説明

ローパスフィルタ及びその製造方法

【課題】光学性能を容易に且つ精度良く制御することができ、また、製造が容易で安価且つ安定した品質で製造することができる量産性に適したローパスフィルタを提供する。
【解決手段】基材11上に一方向に延びる断面凸状のレンズ体13が略一定のピッチPで配列された構造体10Aと、構造体10Aのレンズ体13間の溝14を埋めた状態で溝14に配置された中間体15と、を備えたローパスフィルタ10であって、レンズ体13は第1物質で形成され、中間体15は第2物質で形成され、溝14の深さをd(μm)とし、第1物質の屈折率n1と第2物質の屈折率n2とし、前記第1物質の屈折率と前記第2物質の屈折率との差をΔnとしたとき、d・Δn(μm)の値が0.028〜0.366の範囲であり、前記レンズ体のピッチが0.5μm〜100μmの範囲にあることを特徴とするローパスフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローパスフィルタに係り、特に樹脂で形成されたフィルム状のローパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
規則的な繰り返しパターンをデジタルカメラ等の撮像装置で撮像した場合、この繰り返しパターンがイメージセンサの画素(撮像素子)ピッチに重なると、実在しない縞模様であるモアレ像が現れる。このモアレ像を防ぐため、撮像装置にはイメージセンサの手前にローパスフィルタが配置される。
従来、このようなローパスフィルタとして、光反応性高分子を用いて格子パターンを形成したフィルム状のローパスフィルタが提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
このフィルム状のローパスフィルタを製造するには、先ず、ベンゾイルベンゾフェノン(BBP)を含有する光反応性高分子を作製し、これをトルエン溶媒に溶解し、ガラスプレートにスピンコートして乾燥させる。次いで、ガラスプレート上に格子状パターンを有するフォトマスクを配置し、フォトマスクを介してガラスプレートに向けてUV照射し、BBPをポリマーマトリックスに反応ベーキングする。その後、未反応BBPを真空下で昇華させる。
【0004】
この方法で製造したローパスフィルタは、露光部分(反応部分)が非露光部分(非反応部分)よりも盛り上がった状態となり凹凸構造が形成され、また、露光部分と非露光部分の屈折率に差が生じるため、ローパスフィルタとして機能させることができる。
【0005】
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys. Vol.35(1996) pp.1768-1776
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ローパスフィルタの製造方法は、多くの工程を有しており、極めて煩雑であって、製造時間が掛かり、コスト高となるという問題があった。
また、上記ローパスフィルタでは、凹凸構造に起因するポリマーと空気との屈折率差を利用しているため、凹凸構造をサブμm以下(場合によっては0.1μm以下)で制御することが必要となる。しかしながら、上記製法は光反応による自己組織化を利用しているため、微細な構造制御を精度よく行うことが困難であり、再現性よく安定的に製造することが困難であるという問題があった。
【0007】
そして、上記ローパスフィルタでは、微細な構造制御が難しいため、画像に与えるコントラストと、これとトレードオフの関係にあるモアレ除去特性とのバランスを正確に制御して、ユーザの種々の要求通りの光学性能を有するローパスフィルタを安定的に製造することが困難であった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、光学性能を容易に且つ精度良く制御することができ、また、製造が容易で安価且つ安定した品質で製造することができる量産性に適したローパスフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、基材上に一方向に延びる断面凸状のレンズ体が略一定のピッチで配列された構造体と、構造体のレンズ体間の溝を埋めた状態でこの溝に配置された中間体と、を備えたローパスフィルタであって、レンズ体は第1物質で形成され、中間体は第2物質で形成され、溝の深さをd(μm)とし、第1物質の屈折率と第2物質の屈折率との差をΔnとしたとき、d・Δn(μm)の値が0.028〜0.366の範囲であり、レンズ体のピッチが0.5μm〜100μmの範囲にあることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明のローパスフィルタは、基材上に、断面凸状のレンズ体配列と、このレンズ体配列の溝を埋めるように配置された中間体配列とが形成された構成を有しているので、レンズ体と中間体との物質界面で光の散乱を生じさせ、ラマン・ナス回折格子として機能させることができる。
そして、レンズ体を第1物質で形成し、中間体を第2物質で形成しているので、製造時に、溝の深さdと、第1物質と第2物質の屈折率差(Δn)との積(d・Δn)を0.028〜0.366の範囲で容易に種々の小さな値に設定することが可能である。前記範囲は、より好ましくは0.08〜0.30であり、さらに好ましくは0.11〜0.20である。屈折率差をこの範囲で制御することにより、ラマン・ナス回折格子としての十分な機能を確保すると共に、強い高次項の回折光の発生を抑制して画像のコントラストの低下を防止することができる。
【0011】
さらに、本発明では、d・Δnを小さく設定することにより、レンズ体のピッチを0.5μm〜100μmの範囲としつつ、レンズ体の高さを高く設定することが可能となるので、容易に且つ精度よく、しかも再現性よくローパスフィルタを製造することが可能となる。また、レンズ体のピッチを上記範囲とすることで、撮像装置のコンパクト化を阻害することなく、撮像素子近傍にローパスフィルタとして機能するように配置することが可能となる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、第1物質の屈折率と第2物質の屈折率との差Δnが、0.001〜0.02の範囲である。このように第1物質と第2物質の屈折率差(Δn)を小さく設定することにより、レンズ体の高さ、すなわち溝の深さ(d)を大きく設定することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、レンズ体のピッチに対する溝の深さの比であるアスペクト比が、0.1〜4の範囲である。このように構成された本発明では、この範囲でレンズ体のアスペクト比を変更することにより、容易にローパスフィルタの光学性能を制御することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、レンズ体の断面形状が略三角形である。このように構成された本発明では、高い回折効率を有するローパスフィルタを得ることができる。
また、本発明において好ましくは、レンズ体の断面形状が略三角形であり、その頂角が20度〜140度の範囲にある。このように構成された本発明では、レンズ体の高いアスペクト比を確保することができると共に、レンズ体の製造を容易とすることができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、第1物質及び/又は第2物質が紫外線硬化性樹脂である。このように構成された本発明では、基材上にレンズ体及び中間体からなる列配列を容易且つ安価に形成することができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、基材が、アクリルフィルム,PETフィルム及びTACフィルムを含む透明樹脂フィルムであり、厚みが100μm以下である。このように構成された本発明では、安価に製造できると共に、ローパスフィルタの厚みを薄く構成することができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、基材は、レンズ体が設けられていない側の面に反射防止処理が施される。このように空気と接する基材の面に反射防止処理を施すことにより、光学素子内部で多重反射光や映り込みを減らすことができ、ローパスフィルタの機能を高性能に発現することが可能となる。
【0018】
また、上記の目的を達成するために、本発明の二次元ローパスフィルタは、上記ローパスフィルタが、レンズ体の延びる方向が互いに略直交するように2枚積層されてなる。このように構成された本発明では、二次元ローパスフィルタを容易且つ安価に製造することができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、2枚のローパスフィルタの2つの構造体は、レンズ体の頂部が向き合い且つレンズ体の稜線が略直交するように配置され、2つの構造体の中間体は、一体に形成されている。このように構成された本発明では、2つの構造体が中間体を挟み込み、中間体が2つの構造体を接着する構成となるので、製造が簡略化されると共に、全体として薄く形成することができる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、回折光が現れる少なくとも1軸方向においてレーザ光による0次回折光に対する1次回折光の回折強度比が、0.2〜3.0の範囲にある。このように構成された本発明では、十分なモアレ除去効果を確保しつつ、高次項回折光の強度を低く抑えて、画像のコントラストの低下を抑制することができる。
【0021】
また、上記二次元ローパスフィルタは、一方向に延び且つ略一定のピッチで配列された断面凸状のレンズ体のレンズ列を形成するための型面を備えた金型を準備する工程と、金型の型面に第1のエネルギー線硬化性樹脂を介して基材フィルムを接触させる工程と、エネルギー線硬化により第1のエネルギー線硬化性樹脂を硬化させて、基材フィルム上にレンズ体が配置された構造体を形成する工程と、2つの前記構造体を、これらのレンズ体の頂部が向き合い且つレンズ体の稜線が略直交するように配置すると共に、第1のエネルギー線硬化性樹脂とは屈折率の異なる第2のエネルギー線硬化性樹脂によりレンズ体間の溝を埋めた状態で、第2のエネルギー線硬化性樹脂により2つの前記構造体を一体化する工程と、第2のエネルギー硬化性樹脂をエネルギー線硬化させる工程と、を備えた製造方法により製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光学性能を容易に且つ精度良く制御することができ、また、製造が容易で安価且つ安定した品質で製造することができる量産性に適したローパスフィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。先ず、図1及び図2により、本発明の実施形態によるローパスフィルタを説明する。
図1はローパスフィルタの斜視図、図2はローパスフィルタの製造工程の説明図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のローパスフィルタ10は、基材11と、基材11上に列状に配列された同形の複数のレンズ体13と、レンズ体13間の溝14を完全に埋めるようにレンズ体13間に設けられた中間体15とを備えている。基材11とレンズ体13により凹凸形状の構造体10Aが形成されている。
【0025】
基材11は、厚さ30μmの透明(又は半透明)なアクリルフィルムである。なお、本明細書で、「透明」とは「半透明」を含む。
ローパスフィルタ10はイメージセンサ近傍に配置する場合に薄い方が好ましいため、基材11も薄い方が好ましい。このため、基材11の厚みは、100μm以下が好ましいが、より好ましくは75μm、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは30μm以下である。また、基材11の材料は、透明なフィルム状材料であればよく、アクリルフィルム以外にも、例えば、PETフィルム,TACフィルム等を使用することができる。
【0026】
また、ローパスフィルタの実装においては、赤外線カットフィルタがコートされたガラス基材を使用し、これとローパスフィルタを張り合わせ一体化してもよい。また、赤外線カットフィルタがコートされたガラス基材を基材11として用いて、ローパスフィルタ10を形成してもよい。
また、基材11の表面のうち、レンズ体13が設けられていない面(図1では下側の面)、すなわち空気と接する面に、反射防止処理を施してもよい。例えば、使用光線に対する反射防止膜を形成することができる。このように空気と接触する面に反射防止処理を施すことにより、光学素子内部で多重反射光や映り込みを減らすことができ、ローパスフィルタの機能を高性能に発現させることが可能となる。
【0027】
レンズ体13は、紫外線硬化性樹脂材料で形成されたものであり、基材11の表面に一軸状に延び且つ略一定のピッチPで多数配列されており、多数のレンズ体13によりレンズ列を構成している。本実施形態のレンズ体13は、高さdの断面三角形状に形成されている。したがって、レンズ体13により、深さdの断面逆三角形状の溝14の列が形成されている。レンズ体13の高さdは、溝14を形成する部分の高さを意味する。
【0028】
本実施形態では、レンズ体13の断面が略三角形状に形成されることにより、ローパスフィルタ10に入射した光が、進行方向を変更されることなく素通りしてしまうことを低減することができ、高い回折効率を得ることができる。
なお、本実施形態では、レンズ体13の断面が略三角形状であるが、これは、底面と頂部を繋ぐ側面が凹曲面又は凸曲面である場合や、頂部が曲面又は平面等である場合を含むものである。また、レンズ体13は、基材11表面に対して断面凸状であればよく、例えば、断面矩形状,断面半円形状,断面台形状,断面多角形状等の種々の形状であってもよい。さらに、回折効率の低下の許容範囲内で、隣り合うレンズ体13を離間させた状態、すなわち基材11表面全体がレンズ体13により完全に覆われない状態としてもよい。また、レンズ体13の基部同士が連結されていてもよい。
【0029】
本実施形態では、ピッチPが20.0μm、高さdが28.2μmであり、ピッチPに対する高さdの比であるアスペクト比(d/P)が1.41に設定されている。
アスペクト比は、0.1〜4の範囲に設定するのが好ましく、より好ましくは0.3〜3の範囲、さらに好ましくは0.5〜2の範囲である。アスペクト比が0.1よりも小さいと、ローパスフィルタ10の回折効率が低下し、ローパスフィルタとしての機能が著しく低減してしまう。一方、アスペクト比が4よりも大きいと、レンズ体13による凹凸構造を形成することが製造上困難となり好ましくない。
【0030】
また、レンズ体13の断面の頂角は39度に設定されている。レンズ体13の頂角は、20度〜140度の範囲が好ましく、より好ましくは25度〜100度の範囲であり、さらに好ましくは30度〜60度の範囲である。頂角が20度より小さいと、高いアスペクト比を確保することができるが、製造過程において先端の構造が倒れ易く、バリ状になり、安定した凹凸構造を形成するのが困難となる。また、頂角が140度より大きいと、有効なアスペクト比を確保するのが難しくなる。
【0031】
中間体15は、隣接するレンズ体13間の溝14を略完全に埋めるように形成されている。本実施形態では、中間体15は、紫外線硬化性樹脂材料で形成されており、基材11からレンズ体13の頂部と同じ高さまで埋められ、レンズ体13と一体に連結し、基材11表面と略平行な平面である上面15aを形成している。なお、隣り合う中間体15がレンズ体13の頂部よりも上方で互いに連結する構成であってもよい。
【0032】
レンズ体13と中間体15は、共に透明な紫外線硬化性樹脂材料で形成されているが、これらは異なる屈折率を有する樹脂材料が選択されている。本実施形態では、このような樹脂材料として、多官能ウレタンアクリレート系紫外線硬化性組成物と多官能アクリレート系紫外線硬化性組成物との混合物を用いている。また、これ以外にも、種々の樹脂材料を使用してもよい。すなわち、レンズ体13と中間体15は、所定の屈折率差を有していればよく、紫外線や他の波長域の光を含む任意の波長の光(エネルギー線)により硬化する種々のエネルギー線硬化性材料で形成することができる。また、これに限らず、レンズ体13及び中間体15をエネルギー硬化性樹脂材料ではない樹脂材料で形成してもよいし、又はいずれか一方のみをエネルギー硬化性樹脂材料で形成してもよい。
【0033】
本実施形態では、レンズ体13の屈折率n1と中間体15と屈折率n2との屈折率差Δn(「n2−n1」の絶対値)が0.001〜0.02の範囲であり、且つ、ピッチPが0.5〜100μmの範囲となるように設定されている。なお、屈折率差Δnは、より好ましくは0.002〜0.01の範囲、さらに好ましくは0.003〜0.008の範囲であり、ピッチPは、より好ましくは1〜50μmの範囲、さらに好ましくは5〜30μmの範囲である。
【0034】
屈折率差Δnが0.001より小さいと、レンズ体13と中間体15の物質界面での光の散乱が不十分となり、ラマン・ナス回折格子としての機能を充分に果たさない。すなわち、0次項の光が極端に強くなり、1次回折光の回折強度が極端に低下してしまう。
一方、屈折率差Δnが0.02より大きいと、0次項の回折強度が極端に小さくなり、多次項回折光の強い回折パターンが発生し、ローパスフィルタ10を用いた時の映像のコントラストが著しく低下してしまう。すなわち、多くの強い高次回折光が発生し画像のコントラストを著しく低下させてしまう。
【0035】
回折効率の変化は、おおよそ前記深さd(μm)と屈折率差Δnとの積であるd・Δn(μm)の値に依存し、この値は0.028〜0.366の範囲であることが好ましい。この値が0.028より小さいと充分なモアレ除去効果が得られず、一方、0.366より大きいと高次項回折光が増え、その強度が大きくなり、画像のコントラストを低下させる傾向にある。この値は、さらに好ましくは0.08〜0.30の範囲の値であり、さらに好ましくは0.11〜0.20の範囲の値である。
【0036】
また、ピッチPが100μmより大きいと、0次〜2次回折光パターンの間隔が著しく狭くなってしまうので、撮像素子ピッチに対して回折パターンを等価に設定しようとすると、撮像素子とローパスフィルタ10との間隔を必要以上に大きくしなければならず、撮像装置のコンパクト化に支障を来たし好ましくない。一方、ピッチPが0.5μmよりも小さいと、ローパスフィルタ10又は基材11自体の厚みが、ローパスフィルタ10と撮像素子との接近を阻害してしまい、撮像素子ピッチに対して回折パターンを等価に設定する前に、ローパスフィルタ10が撮像素子と当接してしまうおそれが生じる。
【0037】
次に、以上のような構成の本実施形態のローパスフィルタ10の製造方法を説明する。
本実施形態のローパスフィルタ10は、図2に示すフィルタ製造装置20により構造体10Aを製造する工程と、構造体10Aに中間体15を追加形成してローパスフィルタ10を製造する工程とを有する。
【0038】
まず、図2により、構造体10Aを製造する工程について説明する。図2に示すフィルタ製造装置20は、原反フィルム巻き出し部21と、重合賦型部23と、送りローラ27と、切断部28とを備えている。
原反フィルム巻き出し部21は、長尺状の透明基材フィルム11A(基材11)がロール状に巻かれた原反フィルムロール22を備え、この原反フィルムロール22から巻き出された基材フィルム11Aを、重合賦型部23へ送るように構成されている。
【0039】
重合賦型部23は、略円筒形状のレンズ金型24と、樹脂供給ノズル25と、紫外線照射装置26とを備えている。この重合賦型部23では、透明フィルムシートである基材フィルム11Aの一方の面に複数のレンズ体13からなるレンズ列が賦型される。
【0040】
レンズ金型24は、その外周面の全体に透明フィルムシートに賦型されるレンズ体13の形状と相補的な三角柱状(中間体15又は溝14の形状)の金型形状が、連続的に形成された回転式金型であり、一定の回転速度で回転する。上記レンズ体13の形状と相補的な三角柱状は、レンズ金型24の回転軸と略平行に金型表面に形成されている。
なお、相補的な三角形状を有する型面は、銅めっきしたロール状のレンズ金型24の表面をダイヤモンドバイトで切削することにより形成することができる。また、レンズ金型24の表面には、種々のピッチP及び高さdの組合せの設定に応じて、三角形状の連続配列からなる型面を切削により容易に形成することができる。
【0041】
重合賦型部23に送られた基材フィルム11Aは、回転するレンズ金型24の外周面に接触して送り出される。基材フィルム11Aがレンズ金型24と接触する位置より上流側に樹脂供給ノズル25が配置され、基材フィルム11Aとレンズ金型24の間に、樹脂供給ノズル25から紫外線硬化性樹脂材料13Aが供給される。基材フィルム11Aとレンズ金型24の型面との間に供給された樹脂材料13Aは、レンズ金型24と基材フィルム11Aとの間で挟持され、レンズ金型24の表面の凸形状に対応した形状とされる。
【0042】
樹脂供給ノズル25よりレンズ金型24の回転方向下流側の外方位置に紫外線照射装置26が設けられている。レンズ金型24の型面の凸形状に沿った形状とされた紫外線硬化性樹脂材料13Aは、レンズ金型24の回転によって紫外線照射装置26の前を通過し、紫外線照射を受け硬化する。この結果、基材フィルム11Aは、一方の面に紫外線硬化性樹脂材料13Aが硬化したレンズ体13が形成される。
【0043】
レンズ体13が形成された基材フィルム11Aはレンズ金型24から離型され、送りローラ27を介して、切断部28に送り出される。基材フィルム11Aは、切断部28でカッター29によって切断され、これにより所定長の構造体10Aが製造される。
この構造体10Aは、レンズ体13の頂角が39度,ピッチPが20.0μm,高さdが28.2μm,アスペクト比が1.41となるように設定されており、光学顕微鏡により良好な断面形状のレンズ体13が転写されていることが確認された。
【0044】
次に、構造体10Aに中間体15を追加形成してローパスフィルタ10を製造する工程について説明する。
この工程では、所定長の構造体10A上に、中間体15を形成するための紫外線硬化性樹脂材料をコーティングし、レンズ体13間の溝14を埋めるようにローラで均した状態で、紫外線照射装置から紫外線を照射することにより、樹脂材料を硬化させる。これにより、構造体10Aに中間体15が付加されたローパスフィルタ10が製造される。
なお、本実施形態では、レンズ体13を基材フィルム11Aに形成するために、略円筒形状のレンズ金型24を使用していたが、これに限らず、平金型を使用してもよい。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態によるローパスフィルタについて説明する。
第1実施形態のローパスフィルタは1次元ローパスフィルタであったが、第2実施形態のローパスフィルタは2次元ローパスフィルタである。なお、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図3〜図6に示すように、本実施形態の二次元ローパスフィルタ30は、2つの構造体30A,30Bを向かい合わせた状態で、屈折率n2の紫外線硬化性樹脂材料35Aからなる中間体35を介して略平行に積層させた構成を有する。
2つの構造体30A,30Bは、第1実施形態の構造体10Aと同じ構造を有するものであり、レンズ体13が形成された面同士を向き合わせ、且つ、レンズ体13の稜線(又はレンズ体13の延びる方向)が互いに略直交するように配置されている。
【0047】
本実施形態では、中間体35は、構造体30A,30Bのレンズ体13の頂部同士が接触せず、基材11と略同じ厚み分だけ離間するように構成されている。なお、構造体30A,30Bのレンズ体13の頂部同士が当接していてもよい。
また、レンズ体13が設けられていない基材11表面において、構造体30A,30Bのうちの少なくとも一方に反射防止処理を施してもよい。また、好適には、二次元ローパスフィルタ30の表面、すなわち空気と接する面の少なくとも一方に、反射防止処理を施してもよい。このように空気と接触する面に反射防止処理を施すことにより、光学素子内部で多重反射光や映り込みを減らすことができ、二次元ローパスフィルタの機能を高性能に発現させることが可能となる。
【0048】
本実施形態の二次元ローパスフィルタ30は、先ず構造体30A,30Bを作製した後、図6に示すように、構造体30A,30Bにより屈折率n2の紫外線硬化性樹脂材料35Aを挟み込み、紫外線硬化性樹脂材料35Aを紫外線硬化させることにより製造することができる。
【0049】
なお、第1実施形態の一次元ローパスフィルタ10を直交配置して積層することにより、二次元ローパスフィルタを製造してもよい。この場合、2枚の一次元ローパスフィルタ10を、これらのレンズ体13の稜線の延びる方向が互いに略直交するように積層させ、これらを一体に固定する。なお、この二次元ローパスフィルタを作製する際、2枚の一次元ローパスフィルタ10を、基材11側が向き合うように積層させてもよいし、レンズ体13側が向き合うように積層させてもよいし、一方のレンズ体13側と他方の基材11側が向き合うように積層させてもよい。このようにして得られた二次元ローパスフィルタは、第2実施形態の二次元ローパスフィルタ30と同様の性能を有する。
【0050】
次に、ローパスフィルタについての評価方法について説明する。
(CZPによるローパスフィルタの特性評価方法)
作製したローパスフィルタを、カメラモジュール内のCMOS固体撮像素子上に配置して、ローパスフィルタ機能評価のために用いられるサーキュラーゾーンプレート(ISO−12233解像度テストチャート)を撮影することで、ローパスフィルタとしての特性評価を行う。
【0051】
CMOS固体撮像素子は、エレコム社製USB接続Webカメラ UCAM−P1C30に内蔵されている1/4インチCMOS固体撮像素子(最大解像度:640×480ピクセル)である。
レンズは、エドモンドオプティクス社製μ−VIDEOレンズ 高解像度タイプ(焦点距離12.5mm,Fナンバー2.5)である。
そして、上記CMOS固体撮像素子と、ローパスフィルタと、レンズを同一軸上に配置し、CMOS固体撮像素子とローパスフィルタとの間の距離は任意の値に設定できるような構成とする。
その他の撮影に関わる条件は、カメラ映像機器工業会規格 CIPA DC−003−2003「デジタルカメラの解像度測定方法」に従う。
【0052】
(ローパスフィルタのレーザ回折強度比の測定方法)
図7に示すように、暗室内で、レーザポインタ40と、減光フィルタ41と、作製したローパスフィルタ30(又は10)と、スクリーン42とを同一軸上(x軸上)に配置し、スクリーン42上に投影される回折パターンを、CCDカメラ43により取り込み、画像解析ソフト(三谷商事製:商品名「WinRoof」)を用いて、0次、±1次の回折光強度をそれぞれ求め、±1次の回折光強度の和を0次の回折光強度で除した値({(+1次)+(−1次)}/(0次))を計算する。各回折強度の測定は前記「WinRoof」ソフト上の“計測”モ−ドから“濃度特徴”モ−ドを選択し、次いで“合計”のコマンドを選択し、1個の回折スポット面積全体の積分強度を算出する。ただし、各回折スポットの解析領域は全て同一形状の長方形“ROI”(解析エリアを設定する枠のこと)で囲って行う。ROIが同じものであれば、各回折スポットの積分強度は常に正確に評価できる。
ただし、予め暗室内におけるレーザ発信しない状態でのバックグランド画像をデータとして取り込んでおき、バックグラウンド画像の値を、回折画像データから差し引いたマイナス演算画像を用いて、回折強度を正確に求める。
【0053】
レーザポインタ40は、株式会社高知豊中技研製のレーザポインタ(商品名「グリーンレーザーポインタ」,品番:GLP−TR)であり、出力波長が532nm(出力:1mW未満)である。
CCDカメラ43は、ソニー株式会社製のCCDカメラ(商品名「3CCDカラービデオカメラ」,品番:DXC−390)である。
スクリーン42は、レーザポインタ40側から方眼紙,黒画用紙,アクリル板を積層させたものである。
【0054】
レーザポインタ40と減光フィルタ41間の距離x1は26cm、減光フィルタ41とローパスフィルタ30間の距離x2は6cm、ローパスフィルタ30とスクリーン42との距離x3は100cm、CCDカメラ43とスクリーン42間の距離x4は121cmとした。また、CCDカメラ43とレーザポインタ40とのy軸方向の距離y1は8.5cmとした。
【0055】
図8にレーザ回折パターンの一例を示す。中心に位置するスポットSaが0次回折光であり、その上下及び左右に1次回折光,2次回折光・・・が観察される。図中、スポットSbがy軸方向の+1次回折光、スポットScがy軸方向の−1次回折光である。また、スポットSdがx軸方向の+1次回折光、スポットSeがx軸方向の−1次回折光である。
【0056】
一次元ローパスフィルタ10では1軸方向(x軸方向又はy軸方向)にのみ回折光が現れる。二次元ローパスフィルタ30では、2軸方向(x軸方向及びy軸方向)に回折光が現れる(図8参照)。
本実施形態のローパスフィルタ10,30では、回折光が現れる軸方向において、レーザ光による0次回折光に対する1次回折光の回折強度比({(+1次)+(−1次)}/(0次))が0.2〜3.0の範囲に設定されている(ローパスフィルタ30では、1次及び−1次回折光は、x軸またはy軸方向の和)。回折強度比は、好ましくは0.5〜2.5の範囲に設定され、さらに好ましくは1.0〜1.7の範囲に設定される。
【0057】
回折強度比が0.2より小さいと、ローパスフィルタによる充分なモアレ除去効果が発現せず、回折強度比が3.0より大きいと、2次以上の高次回折光強度が強くなり、画像のコントラストを低下させてしまう。
【0058】
本発明の一次元及び二次元ローパスフィルタは、レンズ体のピッチ,高さ及び断面形状、レンズ体及び中間体に用いる樹脂材料の屈折率等を、それぞれ上述の所定範囲に設定することにより、使用に即した光学性能を備えたものとすることができる。
以下に、レンズ体を同じ構成とし、レンズ体と中間体の樹脂材料の屈折率差を異ならせた実施例を示す。
【0059】
(実施例1)
凹凸構造体の断面形状が略三角形で頂角39度、ピッチ20μm、高さ28.2μm、アスペクト比1.41の形状となるように、銅めっきしたロール状のレンズ金型にダイヤモンドバイトで切削して相補的形状の型面を作製した。このレンズ金型に屈折率n1が1.5028の光硬化性樹脂材料を滴下塗布して、38μm厚のPETフィルムを接触させ、高圧水銀ランプでUV硬化させることで凹凸構造を有するフィルムを作製した。
【0060】
次いで、2枚の凹凸構造フィルムを、互いのレンズ体の頂部が向き合い、且つ、稜線が直交するように配置し、屈折率n2が1.4980の光硬化性樹脂材料を用いて互いの凹凸の溝を埋めるように貼り合わせ、高圧水銀ランプでUV硬化させることにより二次元ローパスフィルタを作製した。
実施例1での屈折率差Δn(「n1−n2」の絶対値)は、0.0048である。なお、屈折率はアッベの屈折計で測定した。また、屈折率差は、以下の実施例及び比較例ともに、23℃においてD線(波長589nm)により測定したものである。また、d・Δnは0.1354(μm)である。
【0061】
(実施例2)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.520の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。
実施例2での屈折率差Δnは、0.0030である。また、d・Δnは0.0846(μm)である。
【0062】
(実施例3)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.519の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。実施例3での屈折率差Δnは、0.0040である。また、d・Δnは0.1128(μm)である。
【0063】
(実施例4)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.518の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。実施例4での屈折率差Δnは、0.0050である。また、d・Δnは0.1410(μm)である。
【0064】
(実施例5)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.517の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。実施例5での屈折率差Δnは、0.0060である。また、d・Δnは0.1692(μm)である。
【0065】
(実施例6)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.516の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。実施例6での屈折率差Δnは、0.0070である。また、d・Δnは0.1974(μm)である。
【0066】
(比較例)
屈折率n1が1.523、屈折率n2が1.5096の光硬化性樹脂を用いて、実施例1と同様な方法により、同じ構成及び形状の二次元ローパスフィルタを作製した(屈折率は23℃におけるD線(波長589nm)によるもの)。比較例での屈折率差Δnは、0.0130である。また、d・Δnは0.3666(μm)である。
【0067】
実施例1〜実施例6および比較例のローパスフィルタのレーザ回折強度比を測定した。
その結果、実施例1のローパスフィルタの回折強度比{(+1次)+(−1次)}/(0次)は1.68であった。また、実施例2では1.40、実施例3では0.21、実施例4では1.54、実施例5では1.22、実施例6では1.59であるのに対し、比較例では3.05であった。比較例では、0次回折光に対して1次回折光が1.56倍及び1.49倍、2次回折光が1.44倍及び1.32倍、3次回折光が1.09倍及び1.12倍となった。
【0068】
このように、d・Δnが0.028〜0.366(μm)の範囲となる実施例1〜6では、回折強度比が0.2〜3.0の範囲となり、良好な特性を有するローパスフィルタを得ることができた。一方、d・Δnが上記範囲を超えた0.3666(μm)である比較例では、回折強度比が3.05となり、高次回折光が増えると共に、その強度が大きくなり、画像のコントラストを低下させてしまう。
【0069】
また、CZPによる特性評価を、実施例1〜実施例6および比較例のローパスフィルタに対して行った。図9はローパスフィルタを使用しないで上述のCZPを撮像した画像である。ここでは、実施例1,実施例2のローパスフィルタを配置してCZPを撮像した画像を、それぞれ図10,図11に示す。
【0070】
ローパスフィルタを使用しない場合(図9)、画像には多数のモアレ像が確認された。一方、実施例1のローパスフィルタを使用した場合(図10)、図9で観察されたモアレ像の多くが消失した。さらに、実施例2のローパスフィルタを使用した場合(図11)、実施例1のローパスフィルタよりもさらに多くのモアレ像が消失しており、モアレ除去機能が向上していることが確認された。
【0071】
一方、CZPにおける低周波数領域よりのリングパターンのコントラストが、図9,図10,図11の順に徐々に低下していくことが確認された。
このように、図10,図11から、実施例1及び実施例2において、モアレ除去レベルと画像コントラストの異なるローパスフィルタを得ることができたことが分かる。これにより、屈折率差Δn又はd・Δnを制御することで、モアレ除去レベル及び画像コントラストを容易に制御することができることが明らかとなった。
【0072】
以上のように、本発明の一次元ローパスフィルタは、従来のように光反応性高分子の光反応による自己組織化を利用するのではなく、金型により基材上に透明材料からなるレンズ列を形成し、屈折率の異なる透明材料を用いて、レンズ列間の溝を埋めるように中間体を形成している。また、本発明の二次元ローパスフィルタは、レンズ列が互いに略直交するように一次元ローパスフィルタを積層させた構成となっている。
【0073】
本発明のローパスフィルタでは、従来のように空気とレンズとの屈折率差を利用して回折を生じさせるのではなく、レンズ体と中間体との屈折率差を利用して回折を生じさせているため、レンズ体及び中間体を形成する透明材料を変更することにより、両者の屈折率差を容易に制御することができる。
【0074】
そして、従来、空気とレンズとの屈折率差を利用する場合、この屈折率差は非常に大きな値となってしまうため、凹凸構造の高さをサブμmオーダー以下で微細に制御しなければならなかった。
しかしながら、本発明では、レンズ体及び中間体の屈折率差を利用しているので、この屈折率差を非常に小さく設定することができる。このため、本発明では、レンズ体の高さ及びピッチをサブμm以下で微細に制御しなくてもすむ。
【0075】
したがって、本発明のローパスフィルタでは、レンズ列を金型により容易に精度よく且つ再現性よく形成することができる。また、金型を変更することにより、レンズ列のピッチや高さを変更することが可能となる。
さらに、本発明のローパスフィルタは、金型で製造することができるため、製造工程が従来よりも単純化され、しかも安定した品質で極めて安価に製造することができ、量産化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態によるローパスフィルタの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるローパスフィルタの製造工程の説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるローパスフィルタの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるローパスフィルタの製造工程の説明図である。
【図7】レーザ回折強度比の測定方法の説明図である。
【図8】レーザ回折パターンを示す説明図である。
【図9】本発明のローパスフィルタを使用しなかった場合のCZP評価画像である。
【図10】本発明の実施例1のローパスフィルタを使用した場合のCZP評価画像である。
【図11】本発明の実施例2のローパスフィルタを使用した場合のCZP評価画像である。
【符号の説明】
【0077】
10 一次元ローパスフィルタ
10A 構造体
11 基材
11A 基材フィルム
13 レンズ体
13A 紫外線硬化性樹脂材料
14 溝
15 中間体
15a 上面
20 フィルタ製造装置
21 原反フィルム巻き出し部
22 原反フィルムロール
23 重合賦型部
24 レンズ金型
25 樹脂供給ノズル
26 紫外線照射装置
27 送りローラ
28 切断部
29 カッター
30 二次元ローパスフィルタ
30A,30B 構造体
35 中間体
35A 紫外線硬化性樹脂材料
40 レーザポインタ
41 減光フィルタ
42 スクリーン
43 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に一方向に延びる断面凸状のレンズ体が略一定のピッチで配列された構造体と、
前記構造体のレンズ体間の溝を埋めた状態で前記溝に配置された中間体と、を備えたローパスフィルタであって、
前記レンズ体は第1物質で形成され、前記中間体は第2物質で形成され、
前記溝の深さをd(μm)とし、前記第1物質の屈折率と前記第2物質の屈折率との差をΔnとしたとき、d・Δn(μm)の値が0.028〜0.366の範囲であり、前記レンズ体のピッチが0.5μm〜100μmの範囲にあることを特徴とするローパスフィルタ。
【請求項2】
前記第1物質の屈折率と前記第2物質の屈折率との差Δnが、0.001〜0.02の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のローパスフィルタ。
【請求項3】
前記レンズ体のピッチに対する前記溝の深さの比であるアスペクト比が、0.1〜4の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のローパスフィルタ。
【請求項4】
前記レンズ体の断面形状が略三角形である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のローパスフィルタ。
【請求項5】
前記レンズ体の断面形状が略三角形であり、その頂角が20度〜140度の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のローパスフィルタ。
【請求項6】
前記第1物質及び/又は前記第2物質が紫外線硬化性樹脂である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のローパスフィルタ。
【請求項7】
前記基材が、アクリルフィルム,PETフィルム及びTACフィルムを含む透明樹脂フィルムであり、厚みが100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のローパスフィルタ。
【請求項8】
前記基材は、前記レンズ体が設けられていない側の面に反射防止処理が施されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のローパスフィルタ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のローパスフィルタが、前記レンズ体の延びる方向が互いに略直交するように2枚積層されてなることを特徴とする二次元ローパスフィルタ。
【請求項10】
前記2枚のローパスフィルタの2つの構造体は、前記レンズ体の頂部が向き合い且つ前記レンズ体の稜線が略直交するように配置され、
前記2つの構造体の中間体は、一体に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の二次元ローパスフィルタ。
【請求項11】
回折光が現れる少なくとも1軸方向においてレーザ光による0次回折光に対する1次回折光の回折強度比が、0.2〜3.0の範囲にあることを特徴とする請求項9又は10に記載の二次元ローパスフィルタ。
【請求項12】
一方向に延び且つ略一定のピッチで配列された断面凸状のレンズ体のレンズ列を形成するための型面を備えた金型を準備する工程と、
前記金型の型面に第1のエネルギー線硬化性樹脂を介して基材フィルムを接触させる工程と、
エネルギー線硬化により前記第1のエネルギー線硬化性樹脂を硬化させて、前記基材フィルム上に前記レンズ体が配置された構造体を形成する工程と、
2つの前記構造体を、これらのレンズ体の頂部が向き合い且つレンズ体の稜線が略直交するように配置すると共に、前記第1のエネルギー線硬化性樹脂とは屈折率の異なる第2のエネルギー線硬化性樹脂により前記レンズ体間の溝を埋めた状態で、前記第2のエネルギー線硬化性樹脂により2つの前記構造体を一体化する工程と、
前記第2のエネルギー線硬化性樹脂をエネルギー線硬化させる工程と、を備えたことを特徴とする二次元ローパスフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−157232(P2009−157232A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337408(P2007−337408)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】