモータ52は、マスクモジュール50としてモジュール化しなくてもよい。シャッタ61及びモータ62についても、シャッタモジュール60としてモジュール化の必要はない。なお配設位置は、モジュール化された光学系についてだけ画定されていればよい。この場合、光軸の調整は、まずモジュール化されたすべての光学系について行い、光軸の調整されたモジュールを、レーザビームの出射位置と加工点との間に配置して、ビーム出射位置から加工点までの光軸を合わせる。
【0054】
また、実施例においては、加工用のレーザビーム30aを出射するレーザ発振器として、COレーザを用いたが、Nd:YLF、Nd:YAG等の固体レーザや、エキシマレーザ等を使用することができる。
【0055】
更に、実施例においては、シャッタモジュール60を、マスクモジュール50と転写倍率変化光学系モジュール70との間のレーザビーム30aの光路上に配置したが、レーザ光源30のビーム出射位置と加工点との間の任意の光路上に配置することが可能である。
【0056】
また、実施例においては、ガイド光源31はレーザ光源30に含まれていたが、ガイド光源31をレーザ光源30と独立に設けることもできる。
【0057】
図5に、変形例によるレーザ加工装置の一部概略を示す。変形例においては、ガイド光源31は、レーザ光源30の外部に配置される。レーザ光源30から出射されるレーザビーム30aと、ガイド光源31から出射されるガイド光31aとは、ビーム合成器32で同一光軸上に重畳される。ビーム合成器32は、たとえば偏光ビームスプリッタである。レーザ光源30、ガイド光源31、及びビーム合成器32は、ビーム合成器32がレーザビーム30aを透過し、ガイド光31aを反射するように配置される。なおこの場合、レーザ光源30、ガイド光源31、及びビーム合成器32を含めて、光軸が同一であるレーザビーム30aとガイド光31aとを出射する光源と考えることが可能である。また、たとえばレーザビーム30aと、ガイド光31aとが同一光軸上に重畳されるビーム合成器32上の位置を、ビーム出射位置と考えることができる。
【0058】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0059】
レーザ加工一般に利用可能である。プリント配線板に対するレーザドリル加工のほか、太陽電池の製造に用いられる基板のレーザパターニング加工等に使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 レーザ光源
11 ビームエキスパンダ
20 レーザビーム
30 レーザ光源
30a レーザビーム
31 ガイド光源
31a ガイド光
32 ビーム合成器
40 エキスパンダモジュール
40a 切り出し用ミラー
40b、40c 折り返しミラー
40d 戻し入れ用ミラー
41、43、45 レンズ
42、44、46 一軸ステージ
47〜49 ノックピン
50 マスクモジュール
50a 切り出し用ミラー
50b、50c 折り返しミラー
50d 戻し入れ用ミラー
51 マスク
52 モータ
60 シャッタモジュール
60a 切り出し用ミラー
60b、60c 折り返しミラー
60d 戻し入れ用ミラー
61 シャッタ
62 モータ
70 転写倍率変化光学系モジュール
70a 切り出し用ミラー
70b、70c 折り返しミラー
70d 戻し入れ用ミラー
71 凹レンズ
72 凸レンズ
73、74 フィールドレンズ
80 集光モジュール(ガルバノモジュール)
80a 切り出し用ミラー
80b、80c 折り返しミラー
80d 戻し入れ用ミラー
81 折り返しミラー
82、84 ガルバノミラー
83、85 モータ
86 fθレンズ
87 集光レンズ
90 ステージ
95 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射する光源と、
前記光源を出射したレーザビームのビーム径を変化させるエキスパンダ光学系と、
前記エキスパンダ光学系を出射したレーザビームの断面形状を整形するマスク光学系と、
前記マスク光学系で整形されたレーザビームの断面形状を加工点に転写倍率可変に転写する転写倍率変化光学系と、
前記転写倍率変化光学系を出射したレーザビームを、集光して加工点に入射させる集光光学系と、
前記光源と加工点との間のレーザビームの光路上に配置され、入射するレーザビームの通過と遮蔽とを切り替えることができるシャッタ光学系と
を有し、
前記エキスパンダ光学系、前記マスク光学系、前記転写倍率変化光学系、前記集光光学系、前記シャッタ光学系の少なくとも一つは、一体化されたモジュールとして構成されているレーザ加工装置。
【請求項2】
前記エキスパンダ光学系、前記転写倍率変化光学系、前記集光光学系の少なくとも一つは、一体化されたモジュールとして構成されている請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記モジュールは、微調整可能に配設される位置が画定されている請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記光源は、レーザビームを出射する第1の光源と、該レーザビームとは波長の異なる光を出射する第2の光源とを含み、前記第1の光源からのレーザビームと、前記第2の光源からの光とを、光軸を同一として出射可能であり、
前記モジュールは、前記第1の光源からのレーザビームを反射し、前記第2の光源からの光については、一部を透過し、一部を反射する第1及び第2の光学部材を含み、
前記モジュールに入射する前記第1の光源からのレーザビーム、及び前記第2の光源からの光の一部は、前記第1の光学部材で反射され、前記モジュールとして構成される光学系を経由した後、前記第2の光学部材で反射されて前記モジュールを出射し、
前記モジュールに入射し、前記第1の光学部材で反射されなかった、前記第2の光源からの光の一部は、前記第2の光学部材を透過して前記モジュールを出射する請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
光源を出射したレーザビームを加工点に伝搬する光学系の少なくとも一部が、一体化されたモジュールとして構成されているレーザ加工装置において、前記光源を出射するレーザビームの光軸を調整する方法であって、
(a)モジュールについて光軸の調整を行う工程と、
(b)前記工程(a)で光軸の調整を行ったモジュールを、レーザビームの出射位置と加工点との間に配置して、ビーム出射位置から加工点までの光軸の調整を行う工程と
を有する光軸調整方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、光を二分岐し、分岐された一方の光をモジュールとして構成されている光学系を経由させた後、分岐された他方の光と同一光軸上に重畳させる請求項5に記載の光軸調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115897(P2012−115897A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270432(P2010−270432)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】