ローラユニット及び定着装置
【課題】回転中に周期的に発生する音を低減したローラユニットを提供する。
【解決手段】中空の円筒状ローラとこの円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、この線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、次式を満たす線径r’を有する線材を使用した。δ=0.48・P’r3・β/EI=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【解決手段】中空の円筒状ローラとこの円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、この線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、次式を満たす線径r’を有する線材を使用した。δ=0.48・P’r3・β/EI=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のローラとで記録媒体などを挟持しながら搬送するローラユニット及びこのローラユニットを備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやワークステーションの出力装置として、粉体の現像剤(トナー)を用いて記録媒体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、例えば、画像情報を担持する光(例えばレーザ)を感光ドラムなどの像担持体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に現像ローラを用いてトナーを供給して現像像を形成し、転写ローラなどを使用してこの現像像を記録媒体に転写して転写像(現像像)を形成する。転写像が形成された記録媒体は定着装置に搬送され、定着装置では転写像が記録媒体に定着される。定着装置には、通常、ヒータを内蔵した定着ローラとこの定着ローラに圧接する加圧ローラとが備えられている。転写像を記録媒体に定着する際は、定着ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持して搬送しながら転写像を所定の定着温度で加熱すると同時に加圧する。この加熱と加圧で転写像が記録媒体に定着される。転写像が定着された記録媒体は排紙ローラなどに挟持されながら排出される。
【0003】
図16を参照して、従来の定着装置について説明する。
【0004】
図16は、従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【0005】
定着装置100は、トナー(像)102を記録媒体104に永久可視像化するためのものである。搬送部(図示せず)によって矢印A方向に搬送された記録媒体104は定着入口ガイド106に案内されて、定着ローラ120と加圧ローラ130の間のニップ部108に進入する。
【0006】
定着ローラ120はトナーを加熱して溶融するためのものである。定着ローラ120の外周面(表面)にはサーミスタ140が接触しており、このサーミスタ140は定着ローラ120の外周面の温度を測定するように構成されている。また、定着ローラ120にはハロゲンヒータ122などの熱源(発熱体)が内蔵されている。サーミスタ140で測定された外周面温度に基づいて制御器(図示せず)がハロゲンヒータ122を制御し、これにより定着ローラ120の外周面温度が所定の定着温度に保持される。
【0007】
定着ローラ120としては、例えば鉄製やアルミニウム製のパイプ状部材からなる芯金124の外周面に、離型性の良いフッ素樹脂層126を被覆したものが一般的に用いられる。定着ローラ120は駆動源(図示せず)によって矢印B方向に回転する。
【0008】
加圧ローラ130は、定着ローラ120に記録媒体104を所定圧力で押し付けるためのものである。加圧ローラ130としては、例えば金属製の芯金132の外周面に、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体層134を所定の厚み被覆したものが一般的に用いられる。加圧ローラ130を定着ローラ120に所定の押圧力で押し付けて矢印C方向に回転させながら、記録媒体104にトナー102を定着させるための荷重を付与する。
【0009】
記録媒体104がニップ部108に進入すると、記録媒体104上のトナー102が上記の定着温度で溶融すると共にこの溶融しているトナー102が上記の荷重で記録媒体104に押さえ付けられてこの記録媒体104に定着される。トナー102が定着された記録媒体104は分離爪142によって定着ローラ120及び加圧ローラ130から分離されて排紙ローラ(図示せず)に到達し、この排紙ローラによって機外に排出される。
【0010】
上記した定着ローラ120には、省エネルギの観点から素早い立ち上がりが求められている。このため、画像形成装置本体が完全に冷え切った状態からメインスイッチを入れて最初のコピーが排出されるまでの時間(立上り時間)が30秒間以下の画像形成装置がある。この立ち上がり時間は年々短くなっている。
【0011】
また、画像形成装置本体のメインスイッチが入っている(オンになっている)待機状態において定着装置を暖めておくための消費電力を極力少なくすることが求められている。このため、上記の待機状態では、定着装置のヒータを完全に切っておく必要に迫られている。このように待機状態で定着装置のヒータを完全に切っておく場合、ヒータをオンにするとほぼ同時に定着ローラを所定温度にするためには、定着ローラの肉厚を薄くしてその熱容量を小さくしておく必要がある。このために、熱伝導性の良いアルミニウム合金製の定着ローラが使用されることが多い。
【0012】
上記した立ち上がり時間を短くするために、最近ではアルミニウム製の定着ローラ120の肉厚は0.8mm程度まで薄くなっている。定着ローラ120の肉厚をこれ以上薄くした場合、定着ローラ120と加圧ローラ130との間(ニップ部108)に記録媒体104を挟持して現像像を熱と圧力で定着するときに、定着ローラ120が変形するおそれがある。この結果、十分な定着性能を確保できないおそれがある。
【0013】
上記のような問題を解決するために、定着ローラ120の内部にコイルばねを差し込んで定着ローラ120を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、定着ローラ120の内部にコイルばねを差し込むだけでは定着装置100の稼動中(定着ローラ120と加圧ローラ130が回転中)にコイルばねが定着ローラ120の長手方向に移動して搬送性が不良になったり定着性が不良になったりすることがある。そこで、定着ローラ120の内部に差し込まれたコイルばねがその長手方向に移動しないような各種の技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−116675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、コイルばねが定着ローラ120の内部でその長手方向に移動しないように構成されていても、定着装置100の稼動中には、加圧ローラ130が定着ローラ120を押圧するので、定着ローラ120が撓むと共にコイルばねも撓む。コイルばねの撓みは、定着ローラ120の外周面のうち加圧ローラ130に接触して押圧されている部分の裏面(内壁面)に接触しているコイルばねがその半径方向に押し潰されることによって発生する。コイルばねは撓むことにより楕円形に変形する。
【0015】
コイルばねのうちその半径方向に押し潰された部分では、コイルばねの直径が縮小する。コイルばねの直径がある程度縮小した後、コイルばねの反発力によってその直径が拡大する。コイルばねがその直径を拡大するときに、コイルばねが定着ローラ120の内壁部を弾くことにより音が発生する。この現象は、加圧ローラ130からの押圧力によって、定着ローラ120の内部のコイルばねの直径が縮小および拡張を繰り返すので周期的に発生する。この周期的な音は定着装置100の駆動時に発生して、ユーザには不快感となり、さらに不安を与える恐れがある。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み、回転中に周期的に発生する音を低減したローラユニット及び定着装置を提供することを第1の目的とする。
【0017】
ところで、画像形成時間を短縮化するために、定着装置100の高速化も図られている。このように定着装置100を高速化するに伴って加圧ローラ130が定着ローラ120を押し付ける力(加圧ローラ130の押圧力)が強まる。従って、加圧ローラ130の押圧力を強めた分だけ、定着ローラ120の内部に差し込まれたコイルばねの強度を増加させる必要がある。
【0018】
コイルばねの強度を増加させる場合、通常は、コイルばねの横断面積を広くする(コイルばねを太くする)。このようにコイルばねの横断面積を広くした場合、コイルばねの強度が向上して定着ローラ120を強化することとなるものの、定着ローラ120全体の熱容量が増加する。このため、定着ローラ120の熱応答性が低下するという問題が生じる。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑み、熱容量を増加させずに強度を高めたローラユニット及び定着装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明を成すに当たっては、定着ローラの内部のコイルばねを、定着ローラの内部に等間隔で挿入された円環部材(リング状部材)であると想定し、このモデルに対して定着ローラの内壁面を外側に押圧する位置における円環部材の撓み式を導出し、内部の円環部材の撓み量が、実際のコイルばねが周期的な音を発生させない撓み量になるように、若しくは撓み量が略零となるように、加圧ローラによる押圧力や、コイルばねの直径や線径を決定した。加圧ローラの押圧力に起因するコイルばねの撓み量を減少させることにより、定着装置の駆動時に生じる周期的な音の発生を低減できる。
【0021】
上記第1の目的を達成するための本発明のローラユニットは、中空の円筒状ローラと、該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
(1)前記線材は、
(2)前記線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、
(3)下記の式を満たすことを特徴とするローラユニット。
(4)δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【0022】
上記第2の目的を達成するための本発明のローラユニットは、中空の円筒状ローラと、該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
(5)前記線材は、その横断面の形状が非円形のものであることを特徴とするものである。
【0023】
ここで、
(6)前記線材は、その横断面の形状が矩形のものであってもよい。
【0024】
また、
(7)前記線材は、その横断面の形状が長方形であり、この長方形の短辺が前記円筒状ローラの内周面に接触しているものであってもよい。
【0025】
さらに、
(8)前記線材は、その横断面の形状が楕円形のものであってもよい。
【0026】
さらにまた、
(9)前記線材は、該線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分における接線が前記楕円形の短軸に平行になるように、前記円筒状ローラの前記中空部に配置されたものであってもよい。
【0027】
また、上記目的を達成するための本発明の定着装置は、
(10)上記したいずれかのローラユニットを定着ローラとして採用したものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1のローラユニットでは、押圧力によって螺旋状線材に撓みが生じても、この押圧力や線材の材料のヤング率などの値が上記の所定の式を満たすように決定しているので、周期的な音の発生を抑制できる。
【0029】
また、本発明の第2のローラユニットでは、線材の横断面を非円形にしたので、熱容量を増加させずに強度を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、画像形成装置に使用されるローラユニットに実現される。
【実施例1】
【0031】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0032】
図1を参照して本発明のローラユニットの一実施例が組み込まれた画像形成装置の概略構造を説明する。
【0033】
図1は、本発明のローラユニットの一実施例が組み込まれた定着装置を備えた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【0034】
複写機10の頂面には開閉自在な直方体状の原稿圧着板12が配置されている。原稿圧着板12の下には、原稿に記録された画像を読み取る画像読取装置14が配置されている。画像読取装置14の上面(上壁)は、原稿が載置される原稿台ガラス(図示せず)である。
【0035】
原稿圧着板12よりも手前側(正面側)には、複写枚数などが入力される操作パネル(図示せず)が配置されている。また複写機10の下部には、複数枚のカット紙が収容されるカセット16が複写機10に出し入れ自在に備えられている。また、複写機10の左側部分には空間が形成されており、排出された記録紙が積載される排紙トレイ18が形成されている。
【0036】
複写機10で画像を形成する手順等を説明する。
【0037】
原稿に記録された画像を記録媒体に形成するためには、原稿圧着板12を開き、原稿台ガラス(図示せず)の上面に、画像面が下になるように原稿を載置し、この原稿を原稿圧着板12で押さえて固定する。次に、所定の操作ボタン等を押すことにより、原稿に記録された画像は、画像読取装置14で読み取られる。読み取られた画像はデジタル信号に変換されてレーザスキャナ20に送信される。
【0038】
レーザスキャナ20に送信された信号はレーザ光に変換されて、このレーザ光は、高速で回転するスキャナミラー20a、折り返しミラー20bを経由して感光ドラム22に照射される。感光ドラム22は帯電器24によって一様に帯電されており、レーザ光が照射された感光ドラム22には静電潜像が形成される。この静電潜像は現像ローラ26から供給された現像剤で現像されて現像像が形成される。
【0039】
一方、カセット16からは記録紙などの記録媒体が給紙ローラ28によって矢印A方向(給紙方向)に給紙され、搬送ローラ30とレジストローラ32によって転写ローラ34に搬送される。転写ローラ34は感光ドラム22と共に記録媒体を挟持しながら、この記録媒体に感光ドラム22の現像像を転写する。現像像が転写された記録媒体は搬送ガイド36によって定着装置40に案内される。定着装置40には定着ローラ50(本発明にいうローラユニットの一例である)と加圧ローラ70が配置されており、これら2つのローラ50,70に記録媒体が挟持されながら搬送されて、現像像が記録媒体に定着される。このようにして現像像が定着された記録媒体は排紙ローラ80によって排出されて排紙トレイ18に積載される。
【0040】
上記した定着装置40の基本的な構成は、図16に示した従来の定着装置100の構成と同様である。定着装置40が定着装置100とは異なる点は定着ローラ50にある。定着ローラの構造を、図2から図4までを参照して説明する。
【0041】
図2は、定着ローラの内部を示す模式図である。図3は、コイルばねを示す斜視図である。図4は、記録紙を搬送している図2の定着ローラを示す断面図である。
【0042】
定着ローラ50は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管52(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管52は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管52の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0043】
定着ローラ管52の中空部(定着ローラ50の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね60(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね60の外径は、定着ローラ管52の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね60は、定着ローラ管52の中空部分を囲む内壁面52a(本発明にいう内周面の一例である)に接触してこの内壁面52aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね60は定着ローラ管52に固定されており、定着ローラ管52と共に回転する。
【0044】
上記した定着ローラ50を製造する際は、上記のように定着ローラ管52の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね60を準備し、このコイルばね60の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管52の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね60の捻りを解放する。これにより、コイルばね60の外周面が内壁面52aに接触してこの内壁面52aを外側に押す。このように定着ローラ管52がコイルばね60によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ50を押圧しても定着ローラ管52は変形しない。
【0045】
定着ローラ管52の長手方向一端部には、図2に示すように、駆動ギア54が取り付けられている。この駆動ギア54は、定着ローラ管52を回転させる駆動力を定着ローラ管52に伝達するためのものである。
【0046】
コイルばね60は、上述したように、定着ローラ管52の中空部で螺旋状に巻かれながら定着ローラ管52の長手方向に延びると共に定着ローラ管52の内周面に接触してこの内周面を外側に押圧している。コイルばね60は螺旋状に巻かれているが、その螺旋の中央部60aで巻き方向が互いに逆になっている。即ち、コイルばね60は、定着ローラ管52の長手方向中央部を境にして螺旋の巻き方向が互いに逆になっている。定着ローラ管52の中空部にコイルばね60を挿入する際には、コイルばねの中央部60aを定着ローラ管52の長手方向中央部に位置させる。
【0047】
また、コイルばね60は、コイルばね60のうち定着ローラ管52の回転方向上流側部分(例えば図3の60bで示される部分)が、この回転方向上流側部分に連続する回転方向下流側部分(例えば図3の60cで示される部分)よりも定着ローラ管52の長手方向中央部側に位置するように、螺旋状に巻かれている。従って、定着ローラ管52の回転に伴ってコイルばね60は矢印E方向に回転する。
【0048】
図4に示すように、記録媒体Pの幅方向中央部がコイルばね60の中央部60aに位置するようにして定着ローラ50と加圧ローラ70(図1参照)とで記録媒体Pを挟持しながら矢印F方向に搬送する場合は、ニップ圧の高い部分(例えば60b,60c)が記録媒体Pの表面を、定着ローラ50の長手方向中央部から長手方向端部に向けて移動することとなる。このため、記録媒体Pは、その幅方向中央部を境にして幅方向一端部は矢印G1方向に引っ張られ、幅方向他端部は矢印G2方向に引っ張られながら矢印F方向に搬送される。この結果、記録媒体Pは斜行しにくく、しかも、伸ばされるように搬送されるので皺が生じない。
【0049】
なお、上記の例では、一本の連続したコイルばね60を使用したが、定着ローラ管52よりも短い複数本のコイルばねを互いに接合してコイルばね60を形成してもよい。また、同一方向に螺旋状になったコイルばねでもよい。
【0050】
上記した定着ローラ50と加圧ローラ70(図1参照)とで記録媒体Pを挟持しながら矢印F方向に搬送するときにコイルばね60が撓む量(コイルばね60の撓み量)を表す式を、図5から図7までを参照して導出する。
【0051】
図5は、円環部材が撓んだ状態を示す模式図である。図6は、図5の円環部材の4分の1に作用する外力を示す模式図である。図7(a)は、コイルばねのうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図であり、(b)は、円環部材のうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図である。
【0052】
上述したように定着ローラ50では、その内部にコイルばね60を挿入されている。しかし、コイルばね60の形状は複雑であるので、その撓み量を導出することが困難である。そこで、ここでは、定着ローラ50の内部に挿入されているコイルばね60を、所定のピッチ間隔で配列されている複数の円環部材(リング状部材)とみなし、各ピッチ間における押圧力を円環部材が支持していると想定する。
【0053】
図5に示すように、円環部材90は加圧ローラ70から半径方向(矢印R方向)の内側に向かう押圧力Pを受ける。この押圧力Pによって円環部材90は圧縮されて、点線で示すように楕円に変形する。このとき、図6に示す円環部材90の1/4部分においてはその上端部90aに押圧力Pの2分の1を受ける。この場合おける半径方向の撓み量δを求める。ここで、図6の任意断面m−n間で作用するモーメントMを考えると以下の式が成り立つ。
M=M0−(Pr・COSρ)/2 (式1)
となる。ここで、rは円環部材90の半径である。
【0054】
ここで、カスチリアーノの定理を適用する。
【0055】
なお、カスチリアーノの定理とは、「ある弾性体の歪みエネルギを任意位置の荷重で偏微分するとその荷重の作用点における荷重方向の変位が得られる。また、歪みエネルギを任意位置の捻りモーメントで偏微分するとその捻りモーメントの作用点におけるモーメントの捻れ角が得られる。」という定理を言う。
【0056】
上記したカスチリアーノの定理から、モーメントM0に対する撓み角が0であるので、
M0=Pr/π (式2)
となる。よって、円環部材90の1/4部分に作用するモーメントMは
M=(−Pr/2)・(COSρ−2/π) (式3)
となる。したがって、円環部材90のひずみエネルギが、考えていた円環部材の1/4部分の4倍となることから円環の撓み量δは、
δ=(4/EI)∫(0,π/2)M・(δM/δP)rdρ
【0057】
=0.148Pr3/EI (式4)
となる。ここで、Eは円環部材90の材料のヤング率、Iは断面二次モーメントである。
I=πr’4/4 (式5)
である。式(5)において、r’は円環部材90の線径を表す。
【0058】
図7に示すように、定着ローラ50の内部に配置されたコイルばね60のある任意の1ピッチ間隔(このピッチ間隔はコイルばね60の巻きピッチ間隔である)においては、コイルばね60のうち定着ローラ50の内壁面に直接に接触している接触部分に集中荷重による押圧力が作用している。このとき定着ローラ50の内部に配置されたコイルばね60は螺旋状であるため半円形状梁の支持が定着ローラ50の内部で加圧ローラ60からの押圧力Pの方向に対してピッチ角度αをなして支持しているので、定着ローラ50の内壁面に直接に接触して支持している部分の受ける力P’は次式となる。
P’=0.5・P・COSα (式6)
となる。
【0059】
従って、式4から式6により円環部材90の撓み量δは以下のように示される。
δ=0.148・P’r3/EI
【0060】
=0.094・P・r3・COSα/E・r’4 (式7)
【0061】
この式7は、螺旋状のばね部材60を円環部材90にモデル近似してその撓み量を理論的に導出した式である。そのため、モデル化による誤差を含み、実際のコイルばね60の撓み量と比較して剛性がやや高く、実験検証により実際のコイルばね60の撓み量は式7による理論的な撓み量と比較して約10%程度大きい。そこで、式7の撓み量を実際の撓み量と一致させるためにある補正係数βを加味させた撓み量δを以下に示す。
δ=0.48・P’r3・β/EI (式8)
【0062】
この補正係数βの大きさは、コイルばね60と定着ローラ50の間に発生する摩擦力にも依存するので、コイルばね60や定着ローラ50の材質等により影響を受ける。従って、この補正係数βは定着ローラ50の材料的構成を決定した後に実験等により決定することで、より実際の撓み量に一致させることが可能となる。
【0063】
本構成の場合では実際のコイルばねの撓み量と一致させるためにはβ=0.9程度とすればよい。もちろん理論式と実験結果の撓み量が一致する場合はβ=1.0となり式7と一致する。
【0064】
ところで、定着ローラ50において、ある押圧力で周期的な音が発生なくなるときのコイルばね60の撓み量をδsとする。
【0065】
δsを求める方法を説明する。
【0066】
δsは実験的に求める。例えば線径rをパラメータとしてその数値を増減させた構成で実際に周期的な音が発生しなくなる、あるいは、ユーザの耳に触れない程度の周期音になるときの撓み量を実測することによって、δsの数値を求める。あるいは、理論的にはδs≒0であればコイルばねの周期音が発生しないので、経験的にδs≒0(mm)近くに設定することも可能である。
【0067】
すなわちコイルばね60の撓み量δがδs以下、即ち、
δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs 式(9)
であるならば、コイルばね60が定着ローラ50の内壁面を弾くことによる周期的な音が発生しなくなるための条件となる。本発明ではこの周期的な音が発生しない撓み量δsとなる条件内において加圧ローラ70の押圧力あるいはコイルばね60の半径rや線径r’、コイルばね60のピッチ角度α、コイルばね60の材料のヤング率Eといった定着ローラ50の設計構成パラメータを決定した。また、式10には現れないがコイルばね60の一巻きに該当する部分が受ける力はコイルばね60の巻きピッチ間隔(コイルばねの巻き数に依存する)にも依存するので、コイルばね60のピッチ間隔をも決定することができる。
[第1例]
【0068】
具体的な構成における計算例を示す。計算例ではβ=0.9について考える。
【0069】
式(9)にβ=0.9を代入する。
【0070】
δ=0.0846・P・r3・COSα/E・r’4<δs 式(10)
このとき式9において、δs=0.1mm、E=7,316.3kgf/mm2、α=15°、P=0.3kgf、r=15mmとすると、式(10)を満足するためのコイルばね60の線径r’は、
r’>(0.0846・P・r3・COSα/Eδs)1/4
=0.536mm 式(11)
とすればよい。即ち、コイルばね60の線径r’を0.536mmよりも大きくすればよい。
[第2例]
【0071】
同様に、式10を利用してコイルばねの半径rを決定する計算例を示す。このとき周期的な音が発生しない撓み量δs、押圧力P、コイルばね60の材料のヤング率E、コイルばね60のピッチ角度が分かっているとする(数値は第1例参照)。また、コイルばね径r’=0.5mmとする。
【0072】
このとき式10からコイルばね60の半径rを以下の条件にすればよい。
r<(E・δs・r4/0.0846・P・COSα)1/3
【0073】
=12.24mm
とすればよい。例えばコイルばね60の直径2rを24mmとすることで周期音の発生防止が実現できる。
[第3例]
【0074】
本例では、コイルばね60の半径rと線径r’、コイルばねのピッチ角度α、コイルばね60のヤング率E、周期的な音がしないための撓み量δsが既知の場合においての加圧ローラ70の押圧力Pを求める。
【0075】
前述した各例と同様に式10を利用して式を移項すると、
P<E・δs・r’4/0.094・r3・COSα
となり、この式を満足する押圧力Pとなるように加圧ローラ70の加圧力を決定すればよい。ただし、この押圧力Pはコイルばね60の円環モデルの1巻きに相当する部分が受ける力であり、定着ローラ50全体に作用する実際の押圧力は、この算出された押圧力Pから決定することになる。また、この押圧力Pはコイルばね60のピッチ間隔にも依存するので、式10により算出された押圧力Pの条件によりコイルばね60の巻きピッチを決定できることは言うまでもない。
[第4例]
【0076】
本例では、押圧力P、コイルばね60の半径rと線径r’、コイルばね60のヤング率E、周期的な音が発生しないための撓み量δsが既知の場合においてのコイルばね60のピッチ角度αを求める。
【0077】
前述した実施例と同様に式10を利用して移項すると、
α<COS−1(E・δs・r’4/0.0846・P・r3)
以上の式を満足する条件になるようにコイルばね60のピッチ角度αを形成すれば周期的な音の発生を抑制できる。
[第5例]
【0078】
本実施例では、押圧力P、コイルばねの半径rと線径r’、周期的な音が発生しないための撓み量δs、コイルばね60のピッチ角度αが既知のときのコイルばね60のヤング率Eを決定する。前述した実施例と同様に式10を利用して移項すると
E>0.0846・P・r3・COSα/δs・r’4
となる。すなわち、コイルばねのヤング率Eが上式の条件を満足する材料であるならば周期的な音の発生を抑制することができる。ただし、材料選定の際にはコイルばね60が定着ヒーターの近傍に配置されることからも耐熱性の補償された材料でなければならない。
【0079】
以上の実施例においては周期的な音が発生しない撓み量δsは実験的に確認することが好ましいが、周期的な音が十分発生しない程度の撓み量を経験的に決定することでδsを決定することも可能である。
【実施例2】
【0080】
上記した定着装置40が定着装置100と異なる点は定着ローラ150にある。定着ローラ150の構造を、図8から図10までを参照して説明する。
【0081】
図8は、定着ローラの内部を示す模式図である。図9は、コイルばねを示す斜視図である。図10は、定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。図11は、図9のB―B断面図である。
【0082】
定着ローラ150は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管152(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管152は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管152の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0083】
定着ローラ管152の中空部(定着ローラ150の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね160(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね160の外径は、定着ローラ管152の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね160は、定着ローラ管152の中空部分を囲む内壁面(本発明にいう内周面の一例である)152aに接触してこの内壁面152aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね160は定着ローラ管152に固定されており、定着ローラ管152と共に回転する。
【0084】
上記した定着ローラ150を製造する際は、上記のように定着ローラ管152の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね160を準備し、このコイルばね160の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管152の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね160の捻りを解放する。これにより、コイルばね160の外周面(正確には、後述するように短辺160bの部分)が内壁面152aに接触してこの内壁面152aを外側に押す。このように定着ローラ管152がコイルばね160によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ150を押圧しても定着ローラ管152は変形しない。
【0085】
コイルばね160の横断面(図9のB―B断面)は非円形である。この非円形の一例として、ここでは、矩形(正方形若しくは長方形)の横断面を挙げる。
【0086】
コイルばね160の横断面は、図11などに示すように、長方形である。コイルばね160のうち、この長方形の短辺160bの部分が定着ローラ管152の内壁面152aに接触している。なお、当然ながら、長方形の長辺160aは短辺160bよりも長い。
【0087】
上記した長辺160aの長さLaを3mmとし、短辺160bの長さLbを1mmとする。コイルばね160の断面の強度を表す断面二次モーメントI1は次のように計算される。
I1=Lb・La3/12=2.25(mm4)
【0088】
ここで、上記のコイルばね160と材質及びその巻き数が同一であるが、横断面が円形のコイルばねについて検討する。円形断面のコイルばねの半径をr=1mmとするとその断面二次モーメントI0は次式となる。
I0=π・r4/4=0.79(mm4)
【0089】
従って、横断面が長方形のコイルばね160と、横断面が円形のコイルばねとを比較した場合、前者のコイルばね160(横断面が長方形)の断面二次モーメントは、後者のコイルばね(横断面が円形)の断面二次モーメントの約2.8倍となる。
【0090】
また、上記2つのコイルばねを、横断面の面積について比較する。
【0091】
前者のコイルばね160(横断面が長方形)の横断面の面積A1は3.0mm2になる。一方、後者のコイルばね(横断面が円形)の横断面の面積A0は、π=3.14mm2になる。従って、両者の横断面の面積を比較した場合、横断面が長方形のコイルばね160の方が、横断面が円形のコイルばねよりも小さい。この結果、横断面が長方形のコイルばね160は、横断面が円形のコイルばねに比べて、強度のみならず熱容量においても有利である。
【0092】
図12から図15までを参照して、定着ローラの他の例を説明する。
【0093】
図12は、定着ローラの内部を示す模式図である。図13(a)は、コイルばねを示す斜視図であり、(b)は、コイルばねの端部を拡大して示す斜視図である。図14は、定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。図15は、図13(a)のC―C断面図である。
【0094】
定着ローラ250は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管252(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管252は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管252の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0095】
定着ローラ管252の中空部(定着ローラ250の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね260(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね260の外径は、定着ローラ管252の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね260は、定着ローラ管252の中空部分を囲む内壁面(本発明にいう内周面の一例である)252aに接触してこの内壁面252aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね260は定着ローラ管252に固定されており、定着ローラ管252と共に回転する。
【0096】
上記した定着ローラ250を製造する際は、上記のように定着ローラ管252の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね260を準備し、このコイルばね260の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管252の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね260の捻りを解放する。これにより、コイルばね260の外周面の一部が内壁面252aに接触してこの内壁面252aを外側に押す。このように定着ローラ管252がコイルばね260によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ250を押圧しても定着ローラ管252は変形しない。
【0097】
コイルばね260の横断面(図13のC―C断面)は非円形である。この非円形の一例として、ここでは、楕円形の横断面を挙げる。
【0098】
コイルばね260の横断面は、図15などに示すように、楕円形である。コイルばね260のうち、楕円の長軸aの長手方向一端部側の部分260aが定着ローラ管252の内壁面252aに接触している。また、コイルばね260の部分260aにおける接線が楕円の短軸bに平行になるように、コイルばね260が定着ローラ管252の中空部に配置されている。
【0099】
上記した長軸aの長さLaを4mmとし、短軸bの長さLbを1mmとする。コイルばね260の断面の強度を表す断面二次モーメントI2は次のように計算される。
I2=(π・(La/2)2・Lb/2)/4=1.57(mm4)
【0100】
ここで、上記のコイルばね260と材質及びその巻き数が同一であるが、横断面が円形のコイルばねについて検討する。円形断面のコイルばねの半径をr=1mmとするとその断面二次モーメントI0は次式となる。
I0=π・r4/4=0.79(mm4)
【0101】
従って、横断面が楕円形のコイルばね260と、横断面が円形のコイルばねとを比較した場合、前者のコイルばね260(横断面が楕円形)の断面二次モーメントは、後者のコイルばね(横断面が円形)の断面二次モーメントの約1.99倍となる。
【0102】
また、上記2つのコイルばねを、横断面の面積について比較する。
【0103】
前者のコイルばね260(横断面が楕円形)の横断面の面積A2はπ・(La/2)・(Lb/2)=π=3.14mm2である。一方、後者のコイルばね(横断面が円形)の横断面の面積A0も、π=3.14mm2になる。従って、両者の横断面の面積は同一になる。この結果、横断面が楕円形のコイルばね260は、横断面が円形のコイルばねに比べて、熱容量は同一であるが強度において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のローラユニットの一実施形態が組み込まれた定着装置を備えた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【図2】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図3】コイルばねを示す斜視図である。
【図4】記録紙を搬送している図2の定着ローラを示す断面図である。
【図5】円環部材が撓んだ状態を示す模式図である。
【図6】図5の円環部材の4分の1に作用する外力を示す模式図である。
【図7】(a)は、コイルばねのうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図であり、(b)は、円環部材のうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図である。
【図8】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図9】コイルばねを示す斜視図である。
【図10】定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。
【図11】図9のB―B断面図である。
【図12】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図13】(a)は、コイルばねを示す斜視図であり、(b)は、コイルばねの端部を拡大して示す斜視図である。
【図14】定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。
【図15】図13(a)のC―C断面図である。
【図16】従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0105】
10 複写機
50,150 定着ローラ
5252 定着ローラ管
60,160 コイルばね
70 加圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のローラとで記録媒体などを挟持しながら搬送するローラユニット及びこのローラユニットを備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやワークステーションの出力装置として、粉体の現像剤(トナー)を用いて記録媒体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、例えば、画像情報を担持する光(例えばレーザ)を感光ドラムなどの像担持体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に現像ローラを用いてトナーを供給して現像像を形成し、転写ローラなどを使用してこの現像像を記録媒体に転写して転写像(現像像)を形成する。転写像が形成された記録媒体は定着装置に搬送され、定着装置では転写像が記録媒体に定着される。定着装置には、通常、ヒータを内蔵した定着ローラとこの定着ローラに圧接する加圧ローラとが備えられている。転写像を記録媒体に定着する際は、定着ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持して搬送しながら転写像を所定の定着温度で加熱すると同時に加圧する。この加熱と加圧で転写像が記録媒体に定着される。転写像が定着された記録媒体は排紙ローラなどに挟持されながら排出される。
【0003】
図16を参照して、従来の定着装置について説明する。
【0004】
図16は、従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【0005】
定着装置100は、トナー(像)102を記録媒体104に永久可視像化するためのものである。搬送部(図示せず)によって矢印A方向に搬送された記録媒体104は定着入口ガイド106に案内されて、定着ローラ120と加圧ローラ130の間のニップ部108に進入する。
【0006】
定着ローラ120はトナーを加熱して溶融するためのものである。定着ローラ120の外周面(表面)にはサーミスタ140が接触しており、このサーミスタ140は定着ローラ120の外周面の温度を測定するように構成されている。また、定着ローラ120にはハロゲンヒータ122などの熱源(発熱体)が内蔵されている。サーミスタ140で測定された外周面温度に基づいて制御器(図示せず)がハロゲンヒータ122を制御し、これにより定着ローラ120の外周面温度が所定の定着温度に保持される。
【0007】
定着ローラ120としては、例えば鉄製やアルミニウム製のパイプ状部材からなる芯金124の外周面に、離型性の良いフッ素樹脂層126を被覆したものが一般的に用いられる。定着ローラ120は駆動源(図示せず)によって矢印B方向に回転する。
【0008】
加圧ローラ130は、定着ローラ120に記録媒体104を所定圧力で押し付けるためのものである。加圧ローラ130としては、例えば金属製の芯金132の外周面に、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体層134を所定の厚み被覆したものが一般的に用いられる。加圧ローラ130を定着ローラ120に所定の押圧力で押し付けて矢印C方向に回転させながら、記録媒体104にトナー102を定着させるための荷重を付与する。
【0009】
記録媒体104がニップ部108に進入すると、記録媒体104上のトナー102が上記の定着温度で溶融すると共にこの溶融しているトナー102が上記の荷重で記録媒体104に押さえ付けられてこの記録媒体104に定着される。トナー102が定着された記録媒体104は分離爪142によって定着ローラ120及び加圧ローラ130から分離されて排紙ローラ(図示せず)に到達し、この排紙ローラによって機外に排出される。
【0010】
上記した定着ローラ120には、省エネルギの観点から素早い立ち上がりが求められている。このため、画像形成装置本体が完全に冷え切った状態からメインスイッチを入れて最初のコピーが排出されるまでの時間(立上り時間)が30秒間以下の画像形成装置がある。この立ち上がり時間は年々短くなっている。
【0011】
また、画像形成装置本体のメインスイッチが入っている(オンになっている)待機状態において定着装置を暖めておくための消費電力を極力少なくすることが求められている。このため、上記の待機状態では、定着装置のヒータを完全に切っておく必要に迫られている。このように待機状態で定着装置のヒータを完全に切っておく場合、ヒータをオンにするとほぼ同時に定着ローラを所定温度にするためには、定着ローラの肉厚を薄くしてその熱容量を小さくしておく必要がある。このために、熱伝導性の良いアルミニウム合金製の定着ローラが使用されることが多い。
【0012】
上記した立ち上がり時間を短くするために、最近ではアルミニウム製の定着ローラ120の肉厚は0.8mm程度まで薄くなっている。定着ローラ120の肉厚をこれ以上薄くした場合、定着ローラ120と加圧ローラ130との間(ニップ部108)に記録媒体104を挟持して現像像を熱と圧力で定着するときに、定着ローラ120が変形するおそれがある。この結果、十分な定着性能を確保できないおそれがある。
【0013】
上記のような問題を解決するために、定着ローラ120の内部にコイルばねを差し込んで定着ローラ120を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、定着ローラ120の内部にコイルばねを差し込むだけでは定着装置100の稼動中(定着ローラ120と加圧ローラ130が回転中)にコイルばねが定着ローラ120の長手方向に移動して搬送性が不良になったり定着性が不良になったりすることがある。そこで、定着ローラ120の内部に差し込まれたコイルばねがその長手方向に移動しないような各種の技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−116675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、コイルばねが定着ローラ120の内部でその長手方向に移動しないように構成されていても、定着装置100の稼動中には、加圧ローラ130が定着ローラ120を押圧するので、定着ローラ120が撓むと共にコイルばねも撓む。コイルばねの撓みは、定着ローラ120の外周面のうち加圧ローラ130に接触して押圧されている部分の裏面(内壁面)に接触しているコイルばねがその半径方向に押し潰されることによって発生する。コイルばねは撓むことにより楕円形に変形する。
【0015】
コイルばねのうちその半径方向に押し潰された部分では、コイルばねの直径が縮小する。コイルばねの直径がある程度縮小した後、コイルばねの反発力によってその直径が拡大する。コイルばねがその直径を拡大するときに、コイルばねが定着ローラ120の内壁部を弾くことにより音が発生する。この現象は、加圧ローラ130からの押圧力によって、定着ローラ120の内部のコイルばねの直径が縮小および拡張を繰り返すので周期的に発生する。この周期的な音は定着装置100の駆動時に発生して、ユーザには不快感となり、さらに不安を与える恐れがある。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み、回転中に周期的に発生する音を低減したローラユニット及び定着装置を提供することを第1の目的とする。
【0017】
ところで、画像形成時間を短縮化するために、定着装置100の高速化も図られている。このように定着装置100を高速化するに伴って加圧ローラ130が定着ローラ120を押し付ける力(加圧ローラ130の押圧力)が強まる。従って、加圧ローラ130の押圧力を強めた分だけ、定着ローラ120の内部に差し込まれたコイルばねの強度を増加させる必要がある。
【0018】
コイルばねの強度を増加させる場合、通常は、コイルばねの横断面積を広くする(コイルばねを太くする)。このようにコイルばねの横断面積を広くした場合、コイルばねの強度が向上して定着ローラ120を強化することとなるものの、定着ローラ120全体の熱容量が増加する。このため、定着ローラ120の熱応答性が低下するという問題が生じる。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑み、熱容量を増加させずに強度を高めたローラユニット及び定着装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明を成すに当たっては、定着ローラの内部のコイルばねを、定着ローラの内部に等間隔で挿入された円環部材(リング状部材)であると想定し、このモデルに対して定着ローラの内壁面を外側に押圧する位置における円環部材の撓み式を導出し、内部の円環部材の撓み量が、実際のコイルばねが周期的な音を発生させない撓み量になるように、若しくは撓み量が略零となるように、加圧ローラによる押圧力や、コイルばねの直径や線径を決定した。加圧ローラの押圧力に起因するコイルばねの撓み量を減少させることにより、定着装置の駆動時に生じる周期的な音の発生を低減できる。
【0021】
上記第1の目的を達成するための本発明のローラユニットは、中空の円筒状ローラと、該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
(1)前記線材は、
(2)前記線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、
(3)下記の式を満たすことを特徴とするローラユニット。
(4)δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【0022】
上記第2の目的を達成するための本発明のローラユニットは、中空の円筒状ローラと、該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
(5)前記線材は、その横断面の形状が非円形のものであることを特徴とするものである。
【0023】
ここで、
(6)前記線材は、その横断面の形状が矩形のものであってもよい。
【0024】
また、
(7)前記線材は、その横断面の形状が長方形であり、この長方形の短辺が前記円筒状ローラの内周面に接触しているものであってもよい。
【0025】
さらに、
(8)前記線材は、その横断面の形状が楕円形のものであってもよい。
【0026】
さらにまた、
(9)前記線材は、該線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分における接線が前記楕円形の短軸に平行になるように、前記円筒状ローラの前記中空部に配置されたものであってもよい。
【0027】
また、上記目的を達成するための本発明の定着装置は、
(10)上記したいずれかのローラユニットを定着ローラとして採用したものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の第1のローラユニットでは、押圧力によって螺旋状線材に撓みが生じても、この押圧力や線材の材料のヤング率などの値が上記の所定の式を満たすように決定しているので、周期的な音の発生を抑制できる。
【0029】
また、本発明の第2のローラユニットでは、線材の横断面を非円形にしたので、熱容量を増加させずに強度を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、画像形成装置に使用されるローラユニットに実現される。
【実施例1】
【0031】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0032】
図1を参照して本発明のローラユニットの一実施例が組み込まれた画像形成装置の概略構造を説明する。
【0033】
図1は、本発明のローラユニットの一実施例が組み込まれた定着装置を備えた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【0034】
複写機10の頂面には開閉自在な直方体状の原稿圧着板12が配置されている。原稿圧着板12の下には、原稿に記録された画像を読み取る画像読取装置14が配置されている。画像読取装置14の上面(上壁)は、原稿が載置される原稿台ガラス(図示せず)である。
【0035】
原稿圧着板12よりも手前側(正面側)には、複写枚数などが入力される操作パネル(図示せず)が配置されている。また複写機10の下部には、複数枚のカット紙が収容されるカセット16が複写機10に出し入れ自在に備えられている。また、複写機10の左側部分には空間が形成されており、排出された記録紙が積載される排紙トレイ18が形成されている。
【0036】
複写機10で画像を形成する手順等を説明する。
【0037】
原稿に記録された画像を記録媒体に形成するためには、原稿圧着板12を開き、原稿台ガラス(図示せず)の上面に、画像面が下になるように原稿を載置し、この原稿を原稿圧着板12で押さえて固定する。次に、所定の操作ボタン等を押すことにより、原稿に記録された画像は、画像読取装置14で読み取られる。読み取られた画像はデジタル信号に変換されてレーザスキャナ20に送信される。
【0038】
レーザスキャナ20に送信された信号はレーザ光に変換されて、このレーザ光は、高速で回転するスキャナミラー20a、折り返しミラー20bを経由して感光ドラム22に照射される。感光ドラム22は帯電器24によって一様に帯電されており、レーザ光が照射された感光ドラム22には静電潜像が形成される。この静電潜像は現像ローラ26から供給された現像剤で現像されて現像像が形成される。
【0039】
一方、カセット16からは記録紙などの記録媒体が給紙ローラ28によって矢印A方向(給紙方向)に給紙され、搬送ローラ30とレジストローラ32によって転写ローラ34に搬送される。転写ローラ34は感光ドラム22と共に記録媒体を挟持しながら、この記録媒体に感光ドラム22の現像像を転写する。現像像が転写された記録媒体は搬送ガイド36によって定着装置40に案内される。定着装置40には定着ローラ50(本発明にいうローラユニットの一例である)と加圧ローラ70が配置されており、これら2つのローラ50,70に記録媒体が挟持されながら搬送されて、現像像が記録媒体に定着される。このようにして現像像が定着された記録媒体は排紙ローラ80によって排出されて排紙トレイ18に積載される。
【0040】
上記した定着装置40の基本的な構成は、図16に示した従来の定着装置100の構成と同様である。定着装置40が定着装置100とは異なる点は定着ローラ50にある。定着ローラの構造を、図2から図4までを参照して説明する。
【0041】
図2は、定着ローラの内部を示す模式図である。図3は、コイルばねを示す斜視図である。図4は、記録紙を搬送している図2の定着ローラを示す断面図である。
【0042】
定着ローラ50は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管52(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管52は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管52の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0043】
定着ローラ管52の中空部(定着ローラ50の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね60(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね60の外径は、定着ローラ管52の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね60は、定着ローラ管52の中空部分を囲む内壁面52a(本発明にいう内周面の一例である)に接触してこの内壁面52aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね60は定着ローラ管52に固定されており、定着ローラ管52と共に回転する。
【0044】
上記した定着ローラ50を製造する際は、上記のように定着ローラ管52の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね60を準備し、このコイルばね60の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管52の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね60の捻りを解放する。これにより、コイルばね60の外周面が内壁面52aに接触してこの内壁面52aを外側に押す。このように定着ローラ管52がコイルばね60によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ50を押圧しても定着ローラ管52は変形しない。
【0045】
定着ローラ管52の長手方向一端部には、図2に示すように、駆動ギア54が取り付けられている。この駆動ギア54は、定着ローラ管52を回転させる駆動力を定着ローラ管52に伝達するためのものである。
【0046】
コイルばね60は、上述したように、定着ローラ管52の中空部で螺旋状に巻かれながら定着ローラ管52の長手方向に延びると共に定着ローラ管52の内周面に接触してこの内周面を外側に押圧している。コイルばね60は螺旋状に巻かれているが、その螺旋の中央部60aで巻き方向が互いに逆になっている。即ち、コイルばね60は、定着ローラ管52の長手方向中央部を境にして螺旋の巻き方向が互いに逆になっている。定着ローラ管52の中空部にコイルばね60を挿入する際には、コイルばねの中央部60aを定着ローラ管52の長手方向中央部に位置させる。
【0047】
また、コイルばね60は、コイルばね60のうち定着ローラ管52の回転方向上流側部分(例えば図3の60bで示される部分)が、この回転方向上流側部分に連続する回転方向下流側部分(例えば図3の60cで示される部分)よりも定着ローラ管52の長手方向中央部側に位置するように、螺旋状に巻かれている。従って、定着ローラ管52の回転に伴ってコイルばね60は矢印E方向に回転する。
【0048】
図4に示すように、記録媒体Pの幅方向中央部がコイルばね60の中央部60aに位置するようにして定着ローラ50と加圧ローラ70(図1参照)とで記録媒体Pを挟持しながら矢印F方向に搬送する場合は、ニップ圧の高い部分(例えば60b,60c)が記録媒体Pの表面を、定着ローラ50の長手方向中央部から長手方向端部に向けて移動することとなる。このため、記録媒体Pは、その幅方向中央部を境にして幅方向一端部は矢印G1方向に引っ張られ、幅方向他端部は矢印G2方向に引っ張られながら矢印F方向に搬送される。この結果、記録媒体Pは斜行しにくく、しかも、伸ばされるように搬送されるので皺が生じない。
【0049】
なお、上記の例では、一本の連続したコイルばね60を使用したが、定着ローラ管52よりも短い複数本のコイルばねを互いに接合してコイルばね60を形成してもよい。また、同一方向に螺旋状になったコイルばねでもよい。
【0050】
上記した定着ローラ50と加圧ローラ70(図1参照)とで記録媒体Pを挟持しながら矢印F方向に搬送するときにコイルばね60が撓む量(コイルばね60の撓み量)を表す式を、図5から図7までを参照して導出する。
【0051】
図5は、円環部材が撓んだ状態を示す模式図である。図6は、図5の円環部材の4分の1に作用する外力を示す模式図である。図7(a)は、コイルばねのうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図であり、(b)は、円環部材のうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図である。
【0052】
上述したように定着ローラ50では、その内部にコイルばね60を挿入されている。しかし、コイルばね60の形状は複雑であるので、その撓み量を導出することが困難である。そこで、ここでは、定着ローラ50の内部に挿入されているコイルばね60を、所定のピッチ間隔で配列されている複数の円環部材(リング状部材)とみなし、各ピッチ間における押圧力を円環部材が支持していると想定する。
【0053】
図5に示すように、円環部材90は加圧ローラ70から半径方向(矢印R方向)の内側に向かう押圧力Pを受ける。この押圧力Pによって円環部材90は圧縮されて、点線で示すように楕円に変形する。このとき、図6に示す円環部材90の1/4部分においてはその上端部90aに押圧力Pの2分の1を受ける。この場合おける半径方向の撓み量δを求める。ここで、図6の任意断面m−n間で作用するモーメントMを考えると以下の式が成り立つ。
M=M0−(Pr・COSρ)/2 (式1)
となる。ここで、rは円環部材90の半径である。
【0054】
ここで、カスチリアーノの定理を適用する。
【0055】
なお、カスチリアーノの定理とは、「ある弾性体の歪みエネルギを任意位置の荷重で偏微分するとその荷重の作用点における荷重方向の変位が得られる。また、歪みエネルギを任意位置の捻りモーメントで偏微分するとその捻りモーメントの作用点におけるモーメントの捻れ角が得られる。」という定理を言う。
【0056】
上記したカスチリアーノの定理から、モーメントM0に対する撓み角が0であるので、
M0=Pr/π (式2)
となる。よって、円環部材90の1/4部分に作用するモーメントMは
M=(−Pr/2)・(COSρ−2/π) (式3)
となる。したがって、円環部材90のひずみエネルギが、考えていた円環部材の1/4部分の4倍となることから円環の撓み量δは、
δ=(4/EI)∫(0,π/2)M・(δM/δP)rdρ
【0057】
=0.148Pr3/EI (式4)
となる。ここで、Eは円環部材90の材料のヤング率、Iは断面二次モーメントである。
I=πr’4/4 (式5)
である。式(5)において、r’は円環部材90の線径を表す。
【0058】
図7に示すように、定着ローラ50の内部に配置されたコイルばね60のある任意の1ピッチ間隔(このピッチ間隔はコイルばね60の巻きピッチ間隔である)においては、コイルばね60のうち定着ローラ50の内壁面に直接に接触している接触部分に集中荷重による押圧力が作用している。このとき定着ローラ50の内部に配置されたコイルばね60は螺旋状であるため半円形状梁の支持が定着ローラ50の内部で加圧ローラ60からの押圧力Pの方向に対してピッチ角度αをなして支持しているので、定着ローラ50の内壁面に直接に接触して支持している部分の受ける力P’は次式となる。
P’=0.5・P・COSα (式6)
となる。
【0059】
従って、式4から式6により円環部材90の撓み量δは以下のように示される。
δ=0.148・P’r3/EI
【0060】
=0.094・P・r3・COSα/E・r’4 (式7)
【0061】
この式7は、螺旋状のばね部材60を円環部材90にモデル近似してその撓み量を理論的に導出した式である。そのため、モデル化による誤差を含み、実際のコイルばね60の撓み量と比較して剛性がやや高く、実験検証により実際のコイルばね60の撓み量は式7による理論的な撓み量と比較して約10%程度大きい。そこで、式7の撓み量を実際の撓み量と一致させるためにある補正係数βを加味させた撓み量δを以下に示す。
δ=0.48・P’r3・β/EI (式8)
【0062】
この補正係数βの大きさは、コイルばね60と定着ローラ50の間に発生する摩擦力にも依存するので、コイルばね60や定着ローラ50の材質等により影響を受ける。従って、この補正係数βは定着ローラ50の材料的構成を決定した後に実験等により決定することで、より実際の撓み量に一致させることが可能となる。
【0063】
本構成の場合では実際のコイルばねの撓み量と一致させるためにはβ=0.9程度とすればよい。もちろん理論式と実験結果の撓み量が一致する場合はβ=1.0となり式7と一致する。
【0064】
ところで、定着ローラ50において、ある押圧力で周期的な音が発生なくなるときのコイルばね60の撓み量をδsとする。
【0065】
δsを求める方法を説明する。
【0066】
δsは実験的に求める。例えば線径rをパラメータとしてその数値を増減させた構成で実際に周期的な音が発生しなくなる、あるいは、ユーザの耳に触れない程度の周期音になるときの撓み量を実測することによって、δsの数値を求める。あるいは、理論的にはδs≒0であればコイルばねの周期音が発生しないので、経験的にδs≒0(mm)近くに設定することも可能である。
【0067】
すなわちコイルばね60の撓み量δがδs以下、即ち、
δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs 式(9)
であるならば、コイルばね60が定着ローラ50の内壁面を弾くことによる周期的な音が発生しなくなるための条件となる。本発明ではこの周期的な音が発生しない撓み量δsとなる条件内において加圧ローラ70の押圧力あるいはコイルばね60の半径rや線径r’、コイルばね60のピッチ角度α、コイルばね60の材料のヤング率Eといった定着ローラ50の設計構成パラメータを決定した。また、式10には現れないがコイルばね60の一巻きに該当する部分が受ける力はコイルばね60の巻きピッチ間隔(コイルばねの巻き数に依存する)にも依存するので、コイルばね60のピッチ間隔をも決定することができる。
[第1例]
【0068】
具体的な構成における計算例を示す。計算例ではβ=0.9について考える。
【0069】
式(9)にβ=0.9を代入する。
【0070】
δ=0.0846・P・r3・COSα/E・r’4<δs 式(10)
このとき式9において、δs=0.1mm、E=7,316.3kgf/mm2、α=15°、P=0.3kgf、r=15mmとすると、式(10)を満足するためのコイルばね60の線径r’は、
r’>(0.0846・P・r3・COSα/Eδs)1/4
=0.536mm 式(11)
とすればよい。即ち、コイルばね60の線径r’を0.536mmよりも大きくすればよい。
[第2例]
【0071】
同様に、式10を利用してコイルばねの半径rを決定する計算例を示す。このとき周期的な音が発生しない撓み量δs、押圧力P、コイルばね60の材料のヤング率E、コイルばね60のピッチ角度が分かっているとする(数値は第1例参照)。また、コイルばね径r’=0.5mmとする。
【0072】
このとき式10からコイルばね60の半径rを以下の条件にすればよい。
r<(E・δs・r4/0.0846・P・COSα)1/3
【0073】
=12.24mm
とすればよい。例えばコイルばね60の直径2rを24mmとすることで周期音の発生防止が実現できる。
[第3例]
【0074】
本例では、コイルばね60の半径rと線径r’、コイルばねのピッチ角度α、コイルばね60のヤング率E、周期的な音がしないための撓み量δsが既知の場合においての加圧ローラ70の押圧力Pを求める。
【0075】
前述した各例と同様に式10を利用して式を移項すると、
P<E・δs・r’4/0.094・r3・COSα
となり、この式を満足する押圧力Pとなるように加圧ローラ70の加圧力を決定すればよい。ただし、この押圧力Pはコイルばね60の円環モデルの1巻きに相当する部分が受ける力であり、定着ローラ50全体に作用する実際の押圧力は、この算出された押圧力Pから決定することになる。また、この押圧力Pはコイルばね60のピッチ間隔にも依存するので、式10により算出された押圧力Pの条件によりコイルばね60の巻きピッチを決定できることは言うまでもない。
[第4例]
【0076】
本例では、押圧力P、コイルばね60の半径rと線径r’、コイルばね60のヤング率E、周期的な音が発生しないための撓み量δsが既知の場合においてのコイルばね60のピッチ角度αを求める。
【0077】
前述した実施例と同様に式10を利用して移項すると、
α<COS−1(E・δs・r’4/0.0846・P・r3)
以上の式を満足する条件になるようにコイルばね60のピッチ角度αを形成すれば周期的な音の発生を抑制できる。
[第5例]
【0078】
本実施例では、押圧力P、コイルばねの半径rと線径r’、周期的な音が発生しないための撓み量δs、コイルばね60のピッチ角度αが既知のときのコイルばね60のヤング率Eを決定する。前述した実施例と同様に式10を利用して移項すると
E>0.0846・P・r3・COSα/δs・r’4
となる。すなわち、コイルばねのヤング率Eが上式の条件を満足する材料であるならば周期的な音の発生を抑制することができる。ただし、材料選定の際にはコイルばね60が定着ヒーターの近傍に配置されることからも耐熱性の補償された材料でなければならない。
【0079】
以上の実施例においては周期的な音が発生しない撓み量δsは実験的に確認することが好ましいが、周期的な音が十分発生しない程度の撓み量を経験的に決定することでδsを決定することも可能である。
【実施例2】
【0080】
上記した定着装置40が定着装置100と異なる点は定着ローラ150にある。定着ローラ150の構造を、図8から図10までを参照して説明する。
【0081】
図8は、定着ローラの内部を示す模式図である。図9は、コイルばねを示す斜視図である。図10は、定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。図11は、図9のB―B断面図である。
【0082】
定着ローラ150は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管152(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管152は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管152の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0083】
定着ローラ管152の中空部(定着ローラ150の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね160(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね160の外径は、定着ローラ管152の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね160は、定着ローラ管152の中空部分を囲む内壁面(本発明にいう内周面の一例である)152aに接触してこの内壁面152aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね160は定着ローラ管152に固定されており、定着ローラ管152と共に回転する。
【0084】
上記した定着ローラ150を製造する際は、上記のように定着ローラ管152の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね160を準備し、このコイルばね160の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管152の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね160の捻りを解放する。これにより、コイルばね160の外周面(正確には、後述するように短辺160bの部分)が内壁面152aに接触してこの内壁面152aを外側に押す。このように定着ローラ管152がコイルばね160によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ150を押圧しても定着ローラ管152は変形しない。
【0085】
コイルばね160の横断面(図9のB―B断面)は非円形である。この非円形の一例として、ここでは、矩形(正方形若しくは長方形)の横断面を挙げる。
【0086】
コイルばね160の横断面は、図11などに示すように、長方形である。コイルばね160のうち、この長方形の短辺160bの部分が定着ローラ管152の内壁面152aに接触している。なお、当然ながら、長方形の長辺160aは短辺160bよりも長い。
【0087】
上記した長辺160aの長さLaを3mmとし、短辺160bの長さLbを1mmとする。コイルばね160の断面の強度を表す断面二次モーメントI1は次のように計算される。
I1=Lb・La3/12=2.25(mm4)
【0088】
ここで、上記のコイルばね160と材質及びその巻き数が同一であるが、横断面が円形のコイルばねについて検討する。円形断面のコイルばねの半径をr=1mmとするとその断面二次モーメントI0は次式となる。
I0=π・r4/4=0.79(mm4)
【0089】
従って、横断面が長方形のコイルばね160と、横断面が円形のコイルばねとを比較した場合、前者のコイルばね160(横断面が長方形)の断面二次モーメントは、後者のコイルばね(横断面が円形)の断面二次モーメントの約2.8倍となる。
【0090】
また、上記2つのコイルばねを、横断面の面積について比較する。
【0091】
前者のコイルばね160(横断面が長方形)の横断面の面積A1は3.0mm2になる。一方、後者のコイルばね(横断面が円形)の横断面の面積A0は、π=3.14mm2になる。従って、両者の横断面の面積を比較した場合、横断面が長方形のコイルばね160の方が、横断面が円形のコイルばねよりも小さい。この結果、横断面が長方形のコイルばね160は、横断面が円形のコイルばねに比べて、強度のみならず熱容量においても有利である。
【0092】
図12から図15までを参照して、定着ローラの他の例を説明する。
【0093】
図12は、定着ローラの内部を示す模式図である。図13(a)は、コイルばねを示す斜視図であり、(b)は、コイルばねの端部を拡大して示す斜視図である。図14は、定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。図15は、図13(a)のC―C断面図である。
【0094】
定着ローラ250は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の定着ローラ管252(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。定着ローラ管252は、その肉厚が全域に渡って0.28〜0.32mmになるように切削加工されている。定着ローラ管252の外周面には離型層(図示せず)が形成されている。この離型層は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0095】
定着ローラ管252の中空部(定着ローラ250の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね260(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね260の外径は、定着ローラ管252の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね260は、定着ローラ管252の中空部分を囲む内壁面(本発明にいう内周面の一例である)252aに接触してこの内壁面252aを外側に押している(押圧している)。また、コイルばね260は定着ローラ管252に固定されており、定着ローラ管252と共に回転する。
【0096】
上記した定着ローラ250を製造する際は、上記のように定着ローラ管252の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい外径をもつコイルばね260を準備し、このコイルばね260の長手方向両端部を縮径方向(巻きがきつくなる方向、外径が小さくなる方向)に捻った状態で、定着ローラ管252の中空部分に挿入する。挿入し終わった後、コイルばね260の捻りを解放する。これにより、コイルばね260の外周面の一部が内壁面252aに接触してこの内壁面252aを外側に押す。このように定着ローラ管252がコイルばね260によって補強されるので、加圧ローラ70(図1参照)が定着ローラ250を押圧しても定着ローラ管252は変形しない。
【0097】
コイルばね260の横断面(図13のC―C断面)は非円形である。この非円形の一例として、ここでは、楕円形の横断面を挙げる。
【0098】
コイルばね260の横断面は、図15などに示すように、楕円形である。コイルばね260のうち、楕円の長軸aの長手方向一端部側の部分260aが定着ローラ管252の内壁面252aに接触している。また、コイルばね260の部分260aにおける接線が楕円の短軸bに平行になるように、コイルばね260が定着ローラ管252の中空部に配置されている。
【0099】
上記した長軸aの長さLaを4mmとし、短軸bの長さLbを1mmとする。コイルばね260の断面の強度を表す断面二次モーメントI2は次のように計算される。
I2=(π・(La/2)2・Lb/2)/4=1.57(mm4)
【0100】
ここで、上記のコイルばね260と材質及びその巻き数が同一であるが、横断面が円形のコイルばねについて検討する。円形断面のコイルばねの半径をr=1mmとするとその断面二次モーメントI0は次式となる。
I0=π・r4/4=0.79(mm4)
【0101】
従って、横断面が楕円形のコイルばね260と、横断面が円形のコイルばねとを比較した場合、前者のコイルばね260(横断面が楕円形)の断面二次モーメントは、後者のコイルばね(横断面が円形)の断面二次モーメントの約1.99倍となる。
【0102】
また、上記2つのコイルばねを、横断面の面積について比較する。
【0103】
前者のコイルばね260(横断面が楕円形)の横断面の面積A2はπ・(La/2)・(Lb/2)=π=3.14mm2である。一方、後者のコイルばね(横断面が円形)の横断面の面積A0も、π=3.14mm2になる。従って、両者の横断面の面積は同一になる。この結果、横断面が楕円形のコイルばね260は、横断面が円形のコイルばねに比べて、熱容量は同一であるが強度において有利である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のローラユニットの一実施形態が組み込まれた定着装置を備えた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【図2】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図3】コイルばねを示す斜視図である。
【図4】記録紙を搬送している図2の定着ローラを示す断面図である。
【図5】円環部材が撓んだ状態を示す模式図である。
【図6】図5の円環部材の4分の1に作用する外力を示す模式図である。
【図7】(a)は、コイルばねのうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図であり、(b)は、円環部材のうち定着ローラの内壁面に接触している部分に作用する押圧力を示す模式図である。
【図8】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図9】コイルばねを示す斜視図である。
【図10】定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。
【図11】図9のB―B断面図である。
【図12】定着ローラの内部を示す模式図である。
【図13】(a)は、コイルばねを示す斜視図であり、(b)は、コイルばねの端部を拡大して示す斜視図である。
【図14】定着ローラの長手方向一端部を拡大して示す斜視図である。
【図15】図13(a)のC―C断面図である。
【図16】従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0105】
10 複写機
50,150 定着ローラ
5252 定着ローラ管
60,160 コイルばね
70 加圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
前記線材は、
前記線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、
下記の式を満たすことを特徴とするローラユニット。
δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【請求項2】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
前記線材は、
その横断面の形状が非円形のものであることを特徴とするローラユニット。
【請求項3】
前記線材は、
その横断面の形状が矩形のものであることを特徴とする請求項2に記載のローラユニット。
【請求項4】
前記線材は、
その横断面の形状が長方形であり、この長方形の短辺が前記円筒状ローラの内周面に接触しているものであることを特徴とする請求項3に記載のローラユニット。
【請求項5】
前記線材は、
その横断面の形状が楕円形のものであることを特徴とする請求項2に記載のローラユニット。
【請求項6】
前記線材は、
該線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分における接線が前記楕円形の短軸に平行になるように、前記円筒状ローラの前記中空部に配置されたものであることを特徴とする請求項5に記載のローラユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのうちのいずれか一項に記載されたローラユニットを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項1】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
前記線材は、
前記線材がその半径方向に押圧される押圧力をPとし、前記線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触している部分が該線材の半径方向に押圧される押圧力をP’とし、前記線材の材料のヤング率をEとし、前記線材の断面二次モーメントをIとし、前記線材の半径をrとし、前記線材の線径をr’とし、前記線材のピッチ角度をαとし、補正係数をβとし、前記線材の半径方向の撓み量をδとし、周期的な音が発生しない前記線材の半径方向の撓み量をδsとしたときに、
下記の式を満たすことを特徴とするローラユニット。
δ=0.48・P’r3・β/EI
=0.094・P・r3・β・COSα/E・r’4<δs
【請求項2】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備えたローラユニットにおいて、
前記線材は、
その横断面の形状が非円形のものであることを特徴とするローラユニット。
【請求項3】
前記線材は、
その横断面の形状が矩形のものであることを特徴とする請求項2に記載のローラユニット。
【請求項4】
前記線材は、
その横断面の形状が長方形であり、この長方形の短辺が前記円筒状ローラの内周面に接触しているものであることを特徴とする請求項3に記載のローラユニット。
【請求項5】
前記線材は、
その横断面の形状が楕円形のものであることを特徴とする請求項2に記載のローラユニット。
【請求項6】
前記線材は、
該線材のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分における接線が前記楕円形の短軸に平行になるように、前記円筒状ローラの前記中空部に配置されたものであることを特徴とする請求項5に記載のローラユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのうちのいずれか一項に記載されたローラユニットを備えたことを特徴とする定着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−126707(P2006−126707A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317899(P2004−317899)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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