ロボットハンドシステム
【課題】ロボットの手先に取り付けられるOリング装着ハンドを含むロボットハンドシステムを得る。
【解決手段】ロボットハンドシステムは、環状の先端部を持つ外筒と、外筒内でばね偏倚されて、先端部にOリングを保持し得て、外筒の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、この円筒部が外筒の先端部から突出した突出位置と先端部内に後退した後退位置との間で摺動できる内筒とを備えている。Oリング供給ジグも共に使用できる。
【効果】駆動のための動力が不要である。
【解決手段】ロボットハンドシステムは、環状の先端部を持つ外筒と、外筒内でばね偏倚されて、先端部にOリングを保持し得て、外筒の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、この円筒部が外筒の先端部から突出した突出位置と先端部内に後退した後退位置との間で摺動できる内筒とを備えている。Oリング供給ジグも共に使用できる。
【効果】駆動のための動力が不要である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット用Oリング装着ハンドとロボット用Oリング供給ジグとを備えてOリングの組み付け作業を行うロボットハンドシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のOリングの装着装置としては例えば特許文献1記載のものがある。この装置は、Oリングが仮装着されるテーパ状外周部を有するガイドと、ガイドの小径部側が挿入される軸方向凹部を有し、ガイドのテーパ状外周部に沿って軸方向移動自在に装着され、テーパ状外周部に装着されたOリングをガイドの大径部側に移動可能な押圧治具とを有するOリングの装着装置である。ガイドに押圧治具が装着され、Oリングがガイドの大径部側に移動した状態で、ガイドの大径部を、Oリングが装着される予定のワーク付近まで移動させ、押圧治具をワーク方向に沿って軸方向にさらに移動させ、ガイドの大径部に装着されたOリングをワークの外周に移動させて装着させる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−108959号公報(2頁パラグラフ0007〜0012、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のOリングの装着装置は以上のように構成されているので、ガイドの形状として、ワーク側が大径で、それと逆側が小径のテーパとして、ガイドにOリングを装着する際は小径側からOリングを取り付けなくてはならない。従って、Oリングを供給する装置をガイドの小径側に配置しなくてはならず、全長が長くなり全体がかさばる問題点があった。更に小径部側には押圧治具をスライドさせて挿入させるため、そのストローク分、装着装置の全長が長くなっていた。
【0005】
このため、この装着装置をロボット先端に取り付けることを考えると、Oリングを押し出す方向に細長いガイドなどと、その上部からOリングを供給する装置が一体になったものを取り付けなくてはならず、装置全体が重くなりかさばる問題点があった。また押圧治具をスライドさせるためのエアシリンダなどのアクチュエータが必要なので、更に装置が重くなりかさばる問題点がある。また押圧治具をスライドさせるためのエアシリンダなどのアクチュエータへ動力を供給する配管が必要になるので、配管がロボットの動作のじゃまになる問題点もあった。
【0006】
従ってこの発明の目的は、ロボットの手先に取り付けられるOリング装着ハンドを含むOリングの組み付け作業用のロボットハンドシステムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のロボットハンドシステムは、Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるロボット用Oリング装着ハンドであって、ロボットに取り付けられ、環状の先端部を持つ外筒と、上記外筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記外筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである内筒と、上記外筒と上記内筒との間に設けられ、上記内筒を上記突出位置に常時付勢するばねとを備えたロボット用Oリング装着ハンドを備えたことを特徴とするロボットハンドシステムである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ロボットの手先に取り付けられ、駆動のための動力が不要なロボット用Oリング装着ハンドを持ったロボットハンドシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜11は本発明の実施の形態1によるOリング装着ハンド1およびOリング供給ジグ2を備えたロボットハンドシステムを示す図であり、図1はロボットハンドシステムの概略図である。ロボットハンドシステムは、ロボット3の手首4に取り付けられて、Oリング5を保持したOリング装着ハンド1を用いて、Oリング5を取り付けるべき物品6の溝7にOリング5を挿入するためのものである。
【0010】
図1において、Oリング装着ハンド1にOリング5を供給して仮装着させるためのOリング供給ジグ2は、後に詳しく説明するように、Oリング5を保持して案内されてOリング5の径方向に開閉してOリング5をOリング装着ハンド1に供給する複数の指状のジグ内片8と、ジグ内片8上でOリング5の軸方向に移動してジグ内片8上に保持されたOリング5をOリング装着ハンド1上に押して移送するジグ外片9とを備えている。ジグ内片8は径方向に配置されたレール10によって案内されて移動する。Oリング5のOリング供給ジグ2への供給は別のロボット11によって操作されるOリング把持ハンド12によって行われる。
【0011】
図2および図3には図1に示すOリング装着ハンド1の詳細を示し、図2において、Oリング装着ハンド1は、ロボット3の手首4に後端部に設けられたフランジ13によって取り付けられ、円筒形内周面14を持つ中空円筒体である外筒15を備えている。外筒15は、後端部16がロボット3の手首4によって閉ざされていて、先端部17は開放されていて環状をなし、外周面が先細りにテーパしていて、先端部17には環状端面18が形成されている。
【0012】
外筒15内には、円筒形内周面14上を摺動できるように軸方向移動可能に支持されたほぼ円筒形の内筒19が設けられている。内筒19は、外筒15の閉じた後端部16に面する後端面20と、外筒15の先端部17の開口に望んだ先端面21とを有している。内筒19はまた、先端面21に隣接した先端部22に設けられた円筒部23を備えている。この円筒部23は、図示のように、その外周面上にOリング5を保持し得て、外筒15の環状の先端部17に対して軸方向に摺動可能である。図2に示す突出位置では、円筒部23は外筒15の先端部17の環状端面18から突出している。図3に示す後退位置では、円筒部23は先端部17内に後退していて、その先端面21が先端部17の環状端面18に対して軸方向に同じあるいは後退した位置にある
【0013】
外筒15の閉じた後端部16と内筒19の後端面20との間には、内筒19を図2に示す突出位置に常時付勢するばね24が設けられている。また、内筒19を図示の突出位置に保持するために、外筒15と内筒19との間に設けられて互いに係合して、内筒19の外筒15に対する移動範囲を制限するストッパ25を備えている。図示の例では、ストッパ25は、内筒19の外周から突出したピン26と、外筒15に設けられてピン26を受け入れる軸方向に長い長孔27とによって構成されている。
【0014】
円筒部の直径は、Oリング5を装着すべき部分である物品6に形成されたOリング5を嵌め込むための円形のOリング溝7の内径と同じ直径にされている。また、外筒15および内筒19は、Oリング溝7が彫られた物品6の材質より柔らかい材質で製作することが望ましい。
【0015】
次に図2および3を用いてこの発明のロボットハンドシステムのOリング装着ハンド1の動作について説明する。内筒19の円筒部23にOリング5を嵌められたロボット3は、Oリング装着ハンド1を物品6の溝7へ接近させ、ロボット手首4の姿勢を調整して図2のように物品6の溝7が彫られた面に対して内筒19の中心線が図2のように直角になる姿勢とし、図2のように溝7の中心に対して内筒19の中心を合わせる。
【0016】
次にロボット3はロボット手首4に取り付けられたOリング装着ハンド1の内筒19の先端面21を、物品6に押し当て、さらにばね24の作用に抗して溝7が彫られた物品6の面に対して押し込んでいく。内筒19は物品6の面に押し当てられることで外筒15から後退し、この動作にともない内筒19の円筒部23にはめられたOリング5は外筒15の環状端面18に押し出されて溝7にはめこまれる。この状態が図3に示されている。
【0017】
その後、ロボット3によってOリング装着ハンド1を持ち上げると、ばね24の作用により、内筒19はストッパ25が当接するまで外筒15から突出し、再びOリング5を内筒19の円筒部23に仮装着することができる位置となる。
【0018】
図4には、この発明のロボットハンドシステムにおいて、内筒19にOリング5を仮装着するためのOリング供給ジグ2を斜視図で示してある。Oリング供給ジグ2は、Oリング5を保持してOリング5の径方向に開閉してOリング5をOリング装着ハンド1に供給する複数のジグ内片30と、ジグ内片30上でOリング5の軸方向に移動してジグ内片30上に保持されたOリング5をOリング装着ハンド1上に移送するジグ外片31とを備えている。また、Oリング供給ジグ2は、ジグ内片30を径方向に案内する放射状に配置されたレール32を備えている。
【0019】
図示の例では、ジグ内片30は、比較的厚い管状体を周方向に8等分してそれぞれ扇形断面を持つ8つの等しい柱状体としたものであり、組み合わされて、Oリング5を仮装着するための外周部分33を形成している。それぞれのジグ内片30は、図示してない架台上に放射状に取り付けられた複数のレール32上にスライダ34によって摺動自在に取り付けられ、Oリング5を仮装着する外周部分33の中心を中心として放射状に移動可能である。それぞれのジグ内片30には、ジグ外片31が図示してないスライド機構によって上下方向すなわち軸方向に摺動自在に取り付けられている。ジグ内片30およびジグ外片31はそれぞれモータまたはエアシリンダ(図示していない)などに連結されていて、それぞれ放射方向および軸方向に駆動される。図4に示す状態は、ジグ内片30が互いに(僅かな間隙があるが)近づいて全体として外径がOリング5の内径よりも小さな円管状をなし、Oリング5を外周部分33に嵌めてジグ外片31上に乗せることができる閉位置である。
【0020】
図5〜11には、Oリング供給ジグ2の動作を示してある。図5において、図4に示すようにジグ内片30が閉位置にあり、ジグ内片30の外周部分33がジグ外片31から突出した状態で、ロボット11に取り付けられたOリング把持ハンド12を用いてOリング5をジグ内片30の外周部に置く。Oリング5がジグ内片30の円筒部即ち外周部分33の外側でジグ外片31上に配置した状態を図6に示す。次にそれぞれのジグ内片30を適当な駆動源によりレール32に沿って径方向外側に移動させてジグ内片30を開位置にし、Oリング5を広げて図7の状態にする。
【0021】
この状態で、図8に示すように、Oリング装着ハンド1を、Oリング供給ジグ2に対して中心が合わされた位置に移動させ、次に図9に示すように、Oリング装着ハンド1をOリング供給ジグ2に突き合わせる。この位置では、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23とOリング供給ジグ2のジグ内片30の外周部分33とが一致していて、それらの外周面が同じ円筒面内に位置していて、Oリング供給ジグ2の外周部分33上に保持されているOリング5をOリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23上に移送して保持させることができる。
【0022】
次に、図9に示す位置から、Oリング供給ジグ2のジグ外片31を上方へ移動させて図10に示す位置に動かし、Oリング5を外周部分33に沿って軸方向にずらしていって、Oリング装着ハンド1の円筒部23上に移送して仮装着する。この位置から、図11に示すように、Oリング装着ハンド1を軸方向に上昇させれば、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23にOリング5が仮装着され図1および2に示すようになる。
【0023】
なお、Oリング把持ハンド12でOリング5を把持する際には、図示してないパレット内にバラ積みになったOリング5の位置と姿勢を2Dまたは3Dのビジョンセンサで検出してロボットを制御して把持するようにするのが望ましい。Oリング5を水平に支持した棒にあらかじめ人手で通してぶら下げておき、このOリング5の位置と姿勢を2Dまたは3Dのビジョンセンサで検出してロボットを制御して把持することもできる。
【0024】
この構成によれば、Oリング5の内筒19への取付が内筒19の先端側から行われるので、外筒15と内筒19の間の移動ストロークを大きくとる必要がないので全体の長さを短くすることができ、またOリング5の装着動作はロボットが動作することにより行うのでOリング装着装置自体にエアシリンダやモータなどのアクチュエータを設ける必要がないため軽量化できてかさばることがなく、また動力を供給する配管が必要ないので配管がロボットの動作のじゃまにならない効果がある。
【0025】
なお本実施例ではOリング5を物品6の平面に彫られた円形のOリング溝7にはめこむ作業を例にとって説明したが、円筒形の物品に設けられた周方向のOリング溝にOリングをはめこむ作業に用いることもできる。また、ここに説明したOリング供給ジグ2においては、放射状に設置したジグ内片30、ジグ外片31、レール32が8個設けられている例を説明したが、Oリング5の拡径に不都合が無い限り、2個以上何個でもよい。
【0026】
実施の形態2.
図12は本発明の実施の形態2によるOリング装着ハンド41を示す断面図である。このOリング装着ハンド41の基本的構成は、図1〜3に示すOリング装着ハンド1と同様であるが、図1〜3における外筒15の内部にばね24によって突出位置に偏倚されて設けられ、先端部22にOリング5を仮装着できる円筒部23を有する内筒19が、中空にされていて、内部に外筒15と内筒19の関係と同様の第2の内筒42を備えていることが相違している。このような入れ子式に二重になった関係の構成により、直径の異なる2種類のOリングを装着することができるのである。
【0027】
即ち、図12に示す例においては、Oリング装着ハンド41は、図1〜3と同様のロボット3の手首4に取り付けることができて、環状の先端部17を持つ中空の外筒15と、
外筒15内で軸方向移動可能に支持され、先端部22に設けられてOリング5を保持し得て外筒15の環状の先端部17に対して軸方向に摺動可能な円筒部23を持ち、円筒部23が外筒15の先端部17から突出した突出位置(図2)および円筒部23が先端部17内に後退した後退位置(図3)間で摺動し得るものである内筒42と、外筒15と内筒42との間に設けられ、内筒42を突出位置(図2)に常時付勢するばね24とを備えている。
【0028】
内筒42は、先端に環状の先端部43を持ち、後端部44でばね24によって附勢されている中空管状の円筒体であって、内部に第2の内筒45を軸方向移動可能に支持している。第2の内筒45は、先端部46に、Oリング5(図示してない)を保持し得て内筒42の環状の先端部43に対して軸方向に摺動可能な第2の円筒部47を持ち、この第2の円筒部47が、中空管状の内筒42の先端部43から突出した突出位置および第2の円筒部47が内筒42の先端部43内に後退した後退位置間で摺動し得るものである。
【0029】
また、外筒15と第2の内筒45との間には、第2の内筒45を中空管状の内筒42から突出した突出位置に常時付勢する第2のばね48が設けられている。第2の内筒45の動作範囲は、第2の内筒45に設けられたピン49と内筒42に設けられた長孔50とで構成された第2のストッパ51によって内筒42に対して規制されている。第2の内筒42の直径は図1〜3に示すOリング溝7よりも小さな直径の第2のOリング溝52の直径と同じにしてある。第2のばね48による付勢力はばね24よりも弱くしてある。
【0030】
次に動作について説明する。ロボット3は図1および4〜11に示すOリング供給ジグ2を用いて、先に説明したのと同様に、装着すべきOリング5の直径に応じて、内筒42の円筒部23にも、あるいは第2の内筒45の第2の円筒部47にもOリング5を仮装着できる。仮装着したOリング5は、先に説明したのと同様にOリング装着ハンド41を操作して、Oリング5の大きさに応じて、物品のOリング溝7あるいは第2のOリング溝52のいずれかにOリング5を挿入して装着する。
【0031】
このとき、大きさの異なるOリング5の装着作業を、単一のOリング装着ハンド41で実行することができ、Oリング装着のためのロボットハンドをOリングの直径に合わせて交換する必要がないため、作業効率を極めて高くできる。
【0032】
また、このロボットハンドシステムにおいて、物品6に形成されているOリング溝7および第2のOリング溝52が同心に配置されている場合には、一度の装着動作によって異なる直径の2種のOリングを同時に装着することもできる。この場合、先に説明したのと同様に、図1および4〜11に示すOリング供給ジグ2を用いて、内筒42の円筒部23に直径の大きなOリング5を仮装着し、さらに第2の内筒45の第2の円筒部47に直径が小さなOリング5を仮装着する。この仮装着の順番はどちらが先でも良い。
【0033】
次に、直径の異なる2種のOリング5が仮装着されたOリング装着ハンド41は、先に説明したのと同様に、物品6のOリング溝7および第2のOリング溝52に接近させ、Oリング装着ハンド41の第2の内筒45を物品6に押し当てて第2のばね48のばね作用に抗して押し込んでいく。第2のばね48はばね24より弱いので、第2の内筒45は物品6の面に押し当てられて内筒42から引っ込み、この動作にともない第2の内筒45にはめられていたOリング5は内筒45の端面に押し出されて第2のOリング溝52に装着される。Oリング装着ハンド41を更に物品に押し付けると、内筒42の先端部43物品6に当たり、外筒15内に押し込まれ、内筒42の円筒部23に仮装着されていたOリング5が外筒15の環状の先端部17によってOリング溝7内に挿入される。
【0034】
なおここに説明して図示した例では、内筒42の内側に第2の内筒45を取り付けた二重の構造であるが、第2の内筒45の更に内側により小さな内筒を取り付けてもよく、何重の構造としてもよい。
【0035】
実施の形態3.
図13〜17には、この発明の実施の形態3によるロボットハンドシステムにおけるOリング装着ハンド1およびOリング供給ジグ2の構成とそれらの動作とを示す。これらの図において、Oリング装着ハンド1の内筒19のOリング5を仮装着するための円筒部23は、円周面にOリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53を受け入れる複数の切込み部54を持っている。Oリング供給ジグ2のジグ内片30には図4等に示されているジグ外片31は設けられていない。その他の構成は図1〜3に示すものと同様である。内筒19の円筒部23に設けた切込み部54の深さ即ち径方向寸法は、Oリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53の外周部分である外周部分33の直径との関係で定めてある。即ち、ジグ内片30が、レール32上を径方向に内側に移動して外周部分33の直径が最も小さくなった状態では、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より小になり、またジグ内片30の外周部分33の直径が最も大きくなった状態では、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より大になるようにしてある。換言すれば、切り込み部54の径方向寸法は、ジグ内片30が径方向に移動できる範囲が、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より小になる位置と、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より大になる位置とに亘る範囲とするような径方向寸法であることである。
【0036】
図示の例では、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23の外周には長手方向に4本の溝状の切り込み部54が等配に切ってある。外筒15の中空部に内筒19がはまる点等のその他の構成は先に説明した実施の形態と同様である。Oリング供給ジグ2のジグ内片30も4個あり、実施の形態1で説明したのと同様、ジグ内片30はレール32に沿って同期してモータなど(図示していない)により駆動される。図4等に示すジグ外片31は設けてない。
【0037】
次に動作について順に説明する。実施の形態1の手順と同様にして、図13に示すOリング装着ハンド1の内筒19を、図14に示すようにOリング5が嵌められたOリング供給ジグ2のジグ内片30の外周部分33に近づけ、図15に示すようにOリング装着ハンド1の内筒19の切り込み部54に、Oリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53を挿入する。この際、内筒19の切り込み部54ジグ内片30の位相が一致するようにし、またジグ内片30の外周部分33の直径が、内筒19の円筒部23の直径より大になるようにして、Oリング5が拡張されて内筒19の円筒部23に嵌るようにジグ内片30の位置を調整しておく。次にこの状態から、図16に示すようにジグ内片30を閉じていき、やがてジグ内片30の外周が内筒19の外周より小になると、Oリング5がジグ内片30の外周部分33から内筒19の円筒部23上に移る。ここでロボット3を動作させてOリング装着ハンド1を上昇させると、図17に示すようにOリング5が内筒19に仮装着されることになる。
【0038】
Oリング装着ハンド1からOリング5を物品6のOリング溝7に装着するときの手順は実施の形態1と同様である。
【0039】
このロボットハンドシステムによれば、Oリング装着ハンド1の内筒19に切り込み部54である長手方向の溝を設け、そこにOリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53がはまるように構成したことで内筒19の円筒部23の直径とジグ内片30の外周部分33の直径の差を近づけられるので、内筒19にOリング5を取り付ける際にOリング5を大きく伸ばさないでもすむ効果がある。
【0040】
なお内筒19の溝とジグ内片30の個数を4個としたが、両者が等しくて1個以外なら何個でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1によるロボットハンドシステムを示す概略図である。
【図2】図1に示すロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを突出位置で示す概略断面図である。
【図3】図2に示すOリング装着ハンド1を後退位置で示す概略断面図である。
【図4】図1に示すロボットハンドシステムのOリング供給ジグの斜視図である。
【図5】図4のOリング供給ジグにOリング把持ハンドでOリングを装荷する様子を示す説明図である。
【図6】Oリング供給ジグにOリングが装荷された状態を示す斜視図である。
【図7】Oリング供給ジグによりOリングが拡径された状態を示す説明図である。
【図8】Oリング供給ジグにOリング装着ハンドを近付けた状態を示す説明図である。
【図9】Oリング供給ジグにOリング装着ハンドを当接させた状態を示す説明図である。
【図10】Oリング供給ジグによりOリングをOリング装着ハンドに移送した状態を示す説明図である。
【図11】Oリング供給ジグからOリング装着ハンドへのOリングの移送が完了した状態を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2によるロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを示す概略断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3によるロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを示す部分斜視図である。
【図14】図13に示すOリング装着ハンドと共に用いるOリング供給ジグの斜視図である。
【図15】図13のOリング装着ハンドに拡径されたOリングが装荷されたOリング供給ジグが嵌められた様子を示す説明図である。
【図16】Oリング供給ジグからOリングがOリング装着ハンドに移送された状態を示す斜視図である。
【図17】Oリング装着ハンドにOリングが仮装着された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1、41 Oリング装着ハンド、2 Oリング供給ジグ、3 ロボット、5 Oリング、14 円筒形内周面、15 外筒、16 後端部、17 先端部、19、42 内筒、20、44 後端面、22、46 先端部、23 円筒部、24 ばね、25 ストッパ、30 ジグ内片、31 ジグ外片、32 レール、33 外周部分、45 第2の内筒、47 第2の円筒部、48 第2のばね、51 第2のストッパ、54 切込み部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット用Oリング装着ハンドとロボット用Oリング供給ジグとを備えてOリングの組み付け作業を行うロボットハンドシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のOリングの装着装置としては例えば特許文献1記載のものがある。この装置は、Oリングが仮装着されるテーパ状外周部を有するガイドと、ガイドの小径部側が挿入される軸方向凹部を有し、ガイドのテーパ状外周部に沿って軸方向移動自在に装着され、テーパ状外周部に装着されたOリングをガイドの大径部側に移動可能な押圧治具とを有するOリングの装着装置である。ガイドに押圧治具が装着され、Oリングがガイドの大径部側に移動した状態で、ガイドの大径部を、Oリングが装着される予定のワーク付近まで移動させ、押圧治具をワーク方向に沿って軸方向にさらに移動させ、ガイドの大径部に装着されたOリングをワークの外周に移動させて装着させる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−108959号公報(2頁パラグラフ0007〜0012、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のOリングの装着装置は以上のように構成されているので、ガイドの形状として、ワーク側が大径で、それと逆側が小径のテーパとして、ガイドにOリングを装着する際は小径側からOリングを取り付けなくてはならない。従って、Oリングを供給する装置をガイドの小径側に配置しなくてはならず、全長が長くなり全体がかさばる問題点があった。更に小径部側には押圧治具をスライドさせて挿入させるため、そのストローク分、装着装置の全長が長くなっていた。
【0005】
このため、この装着装置をロボット先端に取り付けることを考えると、Oリングを押し出す方向に細長いガイドなどと、その上部からOリングを供給する装置が一体になったものを取り付けなくてはならず、装置全体が重くなりかさばる問題点があった。また押圧治具をスライドさせるためのエアシリンダなどのアクチュエータが必要なので、更に装置が重くなりかさばる問題点がある。また押圧治具をスライドさせるためのエアシリンダなどのアクチュエータへ動力を供給する配管が必要になるので、配管がロボットの動作のじゃまになる問題点もあった。
【0006】
従ってこの発明の目的は、ロボットの手先に取り付けられるOリング装着ハンドを含むOリングの組み付け作業用のロボットハンドシステムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のロボットハンドシステムは、Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるロボット用Oリング装着ハンドであって、ロボットに取り付けられ、環状の先端部を持つ外筒と、上記外筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記外筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである内筒と、上記外筒と上記内筒との間に設けられ、上記内筒を上記突出位置に常時付勢するばねとを備えたロボット用Oリング装着ハンドを備えたことを特徴とするロボットハンドシステムである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ロボットの手先に取り付けられ、駆動のための動力が不要なロボット用Oリング装着ハンドを持ったロボットハンドシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜11は本発明の実施の形態1によるOリング装着ハンド1およびOリング供給ジグ2を備えたロボットハンドシステムを示す図であり、図1はロボットハンドシステムの概略図である。ロボットハンドシステムは、ロボット3の手首4に取り付けられて、Oリング5を保持したOリング装着ハンド1を用いて、Oリング5を取り付けるべき物品6の溝7にOリング5を挿入するためのものである。
【0010】
図1において、Oリング装着ハンド1にOリング5を供給して仮装着させるためのOリング供給ジグ2は、後に詳しく説明するように、Oリング5を保持して案内されてOリング5の径方向に開閉してOリング5をOリング装着ハンド1に供給する複数の指状のジグ内片8と、ジグ内片8上でOリング5の軸方向に移動してジグ内片8上に保持されたOリング5をOリング装着ハンド1上に押して移送するジグ外片9とを備えている。ジグ内片8は径方向に配置されたレール10によって案内されて移動する。Oリング5のOリング供給ジグ2への供給は別のロボット11によって操作されるOリング把持ハンド12によって行われる。
【0011】
図2および図3には図1に示すOリング装着ハンド1の詳細を示し、図2において、Oリング装着ハンド1は、ロボット3の手首4に後端部に設けられたフランジ13によって取り付けられ、円筒形内周面14を持つ中空円筒体である外筒15を備えている。外筒15は、後端部16がロボット3の手首4によって閉ざされていて、先端部17は開放されていて環状をなし、外周面が先細りにテーパしていて、先端部17には環状端面18が形成されている。
【0012】
外筒15内には、円筒形内周面14上を摺動できるように軸方向移動可能に支持されたほぼ円筒形の内筒19が設けられている。内筒19は、外筒15の閉じた後端部16に面する後端面20と、外筒15の先端部17の開口に望んだ先端面21とを有している。内筒19はまた、先端面21に隣接した先端部22に設けられた円筒部23を備えている。この円筒部23は、図示のように、その外周面上にOリング5を保持し得て、外筒15の環状の先端部17に対して軸方向に摺動可能である。図2に示す突出位置では、円筒部23は外筒15の先端部17の環状端面18から突出している。図3に示す後退位置では、円筒部23は先端部17内に後退していて、その先端面21が先端部17の環状端面18に対して軸方向に同じあるいは後退した位置にある
【0013】
外筒15の閉じた後端部16と内筒19の後端面20との間には、内筒19を図2に示す突出位置に常時付勢するばね24が設けられている。また、内筒19を図示の突出位置に保持するために、外筒15と内筒19との間に設けられて互いに係合して、内筒19の外筒15に対する移動範囲を制限するストッパ25を備えている。図示の例では、ストッパ25は、内筒19の外周から突出したピン26と、外筒15に設けられてピン26を受け入れる軸方向に長い長孔27とによって構成されている。
【0014】
円筒部の直径は、Oリング5を装着すべき部分である物品6に形成されたOリング5を嵌め込むための円形のOリング溝7の内径と同じ直径にされている。また、外筒15および内筒19は、Oリング溝7が彫られた物品6の材質より柔らかい材質で製作することが望ましい。
【0015】
次に図2および3を用いてこの発明のロボットハンドシステムのOリング装着ハンド1の動作について説明する。内筒19の円筒部23にOリング5を嵌められたロボット3は、Oリング装着ハンド1を物品6の溝7へ接近させ、ロボット手首4の姿勢を調整して図2のように物品6の溝7が彫られた面に対して内筒19の中心線が図2のように直角になる姿勢とし、図2のように溝7の中心に対して内筒19の中心を合わせる。
【0016】
次にロボット3はロボット手首4に取り付けられたOリング装着ハンド1の内筒19の先端面21を、物品6に押し当て、さらにばね24の作用に抗して溝7が彫られた物品6の面に対して押し込んでいく。内筒19は物品6の面に押し当てられることで外筒15から後退し、この動作にともない内筒19の円筒部23にはめられたOリング5は外筒15の環状端面18に押し出されて溝7にはめこまれる。この状態が図3に示されている。
【0017】
その後、ロボット3によってOリング装着ハンド1を持ち上げると、ばね24の作用により、内筒19はストッパ25が当接するまで外筒15から突出し、再びOリング5を内筒19の円筒部23に仮装着することができる位置となる。
【0018】
図4には、この発明のロボットハンドシステムにおいて、内筒19にOリング5を仮装着するためのOリング供給ジグ2を斜視図で示してある。Oリング供給ジグ2は、Oリング5を保持してOリング5の径方向に開閉してOリング5をOリング装着ハンド1に供給する複数のジグ内片30と、ジグ内片30上でOリング5の軸方向に移動してジグ内片30上に保持されたOリング5をOリング装着ハンド1上に移送するジグ外片31とを備えている。また、Oリング供給ジグ2は、ジグ内片30を径方向に案内する放射状に配置されたレール32を備えている。
【0019】
図示の例では、ジグ内片30は、比較的厚い管状体を周方向に8等分してそれぞれ扇形断面を持つ8つの等しい柱状体としたものであり、組み合わされて、Oリング5を仮装着するための外周部分33を形成している。それぞれのジグ内片30は、図示してない架台上に放射状に取り付けられた複数のレール32上にスライダ34によって摺動自在に取り付けられ、Oリング5を仮装着する外周部分33の中心を中心として放射状に移動可能である。それぞれのジグ内片30には、ジグ外片31が図示してないスライド機構によって上下方向すなわち軸方向に摺動自在に取り付けられている。ジグ内片30およびジグ外片31はそれぞれモータまたはエアシリンダ(図示していない)などに連結されていて、それぞれ放射方向および軸方向に駆動される。図4に示す状態は、ジグ内片30が互いに(僅かな間隙があるが)近づいて全体として外径がOリング5の内径よりも小さな円管状をなし、Oリング5を外周部分33に嵌めてジグ外片31上に乗せることができる閉位置である。
【0020】
図5〜11には、Oリング供給ジグ2の動作を示してある。図5において、図4に示すようにジグ内片30が閉位置にあり、ジグ内片30の外周部分33がジグ外片31から突出した状態で、ロボット11に取り付けられたOリング把持ハンド12を用いてOリング5をジグ内片30の外周部に置く。Oリング5がジグ内片30の円筒部即ち外周部分33の外側でジグ外片31上に配置した状態を図6に示す。次にそれぞれのジグ内片30を適当な駆動源によりレール32に沿って径方向外側に移動させてジグ内片30を開位置にし、Oリング5を広げて図7の状態にする。
【0021】
この状態で、図8に示すように、Oリング装着ハンド1を、Oリング供給ジグ2に対して中心が合わされた位置に移動させ、次に図9に示すように、Oリング装着ハンド1をOリング供給ジグ2に突き合わせる。この位置では、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23とOリング供給ジグ2のジグ内片30の外周部分33とが一致していて、それらの外周面が同じ円筒面内に位置していて、Oリング供給ジグ2の外周部分33上に保持されているOリング5をOリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23上に移送して保持させることができる。
【0022】
次に、図9に示す位置から、Oリング供給ジグ2のジグ外片31を上方へ移動させて図10に示す位置に動かし、Oリング5を外周部分33に沿って軸方向にずらしていって、Oリング装着ハンド1の円筒部23上に移送して仮装着する。この位置から、図11に示すように、Oリング装着ハンド1を軸方向に上昇させれば、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23にOリング5が仮装着され図1および2に示すようになる。
【0023】
なお、Oリング把持ハンド12でOリング5を把持する際には、図示してないパレット内にバラ積みになったOリング5の位置と姿勢を2Dまたは3Dのビジョンセンサで検出してロボットを制御して把持するようにするのが望ましい。Oリング5を水平に支持した棒にあらかじめ人手で通してぶら下げておき、このOリング5の位置と姿勢を2Dまたは3Dのビジョンセンサで検出してロボットを制御して把持することもできる。
【0024】
この構成によれば、Oリング5の内筒19への取付が内筒19の先端側から行われるので、外筒15と内筒19の間の移動ストロークを大きくとる必要がないので全体の長さを短くすることができ、またOリング5の装着動作はロボットが動作することにより行うのでOリング装着装置自体にエアシリンダやモータなどのアクチュエータを設ける必要がないため軽量化できてかさばることがなく、また動力を供給する配管が必要ないので配管がロボットの動作のじゃまにならない効果がある。
【0025】
なお本実施例ではOリング5を物品6の平面に彫られた円形のOリング溝7にはめこむ作業を例にとって説明したが、円筒形の物品に設けられた周方向のOリング溝にOリングをはめこむ作業に用いることもできる。また、ここに説明したOリング供給ジグ2においては、放射状に設置したジグ内片30、ジグ外片31、レール32が8個設けられている例を説明したが、Oリング5の拡径に不都合が無い限り、2個以上何個でもよい。
【0026】
実施の形態2.
図12は本発明の実施の形態2によるOリング装着ハンド41を示す断面図である。このOリング装着ハンド41の基本的構成は、図1〜3に示すOリング装着ハンド1と同様であるが、図1〜3における外筒15の内部にばね24によって突出位置に偏倚されて設けられ、先端部22にOリング5を仮装着できる円筒部23を有する内筒19が、中空にされていて、内部に外筒15と内筒19の関係と同様の第2の内筒42を備えていることが相違している。このような入れ子式に二重になった関係の構成により、直径の異なる2種類のOリングを装着することができるのである。
【0027】
即ち、図12に示す例においては、Oリング装着ハンド41は、図1〜3と同様のロボット3の手首4に取り付けることができて、環状の先端部17を持つ中空の外筒15と、
外筒15内で軸方向移動可能に支持され、先端部22に設けられてOリング5を保持し得て外筒15の環状の先端部17に対して軸方向に摺動可能な円筒部23を持ち、円筒部23が外筒15の先端部17から突出した突出位置(図2)および円筒部23が先端部17内に後退した後退位置(図3)間で摺動し得るものである内筒42と、外筒15と内筒42との間に設けられ、内筒42を突出位置(図2)に常時付勢するばね24とを備えている。
【0028】
内筒42は、先端に環状の先端部43を持ち、後端部44でばね24によって附勢されている中空管状の円筒体であって、内部に第2の内筒45を軸方向移動可能に支持している。第2の内筒45は、先端部46に、Oリング5(図示してない)を保持し得て内筒42の環状の先端部43に対して軸方向に摺動可能な第2の円筒部47を持ち、この第2の円筒部47が、中空管状の内筒42の先端部43から突出した突出位置および第2の円筒部47が内筒42の先端部43内に後退した後退位置間で摺動し得るものである。
【0029】
また、外筒15と第2の内筒45との間には、第2の内筒45を中空管状の内筒42から突出した突出位置に常時付勢する第2のばね48が設けられている。第2の内筒45の動作範囲は、第2の内筒45に設けられたピン49と内筒42に設けられた長孔50とで構成された第2のストッパ51によって内筒42に対して規制されている。第2の内筒42の直径は図1〜3に示すOリング溝7よりも小さな直径の第2のOリング溝52の直径と同じにしてある。第2のばね48による付勢力はばね24よりも弱くしてある。
【0030】
次に動作について説明する。ロボット3は図1および4〜11に示すOリング供給ジグ2を用いて、先に説明したのと同様に、装着すべきOリング5の直径に応じて、内筒42の円筒部23にも、あるいは第2の内筒45の第2の円筒部47にもOリング5を仮装着できる。仮装着したOリング5は、先に説明したのと同様にOリング装着ハンド41を操作して、Oリング5の大きさに応じて、物品のOリング溝7あるいは第2のOリング溝52のいずれかにOリング5を挿入して装着する。
【0031】
このとき、大きさの異なるOリング5の装着作業を、単一のOリング装着ハンド41で実行することができ、Oリング装着のためのロボットハンドをOリングの直径に合わせて交換する必要がないため、作業効率を極めて高くできる。
【0032】
また、このロボットハンドシステムにおいて、物品6に形成されているOリング溝7および第2のOリング溝52が同心に配置されている場合には、一度の装着動作によって異なる直径の2種のOリングを同時に装着することもできる。この場合、先に説明したのと同様に、図1および4〜11に示すOリング供給ジグ2を用いて、内筒42の円筒部23に直径の大きなOリング5を仮装着し、さらに第2の内筒45の第2の円筒部47に直径が小さなOリング5を仮装着する。この仮装着の順番はどちらが先でも良い。
【0033】
次に、直径の異なる2種のOリング5が仮装着されたOリング装着ハンド41は、先に説明したのと同様に、物品6のOリング溝7および第2のOリング溝52に接近させ、Oリング装着ハンド41の第2の内筒45を物品6に押し当てて第2のばね48のばね作用に抗して押し込んでいく。第2のばね48はばね24より弱いので、第2の内筒45は物品6の面に押し当てられて内筒42から引っ込み、この動作にともない第2の内筒45にはめられていたOリング5は内筒45の端面に押し出されて第2のOリング溝52に装着される。Oリング装着ハンド41を更に物品に押し付けると、内筒42の先端部43物品6に当たり、外筒15内に押し込まれ、内筒42の円筒部23に仮装着されていたOリング5が外筒15の環状の先端部17によってOリング溝7内に挿入される。
【0034】
なおここに説明して図示した例では、内筒42の内側に第2の内筒45を取り付けた二重の構造であるが、第2の内筒45の更に内側により小さな内筒を取り付けてもよく、何重の構造としてもよい。
【0035】
実施の形態3.
図13〜17には、この発明の実施の形態3によるロボットハンドシステムにおけるOリング装着ハンド1およびOリング供給ジグ2の構成とそれらの動作とを示す。これらの図において、Oリング装着ハンド1の内筒19のOリング5を仮装着するための円筒部23は、円周面にOリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53を受け入れる複数の切込み部54を持っている。Oリング供給ジグ2のジグ内片30には図4等に示されているジグ外片31は設けられていない。その他の構成は図1〜3に示すものと同様である。内筒19の円筒部23に設けた切込み部54の深さ即ち径方向寸法は、Oリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53の外周部分である外周部分33の直径との関係で定めてある。即ち、ジグ内片30が、レール32上を径方向に内側に移動して外周部分33の直径が最も小さくなった状態では、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より小になり、またジグ内片30の外周部分33の直径が最も大きくなった状態では、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より大になるようにしてある。換言すれば、切り込み部54の径方向寸法は、ジグ内片30が径方向に移動できる範囲が、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より小になる位置と、ジグ内片30の外周部分33の直径が内筒19の円筒部23の直径より大になる位置とに亘る範囲とするような径方向寸法であることである。
【0036】
図示の例では、Oリング装着ハンド1の内筒19の円筒部23の外周には長手方向に4本の溝状の切り込み部54が等配に切ってある。外筒15の中空部に内筒19がはまる点等のその他の構成は先に説明した実施の形態と同様である。Oリング供給ジグ2のジグ内片30も4個あり、実施の形態1で説明したのと同様、ジグ内片30はレール32に沿って同期してモータなど(図示していない)により駆動される。図4等に示すジグ外片31は設けてない。
【0037】
次に動作について順に説明する。実施の形態1の手順と同様にして、図13に示すOリング装着ハンド1の内筒19を、図14に示すようにOリング5が嵌められたOリング供給ジグ2のジグ内片30の外周部分33に近づけ、図15に示すようにOリング装着ハンド1の内筒19の切り込み部54に、Oリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53を挿入する。この際、内筒19の切り込み部54ジグ内片30の位相が一致するようにし、またジグ内片30の外周部分33の直径が、内筒19の円筒部23の直径より大になるようにして、Oリング5が拡張されて内筒19の円筒部23に嵌るようにジグ内片30の位置を調整しておく。次にこの状態から、図16に示すようにジグ内片30を閉じていき、やがてジグ内片30の外周が内筒19の外周より小になると、Oリング5がジグ内片30の外周部分33から内筒19の円筒部23上に移る。ここでロボット3を動作させてOリング装着ハンド1を上昇させると、図17に示すようにOリング5が内筒19に仮装着されることになる。
【0038】
Oリング装着ハンド1からOリング5を物品6のOリング溝7に装着するときの手順は実施の形態1と同様である。
【0039】
このロボットハンドシステムによれば、Oリング装着ハンド1の内筒19に切り込み部54である長手方向の溝を設け、そこにOリング供給ジグ2のジグ内片30の先端部53がはまるように構成したことで内筒19の円筒部23の直径とジグ内片30の外周部分33の直径の差を近づけられるので、内筒19にOリング5を取り付ける際にOリング5を大きく伸ばさないでもすむ効果がある。
【0040】
なお内筒19の溝とジグ内片30の個数を4個としたが、両者が等しくて1個以外なら何個でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1によるロボットハンドシステムを示す概略図である。
【図2】図1に示すロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを突出位置で示す概略断面図である。
【図3】図2に示すOリング装着ハンド1を後退位置で示す概略断面図である。
【図4】図1に示すロボットハンドシステムのOリング供給ジグの斜視図である。
【図5】図4のOリング供給ジグにOリング把持ハンドでOリングを装荷する様子を示す説明図である。
【図6】Oリング供給ジグにOリングが装荷された状態を示す斜視図である。
【図7】Oリング供給ジグによりOリングが拡径された状態を示す説明図である。
【図8】Oリング供給ジグにOリング装着ハンドを近付けた状態を示す説明図である。
【図9】Oリング供給ジグにOリング装着ハンドを当接させた状態を示す説明図である。
【図10】Oリング供給ジグによりOリングをOリング装着ハンドに移送した状態を示す説明図である。
【図11】Oリング供給ジグからOリング装着ハンドへのOリングの移送が完了した状態を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2によるロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを示す概略断面図である。
【図13】この発明の実施の形態3によるロボットハンドシステムのOリング装着ハンドを示す部分斜視図である。
【図14】図13に示すOリング装着ハンドと共に用いるOリング供給ジグの斜視図である。
【図15】図13のOリング装着ハンドに拡径されたOリングが装荷されたOリング供給ジグが嵌められた様子を示す説明図である。
【図16】Oリング供給ジグからOリングがOリング装着ハンドに移送された状態を示す斜視図である。
【図17】Oリング装着ハンドにOリングが仮装着された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1、41 Oリング装着ハンド、2 Oリング供給ジグ、3 ロボット、5 Oリング、14 円筒形内周面、15 外筒、16 後端部、17 先端部、19、42 内筒、20、44 後端面、22、46 先端部、23 円筒部、24 ばね、25 ストッパ、30 ジグ内片、31 ジグ外片、32 レール、33 外周部分、45 第2の内筒、47 第2の円筒部、48 第2のばね、51 第2のストッパ、54 切込み部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるロボット用Oリング装着ハンドであって、
ロボットに取り付けられ、環状の先端部を持つ外筒と、
上記外筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記外筒の上記環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記外筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである内筒と、
上記外筒と上記内筒との間に設けられ、上記内筒を上記突出位置に常時付勢するばねとを備えたロボット用Oリング装着ハンドを備えたことを特徴とするロボットハンドシステム。
【請求項2】
上記外筒が後端部で閉じて円筒形内周面を持つ中空円筒体であり、上記内筒が上記外筒の上記円筒形内周面上を摺動する円筒体であり、上記ばねが上記外筒の閉じた後端部と上記内筒の後端面との間に設けられており、上記外筒と上記内筒との間に設けられ、互いに係合して上記内筒の上記外筒に対する移動範囲を制限するストッパを備えたことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンドシステム。
【請求項3】
上記円筒部の直径がOリングを装着すべき部分と同じ直径であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のロボットハンドシステム。
【請求項4】
上記内筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記内筒の環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記内筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである第2の内筒と、
上記外筒と上記第2の内筒との間に設けられ、上記第2の内筒を上記内筒から突出した突出位置に常時付勢する第2のばねとを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項5】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるOリング供給ジグであって、
Oリングを保持してOリングの径方向に開閉してOリングをOリング装着ハンドに供給する複数のジグ内片と、
上記ジグ内片上でOリングの軸方向に移動して上記ジグ内片上に保持されたOリングを上記Oリング装着ハンド上に移送するジグ外片とを備えたOリング供給ジグを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項6】
上記Oリング供給ジグが、上記ジグ内片を径方向に案内する放射状に配置されたレールを備えていることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンドシステム。
【請求項7】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるOリング供給ジグであって、
Oリングを保持してOリングの径方向に開閉してOリングをOリング装着ハンドに供給する複数のジグ内片を備えたOリング供給ジグを備え、
Oリング装着ハンドの上記内筒の上記円筒部が、上記ジグ内片の先端部を受け入れる複数の切込み部を持つことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項8】
上記内筒の上記切込み部の径方向深さが、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も小さくなった状態では前記内筒の直径より小になり、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も大きくなった状態では前記内筒の直径より大になる範囲内での上記ジグ内片の移動を許容する深さであることを特徴とする請求項7に記載のロボットハンドシステム。
【請求項9】
上記ジグ内片の駆動される範囲が、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も小さくなった状態では上記内筒の直径より小になり、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も大きくなった状態では上記内筒の直径より大になる範囲であることを特徴とする請求項7あるいは8に記載のロボットハンドシステム。
【請求項1】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるロボット用Oリング装着ハンドであって、
ロボットに取り付けられ、環状の先端部を持つ外筒と、
上記外筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記外筒の上記環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記外筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである内筒と、
上記外筒と上記内筒との間に設けられ、上記内筒を上記突出位置に常時付勢するばねとを備えたロボット用Oリング装着ハンドを備えたことを特徴とするロボットハンドシステム。
【請求項2】
上記外筒が後端部で閉じて円筒形内周面を持つ中空円筒体であり、上記内筒が上記外筒の上記円筒形内周面上を摺動する円筒体であり、上記ばねが上記外筒の閉じた後端部と上記内筒の後端面との間に設けられており、上記外筒と上記内筒との間に設けられ、互いに係合して上記内筒の上記外筒に対する移動範囲を制限するストッパを備えたことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンドシステム。
【請求項3】
上記円筒部の直径がOリングを装着すべき部分と同じ直径であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のロボットハンドシステム。
【請求項4】
上記内筒内で軸方向移動可能に支持され、先端部に設けられてOリングを保持し得て上記内筒の環状の先端部に対して軸方向に摺動可能な円筒部を持ち、上記円筒部が上記内筒の上記先端部から突出した突出位置および上記円筒部が上記先端部内に後退した後退位置間で摺動し得るものである第2の内筒と、
上記外筒と上記第2の内筒との間に設けられ、上記第2の内筒を上記内筒から突出した突出位置に常時付勢する第2のばねとを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項5】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるOリング供給ジグであって、
Oリングを保持してOリングの径方向に開閉してOリングをOリング装着ハンドに供給する複数のジグ内片と、
上記ジグ内片上でOリングの軸方向に移動して上記ジグ内片上に保持されたOリングを上記Oリング装着ハンド上に移送するジグ外片とを備えたOリング供給ジグを備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項6】
上記Oリング供給ジグが、上記ジグ内片を径方向に案内する放射状に配置されたレールを備えていることを特徴とする請求項5に記載のロボットハンドシステム。
【請求項7】
Oリングを装着するためのロボットハンドシステムに適用できるOリング供給ジグであって、
Oリングを保持してOリングの径方向に開閉してOリングをOリング装着ハンドに供給する複数のジグ内片を備えたOリング供給ジグを備え、
Oリング装着ハンドの上記内筒の上記円筒部が、上記ジグ内片の先端部を受け入れる複数の切込み部を持つことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットハンドシステム。
【請求項8】
上記内筒の上記切込み部の径方向深さが、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も小さくなった状態では前記内筒の直径より小になり、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も大きくなった状態では前記内筒の直径より大になる範囲内での上記ジグ内片の移動を許容する深さであることを特徴とする請求項7に記載のロボットハンドシステム。
【請求項9】
上記ジグ内片の駆動される範囲が、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も小さくなった状態では上記内筒の直径より小になり、上記ジグ内片の外周部分の直径が最も大きくなった状態では上記内筒の直径より大になる範囲であることを特徴とする請求項7あるいは8に記載のロボットハンドシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−291859(P2009−291859A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145836(P2008−145836)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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