説明

ロータリコンプレッサ及びその運転制御方法

【課題】多段の圧縮機からなるロータリコンプレッサにおいて、低圧段圧縮機の回転速度と高圧段圧縮機の回転速度を別々に制御可能にすることによって、使用圧力に応じて常に最適な状態で運転できるようにする。
【解決手段】少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサの運転制御方法において、低圧段圧縮機11と高圧段圧縮機12とをそれぞれ別個の駆動装置13及び14で駆動するか、又は単一の駆動装置41でそれぞれ別個の変速装置43及び44を介して駆動し、運転条件に応じて低圧段圧縮機11と高圧段圧縮機12間の負荷バランスが均等となるように低圧段圧縮機11及び高圧段圧縮機12の回転速度をそれぞれ独立して制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサ及びその運転制御方法に関し、使用圧力に応じて常に各圧縮機の負荷バランスをくずすことなく、効率的な運転を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリコンプレッサのうち、ツース型コンプレッサは、向かい合うかぎ形の雄雌ロータを非接触で回転させることによって圧縮させる方式のコンプレッサであり、雄雌ロータが非接触であるため、ロータの摩耗がなく、長寿命であるという長所をもつ。また、非接触で、潤滑油が不要であり、オイルフリー化に適した機構である。従って、クリーンな圧縮ガスを供給できる。しかし、構造上1段での圧縮では実用的な圧力が得られないために2段で使われることが多く、2段圧縮を採用することにより、高い効率と耐久性を実現している。以下このツース型コンプレッサを図4で簡単に説明する。
【0003】
図4(a)において、圧縮室01内にかぎ形形状を有する雄ロータ02と雌ロータ03とが互いに非接触で配置されている。ロータ02,03の回転により吸込口04から被圧縮ガスgが吸入される。次に図4(b)において、吸入された被圧縮ガスgは圧縮室01隔壁と雄ロータ02又は雌ロータ03の歯により仕切られ、被圧縮ガスgの圧縮が開始される。次に図4(c)において、雄ロータ02と雌ロータ03とが、矢印で示すとおり互いに反対方向へ回転しながら被圧縮ガスgを圧縮する。次に図4(d)において、雌ロータ03で閉じられていた吐出口05が開き、圧縮された被圧縮ガスgが吐出される。
【0004】
従来、2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサの該圧縮機を駆動する手段としては、省スペース化と設備費を低減するため、図5に示すように、単一の電動機で2個の圧縮機を駆動する手段が採用されていた。図5において、単一の電動機07の出力軸07aに回転力伝達歯車08が取り付けられ、一方、低圧段圧縮機の雄ロータ軸06aに取り付けられた歯車09aと高圧段圧縮機の雄ロータ06bに取り付けられた歯車09bが回転力伝達歯車08と噛み合っている。
【0005】
これによって、1個の電動機07によって低圧段圧縮機の雄ロータ02aと高圧段圧縮機の雄ロータ02bとが同時に回転駆動される。なお、低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の雄ロータ02a、02bの他端に取り付けられたタイミングギア010a、010bによって各雄ロータの回転が図示しない雌ロータに同期して伝達される。
【0006】
特許文献1(特開平1−193089号公報)及び特許文献2(特開平4−6349号公報)には、上記に類似した回転力伝達手段により、単一の電動機で2個の圧縮機を同時に駆動するロータリコンプレッサが開示されている。
【0007】
また、2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機からなるロータリコンプレッサにおいて、通常は、定格運転状態のときに低圧段圧縮機と高圧段圧縮機のそれぞれの消費動力がほぼ等しくなるように排除容積(ピストン式圧縮機の押しのけ量に相当)を決める。この排除容積は設計時に決定され、後から変更することはできない。低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度は、伝達歯車08と歯車09a及び09bの歯数比によって決まり、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機とは同じ回転速度で運転される。
【0008】
電動機の出力軸の回転速度を使用条件に対応して変化させる手段は、電動機の出力軸をインバータ制御を行なう等の手段を採用することにより、従来から行なわれてきた。例えば、特許文献3(特開2002−39079号公報)には、スクロール圧縮機の旋回スクロールを駆動する複数の電動機をそれぞれ区別にインバータ制御することが開示されている。また、特許文献4(特開2004−360464号公報)には、無給油式スクリュー圧縮機の回転数をインバータ制御することにより、省電力化を図ることが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平1−193089号公報
【特許文献2】特開平4−6349号公報
【特許文献3】特開2002−39079号公報
【特許文献4】特開2004−360464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、単一の電動機から伝達歯車を介して2段以上の圧縮機を駆動する方式では、ロータリコンプレッサの製造後は低圧段圧縮機と高圧段圧縮機の回転速度を別々に変更することはできない。2段の低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機からなるロータリコンプレッサの運転例を図6のP−V線図で説明する。図6において、被圧縮ガスは先ず低圧段圧縮機で0.2MPaまで加圧された後、中間冷却器で冷却される(区間x)。その後、被圧縮ガスは、高圧段圧縮機で0.7MPaまで圧縮される。
【0011】
しかし、コンプレッサはいつも定格吐出圧力で運転されるとは限らない。定格0.7MPa仕様のコンプレッサを、図6中ラインyで示すように0.5MPaで使用する場合もあり、あるいはラインzで示すように一時的に0.8MPaの圧力が必要な場合もある。前述のインバータ制御では、電動機の出力軸の回転速度が制御対象であるから、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機との回転速度を別々に制御することはできない。
【0012】
図6中のラインyで示すように、定格仕様よりも低い圧力で運転する場合、低圧段圧縮機ばかり仕事をして、高圧段圧縮機はあまり仕事をしなくなってしまう。そのため、低圧段圧縮機のみに大きな負荷が生じ、両者で負荷のアンバランスが生じ、低圧段圧縮機の被圧縮ガスの吐出温度が低圧段圧縮機のそれより高くなってしまう。そのため、効率的な運転ができなくなるだけでなく、装置の耐久性を損なうという問題がある。
低圧段圧縮機と高圧段圧縮機の負荷バランスを取るため、低圧段圧縮機の回転速度を下げ、高圧段圧縮機の回転速度を上げる必要があるが、従来の多段コンプレッサの駆動方式では不可能である。
【0013】
図6中のラインzで示すように、定格仕様よりも高い圧力で運転する場合、高圧段圧縮機の負荷が低圧段圧縮機より相対的に大きくなり、負荷のアンバランスが生じる。これによって、高圧段圧縮機の被圧縮ガスの吐出温度が低圧段圧縮機のそれより高くなるため、効率的な運転ができなくなるだけでなく、装置の耐久性を損なう。高圧段圧縮機の負荷軽減のため、低圧段圧縮機の回転速度を上げ、高圧段圧縮機の回転速度を下げる必要があるが、従来の多段コンプレッサの駆動方式では不可能である。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機を備えた多段のロータリコンプレッサにおいて、低圧段圧縮機の回転速度と高圧段圧縮機の回転速度を別々に制御可能にすることによって、コンプレッサの使用圧力に応じて常に最適な状態で運転することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明のロータリコンプレッサの運転制御方法は、
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサの運転制御方法において、
前記低圧段圧縮機と高圧段圧縮機とをそれぞれ別個の駆動装置で駆動するか、又は単一の駆動装置でそれぞれ別個の変速装置を介して駆動し、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御するものである。
【0016】
本発明の運転制御方法は、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機とをそれぞれ別個の駆動装置で駆動するか、又は単一の駆動装置でそれぞれ別個の変速装置を介して駆動することにより、低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御可能にしたものであり、これによって、運転条件に対応して該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスをほぼ均等にすることができる。そのため、常に最適な運転状態を維持できるので、効率的な運転ができるだけでなく、装置の耐久性を向上させることができる。
【0017】
例えば、ロータリコンプレッサを定格仕様より低い圧力で運転する場合は、低圧段圧縮機の回転速度を高圧段圧縮機の回転速度より大きくして、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機の吐出温度や運転上のバランスを取る。また、ロータリコンプレッサを定格仕様より高い圧力で運転する場合は、高圧段圧縮機の回転速度を低圧段圧縮機の回転速度より大きく取ることによって、両者の吐出温度や運転上のバランスを取る。
【0018】
本発明方法において、低圧段圧縮機の吐出側又は高圧段圧縮機の吐出側の被圧縮ガスの圧力を検出し、該圧力検出値に基づいて該低圧段圧縮機及び該高圧段圧縮機の回転速度を独立して制御するようにすれば、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機との負荷バランスをさらに精度良く均等に維持することができ、さらに効率的な運転が可能になる。
【0019】
前記本発明方法を実施するための本発明のロータリコンプレッサの第1の発明は、
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサにおいて、
前記低圧段圧縮機を駆動する低圧段電動機及び該低圧段電動機の電源周波数を可変とする低圧段インバータ回路と、
前記高圧段圧縮機を駆動する高圧段電動機及び該高圧段電動機の電源周波数を可変とする高圧段インバータ回路と、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段インバータ回路及び該高圧段インバータ回路を制御する制御装置と、を備えたものである。
【0020】
前記第1の本発明装置は、低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機にそれぞれ独自の電動機及びインバータ回路を備えるようにしたため、該インバータ回路を制御する前記制御装置によって低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御することができる。
【0021】
また、前記本発明方法を実施するための本発明のロータリコンプレッサの第2の発明は、
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサにおいて、
前記低圧段圧縮機及び高圧段電動機を駆動する単一の電動機と、
該低圧段圧縮機と該電動機との間に介設された低圧段変速装置と、
該高圧段圧縮機と該電動機との間に介設された高圧段変速装置と、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御する制御装置と、を備えたものである。
【0022】
前記第2の本発明装置は、単一の電動機を備えるため、省スペース化が可能になるとともに、設備費を低減できる。また、低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機がそれぞれ別個の変速装置を備え、前記制御装置により該変速装置を制御することにより、低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御可能としたものである。
【0023】
従って、前記第1の本発明装置及び第2の本発明装置によれば、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度を制御できるため、常に運転条件に対応して最適な運転状態を維持できるので、効率的な運転ができるだけでなく、装置の耐久性を向上させることができる。
【0024】
なお、第1及び第2の本発明装置において、好ましくは、低圧段圧縮機又は高圧段圧縮機の吐出側の被圧縮ガスの圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御装置で該圧力センサの圧力検出値に基づいて該低圧段圧縮機の該高圧段電動機の回転速度を制御するようにするとよい。これによって、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機との負荷バランスをさらに精度良く均等に維持することができ、さらに効率的な運転が可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御可能となるため、低圧段圧縮機と高圧段圧縮機との負荷バランスを運転条件が変わっても均等にすることができ、そのため、常に運転条件に対応して最適な運転状態を維持できるので、効率的な運転ができるだけでなく、装置の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
(実施形態1)
【0027】
次に本発明の第1実施形態を図1に基づいて説明する。図1は低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機をそれぞれ1段ずつ備えた2段の圧縮機からなるロータリコンプレッサ、例えばツース型コンプレッサの全体構成図である。図1において、低圧段圧縮機本体11と高圧段圧縮機本体12とが設けられ、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12にはそれぞれ低圧段電動機13及び高圧段電動機14が設けられている。また、低圧段電動機13の電源周波数を可変とすることにより、低圧段電動機13の回転速度を可変とする低圧段インバータ回路15と、高圧段電動機14の電源周波数を可変とすることにより、高圧段電動機14の回転速度を可変とする高圧段インバータ回路16が設けられている。
【0028】
低圧段圧縮機本体11に吸入された被圧縮ガスgは、低圧段圧縮機本体11で例えば0.2MPaまで圧縮される。低圧段圧縮機本体11から吐出された被圧縮ガスgの吐出流路17にはインタクーラ18が介設され、低圧段圧縮機本体11から吐出された被圧縮ガスgはここで一旦冷却される。被圧縮ガスgは、その後高圧段圧縮機本体12に吸入されて例えば0.7MPaまで圧縮される。
【0029】
高圧段圧縮機本体12の吐出流路19にはアフタクーラ20が介設され、高圧段圧縮機本体12から吐出された被圧縮ガスgはアフタクーラ20で冷却された後、使用先に送られる。吐出流路19には被圧縮ガスgの吐出圧力を検出する圧力センサ21が設けられるとともに、圧力センサ21の吐出圧力を検出し、該吐出圧力値に基づいて低圧段インバータ回路15及び高圧段インバータ回路16を制御する制御装置22が設けられている。
【0030】
かかる構成の多段ロータリコンプレッサにおいて、圧力センサ21で吐出流路19の被圧縮ガスgの吐出圧力を検出し、該吐出圧力検出値を制御装置22に入力し、制御装置22で低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の負荷バランスが均等になるように低圧段インバータ回路15及び高圧段インバータ回路16を制御し、これによって、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の回転速度をそれぞれ独立して制御する。
【0031】
即ち、ロータリコンプレッサを定格仕様より低い圧力で運転する場合、例えば、定格0.7MPa仕様のコンプレッサを、図6中ラインyで示すように0.5MPaで使用する場合、低圧段圧縮機本体11の回転速度を高圧段圧縮機本体12の回転速度より大きくして、両者の負荷バランスを取り、これによって、両者の吐出温度や運転上のバランスを取る。
また、図6中のラインzで示すように一時的に0.8MPaの圧力が必要な場合もあり、この場合は、高圧段圧縮機本体12の回転速度を低圧段圧縮機本体11の回転速度より大きく取ることによって、両者の負荷バランスを取り、これによって、両者の吐出温度や、運転上のバランスを取る。
【0032】
このように、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の回転速度を独立してして制御することにより、高圧段圧縮機本体12を定格仕様と異なる圧力で運転した場合においても、低圧段圧縮機本体11と高圧段圧縮機本体12の負荷バランスを常に均等に維持することができる。従って、使用圧力に応じて常に最適な圧縮運転を行なうことができ、その結果、効率的な運転ができるだけでなく、装置の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、高圧段圧縮機本体12から吐出する被圧縮ガスgの吐出圧力を圧力センサ21で検出し、該検出値に基づいて制御装置22で低圧段インバータ回路15及び高圧段インバータ回路16を制御しているので、該吐出圧力を変えた場合でも、該吐出圧力に応じて低圧段圧縮機本体11と高圧段圧縮機本体12の負荷バランスを精度良く均等となるように制御することができる。
(実施形態2)
【0034】
次に本発明の第2実施形態を図2に基づいて説明する。図2において、前述のように図1に図示される第1実施形態と同一の構成部位又は機器には同一の符号を付し、それら構成部位又は機器の説明を省略する。図2において、第1実施形態と異なるところは、低圧段圧縮機本体11の吐出流路17に低圧段圧縮機本体11から吐出された被圧縮ガスgの圧力を検出する中間センサ31を設け、中間センサ31による圧力検出値を制御装置22に入力することによって、圧力センサ21のみならず中間センサ31の圧力検出値に基づいて低圧段インバータ回路15及び高圧段インバータ回路16を制御するようにした点である。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0035】
かかる構成とすることによって、本実施形態では、吐出流路19の被圧縮ガスgの吐出圧力のみならず、吐出流路17の被圧縮ガスgの吐出圧力を検出することにより、高圧段圧縮機本体12の使用圧力を変えた場合でも、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の負荷バランスを常に精度良く均等に維持することができる。これによって、さらに効率的な運転が可能になる。
(実施形態3)
【0036】
次に本発明の第3実施形態を図3に基づいて説明する。図3において、図2に図示される第2実施形態と同一の構成部位又は機器には同一の符号を付し、それら構成部位又は機器の説明を省略する。図2において、以下第2実施形態と異なる構成を説明する。即ち、単一の電動機41を用意するとともに、低圧段圧縮機本体11に低圧段圧縮機本体11の回転速度を可変とする低圧段変速装置43を設け、高圧段圧縮機本体12に高圧段圧縮機本体12の回転速度を可変とする高圧段変速装置44を設けている。そして電動機41をギアボックス42を介して低圧段変速装置43及び高圧段変速装置44に接続している。以上が前記第2実施形態と構成が異なる点であり、その他の構成は第2実施形態と同一である。
【0037】
かかる構成の第3実施形態において、電動機41の回転駆動力はギアボックス42を介して低圧段変速装置43及び高圧段変速装置44に伝達される。低圧段変速装置43及び高圧段変速装置44は、制御装置22によってそれぞれ独自に制御される。そのため、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の回転速度はそれぞれ独立して制御可能になる。
【0038】
かかる構成の第3実施形態によれば、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の回転速度をそれぞれ独立して制御可能であるので、ロータリコンプレッサの使用圧力が定格仕様と変わって運転される場合でも、低圧段圧縮機本体11と高圧段圧縮機本体12の負荷バランスが常に均等になるように制御することができる。従って、使用圧力に応じて常に最適な状態で運転できるため、効率的な運転ができるだけでなく、装置の耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、中間センサ31及び圧力センサ21によって吐出流路19の被圧縮ガスgの吐出圧力及び吐出流路17の被圧縮ガスgの吐出圧力を検出することにより、使用圧力を変えた場合でも、低圧段圧縮機本体11及び高圧段圧縮機本体12の負荷バランスを常に精度良く均等に維持することができる。さらに、単一の電動機41で前記運転制御が可能であるので、省スペース化が図れ、かつ設備費を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、複数の圧縮機を直列に接続したロータリコンプレッサにおいて、個々の圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して可変とできるので、各圧縮機の負荷バランスを均等に維持でき、効率的な運転を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す全体構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す全体構成図である。
【図4】従来のツース型コンプレッサの概要図である。
【図5】従来のツース型コンプレッサの動力伝達系統を示す構成図である。
【図6】従来のツース型コンプレッサの運転例を示すP−V線図である。
【符号の説明】
【0042】
11 低圧段圧縮機本体
12 高圧段圧縮機本体
13 低圧段電動機
14 高圧段電動機
15 低圧段インバータ回路
16 高圧段インバータ回路
18 インタクーラ
20 アフタクーラ
21 圧力センサ
22 制御装置
31 中間センサ
41 電動機
42 ギアボックス
43 低圧段変速装置
44 高圧段変速装置
g 被圧縮ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサの運転制御方法において、
前記低圧段圧縮機と高圧段圧縮機とをそれぞれ別個の駆動装置で駆動するか、又は単一の駆動装置でそれぞれ別個の変速装置を介して駆動し、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御することを特徴とするロータリコンプレッサの運転制御方法。
【請求項2】
前記低圧段圧縮機の吐出側又は高圧段圧縮機の吐出側の被圧縮ガスの圧力を検出し、該圧力検出値に基づいて該低圧段圧縮機及び該高圧段圧縮機の回転速度を制御することを特徴とする請求項1に記載のロータリコンプレッサの運転制御方法。
【請求項3】
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサにおいて、
前記低圧段圧縮機を駆動する低圧段電動機及び該低圧段電動機の電源周波数を可変とする低圧段インバータ回路と、
前記高圧段圧縮機を駆動する高圧段電動機及び該高圧段電動機の電源周波数を可変とする高圧段インバータ回路と、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段インバータ回路及び該高圧段インバータ回路を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするロータリコンプレッサ。
【請求項4】
少なくとも2段の低圧段圧縮機と高圧段圧縮機が直列に接続されたロータリコンプレッサにおいて、
前記低圧段圧縮機及び高圧段電動機を駆動する単一の電動機と、
該低圧段圧縮機と該電動機との間に介設された低圧段変速装置と、
該高圧段圧縮機と該電動機との間に介設された高圧段変速装置と、
運転条件に応じて該低圧段圧縮機と高圧段圧縮機間の負荷バランスが均等となるように該低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度をそれぞれ独立して制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするロータリコンプレッサ。
【請求項5】
前記低圧段圧縮機又は高圧段圧縮機の吐出側の被圧縮ガスの圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御装置で該圧力センサの圧力検出値に基づいて該低圧段圧縮機及び高圧段圧縮機の回転速度を制御するようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載のロータリコンプレッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−255799(P2008−255799A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95584(P2007−95584)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】