説明

レーザ熱転写装置

【課題】 レーザ熱転写工程装置を不活性気体の常圧雰囲気に造成することで、有機電界発光表示装置の寿命及び発光効率特性を向上させるレーザ熱転写装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るレーザ熱転写装置は、基板が位置するステージ400と、ドナー基板の移送装置300a、300b、300cと、前記基板と前記ドナー基板を結着させるラミネータ500と、レーザ熱転写のためのレーザ光学部600とを備え、前記ステージ、前記ラミネータ及び前記レーザ光学部は、不活性気体の常圧雰囲気を提供するチャンバ10内に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ熱転写装置に関し、より詳細には、有機電界発光表示装置の製造に用いることができるレーザ熱転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットディスプレイの開発が益々進んでいる。とりわけ、有機電界発光表示装置は、応答速度が1ms(ミリ秒)以下と高速の応答速度を有することや、消費電力が低いことや、自発光デバイスであるため視野角が制限される問題がないことなどの利点がある。このため、表示装置のサイズに関わらず、動画像表示媒体として有利である。また、低温製作が可能であると共に、既存の半導体製造技術を土台にして製造工程が簡単であるため、今後次世代のフラットディスプレイとして注目されている。
【0003】
ところで、有機電界発光表示装置の製造方法は、発光層に使用する有機材料や製造工程によって、大きく、湿式工程を使用する高分子型素子と、蒸着工程を使用する低分子型素子とに分けられる。
【0004】
高分子の有機材料でなる発光層や、低分子の有機材料でなる発光層のパターニング方法として、インクジェットプリント方法がある。この場合、発光層以外の有機層の材料が制限されるという問題点があり、基板上にインクジェットプリントのための構造を形成しなければならないという煩雑さがある。また、蒸着工程により発光層をパターニングの場合、金属マスクの使用に起因して大型の表示素子(表示装置)の製作に適さないという問題がある。
【0005】
そこで、前述のようなパターニングの方法に代替できる技術として、レーザ熱転写法(LITI:Laser Induced Thermal Imaging)が最近開発されている。
【0006】
このレーザ熱転写法とは、光源から出るレーザを熱エネルギーに変換し、この熱エネルギーにより、パターン形成物質(転写層)を対象基板に転写させて、パターンを形成する方法である。この方法では、転写層が形成されたドナー基板と、光源、及び被写体としての被転写基板が必要である。このレーザ熱転写法は、ドナーフィルム(ドナー基板)が、アクセプタとしての被転写基板を覆った状態(対向面が接合された状態)で、ドナーフィルム及び被転写基板をステージ上に配置、固定させた状態で転写させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、前述の転写層は有機材料でなり、酸素や水蒸気に対して非常に敏感な特性を持つ。すなわち、酸素や水蒸気にこの転写層が晒されると、転写層が劣化しやすく寿命が低下したり、この転写層が発光層を含む場合、発光効率及び発光寿命が低下する問題を有する。したがって、この転写層を有機電界発光表示装置の発光層に用いた場合、有機電界発光表示装置の寿命及び発光効率特性に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、レーザ熱転写工程装置を不活性気体の常圧雰囲気に造成することで、有機電界発光表示装置の寿命及び発光効率特性を向上させるレーザ熱転写装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、1つの装置によりラミネーション及びR、G、B転写層の転写を共に行うことができるレーザ熱転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、被転写基板を配置するステージと、表面に転写層が形成されたドナー基板を移送する移送装置と、被転写基板及びドナー基板を結着させるラミネータと、レーザ熱転写のためのレーザ光学部と、を備え、ステージ、ラミネータ及びレーザ光学部が、不活性気体の常圧雰囲気のチャンバ内に位置することを要旨とする。なお、不活性気体の常圧雰囲気は、水蒸気濃度が10ppm以下であることが好ましい。また、不活性気体の常圧雰囲気は、酸素濃度が10ppm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の特徴は、被転写基板が配置され、一定の方向に移動可能なステージと、被転写基板に転写する転写層を有するドナー基板を移送可能で、ドナー基板の前記転写層の色相に応じて用意され、一定の方向と異なる方向からステージに向かってドナー基板を移送可能な複数の移送装置と、被転写基板とドナー基板を結着させるラミネータと、転写層を被転写基板側へレーザ熱転写するためのレーザ光学部と、を備ることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るレーザ熱転写装置は、不活性気体の雰囲気で酸素及び水蒸気の分圧を調節して、転写工程を行うことによって、被転写基板側及び転写される転写層を外部空気から保護することができ、これにより、本発明のレーザ熱転写装置で製造される、例えば有機電界発光表示装置などの寿命特性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザ熱転写装置の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚みやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
図1(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係るレーザ熱転写装置を示している。図1(A)はレーザ熱転写装置の概略を示す平面図、図1(B)は図1(A)のI−I断面図である。
【0015】
図1(A)に示すように、チャンバ10内に被転写基板としてのアクセプタ基板200を配置するステージ400が設けられている。このチャンバ10には、図1(A)に示すように、ステージ400上に配置されたアクセプタ基板200上に後述するドナー基板100を移動させる移送装置300a、300b、300cが設けられている。アクセプタ基板200は、チャンバ10に連結された基板ローディング用装置20から供給されるようになっている。また、前記ドナー基板の移送装置300a、300b、300cは、R、G、Bの発光層の色相に応じてそれぞれの転写層を形成する蒸着器30a、30b、30cに連結され、前記ドナー基板を前記チャンバ10内に供給する。
【0016】
図1(B)に示すように、チャンバ10内には、前記基板200と前記レーザ熱転写用ドナー基板100を結着させるラミネータ500と、レーザ熱転写のためのレーザ光学部600とが位置する。前記ラミネータ500は、気体加圧、クラウンプレス、またはローラなどの加圧手段を使用することができる。
【0017】
前記ステージ400、前記ラミネータ500及び前記レーザ光学部600が位置するチャンバ10は、不活性気体の常圧雰囲気を提供する。
【0018】
前記不活性気体の常圧雰囲気は、10ppm以下の水蒸気濃度を含むことができる。また、前記不活性気体の常圧雰囲気は、10ppm以下の酸素濃度を含むことができる。
【0019】
したがって、前記不活性気体の雰囲気で酸素及び水蒸気の分圧を調節することによって、外部気体の流入を遮断するようになる。また、前記チャンバ内の気体雰囲気を維持することによって、転写層を保護して、パターニング過程中に前記基板上の画素電極及び有機層を保護することができ、これにより、発光層を含む有機層の寿命が改善されることができる。
【0020】
さらに図1(A)及び(B)を参照すれば、前記基板が移送される前記ステージ400と、前記ドナー基板の移送装置300とは、互いに直交する方向に移動する。
【0021】
前記ドナー基板は、転写層140が発光層であってもよい。
【0022】
前記発光層の色相に応じて、前記ドナー基板の移送装置が互いに区別されて位置する。
【0023】
また、前記ドナー基板の移送装置は、前記チャンバ10の外部に連結された蒸着器30a、30b、30cで各々移動する。前記蒸着器は、発光層のR、G、B色相に応じて区別されて位置することができる。
【0024】
図1(B)を参照して説明すれば、前記チャンバ10内のステージ400上に前記基板200がx方向に移動する。図1(A)の前記蒸着器30aで発光層140aが蒸着されたドナー基板100aが移送装置300aによりローディングされ、前記ドナー基板100aは、前記基板200上に移動する。前記基板200と前記ドナー基板100aは、前記ステージ400上でラミネーションされ、レーザ熱転写を経た後、x方向に移動する。そして、他の色相の発光層が形成された蒸着器30bで発光層140bが形成されたドナー基板100bが前記基板200に移動するようになり、前述のような過程を繰り返して、R、G、B発光層をパターニングする。
【0025】
図2及び図3は、前述の装置を利用した有機電界発光表示装置の製造過程の単位画素に対する断面図である。
【0026】
図2は、ドナー基板を示す断面図であって、図1(B)のドナー基板100を詳細に示すものである。
【0027】
図面を参照すれば、ドナー基板100は、ベース基板110上に多数の層が形成された構造であって、ベース基板110と、前記ベース基板110上に位置した光熱変換層120と、前記光熱変換層上に位置した転写層140とを備える。
【0028】
前記ベース基板110は、フレーミングされたものであってもよく、柔軟性ある材質または堅固な材質を有することができる。前記ベース基板110は、薄すぎれば、ハンドリングすることが難しくて、また、厚すぎれば、重くてドナー基板の移送に問題が発生し得るので、前記ベース基板110の厚さは、20乃至200μmであることが好ましい。
【0029】
前記ベース基板上に光熱変換層120を形成し、前記光熱変換層120上には、転写層140を形成する。
【0030】
前記光熱変換層120は、前記レーザ照射装置で照射されたレーザを熱エネルギーに変換させる役目をし、前記熱エネルギーは、前記転写層140と前記光熱変換層120間の接着力を変化させることによって、前記転写層をレセプターである下部基板上に転写する役目をする。
【0031】
転写物質の損傷を防止し、前記転写層140と前記ドナー基板の接着力を效果的に調節するために、前記光熱変換層120と前記転写層140との間にバッファ層130を介在することができる。
【0032】
前記転写層140は、有機電界発光素子の発光層であってもよい。また、前記転写層140は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔抑制層及び電子注入層よりなる群から選ばれた1つの層をさらに含むことができる。
【0033】
また、前記転写層140は、低分子有機膜であってもよい。
【0034】
図3は、レーザ転写工程を示す単位画素に対する断面図であって、図1(B)の転写過程を示すものである。
【0035】
図面を参照すれば、前記図1(A)及び図1(B)のステージ400上に位置する基板200とドナー基板100上の、パターニングしようとする領域にレーザ600aを照射する。
【0036】
詳細に説明すれば、前記基板210上には、ゲート電極250、ソース電極270a、及びドレイン電極270bを含む薄膜トランジスタEが位置し、また、前記薄膜トランジスタEに連結され、画素電極層290及び前記画素電極層290を露出する画素定義膜295が位置する。
【0037】
前記ドナー基板100と基板200をラミネーションする。前記ラミネーションにより、前記ドナー基板100と前記基板200が固定され、ラミネーションのための加圧の工程を経ることによって、前記ドナー基板100と基板200間のバブルを除去することができる。
【0038】
前記ラミネーション後、前記図1(B)のレーザ光学部600で発生したレーザ600aを、パターニングしようとする領域に照射する。
【0039】
レーザ600aの照射後、前記レーザ600aが照射された領域は、前記互いに密着された前記転写層145と前記画素電極290間の接着力が、前記バッファ層130と前記転写層140間の接着力に比べて大きくなり、前記レーザが照射された領域の転写層145は、前記バッファ層130から剥離され、前記画素電極290上には、転写層145がパターニングされる。前記パターニングされた転写層145は、単位画素の形態によってストライプ型やデルタ型でパターニングされることができる。
【0040】
上記の過程は、不活性気体の雰囲気で酸素及び水蒸気の分圧が調節された環境で行われる。したがって、前記不活性気体の雰囲気で酸素及び水蒸気の分圧を調節することによって、パターニング過程中に前記基板上の画素電極及び有機層を保護することができ、これにより、発光層を含む有機層の寿命が改善されることができる。
【0041】
前記パターニング過程を経た後、前記ドナーフィルム100を前記基板200から除去する。
【0042】
そして、チャンバからアンローディングし、ステージを移した後、前記パターニングされた有機膜上に対向電極を形成し、封止した後、有機電界発光表示装置を完成する。
【0043】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施例及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の実施例に係るレーザ熱転写装置を示す断面図である。
【図2】図1(B)に示したドナー基板を示す断面図である。
【図3】図1(B)の転写過程を示す単位画素に対する断面図である。
【符号の説明】
【0045】
100 ドナー基板
200 アクセプタ基板(被転写基板)
300 ドナー基板移送装置
400 ステージ
30a,30b,30c 転写層蒸着器
500 ラミネーション加圧手段
600 レーザ光学部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写基板を配置するステージと、
表面に転写層が形成されたドナー基板を移送する移送装置と、
前記被転写基板及び前記ドナー基板を結着させるラミネータと、
レーザ熱転写のためのレーザ光学部と、を備え、
前記ステージ、前記ラミネータ及び前記レーザ光学部は、不活性気体の常圧雰囲気のチャンバ内に位置することを特徴とするレーザ熱転写装置。
【請求項2】
前記不活性気体の常圧雰囲気は、水蒸気濃度が10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項3】
前記不活性気体の常圧雰囲気は、酸素濃度が10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項4】
前記ステージと、前記移送装置とは、互いに異なる方向に移動することを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項5】
前記転写層は、低分子有機材料層を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項6】
前記転写層は、電界発光素子の発光層となることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項7】
前記転写層の色相に応じて前記ドナー基板の移送装置が互いに区別されて位置することを特徴とする請求項6に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項8】
前記移送装置は、蒸着器へ移動可能であることを特徴とする請求項7に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項9】
前記蒸着器は、前記転写層のR、G、B色相に応じて区別されて複数が配置されていることを特徴とする請求項8に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項10】
前記ラミネータは、気体加圧、クラウンプレス、ローラから選ばれる加圧手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項11】
被転写基板が配置され、一定の方向に移動可能なステージと、
前記被転写基板に転写する転写層を有するドナー基板を移送可能で、前記ドナー基板の前記転写層の色相に応じて用意され、前記一定の方向と異なる方向から前記ステージに向かってドナー基板を移送可能な複数の移送装置と、
前記被転写基板と前記ドナー基板を結着させるラミネータと、
前記転写層を前記被転写基板側へレーザ熱転写するためのレーザ光学部と、
を備ることを特徴とするレーザ熱転写装置。
【請求項12】
前記ステージ、前記移送装置、前記ラミネータ及び前記レーザ光学部は、不活性気体の常圧雰囲気のチャンバ内に配置されていることを特徴とする請求項11に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項13】
前記不活性気体の常圧雰囲気は、水蒸気濃度が10ppm以下であることを特徴とする請求項12に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項14】
前記不活性気体の常圧雰囲気は、酸素濃度が10ppm以下であることを特徴とする請求項12に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項15】
前記移送装置は、前記ステージの側方から前記ステージに向けて移動可能であることを特徴とする請求項11に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項16】
前記移送装置は、複数の蒸着器のそれぞれに対応して移動する複数が用意されていることを特徴とする請求項11に記載のレーザ熱転写装置。
【請求項17】
前記蒸着器は、前記転写層のR、G、B色相に応じてそれぞれ用意されていることを特徴とする請求項16に記載のレーザ熱転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−66861(P2006−66861A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378091(P2004−378091)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】