説明

ローラコンベヤ用ユニットおよびこれを用いたローラコンベヤ

【課題】ローラコンベヤ用ユニットをローラコンベヤから着脱容易にすると共に、それぞれのローラコンベヤ用ユニットにおける回転応答性を向上させることで、メンテナンス性に優れ、搬送速度の制御性を向上させたローラコンベヤを提供する。
【解決手段】 搬送物200を搬送する搬送面を構成する単数または複数のローラ体12と、ローラ体12を個別に回転駆動させる駆動手段であるモータ14と、ローラ体12およびモータ14をそれぞれ保持する保持フレーム16と、搬送面上に搬送物200が載置されていることを検出する搬送物検出手段18と、搬送物検出手段18の検出結果に基づいてモータ14への動力供給を制御する制御部30と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラコンベヤ用ユニットおよびこれを用いたローラコンベヤに関し、より詳細には、メンテナンス性に優れたローラコンベヤ用ユニットおよびこれを用いたローラコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物を搬送する手段としての搬送用コンベヤの一形態として、搬送面にベルトなどの無限端縁部材を用いることなく、回転駆動するローラの上に直接搬送物を載置して搬送するローラコンベヤがある。
このようなローラコンベヤを採用することにより、各ローラの回転駆動速度を綿密に調整することができる。すなわち、ローラコンベヤ上の任意の区間において搬送物の搬送速度を他の区間より速くしたり遅くしたりすることにより、ローラコンベヤ上に搬送物を一時的に貯留するいわゆるアキュムレート機能を供えたローラコンベヤを提供することができる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1にあるローラコンベヤにおいては、各ローラを回転駆動させる際において、モータの出力をローラの回転駆動力のみに用いているため、モータ出力のロスを大幅に削減させることができるため、好適に用いられている。
【特許文献1】特開2001−80713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のローラコンベヤによれば、搬送物の高速搬送や搬送物のアキュムレート機能を省エネルギーで実現することができる。しかしながらこのような機能を繰り返し使用しているとそれぞれのモータに与える負担が増加し、モータの寿命が短くなりがちである。また、ローラコンベヤ内のモータはすべてが同時に破損するわけではないため、ローラコンベヤ内の一部をメンテナンスする必要が出てくる。ところが現時点においてはローラコンベヤの一部分のみを容易に取り出すことができる構造については開示されておらず、ローラコンベヤの一部分を交換したいだけにもかかわらず、ローラコンベヤの大部分の分解が必要になりローラコンベヤのメンテナンス性が低いといった課題がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ローラコンベヤを構成するローラコンベヤ用ユニットをローラコンベヤから着脱容易にすると共に、それぞれのローラコンベヤ用ユニットにおける回転応答性を向上させることで、メンテナンス性に優れ、搬送速度の制御性を向上させたローラコンベヤと、これに用いるローラコンベヤ用ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の構成を備える。
すなわち、搬送物を搬送する搬送面を構成する単数または複数のローラ体と、該ローラ体を個別に回転駆動させる駆動手段と、前記ローラ体および前記駆動手段をそれぞれ保持する保持フレームと、前記搬送面上に前記搬送物が載置されていることを検出する搬送物検出手段と、前記搬送物検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段への動力供給を制御する制御部と、を有していることを特徴とするローラコンベヤ用ユニットである。
【0007】
また、前記搬送物の搬送方向において隣接する前記駆動手段は、前記搬送物の搬送方向に対して直交する方向において、配設位置の中心位置どうしの離間距離が駆動手段の幅寸法以上となる配置にそれぞれ配設されていることを特徴とする。この構成を採用することにより、ローラコンベヤ用ユニットの着脱を容易に行うことが可能になる。
【0008】
また、前記搬送物の搬送方向において隣接する前記駆動手段は、前記搬送物の搬送方向に対して直交する方向において前記ローラ体の右端位置と左端位置とに交互に配設されていることを特徴とする。この構成を採用することにより、ローラコンベヤ用ユニットの着脱をさらに容易に行うことが可能になる。
【0009】
また、上記のいずれかにかかるローラコンベヤ用ユニットを複数連続に配設してなることを特徴とするローラコンベヤとすることもできる。
さらにまた、前記ローラコンベヤ用ユニットにおける制御部の動作を統括制御する統括制御部をさらに有していることを特徴とするローラコンベヤとすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るローラコンベヤ用ユニットおよびこれを用いたローラコンベヤによれば、ローラコンベヤからローラコンベヤの一部であるローラコンベヤ用ユニットを容易に着脱することが可能であると共に、各々のローラコンベヤ用ユニットにおいてローラ体の回転を搬送物の載置状況に応じて個別に制御することが容易になる。これにより、メンテナンス性に優れ、搬送物の搬送速度をきめ細かく制御することが可能なローラコンベヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本実施の形態におけるローラコンベヤ用ユニットおよびこれを用いたローラコンベヤの実施形態を説明する。図1は、本実施形態におけるローラコンベヤの前方斜視図である。図2は、本実施の形態におけるローラコンベヤを搬送物の搬送方向から臨んだ正面図である。図3は、本実施の形態におけるローラコンベヤの底面図である。図4は、本実施形態におけるローラコンベヤの平面図である。図5は、本実施形態におけるローラコンベヤを搬送物の搬送方向と直交する方向から臨んだ正面図である。本実施形態においては、説明の便宜上搬送延長が短いローラコンベヤについて説明を行っているが、実際のローラコンベヤ100における搬送物の搬送延長は任意の搬送延長に設定することができる。
【0012】
図1に示すように本実施の形態におけるローラコンベヤ100は、搬送物200の搬送方向に合わせた形態に組み立てられた本体フレーム110に、複数のローラコンベヤ用ユニット10を搬送方向に沿って直列に配設することにより構成されている。本実施形態においては、直線形状に形成された本体フレーム110にローラコンベヤ用ユニット10を載置した後、互いに当接する部分をネジ止めすることによりローラコンベヤ100を構築した。ローラコンベヤ用ユニット10のローラコンベヤ100への着脱がきわめて容易に行うことができる。
【0013】
本体フレーム110は、図1,2に示すように本体フレーム110の内部空間にローラコンベヤ用ユニット10のモータ14と制御部30が収納できる高さ寸法に形成されている。本実施形態における本体フレーム110は、互いに接続可能なジョイント部分を有する単位フレーム110Aを連結することにより構築されている。このように単位フレーム110Aにより本体フレーム110を構築する形態を採用すれば、さまざまな形状を有する単位フレーム110Aの組み合わせ方法によって多種多様な本体フレーム110を構築することができ、安価で多機能なローラコンベヤ100を提供することが可能である。
【0014】
ローラコンベヤ100を構成する各々のローラコンベヤ用ユニット10は、図1に示すように、2本のローラ体12,12と、ローラ体12を個別に回転駆動する駆動手段であるモータ14,14とが、保持フレーム16に保持されている。ローラ体12の表面にはゴムやプラスチック等により筒状に形成されたスリップローラ12Aが装着されている。スリップローラ12Aの内径寸法は、ローラ体12の回転軸12Zの外径寸法より僅かに大きく形成されているため、搬送物200の重量がスリップローラ12Aに作用していない場合は、回転軸12Zの回転はスリップローラ12Aに伝達されず、スリップローラ12Aは回転せず、回転軸12Zのみが回転する。これに対して、搬送物200の重量がスリップローラ12Aに作用すると、スリップローラ12Aの内周面と回転軸12Z外周面との摩擦力が増加し、回転軸12Zの回転がスリップローラ12Aに伝達し、回転軸12Zとスリップローラ12Aとが一体になって回転する。
【0015】
保持フレーム16はモータ14を保持するプレート部16Aと、ローラ体12を回動可能に保持する側壁部16Bと、上面カバー16Cと、により構成されている。図2に示すように、プレート部16Aは平板に、側壁部16Bおよび上面カバー16CはそれぞれL字状断面に形成されている。プレート部16Aの両端縁は、単位フレーム110Aの上面と側壁部16Bの下面とにより挟持された状態でネジ止めされている。ローラ体12は側壁部16Bに回動可能に装着されている。上面カバー16Cは側壁部16Bにネジ止めにより固定されている。
【0016】
図3に示すように、プレート部16Aに保持されたモータ14,14は搬送路の延長方向に沿って、それぞれのローラ体12の右端部分と左端部分とに交互となるように配設されている。このようなモータ14の配列を採用することにより、ローラ体12の配設間隔を狭くすることができ、ローラコンベヤ用ユニット10の小型化が容易になる。搬送物200の搬送方向において互いに隣接するモータ14のローラ体12の軸線方向(搬送物200の搬送方向に直交する方向)における配設間隔は、少なくとも、モータ14の幅寸法以上であればよい。
モータ14の出力軸はそれぞれローラ体12の先端部側に向けた状態で配置されている。モータ14からの駆動力は、ローラ体12の回転軸とモータ14の出力軸との間に巻回された無端縁のゴムベルト40により伝達される。ゴムベルト40は、丸型断面のものが好適に用いられる。
【0017】
ローラコンベヤ100における搬送物200の搬送面はローラ体12の上面になる。支持フレーム16の上面カバー16Cにはローラ体12の上面位置よりも上方位置でガイド部材20を固定するための固定具22が立設されている。ガイド部材20は、ガイド部材20の形状や固定具22の形状を適宜変更することにより、搬送物200の寸法に合わせてローラ体12の上方位置まで張り出すようにして配設することもできる。ガイド部材20の内壁面には緩衝材を配設しておくと好適である。搬送物200の搬送速度が十分に低速である場合や、搬送物200がローラコンベヤ100の搬送面から逸脱せずに搬送されることが保証されている場合においては、ガイド部材20の配設を省略することももちろん可能である。
【0018】
このように、ローラコンベヤ用ユニット10は支持フレーム16にローラ体12とモータ14とが一体に取り付けられたシンプルな構成であるため、ローラコンベヤ100の本体フレーム110への着脱作業が容易である。これに加え、ローラコンベヤ用ユニット10は搬送路全体に対する延長が短いので、万が一ローラコンベヤ100が故障した場合であっても、故障した部分のローラコンベヤ用ユニット10のみを交換するだけでよいため、復旧に要する時間は短くて済み、搬送物200の不意な停滞を可及的に防ぐことができる。
【0019】
図5に示すように、側壁部16Bには各ローラ体12の回転軸支持部分にスリップローラ12Aの回転状態を検出することにより、ローラ体12上の搬送物200の有無を検出する搬送物検出手段18が配設されている。本実施形態における搬送物検出手段18は、ローラ体12のスリップローラ12Aに埋設した磁石からなる被検出体18Aと、ローラ体12の回転軸12Zを支持する部分に配設され、磁力の変化を検出するホール素子等からなる検出センサ18Bとにより構成されている。搬送物検出手段18による検出結果(スリップローラ12Aの回転の有無)は、支持フレーム16の下側空間内に配設された制御部30に送信される。本実施形態においては、制御部30をモータ14の下面に配設した。モータ14と制御部30との間は断熱されているのはもちろんである。
【0020】
制御部30は、搬送物検出手段18が検出した各ローラ体12の回転状態(ローラ体12上における搬送物200の有無の状態)の情報を受信すると、搬送物200が搬送される方向に隣接するローラ体12を駆動させるモータ14への動力(電力)の供給を制御してローラ体12の回転速度を調整する。このような制御を行うことにより、搬送物200を円滑に搬送することができる。
本実施形態においてはローラコンベヤ用ユニット10に2組のローラ体12,12およびモータ14,14のみを配設した形態について説明しているが、多数組のローラ体12,12,・・・およびモータ14,14,・・・を有するローラコンベヤ用ユニット10を採用した場合においては、搬送物200を円滑に搬送させる際においてきわめて好都合である。
【0021】
ところでローラコンベヤ100には通常複数個のローラコンベヤ用ユニット10,10,・・・が連結されているので、各ローラコンベヤ用ユニット10に配設されている制御部30によるモータ14の動作制御がローラコンベヤ用ユニット10およびローラコンベヤ100内において同期させるための統括制御部(図示せず)が必要になる。各ローラコンベヤ用ユニット10に配設された制御部30に外部出力端子を備えさせると共に、外部接続端子どうしを接続可能な通信ケーブルを配設すれば、各々の制御部30を統括制御部に接続させることができる。
【0022】
本実施形態においては、統括制御部として、各ローラコンベヤ用ユニット10内における搬送物200の搬送速度を個別に制御することが可能な制御プログラムをインストールした一般的なパーソナルコンピュータの適用を想定している。このような統括制御部を配設することにより、隣接するローラコンベヤ用ユニット10間におけるローラ体12およびモータ14の動作が適切に制御することができるので、隣接するローラ体12間における回転速度の差により搬送物200に与えられる衝撃をなくすことができる。このようなローラコンベヤ100は精密部品や精密機器の搬送において特に好適である。
【0023】
以上に、本実施形態におけるローラコンベヤ用ユニット10とこれを複数用いてなるローラコンベヤ100について説明を行ってきたが、本発明にかかるローラコンベヤ用ユニット10およびこれを用いたローラコンベヤ100は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、2組のローラ体12,12およびモータ14,14によりローラコンベヤ用ユニット10が構成されているが、ローラ体12およびローラ体12を駆動させるモータ14は一組であってもよいし、3組以上配設することにより構成してもよいのはもちろんである。また、ローラ体12とモータ14の出力軸とはゴムベルト40により連結されているが、図示しないギヤを用いてローラ体12の回転軸12Zとモータ14の出力軸とを直結させた形態を採用することもできる。
【0024】
また、以上の実施形態におけるローラコンベヤ100は直線状に形成された形態について説明しているが、曲線部分を構成する曲線形状に形成された単位フレーム110Aを採用すれば、曲線部を有するローラコンベヤ100とすることや搬送物200を循環させるローラコンベヤ100を提供することももちろん可能である。
【0025】
また、本実施形態においては、ローラ体12の上を搬送物が通過しているか否かを検出する搬送物検出手段18として、ローラ体12のスリップローラ12Aに埋設した磁石等の被検出体18Aと保持フレーム16の側壁部16Bに配設したホール素子等からなる検出センサ18Bを採用した形態について説明したが、ローラ体12の上を通過する搬送物を直接検出する方式の搬送物検出手段を採用することももちろん可能である。このような搬送物検出手段18としては、一方の側壁部16から他方の側壁部に光照射手段を配設し、他方の側壁部に受光手段を配設することにより光透過センサとすることもできる。
【0026】
この形態を採用することにより、何らかの原因で搬送物200の重量が作用することなしにスリップローラ12Aとローラ軸12Zとが一体になって回転して搬送物200の通過状況を誤認識することを防ぐことができ、好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態におけるローラコンベヤの前方斜視図である。
【図2】本実施の形態におけるローラコンベヤを搬送物の搬送方向から臨んだ正面図である。
【図3】本実施形態におけるローラコンベヤの底面図である。
【図4】本実施形態におけるローラコンベヤの平面図である。
【図5】本実施形態におけるローラコンベヤを搬送物の搬送方向に直交する方向から臨んだ正面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ローラコンベヤ用ユニット
12 ローラ体
12A スリップローラ
12Z 回転軸
14 モータ
16 保持フレーム
16A プレート部
16B 側壁部
16C 上面カバー
18 搬送物検出手段
18A 被検出体
18B 検出センサ
20 ガイド部材
22 固定具
30 制御部
40 ゴムベルト
100 ローラコンベヤ
110 本体フレーム
110A 単位フレーム
200 搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送面を構成する単数または複数のローラ体と、
該ローラ体を個別に回転駆動させる駆動手段と、
前記ローラ体および前記駆動手段をそれぞれ保持する保持フレームと、
前記搬送面上に前記搬送物が載置されていることを検出する搬送物検出手段と、
前記搬送物検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段への動力供給を制御する制御部と、を有していることを特徴とするローラコンベヤ用ユニット。
【請求項2】
前記搬送物の搬送方向において隣接する前記駆動手段は、前記搬送物の搬送方向に対して直交する方向において、配設位置の中心位置どうしの離間距離が駆動手段の幅寸法以上となる配置にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1記載のローラコンベヤ用ユニット。
【請求項3】
前記搬送物の搬送方向において隣接する前記駆動手段は、前記搬送物の搬送方向に対して直交する方向において前記ローラ体の右端位置と左端位置とに交互に配設されていることを特徴とする請求項2記載のローラコンベヤ用ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のローラコンベヤ用ユニットを複数連続に配設してなることを特徴とするローラコンベヤ。
【請求項5】
前記ローラコンベヤ用ユニットにおける制御部の動作を統括制御する統括制御部をさらに有していることを特徴とする請求項4記載のローラコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184804(P2009−184804A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28654(P2008−28654)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】