説明

レーザ装置、露光装置及び検査装置

【課題】出力光のパワー制御を安定的に行うことができるレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ装置は、波長が紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部Iと、波長が可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部II,IIIと、UV光出力部Iから出力されたUVレーザ光とVIR光出力部から出力されたVIRレーザ光とから、波長変換により波長がUVレーザ光よりも短いDUVレーザ光を発生して出力するDUV光変換部IVと、UV光出力部及びVIR光出力部の作動を制御する制御部8とを備える。制御部8は、DUVレーザ光のパワーを変化させるときに、UVレーザ光のパワーを略一定とし、VIRレーザ光のパワーを変化させる制御を行うように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部と、可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、UVレーザ光及びVIRレーザ光から波長変換によりUVレーザ光よりも短波長のDUVレーザ光を発生するDUV光変換部と、UV光出力部及びVIR光出力部の作動を制御する制御部とを備えて構成されるレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレーザ装置は、顕微鏡や形状測定装置、各種の検査装置、露光装置などに好適な光源として知られている(特許文献1、特許文献2を参照)。特許文献1に記載されたレーザ装置LS9の概要構成を図7に示す。
【0003】
レーザ装置LS9は、紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部Iと、可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、UVレーザ光及びVIRレーザ光から波長変換によりDUVレーザ光を発生するDUV光変換部IVと、UV光出力部及びVIR光出力部を含む各部の作動を制御する制御部908とを備えて構成される。VIR光出力部は、可視〜赤外領域の第1VIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部IIと、可視〜赤外領域の第2VIRレーザ光を出力する第2VIR光出力部IIIとから構成される。
【0004】
本構成例において、UV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIには共通の光源からシード光が供給される。すなわち、シード光発生部910から出射されたシード光は3分割されてUV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIにそれぞれ入射する。シード光発生部910から出射されるシード光は、可視〜赤外領域の所定波長を有するレーザ光であり、例えば波長1544nmの赤外レーザ光である。シード光は、基本波を有するレーザ光である。
【0005】
UV光出力部Iは、シード光を増幅するファイバ光増幅器921、波長変換光学素子931,932,933などを備えて構成される。なお、図7において各光路上に楕円形で示すものは、各波長変換光学素子にレーザ光を集光入射させるためのレンズである。シード光発生部910から出射されたシード光はファイバ光増幅器921により増幅され、増幅されたシード光すなわち基本波レーザ光が波長変換光学素子931に集光入射する。
【0006】
波長変換光学素子931では基本波の第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)が行われる。すなわち、波長が基本波の1/2、周波数が2倍の第2高調波が発生する。波長変換光学素子931で発生した第2高調波と波長変換光学素子931を透過した基本波は、波長変換光学素子932に集光入射する。波長変換光学素子932では基本波と第2高調波の和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)が行われる。すなわち、波長が基本波の1/3、周波数が3倍の第3高調波が発生する。
【0007】
波長変換光学素子932で発生した第3高調波と、波長変換光学素子932を透過した第2高調波は、波長変換光学素子933に集光入射する。波長変換光学素子933では第2高調波と第3高調波の和周波発生が行われる。すなわち、波長が基本波の1/5、周波数が5倍の第5高調波が発生する。波長変換光学素子933で発生した第5高調波は、波長が309nmであり紫外領域のUVレーザ光である。波長変換光学素子933で発生した第5高調波であるUVレーザ光はUV光出力部Iから出射され、ダイクロイックミラー941に入射する。
【0008】
第1VIR光出力部IIは、シード光を増幅するファイバ光増幅器922及び波長変換光学素子934を備えて構成される。シード光発生部910から出射されたシード光はファイバ光増幅器922により増幅される。増幅されたシード光すなわち基本波レーザ光は波長変換光学素子934に集光入射する。波長変換光学素子934では、第2高調波発生が行われ、基本波に対して、波長が1/2、周波数が2倍の第2高調波が発生する。波長変換光学素子934で発生した第2高調波は、波長が772nmであり可視領域の第1VIRレーザ光である。波長変換光学素子934で発生した第2高調波である第1VIRレーザ光は第1VIR光出力部IIから出射され、ダイクロイックミラー942に入射する。
【0009】
第2VIR光出力部IIIは、シード光を増幅するファイバ光増幅器923を備える。第2VIR光出力部IIIには波長変換光学素子は設けられない。シード光発生部910から出射されたシード光はファイバ光増幅器923により増幅される。増幅されたシード光すなわち基本波レーザ光は、第2VIRレーザ光として第2VIR光出力部IIIから出射される。第2VIRレーザ光の波長は1544nmであり、赤外領域のレーザ光である。第2VIR光出力部IIIから出射された第2VIRレーザ光はダイクロイックミラー942に入射する。
【0010】
ダイクロイックミラー942は、基本波の波長帯域の光を透過し第2高調波の波長帯域の光を反射するように構成される。また、ダイクロイックミラー941は、基本波及び第2高調波の波長帯域の光を透過し第5高調波の波長帯域の光を反射するように構成される。そのため、第1VIR光出力部IIから出射された第2高調波である第1VIRレーザ光と、第2VIR光出力部IIIから出射された基本波である第2VIRレーザ光は、ダイクロイックミラー942により同軸上に重ね合わされ、さらにUV光出力部Iから出射された第5高調波であるUVレーザ光がダイクロイックミラー941により同軸上に重ね合わされて、これら3つの異なる波長のレーザ光がDUV光変換部IVに入射する。
【0011】
DUV光変換部IVには、波長変換光学素子935,936が設けられている。波長変換光学素子935では、UV光出力部Iから出射された第5高調波であるUVレーザ光と、第1VIR光出力部IIから出射された第2高調波である第1VIRレーザ光との和周波発生が行われる。すなわち、波長が基本波の1/7、周波数が7倍の第7高調波である第1DUVレーザ光が発生する。第2VIR光出力部IIIから出射された基本波である第2VIRレーザ光は波長変換光学素子935を透過し、波長変換光学素子935で発生した第1DUVレーザ光とともに波長変換光学素子936に入射する。波長変換光学素子936では、基本波である第2VIRレーザ光と第7高調波である第1DUVレーザ光との和周波発生が行われる。すなわち、波長が基本波の1/8、周波数が8倍の第8高調波である第2DUVレーザ光が発生する。
【0012】
波長変換光学素子935で発生した第1DUVレーザ光、及び波長変換光学素子936で発生した第2DUVレーザ光は、各々波長が221nm,193nmであり、ともにUV光出力部Iから出射されたUVレーザ光よりも波長が短い紫外領域のレーザ光である。波長変換光学素子936で発生した第2DUVレーザ光がレーザ装置LS9から出力される。
【0013】
このようなレーザ装置にあって、レーザ装置LS9から出力する第2DUVレーザ光のパワーを変化させる場合に、従来では、目標とするパワーに応じて、UV光出力部Iから出射されるUVレーザ光のパワー、第1VIR光出力部IIから出射される第1VIRレーザ光のパワー、及び第2VIR光出力部IIIから出射される第2VIRレーザ光のパワーを、制御部908がそれぞれ変化させる制御を行うように構成されていた。
【0014】
例えば、目標とする第2DUVレーザ光のパワーが高い場合と低い場合のそれぞれの場合に必要なUVレーザ光、第1VIRレーザ光、及び第2VIRレーザ光のそれぞれのパワーを予め計測しておく。制御部908は目標とする第2DUVレーザ光のパワーに応じて、UVレーザ光、第1VIRレーザ光、及び第2VIRレーザ光がそれぞれ適切なパワーで出射されるように、UV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIの作動を制御する。具体的には、制御部908は、UV光出力部Iに設けられたファイバ光増幅器921の励起光強度、第1VIR光出力部IIに設けられたファイバ光増幅器922の励起光強度、及び第2VIR光出力部IIIに設けられたファイバ光増幅器923の励起光強度の各々が、目標とする第2DUVレーザ光のパワーに応じた励起光強度となるように制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−3771号公報
【特許文献2】特開2004−86193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、目標とする第2DUVレーザ光のパワーに応じて、ファイバ光増幅器921,922,923のファイバ光増幅器を励起するための各々の励起光強度を変化させる場合、制御部の構成が複雑化する。一方、レーザ装置LS9の出力光である第2DUVレーザ光のパワーを変化させる場合に、そのパワーの変化を実現するためのファイバ光増幅器921の励起光強度の変化量、ファイバ光増幅器922の励起光強度の変化量、及びファイバ光増幅器923の励起光強度の変化量の組み合わせは複数存在する。
【0017】
例えば、第2DUVレーザ光のパワーを200mWから400mWに変化させるためには、ファイバ光増幅器922及び923の励起光強度の変化率はそれぞれ+100%であるのに対して、ファイバ光増幅器921の励起光強度の変化率は+40%である。すなわち、出力光である第2DUVレーザ光のパワーを変化させるには、ファイバ光増幅器921の励起光強度を変化させるのが最も効率がよい。そこで、第2DUVレーザ光のパワーを100〜400mWの範囲で変化させようとする場合に、ファイバ光増幅器922及び923の励起光強度は、第2DUVレーザ光のパワーを400mWとする場合と同様の値に設定しておき、ファイバ光増幅器921の励起光強度のみを変化させるようにすれば、第2DUVレーザ光のパワーを効率よく制御することができる。
【0018】
上記観点に基づいて、発明者らは、紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部Iと、可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部II及び第2VIR光出力部IIIと、UVレーザ光及びVIRレーザ光から、波長変換によりUVレーザ光よりも短波長のDUVレーザ光を発生するDUV光変換部と、UV光出力部及びVIR光出力部の作動を制御する制御部とを備え、制御部が、DUV光変換部から出力するDUVレーザ光のパワーを変化させるときに、VIR光出力部から出力するVIRレーザ光のパワーを略一定とし、UV光出力部から出力するUVレーザ光のパワーを変化させる制御を行うレーザ装置を考案した。
【0019】
ところが、既述した従来のレーザ装置、及び発明者らが考案したレーザ装置では、DUVレーザ光の安定性を高く保持することが難しいことが分かってきた。UV光出力部から出射されるUVレーザ光は波長が紫外領域の光である。紫外光を伝播する光学素子は、紫外光の吸収による発熱等に起因した問題が発生しやすい。例えば、既述したレーザ装置において、UV光出力部の波長変換光学素子933から出射される第5高調波であるUVレーザ光は、波長が309nmで深紫外領域に近く、波長変換光学素子933において吸収による発熱の問題が発生しやすい。波長変換光学素子933の結晶内部で発熱があると位相不整合が生じ、波長変換効率の低下やビームポインティングの変動が発生する。
【0020】
波長変換光学素子933から出射されるUVレーザ光のビームポインティングが変動すると、波長変換光学素子935において、第5高調波であるUVレーザ光と第2高調波である第1VIRレーザ光の重ね合わせ状態が悪化し、第1DUVレーザ光への波長変換効率や安定性が低下する。結果として、レーザ装置の出力光である第2DUVレーザ光の波長変換効率やパワーの安定性が低下することになる。波長変換光学素子933から出射された第5高調波を波長変換光学素子935に導くレンズやミラー等についても同様の問題を生じる。
【0021】
そのため、レーザ装置の出力光である第2DUVレーザ光のパワーを変化させる際にUVレーザ光のパワーを変化させる手法では、UVレーザ光のパワー変化によって各部で吸収による発熱の変化、及びこれに伴う波長変換効率の低下やビームポインティングの変動が発生し、安定的に出力光である第2DUVレーザ光のパワー制御を行うことが難しい、という課題が把握された。
【0022】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、レーザ装置の出力光であるDUVレーザ光のパワー制御を安定的に行うことができるレーザ装置を提供することを目的とする。併せて、安定したパワー制御により安定性を向上した露光装置、検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明を例示する第1の態様はレーザ装置である。レーザ装置は、波長が紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部と、波長が可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、UV光出力部から出力されたUVレーザ光とVIR光出力部から出力されたVIRレーザ光とから、波長変換により波長がUVレーザ光よりも短いDUVレーザ光を発生して出力するDUV光変換部と、UV光出力部及びVIR光出力部の作動を制御する制御部とを備える。そして、このレーザ装置の制御部は、DUV光変換部から出力するDUVレーザ光のパワーを変化させるときに、UV光出力部から出力するUVレーザ光のパワーを略一定とし、VIR光出力部から出力するVIRレーザ光のパワーを変化させる制御を行うように構成される。
【0024】
なお、前記VIR光出力部は、波長が可視〜赤外領域の第1VIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部と、波長が可視〜赤外領域の第2VIRレーザ光を出力する第2VIR光出力部とを有し、前記DUV光変換部は、UV光出力部から出力されたUVレーザ光と第1VIR光出力部から出力された第1VIRレーザ光との和周波発生により第1DUVレーザ光を発生する第1波長変換光学素子(例えば、第1構成形態における波長変換光学素子35、第2構成形態における波長変換光学素子135)と、第1波長変換光学素子から出力された第1DUVレーザ光と第2VIR光出力部から出力された第2VIRレーザ光との和周波発生により第2DUVレーザ光を発生する第2波長変換光学素子(例えば、第1構成形態における波長変換光学素子36、第2構成形態における波長変換光学素子136)とを有し、前記制御部は、DUV光変換部から出力する第2DUVレーザ光のパワーを変化させるときに、UV光出力部から出力するUVレーザ光のパワーを略一定とし、第1VIR光出力部から出力する第1VIRレーザ光及び第2VIR光出力部から出力する第2VIRレーザ光の少なくとも一方のパワーを変化させる制御を行うように構成することができる。
【0025】
また、前記UV光出力部及びVIR光出力部に各々可視〜赤外領域のレーザ光を増幅するファイバ光増幅器を有し、前記UV光出力部に、可視〜赤外領域のレーザ光を紫外領域のUVレーザ光に変換する波長変換光学素子を有し、前記制御部は、UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器、及びVIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器の作動を制御することにより、UVレーザ光のパワーを略一定とし、かつ、VIRレーザ光のパワーを変化させるように構成することができる。
【0026】
この場合において、前記UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器及び前記VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器は、ともに所定波長の基本波のレーザ光を増幅する増幅器であり、UV光出力部は、当該UV光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波から、その第5高調波であるUVレーザ光を発生して出力するように構成され、VIR光出力部は、当該VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波から、その第2高調波であるVIRレーザ光を発生して出力するように構成され、前記DUV光変換部は、UV光出力部から出力されたUVレーザ光とVIR光出力部から出力されたVIRレーザ光とから、和周波発生により前記基本波の第7高調波を発生するように構成することができる。
【0027】
また、前記UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器、前記第1VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器及び前記第2VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器は、いずれも所定波長の基本波のレーザ光を増幅する増幅器であり、UV光出力部は、当該UV光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波の第5高調波である前記UVレーザ光を発生して出力するように構成され、第1VIR光出力部は、当該第1VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波の第2高調波である第1VIRレーザ光を発生して出力するように構成され、第2VIR光出力部は、当該第2VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波である前記第2VIRレーザ光を発生して出力するように構成され、前記第1波長変換光学素子は、UVレーザ光と第1VIRレーザ光との和周波発生により前記基本波の第7高調波である第1DUVレーザ光を発生し、前記第2波長変換光学素子は、第1波長変換光学素子から出力された第1DUVレーザ光と第2VIR光出力部から出力された第2VIRレーザ光との和周波発生により前記基本波の第8高調波である第2DUVレーザ光を発生するように構成することもできる。
【0028】
本発明を例示する第2の態様は露光装置である。この露光装置は、第1の態様のレーザ装置と、所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、露光対象物を保持する露光対象物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光をマスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系とを備えて構成される。
【0029】
本発明を例示する第3の態様は検査装置である。この検査装置は、第1の態様のレーザ装置と、被検物を保持する被検物支持部と、レーザ装置から出力されたレーザ光を被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、被検物からの光を検出する検出器(例えば、実施形態におけるTDIセンサ615)とを備えて構成される。
【発明の効果】
【0030】
第1の態様のレーザ装置においては、レーザ装置の制御部が、DUV光変換部から出力するDUVレーザ光(出力光)のパワーを変化させるときに、UV光出力部から出力するUVレーザ光のパワーを略一定とし、VIR光出力部から出力するVIRレーザ光のパワーを変化させる制御を行うように構成される。すなわち、第1の態様のレーザ装置では、出力光のパワーを変化させるときに、UV光出力部から出力される紫外領域のUVレーザ光のパワーが略一定に保持され、VIR光出力部から出力される可視〜赤外領域のVIRレーザ光のパワーを変化させるように制御される。
【0031】
このため、出力光としてのDUVレーザ光を変化させるパワー制御を行っても、UVレーザ光のパワーを変化させるパワー制御に比べて、波長変換素子等での吸収による発熱量の変化が少なく、これに伴う波長変換効率の低下やビームポインティングの変動が小さい。従って、出力光のパワー制御を安定的に行うことができるレーザ装置を提供することができる。
【0032】
第2の態様の露光装置は、第1の態様のレーザ装置を備えて構成される。従って、安定したパワー制御により安定性を向上した露光装置を提供することができる。
【0033】
第3の態様の検査装置は、第1の態様のレーザ装置を備えて構成される。従って、安定したパワー制御により安定性を向上した検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の適用例として示す第1形態のレーザ装置の概要構成図である。
【図2】上記レーザ装置におけるパワー制御を主体とした制御系のブロック図である。
【図3】上記レーザ装置におけるファイバ光増幅器の概略図である。
【図4】本発明の適用例として示す第2形態のレーザ装置の概要構成図である。
【図5】本発明のレーザ装置を備えた露光装置の概要構成図である。
【図6】本発明のレーザ装置を備えた検査装置の概要構成図である。
【図7】従来のレーザ装置を説明するための概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1構成形態)
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本発明を適用したレーザ装置LSの例として、第1構成形態のレーザ装置LS1の概要構成を図1に示す。また、レーザ装置LS1におけるパワー制御を主体とした制御系のブロック図を図2に示す。レーザ装置LS1は、制御部による制御形態の相違を除いて、既述したレーザ装置LS9と同様のものである。以下、各部の構成を含めて詳細に説明する。なお、以下の各図において各光路上に楕円形で示すものは、各波長変換光学素子にレーザ光を集光入射させるためのレンズであり、詳細説明を省略する。
【0036】
レーザ装置LS1は、紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部Iと、可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、UVレーザ光及びVIRレーザ光から波長変換によってUVレーザ光よりも短波長のDUVレーザ光を発生するDUV光変換部IVと、UV光出力部及びVIR光出力部を含む各部の作動を制御する制御部8とを備えて構成される。VIR光出力部は、可視領域の第1VIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部IIと、赤外領域の第2VIRレーザ光を出力する第2VIR光出力部IIIとから構成される。
【0037】
レーザ装置LS1において、UV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIに対して、基本波の波長のシード光を発生するシード光発生部10からシード光が供給される。すなわち、シード光発生部10から出射されたシード光は3分割されてUV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIにそれぞれ入射する。シード光発生部10は、詳細図示を省略するが、可視〜赤外領域の所定波長のレーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を切り出すことにより所定波形のパルス状のシード光を出力する電気光学変調器(EOM)とを備えて構成される。
【0038】
レーザ装置LS1では、レーザ光源としてDFB半導体レーザを用いて波長1547nmのレーザ光を発生させ、電気光学変調器によりその一部を切り出して、繰り返し周波数1MHz、オン時間1〜数nsecのパルス状のシード光を出力する。シード光発生部10から出射されたシード光は、図示省略するスプリッタ(カプラ)により3分割され、各々UV光出力部I、第1VIR光出力部II、及び第2VIR光出力部IIIに入射する。
【0039】
UV光出力部Iは、シード光を増幅するファイバ光増幅器21、増幅された基本波のレーザ光を順次波長変換する波長変換光学素子31,32,33などを主体として構成される。
【0040】
ファイバ光増幅器21は、図3に概略図を示すように、コアにレーザ媒質がドープされた増幅用ファイバ21aと、増幅用ファイバ21aにドープされたレーザ媒質を励起するための励起光を出射する励起光源21bと、励起光源21bから出射された励起光を増幅用ファイバ21aに導く導光用ファイバ21c及びコンバイナ21dなどから構成される。ファイバ光増幅器21は可視〜赤外領域のシード光の波長帯域の光を増幅する光増幅器であり、例えば増幅用ファイバ21aのコアにエルビウム(Er)がドープされたエルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(EDFA)が好適に用いられる。ファイバ光増幅器22,23も同様に構成される。
【0041】
ファイバ光増幅器21の作動は制御部8により制御される。すなわち、制御部8は、励起光源21bへの供給電力を制御することで、ファイバ光増幅器21のコアにドープされたレーザ媒質を励起するための励起光の強度を制御する。ファイバ光増幅器21により増幅されたシード光すなわち基本波レーザ光La1は、ファイバ光増幅器21から出射して波長変換光学素子31に集光入射する。
【0042】
波長変換光学素子31では、この素子に入射する基本波の第2高調波発生が行われ、周波数が基本波の2倍、波長が1/2(774nm)の第2高調波が発生する。波長変換光学素子31で発生した第2高調波と波長変換光学素子31を透過した基本波は、波長変換光学素子32に集光入射する。波長変換光学素子32では、基本波と第2高調波の和周波発生が行われ、周波数が基本波の3倍、波長が1/3(516nm)の第3高調波が発生する。
【0043】
第2高調波発生用の波長変換光学素子31としてはPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が好適に用いられる。また、第3高調波発生用の波長変換光学素子32としてはLBO(LiB35)結晶が好適に用いられる。なお、波長変換光学素子31としては、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶やPPKTP(Periodically Poled LiTaO3)結晶などの疑似位相整合結晶(QPM:Quasi Phase Matching)やLBO結晶を用いることもできる。
【0044】
波長変換光学素子32で発生した第3高調波と波長変換光学素子32を透過した第2高調波は、波長変換光学素子33に集光入射する。波長変換光学素子33では、第2高調波と第3高調波の和周波発生が行われ、周波数が基本波の5倍、波長が1/5(309nm)の第5高調波が発生する。第5高調波発生用の波長変換光学素子33としてはBBO(β-BaB24)結晶が好適に用いられる。なお、LBO結晶やCLBO(CsLiB610)結晶を用いることもできる。
【0045】
波長変換光学素子33で発生した第5高調波はUV光出力部Iから出射され、ダイクロイックミラー41で反射されてDUV光変換部IVの波長変換光学素子35に集光入射する。UV光出力部Iから出射される第5高調波は、波長が309nmであり紫外領域のレーザ光である。本明細書においては、UV光出力部Iから出射される波長が紫外領域のレーザ光を「UVレーザ光」という。
【0046】
第1VIR光出力部IIは、シード光を増幅するファイバ光増幅器22、増幅された基本波レーザ光を波長変換する波長変換光学素子34、及び後述するタイミング調整器45を備えて構成される。シード光発生部10から出射されたシード光はファイバ光増幅器22により増幅され、増幅された基本波レーザ光La2は波長変換光学素子34に集光入射する。ファイバ光増幅器22の構成及び作用は、既述したファイバ光増幅器21と同様であり、ファイバ光増幅器22の励起光強度は制御部8により制御される。
【0047】
波長変換光学素子34では、基本波の第2高調波発生が行われ、周波数が基本波の2倍、波長が1/2(774nm)の第2高調波が発生する。第2高調波発生用の波長変換光学素子34としては、PPLN結晶またはQPM結晶等を用いることができる。波長変換光学素子34で発生した第2高調波は、第1VIR光出力部IIから出射され、ダイクロイックミラー42,41を介してDUV光変換部IVの波長変換光学素子35に集光入射する。第1VIR光出力部IIから出射される第2高調波は、波長が774nmであり可視領域のレーザ光である。本明細書においては、第1VIR光出力部IIから出射される波長が可視〜赤外領域のレーザ光を「第1VIRレーザ光」という。
【0048】
第2VIR光出力部IIIは、シード光すなわち基本レーザ光を増幅するファイバ光増幅器23及び後述するタイミング調整器46を備えて構成される。シード光発生部10から出射されたシード光はファイバ光増幅器23により増幅され、増幅されたシード光すなわち基本波レーザ光La3は第2VIR光出力部IIIから出射される。ファイバ光増幅器23の構成及び作用は、既述したファイバ光増幅器21,22と同様であり、ファイバ光増幅器23の励起光強度は制御部8により制御される。
【0049】
第2VIR光出力部IIIから出射された基本波レーザ光は、ダイクロイックミラー42,41及び波長変換光学素子35を透過して波長変換光学素子36に集光入射する。第2VIR光出力部IIIから出射される基本波レーザ光は、波長が1547nmであり、赤外領域のレーザ光である。本明細書においては、第2VIR光出力部IIIから出射される波長が可視〜赤外領域のレーザ光を「第2VIRレーザ光」という。
【0050】
ダイクロイックミラー42は、基本波の波長帯域の光を透過し第2高調波の波長帯域の光を反射するように構成される。また、ダイクロイックミラー41は、基本波及び第2高調波の波長帯域の光を透過し第5高調波の波長帯域の光を反射するように構成される。そのため、第1VIR光出力部IIから出射された第2高調波である第1VIRレーザ光と、第2VIR光出力部IIIから出射された基本波である第2VIRレーザ光は、ダイクロイックミラー42により同軸上に重ね合わされ、さらにUV光出力部Iから出射された第5高調波であるUVレーザ光がダイクロイックミラー41により同軸上に重ね合わされて、これら3つの異なる波長のレーザ光がDUV光変換部IVに入射する。
【0051】
DUV光変換部IVには、波長変換光学素子35及び36が設けられている。波長変換光学素子35では、UV光出力部Iから出射された第5高調波であるUVレーザ光と、第1VIR光出力部IIから出射された第2高調波である第1VIRレーザ光との和周波発生が行われる。すなわち、周波数が基本波の7倍、波長が1/7(221nm)の第7高調波である第1DUVレーザ光が発生する。第7高調波発生用の波長変換光学素子35としてはCLBO結晶が好適に用いられる。第2VIR光出力部IIIから出射された基本波は波長変換光学素子35を透過し、波長変換光学素子35で発生した第7高調波である第1DUVレーザ光とともに波長変換光学素子36に入射する。
【0052】
波長変換光学素子36では、基本波である第2VIRレーザ光と第7高調波である第1DUVレーザ光の和周波発生が行われ、周波数が基本波の8倍、波長が1/8(193nm)の第8高調波が発生する。第8高調波発生用の波長変換光学素子36としてはCLBO結晶が好適に用いられる。波長変換光学素子36で発生した第8高調波であるDUVレーザ光はDUV光変換部IVから出射され、レーザ装置LS1から出力される。
【0053】
DUV光変換部IVにおいて発生する第7高調波及び第8高調波は、各々波長が221nm及び193nmであり、いずれもUV光出力部Iから出射されるUVレーザ光よりも波長が短い紫外領域のレーザ光である。本明細書においては、DUV光変換部IVにおいて発生するUVレーザ光よりも波長が短い紫外領域のレーザ光をDUVレーザ光という。また、本構成例のように、DUV光変換部IVにおいて発生するDUVレーザ光が複数あるような場合に、これらを識別するときは、最初に発生したDUVレーザ光(第7高調波)を第1DUVレーザ光、次に発生したDUVレーザ光(第8高調波)を第2DUVレーザ光という。
【0054】
第1VIR光出力部IIに設けられたタイミング調整器45と第2VIR光出力部IIIに設けられたタイミング調整器46は、ともにファイバ光増幅器22及び23に入射するシード光のタイミングを調整する機器である。タイミング調整器45によりタイミングを調整することで、波長変換光学素子35における第5高調波であるUVレーザ光と第2高調波である第1VIRレーザ光の時間的な重ね合わせを調整する。また、タイミング調整器46によりタイミングを調整することで、波長変換光学素子36における第7高調波である第1DUVレーザ光と基本波である第2VIRレーザ光の時間的な重ね合わせを調整する。
【0055】
この点について少し説明を行う。シード光発生部10により発生されたシード光が、第5高調波であるUVレーザ光としてUV光出力部Iから出射して波長変換光学素子35に到達するまでの実質的な光路長と、第2高調波である第1VIRレーザ光として第1VIR光出力部IIから出射して波長変換光学素子35に到達するまでの実質的な光路長とは一般に同一ではない。従って、UVレーザ光と第1VIRレーザ光のタイミングとは一致しない。そのため、シード光がオン時間の短いパルス光の場合、波長変換光学素子35及び波長変換光学素子36においてDUVレーザ光を高効率で発生させるには、上記のタイミング調整が必要となる。
【0056】
タイミング調整器45は、入射したシード光に遅延を与える。すなわち、第5高調波であるUVレーザ光が波長変換光学素子35に入射するタイミングと一致するように、第2高調波である第1VIRレーザ光が波長変換光学素子35に入射するタイミングを遅らせることにより、波長変換光学素子35におけるUVレーザ光と第1VIRレーザ光の時間的な重ね合わせを行う。タイミング調整器46についても同様であり、第1DUVレーザ光が波長変換光学素子36に入射するタイミングと一致するように、基本波である第2VIRレーザ光が波長変換光学素子36に入射するタイミングを遅らせることにより、波長変換光学素子36における第1DUVレーザ光と第2VIRレーザ光の時間的な重ね合わせを行う。
【0057】
このタイミング調整器45,46により、波長変換光学素子35において第5高調波と第2高調波とを時間的に重ね合わせ、波長変換光学素子36において第7高調波と基本波とを時間的に重ね合わせることで、波長193nmのDUVレーザ光を高効率で発生させ出射させることができる。また、波長変換光学素子35における第5高調波と第2高調波、波長変換光学素子36における第7高調波と基本波が時間的に重ならないようにずらすことで、第8高調波の発生を抑止しレーザ装置からのDUVレーザ光の出射をオフにすることができる。
【0058】
タイミング調整器45,46は、光路長が異なる複数の遅延ファイバと、シード光が伝播する遅延ファイバを切り換えるEOM等により構成することができる。タイミング調整器45,46の作動は制御部8により制御される。これにより、レーザ装置LS1から出力するDUVレーザ光を高速でオン/オフすることができる。
【0059】
このように構成されるレーザ装置LS1では、レーザ装置LS1から出力する第2DUVレーザ光(第8高調波)のパワーを変化させるために、UV光出力部Iから出力するUVレーザ光(第5高調波)のパワーを略一定とし、第1VIR光出力部IIから出力する第1VIRレーザ光(第2高調波)及び第2VIR光出力部IIIから出力する第2VIRレーザ光(基本波)の少なくとも一方のパワーを変化させる制御を行う。以下では第2高調波と基本波の両方のパワーを変化させる構成例を説明する。
【0060】
制御部8には、レーザ装置LS1のパワー制御を行うパワーコントローラ80が設けられている。パワーコントローラ80は、制御プログラムや各種パラメータが格納されたメモリー82、制御プログラムに基づいて演算処理を実行する処理回路83、処理回路83からの指令に基づいてファイバ光増幅器を駆動する光増幅器駆動回路85(85a,85b,85c)などから構成される。
【0061】
メモリー82には、レーザ装置LS1から出力すべき波長193nmの第2DUVレーザ光のパワーに必要なファイバ光増幅器21,22,23の励起光強度がパラメータ(励起光強度パラメータ)として記憶されている。励起光強度パラメータは、ファイバ光増幅器21に対するNo.1パラメータ値、ファイバ光増幅器22に対するNo.2パラメータ値、ファイバ光増幅器23に対するNo.3パラメータ値からなり、それぞれのパラメータ値は第2DUVレーザ光のパワーに対応してマップ状に設定されている。
【0062】
処理回路83は、レーザ装置LS1の操作パネル81等からI/Oボード(不図示)を介して入力されるレーザ装置LS1のパワー設定に応じた励起光強度パラメータ(No.1〜No.3パラメータ値の一組)をメモリー82から読み出し、各パラメータ値に対応する駆動指令信号を光増幅器駆動回路85a,85b,85cに出力する。
【0063】
光増幅器駆動回路85a,85b,85cは、それぞれファイバ光増幅器21,22,23に対応して設けられた励起光源の駆動回路であり、処理回路83から出力されたNo.1〜No.3パラメータ値に応じた励起電力を、ファイバ光増幅器21,22,23の励起光源にそれぞれ供給して駆動する。
【0064】
メモリー82に記憶された励起光強度パラメータは以下のように設定される。レーザ装置LS1から出力すべき第2DUVレーザ光のパワーレンジを100〜400mWの範囲に制御するものとする。この場合ファイバ光増幅器21の励起光強度を規定するNo.1パラメータ値は、レーザ装置LS1から出力すべき第2DUVレーザ光のパワーによらず一定値に設定される。
【0065】
一方、ファイバ光増幅器22の励起光強度を規定するNo.2パラメータ値、及びファイバ光増幅器23の励起光強度を規定するNo.3パラメータ値は、第2DUVレーザ光のパワーに応じて変化するように設定される。例えば、レーザ装置LS1のパワー設定が200mWのときには、200mWの第2DUVレーザ光を出力するために必要なパワーの第1VIRレーザ光(第2高調波)が第1VIR光出力部IIから出力されるようにNo.2パラメータ値が設定される。また、200mWの第2DUVレーザ光を出力するために必要なパワーの第2VIRレーザ光(基本波)が第2VIR光出力部IIIから出力されるようにNo.3パラメータ値が設定される。
【0066】
そのため、レーザ装置LS1においては、レーザ装置LS1から出力する第2DUVレーザ光がオンの状態では、UV光出力部Iから常時一定パワーのUVレーザ光(第5高調波)が出射される。一方、第1VIR光出力部IIから出射される第1VIRレーザ光(第2高調波)のパワー、及び第2VIR光出力部IIIから出射される第2VIRレーザ光(基本波)のパワーは、必要とする第2DUVレーザ光のパワーに応じて、それぞれ変化させる。
【0067】
UV光出力部Iから出射されるUVレーザ光は、波長が309nmで深紫外領域に近い波長域であるため波長変換素子等でのUVレーザ光の吸収が比較的大きい。従って、UVレーザ光のパワーを変動させるような従来の構成のレーザ装置では、波長変換素子等での発熱の変動による影響が大きい。この点に関して、本構成のレーザ装置LS1では、第2DUVレーザ光の出力を変化させる場合においても、UV光出力部IにおけるUVレーザ光のパワーは常時一定であるため、UV光出力部Iの波長変換光学素子33やUVレーザ光を導くレンズ、また、ダイクロイックミラー41等は熱的に一定状態に保持される。その結果、これらの光学素子はUVレーザ光の吸収による発熱量の変化がなく、それに伴う波長変換効率の低下やビームポインティングの変動が発生しないので、第2DUVレーザ光のパワー制御を安定的に行うことができる。
【0068】
以上では、第2DUVレーザ光のパワー制御にあたり、第1VIR光出力部IIから出力する第1VIRレーザ光(第2高調波)と、第2VIR光出力部IIIから出力する第2VIRレーザ光(基本波)の両方のパワーを変化させる構成を例示したが、パワー制御に際して変化させるのは第1VIRレーザ光及び第2VIRレーザ光のうちのいずれか一方とすることもできる。
【0069】
この場合において、第2VIR光出力部IIIから出力する基本波である第2VIRレーザ光のパワーのみを変動させることで、第8高調波である第2DUVレーザ光のパワーを制御する構成では、波長変換光学素子35で発生する波長221nmの第1DUVレーザ光(第7高調波)のパワーを略一定に保持することができる。このような構成によれば、波長変換光学素子33やレンズ、ダイクロイックミラー41等に加えて波長変換光学素子35を熱的に一定状態に保持することができ、レーザ装置LS1から出射される第2DUVレーザ光のパワー制御を更に安定的に行うことができる。
【0070】
(第2構成形態)
次に、第2構成形態のレーザ装置LS2について、その概要構成を示す図4を参照しながら説明する。
【0071】
レーザ装置LS2は、紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部XIと、赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、UVレーザ光及びVIRレーザ光から波長変換によってUVレーザ光よりも短波長のDUVレーザ光を発生するDUV光変換部XIVと、UV光出力部及びVIR光出力部を含む各部の作動を制御する制御部108とを備えて構成される。VIR光出力部は、赤外領域の第1VIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部XIIと、赤外領域の第2VIRレーザ光を出力する第2VIR光出力部XIIIとから構成される。
【0072】
レーザ装置LS2において、UV光出力部XIは、第1基本波のシード光を発生するシード光発生部111、発生した第1基本波のシード光を増幅するファイバ光増幅器121、増幅された第1基本波のレーザ光La11を波長変換する波長変換光学素子131,132などを主体として構成される。
【0073】
シード光発生部111は、詳細図示を省略するが、波長1063nmのレーザ光を発生するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を切り出すことにより所定波形のパルス状のシード光を出力する電気光学変調器(EOM)とを備えて構成される。レーザ光源は、上記波長を発振帯域に含むDFB半導体レーザが用いられる。
【0074】
ファイバ光増幅器121は、基本的構成において既述したファイバ光増幅器21と同様である。すなわち、コアにレーザ媒質がドープされた増幅用ファイバと、レーザ媒質を励起するための励起光を出射する励起光源と、励起光源から出射された励起光を増幅用ファイバに導く導光用ファイバ及びコンバイナなどから構成される。この基本構成は、ファイバ光増幅器122,123についても同様である。
【0075】
ファイバ光増幅器121は、波長1063nmの第1基本波のシード光を増幅する光増幅器である。ファイバ光増幅器121としては、この波長帯域で高い利得を有するイッテルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(YDFA)が好適に用いられる。なお、シード光発生部111及びファイバ光増幅器121からなる第1基本波のレーザ光出力部を、FBGを用いたYbファイバレーザ等により構成しても良い。
【0076】
ファイバ光増幅器121の励起光の強度(励起光源への供給電力)は、制御部108により制御される。ファイバ光増幅器121により増幅されたシード光、すなわち波長が1063nmの第1基本波のレーザ光La11は、ファイバ光増幅器121から出射して波長変換光学素子131に集光入射する。
【0077】
波長変換光学素子131では、この素子に入射する第1基本波の第2高調波発生が行われ、周波数が第1基本波の2倍、波長が第1基本波の1/2(532nm)の第2高調波が発生する。波長変換光学素子131で発生した第2高調波は波長変換光学素子132に集光入射する。波長変換光学素子132では、波長変換光学素子131で発生した第2高調波の第2高調波発生が行われ、周波数が第1基本波の4倍、波長が第1基本波の1/4(266nm)の第4高調波が発生する。第2高調波発生用の波長変換光学素子131としてはLBO結晶、第4高調波発生用の波長変換光学素子132としてはCLBO結晶が好適に用いられる。
【0078】
波長変換光学素子132で発生した第1基本波の第4高調波はUV光出力部XIから出射され、ダイクロイックミラー141を介してDUV光変換部XIVの波長変換光学素子135に集光入射する。UV光出力部XIから出射される第1基本波の第4高調波は、波長が266nmであり紫外領域(深紫外領域)のUVレーザ光である。
【0079】
第1VIR光出力部XIIは、第2基本波のシード光を発生するシード光発生部112、発生した第2基本波のシード光を増幅するファイバ光増幅器122を主体として構成される。
【0080】
シード光発生部112は、波長2000nmのレーザ光を発生するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を切り出すことにより所定波形のパルス状のシード光を出力する電気光学変調器(EOM)とを備えて構成される。レーザ光源は、上記波長を発振帯域に含むDFB半導体レーザが用いられる。
【0081】
ファイバ光増幅器122は、シード光発生部112から出射された波長2000nmの第2基本波のシード光を増幅する光増幅器である。ファイバ光増幅器122としては、この波長帯域で高い利得を有するツリウム・ドープ・ファイバ光増幅器(TDFA)が好適に用いられる。なお、シード光発生部112及びファイバ光増幅器122からなる第2基本波のレーザ光出力部を、FBGを用いたTmファイバレーザを用いて構成しても良い。
【0082】
ファイバ光増幅器122の励起光強度は、制御部108により制御される。ファイバ光増幅器122により増幅されたシード光、すなわち波長が2000nmの第2基本波のレーザ光La12は、第1VIR光出力部XIIから出射され、ミラー143及びダイクロイックミラー142,141を介してDUV光変換部XIVの波長変換光学素子135に集光入射する。第1VIR光出力部XIIから出射される第2基本波は、波長が2000nmであり赤外領域の第1VIRレーザ光である。
【0083】
第2VIR光出力部XIIIは、第3基本波のシード光を発生するシード光発生部113、発生したシード光を増幅するファイバ光増幅器123を主体として構成される。
【0084】
シード光発生部113は、波長1102nmのレーザ光を発生するレーザ光源と、レーザ光源から出射されたレーザ光の一部を切り出すことにより所定波形のパルス状のシード光を出力する電気光学変調器(EOM)とを備えて構成される。レーザ光源は、上記波長を発振帯域に含むDFB半導体レーザが用いられる。
【0085】
ファイバ光増幅器123は、シード光発生部113から出射された波長1102nmの第3基本波のシード光を増幅する光増幅器である。ファイバ光増幅器123としては、この波長帯域で高い利得を有するイッテルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(YDFA)が好適に用いられる。なお、シード光発生部113及びファイバ光増幅器123からなる第3基本波のレーザ光出力部を、FBGを用いたYbファイバレーザ等により構成しても良い。
【0086】
ファイバ光増幅器123の励起光強度も、ファイバ光増幅器121,122と同様に、制御部108により制御される。ファイバ光増幅器123により増幅されたシード光、すなわち波長が1102nmの第3基本波のレーザ光La13は、第2VIR光出力部XIIIから出射され、ダイクロイックミラー142,141を介してDUV光変換部XIVの波長変換光学素子136に集光入射する。第2VIR光出力部XIIIから出射される第3基本波は、波長が1102nmであり赤外領域の第2VIRレーザ光である。
【0087】
ダイクロイックミラー142は、波長2000nmの第2基本波の波長帯域の光を透過し、波長1102nmの第3基本波の波長帯域の光を反射するように構成される。また、ダイクロイックミラー141は、第2基本波及び第3基本波の波長帯域の光を透過し、波長266nmの第1基本波の第4高調波の波長帯域の光を反射するように構成される。そのため、第1VIR光出力部XIIから出射された第1VIRレーザ光(第2基本波)と、第2VIR光出力部XIIIから出射された第2VIRレーザ光(第3基本波)とが、ダイクロイックミラー142により同軸上に重ね合わされ、さらにUV光出力部XIから出射されたUVレーザ光(第1基本波の第4高調波)がダイクロイックミラー141により同軸上に重ね合わされて、これら3つの波長の光がDUV光変換部XIVに入射する。
【0088】
DUV光変換部XIVには、波長変換光学素子135及び136が設けられている。波長変換光学素子135では、UV光出力部XIから出射されたUVレーザ光(波長266nmの第1基本波の第4高調波)と、第1VIR光出力部XIIから出射された第1VIRレーザ光(波長2000nmの第2基本波)との和周波発生が行われ、波長が235nmの第1DUVレーザ光が発生する。波長変換光学素子135としてはLBO結晶が好適に用いられる。第2VIR光出力部XIIIから出射された第2VIRレーザ光(第3基本波)は波長変換光学素子135を透過し、波長変換光学素子135で発生した第1DUVレーザ光とともに波長変換光学素子136に入射する。
【0089】
波長変換光学素子136では、波長変換光学素子135で発生した波長235nmの第1DUVレーザ光と、第2VIR光出力部XIIIから出射された波長1102nmの第3基本波の和周波発が行われ、波長が193nmの第2DUVレーザ光が発生する。波長変換光学素子136としてはCLBO結晶が好適に用いられる。波長変換光学素子136で発生した波長193nmの第2DUVレーザ光はDUV光変換部XIVから出射され、レーザ装置LS2から出力される。
【0090】
なお、レーザ装置LS2においては、UV光出力部XI、第1VIR光出力部XII、及び第2VIR光出力部XIIIに、それぞれシード光発生部111,112,113が設けられている。このため、制御部108が各シード光発生部111,112,113において発生させる第1,第2,第3シード光の発生タイミングを制御することによって、波長変換光学素子135におけるUVレーザ光と第1VIRレーザ光との重ね合わせを適切に調整することができる。同様の理由により、波長変換光学素子136における第1DUVレーザ光と第2VIRレーザ光との重ね合わせを適切に調整することができる。
【0091】
このように構成されるレーザ装置LS2において、レーザ装置LS2から出力する第2DUVレーザ光のパワーを変化させる場合、UV光出力部XIから出力するUVレーザ光(第1基本波の第4高調波)のパワーを略一定とし、第1VIR光出力部XIIから出力する第1VIRレーザ光(第2基本波)及び第2VIR光出力部XIIIから出力する第2VIRレーザ光(第3基本波)の少なくとも一方のパワーを変化させる制御を行う。このとき、制御部108の構成及び作用は、基本的には前述したレーザ装置LS1の制御部8と同様である。そこで、以下では、第2基本波及び第3基本波のうち、第3基本波のパワーを変化させる構成例について概要を説明する。
【0092】
制御部108には、第1構成形態と同様のパワーコントローラ80が設けられている。パワーコントローラ80は、第1構成形態と同様のメモリー82、処理回路83、光増幅器駆動回路85(85a,85b,85c)などから構成される(図2を参照)。
【0093】
メモリー82には、レーザ装置LS2から出力すべき波長193nmの第2DUVレーザ光のパワーに必要なファイバ光増幅器121,122,123の励起光強度が励起光強度パラメータとして記憶されている。励起光強度パラメータは、ファイバ光増幅器121に対するNo.1パラメータ値、ファイバ光増幅器122に対するNo.2パラメータ値、ファイバ光増幅器123に対するNo.3パラメータ値からなり、それぞれのパラメータ値は第2DUVレーザ光のパワーに対応してマップ状に設定されている。
【0094】
処理回路83は、レーザ装置LS2の操作パネル81等から入力されるレーザ装置LS2のパワー設定に応じて記憶されたNo.1〜No.3パラメータ値の一組をメモリー82から読み出し、各パラメータ値に対応する駆動指令信号を光増幅器駆動回路85a,85b,85cに出力する。光増幅器駆動回路85a,85b,85cは、それぞれ処理回路83から出力されたNo.1〜No.3パラメータ値に応じた励起電力を、ファイバ光増幅器121,122,123の励起光源にそれぞれ供給して駆動する。
【0095】
励起光強度パラメータのうち、ファイバ光増幅器121の励起光強度を規定するNo.1パラメータ値、及びファイバ光増幅器122の励起光強度を規定するNo.2パラメータ値は、レーザ装置LS2から出力すべき第2DUVレーザ光のパワーによらず一定値に設定される。
【0096】
一方、ファイバ光増幅器123の励起光強度を規定するNo.3パラメータ値は、レーザ装置LS2から出力すべき第2DUVレーザ光のパワーに応じて変化するように設定される。例えば、レーザ装置LS2のパワー設定が300mWのときには、300mWの第2DUVレーザ光を出力するために必要なパワーの第2VIRレーザ光(第3基本波)が第2VIR光出力部XIIIから出力されるようにNo.3パラメータ値が設定される。すなわち、No.3パラメータ値として、必要とする第2DUVレーザ光のパワーに応じて増減した値が設定される。
【0097】
そのため、レーザ装置LS2においては、レーザ装置LS2から出力する第2DUVレーザ光がオンの状態では、UV光出力部XIから常時一定パワーのUVレーザ光(第1基本波の第4高調波)が出射され、第1VIR光出力部XIIから常時一定パワーの第1VIRレーザ光(第2基本波)が出射される。一方、第2VIR光出力部XIIIから出射される第2VIRレーザ光(第3基本波)のパワーは、必要とする第2DUVレーザ光パワーに応じて変化させる。
【0098】
UV光出力部XIから出射されるUVレーザ光は波長が266nmであり、また、波長変換光学素子135で発生される第1DUVレーザ光は波長が235nmであり、これらのレーザ光はともに深紫外領域にあるため波長変換素子等でのUVレーザ光の吸収が比較的大きい。従って、UVレーザ光のパワーを変動させるような従来の構成のレーザ装置では、波長変換素子等での発熱の変動による影響が大きい。この点に関して、本構成のレーザ装置LS2においては、第2DUVレーザ光の出力を変化させる場合においても、UV光出力部XIにおけるUVレーザ光のパワーは常時一定であるため、レーザ装置LS2から出力する第2DUVレーザ光のパワーを変化させるような制御を行っても、UV光出力部XIの波長変換光学素子132、UVレーザ光を導くレンズやダイクロイックミラー141、波長変換光学素子135は、熱的に一定状態に保持される。その結果、これらの光学素子はUVレーザ光の吸収による発熱量の変化がなく、それに伴う波長変換効率の低下やビームポインティングの変動が発生しないので、第2DUVレーザ光のパワー制御を安定的に行うことができる。
【0099】
以上説明したようなレーザ装置LS(LS1,LS2)は、小型軽量であるとともに取り扱いが容易であり、露光装置や光造形装置等の光加工装置、フォトマスクやウェハ等の検査装置、顕微鏡や望遠鏡等の観察装置、測長器や形状測定器等の測定装置、光治療装置などのシステムに好適に適用することができる。
【0100】
レーザ装置LSを備えたシステムの第1の適用例として、半導体製造や液晶パネル製造のフォトリソグラフィエ程で用いられる露光装置について、その概要構成を示す図5を参照して説明する。露光装置500は、原理的には写真製版と同じであり、石英ガラス製のフォトマスク513に精密に描かれたデバイスパターンを、フォトレジストを塗布した半導体ウェハやガラス基板などの露光対象物515に光学的に投影して転写する。
【0101】
露光装置500は、上述したレーザ装置LS(LS1またはLS2)と、照明光学系502と、フォトマスク513を保持するマスク支持台503と、投影光学系504と、露光対象物515を保持する露光対象物支持テーブル505と、露光対象物支持テーブル505を水平面内で移動させる駆動機構506とを備えて構成される。照明光学系502は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、マスク支持台503に保持されたフォトマスク513に照射する。投影光学系504も複数のレンズ群により構成され、フォトマスク513を透過した光を露光対象物支持テーブル上の露光対象物515に投影する。
【0102】
このような構成の露光装置500においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系502に入力され、所定光束に調整されたレーザ光がマスク支持台503に保持されたフォトマスク513に照射される。フォトマスク513を通過した光はフォトマスク513に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系504を介して露光対象物支持テーブル505に保持された露光対象物515の所定位置に照射される。これにより、フォトマスク513のデバイスパターンの像が、半導体ウェハや液晶パネル等の露光対象物515の上に所定倍率で結像露光される。
【0103】
このような露光装置500によれば、レーザ装置から出力するDUVレーザ光の出力を変化させるパワー制御を行っても、UV光出力部の光学素子で吸収や発熱量の変化がなく、DUVレーザ光のパワー制御を安定的に行うことができる。そのため、安定したパワー制御により安定性を向上した露光装置を提供することができる。
【0104】
次に、レーザ装置LSを備えたシステムの第2の適用例として、フォトマスクや液晶パネル、ウェハ等(被検物)の検査工程で使用される検査装置について、その概要構成を示す図6を参照して説明する。図6に例示する検査装置600は、フォトマスク等の光透過性を有する被検物613に描かれた微細なデバイスパターンの検査に好適に使用される。
【0105】
検査装置600は、前述したレーザ装置LS(LS1またはLS2)と、照明光学系602と、被検物613を保持する被検物支持台603と、投影光学系604と、被検物613からの光を検出するTDI(Time Delay Integration)センサ615と、被検物支持台603を水平面内で移動させる駆動機構606とを備えて構成される。照明光学系602は複数のレンズ群からなり、レーザ装置LSから出力されたレーザ光を、所定光束に調整して被検物支持台603に保持された被検物613に照射する。投影光学系604も複数のレンズ群により構成され、被検物613を透過した光をTDIセンサ615に投影する。
【0106】
このような構成の検査装置600においては、レーザ装置LSから出力されたレーザ光が照明光学系602に入力され、所定光束に調整されたレーザ光が被検物支持台603に保持されたフォトマスク等の被検物613に照射される。被検物613からの光(本構成例においては透過光)は、被検物613に描かれたデバイスパターンの像を有しており、この光が投影光学系604を介してTDIセンサ615に投影され結像する。このとき、駆動機構606による被検物支持台603の水平移動速度と、TDIセンサ615の転送クロックとは同期して制御される。
【0107】
そのため、被検物613のデバイスパターンの像がTDIセンサ615により検出され、このようにして検出された被検物613の検出画像と、予め設定された所定の参照画像とを比較することにより、被検物に描かれた微細パターンの欠陥が抽出される。なお、被検物613がウェハ等のように光透過性を有さない場合には、被検物からの反射光を投影光学系604に入射してTDIセンサ615に導くことにより、同様に構成することができる。
【0108】
このような検査装置600によれば、レーザ装置から出力するDUVレーザ光の出力を変化させるパワー制御を行っても、UV光出力部の光学素子で吸収や発熱量の変化がなく、DUVレーザ光のパワー制御を安定的に行うことができる。従って、安定したパワー制御により安定性を向上した検査装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0109】
LS(LS1,LS2) レーザ装置
LS1 第1構成形態のレーザ装置
I UV光出力部
II 第1VIR光出力部(VIR光出力部)
III 第2VIR光出力部(VIR光出力部)
IV DUV光変換部
8 制御部
10 シード光発生部
21,22,23 ファイバ光増幅器
31〜36 波長変換光学素子(35 第1波長変換光学素子、36 第2波長変換光学素子)
80 パワーコントローラ
LS2 第2構成形態のレーザ装置
XI UV光出力部
XII 第1VIR光出力部(VIR光出力部)
XIII 第2VIR光出力部(VIR光出力部)
XIV DUV光変換部
108 制御部
110(111,112,113) シード光発生部
121,122,123 ファイバ光増幅器
131,132,135,136 波長変換光学素子(135 第1波長変換光学素子、136 第2波長変換光学素子)
500 露光装置
502 照明光学系
503 マスク支持台
504 投影光学系
505 露光対象物支持テーブル
513 フォトマスク
515 露光対象物
600 検査装置
602 照明光学系
603 被検物支持台
604 投影光学系
613 被検物
615 TDIセンサ(検出器)
LS9 従来のレーザ装置
910 シード光発生部
921〜923 ファイバ光増幅器
931〜936 波長変換光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が紫外領域のUVレーザ光を出力するUV光出力部と、
波長が可視〜赤外領域のVIRレーザ光を出力するVIR光出力部と、
前記UV光出力部から出力されたUVレーザ光と前記VIR光出力部から出力されたVIRレーザ光とから、波長変換により波長が前記UVレーザ光よりも短いDUVレーザ光を発生して出力するDUV光変換部と、
前記UV光出力部及び前記VIR光出力部の作動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記DUV光変換部から出力する前記DUVレーザ光のパワーを変化させるときに、前記UV光出力部から出力する前記UVレーザ光のパワーを略一定とし、前記VIR光出力部から出力する前記VIRレーザ光のパワーを変化させる制御を行うように構成されることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記VIR光出力部は、波長が可視〜赤外領域の第1VIRレーザ光を出力する第1VIR光出力部と、波長が可視〜赤外領域の第2VIRレーザ光を出力する第2VIR光出力部とを有し、
前記DUV光変換部は、前記UV光出力部から出力されたUVレーザ光と前記第1VIR光出力部から出力された第1VIRレーザ光との和周波発生により第1DUVレーザ光を発生する第1波長変換光学素子と、前記第1波長変換光学素子から出力された前記第1DUVレーザ光と前記第2VIR光出力部から出力された前記第2VIRレーザ光との和周波発生により第2DUVレーザ光を発生する第2波長変換光学素子とを有し、
前記制御部は、前記DUV光変換部から出力する前記第2DUVレーザ光のパワーを変化させるときに、前記UV光出力部から出力する前記UVレーザ光のパワーを略一定とし、前記第1VIR光出力部から出力する前記第1VIRレーザ光及び前記第2VIR光出力部から出力する前記第2VIRレーザ光の少なくとも一方のパワーを変化させる制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記UV光出力部及び前記VIR光出力部に、各々可視〜赤外領域のレーザ光を増幅するファイバ光増幅器を有し、
前記UV光出力部に、可視〜赤外領域のレーザ光を紫外領域の前記UVレーザ光に変換する波長変換光学素子を有し、
前記制御部は、前記UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器、及び前記VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器の作動を制御することにより、前記UVレーザ光のパワーを略一定とし、かつ、前記VIRレーザ光のパワーを変化させる
ように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器及び前記VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器は、ともに所定波長の基本波のレーザ光を増幅する増幅器であり、
前記UV光出力部は、当該UV光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波から、その第5高調波である前記UVレーザ光を発生して出力するように構成され、
前記VIR光出力部は、当該VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波から、その第2高調波である前記VIRレーザ光を発生して出力するように構成され、
前記DUV光変換部は、前記UV光出力部から出力されたUVレーザ光と前記VIR光出力部から出力されたVIRレーザ光とから、和周波発生により前記基本波の第7高調波を発生するように構成されることを特徴とする請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記UV光出力部に設けられたファイバ光増幅器、前記第1VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器及び前記第2VIR光出力部に設けられたファイバ光増幅器は、いずれも所定波長の基本波のレーザ光を増幅する増幅器であり、
前記UV光出力部は、当該UV光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波の第5高調波である前記UVレーザ光を発生して出力するように構成され、
前記第1VIR光出力部は、当該第1VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波の第2高調波である前記第1VIRレーザ光を発生して出力するように構成され、
前記第2VIR光出力部は、当該第2VIR光出力部のファイバ光増幅器により増幅された前記基本波である前記第2VIRレーザ光を発生して出力するように構成され、
前記第1波長変換光学素子は、前記UVレーザ光と前記第1VIRレーザ光との和周波発生により前記基本波の第7高調波である前記第1DUVレーザ光を発生し、前記第2波長変換光学素子は、前記第1波長変換光学素子から出力された前記第1DUVレーザ光と前記第2VIR光出力部から出力された前記第2VIRレーザ光との和周波発生により前記基本波の第8高調波である第2DUVレーザ光を発生するように構成されることを特徴とする請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
所定の露光パターンが形成されたフォトマスクを保持するマスク支持部と、
露光対象物を保持する露光対象物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記マスク支持部に保持されたフォトマスクに照射する照明光学系と、
前記フォトマスクを透過した光を露光対象物支持部に保持された露光対象物に投影する投影光学系と
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
被検物を保持する被検物支持部と、
前記レーザ装置から出力されたレーザ光を前記被検物支持部に保持された被検物に照射する照明光学系と、
前記被検物からの光を検出する検出器と
を備えたことを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7931(P2013−7931A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141222(P2011−141222)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】