説明

レーザ加工装置

【課題】従来の加工装置で銅箔付のプリント基板のスルーホール加工を行った場合に、レーザ発振器の出力変動やワーク厚さの寸法バラツキ、加工穴の分布密度の大小やワーク上の場所などの要因によって、スルーホール加工の貫通率が低下する課題があった。
【解決手段】レーザ加工中に被加工物を保持する載置部の上にワーク加熱層を設けて、被加工物を吸着固定している間に加熱する。さらに、加工前に被加工物の位置調整を行う調整台の上に加熱板を設けて加工前に待機している間に、被加工物の温度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを照射して加工を行うレーザ加工装置に関し、特に、銅箔付プリント基板に穴あけ加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、部品の小型化、高集積化、複合モジュール化に伴い、それらの元となる基材の穴あけ加工も小径化し、従来の加工方法では困難になってきた。それらを解決するために、レーザを用いた穴あけ加工が増えてきている。このレーザによる被加工物への穴加工では、大きく分類して、被加工物に貫通穴を空けるスルーホール加工と、被加工物に非貫通穴を空けるブラインドホール加工の2種類がある。
【0003】
図4は、従来技術に係るレーザ加工装置の被加工物載置部の構成を示す断面図である。
【0004】
本図において、上下に昇降する分割された可動載置部812と外周載置部816が設けられている。外周載置部816には外周吸着孔814が形成され、分割された可動載置部812には載置部吸着孔813が形成されている。被加工物811は分割された可動載置部812と外周載置部816の上部に載せられ吸着保持されている。分割された可動載置部812は、個別に上下方向に動作可能な構造を持ち、エアシリンダ等の昇降駆動部により上下動作する。
【0005】
ブラインドホール加工時は、可動載置部812はすべての吸着部が上昇した状態となる。そして、載置部全面を使用して被加工物811を吸着固定し加工を行う。スルーホール加工時は、図4に見るように、加工の下部に相当する分割された可動載置部812のみ下降させた状態でレーザ加工を行う。
【0006】
以上のように構成することで、被加工物の平面度を維持しながら、スルーホール加工時のレーザによる載置部の損傷を防止している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/001497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のレーザ加工装置で銅箔付のプリント基板のスルーホール加工を行った場合に、レーザ発振器の出力変動や被加工物の厚さの寸法バラツキ、加工穴の分布密度の大小やワーク上の場所などの要因によって、スルーホール加工の貫通率が低下する課題があった。
【0009】
これは、プリント基板を構成する材料である高分子材料やガラス等で構成される絶縁層は、レーザを照射する際の材料温度が室温より上昇すると加工性が良好となり裏面の銅箔に到達するレーザ出力が増加して貫通性が高まるのに対し、絶縁材料の温度が下がると加工性が低下して裏面に到達するレーザ光が弱まり銅箔を貫通させるエネルギーが減って銅箔貫通性が低下することから発生している。
【0010】
一般に、金属製の躯体で構成される載置台の上に固定されたプリント基板を加工すると、熱容量の大きな載置台の影響により、加工直前のワークの温度は室温とほぼ同じ温度となっているが、例えば、加工穴密度の高い部分ではレーザ照射が続く事により周辺のワーク構成材料の温度が高まり、加工性が良化するが、密度の低い部分では温度の高まりが少ない為、レーザ出力に低下変動が発生すると加工性の低下により貫通穴加工が実現できなくなっていた。
【0011】
本発明では、レーザ光により銅箔付プリント基板に貫通穴加工を行う際に、被加工物の温度を上昇させることで貫通率の低下を防止することを実現するレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は、被加工物をレーザ加工する加工ヘッド部と、上下に昇降する分割された可動載置部を複数有して前記被加工物を保持するワーク載置部と、前記ワーク載置部をXY方向に駆動するテーブルとを備え、複数のそれぞれの前記可動載置部の被加工物に接する面に加熱部を設けたものである。
【0013】
また好ましくは、本発明のレーザ加工装置は、被加工物を前記ワーク載置部に搭載する工程の前段に前記被加工物の搭載位置を調整する位置調整部をさらに備え、前記位置調整部の被加工物と接する側の面に加熱部を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、本発明のレーザ加工装置は、被加工物のスルーホール加工中に、被加工物の構成材料のレーザ加工性が高まるように温度を維持するができ、それにより、レーザ出力の変動や加工穴の分布密度の大小などの影響を受けて被加工物の貫通率が低下することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の一例に係るレーザ加工装置の概略構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態の一例に係るレーザ加工装置と被加工物の搬送装置を含む概略構成図
【図3】本発明の実施の形態の一例に係る可動載置部の構成を示す斜視図
【図4】従来技術に係るレーザ加工装置の載置部の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のレーザ加工装置に係る実施の形態の一例を、図を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態の一例に係るレーザ加工装置100の概略構成を示す斜視図である。
【0018】
図1において、レーザ発振器101は、内部でレーザが発振されレーザ102を射出する。射出されたレーザ102はミラー103で方向を変えられる。ミラー103で方向を変えられたレーザ102は、その進行方向に配置されたコリメータレンズ104によって密度(レーザ径)が調整され、さらにレーザ102はマスク105により形状を整形され、アイリス106により雑光が抑制される。
【0019】
アイリス106を通過したレーザ102は、X軸方向に振るためのガルバノXミラー109と、ガルバノXミラー109で反射されたレーザ102をY軸方向に振るためのガルバノYミラー110により位置決めされる。さらに、ガルバノYミラー110で反射したレーザ102が、fθレンズ107で集光され、被加工物111の加工点に照射されるように装置を構成する。
【0020】
そして、これらガルバノXミラー109、ガルバノYミラー110とレーザ発振器101を制御する制御コントローラ108を設けている。
【0021】
被加工物111は複数個設けられた可動載置部121と外周載置部123上に置かれている。この可動載置部121と外周載置部123からワーク載置部120は構成されている。可動載置部121には複数の載置部吸着孔122が設けられ、また、外周載置部123にも外周吸着孔124が設けられている。被加工物111は載置部吸着孔122と外周吸着孔124より真空引きすることにより吸着保持される。
【0022】
可動載置部121は、それぞれ1対の可動載置部昇降シリンダ125によって支持されている。可動載置部昇降シリンダ125は、本実施の形態では空気圧により制御されるエアシリンダを用いており、個々の可動載置部121を独立に上下させることができる。
【0023】
被加工物111を保持するワーク載置部120と加工テーブル115との間の空間は下部吸塵装置112となっており、空気流によってレーザ加工時に被加工物111の下部に発生する加工屑を集塵する機能を有している。
【0024】
また、被加工物111の上方のレーザ照射面側には上部吸塵装置130が設置されている。上部吸塵装置130はガルバノXミラー109とガルバノYミラー110によって制御されるレーザ102の照射範囲を囲うように設けられ、その一部に設けられた穴より内部の空気を吸引することで、レーザ加工の際に被加工物111の上部に発生する加工屑を集塵・排出する。
【0025】
図2は本発明の実施の形態の一例に係るレーザ加工装置100と、被加工物111の搬送装置を含む概略構成図である。
【0026】
加工テーブル115は、Yテーブル116とXテーブル118の大きく2つのブロックより構成されている。Yテーブル116は、ワーク載置部120、および、これらに付随する一式の構成を載置しY方向に可動するように構成されている。Y方向の移動には、Y軸移動モータ117を駆動することでボールねじを回転させ、そこに載置されているもの一式ごとYテーブル116をスライドさせることで行われる。Xテーブル118は、Yテーブル116とそれに載置されている構成一式をさらに載置しX方向に可動するように構成されている。X方向の移動には、X軸移動モータ119を駆動することでボールねじを回転させ、そこに載置されているもの一式ごとXテーブル118をスライドさせることで行われる。
【0027】
レーザ102を反射し照射位置を制御するガルバノXミラー109、ガルバノYミラー110、およびレーザ102の方向を被加工物111の面に対し垂直方向にすると共に集光するfθレンズ107は、加工ヘッド部135に設置されている。加工ヘッド部135はスライダを介して本体フレームに取り付けられており、Z方向、すなわち上下方向に可動となっている。
【0028】
加工テーブル115の近傍に、未加工の加工待ち被加工物111を載せる搬入側ワーク昇降ユニット201、加工済みの被加工物111を載せる搬出側ワーク昇降ユニット241、および、ワーク位置調整ユニット220が設置されている。ワーク位置調整ユニット220の上にはワーク加熱板221が設けられ、ワーク加熱板221は加熱電源ケーブル223を介して別途設置されたワーク加熱電源222により適宜発熱可能となっている。
【0029】
搬入側ワーク昇降ユニット201からワーク位置調整ユニット220へ、ワーク位置調整ユニット220からワーク載置部120へ、被加工物111を搬送するために搬入ヘッド202を設けている。搬入ヘッド202は所定の位置にある被加工物111を吸着し、ガイドに沿って移動し被加工物111を搬送する。
【0030】
ワーク載置部120から搬出側ワーク昇降ユニット241へ被加工物111を搬送するためには搬出ヘッド242を設けている。搬入ヘッド202と同様に搬出ヘッド242は所定の位置にある被加工物111を吸着し、ガイドに沿って移動し被加工物111を搬送する。
【0031】
次に、本発明の特徴的な構成のうち可動載置部121の構成について詳細に説明する。
【0032】
図3は本発明の実施の形態の一例に係る可動載置部121の構成を示す斜視図である。図3において、被加工物111を保持する複数の可動載置部の一つを取り出し、その構成を示している。
【0033】
可動載置部121は、通常は、加工中に集光照射するレーザ光焦点の高さが被加工物の部分によって変化しないように平滑度を高めており、かつ、真空吸着の為の負圧に耐えるように金属製の躯体でつくられている。本発明の可動載置部121は、可動載置部ケース304と、可動載置部ケース304の上面にある吸着板301、吸着板301の上にコーティングされた吸着板絶縁層302、吸着板絶縁層302のさらにその上に設けられたワーク加熱層303を備える。
【0034】
可動載置部ケース304と吸着板301は同じ材質で形成され、その材質としては十分に剛性を有する材料、例えば、アルミニウム等の金属で形成される。吸着板301の上にコーティングされた吸着板絶縁層302はポリイミド樹脂などの耐熱性を有する電気絶縁物で形成される。ワーク加熱層303は電流を流すことはできるが可動載置部ケース304や吸着板301よりは高い電気抵抗を有する材質、例えば導電性のセラミクスなどで形成される。
【0035】
ワーク加熱層303は加熱用配線312を介して加熱電源311に結線されており、個々のワーク加熱層303が独立して通電可能になっている。加熱電源311の動作は電源駆動スイッチ314で制御される。吸着板絶縁層302は、ワーク加熱層303よりも電気抵抗の低い吸着板301に電流も漏れないようにしている。また一般に、電気抵抗が低いものは熱伝導率も低いので、ワーク加熱層303の発熱が、被加工物111よりも先に、吸着板301に流れてしまうのを抑制する。
【0036】
載置部吸着孔122は、吸着板301、吸着板絶縁層302、ワーク加熱層303を貫通して複数個設けられている。可動載置部ケース304には空気流通孔307が設けられている。空気流通配管306を介して、空気流通孔307から個々の可動載置部121の吸着板301と可動載置部ケース304で覆われる空間の空気圧を加減圧可能に構成している。加圧・減圧に必要な空気流は電磁弁305で制御され、電磁弁305は電磁弁駆動スイッチ313で制御される。これにより、載置部吸着孔122で吸引・吹出自在に構成されている。
【0037】
なお、加熱電源311およびそれに関する回路と、空気流通孔307や空気流通配管306及びそれに関する回路などは、図中では原理的に示しており、実際の装置では装置の動作に影響のない適切な場所に設置されている。また、以上の構成は複数ある可動載置部121のそれぞれに設けられている。
【0038】
以上のように構成されたレーザ加工装置100の動作について説明する。
【0039】
未加工の加工待ち被加工物111は搬入側ワーク昇降ユニット201上に積載されている。搬入ヘッド202によって、搬入側ワーク昇降ユニット201上に積載された加工待ちの被加工物111から1枚が取り出されワーク位置調整ユニット220の上に載せられる。ワーク載置部120の上に被加工物111を載せる際に適切な位置に設置できるように、ワーク位置調整ユニット220で被加工物111の位置調整が行われ、先に行われている加工が終わるまで、被加工物111はワーク位置調整ユニット220の上で待機している。
【0040】
この間、ワーク加熱電源222が起動され、加熱電源ケーブル223を経てワーク加熱板221に電流が流れて、ワーク加熱板221が発熱する。加工待ちをしている被加工物111はワーク加熱板221の上にあるため、待機中に暖められて温度が上昇する。このように加工待ちの待機中に被加工物全体を加熱するので、絶縁層の厚さが厚く、熱容量の大きな被加工物111の温度を加工前に一様に高めることができる。
【0041】
そして、先に行われている加工が終わり、新たな被加工物111を装置に搭載するにあたり、載置部吸着孔122と外周吸着孔124を吸引していない状態に、可動載置部121を全て上昇した状態にしておく。そして、加工テーブル115を移動させることでワーク載置部120を被加工物111の搭載位置まで移動させる。
【0042】
被加工物111をワーク載置部120上に搭載した後、載置部吸着孔122と外周吸着孔124を真空引きして被加工物111の下面を吸着保持する。この吸着と同時に電源駆動スイッチ314を制御し、加熱電源311よりすべての可動載置部121上のワーク加熱層303に通電を開始する。これによって、被加工物111全体が加熱されている状態を維持できる。なお、ワーク加熱層303の通電を吸引と同時ではなく、それ以前に予め行いワーク載置部120の予備加熱を行ってもよい。
【0043】
被加工物111の保持が完了したのち以下の動作を開始する。被加工物111を保持したワーク載置部120を第1の加工エリアに移動させるべく加工テーブルの移動を開始する。原点位置にある加工ヘッド部135を焦点位置への移動を開始する。第1の加工エリアの下面にある可動載置部121のみ、当該可動載置部に設けられた載置部吸着孔122の真空引きをブローに切り換え、当該部位の被加工物下面の吸着保持やめ、当該可動載置部121を下降する。これらの動作を並行して行う。
【0044】
個々の加工エリアはガルバノミラーのスキャン範囲内に設定されており、当該エリア内のレーザ加工の位置決めはガルバノミラーを制御することで行われる。以上のように、第1の加工エリアにおける準備が整った後、ガルバノXミラー109とガルバノYミラー110を制御し、穴加工位置にレーザ102の照射を開始する。
【0045】
この時に、下降した可動載置部121は被加工物111とは接していないので、下降した可動載置部121上のワーク加熱層303のみ通電を止めてもよい。また、ブローではなく空気流を止めてもよい。電磁弁305を開く電磁弁駆動スイッチ313と、加熱電源311を駆動する電源駆動スイッチ314とを連動して動作させるように構成しておけば、吸着のため電磁弁305を開く時、同時に加熱電源311が動作して加熱用配線312を通じてワーク加熱層303に電流を流し、それによって、ワーク加熱層303が発熱し、吸着を中止すると連動してワーク加熱層303の通電も中止することができる。
【0046】
あるいは、下降した可動載置部121でのブローを行う際に、かかる可動載置部121のワーク加熱層303に流す電流のみを多くしてもよい。このようにすれば、ブローする空気流をより高い温度に熱することができ、レーザで穴加工している箇所をより効率よく加熱することができる。
【0047】
所定のレーザの照射が完了し、第1の加工エリア内の全ての穴加工が完了したら、第2の加工エリアに移動するために、加工テーブル115を本実施の形態ではY方向に移動させる。第2の加工エリアでの一連の動作の手順は上述の同様である。順次、第3、第4の加工エリアに移動を行い、ひとつの可動載置部121が下降しているエリアをすべてレーザ加工し終わるまで繰り返す。
【0048】
ひとつの可動載置部121が下降しているエリアすべてのレーザ加工をし終わったら、以下の動作を開始する。
【0049】
まず、ワーク載置部120を次の加工エリアに移動すべく、加工テーブル115をX方向に移動開始する。すでに下降していた可動載置部121のブローを止めながら、当該可動載置部121を上昇して、上昇が完了したら当該可動載置部121に設けた載置部吸着孔122を真空引きして、被加工物111を再び吸着保持する。このとき、この可動載置部121上のワーク加熱層303の通電を他の可動載置部と同様の加熱状態になるよう制御する。次の加工エリアに対応する位置の可動載置部121に設けた載置部吸着孔122の真空引きをブローに切り換える。この可動載置部のワーク加熱層303の動作は上述の場合と同じである。当該箇所の被加工物下面の保持がされなくなったら、当該箇所の可動載置部121を下降する。これらの動作を並行して行う。
【0050】
そして、被加工物111が加工エリアに到着し当該加工エリアにおける準備が整った後、ガルバノXミラー109とガルバノYミラー110を制御し、穴加工位置にレーザ102の照射を開始する。
【0051】
上述の動作を繰り返し、被加工物111の所定のエリアすべての加工を行う。
【0052】
所定のエリアのすべての加工が完了したら、以下の動作を開始する。
【0053】
まず、被加工物取り出し位置に移動を開始すべく、加工テーブル115の移動を開始する。加工ヘッド部135の原点への移動を開始する。すでに下降していた可動載置部121のブロー止めながら、当該可動載置部121を上昇して、上昇が完了したら当該可動載置部121に設けた載置部吸着孔122を真空引きして、被加工物111を再び吸着保持する。これらの動作を並行して行う。
【0054】
上述の全ての動作が完了したら、すべての載置部吸着孔122とすべての外周吸着孔124の真空引きを止める。そして、被加工物111の吸着保持がされなくなるのを確認し、搬出ヘッド242が加工済みの被加工物111を搬出側ワーク昇降ユニット241上に積み上げられた加工済みの被加工物111の一番上に載せる。
【0055】
以上のように、本発明のレーザ加工装置では、ブラインドホール加工の際には、ワーク載置部120の全てのユニットが上昇したままでレーザ加工が行われるが、スルーホール加工の場合には、貫通したレーザが到達し得る位置の可動載置部121を他の載置部より下部に位置させてレーザ102の集光範囲から外すことで、レーザよる損傷を受けないようにし、その他のエリアについては吸着保持されるようにして加工を行う。どちらの加工方法で行うかの切替えは、図には示されていないが加工装置の制御装置の加工プログラムの内容に基づいて行われる。
【0056】
本発明のレーザ加工装置においては、以上の構成によって、加工の為にワーク載置部の上に被加工物が吸着固定されている間、被加工物はワーク載置部の上面より発生する熱を受けて温度が上昇し、構成材料の絶縁材料をレーザ加工するのに適した温度状態から低下することが防止され、裏面の銅箔の貫通加工性を維持しながら加工を行うことができる。また、被加工物全体を加熱するので、被加工物の温度を一様に高める事ができる。
【0057】
さらに、ワーク位置調整ユニット上に待機している加工待ちの被加工物が位置調整ユニットの上面にある加熱板より発生する熱を受けて温度を上昇させることができるので、構成材料の絶縁材料をレーザ加工するのに適した温度状態から低下することが防止され、裏面の銅箔の貫通加工性を維持しながら加工を行うことができる。この場合、加工待ちの待機中に被加工物全体を十分に加熱できるので、絶縁層の厚さが厚く、熱容量の大きな被加工物の温度を加工前に一様に高める事ができる。
【0058】
なお、可動載置部の数は装置の大きさ等の設計要件で決定すればよく、本実施の形態の一例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、銅箔付プリント基板のスルーホール加工において貫通率の低下を防止する事ができ、レーザ加工の歩留りを向上させて、安定したスルーホール加工を行うためレーザ加工装置等に有用である。
【符号の説明】
【0060】
100 レーザ加工装置
101 レーザ発振器
102 レーザ
103 ミラー
104 コリメータレンズ
105 マスク
106 アイリス
107 fθレンズ
108 制御コントローラ
109 ガルバノXミラー
110 ガルバノYミラー
111 被加工物
112 下部吸塵装置
115 加工テーブル
116 Yテーブル
117 Y軸移動モータ
118 Xテーブル
119 X軸移動モータ
120 ワーク載置部
121 可動載置部
122 載置部吸着孔
123 外周載置部
124 外周吸着孔
125 可動載置部昇降シリンダ
130 上部吸塵装置
135 加工ヘッド部
201 搬入側ワーク昇降ユニット
202 搬入ヘッド
220 ワーク位置調整ユニット
221 ワーク加熱板
222 ワーク加熱電源
223 加熱電源ケーブル
241 搬出側ワーク昇降ユニット
242 搬出ヘッド
301 吸着板
302 吸着板絶縁層
303 ワーク加熱層
304 可動載置部ケース
305 電磁弁
306 空気流通配管
307 空気流通孔
311 加熱電源
312 加熱用配線
313 電磁弁駆動スイッチ
314 電源駆動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物をレーザ加工する加工ヘッド部と、上下に昇降する分割された可動載置部を複数有して前記被加工物を保持するワーク載置部と、前記ワーク載置部をXY方向に駆動するテーブルとを備え、複数のそれぞれの前記可動載置部の被加工物に接する面に加熱部を設けたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記可動載置部の被加工物に接する側の上面に電気絶縁物からなる絶縁層を形成し、さらに前記絶縁層の上に高電気抵抗性の導通層を形成し、前記導通層に電流を流すことで前記加熱部とした請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記可動載置部の被加工物に接する面に空気が流通する孔を形成し、当該空気流通孔による吸引と前記加熱部の通電を連動するように構成した請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記可動載置部の被加工物に接する面に空気が流通する孔を形成し、前記可動載置部が前記被加工物と離れたときには、空気流通孔より空気流を噴出させるとともに、当該可動載置部に設けた加熱部の加熱量を増加させる請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
被加工物を前記ワーク載置部に搭載する工程の前段に前記被加工物の搭載位置を調整する位置調整部をさらに備え、前記位置調整部の被加工物と接する側の面に加熱部を設けた請求項1から4のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記加熱部が電気を通電することにより発熱する発熱板であり、前記被加工物を位置調整部に載せている間に発熱板に通電するよう制御された電源装置を設けた請求項5に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130932(P2012−130932A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283980(P2010−283980)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】