説明

レーザ治療装置

【課題】 異なる波長のレーザ光源を追加で同じ装置に搭載でき、適切に装置を使用する。
【解決手段】 レーザ治療装置は、装置本体に搭載された、異なる波長の治療レーザ光を出射する各レーザ光源からのレーザ光を患者眼に導光する導光光学系と、装置本体に搭載されているレーザ光源を設定する設定信号を入力する設定手段と、装置の起動時に各レーザ光源の所定の動作確認信号に基づきレーザ光源の異常の有無を確認し、異常がある場合には警告する動作確認制御手段とを有する。設定手段で設定されたレーザ光源の搭載情報に基づき装置本体に搭載されていないレーザ光源に対する異常の有無の確認を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者眼の眼底等にレーザ光を導光して治療するレーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者眼眼底の凝固等を行うレーザ治療においては、症例、治療目的の組織によって異なる波長のレーザ光が使用される。このため、1台の装置で異なる波長のレーザ光を出射できると都合が良いので、異なる波長のレーザ光を出射できるレーザ治療装置が提案されている。例えば、緑色、黄色及び赤色の3色のレーザ光を1つのレーザ光源から選択的に出射させるレーザ光源を持つ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−151774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のように1つのレーザ光源から3色の波長のレーザ光を選択的に出射させる装置は、単一波長のレーザ光を出射さるレーザ光源を持つ装置よりレーザ光源の構成が複雑であり、販売価格も高価となる。このため、例えば、緑色の単一波長のレーザ光源を持つ装置を提供する製造メーカがあり、医師(使用者)が主に緑色レーザ光による症例の治療しかしない場合、医師は緑色の単一波長のレーザ光源を持つ装置を購入する。その後、医師が緑色に加えて黄色のレーザ光による治療を必要とする場合、黄色の単色レーザの装置を供給するメーカがあれば、これをさらに購入するか、緑色/黄色/赤色の3色のレーザ光を出射する装置を購入する必要がある。緑色/黄色/赤色の3色のレーザ光を出射する装置を購入する場合、必要のない赤色レーザ光を出射するレーザ光源が搭載されているため、高価になると共に、初めに購入した緑色の単一波長のレーザ光源を持つ装置が余分となる。一方、緑色の単色レーザ装置と黄色の単色レーザ装置をそれぞれ購入する場合は、さらに高価になると共に、設置スペースも多く必要となる。
【0004】
本発明は、上記従来装置の問題点に鑑み、医師が始めにある波長のレーザ光源を持つレーザ治療装置を購入後にも異なる波長のレーザ光源を追加で同じ装置に搭載することができ、経済的に有利なレーザ治療装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0006】
(1) 患者眼にレーザ光を導光して治療するレーザ治療装置において、異なる波長の治療レーザ光をそれぞれ出射するレーザ光源が個別に搭載可能にされた装置本体と、該装置本体に搭載された各レーザ光源からのレーザ光を患者眼に導光する導光光学系と、前記装置本体に何れのレーザ光源が搭載されているかの搭載情報を設定する設定信号を入力する設定手段であって、前記設定信号を入力するスイッチを持つか、又は前記装置本体に搭載されているレーザ光源の有無を検知して前記設定信号を入力する検知手段を持つ設定手段と、装置の起動時に各レーザ光源の所定の動作確認信号に基づいてレーザ光源の異常の有無を確認し、異常がある場合にはその旨を警告する動作確認制御手段であって、前記設定手段により設定されたレーザ光源の搭載情報に基づいて装置本体に搭載されていないレーザ光源に対する異常の有無の確認を停止する動作確認制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)のレーザ治療装置は、さらに前記導光光学系により患者眼に導光するレーザ光のレーザ光源を選択する信号を入力する選択手段と、前記設定手段により設定されたレーザ光源の搭載情報に基づいて装置本体に搭載されたレーザ光源についてのみ前記選択手段からの選択信号の入力を可能にする選択制御手段と、を備えることを特徴とする。
(3) (2)のレーザ治療装置において、前記選択手段は選択可能なレーザ光源の情報を表示する表示手段を含み、前記選択制御手段は、レーザ光源の搭載情報に基づいて前記表示手段に表示させる選択可能なレーザ光源の情報を制御することを特徴とする。
(4) (1)のレーザ治療装置において、前記動作確認信号は、各レーザ光源に配置された温度センサからの温度検知信号、各レーザ光源に供給される電流の有無を検知する電流検知器からの信号、あるいはレーザ光の出力をモニタする出力センサからの信号を利用することを特徴とする。
(5) (1)のレーザ治療装置において、前記設定手段が持つ検知手段は、各レーザ光源に駆動電流を供給するコネクタの接続の有無を検知する手段、あるいは各レーザ光源が装置内部の基台上の所定位置に設置されているか否かを検知するマイクロスイッチ又はセンサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、医師が始めにある波長のレーザ光源を持つレーザ治療装置を購入後にも異なる波長のレーザ光源を追加で同じ装置に搭載することができ、経済的に有利になる。また、無用なトラブルを招くことなく、適切に装置を使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はレーザ治療装置の外観構成の概略図である。装置本体1の内部には、着脱自在に配置された複数のレーザ光源及び光ファイバ2にレーザ光を入射させる光学系を持つ光学系ユニット10(図2参照)が収納されている。光学系ユニット10は、装置本体1の背後の扉から取り出し可能に配置されている。装置本体1の上部には、タッチパネル式のカラー液晶ディスプレイが組み込まれたコントロールパネル3が設けられている。コントロールパネル3では、レーザ出力、照射時間等のレーザ照射条件の入力及び表示の他、複数の治療用レーザ光源の搭載状態を設定することができる。コントロールパネル3は、各種の情報を表示する表示手段とその表示に対応した各種の信号を入力する入力手段を兼ねる。
【0009】
また、レーザ治療装置は、患者眼を観察しながらレーザ光を患部に照射するスリットランプ4と、スリットランプ4に取り付けられ、光ファイバ2により導光されたレーザ光を照射するレーザ照射部5と、レーザ照射のトリガ信号を送出するフットスイッチ7を備える。スリットランプ4は、患者眼を照明する照明部6、患者眼を観察する双眼の顕微鏡部4aを備える。
【0010】
図2は光学系ユニット10に配置される光学系及び制御系の概略構成図である。光学系ユニット10の基台11上には、3つの治療用レーザ光源21,22,23が搭載される。各レーザ光源21,22,23は、それぞれビス等の固定部材により基台11上の所定位置に個別に取り付け及び取り外し可能にされている。例えば、レーザ光源21は波長532nmの緑色レーザ光を出射する緑色レーザ光源である。レーザ光源21の内部には、Nd:YAG結晶等の固体レーザ媒質、半導体レーザ等の励起光源、固体レーザ媒質からの波長1064nmを波長532nmの光に変換する波長変換素子、固体レーザ媒質からの光を共振させる一対の全反射ミラー及び出力ミラーが配置されている。レーザ光源22は波長647nmの赤色レーザ光を出射する赤色レーザ光源であり、例えば、半導体レーザ光源で構成される。レーザ光源23は波長561nmの黄色レーザ光を出射する黄色レーザ光源である。レーザ光源23の内部には、レーザ光源21と同じく、Nd:YAG結晶等の固体レーザ媒質、半導体レーザ等の励起光源、固体レーザ媒質からの波長1123nmを波長561nmの光に変換する波長変換素子、固体レーザ媒質からの光を共振させる一対の全反射ミラー及び出力ミラーが配置されている。
【0011】
また、レーザ光源21は励起光源及び波長変換素子をそれぞれ冷却するペルチェ素子等の冷却装置21a及び21b、励起光源及び波長変換素子の温度をそれぞれ検知する温度センサ21c及び21dを備える。レーザ光源22はその半導体レーザを冷却するペルチェ素子等の冷却装置22a、その温度を検知する温度センサ22cを備える。レーザ光源23も励起光源及び波長変換素子をそれぞれ冷却する冷却装置23a及び23b、励起光源及び波長変換素子の温度をそれぞれ検知する温度センサ23c及び23dを備える。各レーザ光源が備える温度センサからの温度検知の信号は後述する制御ユニット60に出力される。制御ユニット60によりレーザ光源21,22,23が持つ各素子の温度が監視され、その温度が所定の許容温度に維持されるように各レーザ光源に配置された冷却装置21a,22a,23a等が駆動される。
【0012】
各レーザ光源21,22,23から出射した治療レーザ光は、以下の構成を持つ導光光学系30により患者眼に導光される。レーザ光源22から出射されたレーザ光を進む光軸L01は、3つのレーザ光源21,22,23からのレーザ光が進む共用の光路とされる。その光軸L01上には、レーザ光の一部を反射するビームスプリッタ31、ダイクロイックミラー33、集光レンズ35が配置されている。ビームスプリッタ31で反射されたレーザ光は出力モニター用の出力センサ32により受光される。ダイクロイックミラー33は、エイミング用の可視光半導体レーザ光源34から出射光(主波長670nm)を反射し、3つの治療用レーザ光源21,22,23からのレーザ光(波長532nm、647nm、561nm)を透過する特性を持つ。可視光半導体レーザ光源34から出射光は、ダイクロイックミラー33により光軸L01を進む治療用レーザ光と同軸に合成される。
【0013】
また、レーザ光源22とビームスプリッタ31との間の光軸L01上には、ミラー36及びミラー38がそれぞれ挿入及び脱出可能に配置されている。ミラー36は、レーザ光源21から出射され、ミラー37で反射された光軸L02を進む緑色レーザ光を光軸L01に偏向する。ミラー36は駆動ユニット41により移動され、選択的に光軸L01上に挿入される。ミラー38は、レーザ光源23から出射され、ミラー39で反射された光軸L03を進む黄色レーザ光を光軸L01に偏向する。ミラー38は駆動ユニット42により移動され、選択的に光軸L01上に挿入される。駆動ユニット41,42は、それぞれモータ及びスライド機構等を持つ周知の機構により構成することができる。また、駆動ユニット41,42は、共通の駆動ユニットで構成されても良い。
【0014】
また、ビームスプリッタ31とダイクロイックミラー33との間の光路には、凝固用の治療レーザ光を遮断するための凝固シャッタ44が挿入/脱出可能に配置されている。さらに、ダイクロイックミラー33と集光レンズ35との間の光路には、安全シャッタ46が挿入/脱出可能に配置されている。異常時には安全シャッタ46が光軸L01上に挿入される。
【0015】
光軸L01を進むレーザ光は、集光レンズ35により集光され、光ファイバ2に入射される。光ファイバ2により導光されたレーザ光は、レーザ照射部5に配置されたコリメーティングレンズ51、ズームレンズ52、ミラー53により患者眼Eに向けられ、コンタクトレンズ55を介して患者眼Eに導光される。術者は、スリットランプ4に設けられた双眼の顕微鏡部4aの観察光学系により患者眼Eを観察する。
【0016】
また、各レーザ光源21,22,23は、それぞれコネクタ61、62、63を介して制御ユニット60に接続される。制御ユニット60は、各レーザ光源21,22,23に駆動電流を供給する電源ユニット60bを備え、コネクタ61、62、63が接続されることにより、各レーザ光源21,22,23に電流を供給してそれぞれの駆動を制御する。また、制御ユニット60は、コネクタ61、62、63を介して各レーザ光源に配置された温度センサ21c,22c,23cにより検知された温度検知の出力信号に基づいて、各レーザ光源が持つ素子が所定の温度となるように冷却装置21a,22a,23a等の駆動を制御する。温度センサ21c,22c,23cからの温度検知信号は、各レーザ光源の所定の動作確認信号として利用される。
【0017】
以上のような構成の装置において、3つのレーザ光源21,22,23を選択的に装置本体1の光学系ユニット10に搭載する場合の動作を中心に説明する。レーザ治療装置の製造段階において、眼科医院(医師)からの注文又は製造計画に従って3つのレーザ光源21,22,23が選択的に装置本体が搭載される。このとき、製造側で何れのレーザ光源が装置本体1(基台11)に搭載されているかを制御ユニット60に認識させる。
【0018】
図3は、レーザ光源21,22,23の何れが装置本体1に搭載されているかを設定するときに、コントロールパネル3に表示される設定画面の例である。この設定画面300は、装置の起動時にコントロールパネル3に表示される初期画面の動作モード選択メニューからカスタムモードが選択されることにより表示される。
【0019】
図3の画面300には、「GREEN」スイッチ301a、「RED」スイッチ301b、「YELLOW」スイッチ301cが設けられている。各スイッチ301a、301b、301cは、それぞれ緑色レーザ光源21、赤色レーザ光源22、黄色レーザ光源23に対応している。各スイッチが押され毎にそのスイッチのON/OFFが切り替えられる。装置本体1に搭載されたレーザ光源21,22,23を設定するときは、各スイッチ301a,301b,301cをON状態にする。各スイッチ301a,301b,301cをON状態にすると、そのスイッチの表示色が背景色に対して反転し、レーザ光源の選択状態が操作者に知らされる。製造側の操作者は、何れのレーザ光源が搭載されているかを承知しているので、的確に選択できる。各スイッチ301a,301b,301cで選択したレーザ光源21,22,23の搭載状態の設定信号は、制御ユニット60に入力され、その設定情報は制御ユニット60が持つメモリ60aに記憶される。レーザ光源の選択が完了した後、操作者がEXITスイッチ302を押すと、画面300は初期画面に切り替えられる。
【0020】
次に、レーザ治療装置の使用時の動作を説明する。装置本体1の電源が投入されると(装置の起動時)、制御ユニット60は各レーザ光源からの所定の動作チェックの確認信号に基づいて各レーザ光源の異常の有無を確認する初期動作チェックを行う。このとき、図3の設定画面300により設定されてメモリ60aに記憶されている各レーザ光源21,22,23の搭載情報に基づき、装置本体1に搭載されているレーザ光源についての所定の動作確認が行われる。例えば、レーザ光源21のみが搭載されている場合、制御ユニット60は、レーザ光源21に動作チェック用の微弱な電流を供給する。この電流供給によりレーザ光源21が駆動されると、温度センサ21c,21dからの温度検知信号の入力に基づき、レーザ光源21内の素子の温度が所定の温度に向かうように冷却装置21a,21bが制御ユニット60により駆動される。このとき、制御ユニット60は温度センサ21c,21dにより検知された温度が所定の温度に向かうように変化しているかを確認する。
【0021】
ここで、温度センサ21c,21dからの温度検知信号は、レーザ光源21の動作確認信号として利用される。制御ユニット60は、温度センサ21c,21dにより検知された温度に変動が無い場合には、レーザ光源21の駆動又は冷却装置21a,21bによる温度制御に異常があると判断し、その旨を警告するエラーメッセージをコントロールパネル3の表示画面に表示する。そして、レーザ光源からレーザ光が出力されないように安全シャッタ46を閉じて装置の動作を停止する。
【0022】
一方、制御ユニット60は、各レーザ光源21,22,23の搭載情報に基づき、装置本体1に搭載されていないレーザ光源22及び23についての上記のようなの初期動作確認に関する異常の有無の確認制御を停止する。ここで、制御ユニット60に各レーザ光源21,22,23の搭載情報を認識させていないとすると、実際に搭載されていないレーザ光源22及び23についても、上記のような動作チェックを一律に実施してしまうことになる。この場合、レーザ光源22及び23が搭載されていないので、無用なエラーの警告が発せられ、装置の動作が停止してしま不都合が生じる。これに対して、装置本体1に何れのレーザ光源が搭載されているかを制御ユニット60に事前に認識させているので、このような無用なトラブルを回避することができ、使用者(医師)は適切にレーザ装置を使用することが可能になる。
【0023】
装置の起動時における各レーザ光源21,22,23の初期動作確認は、温度センサ21c,21dの利用に限らず、他の手段でも良い。例えば、各レーザ光源21,22,23には、それぞれコネクタ61,62,63を介して電源ユニット60bから供給される電流の有無を検知する電流検知器21e,22e,23eを設けておく。上記と同じく、レーザ光源21のみが搭載されている場合、制御ユニット60は、レーザ光源21に動作チェック用の微弱な電流を供給する。このとき、電流検知器21eにより電流が供給されたことが検知されれば、その確認信号が制御ユニット60に入力される。電流検知器21eからの検知信号が無い場合には、制御ユニット60は、レーザ光源21に電力供給ライン等の異常があると判断し、その旨を警告するエラーメッセージをコントロールパネル3の表示画面に表示し、レーザ光源21からレーザ光が出力されないように安全シャッタ46を閉じて装置の動作を停止する。
【0024】
また、初期動作確認の他の手段としては、出力モニタ用の出力センサ32を利用することもできる。装置の起動時には、凝固シャッタ44、安全シャッタ46を閉じたまま、各レーザ光源の搭載情報に基づき、装置本体1に搭載されているレーザ光源のみを順次駆動してレーザ光をテスト出射させる。出力センサ32によりテスト出射用のレーザ出力が検知されない場合は、そのレーザ光源に異常があるとして、コントロールパネル3に警告が表示される。装置本体1に搭載されていないレーザ光源については、この初期動作確認による異常の有無の確認を停止する。これによっても、装置本体1に搭載されていないレーザ光源について、エラー警告が発せられてしまうといった無用なトラブルを回避することができる。
【0025】
次に、レーザ治療時の動作を説明する。図4(a)は、治療時にコントロールパネル3に表示されるレーザ照射条件の入力画面例である。図4(a)の例は、図3の画面300にて3つのレーザ光源21,22及び23が全て搭載されている設定がなされた場合である。この場合、入力画面310の下側に、治療に使用するレーザ光の波長を選択するための緑色レーザ選択スイッチ311a、赤色レーザ選択スイッチ311b及び黄色レーザ選択スイッチ311cが表示される。何れの色(波長)のレーザ光が選択されているかは、各スイッチ311a〜311cの表示色が変えられることにより、術者に知らされる。例えば、スイッチ301aにより緑色レーザ光が選択されると、そのスイッチ301aの色が反転される。また、入力画面310の上部の表示部312には、各スイッチ311a〜311cにより選択されたレーザ光の色(波長)が表示される。
【0026】
ここで、レーザ光の選択手段としての選択スイッチ311a,311b及び311cは、メモリ60aに記憶されたレーザ光源21,22,23の搭載状態の設定情報に基づき、制御ユニット60によりコントロールパネル3の表示が制御される。図4(a)においては、レーザ光源21,22,23が全て搭載されているので、それに対応した選択スイッチ311a,311b及び311cが表示されている。
【0027】
一方、図4(b)は、緑色のレーザ光源21のみが搭載されている場合である。この場合、緑色レーザ光源21に対応した選択スイッチ311aのみが表示され、スイッチ311b及び311cが表示されないように、コントロールパネル3の表示が制御される。図4(c)は、緑色レーザ光源21及び黄色レーザ光源23が搭載されている場合である。この場合、緑色レーザ光源21及び黄色レーザ光源23に対応するスイッチ311a及び311cが表示され、赤色レーザ光源22に対応するスイッチ311bは表示されないように、コントロールパネル3の表示が制御される。このように、レーザ光源21,22,23の搭載状態の設定情報に基づき、装置本体に搭載されていないレーザ光源についてはその選択ができないようにされるので、装置本体に搭載されていないレーザ光源の波長を使用者(医師)が誤って選択してしまうことが防止される。また、レーザ光源の搭載状態を承知していない使用者(医師)に対して、無用な混乱を与えてしまうことが防止される。
【0028】
図4(a)において、レーザ照射条件の入力画面310には、レーザ照射の可能/不可能の状態を入力するSTATUSスイッチ315と、エイミング光の明るさのレベルを入力するスイッチ316aと、エイミング光のレベルを表示する表示部316bと、レーザ光の照射数を入力するスイッチ317aと、レーザ光の照射数を表示する表示部317bと、1回のトリガ信号により照射されるレーザ光の照射時間を入力するスイッチ318aと、その表示部318bと、レーザ光の連続照射時にレーザ光の休止時間を入力するスイッチ319aと、その休止時間を表示する表示部319bと、レーザ光の出力を入力するスイッチ320aと、その表示部320bと、が設けられている。
【0029】
上記のような入力画面310により、例えば、緑色レーザ光が選択されると、制御ユニット60は、駆動ユニット41を駆動してミラー36を光軸L01上に配置する。可視光半導体レーザ34から出射されたエイミング光は、光ファイバ2を介してレーザ照射部5の光学系に導光され、患者眼Eの眼底に照射される。術者は患者眼Eの眼底を双眼の顕微鏡部4aにより観察し、エイミング光の照射スポットにより治療部位への照準合わせを行う。なお、患者眼に照射するレーザ光のスポットサイズは、レーザ照射部5に配置されたズームレンズ52を移動することにより、所望のサイズに調整できる。エイミング光による治療部位への照準合わせが完了した後、術者に操作されるフットスイッチ7からトリガ信号が入力されると、制御ユニット60は光軸L01上に配置された凝固シャッタ44を開き、治療レーザ光の導光を可能にする。レーザ光源21から出射された緑色のレーザ光は、ミラー36により反射され、ビームスプリッタ31、ダイクロイックミラー33を通過し、集光レンズ35により光ファイバ2に入射される。光ファイバ2を出射したレーザ光は、レーザ照射部5の光学系を経た後、エイミング光により照準が合わせられた治療部位に照射される。
【0030】
また、黄色レーザ光が選択された場合、制御ユニット60は、ミラー36を光軸L01上から脱出させた後、駆動ユニット42を駆動してミラー38を光軸L01上に配置する。これにより、レーザ光源23から出射した黄色レーザ光が光ファイバ2に入射され、治療部位に導光される。また、赤色レーザ光が選択された場合、制御ユニット60は、ミラー36及び38を光軸L01から共に脱出させる。これにより、レーザ光源22から出射した赤色レーザ光が光ファイバ2に入射され、治療部位に導光される。
【0031】
上記のように、レーザ光源21,22,23の内、眼科医院(医師)が希望する波長のレーザ光源を選択して装置本体1に搭載でき、使用時も無用なトラブルを防止できる。例えば、医師が緑色レーザのみを希望する場合には、レーザ光源21のみを装置本体1に搭載したレーザ治療装置が提供される。その後、医師が黄色レーザ光を必要とした場合には、初めに緑色レーザを発するレーザ光源21が搭載された装置本体1に黄色レーザを発するレーザ光源23を追加して提供することができ、購入側の医師も経済的に有利となる。
【0032】
レーザ光源を追加した場合、製造側では図3の設定画面300を使用して、メモリ60aに記憶されているレーザ光源の搭載情報を更新し、再び何れのレーザ光源が装置本体1に搭載されているかを制御ユニット60に認識させる。これにより、レーザ光源を追加した場合も、前述したように初期動作チェックが適切に行われるので、使用時の無用なトラブルを回避できる。また、装置本体1に搭載されたレーザ光源のみ選択可能とされるので、医師は混乱することなく、所望する波長のレーザ光を使用した治療を適切に行える。
【0033】
次に、装置本体1に搭載可能なレーザ光源の内、何れのレーザ光源が搭載されているかを設定する設定信号を入力する構成の変容例を説明する。先の例では、コントロールパネル3に図3の設定画面300を表示させて、操作者がレーザ光源の搭載情報の設定信号を入力するものとしたが、以下では何れのレーザ光源が装置本体1に搭載されているかを自動的に検知する例を説明する。
【0034】
図5(a)は、各レーザ光源21,22,23と制御ユニット60を接続するコネクタ61,62,63の配線を利用した検知方法を説明する図である。図5(a)において、レーザ光源21と制御ユニット60とを接続するコネクタ61の主要配線として、電源ユニットからの電流を供給する電流線61a、冷却装置21a(21b)に接続される温度コントロール用配線61b、温度センサ21c(21d)に接続される温度モニター用配線61cが設けられている。この配線に加えて、レーザ光源21の搭載状態を制御ユニット60に検知させるためのレーザ認識用配線61dが設けられている。コネクタ61を制御ユニット60に接続すると、レーザ認識用配線61dが制御ユニット60に接続される。装置本体1が起動されると、レーザ認識用配線61dが接続されている場合には「Low」レベルの信号、接続されていない場合には「High」レベルの信号が制御ユニット60へ入力される。これにより、制御ユニット60はレーザ光源21の有無を検知する。同様に、レーザ光源22のコネクタ62及びレーザ光源23のコネクタ63にもレーザ認識用配線が設けられており、それぞれのレーザ認識用配線の接続されているか否かにより、制御ユニット60はレーザ光源21、23の有無を検知する。そして、これらの検知に基づいて何れのレーザ光源が装置本体1に搭載されているかを設定する設定信号を自動的に入力し、そのレーザ光源の搭載情報をメモリ61aに記憶する。
【0035】
また、レーザ認識用配線61dを設けずに電流線61aを用いてレーザ光源の搭載情報を制御ユニット60が設定することもできる。図5(b)は電流線61aを用いて、レーザ光源21〜23からのコネクタ61,62,63の接続の有無を認識させる方法である。この場合には各レーザ光源21〜23と制御ユニット60との間には電流を検出するための電流検出部70a、70b、70cを設ける。装置を起動すると、装置本体1に搭載された各レーザ光源に一定量の電流を流すように制御ユニット60が動作する。各電流検出部70a,70b,70cに電流が流れた場合には、その検知信号が制御ユニット60に送信され、電流が流れない場合には検知信号は送信されない。これにより、制御ユニット60は各レーザ光源21,22,23の搭載状態を設定する。
【0036】
さらに、各レーザ光源の有無を物理的に検知する各種のセンサを設けることによって各レーザ光源の搭載状態を制御ユニット60に認識させることができる。図6において、基台11には各レーザ光源21,22.23が取り付けられる所定のスペース15,16,17が決められている。各スペース15,16,17にはそれぞれマイクロスイッチ72a,72b,72cが設けられている。各スペース15,16,17にレーザ光源21,22,23が置かれると、マイクロスイッチ72a,72b,72cのスイッチ信号がONとなり、レーザ光源21,22,23の有無が検知される。その検知信号は制御ユニット60に送られる。制御ユニット60は、各マイクロスイッチ72a,72b,72cからの検知信号に基づき、各レーザ光源の搭載状態を認識する(設定する)。
【0037】
また、マイクロスイッチ以外にも、光を用いて検知するフォトインタラプタ等の反射型センサを用いることもできる。反射型センサは各レーザ光源の側面付近など、その搭載状態を十分に検知できる位置に設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】レーザ治療装置の外観構成の概略図である。
【図2】光学系及び制御系の概略構成図である。
【図3】コントロールパネルに表示される設定画面の例である。
【図4】レーザ照射条件の入力画面の例である。
【図5】コネクタ配線及び電流線を用いてレーザ光源を認識する方法を説明する図である。
【図6】各種センサを用いてレーザ光源を認識する方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1 装置本体
3 コントロールパネル
21、22、23 レーザ光源
21c、21d、22c、23c、23d 温度センサ
30 導光光学系
32 出力センサ
60 制御ユニット
61a 電流線
61d レーザ認識用配線
70a、70b、70c 電流検出部
72a、72b、72c マイクロスイッチ
300 設定画面
310 入力画面
311a 緑色レーザ選択スイッチ
311b 赤色レーザ選択スイッチ
311c 黄色レーザ選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者眼にレーザ光を導光して治療するレーザ治療装置において、
異なる波長の治療レーザ光をそれぞれ出射するレーザ光源が個別に搭載可能にされた装置本体と、
該装置本体に搭載された各レーザ光源からのレーザ光を患者眼に導光する導光光学系と、
前記装置本体に何れのレーザ光源が搭載されているかの搭載情報を設定する設定信号を入力する設定手段であって、前記設定信号を入力するスイッチを持つか、又は前記装置本体に搭載されているレーザ光源の有無を検知して前記設定信号を入力する検知手段を持つ設定手段と、
装置の起動時に各レーザ光源の所定の動作確認信号に基づいてレーザ光源の異常の有無を確認し、異常がある場合にはその旨を警告する動作確認制御手段であって、前記設定手段により設定されたレーザ光源の搭載情報に基づいて装置本体に搭載されていないレーザ光源に対する異常の有無の確認を停止する動作確認制御手段と、
を備えることを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1のレーザ治療装置は、さらに前記導光光学系により患者眼に導光するレーザ光のレーザ光源を選択する信号を入力する選択手段と、前記設定手段により設定されたレーザ光源の搭載情報に基づいて装置本体に搭載されたレーザ光源についてのみ前記選択手段からの選択信号の入力を可能にする選択制御手段と、
を備えることを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項3】
請求項2のレーザ治療装置において、前記選択手段は選択可能なレーザ光源の情報を表示する表示手段を含み、前記選択制御手段は、レーザ光源の搭載情報に基づいて前記表示手段に表示させる選択可能なレーザ光源の情報を制御することを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項4】
請求項1のレーザ治療装置において、前記動作確認信号は、各レーザ光源に配置された温度センサからの温度検知信号、各レーザ光源に供給される電流の有無を検知する電流検知器からの信号、あるいはレーザ光の出力をモニタする出力センサからの信号を利用することを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項5】
請求項1のレーザ治療装置において、前記設定手段が持つ検知手段は、各レーザ光源に駆動電流を供給するコネクタの接続の有無を検知する手段、あるいは各レーザ光源が装置内部の基台上の所定位置に設置されているか否かを検知するマイクロスイッチ又はセンサであることを特徴とするレーザ治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−233033(P2009−233033A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81694(P2008−81694)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】