説明

ロータリーエンコーダ及びこのロータリーエンコーダの運転

【課題】第1要素群及び第2要素群を有するロータリーエンコーダに関する。
【解決手段】第1要素群1は、パルス線1.1,検出器1.211,1.212及び電子回路1.5を有する。第2要素群2は、磁石2.23及びコード要素2.21を有する。磁石2.23が、パルス線1.1に近づいた時に、電圧パルスΠが、このパルス線1.1によって生成可能である。少なくとも1つの検出器1.211,1.212に対するコード要素2.21の相対位置に依存して、信号Σ1.211,1.222が、この検出器1.211,1.212によって生成可能である。この場合、位置信号Pが、論理回路1.51によってこの信号Σ1.211,1.222に基づいて算出可能である。この位置情報Pは、不揮発性記憶器1.52内に記憶可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の相対角度位置を測定するロータリーエンコーダ及び請求項8に記載のこのロータリーエンコーダを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなロータリーエンコーダは、多くの場合に互いに相対的に回転可能な2つの機械部品の角度位置を測定するために使用され、例えば誘導式測定原理にしたがって動作する。誘導式のロータリーエンコーダの場合、励磁巻線及び受信器巻線が、例えばランドパターンの形態で共通の回路基板上に装着される。この回路基板は、例えばロータリーエンコーダの固定子に固定して接合されている。コード要素としてつまり特にリング状のコード板として構成されているもう1つの板が、軸線方向に所定の間隔でかつ同心状にこの回路基板に対向して存在する。電導性の面及び非電導性の面が、目盛領域又は目盛構造としてこのコード板上に周期的な間隔で交互に装着されている。そしてこのコード板は、ロータリーエンコーダの回転子に回転しないように連結されている。交流励磁場が、励磁巻線で形成される場合、回転子及び固定子の相対位置に依存する信号つまり相対角度に依存する信号が、この回転子とこの固定子との間の相対回転の間に受信器巻線中で生成される。次いでこれらの信号が、評価電子機器内でさらに処理される。多くの場合このようなロータリーエンコーダは、対応する駆動軸の絶対角度位置を測定するための電気駆動部用の測定装置として使用される。
【0003】
誘導式に動作するロータリーエンコーダが、本出願人のドイツ連邦共和国特許出願公開第10 2006 046 531号明細書から公知である。このロータリーエンコーダの場合、電力を節電するモードが、特別なパルス方法によって適合され得る。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10 2006 046 531号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ロータリーエンコーダの電力消費がプリセットされている運転モードで最少であるこのロータリーエンコーダ、特に誘導式ロータリーエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1又は8に記載の特徴によって解決される。
【0006】
これに応じてこのロータリーエンコーダは、第1要素群及び第2要素群を有する。この場合、これらの両要素群は、軸線Aの周りに互いに相対的に回転可能に配置されている。第1要素群は、1つのパルス線,少なくとも1つの検出器,論理回路を有する1つの電子回路及び1つの不揮発性記憶器を有する。第2要素群自体は、1つの磁石及び少なくとも1つのコード要素を有する。磁石が、1回の対応する相対的な回転運動によってパルス線に近づくと、1つの電圧パルスが、このパルス線によって生成可能である。さらに、1つの信号が、少なくとも1つの検出器に対するコード要素の相対位置に依存してこの検出器によって生成可能である。この場合、1つの位置情報が、論理回路によってこの信号に基づいて算出可能である。この位置情報は、不揮発性記憶器内に記憶可能である。この場合、回路が電圧パルスの発生によって起動され、電圧源の電圧がこの回路に印加可能であり、そして遅くとも位置情報を不揮発性記憶器内に記憶した後に、この回路が、この電圧源から再び分離可能であるように、第1要素群が構成されている。
【0007】
1回の回転運動が実際に発生した時にだけ、ロータリーエンコーダが、位置情報を算出して記憶するために電圧源からのエネルギーを消費するという利点が、特にこのような装置にある。この電圧源は、有利に直接ロータリーエンコーダ内に、特に第1要素群内に組み込まれてもよいし、又は、電圧源から供給される電気エネルギーがケーブルを経由してロータリーエンコーダ内に達せられ得るように外部に設置されてもよい。
【0008】
多くの場合ロータリーエンコーダは、「通常」運転モードでは電源網を通じて給電される。この給電が中断されている状況に対して、ロータリーエンコーダが、第2運転モードに移行できる。この第2運転モードの場合、ロータリーエンコーダは、別の余分な電圧源、例えばバッテリによって給電される。本発明は、特に第1運転モードから第2運転モードに切り替え可能であるロータリーエンコーダに対して適する。この場合、第2運転モードでのロータリーエンコーダの電力消費が、第1運転モードでのロータリーエンコーダの電力消費より小さい。ロータリーエンコーダは、第2運転モードに対して本発明の特徴にしたがって構成されている。第2運転モードで回路が電圧パルスの発生によって起動され、電圧源の電圧がこの回路に印加可能であり、そして遅くとも位置情報を不揮発性記憶器内に記憶した後に、この回路が、この電圧源から再び分離可能であるように、特に第1要素群が構成されている。
【0009】
位置情報は、第2要素群に対する第1要素群の相対位置、すなわち角度位置に関する情報を表し、例えば角度の程度で表示され得る。好ましくは、第1要素群は固定子として構成されていて、第2要素群は回転子として構成されている。
【0010】
パルス線が電圧源に対して並列に接続されていて、その結果パルス線の電圧パルスが、電圧源のエネルギーと併せて回路にエネルギーを供給することに寄与するように、第1要素群が有利に構成されている。
【0011】
本発明の別の構成では、第1要素群が、エミッタを有する。電磁場が、このエミッタによって生成可能である。この電磁場は、少なくとも1つのコード要素によって変調可能である。その結果、信号が、少なくとも1つの検出器に対するコード要素の相対位置に依存して生成可能である。この場合、エミッタが電圧パルスの発生によって起動され、電圧源の電圧がこのエミッタに印加可能であり、そして遅くとも位置情報を不揮発性記憶器内に記憶した後に、このエミッタが、この電圧源から再び分離可能であるように、第1要素群が構成されている。
【0012】
エミッタは、励磁巻線を有利に有する。電磁場が、この励磁巻線によって生成可能である。この場合、少なくとも1つの検出器が、受信器巻線として構成されている。この構成の場合、ロータリーエンコーダが、誘導式測定原理にしたがって稼動する。この代わりに本発明は、容量式又は光学式のロータリーエンコーダの場合でも使用され得る。光学式ロータリーエンコーダの場合、エミッタが光源を有し、少なくとも1つの検出器が光電素子として構成され得る。
【0013】
特に、上述した発明と違って少なくとも1つの検出器が電圧パルスの発生によって起動され、電圧源の電圧がこの検出器に印加可能であり、そしてこの検出器が、この電圧源から再び分離可能であるように、第1要素群が構成されていることが好ましい。この方式では、論理回路及び不揮発性記憶器を有する回路の運転時間が最少になるだけではなくて、少なくとも1つの検出器の接続時間も最少に低減される。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つのコード要素は、磁石として構成されていて、少なくとも1つの検出器は、MR素子又はホール素子である。
【0015】
本発明は、パルス線の電圧パルスがより狭い意味での位置情報を実際に測定することに寄与するのではなくて、エネルギーを供給する電圧源に切り替えることだけに関して関与するように、特に構成されているロータリーエンコーダに関する。しかしこの構成とは違って、電圧パルスの発生が、さらに位置情報を算定するために、特に方向を認識するために検出器の信号と一緒に使用されるように、ロータリーエンコーダが構成されてもよい。
【0016】
さらに本発明は、ロータリーエンコーダを運転する方法に関する。この方法の場合、ロータリーエンコーダが、第1要素群及び第2要素群を有し、これらの要素群が、軸線の周りに相対的に回転可能に配置されている。第1要素群は、1つのパルス線,少なくとも1つの検出器並びに論理回路及び不揮発性記憶器を有する1つの電子回路を有する。第2要素群自体は、1つの磁石及び少なくとも1つのコード要素を有する。磁石がパルス線に近づいた時に、1つの電圧パルスがこのパルス線によって生成される。その後に少なくとも1つの検出器に対するコード要素の相対位置に依存して、1つの信号が、この検出器によって生成される。次いで1つの位置情報が、論理回路によってこの検出器のこの信号に基づいて算出される。この位置情報は、その次のステップで不揮発性記憶器内に記憶される。電圧パルスが発生すると、電圧源の電圧が、回路に印加される。この場合、遅くとも位置情報を不揮発性記憶器内に記憶した後に、この回路が、この電圧源から再び分離される。
【0017】
好ましくは、ロータリーエンコーダが、第1運転モードから第2運転モードに切り替わる。この場合、本発明の方法は、第2運転モードで使用される。
【0018】
多くの場合第2要素群は、コード要素を多数の目盛トラック内に有する。これらの目盛トラックは、異なる細さであり、それ故に検出器によるこれらの目盛トラックの走査時に異なる数の信号周期を1回の相対回転ごとに提供する。本発明の別の実施の形態では、電圧源の電圧が回路に印加可能である運転モードで、最小の数の信号周期を1回の相対回転ごとに提供する目盛トラックだけが走査可能であるように、ロータリーエンコーダが構成されている。別の実施の形態によれば、測定精度を上げるため、多数の目盛トラックが上述の状態で走査可能であってもよい。
【0019】
本発明の好適な構成は、従属請求項中に記載されている。
【0020】
以下に、本発明のロータリーエンコーダのその他の詳細及び利点を添付されている図面に基づく実施の形態から説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1中には、1つの実施の形態によるロータリーエンコーダの断面が示されている。したがってこのロータリーエンコーダは、ここでは固定子1の機能をする第1要素群及びここでは回転子2として動作する第2要素群を有する。回転子2及び固定子1は、軸線Aの周りに互いに相対的に回転可能に配置されている。
【0022】
固定子1は、ハウジング1.14を有する。リング状の走査回路基板1.12が、このハウジング1.14に固定されている。特にコネクタ1.13が、走査回路基板1.12上に取り付けられている。信号及び電力が、このコネクタ1.13を通じてロータリーエンコーダと順次電子機器との間で伝達され得る。さらにパルス線1.1並びに電子回路1.5及び励磁回路1.10の構成要素が、図4による走査回路板1.12上に配置されている。さらにバッテリの形態の電圧源が、走査回路板1.12上に存在する。
【0023】
さらに図3によれば、励磁ランドパターン1.11が、励磁巻線としてつまりエミッタとして走査回路板の他方の側面に設けられている。これらの励磁ランドパターン1.11は、内側の励磁トラック,中央の励磁トラック及び外側の励磁トラック上に装着されている。走査回路板1.12自体が、中心孔を有しかつ多層に構成されている。走査回路板1.12は、検出器用の支持体として使用される。これらの検出器は、ここでは異なる受信器巻線1.21,1.22から構成される。内側の受信器巻線1.21は、第1受信器ランドパターン1.211及び第2受信器ランドパターン1.212を有する。第1受信器ランドパターン1.211及び第2受信器ランドパターン1.212の双方がそれぞれ、1回転内に1つの信号周期を提供する。この場合、第1受信器ランドパターン1.211の信号は、第2受信器ランドパターン1.212の信号に対して90°だけシフトしている。
【0024】
外側の受信器巻線1.22は、同様に2つの受信器ランドパターンから構成されかつこれらの2つの受信器ランドパターンが90°だけシフトした信号を提供するように構成されている。これらの信号は、1回転ごとに16個の信号周期を含む。
【0025】
この提唱された実施の形態では、回転子2が、軸2.1を有する。この軸2.1は、例えば測定すべきモーター軸に対して回転しないように取り付けられ得る。軸2.1の相対位置つまり軸2.1の角度位置を検出するため、ここではコード板2.2として構成された目盛トラック2.21,2.22を有するコード要素が、軸2.1の段差部分に沿って回転しないように固定されて形成されている。図2中には、コード板2.2が、正面図で示されている。このコード板2.2は、基板から構成される。この基板は、この示された実施の形態ではエポキシ樹脂から製造されていてかつ第2目盛トラック2.21,2.22上に配置されている。これらの目盛トラック2.21,2.22は、リング状に形成されていてかつ回転軸線Aに対して同軸に異なる直径で基板上に配置されている。両目盛トラック2.21,2.22はそれぞれ、交互に配置された電導性目盛領域2.211,2.221と非電導性目盛領域2.212,2.222との周期的な順序から構成される。この示された例では、銅が、電導性目盛領域2.211,2.221用の材料として基板上に被覆されてある。これに対して非電導性目盛領域2.212,2.222内では、基板は被覆されていない。
【0026】
内側の目盛トラック2.21は、この示された実施形では電導性の材料、ここでは銅を有するハーフリング状の第1目盛領域2.211及び非電導性の材料が配置されているハーフリング状の第2目盛領域2.212から構成される。
【0027】
第2目盛トラック2.22が、第1目盛トラック2.21に隣接して放射状に存在する。この場合、この目盛トラック2.22も、多数の電導性の目盛領域2.221及びこれらの目盛領域2.221間に配置された非電導性の目盛領域2.222から構成される。この場合、これらの異なる目盛領域2.221,2.222は、第1目盛トラック2.21の目盛領域2.211,2.212と材料的に同じに形成されている。第2目盛領域2.22の全体は、この示された実施の形態では周期的に配置された16個の電導性の目盛領域2.221及びこれに応じてこれらの目盛領域2.221間に配置された非電導性の目盛領域2.222を有する。
【0028】
さらにコード板2.2は、コード板2.2の縁に配置されていてかつ軸線Aに対して平行な方向に磁化している磁石2.23を有する。
【0029】
ロータリーエンコーダを組み立てた状態では、コード板2.2及び走査回路板1.12は、軸線方向に間隔をあけて対向している。その結果軸線Aは、両要素の中心点を貫通し、コード板2.2と走査回路板1.12との間の相対回転時に、その都度の角度位置に依存する信号Σ1.211,1.212が、誘導効果によって生成可能である。さらに、磁石2.23がパルス線1.1に近づいた時に、1つの電圧パルスΠが、このパルス線1.1によって生成可能であるように、パルス線1.1及び磁石2.23が対向して配置されている。この代わりに、磁石2.23が、軸2.1に直接固定されてもよい。この場合、パルス線1.1は、ロータリーエンコーダの半径方向の内側の領域内に配置される。さらに磁石は、コード板2.2の(図1に対して)下面に半径方向に配置されてもよい。この提唱された実施の形態と違って、ハウジング1.14に接するパルス線は、コード板2.2の下側(図1)に取り付けられかつ走査回路板1.12に電気接触させてもよい。
【0030】
対応する信号Σ1.211,1.212を生成するための前提条件は、励磁ランドパターン1.11が電磁的な交流励磁場を走査トラックの領域内つまりこれらの走査トラックと共に走査された目盛トラック2.21,2.22の領域内で生成つまり放出することである。この示された実施の形態では、励磁ランドパターン1.11が、平面平行な多数の個別ランドパターンとして構成されている。励磁電流が、全ての励磁ランドパターン1.11で同時に同じ方向に通電する場合、ホース状に又はシリンダ状に指向した電磁場が、それぞれの励磁ランドパターン1.11の周りに発生する。発生する電磁場の磁力線が、同心円の形態で励磁ランドパターン1.11の周りに形成される。この場合、磁力線の方向は、知られているように励磁ランドパターン1.11中に流れる電流の方向に依存する。この場合、1つの共通な走査トラックと直接隣接する励磁ランドパターン1.11の通電方向つまり励磁ランドパターン1.11の対応する回路網は、逆に選択する必要がある。その結果目盛トラック2.21,2.22の領域内の磁力線はそれぞれ同一に指向されている。
【0031】
通常動作に相当する第1運転モードでは、ロータリーエンコーダが、ケーブル及びコネクタ1.13を通じて外部から給電される。その結果外部から供給された電流が、導線1.15(図4)を通電する。この第1運転モードでは、励磁回路1.10が一定不変に通電する。その結果軸2.1が回転しているか又は停止しているかに関係なく、励磁ランドパターン1.11も、励磁電流によって一定不変に通電される。受信器ランドパターン1.211,1.212の信号Σ1.211,1.212が、電子回路1.5によって連続して記録され、論理回路1.51内で処理される。位置情報Pが、この論理回路1.51から不揮発性記憶器1.52に伝達されてそこに記憶される。方向も、この論理回路1.51によって認識される。この実施の形態では、いわゆる不揮発性強誘電体メモリ(FRAM又はFeRAM)が、不揮発性記憶器1.52として使用される。この代わりに磁気抵抗メモリ(MRAM)が使用されてもよい。これらの不揮発性記憶器1.52は、基本的に何回もの再書き込み能力を有さなければならない。
【0032】
電力供給が、任意の理由からできないか又は遮断されることが起こりうる。この場合には、ロータリーエンコーダが、第2運転モードに自動的に移行する。この第2運転モードの場合、ロータリーエンコーダが、ここではバッテリ1.7の形態の電圧源によって一時的に給電される。この状態では、バッテリ1.7の寿命を考慮して、可能な限り僅かなエネルギーしか消費されず、少なくとも1つの粗い相対位置が引き続き検出され得ることが特に重要である。この理由から、この示された実施の形態での運転は、受信器ランドパターン1.211,1.212による内側の目盛トラック2.21の走査に限定される。軸2.1つまり回転子2が停止している場合、例えばトランジスタとして構成されたスイッチ1.9が開き、バッテリ1.7が放電されない。不揮発性記憶器1.52内に最初に記憶された位置情報Pが保存され続ける。多くの場合、電源網が故障している時に、第2運転モードが実施される。この場合では、軸2.1又はこの軸2.1に固定された駆動部も多くの場合に停止したままである。
【0033】
軸2.1が、例えば関連する駆動部の負荷の影響下で引き続き回転することも可能である。磁石2.23が、パルス線1.1に近づいた直後に、このパルス線1.1は、電圧パルスΠを生成する。この電圧パルスΠが、プリセットされている電圧閾値に達した時に、スイッチ1.9が閉じられる。その結果バッテリ1.7が、ダイオード1.8を通じて放電される。一般にバッテリ1.7の他方の端子が、抵抗1.4を介して零電位に接続されている。バッテリ1.7の電流が、パルス線1.1からの電圧パルスΠによって上昇して一方ではバッファコンデンサ1.6を充電するために働く。この場合、発生する最大電圧が、電圧リミッタ1.15によって制限される。他方では励磁回路1.10及び電子回路1.5が、この電力によって稼働される。励磁回路1.10は、パルスとしても構成され得る励磁電流を励磁ランドパターン1.11に入力する。受信器ランドパターン1.211,1.212に対するコード板2.2の相対位置に依存して、対応する信号Σ1.211,1.212が、これらの受信器ランドパターン1.211,1.212によって生成される。次いでこれらの信号Σ1.211,1.212は、回路1.5に伝達され、この回路1.5の論理回路1.51内で方向認識アルゴリズムを考慮しつつ処理される。その後に位置情報Pが、この論理回路1.51から不揮発性記憶器1.52に伝達されてそこに記憶される。電圧パルスΠが再び減衰された後に、つまり、電圧パルスΠがプリセットされている電圧閾値を下回った時に、スイッチ1.9が再び開き、バッテリ1.7が充電を停止する。換言すれば、回路1.5が、遅くとも位置情報Pを非揮発性記憶器1.52内に記憶した後に電圧源1.7から再び分離される。しかしこの場合、例えば、位置情報Pを不揮発性記憶器1.52内に記憶するためのエネルギーが、バッファコンデンサ1.6によって供給され得る時には、スイッチ1.9は、位置情報Pを不揮発性記憶器1.52内に記憶する前に既に開かれてもよい。
【0034】
したがって、関連する出来事、すなわち軸2.1の運動が始まる時にだけ、バッテリ1.7が、特にこの装置及び説明した方法によって放電する。特にパルス線1.1が、電圧源1.7に対して並列に接続されていることによって、このパルス線1.1は、回路1.5にエネルギーを供給するために寄与する。さらに、電圧パルスΠのエネルギーが、アシスト的に接続されているので、バッテリ1.7から出力する充電量が最少になる。スイッチ1.9が再び閉じられなければならない時に、バッファコンデンサ1.6が、発生する最大電圧を制限しても引き続き電力を供給できる。
【0035】
図5中には、別の実施の形態が示されている。この実施の形態は、簡略化した回路によって先に説明した実施の形態から区別される。この例では、パルス線1.1の電圧パルスΠが、ロータリーエンコーダのエネルギー供給にもはや寄与しないで、主にスイッチ1.9の制御だけに対して働く。この代わりに、この回路は、バッファコンデンサ1.6を省略することによってさらに簡略化され得る。回路のこの言及した簡略化は、以下で説明する実施の形態に対しても適用可能である。
【0036】
別の実施の形態によれば、本発明は、光学式ロータリーエンコーダでも実施され得る。対応する概略回路が、図6中に示されている。励磁回路は、今度はエミッタとして働く光源1.11′用のドライバ回路1.10′として構成されている。光源1.11′の光が、光学目盛2.21′上に当たり、軸2.1の角度位置に依存してつまり光電素子1.211′,1.212′に対する目盛2.21′の相対位置に依存して変調される。変調された光が、2つの光電素子1.211′,1.212′によって受信され、電気信号Σ1.211′,1.212′に変換される。これらの信号Σ1.211′,1.212′が、90°だけ移相しているように、光電素子1.211′,1.212′は幾何学的に配置されている。
【0037】
電力が、外部から供給できない場合、ロータリーエンコーダは、ここでもバッテリ1.7を電圧源として使用する第2運転モードに移行する。軸2.1つまり回転子2が停止している場合、ここでもスイッチ1.9が開き、バッテリ1.7が放電されない。不揮発性記憶器1.52内に最初に記憶された位置情報Pが保存され続ける。
【0038】
軸2.1が回転しかつ磁石2.23がパルス線1.1に近づいた直後に、このパルス線1.1が、第1の実施の形態で既に説明したように電圧パルスΠを生成する。この電圧パルスΠは、スイッチ1.9を閉じる。その結果バッテリ1.7が、パルス線1.1からの電圧パルスΠのエネルギーを保持することによってアシストされて電力を特にドライバ回路1.10′及び電子回路1.5に出力する。
【0039】
ドライバ回路1.10′自体は、光源1.11′が光パルスを放出することに誘導する。光電素子1.211′,1.212′に対する光学目盛2.21′の相対位置に依存して、対応する信号Σ1.211′,1.212′が、これらの光電素子1.211′,1.212′によって生成される。次いでこれらの信号Σ1.211′,1.212′は、回路1.5に伝達され、この回路1.5の論理回路1.51内で方向認識アルゴリズムを考慮しつつ処理される。その後に位置情報Pが、論理回路1.51から非揮発性記憶器1.52に伝達されてそこに記憶される。電圧パルスΠが再び減衰された後に、スイッチ1.9が再び開き、バッテリ1.7がもはや放電されない。
【0040】
別の実施の形態が、図7にしたがって示されている。先の実施の形態と違って、今度はMRセンサ1.211″,1.212″の形態の能動的な受信器要素が、固定子1に対して配置されている。対向するこれらのMRセンサ1.211″,1.212″は、磁気式の目盛トラック2.21″である。この目盛トラック2.21″は、プリセットされている磁化曲線を有する磁化可能な材料の1つの片材から構成されるか、又は、この目盛トラック2.21″は、分離した個々の磁石から構成される。MRセンサ1.211″,1.212″は、信号Σ1.211″,1.212″を生成する。これらの信号Σ1.211″,1.212″は、コード板2.2と固定子1との間の相対位置に依存する。この機能は、電力が上述した例と同様に外部から供給できない場合に対して実施される。確かにこの場合に電気エネルギーが、MRセンサ1.211″,1.212″の運転に対しても使用される一方で、ここでは電磁場又は光が生成される必要がない。
【0041】
全ての実施の形態の場合、一般に電圧パルスΠの発生が、コード板2.2と固定子1との間の角度位置又は相対位置を測定するためにもさらに考慮され得る。この場合、検出器の数が低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ロータリーエンコーダの断面図である。
【図2】コード板の正面図である。
【図3】走査回路基板の正面図である。
【図4】誘導式ロータリーエンコーダ用の第1の実施の形態による概略回路配置を示す。
【図5】第2の実施の形態による概略回路配置。
【図6】光学式ロータリーエンコーダ用の第3の実施の形態による概略回路図である。
【図7】磁気式に動作するロータリーエンコーダ用の第4の実施の形態による概略回路配置を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 第1要素群
2 第2要素群
1.1 パルス線
1.10 励磁回路
1.11 励磁ランドパターン,エミッタ
1.12 走査回路基板
1.13 コネクタ
1.14 ハウジング
1.15 電圧リミッタ
1.211,1.212 受信器ランドパターン,検出器
1.21,1.22 受信器巻線
1.4 抵抗
1.5 電子回路
1.51 論理回路
1.52 不揮発性記憶器
1.6 バッファコンデンサ
1.7 バッテリ
1.8 ダイオード
1.9 スイッチ
2.1 軸
2.2 コード板
2.21,2.22 目盛トラック
2.211,2.221 電導性目盛領域
2.212,2.222 非電導性目盛領域
2.22 目盛トラック
2.23 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1要素群(1)及び第2要素群(2)を有するロータリーエンコーダにあって、この場合、これらの要素群(1,2)は、軸線(A)の周りに互いに相対的に回転可能に配置されていて、
第1要素群(1)は、
・1つのパルス線(1.1),
・少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′,1.211″,1.212″),並びに
・論理回路(1.51)及び不揮発性記憶器(1.52)を有する1つの電子回路(1.5)を有し、
第2要素群(2)は、
・1つの磁石(2.23)及び
・少なくとも1つのコード要素(2.21;2.21′;2.21″)を有し、この場合、磁石(2.23)が、パルス線(1.1)に近づいた時に、1つの電圧パルス(Π)が、このパルス線(1.1)によって生成可能であり、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′;1.211″,1.212″)に対するコード要素(2.21;2.21′,2.21″)の相対位置に依存して、1つの信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′;Σ1.211,1.222″)が、この検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′;1.211″,1.212″)によって生成可能であり、この場合、1つの位置信号(P)が、論理回路(1.51)によってこの信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′;Σ1.211,1.222″)に基づいて算出可能であり、この位置情報(P)は、不揮発性記憶器(1.52)内に記憶可能であるロータリーエンコーダにおいて、
回路(1.5)が電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこの回路(1.5)に印加可能であり、そして遅くとも位置情報(P)を不揮発性記憶器(1.52)内に記憶した後に、この回路(1.5)が、この電圧源(1.7)から再び分離可能であるように、第1要素群(1)が構成されていることを特徴とするロータリーエンコーダ。
【請求項2】
パルス線(1.1)が電圧源(1.7)に対して並列に接続されていて、その結果パルス線(1.1)の電圧パルスが、電圧源(1.7)のエネルギーと併せて回路(1.5)にエネルギーを供給することに寄与するように、第1要素群(1)が有利に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項3】
第1要素群(1)が、エミッタ(1.11;1.11′)を有し、電磁場が、このエミッタ(1.11;1.11′)によって生成可能であり、この電磁場は、少なくとも1つのコード要素(2.21;2.21′)によって変調可能であり、その結果、信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′)が、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212)に対するコード要素(2.21;2.21′)の相対位置に依存して生成可能であり、この場合、エミッタ(1.11;1.11′)が、
・電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこのエミッタに印加可能であり、
・そして遅くとも位置情報(P)を不揮発性記憶器(1.52)内に記憶した後に、このエミッタ(1.11;1.11′)が、この電圧源(1.7)から再び分離可能であるように、第1要素群(1)が構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項4】
エミッタ(1.11)は、励磁巻線を有し、電磁場が、この励磁巻線によって生成可能であり、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212)が、受信器巻線として構成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項5】
エミッタ(1.11′)が、光源を有し、少なくとも1つの検出器(1.211′;1.212′)が、光電素子として構成されていることを特徴とする請求項3に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項6】
少なくとも1つの検出器(1.211″,1.212″)が電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこの検出器(1.211,1.212)に印加可能であり、そしてこの検出器が、この電圧源(1.7)から再び分離可能であるように、第1要素群(1)が構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項7】
少なくとも1つのコード要素(2.21″)は、磁石として構成されていて、少なくとも1つの検出器(1.211″,1.212″)は、MR素子又はホール素子であることを特徴とする請求項6に記載のロータリーエンコーダ。
【請求項8】
ロータリーエンコーダを運転する方法にあって、この場合、ロータリーエンコーダが、第1要素群(1)及び第2要素群(2)を有し、これらの要素群(1,2)が、軸線(A)の周りに相対的に回転可能に配置されていて、
第1要素群(1)は、
・1つのパルス線(1.1),
・少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′,1.211″,1.212″),並びに
・論理回路(1.51)及び不揮発性記憶器(1.52)を有する1つの電子回路(1.5)を有し、
第2要素群(2)は、
・1つの磁石(2.23)及び
・少なくとも1つのコード要素(2.21;2.21′;2.21″)を有し、この場合、磁石(2.23)が、パルス線(1.1)に近づいた時に、1つの電圧パルス(Π)が、このパルス線(1.1)によって生成可能であり、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′;1.211″,1.212″)に対するコード要素(2.21;2.21′,2.21″)の相対位置に依存して、1つの信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′;Σ1.211,1.222″)が、この検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212′;1.211″,1.212″)によって生成され、この場合、1つの位置信号(P)が、論理回路(1.51)によってこの信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′;Σ1.211,1.222″)に基づいて算出され、この位置情報(P)は、不揮発性記憶器(1.52)内に記憶されるロータリーエンコーダにおいて、
回路(1.5)が電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこの回路(1.5)に印加され、そして遅くとも位置情報(P)を不揮発性記憶器(1.52)内に記憶した後に、この回路(1.5)が、この電圧源(1.7)から再び分離されることを特徴とする方法。
【請求項9】
パルス線(1.1)が電圧源(1.7)に対して並列に接続されていて、その結果パルス線(1.1)の電圧パルスが、電圧源(1.7)のエネルギーと併せて回路(1.5)にエネルギーを供給することに寄与するように、第1要素群(1)が有利に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1要素群(1)が、エミッタ(1.11;1.11′)を有し、電磁場が、このエミッタ(1.11;1.11′)によって生成され、この電磁場は、少なくとも1つのコード要素(2.21;2.21′)によって変調され、その結果、信号(Σ1.211,1.222;Σ1.211,1.222′)が、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212;1.211′,1.212)に対するコード要素(2.21;2.21′)の相対位置に依存して生成され、この場合、エミッタ(1.11;1.11′)が、電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこのエミッタに印加され、そして遅くとも位置情報(P)を不揮発性記憶器(1.52)内に記憶した後に、このエミッタ(1.11;1.11′)が、この電圧源(1.7)から再び分離されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
エミッタ(1.11)は、励磁巻線を有し、電磁場が、この励磁巻線によって生成され、少なくとも1つの検出器(1.211,1.212)が、受信器巻線として構成されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エミッタ(1.11′)が、光源を有し、少なくとも1つの検出器(1.211′;1.212′)が、光電素子として構成されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの検出器(1.211″,1.212″)が電圧パルス(Π)の発生によって起動され、電圧源(1.7)の電圧がこの検出器(1.211,1.212)に印加され、その後にこの検出器が、この電圧源(1.7)から再び分離されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのコード要素(2.21″)は、磁石として構成されていて、少なくとも1つの検出器(1.211″,1.212″)は、MR素子又はホール素子であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−203259(P2008−203259A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33883(P2008−33883)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(390014281)ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】