説明

レーザ包装方法及び樹脂フィルム包装製品の製造方法

【課題】樹脂フィルムを焼損することなく樹脂フィルム同士を溶着することが可能なレーザ包装方法を提供する。
【解決手段】レーザ包装方法は、上面側に吸引孔を有するヒートシンク10上に樹脂フィルムFa、被包装物W及び樹脂フィルムFbを順次に重ねて配置する配置工程と、ヒートシンク10の吸引孔により樹脂フィルムFaを吸引することによって、樹脂フィルムFaをヒートシンク10の上面に吸着させる吸着工程と、樹脂フィルムFa,Fb間を減圧することによって、樹脂フィルムFa,Fbと被包装物Wとを密着させると共に樹脂フィルムFa,Fb同士を密着させる密着工程と、ヒートシンク10の吸引孔及び被包装物Wを避けるように、樹脂フィルムFa,Fbに対して樹脂フィルムFb側からレーザ光を照射することによって、樹脂フィルムFa,Fb同士を溶着する溶着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムを用いたレーザ包装方法、及び、樹脂フィルムを用いた包装製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を用いた樹脂フィルム同士の溶着方法が記載されている。このレーザ溶着方法では、レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムと非透過性を有する樹脂フィルムとを重ね合わせた後に、レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルム側からレーザ光を照射することによって、透過性樹脂フィルムと非透過性樹脂フィルムとが溶着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−105499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの樹脂フィルムが比較的薄い場合、樹脂フィルムが部分的に加工台から浮くことがある。この状態でレーザ光をスキャン照射すると、加工台から浮いた部分では加工台への放熱が行われず、過度に発熱してしまう。その結果、加工台から浮いた部分が焼損してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂フィルムを焼損することなく樹脂フィルム同士を溶着することが可能なレーザ包装方法及び樹脂フィルム包装製品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のレーザ包装方法は、(1)上面側に吸引孔を有するヒートシンク上に、第1の樹脂フィルム、被包装物及び第2の樹脂フィルムを順次に重ねて配置する配置工程と、(2)ヒートシンクの吸引孔により第1の樹脂フィルムを吸引することによって、第1の樹脂フィルムをヒートシンクの上面に吸着させる吸着工程と、(3)第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間を減圧することによって、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムと被包装物とを密着させると共に第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを密着させる密着工程と、(4)ヒートシンクの吸引孔及び被包装物を避けるように、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムに対して第2の樹脂フィルム側からレーザ光を照射することによって、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着する溶着工程とを有する。
【0007】
一般に、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間を減圧すると、第2の樹脂フィルムが被包装物側面の上半分に密着するように変形すると共に、第1の樹脂フィルムが被包装物側面の下半分に密着するように変形する。その際に、第1の樹脂フィルムの製品周辺部分がヒートシンクから浮いてしまう。
【0008】
しかしながら、この第1のレーザ包装方法によれば、吸着工程において第1の樹脂フィルムをヒートシンクに吸着させた後に、密着工程において第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間を減圧するので、ヒートシンクに対する第1の樹脂フィルムの浮きを防止することができる。その後、溶着工程において第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにはレーザ光がヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにおけるレーザ光照射部分のヒートシンクからの浮きを防止することができる。その結果、上記したように、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0009】
上記した第1のレーザ包装方法における配置工程は、ヒートシンク上に第1の樹脂フィルムを配置する第1の配置工程と、第1の樹脂フィルム上に被包装物をヒートシンクの吸引孔上に配置すると共に、第1の樹脂フィルム及び被包装物上に第2の樹脂フィルムを配置する第2の配置工程とを含み、第1の配置工程と、吸着工程と、第2の配置工程とが順次に行なわれてもよい。ここで、第2の配置工程において被包装物はヒートシンクの吸引孔上に配置されるため、溶着ラインの確保が容易となる。
【0010】
また、上記した第1のレーザ包装方法は、第1の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して非透過性を有する樹脂フィルムを用い、第2の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。これによれば、上記したように、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着することができる。
【0011】
また、上記した第1のレーザ包装方法は、配置工程において、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間の少なくとも溶着領域にレーザ光に対して非透過性を有する部材を配置し、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。これによれば、上記したように、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着することができる。
【0012】
本発明の第2のレーザ包装方法は、(1)上面側に吸引孔を有するヒートシンク上に樹脂フィルムからなる樹脂袋を配置すると共に、該樹脂袋内に被包装物を配置する配置工程と、(2)ヒートシンクの吸引孔により樹脂袋を吸引することによって、樹脂袋をヒートシンクの上面に吸着させる吸着工程と、(3)樹脂袋内を減圧することによって、樹脂袋と被包装物とを密着させると共に樹脂袋の樹脂フィルム同士を密着させる密着工程と、(4)ヒートシンクの吸引孔及び被包装物を避けるように、樹脂袋に対してヒートシンクと反対側からレーザ光を照射することによって、樹脂袋の樹脂フィルム同士を溶着する溶着工程とを有する。
【0013】
この第2のレーザ包装方法によれば、吸着工程において樹脂袋をヒートシンクに吸着させた後に、密着工程において樹脂袋内を減圧するので、ヒートシンクに対する樹脂袋の浮きを防止することができる。その後、溶着工程において樹脂袋にはレーザ光がヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、樹脂袋におけるレーザ光照射部分のヒートシンクからの浮きを防止することができる。その結果、上記したように、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂袋の部分的な焼損を防止することができる。
【0014】
上記した第2のレーザ包装方法における配置工程は、ヒートシンク上に樹脂袋を配置する第1の配置工程と、樹脂袋内に被包装物をヒートシンクの吸引孔上に配置する第2の配置工程とを含み、第1の配置工程と、吸着工程と、第2の配置工程とが順次に行なわれてもよい。ここで、第2の配置工程において被包装物はヒートシンクの吸引孔上に配置されるため、上記したように溶着ラインの確保が容易となる。
【0015】
また、上記した第2のレーザ包装方法は、配置工程において、樹脂袋内の少なくとも溶着領域にレーザ光に対して非透過性を有する部材を配置し、樹脂袋としてレーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。これによれば、上記したように、樹脂袋の樹脂フィルム同士を溶着することができる。
【0016】
上記した第2のレーザ包装方法では、上記した樹脂袋は、少なくとも一端が開口した袋状をなしていてもよいし、対向する二端が開口したチューブ状をなしていてもよい。
【0017】
本発明の第1の樹脂フィルム包装製品の製造方法は、製品(被包装物)の表面保護又は外気との非接触(遮断)を要する樹脂フィルム包装製品の製造方法であって、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムを用いて被包装物を包装するレーザ包装工程を有する。このレーザ包装工程は、上記した第1のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを含む。
【0018】
この第1の樹脂フィルム包装製品の製造方法によれば、上記した第1のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを有しているので、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0019】
本発明の第2の樹脂フィルム包装製品の製造方法は、製品(被包装物)の表面保護又は外気との非接触(遮断)を要する樹脂フィルム包装製品の製造方法であって、樹脂フィルムからなる樹脂袋を用いて被包装物を包装するレーザ包装工程を有する。このレーザ包装工程は、上記した第2のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを含む。
【0020】
この第2の樹脂フィルム包装製品の製造方法によれば、上記した第2のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを有しているので、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0021】
本発明に関連するレーザ溶着方法は、(1)上面側に吸引孔を有するヒートシンク上に第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを順次に重ねて配置する配置工程と、(2)ヒートシンクの吸引孔により第1の樹脂フィルムを吸引することによって、第1の樹脂フィルムをヒートシンクの上面に吸着させる吸着工程と、(3)ヒートシンクの吸引孔を避けるように、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムに対して第2の樹脂フィルム側からレーザ光を照射することによって、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着する溶着工程とを有する。
【0022】
このレーザ溶着方法によれば、吸着工程において第1の樹脂フィルムがヒートシンクに吸着され、溶着工程において第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにはレーザ光がヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにおけるレーザ光照射部分にはヒートシンクから浮いた部分が存在しないこととなる。その結果、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0023】
本発明に関連するレーザ溶着装置は、(a)上面に第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとが順次に重ねられて配置され、上面側に該第1の樹脂フィルムを吸着するための吸引孔を有するヒートシンクと、(b)第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着するためのレーザ光を生成するレーザ光生成手段と、(c)ヒートシンクの吸引孔を避けるように、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムに対して第2の樹脂フィルム側からレーザ光を照射する照射手段とを備える。
【0024】
このレーザ溶着装置によれば、ヒートシンクの吸引孔によって第1の樹脂フィルムがヒートシンクに吸着され、照射手段によってレーザ光が第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにおけるレーザ光照射部分にはヒートシンクから浮いた部分が存在しないこととなる。その結果、上記したように、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0025】
上記したレーザ溶着方法は、第1の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して非透過性を有する樹脂フィルムを用い、第2の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。これによれば、第2の樹脂フィルムを透過したレーザ光のエネルギーを第1の樹脂フィルムが吸収することにより発生した熱によって、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着することができる。
【0026】
また、上記したレーザ溶着方法は、配置工程において、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間の少なくとも溶着領域にレーザ光に対して非透過性を有する部材を配置し、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムとしてレーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いることが好ましい。これによれば、第2の樹脂フィルムを透過したレーザ光のエネルギーを非透過性部材が吸収することにより発生した熱によって、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着することができる。
【0027】
本発明に関連する第1のレーザ包装装置は、(a)上面に第1の樹脂フィルム、被包装物及び第2の樹脂フィルムとが順次に重ねられて配置され、上面側に該第1の樹脂フィルムを吸着するための吸引孔を有するヒートシンクと、(b)第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムと被包装物とを密着させると共に第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを密着させるために、第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間を減圧する減圧手段と、(c)第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとを溶着するためのレーザ光を生成するレーザ光生成手段と、(d)ヒートシンクの吸引孔及び被包装物を避けるように、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムに対して第2の樹脂フィルム側からレーザ光を照射する照射手段とを備える。
【0028】
この第1のレーザ包装装置によれば、ヒートシンクの吸引孔によって第1の樹脂フィルムがヒートシンクに吸着された後に、減圧手段によって第1の樹脂フィルムと第2の樹脂フィルムとの間が減圧されるので、ヒートシンクに対する第1の樹脂フィルムの浮きを防止することができる。その後、照射手段によってレーザ光が第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムにおけるレーザ光照射部分のヒートシンクからの浮きを防止することができる。その結果、上記したように、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂フィルムの部分的な焼損を防止することができる。
【0029】
本発明に関連する第2のレーザ包装装置は、(a)上面に樹脂フィルムからなる樹脂袋が配置されると共に該樹脂袋内に被包装物が配置され、上面側に該樹脂袋を吸着するための吸引孔を有するヒートシンクと、(b)樹脂袋と被包装物とを密着させると共に樹脂袋の樹脂フィルム同士を密着させるために、樹脂袋内を減圧する減圧手段と、(c)樹脂袋の樹脂フィルム同士を溶着するためのレーザ光を生成するレーザ光生成手段と、(d)ヒートシンクの吸引孔及び被包装物を避けるように、樹脂袋に対してヒートシンクと反対側からレーザ光を照射する照射手段とを備える。
【0030】
この第2のレーザ包装装置によれば、ヒートシンクの吸引孔によって樹脂袋がヒートシンクに吸着された後に、減圧手段によって樹脂袋内が減圧されるので、ヒートシンクに対する樹脂袋の浮きを防止することができる。その後、照射手段によってレーザ光が樹脂袋にヒートシンクの吸引孔を避けるように照射されるので、樹脂袋におけるレーザ光照射部分のヒートシンクからの浮きを防止することができる。その結果、上記したように、レーザ光照射部分からヒートシンクへの放熱によって、樹脂袋の部分的な焼損を防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、樹脂フィルムを焼損することなく樹脂フィルム同士を溶着することが可能なレーザ包装方法及び樹脂フィルム包装製品の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るレーザ包装装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すレーザ包装装置の電気的接続を示す図である。
【図3】図1における上方から見たステージを示す図である。
【図4】図1及び図2に示すPC28の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図1における上方から見た各工程におけるステージ上を模式的に示す図である。
【図6】密着工程における樹脂袋を模式的に示す断面図である。
【図7】溶着工程における樹脂袋を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の変形例に係る溶着工程におけるステージを上面から見た図である。
【図9】本発明の変形例に係る溶着工程における樹脂フィルムを正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ包装装置の構成を示す図であり、図2は、図1に示すレーザ包装装置の電気的接続を示す図である。図1及び図2に示すレーザ包装装置1は、樹脂フィルムからなる樹脂袋Fをレーザ溶着することによって、樹脂袋Fで被包装物Wを包装するための装置である。レーザ包装装置1は、ステージ(ヒートシンク)10と、真空ポンプ(減圧手段)12と、照射ヘッド14と、光ファイバ16と、レーザ光源18と、アーム20と、ローラ22と、マウンタ24と、カッター26と、PC28とを備えている。なお、照射ヘッド14、光ファイバ16及びレーザ光源18がレーザ光生成手段として機能し、照射ヘッド14及びアーム20が照射手段として機能する。
【0035】
ステージ10は、レーザ溶着加工時のヒートシンクとして機能する。ステージ10の材料には金属などが用いられ、本実施形態ではアルミニウムが用いられる。
【0036】
図3に、図1における上方から見たステージ10を示す図を示す。ステージ10の上面には複数の吸引孔Hが設けられており、これらの吸引孔Hは吸引チューブ30に繋がっている。吸引チューブ30はバルブ32を介して真空ポンプ12に接続されている。また、ステージ10の縁部の上面には、吸引チューブ34が設けられている。吸引チューブ34はバルブ36を介して真空ポンプ12に接続されている。ステージ10の上方には照射ヘッド14が設けられている。
【0037】
照射ヘッド14は、光ファイバ16を介してレーザ光源18に接続されており、レーザ光源18からのレーザ光を出力する。照射ヘッド14は、アーム20に支持されている。
【0038】
アーム20は、照射ヘッド14を移動することによって、ステージ10上に配置された樹脂袋Fに対してレーザ光をスキャン照射する。その際、アーム20は、ステージ10の吸引孔H及び被包装物Wを避けるようにレーザ光をスキャン照射する。
【0039】
ステージ10に対して吸引チューブ34と反対側には、ローラ22が設けられている。ローラ22には、ロール状に連なった樹脂袋Fが取り付けられている。樹脂袋Fは、照射されるレーザ光に対して非透過性を有する帯状の樹脂フィルム(第1の樹脂フィルム)Faと照射されるレーザ光に対して透過性を有する帯状の樹脂フィルム(第2の樹脂フィルム)Fbとがチューブ状に溶着された後、長手方向に等間隔に、短手方向に溶着されることによって形成される。本実施形態では、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaにはレーザ光に対して非透過性を有するポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)が用いられ、上側の樹脂フィルムFbにはレーザ光に対して透過性を有するPETが用いられる。ローラ22から引き出された樹脂袋Fは、開口が吸引チューブ34の一端部を覆うようにステージ10上に配置される。
【0040】
ステージ10に対して吸引チューブ34側にはマウンタ24が設けられている。マウンタ24は、包装加工前の被包装物Wをステージ10の吸引孔H上に配置されるように樹脂袋F内に配置すると共に、包装加工後の包装済み被包装物(樹脂フィルム包装製品)Wを搬出する。
【0041】
ステージ10の上方には、包装済み被包装物Wを搬出可能にするために、連なった樹脂袋Fを切断するためのカッター26が設けられている。
【0042】
PC28は、これらの各部動作を統括的に制御する。特に、PC28は、各部動作のシーケンスを制御する。
【0043】
次に、レーザ包装装置1の動作を説明すると共に、本発明の実施形態に係るレーザ包装方法についても説明する。レーザ包装方法は、第1の配置工程と、第2の配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程と、切断工程とを有している。
【0044】
レーザ包装装置1が起動すると、アーム20、ローラ22、マウンタ24及びカッター26が初期位置、初期状態に戻り、レーザ光源18がスタンバイ状態となる。また、真空ポンプ12が動作し、バルブ32,36が閉じられる。また、PC28が、各部に指令を送信し、図4に示すように各部を動作させる。図4は、図1及び図2に示すPC28の制御処理を示すフローチャートである。また、図5に、図1における上方から見た各工程におけるステージ10上を模式的に示す図を示す。
(第1の配置工程)
【0045】
まず、前回のレーザ包装加工後にマウンタ24によって包装製品を搬出する際に、ローラから樹脂袋Fが引き出され、図5(a)に示すように、樹脂袋Fの開口が吸引チューブ34の一端部を覆うように樹脂袋Fがステージ10上に配置される。なお、樹脂袋Fの開口と反対側の底部Bは、上記したように予め溶着されている。(ステップS01)。
(吸着工程)
【0046】
次いで、バルブ32を開き、ステージ10上面の吸引孔Hから樹脂袋Fを吸引する。これによって、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaがステージ10上面に吸着される(ステップS02)。
(第2の配置工程)
【0047】
次いで、図5(b)に示すように、マウンタ24が、被包装物Wをステージ10の吸引孔H上に配置するように樹脂袋F内に配置し、元の位置へ戻る(ステップS03)。
(密着工程)
【0048】
次いで、バルブ36を開き、樹脂袋F内を減圧する。これによって、樹脂袋Fの上側の樹脂フィルムFbが変形して、被包装物Wの上面及び側面に密着すると共に、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaにおける被包装物Wが搭載されていない部分に密着する。このようにして、樹脂フィルムFa,Fbと被包装物Wとが密着すると共に、樹脂フィルムFa,Fb同士が密着する(ステップS04)。
(溶着工程)
【0049】
次いで、レーザ光源18がレーザ光出力を開始し、アーム20が照射ヘッド14を移動することによって、図5(b)に示すように、ステージ10の上面の吸引孔H及び被包装物Wを避けるように、樹脂袋Fにレーザ光を加工ラインLに沿ってスキャン照射する。これによって、樹脂袋Fの樹脂フィルムFaと樹脂フィルムFbとが加工ラインLに沿って溶着される(ステップS05)。
(切断工程及び第1の配置工程)
【0050】
レーザ包装加工が終了すると、レーザ光源18がレーザ光出力を停止し、アーム20が初期状態へ戻る。また、バルブ32,36が閉じる。その後、図5(c)に示すように、マウンタ24が加工済みの包装製品を樹脂袋F1つ分搬出し、カッター26が樹脂袋Fを切断した後に、マウンタ24が加工済みの包装製品を搬出して、元に戻る。このようにして、加工済みの包装製品が搬出されると共にローラ22から樹脂袋Fが1つ分引き出され、樹脂袋Fがステージ10上に配置される。すなわち、次の第1の配置工程が行われる(ステップS06)。
【0051】
次いで、PC28によって、すべての被包装物Wの包装加工が終了したか否かが判定される(ステップS07)。すべての被包装物Wの包装加工が終了していない場合にはステップS01へ戻り、次に被包装物Wに対して上記した工程が繰り返される。一方、すべての被包装物Wの包装が終了した場合には包装処理が終了される。
【0052】
一般に、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaをステージ10に吸着せずに樹脂袋F内を減圧すると、図6(b)に示すように、上側の樹脂フィルムFbが被包装物Wの側面の上半分に密着するように変形すると共に、下側の樹脂フィルムFaが被包装物Wの側面の下半分に密着するように変形する。その際に、樹脂フィルムFaの被包装物Wの周辺部分がステージ10から浮いてしまう。図7(b)に示すように、薄い樹脂フィルムFa,Fbの浮いた部分Aに、ステージ10に吸着している部分と同様な照射条件でレーザ光を照射すると、非透過性樹脂フィルムFaがレーザ光から吸収したエネルギーによる熱をステージ10に放出することができず、過度の発熱によって焼損してしまい、穴が開いてしまうことがある。
【0053】
しかしながら、本実施形態のレーザ包装装置1及びレーザ包装方法によれば、吸着工程において樹脂袋Fをステージ10に吸着させた後に、密着工程において樹脂袋F内を減圧するので、図6(a)に示すように、樹脂袋Fの上側の樹脂フィルムFbが被包装物Wの側面に密着するように変形するが、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaのステージ10からの浮きを防止することができる。その後、溶着工程において樹脂袋Fにはレーザ光がステージ10の吸引孔Hを避けるように照射されるので、樹脂袋Fにおけるレーザ光照射部分のステージ10からの浮きを防止することができる。
【0054】
その結果、図7(a)に示すように、薄い樹脂フィルムFa,Fbのステージ10に密着した部分Aにレーザ光を照射すると、非透過性樹脂フィルムFaがレーザ光から吸収したエネルギーによる熱をステージ10に放出することができ、過度の発熱を抑制することができる。このように、本実施形態のレーザ包装装置1及びレーザ包装方法によれば、樹脂袋Fの部分的な焼損を防止することができる。
【0055】
本実施形態のレーザ包装方法は、製品(被包装物)の表面保護又は外気との非接触(遮断)を要する樹脂フィルム包装製品の製造方法に好適に適用可能である。
【0056】
また、本実施形態のレーザ包装装置1及びレーザ包装方法は、レーザ溶着装置及びレーザ溶着方法としても用いることができることは明らかである。
【0057】
次に、レーザ包装装置1による溶着の実施例を示す。本実施例における各条件は以下の通りである。
レーザ光の波長:808nm
レーザ光の平均強度:20W
レーザ光のスキャン速度:50mm/sec
樹脂袋Fの上側の樹脂フィルムFb:レーザ光に対して透過性を有するPET、厚さ0.3mm
樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFa:レーザ光に対して非透過性を有するPET、厚さ0.3mm
本実施形態のレーザ包装装置1によれば、樹脂袋Fを部分的に焼損することなく均一に溶着することができた。
【0058】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0059】
本実施形態では、袋状に加工された樹脂袋Fが用いられたが、チューブ状の樹脂チューブであってもよい。この場合、図5に示すラインL及びBに沿って左右2箇所のレーザ溶着加工が行われればよい。
【0060】
また、袋状に加工されていない二枚の樹脂フィルムFa,Fbのまま用いられてもよい。この場合、第1の配置工程ではステージ10上に樹脂フィルムFaを配置し(ステップS01に相当)、吸着工程ではステージ10上面の吸引孔Hから吸引することによって樹脂フィルムFaをステージ10の上面に吸着させる(ステップS02に相当)。その後、第2の配置工程では樹脂フィルムFa上に被包装物Wをステージ10の吸引孔H上に配置するすると共に樹脂フィルムFa及び被包装物W上に樹脂フィルムFbを配置し(ステップS03に相当)、密着工程では樹脂フィルムFaと樹脂フィルムFbとの間を減圧することによって樹脂フィルムFa,Fbと被包装物Wとを密着させると共に樹脂フィルムFa,Fb同士を密着させる(ステップS04に相当)。その後、上記した溶着工程及び切断工程(ステップS05〜S07)を行う。ここで、溶着工程(ステップS05)では、図8(a)に示すように、被包装物Wの周囲を加工ラインLに沿って一回りレーザ溶着加工が行われればよい。
【0061】
図8(b)に示すように、複数の被包装物Wを連ねた状態で個々に包装することも可能である。この場合、被包装物Wをそれぞれ吸引孔上に配置しているため、溶着ライン(すなわち、加工ライン)Lの確保が容易となる。又、被包装物Wが配置される領域を囲む様に吸引孔が存在するため、樹脂フィルムFaの加工ラインLをヒートシンクに対して確実に密着させ、焼損が防止される。
【0062】
また、本実施形態では、第1の配置工程、吸着工程、第2の配置工程の順に行われたが、吸着工程と第2の配置工程との順序は反対であってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、図9(a)に示すように、樹脂袋Fの下側の樹脂フィルムFaはレーザ光に対して非透過性を有しており、上側(樹脂フィルムFbの側)から照射され、レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムFbを透過したレーザ光のエネルギーを樹脂フィルムFaが吸収することにより発生した熱によって樹脂フィルムFa、Fbを融解し、樹脂フィルムFa,Fb同士を溶着したが、樹脂袋Fの樹脂フィルムFa,Fbは上下ともレーザ光に対して透過性を有していてもよい。この場合、図9(b)に示すように、樹脂フィルムFa,Fb間にレーザ光に対して非透過性を有する部材Fcを挿入することによって、上側(樹脂フィルムFbの側)から照射され、樹脂フィルムFbを透過したレーザ光のエネルギーを部材Fcが吸収することにより発生した熱によって樹脂フィルムFa、Fbを融解し、樹脂フィルムFa,Fb同士を溶着することができる。
【0064】
ここで、樹脂フィルムFa、Fb間に挿入される部材Fcとしては、照射されるレーザ光に対して非透過性を有する樹脂フィルムを用いることができる。又、部材Fcとしてレーザ光に対して非透過性を有する色素を含有したインクを用い、樹脂フィルムFa又はFbの表面に塗布する構成としてもよい。また、部材Fcは、樹脂フィルムFa、Fb間の少なくとも溶着領域(レーザ光照射領域)、すなわち溶着ライン(加工ライン)Lに配置されてもよいし、フィルム状をなして被包装物Wの上側又は下側を覆うように樹脂フィルムFa、Fb間に配置されてもよい。
【0065】
本実施形態では、樹脂袋Fの上下の樹脂フィルムFa,Fbとしてそれぞれレーザ光に対して非透過性のPET、レーザ光に対して透過性のPETが用いられたが、非透過性PET及び透過性PETの代わりにそれぞれ非透過性PP、透過性PPが用いられてもよいし、非透過性PE、透過性PEが用いられてもよい。このように、同種の樹脂材料同士を組み合わせると、溶着性(溶着時の馴染み度合いなど)を向上することができ、溶着強度を向上することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…レーザ包装装置、10…ステージ(ヒートシンク)、12…真空ポンプ(減圧手段)、14…照射ヘッド(レーザ光生成手段、照射手段)、16…光ファイバ(レーザ光生成手段)、18…レーザ光源(レーザ光生成手段)、20…アーム(照射手段)、22…ローラ、24…マウンタ、26…カッター、30,34…吸引チューブ、32,36…バルブ、F…樹脂袋、Fa…第1の樹脂フィルム、Fb…第2の樹脂フィルム、H…吸引孔、W…被包装物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に吸引孔を有するヒートシンク上に、第1の樹脂フィルム、被包装物及び第2の樹脂フィルムを順次に重ねて配置する配置工程と、
前記ヒートシンクの前記吸引孔により前記第1の樹脂フィルムを吸引することによって、前記第1の樹脂フィルムを前記ヒートシンクの上面に吸着させる吸着工程と、
前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間を減圧することによって、前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムと前記被包装物とを密着させると共に前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを密着させる密着工程と、
前記ヒートシンクの前記吸引孔及び前記被包装物を避けるように、前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムに対して前記第2の樹脂フィルム側からレーザ光を照射することによって、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとを溶着する溶着工程と、
を有する、レーザ包装方法。
【請求項2】
前記配置工程は、
前記ヒートシンク上に前記第1の樹脂フィルムを配置する第1の配置工程と、
前記第1の樹脂フィルム上に前記被包装物を前記ヒートシンクの前記吸引孔上に配置すると共に、前記第1の樹脂フィルム及び前記被包装物上に前記第2の樹脂フィルムを配置する第2の配置工程と、
を含み、
前記第1の配置工程と、前記吸着工程と、前記第2の配置工程とが順次に行なわれる、
請求項1に記載のレーザ包装方法。
【請求項3】
前記第1の樹脂フィルムとして、前記レーザ光に対して非透過性を有する樹脂フィルムを用い、
前記第2の樹脂フィルムとして、前記レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いる、
請求項1に記載のレーザ包装方法。
【請求項4】
前記配置工程において、前記第1の樹脂フィルムと前記第2の樹脂フィルムとの間の少なくとも溶着領域に前記レーザ光に対して非透過性を有する部材を配置し、
前記第1の樹脂フィルム及び前記第2の樹脂フィルムとして、前記レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いる、
請求項1に記載のレーザ包装方法。
【請求項5】
上面側に吸引孔を有するヒートシンク上に樹脂フィルムからなる樹脂袋を配置すると共に、該樹脂袋内に被包装物を配置する配置工程と、
前記ヒートシンクの前記吸引孔により前記樹脂袋を吸引することによって、前記樹脂袋を前記ヒートシンクの上面に吸着させる吸着工程と、
前記樹脂袋内を減圧することによって、前記樹脂袋と前記被包装物とを密着させると共に前記樹脂袋の樹脂フィルム同士を密着させる密着工程と、
前記ヒートシンクの前記吸引孔及び前記被包装物を避けるように、前記樹脂袋に対して前記ヒートシンクと反対側からレーザ光を照射することによって、前記樹脂袋の樹脂フィルム同士を溶着する溶着工程と、
を有する、レーザ包装方法。
【請求項6】
前記配置工程は、
前記ヒートシンク上に前記樹脂袋を配置する第1の配置工程と、
前記樹脂袋内に前記被包装物を前記ヒートシンクの前記吸引孔上に配置する第2の配置工程と、
を含み、
前記第1の配置工程と、前記吸着工程と、前記第2の配置工程とが順次に行なわれる、請求項5に記載のレーザ包装方法。
【請求項7】
前記配置工程において、前記樹脂袋内の少なくとも溶着領域に前記レーザ光に対して非透過性を有する部材を配置し、
前記樹脂袋として、前記レーザ光に対して透過性を有する樹脂フィルムを用いる、
請求項5に記載のレーザ包装方法。
【請求項8】
前記樹脂袋は、少なくとも一端が開口した袋状をなしている、請求項5〜7の何れか一項に記載のレーザ包装方法。
【請求項9】
前記樹脂袋は、対向する二端が開口したチューブ状をなしている、請求項5〜7の何れか一項に記載のレーザ包装方法。
【請求項10】
表面保護又は外気との非接触を要する樹脂フィルム包装製品の製造方法であって、
第1の樹脂フィルム及び第2の樹脂フィルムを用いて被包装物を包装するレーザ包装工程を有し、
前記レーザ包装工程は、請求項1〜4の何れか一項に記載のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを含む、
樹脂フィルム包装製品の製造方法。
【請求項11】
表面保護又は外気との非接触を要する樹脂フィルム包装製品の製造方法であって、
樹脂フィルムからなる樹脂袋を用いて被包装物を包装するレーザ包装工程を有し、
前記レーザ包装工程は、請求項5〜9の何れか一項に記載のレーザ包装方法における配置工程と、吸着工程と、密着工程と、溶着工程とを含む、
樹脂フィルム包装製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−52683(P2013−52683A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232976(P2012−232976)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2006−347958(P2006−347958)の分割
【原出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】