説明

ロボットハンドの位置補正方法、ロボットハンド、ロボット

【課題】良好にティーチングを実施することが可能なロボットハンドの位置補正方法、ロボットハンド、ロボットを提供する。
【解決手段】複数の関節とCCDカメラ313を有するロボットハンド300とを備えるロボットに対してワーク200に設定された目標位置を教示する際にロボットハンド300の位置を補正する方法であって、目標位置に挿入したブッシュ210に設けられた目標マークをCCDカメラ313により撮像して、当該撮像した目標マークとCCDカメラ313の撮像範囲の基準位置とから、ロボットハンド300と目標位置との相対的な位置ズレを認識する認識ステップと、認識した位置ズレが小さくなるようにロボットの関節の駆動を制御してロボットハンド300の位置を補正する第1の位置補正ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットハンドの位置補正方法、ロボットハンド、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットハンドの目標位置をロボットに教示するためのティーチングでは、ロボットが作業を行う現場で、人間がロボットの位置姿勢を確認しながらその目標位置をひとつずつ教示することが行われていた。
【0003】
また、ロボットの目標位置を教示する際には、ロボットの作業現場をモデル化した3次元モデルなどを使用することで、大まかな目標位置を予め教示することも行われている。
【0004】
特許文献1乃至6には、ロボットへの目標位置のティーチングにおいて、その目標位置とのズレ量を補正するための技術が開示されている。例えば、特許文献1には、ロボットの動作方向に対して、ロボットハンドの先端に3つのセンサーを有した補正ツールを設け、動作方向に直角に配置された直方体の各面との位置関係からX、Y、Z軸の各ズレ量を演算することで、軸ズレを自動的に補正することが可能なロボットの軸ズレ補正方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−041188号公報
【特許文献2】特開平6−126671号公報
【特許文献3】特開平7−075986号公報
【特許文献4】特開平8−029359号公報
【特許文献5】特開2005−334998号公報
【特許文献6】特許3904605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、把持対象物の組み付け状況などによりロボットハンドの目標位置は変動するため、従来の手法では、良好にティーチングを実施することができないことがある。例えば、作業現場に設置された把持対象物の組み付け精度が悪い場合には、目標位置へとロボットの位置を合わせるのに余計な時間が必要となる。このような位置合わせは把持対象物ごとに必要となるため、ロボットへの教示に多大な時間を要するという問題があった。
【0007】
また、例えば特許文献1に開示される技術では、以下に説明する様々な課題がある。まず、特許文献1に開示される技術では、ロボットと目標位置との相対位置を検出するために3個のセンサーを必要とする点、さらに、相対位置の検出後に位置を補正するためのシステムが、インターフェース、制御装置、メモリ機能などから構成されている点から、その演算部の構成が複雑なものとなり、高コストなものである。また、このような構成ではその制御ロジックが複雑なものとなるため、演算部の不具合が発生した際などには、その問題点を特定しにくい。さらに、相対的な位置ズレを検出することができても、教示する目標位置が複数存在する場合には、設備の据付精度によって目標位置ごとに補正を行う手間が生じるため、ティーチングにおいて使いにくいものである。さらにまた、ティーチングにおける補正検出時には、近距離から目視で確認する必要があり、安全性の観点に基づいて作業現場を囲う柵の外で人間が行う、広範囲からのティーチングの使用には適さないなどの問題がある。
【0008】
従って、本発明は、広範囲から狭範囲にかけてのティーチングを安価かつ容易に実施し、また、高精度なティーチングを安価かつ容易に実施して、良好にティーチングを実施することが可能なロボットハンドの位置補正方法、ロボットハンド、ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様のロボットハンドの位置補正方法は、複数の関節と、撮像部を有するロボットハンドと、を備えるロボットに対してワークに設定された目標位置を教示する際に、前記ロボットハンドの位置を補正する方法であって、前記目標位置を基準として設けられた目標マークを前記撮像部により撮像して、当該撮像した目標マークと前記撮像部の撮像範囲の基準位置とから、前記ロボットハンドと前記目標位置との相対的な位置ズレを認識する認識ステップと、前記認識した位置ズレが小さくなるように前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正する第1の位置補正ステップと、を備えるものである。
【0010】
これにより、ロボットハンドの撮像部で撮像した目標マークによって目標位置との相対的な位置ズレを認識し、その位置ズレが小さくなるようにロボットの関節の駆動を制御することで、ロボットに対して広範囲から狭範囲にかけての目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正を安価かつ容易に実施して教示を行うことができる。
【0011】
本発明に係る第2の態様のロボットハンドの位置補正方法は、前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられ、前記ロボットハンドには前記目標マークに対向する側の中央部に、前記ロボットハンドを前記目標位置へと移動させて前記ワークに対向した状態で、前記目標マークの中心と前記撮像部の基準位置とが同一の軸上に位置するように、前記撮像部が備えられており、前記第1の位置補正ステップは、前記目標マークの中心と前記撮像部の基準位置とが重なるように、前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正するものである。これにより、ロボットハンドと目標位置との相対的な位置ズレをより容易に認識することができる。
【0012】
本発明に係る第3の態様のロボットハンドの位置補正方法は、前記ロボットハンドには前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部が備えられ、前記ブッシュの外周が当接する前記ブッシュ把持部の内周面は、テーパー形状に形成されており、前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ブッシュ把持部に前記ブッシュを把持させるブッシュ把持ステップを更に備えるものである。これにより、ブッシュを容易に把持することができる。
【0013】
本発明に係る第4の態様のロボットハンドの位置補正方法は、前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられ、前記ロボットハンドには、前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部と、前記ブッシュ把持部を保持すると共に水平面内で移動可能なフロート部と、が備えられており、前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが挿入された場合に、前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置を固定するブッシュ把持ステップを更に備えるものである。これにより、ブッシュを挿入した場合に、ロボットハンドのブッシュ把持部とブッシュとの位置を固定することで、ロボットハンドの中央部とブッシュの目標マークの中心との位置関係をより明確にすることができる。
【0014】
本発明に係る第5の態様のロボットハンドの位置補正方法は、前記ロボットハンドには、前記水平面内における前記ロボットハンドの基準位置に対する前記ブッシュ把持部のズレ量を検出するズレ量検出部が備えられており、前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記ズレ量検出部により前記水平面おける前記ズレ量を検出するズレ量検出ステップと、前記検出したズレ量が小さくなるように前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正する第2の位置補正ステップと、を備えるものである。これにより、ロボットに対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正を高精度かつ容易に実施して教示を行うことができる。
【0015】
本発明に係る第6の態様のロボットハンドの位置補正方法は、前記ズレ量検出部は、前記ロボットハンドに備えられ前記水平面に直交する方向の変位量を検出する変位センサーと、前記フロート部に備えられ当該変位センサーに接触する接触部と、を備え、前記接触部は、前記水平面内における基準位置からの前記フロート部の移動量に応じて、前記変位センサーに接触する接触点の位置が変化するように形成されており、前記ズレ量検出ステップは、前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記変位センサーによる変位量を検出して、当該検出した変位量を前記水平面の方向のズレ量に変換するものである。これにより、1系統の変位センサーを用いて水平面方向のズレ量を検出することで、ロボットに対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正をより安価な構成で容易に実施して教示を行うことができる。
【0016】
本発明に係る第7の態様のロボットハンドは、ワークに設定された基準位置を基準として設けられた目標マークを撮像する撮像部を備え、前記撮像部は、前記ワークに対向させた場合に、前記目標マークの中心と当該撮像部の基準位置とが同一の軸上に位置するように配置されるものである。
【0017】
これにより、ロボットハンドの撮像部で撮像した目標マークによって目標位置との相対的な位置ズレを認識し、その位置ズレが小さくなるようにロボットを制御することができるため、ロボットに対して広範囲から狭範囲にかけての目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正を安価かつ容易に実施して教示を行うことができる。
【0018】
本発明に係る第8の態様のロボットハンドは、前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられており、前記ロボットハンドは、前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部を更に備え、前記ブッシュの外周が当接する前記ブッシュ把持部の内周面は、テーパー形状に形成されている、ものである。これにより、ロボットハンドと目標位置との相対的な位置ズレをより容易に認識して、ブッシュを容易に把持することができる。
【0019】
本発明に係る第9の態様のロボットハンドは、前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられており、前記ロボットハンドは、前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部と、前記ブッシュ把持部を保持すると共に水平面内で移動可能なフロート部と、前記ブッシュ把持部に前記ブッシュを挿入した場合に、当該ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置を固定するチャック部と、を更に備えるものである。これにより、ブッシュを挿入した場合に、ロボットハンドのブッシュ把持部とブッシュとの位置を固定することで、ロボットハンドの中央部とブッシュの目標マークの中心との位置関係をより明確にすることができる。
【0020】
本発明に係る第10の態様のロボットハンドは、前記ロボットハンドは、前記水平面内における前記ロボットハンドの基準位置に対する前記ブッシュ把持部のズレ量を検出するズレ量検出部を更に備えるものである。これにより、ロボットに対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正を高精度かつ容易に実施して教示を行うことができる。
【0021】
本発明に係る第11の態様のロボットハンドは、前記ズレ量検出部は、前記水平面に直交する方向の変位量を検出する変位センサーと、前記フロート部に備えられ当該変位センサーに接触する接触部と、を備え、前記接触部は、前記水平面内における基準位置からの前記フロート部の移動量に応じて、前記変位センサーに接触する接触点の位置が変化するように形成されており、前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記変位センサーによる変位量を検出して、当該検出した変位量を前記水平面の方向のズレ量に変換するものである。これにより、1系統の変位センサーを用いて水平面方向のズレ量を検出することで、ロボットに対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンドの位置補正をより安価な構成で容易に実施して教示を行うことができる。
【0022】
本発明に係る第12の態様のロボットは、上述したいずれかのロボットハンドと、複数の関節と、前記関節の駆動を制御する制御盤と、を備えるものである。これにより、ロボットハンドの撮像部で撮像した目標マークによって目標位置との相対的な位置ズレを認識し、その位置ズレが小さくなるようにロボットの関節の駆動を制御することで、ロボットに対して目標位置を教示する場合に、ロボットハンドの位置補正を安価かつ容易に実施することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、広範囲から狭範囲にかけてのティーチングを安価かつ容易に実施し、また、高精度なティーチングを安価かつ容易に実施して、良好にティーチングを実施することが可能なロボットハンドの位置補正方法、ロボットハンド、ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態1に係るロボットを概略的に示す全体構成図である。
【図2】実施の形態1に係るロボットハンドの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係るブッシュ把持部の構成を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係るブッシュの構成を示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係るロボットハンドの構成を示す正面図である。
【図6】実施の形態1に係るロボットハンドの構成を示す断面図である。
【図7】実施の形態1に係るロボットハンドの構成を示す断面図である。
【図8】実施の形態1に係るズレ量検出部の動作を説明するための模式図である。
【図9】実施の形態1に係るロボットの位置補正動作処理のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、本実施の形態1に係るロボットの全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態1に係るロボット100の全体構成を概略的に示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、ロボット100は、複数の関節と、これら関節を介して接続されるリンクと、先端に備えられたロボットハンド300と、制御盤(不図示)とを備えている。ロボット100の操作者が制御盤を操作することで、ロボット100の各関節に備えられたアクチュエータが駆動され、各関節が回転される。すなわち、操作者は、制御盤を操作することで、ロボットハンド300の位置及び姿勢を制御する。
【0027】
ロボット100に対して、グローバル座標系が定義される。例えば図1に示すように、ロボット100の基部を原点としてX、Y、Z軸方向にグローバル座標系を定義し、ロボット100の基本姿勢を定める。また、ロボットハンド300に対しても、ローカル座標系(不図示)が定義されている。これらの基本姿勢及び座標系に基づいて、ロボット100の各関節の制御や、ロボットハンド300の目標位置の教示などが行われる。
【0028】
操作者は、ロボット100に対して、ロボットハンド300の作業時の目標位置を教示する。目標位置は、ロボット100が作業を行う対象であるワーク200に対して設定されている。ワーク200はロボット100の作業現場に設置されている。後述するように、本実施の形態1に係るロボット100では、ロボット100に目標位置を教示する際に、操作者によりロボット100の関節の駆動を制御することで、ロボットハンド300の位置の補正を行う。
【0029】
次に、図2乃至図8を参照して、ロボットハンド300の詳細な構成について説明する。図2は、ロボットハンド300を下方向から見た場合の構成図である。ロボットハンド300は、ブッシュ把持部310と、フロート部320と、を備えている。ロボットハンド300は、取り付け具101を介して、ロボット100の先端部に取り付けられている。ブッシュ把持部310は、ワーク200に備えられているブッシュ210を把持する。フロート部320は、ブッシュ把持部310を保持し、また、水平面内で移動可能に構成されている。
【0030】
図3は、ブッシュ把持部310の構成を示す断面図である。ブッシュ把持部310は、チャック部312と、撮像部としてのCCDカメラ313と、を備えている。CCDカメラ313は、レンズ314の位置がロボットハンド300の中央部になるように配置される。レンズ314の向きは、ロボットハンド300の正面方向に調整されている。すなわち、CCDカメラ313は、ロボットハンド300がブッシュ210に対向した状態で、ブッシュ210を撮像するように配置されている。CCDカメラ313により撮像された画像は、モニター(不図示)に表示される。このようにCCDカメラ313を配置することで、モニターを確認することで、ワーク200に備えられたブッシュ210とロボットハンド300との相対的な位置関係を容易に把握することができる。
【0031】
また、図3に示すように、ブッシュ把持部310の内周面311の形状は、テーパー形状に形成されている。ブッシュ把持部310にブッシュ210を挿入する際には、ブッシュ把持部310の内周面311がブッシュ210の外周に当接する。従って、このようにブッシュ把持部310の内周面311の形状を構成することで、ブッシュ210を容易に挿入することができる。
【0032】
ブッシュ210の側面には、ロボットハンド300に対向する側に、目標マークが備えられている。目標マークはワーク200に設定される目標位置を基準として備えられている。例えば、図4に示すように、ブッシュ210の側面には、目標マークとしての十字マークが記載された栓が取り付けられている。ここでは、ワーク200に設定される目標位置と、十字マークの中心位置とが同一の軸上に位置するように栓が配置される。これにより、操作者は、CCDカメラ313で撮像されたブッシュ210の十字マークと、モニターの基準位置(例えば、モニターに設定された十字マーク)との位置関係を確認することで、ロボットハンド300とブッシュ210の中心との間の相対的な位置ズレ量を容易に把握することができる。
【0033】
図5は、ロボットハンド300の構成を示す正面図である。図5に示すように、ロボットハンド300の中央部にCCDカメラ313が配置されている。CCDカメラ313は、ロボットハンド300の前方を撮像することができる。また、チャック部312は、チャック爪312a、312b、312cを備えている。チャック部312は、チャック爪312a、312b、312cを開閉させることで、ブッシュ把持部310に挿入されたブッシュ210を把持する。具体的には、チャック部312は、チャック部312に供給される空気の空気圧を制御することで、チャック爪312a、312b、312cの開閉を制御する。尚、図5では、チャック爪312a、312b、312cが開いた状態を示しており、ブッシュ把持部310にはブッシュ210は未だ挿入されていない。
【0034】
操作者は、ロボット100の作業現場を囲う柵の外において、CCDカメラ313により撮像された画像をモニターで確認しながら、ロボットハンド300の位置を補正する。すなわち、操作者は、モニターに映し出されたワーク200を確認しながら、ロボットハンド300の位置を広範囲から狭範囲にかけて補正することで、ロボットハンド300をワーク200へと近づけてゆく。さらに、操作者は、モニターでブッシュ210の十字マークを確認しながら、映し出されたブッシュ210の十字マークがモニターの基準位置に重なるように、ロボットハンド300の位置を補正する。
【0035】
そして、操作者は、ロボット100の関節の駆動を制御して、ブッシュ把持部310にブッシュ210を把持させる。具体的には、ロボットハンド300のブッシュ把持部310をブッシュ210に押し当てることで、ブッシュ把持部310にブッシュ210を挿入させる。そして、チャック部312によりブッシュ210を把持することで、ブッシュ210に対してブッシュ把持部310の位置を固定させる。これにより、ロボットハンド300は、ブッシュ210をブッシュ把持部310に嵌合して把持する。
【0036】
図6は、ブッシュ210を把持した状態での、ロボットハンド300の構成を示す断面図である。図6では、予めワーク200に対してブッシュ210が挿入されており、ブッシュ210はワーク200の所定の位置に固定されている。例えば、ブッシュ210は、ワーク200の凹部に挿入されている。そして、チャック部312が閉じた状態となることで、ブッシュ把持部310によりブッシュ210が把持されている。
【0037】
ここで、図7を参照して、ロボットハンド300の構成についてより詳細に説明する。図7では、フロート部320をドットによるハッチングで示し、ズレ量検出部330を斜線によるハッチングで示している。
【0038】
フロート部320は、ブッシュ把持部310を保持する。また、フロート部320は、ブッシュ把持部310を保持した状態で、水平面内で移動可能に構成されている。フロート部320は、移動方向が水平となるように、ロボットハンド300に取り付けられている。フロート部320はブッシュ把持部310を保持しており、ブッシュ把持部310に加わる外力に対して水平方向(図においては上下方向)のみに移動し、垂直方向(図においては左右方向)には移動しない。フロート部320は、ボールによりその基部が円滑に可動されると共に、供給される空気の空気圧が制御されることで、その可動が制限される。これにより、ブッシュ210をブッシュ把持部310に挿入する際には、フロート部320を水平面内で移動させることで、ズレ量を吸収しながら挿入することができる。また、ブッシュ把持部310にブッシュ210を保持した状態で、水平面内で移動可能とすることで、ロボットハンド300の中央部とワーク200の目標位置との位置関係をより明確にすることができる。
【0039】
ズレ量検出部330は、フロート部320が移動する水平面内における、ロボットハンド300の基準位置に対するブッシュ把持部310のズレ量を検出する。ズレ量検出部330は、変位センサー340と、接触部321を備えている。
【0040】
変位センサー340は、フロート部320が移動可能な水平面の方向に対して、その水平面の方向に直交する方向の変位量を検出する。変位センサー340は、フロート部320の水平面に対して直交する方向であって、ロボットハンド300の中心と同一の軸上に配置されている。
【0041】
接触部321は、フロート部320の側面に形成され、変位センサー340と接触する。また、接触部321は、水平面内における所定の基準位置(ここでは、ロボットハンド300の中央部)からのフロート部320の移動量に応じて、変位センサー340に接触する接触点の位置が変化するように形成されている。ここでは、接触部321は、所定の傾斜角度となるように形成されている。図7に示す例では、接触部321は、変位センサー340に向かって突出し、山型の形状に形成されている。このような接触部321及び変位センサー340の構成によれば、水平面内におけるズレ量を、水平面に直交する方向の変位量により検出することができる。
【0042】
図8を参照して、ズレ量検出部330によるズレ量検出方法について具体的に説明する。図8は、ズレ量検出部330によるズレ量検出方法を説明するための模式図である。ズレ量検出部330は、ブッシュ把持部310にブッシュ210が挿入され、チャック部312によりブッシュ210に対するブッシュ把持部310の位置が固定された場合に、変位センサー340による変位量を検出して、その検出した変位量を水平面の方向のズレ量に変換する。
【0043】
具体的には、図8(a)に示すように、ワーク200に設定された目標位置に対してロボットハンド300の中心が同一の軸上に位置する場合には、接触部321と変位センサー340とが互いに同一の軸上で接触する。すなわち、フロート部320が、フロート部320の基準位置(ここでは、ロボットハンド300の中心)に位置する場合には、変位センサー340の検出量は、所定の検出範囲の中で、最も小さな値をとる(例えば値として0を検出する)。
【0044】
一方で、図8(b)に示すように、ワーク200に設定された目標位置に対してロボットハンド300の中心が同一の軸上に位置しない場合には、接触部321と変位センサー340とが互いに同一の軸上で接触しない。すなわち、フロート部320が、フロート部320の基準位置(ここでは、ロボットハンド300の中心)から外れて位置する場合には、変位センサー340はフロート部320に向かって変位し、所定の検出範囲の中で、その変位量に応じた値を検出する。
【0045】
ズレ量検出部330は、変位センサー340により検出した変位量を、水平面に対する接触部321の傾斜角度に基づいて変換することで、水平面の方向のズレ量を検出する。これにより、1系統の変位センサーを用いて水平面方向のズレ量を検出することで、ロボット100に対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンド300の位置補正をより安価な構成で容易に実施して教示を行うことができる。尚、ズレ量検出部330によるズレ量の検出は、変位センサー340による検出量を表示カウンターに(不図示)により表示させ、操作者が、検出した変位量に基づいて、水平面の方向のズレ量を計算するものとしてもよい。
【0046】
続いて、実施の形態1に係るロボットハンド300の位置補正動作について説明する。図9は、ロボットハンド300の位置を補正する動作を説明するためのフローチャート図である。
【0047】
まず、操作者は、CCDカメラ313によりブッシュ210を撮像し、撮像したブッシュ210の目標マークとモニターの基準位置との関係から、ロボットハンド300とブッシュ210との相対的な位置ズレを認識する(ステップS101)。そして、認識した位置ズレが小さくなるようにロボット100の関節の駆動を制御して、ロボットハンド300の位置を広範囲から狭範囲にかけて補正する(ステップS102)。
【0048】
次いで、ロボットハンド300をワーク200の近傍に位置させた後に、ブッシュ把持部310をブッシュ210に押し当てて挿入し、さらに、チャック部312によりブッシュ210に対するブッシュ把持部310の位置を固定する(ステップS103)。
【0049】
次いで、ズレ量検出部330により、ロボットハンド300の基準位置に対する、水平面内におけるフロート部320のズレ量を検出する(ステップS104)。そして、検出したズレ量が小さくなるようにロボット100の関節の駆動を制御して、ロボットハンド300の位置を詳細な範囲で補正する(ステップS105)。
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、ロボットハンド300の中央部に搭載したCCDカメラ313によりブッシュ210の目標マークを撮像し、撮像した目標マークによってワーク200の目標位置との相対的な位置ズレを認識する。そして、その位置ズレが小さくなるようにロボットの関節の駆動を制御することで、ロボット100に対して広範囲から狭範囲にかけて目標位置を教示する場合においても、ロボットハンド300の位置補正を安価かつ容易に実施して教示を行うことができる。
【0051】
さらに、本発明によれば、ブッシュ210をブッシュ把持部310に挿入する際には、フロート部320を水平面内で移動させ、ブッシュ210した場合には、チャック部312によりブッシュ把持部310に対するブッシュ210の位置を固定する。そして、ブッシュ210に対してブッシュ把持部310が固定された状態で、1系統の変位センサーを用いて水平面方向のズレ量を検出することで、ロボット100に対してより詳細な範囲までの目標位置を教示する場合においても、ロボットハンド300の位置補正をより安価な構成で容易に実施して教示を行うことができる。
【0052】
その他の実施の形態
上述した実施の形態1では、CCDカメラ313がロボットハンド300の中央部に備えられるものとして説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、CCDカメラ313をロボットハンド300の側面に備えるようにしてもよい。尚、この場合には、CCDカメラ313により撮像された画像について、その画像中の基準位置に所定のオフセットを設定することで、CCDカメラ313の正面にブッシュ210の目標マークを捕らえることができない場合であっても、ブッシュ210とロボットハンド300との位置関係を精度良く把握することができる。尚、所定のオフセットは、ロボットハンド300がブッシュ210に対向した状態で、CCDカメラ313のレンズ314の向きを考慮して設定することができる。
【0053】
また、上述した実施の形態1では、ブッシュ210の目標マークについて、図4に示したようにブッシュ210に備えた栓の中央に配置した一つの十字マークを目標マークとして説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、ブッシュ210の栓の四隅にそれぞれ十字マークを配置してもよい。すなわち、目標マークは、CCDカメラ313により撮像が可能であり、ズレ量が識別可能なものであればよい。
【0054】
さらに、上述した実施の形態1では、変位センサー340は、フロート部320が移動可能な水平面に対して直交する方向であって、ロボットハンド300の中心と同一の軸上に配置されているものとして説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、接触部313に対するオフセットと位相を考慮することで、他の位置に配置するものとしてもよい。
【0055】
尚、本発明は上述した各実施の形態に限定されず、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、撮像部としてCCDカメラを例に説明したが本発明はこれに限定されない。すなわち、CMOSセンサーやラインセンサカメラであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 ロボット、
101 取り付け具、
200 ワーク、
210 ブッシュ、
300 ロボットハンド、
310 ブッシュ把持部、
311 内周面、
312 チャック部、
312a、312b、313c チャック爪、
313 CCDカメラ、
314 レンズ、
320 フロート部、
321 接触部、
340 変位センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節と、撮像部を有するロボットハンドと、を備えるロボットに対してワークに設定された目標位置を教示する際に、前記ロボットハンドの位置を補正する方法であって、
前記目標位置を基準として設けられた目標マークを前記撮像部により撮像して、当該撮像した目標マークと前記撮像部の撮像範囲の基準位置とから、前記ロボットハンドと前記目標位置との相対的な位置ズレを認識する認識ステップと、
前記認識した位置ズレが小さくなるように前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正する第1の位置補正ステップと、を備える
位置補正方法。
【請求項2】
前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられ、
前記ロボットハンドには前記目標マークに対向する側の中央部に、前記ロボットハンドを前記目標位置へと移動させて前記ワークに対向した状態で、前記目標マークの中心と前記撮像部の基準位置とが同一の軸上に位置するように、前記撮像部が備えられており、
前記第1の位置補正ステップは、
前記目標マークの中心と前記撮像部の基準位置とが重なるように、前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項3】
前記ロボットハンドには前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部が備えられ、
前記ブッシュの外周が当接する前記ブッシュ把持部の内周面は、テーパー形状に形成されており、
前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ブッシュ把持部に前記ブッシュを把持させるブッシュ把持ステップを更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の位置補正方法。
【請求項4】
前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられ、
前記ロボットハンドには、前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部と、前記ブッシュ把持部を保持すると共に水平面内で移動可能なフロート部と、が備えられており、
前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが挿入された場合に、前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置を固定するブッシュ把持ステップを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項5】
前記ロボットハンドには、前記水平面内における前記ロボットハンドの基準位置に対する前記ブッシュ把持部のズレ量を検出するズレ量検出部が備えられており、
前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記ズレ量検出部により前記水平面おける前記ズレ量を検出するズレ量検出ステップと、
前記検出したズレ量が小さくなるように前記ロボットの関節の駆動を制御して前記ロボットハンドの位置を補正する第2の位置補正ステップと、を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の位置補正方法。
【請求項6】
前記ズレ量検出部は、
前記ロボットハンドに備えられ前記水平面に直交する方向の変位量を検出する変位センサーと、
前記フロート部に備えられ当該変位センサーに接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記水平面内における基準位置からの前記フロート部の移動量に応じて、前記変位センサーに接触する接触点の位置が変化するように形成されており、
前記ズレ量検出ステップは、
前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記変位センサーによる変位量を検出して、当該検出した変位量を前記水平面の方向のズレ量に変換する
ことを特徴とする請求項5に記載の位置補正方法。
【請求項7】
ワークに設定された基準位置を基準として設けられた目標マークを撮像する撮像部を備え、
前記撮像部は、
前記ワークに対向させた場合に、前記目標マークの中心と当該撮像部の基準位置とが同一の軸上に位置するように配置される
ことを特徴とするロボットハンド。
【請求項8】
前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられており、
前記ロボットハンドは、
前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部を更に備え、
前記ブッシュの外周が当接する前記ブッシュ把持部の内周面は、テーパー形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記ワークにはブッシュが挿入され、当該ブッシュには前記ロボットハンドに対向する側に前記目標位置を基準として前記目標マークが備えられており、
前記ロボットハンドは、
前記ブッシュに対向する側に当該ブッシュを嵌合して把持するブッシュ把持部と、
前記ブッシュ把持部を保持すると共に水平面内で移動可能なフロート部と、
前記ブッシュ把持部に前記ブッシュを挿入した場合に、当該ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置を固定するチャック部と、を更に備える
ことを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記ロボットハンドは、
前記水平面内における前記ロボットハンドの基準位置に対する前記ブッシュ把持部のズレ量を検出するズレ量検出部を更に備える
ことを特徴とする請求項9に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記ズレ量検出部は、
前記水平面に直交する方向の変位量を検出する変位センサーと、
前記フロート部に備えられ当該変位センサーに接触する接触部と、を備え、
前記接触部は、前記水平面内における基準位置からの前記フロート部の移動量に応じて、前記変位センサーに接触する接触点の位置が変化するように形成されており、
前記ブッシュ把持部に前記ブッシュが把持されて前記チャック部により前記ブッシュに対する前記ブッシュ把持部の位置が固定された場合に、前記変位センサーによる変位量を検出して、当該検出した変位量を前記水平面の方向のズレ量に変換する
ことを特徴とする請求項10に記載のロボットハンド。
【請求項12】
請求項7乃至11いずれか1項に記載のロボットハンドと、
複数の関節と、
前記関節の駆動を制御する制御盤と、を備える
ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−188432(P2010−188432A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32250(P2009−32250)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】