説明

ワイピングユニット、メンテナンス装置、液体吐出装置及びワイピング方法

【課題】液体吐出ヘッドの吐出面のワイピングをウエットワイピングとして、所定の吐出面のクリーニング性能が維持されるとともに、所定の吐出面の耐久性が維持される、ワイピングユニット、メンテナンス装置、液体吐出装置及びワイピング方法を提供する。
【解決手段】 インクジェットヘッド(41)のノズル面(51A)に接触させて液体吐出面を拭き取るウエブ(62)と、ウエブを液体吐出面に対して移動させる手段と、ウエブの移動経路の液体吐出面とウエブとの接触位置よりも上流側に配設され、移動させているウエブに洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧ヘッドと、洗浄液噴霧ヘッドにより洗浄液が噴霧されたウエブにおける洗浄液の塗りむらを検知する第1温度センサ(94)及び第2温度センサ(96)と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイピングユニット、メンテナンス装置、液体吐出装置及びワイピング方法に係り、特に、インクジェットヘッドに代表される液体吐出ヘッドをワイピングするワイピングユニット、メンテナンス装置及びこれを備えた液体吐出装置(描画装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を用いて、機能性液体を微液滴化して有機EL装置を製造する方法及び製造装置が知られている。かかる製造方法(装置)は、インクジェット記録装置に機能液体として液体の発光材料を導入し、これを多数の画素領域に吐出させ、その後、発光材料中の溶剤を気化(乾燥)させて、有機ELの発光層を形成するようにしている。
【0003】
インクジェットヘッドを用いた液体吐出では、インクジェットヘッドに形成されるノズル開口の近傍に付着物が存在すると、インクジェットヘッドから吐出させた液滴の飛翔曲がりや液適量のばらつきなどの吐出異常が発生しうる。
【0004】
特に、画像描画に用いられる水性インクと比較して高粘度の機能性液体が用いられる構成では、吐出時に発生するミストが吐出面に付着しやすい。このような吐出面に付着した付着物を除去するために、ウエブやワイパーなどワイピング部材によって吐出面に対してワイピング処理が行われる。
【0005】
特許文献1は、ワイピングシートに洗浄液を吹き付けて含浸させる洗浄液噴霧ヘッドを備え、洗浄液を含浸させたワイピングシートを走行させながら機能液滴吐出ヘッドのノズル形成面の拭き取り動作を行うように構成されたワイピングユニットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−167488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吐出面に対してワイピング処理を施す際に、吐出面及ワイピング部材とも乾燥状態であるとドライワイピングとなるので、付着物の除去性能が低下することが懸念される。また、吐出面の保護(撥液)膜やワイピング部材の磨耗や損傷も懸念される。
【0008】
特許文献1に開示されているワイピングユニットは、機能液滴吐出ヘッドのノズル形成面を拭き取る前に、ワイピングシートに対して洗浄液を含浸させてウエットワイピングとしているものの、ワイピングシートに洗浄液が付与されていることを確認していない。
【0009】
そうすると、何らかのトラブルによりワイピングシートに洗浄液が付与されていない状況が生じるとワイピングの工程が実質的にドライワイピングとなってしまい、所望のワイピング(クリーニング性能)を発揮できず、ノズル形成面に付着物が蓄積されてしまい、吐出異常を誘発してしまう。
【0010】
また、ノズル形成面の保護膜の磨耗が進む可能性や、ノズル形成面の保護膜を損傷させるおそれがあり、ノズル形成面の耐久性を著しく低下させてしまう懸念がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、液体吐出ヘッドの吐出面のワイピングをウエットワイピングとして、所定の吐出面のクリーニング性能が維持されるとともに、所定の吐出面の耐久性が維持される、ワイピングユニット、メンテナンス装置、液体吐出装置及びワイピング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイピングユニットは、インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、前記拭取部材を前記液体吐出面に対して移動させる移動手段と、前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクジェットヘッドのノズル面に接触させる拭取部材における、少なくとも移動手段(払拭部材)の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知することで、拭取部材の洗浄液による濡れ状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るワイピングユニットが適用されるインクジェット記録装置の概略構成を示す全体構成図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の印字部の構成を示す平面図
【図3】図1に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3に示すインクジェットヘッドのノズル配列を説明する図
【図5】図3に示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図6】図1に示すインクジェット記録装置におけるワイピングユニットの配置例を模式的に示す説明図
【図7】本発明の第1実施形態に係るワイピングユニットの概略構成を示す構成図
【図8】図6に示すワイピングユニットによるワイピング処理を模式的に図示した説明図
【図9】洗浄液の噴霧領域と温度センサの測定領域との関係を示す説明図
【図10】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図11】洗浄液の塗りむらの検知の説明図
【図12】図6に示すワイピングユニットの洗浄液の塗りむら検知の流れを示すフローチャート
【図13】変形例1に係るワイピング方法の流れを示すフローチャート
【図14】変形例2に係るワイピングユニットの概略構成を示す構成図
【図15】変形例3に係る温度情報を取得する構成の概略構成を示す説明図
【図16】本発明の第2実施形態に係るワイピングユニットの概略構成を示す構成図
【図17】洗浄液タンクと洗浄液噴霧ヘッドとの接続構造を模式的に示す説明図
【図18】図16に示すワイピングユニットが適用されるインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図19】洗浄液の速度情報に基づく洗浄液塗りむら検知の流れを示すフローチャート
【図20】洗浄液の単位時間あたりの消費量情報に基づく洗浄液塗りむら検知の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0016】
〔第1実施形態〕
(インクジェット記録装置の全体構成の説明)
図1は、本発明の第1実施形態に係るワイピングユニット(メンテナンス装置)が適用されるインクジェット記録装置(液体吐出装置)の概略構成を示す全体構成図である。
【0017】
同図に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体(図1中不図示、図2に符号40を付して図示)を保持して搬送する記録媒体搬送部12と、記録媒体搬送部12に保持された記録媒体に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yを含む印字部14と、を含んで構成されている。
【0018】
記録媒体搬送部12は、記録媒体が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト16と、搬送ベルト16が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ、従動ローラ)18,20と、記録媒体保持領域の搬送ベルト16の裏側(記録媒体40が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴に負圧を発生させる負圧発生部22と、負圧発生部22と接続される真空ポンプ24と、を含んでいる。
【0019】
記録媒体が搬入される搬入部26には、記録媒体の浮きを防止するための押さえローラ28が設けられるとともに、記録媒体が排出される排出部30にもまた、押さえローラ32が設けられている。
【0020】
搬入部26から搬入された記録媒体は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト16の記録媒体保持領域に保持される。
【0021】
記録媒体の搬送路上には、印字部14の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部34が設けられるとともに、印字部14の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体40上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)36が設けられている。
【0022】
搬入部26から搬入された記録媒体は、搬送ベルト16の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部34による温度調節処理が施された後に、印字部14において画像記録が行われる。
【0023】
画像記録がされた記録媒体は、読取装置36によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部30から排出される。
【0024】
(印字部の構成)
図2は、印字部14の概略構成を示す平面図である。同図に示す印字部14は、記録媒体40の全幅を超える長さにわたって複数のノズル(図2中不図示、図4に符号50を付して図示)が配置されたフルライン型のインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yが具備されている。
【0025】
なお、同図中、符号Mを付した両矢印線は、記録媒体40の幅方向(主走査方向)を表している。
【0026】
インクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yは、記録媒体40の搬送方向(副走査方向)Sの上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yと記録媒体40とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体40全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0027】
なお、印字部14は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド14を具備してもよい。また、インクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yの配置順も適宜変更可能である。
【0028】
(インクジェットヘッドの構造)
次に、印字部14に具備されるインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yの構造の一例について説明する。なお、各色に対応するインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号41によってインクジェットヘッドを示すものとする。
【0029】
図3は、インクジェットヘッド41の概略構成図であり、同図はインクジェットヘッド41から記録媒体の記録面を見た図(インクジェットヘッドの平面透視図)となっている。同図に示すインクジェットヘッド41は、n個のヘッドモジュール42‐i(iは1からnの整数)をインクジェットヘッド41の長手方向に沿って一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。
【0030】
また、各ヘッドモジュール42‐iは、インクジェットヘッド41の短手方向の両側からヘッドカバー44,46によって支持されている。なお、図示は省略するが、ヘッドモジュール42を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
【0031】
インクジェットヘッド41を構成するヘッドモジュール42‐iは、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するヘッドモジュール間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部は、ヘッドモジュールのつなぎ部分であり、ヘッドモジュール42‐iの並び方向について、隣接するドットが異なるヘッドモジュールに属するノズルによって形成される。
【0032】
図4は、ヘッドモジュール42‐iのノズル配列の説明図である。同図に示すように、各ヘッドモジュール42‐iは、ノズル50が二次元状に並べられた構造を有し、かかるヘッドモジュール42‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
【0033】
図4に図示したヘッドモジュール42‐iは、副走査方向Sに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Mに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル50が並べられた構造を有し、主走査方向Mの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。
【0034】
図4では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号52を付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号54を付して図示されている。
【0035】
なお、ノズル50のマトリクス配置の他の例として、主走査方向Mに沿う行方向、及び主走査方向Mに対して斜め方向の列方向に沿って複数のノズル50を配置する構成が挙げられる。
【0036】
本例では、フルライン型の記録ヘッドを具備する形態を例示したが、記録媒体40に幅方向に短尺のインクジェットヘッドを走査させて同方向への画像記録を行い、同方向への一回の画像記録が終了すると、記録媒体40をインクジェットヘッドの走査方向と直交する方向へ所定量移動させて、次の領域に対してインクジェットヘッドを走査させながら画像記録を行う動作を繰り返して、記録媒体40の全域にわたって画像記録を行うシリアル方式を適用することも可能である。
【0037】
図5は、インクジェットヘッド41(ヘッドモジュール42)の立体構造を示す断面図であり、1チャンネル分の液滴吐出素子が図示されている。同図に示すように、本例のインクジェットヘッド41は、複数のノズル50の開口が形成されたノズルプレート51と、圧力室52や共通流路53等の流路が形成された流路板等を積層接合した構造から成る。
【0038】
ノズルプレート51は、インクジェットヘッド41のノズル面(液体吐出面)51Aを構成し、各圧力室52にそれぞれ連通する複数のノズル50が形成されている。
【0039】
流路板は、圧力室52の側壁部を構成するとともに、共通流路53から圧力室52にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口54を形成する流路形成部材である。
【0040】
なお、説明の便宜上、図5では簡略的に図示しているが、流路板は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート51及び流路板は、シリコンを材料として半導体製造プロセス(薄膜製膜プロセス)によって所要の形状に加工することが可能である。
【0041】
共通流路53はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路53を介して各圧力室52に供給される。
【0042】
圧力室52の一部の面(図5おいて天面)を構成する振動板55には、上部(個別)電極56A及び下部(共通)電極56Bを備え、上部電極56Aと下部電極56Bとの間に圧電体56Cが挟まれた構造を有する圧電素子56が接合されている。
【0043】
振動板55を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子56の下部電極56Bに相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0044】
上部電極56Aに駆動電圧を印加することによって圧電素子56が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル50からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子56が元の状態に戻る際、共通流路53から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
【0045】
本例に示すインクジェットヘッドの吐出方式は、圧電素子のたわみ変形を利用した圧電方式を適用してもよいし、ノズルと連通する液室内のインクの膜沸騰現象を利用したサーマル方式を適用してもよい。
【0046】
(メンテナンスユニットの説明)
次に、インクジェットヘッド41(ノズル面51A)に付着した付着物を除去するためのメンテナンスユニット(ワイピングユニット)について詳説する。
【0047】
図6は、図1に示すインクジェット記録装置におけるメンテナンスユニット60(ワイピングユニット61)の配置例を模式的に示す説明図である。なお、同図における紙面を貫く方向は、記録媒体40の搬送方向である。
【0048】
同図に示すワイピングユニット61は、記録媒体40(図2参照)の搬送路上の印字位置から記録媒体搬送方向と直交方向(矢印線により図示)にインクジェットヘッド41を移動させたメンテナンス位置の配置されている。
【0049】
すなわち、インクジェットヘッド41のメンテナンスは、インクジェットヘッド41を印字位置(記録媒体40の搬送路上の位置)から記録媒体搬送方向と直交する方向へ移動させ、インクジェットヘッド41をメンテナンス位置に移動させた状態で実行される。
【0050】
メンテナンス位置に移動させたインクジェットヘッド41は、ノズル面51Aにウエブ(拭取部材)62を接触させ、この状態でインクジェットヘッド41の短手方向(副走査方向)についてウエブ62を走行させて、ウエブ62によるノズル面51Aの拭き取りが行われる。
【0051】
図6には、ウエブ62のノズル面51Aとの接触面と反対側面から拭き取りローラ64(図7に図示した駆動ローラ85)を押圧させて、ウエブ62をノズル面51Aに接触させる形態が図示されている。
【0052】
なお、メンテナンスユニット60は、インクジェットヘッド41のノズル面51Aの拭き取り処理を行うワイピングユニットの他に、インクジェットヘッドのパージ、吸引などの処理が実行されるパージユニットが含まれる形態がありうる。
【0053】
また、図2に示すように、複数のインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yを備える形態では、インクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yごとにメンテナンスユニット60(ワイピングユニット61)を備えてもよいし、1つ又はインクジェットヘッド14K,14C,14M,14Yの数よりも少ないメンテナンスユニット60(ワイピングユニット61)を備え、1つのメンテナンスユニット60(ワイピングユニット61)が、複数のインクジェットヘッドに対応してもよい。
【0054】
(ワイピングユニットの説明)
図7は、ワイピングユニット61の概略構成を示す全体構成図である。同図に示すワイピングユニット61は、別個独立に構成された巻取ユニット65と拭取ユニット66とから構成される。
【0055】
先に説明したように、ワイピングユニット61は、メンテナンス位置に停止しているインクジェットヘッド41に対してウエブ62を走行させながら、移動テーブル68により全体としてインクジェットヘッド41の短手方向と略平行方向(矢印線により図示)に移動させて、インクジェットヘッド41を拭き取るものである。
【0056】
このため、ワイピングユニット61は、ウエブ62が巻取ユニット65から繰り出され、拭き取り動作のために拭取ユニット66を周回して巻取ユニット65に巻き取られるように構成されている。
【0057】
ウエブ62を走行させる手段として機能する巻取ユニット65は、不図示のフレームに回転自在に支持された送り出しリール70と、不図示のフレームに回転自在に支持された巻き取りリール72と、巻き取りリール72を回転させる巻き取りモータ74と、を備えている。
【0058】
上側に配設される送り出しリール70はロール状のウエブ62(未使用のウエブ62)が装填される。送り出しリール70から送り出されたウエブ62は、速度検出ローラ76を介して拭取ユニット66に送り込まれる。
【0059】
巻き取りリール72と巻き取りモータ74との間にはタイミングベルト78が掛け渡され、巻き取りモータ74の回転により巻き取りリール72が回転して、ウエブ62が巻き取られる。すなわち、巻き取りリール72は、使用済みのウエブ62を回収するための手段として機能している。
【0060】
拭取ユニット66にもウエブ62を送る不図示の拭き取りモータが設けられている。送り出しリール70は、回転軸70Aに取り付けられたトルクリミッタ82によって該拭き取りモータに抗するように制動回転させる。
【0061】
速度検出ローラ76は、自由回転する上下2つのローラ76A,76Bから成るグリップローラであり、これに設けた速度検出器84から得られた速度情報に基づき、巻き取りモータ74の動作を制御する。
【0062】
すなわち、送り出しリール70は、ウエブ62を張った状態で送り出し、巻き取りリール72は、ウエブ62を弛みが生じないように巻き取るように構成されている。
【0063】
拭取ユニット66は、不図示のベースフレームに両持ちで回転自在に支持された拭き取りローラ64と、拭き取りローラ64を回転させる拭き取りモータ(不図示)と、拭き取りローラ64に平行に対向して配設される洗浄液噴霧ヘッド88と、ベースフレームを昇降させる複動形式の一対のエアーシリンダ90とを備えている。
【0064】
同時に駆動される一対のエアーシリンダ90により、ベースフレーム及びこれに支持された拭き取りローラ64や拭き取りモータ等が昇降するように構成されている。
【0065】
拭き取りローラ64の構成例として、タイミングベルト(不図示)を介して拭き取りモータに連結した駆動ローラ85と、ウエブ62を挟んで駆動ローラに接触する従動ローラ86とから成るグリップローラで構成される形態が挙げられる。
【0066】
該駆動ローラ85は、コア部分に弾力性或いは柔軟性を有するゴムを巻回したゴムローラで構成され、これに周回するウエブ62を走行させながらインクジェットヘッド41のノズル形成面67に押し付けるよう構成することができる。
【0067】
洗浄液噴霧ヘッド88は、拭き取りローラ64のウエブ移動方向の上流側近傍に配設され、走行するウエブ62と対向する面には複数の噴霧ノズル(図7中不図示、図9に符号100を付して図示)が設けられている。
【0068】
送り出しリール70から送られてくるウエブ62に対して、純水やインク溶媒等で構成された洗浄液を噴霧ノズルから吹き付ける。なお、洗浄機能を有する材料を付与した専用の洗浄液を適用することも可能である。
【0069】
洗浄液が吹き付けられ、洗浄液を含浸させたウエブ62は、インクジェットヘッド41のノズル面51Aに接触させ、ウエブ62によって該ノズル面51Aが拭き取られるようになっている。
【0070】
拭き取りローラ64の下方には洗浄液パン92が設けられており、ウエブ62やノズル面51Aから落下した洗浄液を受けるように構成されている。
【0071】
本例に示すワイピングユニット61は、洗浄液噴霧ヘッド88のウエブ送り方向上流側に第1温度センサ94(St1)を備えるとともに、洗浄液噴霧ヘッド88のウエブ送り方向下流側に第2温度センサ96(St2)を備えている。
【0072】
第1温度センサ94により洗浄液が噴霧される前のウエブ62の温度情報が取得され、第2温度センサ96により、洗浄液が噴霧され、かつ、洗浄液が含浸された後のウエブ62の温度情報が取得される。
【0073】
第1温度センサ94及び第2温度センサ96により取得された洗浄液噴霧の前後のウエブ62の温度情報から洗浄液噴霧の前後のウエブ62の温度変化が求められ、ウエブ62上の、ウエブ62の移動方向における洗浄液の塗りむらの有無が把握される(詳細後述)。
【0074】
ここで、図8を参照して、ノズル面51Aの拭き取り動作を簡単に説明する。インクジェットヘッド41を移動させて、所定のメンテナンス位置(ワイピング位置)に到達すると、移動テーブル68を駆動させ、ワイピングユニット61を前進させてインクジェットヘッド41に十分に接近させる。
【0075】
拭き取りローラ64がインクジェットヘッド41の近傍まで移動したら、移動テーブル68を停止させ、エアーシリンダ90(図7参照)を駆動させて、インクジェットヘッド41のノズル面51Aに接触させる(押し付ける)ように、拭き取りローラ64(図7の駆動ローラ85のみを図示し、従動ローラ86の図示を省略)を上昇させる。
【0076】
図8に実線で図示された状態は、ノズル面51Aに拭き取りローラ64(ウエブ62)を接触させた(押し付けた)状態である。
【0077】
ここで、巻き取りモータ74及び拭き取りモータを駆動させて、ウエブ62を走行(移動)させるとともに(ウエブ62の移動方向を矢印曲線により図示)、洗浄液噴霧ヘッド88を動作させて洗浄液の噴霧を開始する。
【0078】
また、洗浄液の噴霧開始と同時に、移動テーブル68(図7参照)を駆動させてウエブ62の送りを行いながら、拭き取りローラ64をインクジェットヘッド41のノズル面51Aを拭き取るように、ノズル面51Aの短手方向における一方の端からインクジェットヘッド41の短手方向に沿って前進させる(矢印線により拭き取りローラ64の前進方向を図示)。
【0079】
図8に破線により図示するように、拭き取りローラ64がノズル面51Aの短手方向における他方の端に到達してノズル面51Aの拭き取り動作が完了すると、ウエブ62の送りを停止させ、拭き取りローラ64を下降させ、移動テーブル68を動作させてワイピングユニット61を元の位置に後退させる。
【0080】
図9(a)は、洗浄液噴霧ヘッド88の概略構造、及び第1温度センサ94(第2温度センサ96)の概略構造を説明する図である。また、図9(b)は、洗浄液噴霧ヘッド88の噴霧領域と第1温度センサ94(第2温度センサ96)の温度測定領域との関係を示す説明図である。
【0081】
なお、第1温度センサ94と第2温度センサ96とは同じ構成のものを適用することができるので、ここでは、第1温度センサ94についてのみ説明することとする。また、図9(a),(b)における紙面を貫く方向は、ウエブ62の送り方向である。
【0082】
図9(a)に示す洗浄液噴霧ヘッド88は、ウエブ62(図9(b)参照)の幅(送り方向と直交する方向の長さ)を超える長さにわたって、複数の噴霧ノズル100が設けられている。図9(a)には、複数の噴霧ノズル100が等間隔に配置された形態が図示されている。
【0083】
詳細な図示は省略するが、図9(a)に示す洗浄液噴霧ヘッド88は、噴霧ノズル100が配設される面の反対側面に、洗浄液タンク(不図示)と連通されるチューブが接続されるジョイントが複数設けられている(図17参照)。
【0084】
噴霧ノズル100の数や噴霧ノズル100の配置間隔などの洗浄液噴霧ヘッド88の構造は、インクジェットヘッド41の構造に応じて決められる。例えば、図3に図示したような複数のヘッドモジュール42をつなぎ合わせたインクジェットヘッド41に対して、ヘッドモジュール42ごとに噴霧ノズル100を1つ(又は2つ以上)備える形態が考えられる。
【0085】
また、噴霧ノズル100の開口形状は、円形状だけでなく、だ円、長だ円、四角形など、噴霧範囲、噴霧量等に応じて様々な形状を適用することが可能である。
【0086】
図9(b)に示すように、各噴霧ノズル100から噴霧された霧状の洗浄液は、噴霧ノズル100を中心として同心円上に広がる。噴霧ノズル100ごとの噴霧領域(ウエブ62の幅方向における噴霧領域の長さをLとする)は、ややオーバーラップさせてもよいし、図示のようにオーバーラップさせずに(隣接する噴霧ノズル100の噴霧領域と接するように)噴霧して、洗浄液を含浸させながらウエブ62内で広げてもよい。
【0087】
図9(a)に示す第1温度センサ94(第2温度センサ96)は、ウエブ62の幅方法に沿って複数の検出素子94Aが並べられた構造を有している。図9(a)に示す例では、1つの検出素子94Aの検出幅(L)が、図9(b)に示す1つの噴霧ノズル100の噴霧領域の幅(L)に対応している。
【0088】
すなわち、図9(a),(b)に示す形態では、(1つの検出素子94Aの検出幅L)=(1つの噴霧ノズル100の噴霧領域の幅L)の関係を有している。
【0089】
検出素子94Aには、赤外線放射温度計などの非接触式の温度センサが適用される。本例では、複数の検出素子94Aをウエブ62の幅方向に沿って並べた形態を示したが、検出素子94Aをウエブ62の幅方向に沿って走査させる形態も可能である。
【0090】
さらに、図9(a)では、1つの噴霧ノズル100に対して、1つの検出素子94Aを備えた第1温度センサ94(第2温度センサ96)を例示したが、検出素子94Aの数は、検出素子94Aの温度検出範囲に応じて適宜決められる。
【0091】
温度検出の精度を向上させるために、洗浄液噴霧ヘッド88から噴霧される洗浄液の温度を環境温度以上に調節する態様が好ましい。例えば、洗浄液噴霧ヘッド88に温度調節器を内蔵する形態や、洗浄液噴霧ヘッド88に洗浄液を供給する供給経路に温度調節器を備える形態が挙げられる。かかる温度調節器は、図10に符号168を付して図示されている。
【0092】
洗浄液噴霧ヘッド88から噴霧される洗浄液の温度は、60℃以上(環境温度の二倍以上)であるとより好ましい。なお、洗浄液の温度が高すぎると、洗浄液の蒸発によるウエブ62の乾きが促進されてしまうことや、洗浄液の温度がインクジェットヘッド41に伝わり、インクジェットヘッド41内部(特に、ノズル50の開口近傍)のインクが固化してしまうことが懸念されるので、洗浄液の温度は80℃以下とするとよい。
【0093】
(制御系の説明)
図10は、インクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御系は、通信インターフェース150、システムコントローラ152、メモリ154、メンテナンス処理制御部156と、打滴制御部158、バッファメモリ160、プログラム格納部162等を備えている。
【0094】
通信インターフェース150は、ホストコンピュータ164から送られてくるデジタル形式の印字データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース150としては、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0095】
システムコントローラ152は、通信インターフェース150、メモリ154、メンテナンス処理制御部156、打滴制御部158等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ152は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ164との間の通信制御、メモリ154の読み書き制御等を行うとともに、ヘッド搬送部165のモータやウエブ搬送部166のモータ(巻き取りモータ74、拭き取りモータ等)、洗浄液の温度調節を行う温度調整器168を制御する制御信号を生成する。
【0096】
メモリ154は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ152が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース150を介して入力された印字データは、一旦メモリ154に記憶される。
【0097】
また、メモリ154は、各種情報や各種パラメータが記憶される記憶部としても機能している。オペレータによって各種情報を入力することができるユーザインターフェースを備える形態が好ましい。メモリ154としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
【0098】
メンテナンス処理制御部156は、図7に図示したワイピングユニット61を含むメンテナンスユニット60を統括制御するブロックである。システムコントローラ152を介して取得された各種制御情報や、第1温度センサ94、第2温度センサ96などから取得された各種検知情報に基づいて、メンテナンスユニットの各部に指令信号が送出される。
【0099】
例えば、インクジェットヘッド41のメンテナンスモードが選択されると、ヘッド搬送部165に対してインクジェットヘッド41を移動させるための指令信号を送出し、ウエブ搬送部166に対してウエブ62を送るための指令信号を送出する。
【0100】
また、第1温度センサ94、第2温度センサ96から得られた温度情報に基づいて、ウエブ62上の洗浄液の塗りむらの有無を把握する。許容範囲を超えた塗りむらが発生していることが把握されると、システムコントローラ152を介して報知部170に対してその旨を報知するための信号を送出する。
【0101】
報知部170による報知の例として、音声やアラーム音を発生させる形態、ディスプレイ装置に文字情報を表示する形態などが挙げられる。
【0102】
打滴制御部158は、システムコントローラ152の制御に従い、メモリ154内の印字データからインクジェットヘッド41吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号をヘッドドライバー172に供給する制御部である。
【0103】
打滴制御部158において所要の信号処理が施され、該吐出(塗布)データに基づいてヘッドドライバー172を介してインクジェットヘッド41から吐出されるインクの吐出量、吐出位置、インクジェットヘッド41の吐出タイミングの制御が行われる。これにより、記録媒体上に所望のカラー画像が形成される。
【0104】
打滴制御部158にはバッファメモリ160が備えられており、打滴制御部158における印字データ処理時に用いられる、印字データやパラメータなどのデータがバッファメモリ160に一時的に格納される。
【0105】
なお、図10では、バッファメモリ160は打滴制御部158に付随する態様で示されているが、メモリ154と兼用することも可能である。また、打滴制御部158とシステムコントローラ152とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0106】
ヘッドドライバー172は、打滴制御部158から与えられる吐出データに基づいてインクジェットヘッド41の圧電素子38(図5参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子38に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー172にはインクジェットヘッド41の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0107】
〔洗浄液の塗りむら検知の説明〕
次に、第1温度センサ94及び第2温度センサ96から得られた温度情報に基づく、ウエブ62上における洗浄液の塗りむら検知について詳細に説明する。
【0108】
図11は、洗浄液の塗りむら検知の説明図である。図11(a)に示すように、ある噴霧ノズル(図示の例では、洗浄液噴霧ヘッド88の略中央部の噴霧ノズル)から洗浄液が噴射されない場合を想定する。
【0109】
ウエブ62は、乾燥状態の温度(乾燥温度)と洗浄液を含浸させた状態の温度(湿潤温度)との間に変化が生じる。ウエブ62自体に温度調整処理をしていない場合は、乾燥温度は環境温度と略同一であり、湿潤温度は洗浄液の温度と略同一になると考えられる。
【0110】
そうすると、第1温度センサ94(図7参照)によりウエブ62の乾燥状態の温度情報を取得し、第2温度センサ96によるウエブ62の洗浄液を含浸させた状態の温度情報を取得して、これらの差分温度を算出する。
【0111】
ウエブ62上に洗浄液の塗りむらが発生していなければ、図11(b)に符号200を付して破線により図示した特性のように、乾燥温度と湿潤温度の差分温度は一定の値を示すことになる。
【0112】
一方、ウエブ62上に洗浄液の塗りむらが発生していると、乾燥温度と湿潤温度の差分温度は一定の値とはならずに、ウエブ62の位置によって変動する。
【0113】
図11(a)に示したように、洗浄液噴霧ヘッド88の中央部の噴霧ノズル100から洗浄液が噴霧されないと、第1温度センサ94及び第2温度センサ96とも乾燥温度を取得してしまうので、図11(b)に符号202を付して実線で図示したと特性のように、ウエブ62上の特定の位置の差分温度が他の位置の差分温度に対して大きく変動する。
【0114】
図11(b)に示す例は、湿潤温度>乾燥温度の場合(洗浄液を環境温度以上に温度調節している場合)であり、差分温度=(湿潤温度)−(乾燥温度)である。
【0115】
したがって、第1温度センサ94から得られた温度情報と、第2温度センサ96から得られた温度情報との間の差分が求められ、ウエブ62の位置ごとの変動量が所定量よりも大きい場合には、洗浄液の塗りむらが発生していると判断される。
【0116】
図12は、上述した洗浄液の塗りむら検知の制御の流れを示すフローチャートである。塗りむら検知が開始されると(ステップS10)、第1温度センサ94により乾燥温度が取得され(ステップS12)、第2温度センサ96により湿潤温度が取得される(ステップS14)。
【0117】
次に、乾燥温度と湿潤温度との差分として表される差分温度が算出され(ステップS16)、差分温度と予め設定されているしきい値が比較される(ステップS18)。
【0118】
ステップS18において、差分温度がしきい値を超えている場合は(No判定)、ステップS12に戻り、ウエブ62の温度情報の取得が継続される。
【0119】
一方、ステップS18において、差分温度がしきい値以下である場合は(Yes判定)、報知部170(図10参照)により、その旨が報知され(ステップS20)、1回のサンプリングにおける塗りむら検知が終了される(ステップS22)。
【0120】
なお、図12に示す洗浄液の塗りむら検知は、ウエブ62をノズル面51Aに接触させる前(図7に図示された状態)において開始され、ウエブ62の洗浄液の塗りむらがない状態が確認されてから、ウエブ62をノズル面51Aに接触させる。
【0121】
また、洗浄液の塗りむら検知は、インクジェットヘッド41のメンテナンス処理(ワイピング処理)が実行されている期間内において、所定のサンプリングタイミングで繰り返し実行される。
【0122】
上記の如く構成されたワイピングユニット(メンテナンスユニット)によれば、ウエブ62の温度情報に基づいてウエブ62の移動方向における洗浄液の塗りむらが検知されるので、ウエブ62上の洗浄液の塗りむらが確実に把握される。
【0123】
したがって、ウエブ62によるノズル面51Aをワイピング処理がドライワイピングとなることを防止しうる。また、ウエブ62の全幅についても温度を検出することで、ウエブ62の幅方向についても洗浄液の塗りむらを把握しうる。
【0124】
洗浄液噴霧ヘッド88から噴射される洗浄液を、環境温度(すなわち、ウエブ62の乾燥温度)を超える温度に調節しておくことで、湿潤温度から乾燥温度を減じて求められる差分温度をより大きくすることができ、洗浄液の塗りむら検知の精度を向上させることが可能となる。
【0125】
〔変形例〕
次に、上述した洗浄液の塗りむら検知における変形例について説明する。
【0126】
(変形例1)
変形例1では、第1温度センサ94が省略され、予めウエブ62の乾燥温度が記憶されている形態について説明する。
【0127】
図13は、変形例1に係る塗りむら検知の流れを示すフローチャートである。同図に示すフローチャートは、図12に示すフローチャートの乾燥温度取得工程(ステップS12)が省略され、ユーザインターフェース等から乾燥温度情報が入力される工程(ステップS11)と、該乾燥温度を記憶する工程(ステップS13)が含まれる。
【0128】
かかる乾燥温度は、環境温度としてもよいし、装置稼動時等に実測された値でもよい。また、装置ごとに固定値としてもよい。
【0129】
かかる変形例1によれば、第1温度センサ94を省略することができるので、装置構成を簡略化することができる。また、差分温度求める際のパラメータを固定値とすることができるので、温度情報取得のための制御の負荷や、差分温度を求める際の演算の負荷が低減化される。
【0130】
(変形例2)
図14は、変形例2に係るワイピングユニットの概略構成を示す構成図である。同図に示すワイピングユニット61’は、第2温度センサ96’が拭き取りローラ64(駆動ローラ85)に内蔵されている。
【0131】
さらに、第2温度センサ96’は、ウエブ62に接触させてウエブ62の温度を測定し、ウエブ62の温度情報を取得する接触式温度計が適用される。接触式温度計の一例として、熱電対を備えた接触式温度計が挙げられる。
【0132】
もちろん、第1温度センサ94に接触式温度計が適用される形態も可能であり、変形例1のように、第1温度センサ94が省略される形態も可能である。
【0133】
かかる変形例2によれば、ウエブ62の温度情報を取得する際に接触式温度計を適用することで、環境変動に起因する温度測定のばらつきの発生が防止される。また、拭き取りローラ64に温度計を内蔵することで、ノズル面51Aにより近い位置におけるウエブ62の温度情報を取得することができる。
【0134】
図14に示す例では、駆動ローラ85に第2温度センサ96’が内蔵される形態を図示したが、従動ローラ86に第2温度センサ96’を内蔵してもよい。
【0135】
(変形例3)
図15は、変形例3に係るウエブ62温度情報を取得する構成の概略構成を示す説明図である。同図に示すウエブ62温度情報を取得する構成では、第1温度センサ94及び第2温度センサ96に代わり、撮像素子95A,95Aと拡大光学系95Bとを備えた撮像装置95が設けられている。
【0136】
図15(a)は、撮像装置95の構成例を示した平面図であり、撮像装置95が実線により図示され、洗浄液噴霧ヘッド88が破線により図示されている。また、図15(b)は、撮像装置95の拡大光学系により拡大された撮像領域を図示した説明図である。
【0137】
図15(a)に示す撮像装置95は、撮像対象領域(温度測定範囲)よりも撮像可能領域が小さいものであり、拡大光学系95Bを用いて撮像領域が拡大され、撮像対象領域に対応している。
【0138】
もちろん、撮像素子95Aをウエブ62の幅方向へ走査させるように構成し、拡大光学系95Bを省略する形態も可能である。
【0139】
撮像素子95Aには、CCDが一列に並べられたラインセンサやCCDが二次元状に並べられたエリアセンサを適用することができる。
【0140】
撮像装置95により取得された撮像信号は、信号処理部(不図示)よって所定の信号処理が施され、ウエブの撮像画像が生成される。かかる撮像画像はLDCディスプレイなどの表示装置(不図示)に表示される。
【0141】
不図示の信号処理部は、図10のシステムコントローラ152やメンテナンス処理制御部156に付随する形態がありうる。また、表示装置は、図10の報知部170の機能とする形態がありうる。なお、撮像装置95(撮像素子95A)の撮像領域を照らす照明装置を備える形態が好ましい。
【0142】
かかる変形例3によれば、ウエブ62における洗浄液の塗りむらを画像として認識することができるので、洗浄液の温度が常温に近い場合など、温度差による洗浄液の塗りむらの検知が難しい場合にも洗浄液の塗りむらを検知することができ、さらに、払拭前のウエブ62上に異物が存在する場合には該異物を発見することができる。
【0143】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るワイピングユニットについて説明する。図16は、第2実施形態に係るワイピングユニット261の全体構成図である。なお、図16中、図7と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0144】
同図に示すワイピングユニット261(拭取ユニット266)は、図7に示すワイピングユニット61(拭取ユニット66)の第1温度センサ94及び第2温度センサ96に代わり、洗浄液噴霧ヘッド88に供給される洗浄液の流速を測定する流速測定器(S)294が設けられている。
【0145】
すなわち、洗浄液噴霧ヘッド88は、洗浄液チューブ289を介して洗浄液タンク291と連通されており、洗浄液チューブ289に取り付けられた流速測定器294から取得される洗浄液噴霧ヘッド88に供給される洗浄液の流速情報に基づいて、間接的に洗浄液の塗りむらが把握される。
【0146】
洗浄液チューブ289を通過する洗浄液の流速は、洗浄液噴霧ヘッド88から噴射される洗浄液量と比例しており、洗浄液チューブ289を通過する洗浄液の流速が所定の範囲の上限値を超える場合は(速い場合は)、洗浄液の噴射過多が発生していると考えられる。
【0147】
一方、洗浄液チューブ289を通過する洗浄液の流速が所定範囲の下限値未満の場合は(遅い場合は)、洗浄液の噴射過少が発生していると考えられる。
【0148】
また、洗浄液タンク291には、収容されている洗浄液の液量を測定する液量測定器296が備えられている。液量測定器296の一例として、洗浄液タンク291の洗浄液の水位(液面の高さ)を検出する水位センサが挙げられる。
【0149】
単位時間あたりの洗浄液の消費量を検出し、洗浄液の消費量が所定範囲の上限値を超える場合は、洗浄液の噴射過多が発生していると考えられ、洗浄液の消費量が所定範囲の下限値未満の場合は、洗浄液の噴射過少が発生していると考えられる。
【0150】
図17は、洗浄液タンク291と洗浄液噴霧ヘッド88との接続構造を模式的に示す説明図である。同図に示す洗浄液噴霧ヘッド88は、噴霧ノズル100ごとに流路等が区画された構造を有しており、区画ごとにジョイント293が設けられており、ジョイント293ごとに洗浄液チューブ289が連結される。
【0151】
図17に示す構成によれば、噴霧ノズル100ごとに洗浄液の流速が検出され、噴霧ノズル100ごとに、ウエブ62における洗浄液の塗りむらを検知することができる。
【0152】
図18は、第2実施形態に係るワイピングユニット261を具備するインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。なお、図18中、図10と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0153】
図18に示す制御系は、図10に示す第1温度センサ94及び第2温度センサ96に代わり、流速測定器294及び液量測定器296が設けられている。流速測定器294か羅取得された流速情報を表す測定信号、及び液量測定器296から取得された流量情報を表す測定信号は、システムコントローラ152へ送られる。
【0154】
システムコントローラ152は、該測定信号をメンテナンス処理制御部156へ送り、メンテナンス処理制御部156において、洗浄液の流速の異常の有無及び洗浄液の消費量の異常の有無が判断される。
【0155】
洗浄液の流速、消費量の異常が発生していると判断されると、システムコントローラ152を介してその旨が報知部170へ送られ、報知部170によって異常が報知される。洗浄液の流速の異常及び洗浄液の消費量の異常の少なくともいずれかが発生している場合には、異常である旨の報知がされる。
【0156】
図19は、洗浄液の流速情報に基づく、洗浄液の塗りむら検知の流れを示すフローチャートである。洗浄液の塗りむら検知が開始されると(ステップS100)、洗浄液の流速情報が取得され(ステップS102)、洗浄液の流速が正常範囲であるか否かが判断される(ステップS104)。
【0157】
ステップS104において、洗浄液の流速が正常範囲の場合は(Yes判定)、ステップS102に戻り、洗浄液の流速情報の取得が継続される。一方、ステップS104において、洗浄液の流速が正常範囲外の場合は(No判定)、異常である旨(洗浄液の塗りむらが発生している旨)の報知がされ(ステップS106)、1回のサンプリングにおける塗りむら検知が終了される(ステップS108)。
【0158】
なお、洗浄液の流速情報の取得は、インクジェットヘッド41のメンテナンス処理が実行されている期間内において、所定のサンプリングタイミングに基づいて行われる。
【0159】
図20は、洗浄液の単位時間あたりの消費量情報に基づく、洗浄液の塗りむら検知の流れを示すフローチャートである。図20に示すフローチャートでは、図19に示すフローチャートの洗浄液の流速情報の取得工程(ステップS102)に代わり、洗浄液の単位時間あたりの消費量情報を取得する工程(ステップS103)が設けられている。
【0160】
また、図19の洗浄液の流速が正常範囲であるか否かの判断工程(ステップS104)に代わり、洗浄液消費量が正常範囲であるか否かの判断工程(ステップS105)が設けられている。
【0161】
上述した洗浄液の流速情報と洗浄液の消費量情報とを併用して、ウエブ62における洗浄液の塗りむらを検知することも可能である。
【0162】
以上説明した第2実施形態に係るワイピングユニットによれば、洗浄液噴霧ヘッド88に供給される洗浄液の流速、又は洗浄液噴霧ヘッド88における洗浄液の単位時間あたりの消費量を測定し、該洗浄液の流速、該洗浄液の単位時間あたりの消費量に基づき、ウエブ62における洗浄液の塗りむらが検知されるので、ウエブ62によりノズル面51Aを拭き取る際にドライワイピングとなることが防止される。
【0163】
また、洗浄液の流速や消費量といった、高精度の測定方法が確立されている手法を利用できるので、より確実にウエブ62の湿潤(乾燥)状態を把握しうる。
【0164】
なお、本発明の第1実施形態、及第2実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、変更等を行うことが可能である。例えば基板上に機能性液体(レジスト、発光機能性材料等)をインクジェット方式により配置させる工業用途の液体吐出装置に対して本発明を適用しうる。
【0165】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0166】
(発明1):インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、前記拭取部材を前記液体吐出面に対して移動させる移動手段と、前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、を備えたことを特徴とするワイピングユニット。
【0167】
本発明によれば、インクジェットヘッドのノズル面に接触させる拭取部材における、少なくとも移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知することで、拭取部材の洗浄液による濡れ状態を把握することができる。
【0168】
検知手段における検知結果を報知する報知手段を備える形態が好ましい。
【0169】
「シート状の払拭部材」は、長尺の連続したウエブが含まれる。また、払拭部材を移動させる形態には、長尺のウエブが巻かれたロールからウエブを送り出し、使用済みのウエブをローラに巻きつけて回収する形態が含まれる。
【0170】
(発明2):発明1に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、前記拭取部材の温度変化を検出することを特徴とする。
【0171】
かかる態様によれば、払拭部材の温度変化に基づいて、払拭部材における洗浄液の塗りむらを把握することが可能となる。
【0172】
(発明3):発明2に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、前記拭取部材の温度を非接触で測定する非接触式温度センサを含むことを特徴とする。
【0173】
かかる態様における非接触式の温度センサの一例として、赤外線照射型温度センサが挙げられる。
【0174】
(発明4):発明2に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、前記拭取部材に接触させて前記払拭部材の温度を測定する接触式温度センサを含むことを特徴とする。
【0175】
かかる態様における接触式温度センサの一例を挙げると、検出素子として熱電対を備えた温度センサが挙げられる。
【0176】
(発明5):発明4に記載のワイピングユニットにおいて、前記拭取部材の液体吐出面に接触させる面の反対側面から前記拭取部材を押圧させて、前記拭取部材を前記液体吐出面に接触させる押圧部材を備え、前記接触式温度センサは、前記押圧部材に内蔵されることを特徴とする。
【0177】
かかる態様によれば、液体吐出面に接触させている状態の払拭部材の温度を検出することができ、装置の小型化にも寄与する。
【0178】
(発明6):発明1から5のいずれかに記載のワイピングユニットにおいて、前記洗浄液噴霧手段から噴霧される洗浄液の温度が環境温度以上となるように前記洗浄液の温度を調整する温度調整手段を備えたことを特徴とする。
【0179】
かかる態様によれば、温度の検出精度を向上させることができる。
【0180】
かかる態様における洗浄液の温度は60℃以上80℃以下とする態様が好ましい。
【0181】
(発明7):発明1に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、前記拭取部材を撮像する撮像装置を含み、前記撮像装置から得られた撮像信号に所定の画像処理を施して、前記拭取部材上の洗浄液の塗りむらの画像を生成する画像生成手段を備えたことを特徴とする。
【0182】
かかる態様によれば、洗浄液の温度が常温に近い場合など、温度差による洗浄液の塗りむらの検知が難しい場合にも洗浄液の塗りむらを検知することができ、さらに、払拭前の払拭部材上に異物が存在する場合には該異物を発見することができる。
【0183】
かかる態様において、撮像手段は、撮像素子と撮像素子の撮像領域を拡大する拡大光学系を備える形態がありうる。
【0184】
(発明8):発明1から7のいずれか1項に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、前記拭取部材の移動方向と直交する幅方向に沿って並べられた複数の検知部を含むことを特徴する。
【0185】
かかる態様によれば、払拭部材の幅方向についても洗浄液の塗りむらを検知することができる。かかる態様において、払拭部材の全幅に対応する長さにわたって洗浄液の塗りむらを検知する態様が好ましい。
【0186】
(発明9):発明1から8のいずれか1項に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態を検知する第1検知部と、洗浄液が噴霧された後の前記拭取部材の状態を検知する第2検知部と、前記第1検知手段による検知結果と第2検知手段による検知結果との相対的な差に基づいて前記拭取部材における洗浄液の塗りむらを検知することを特徴とする。
【0187】
かかる態様において、洗浄液が噴霧される前の払拭部材の乾燥状態を表す指標と、洗浄液が噴霧された後の払拭部材の湿潤状態を表す指標との差を求める形態が可能である。
【0188】
(発明10):発明1から8のいずれか1項に記載のワイピングユニットにおいて、前記検知手段は、洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態の情報が記憶される記憶手段と、洗浄液が噴霧された後の前記拭取部材の状態を検知する検知部と、を備え、前記記憶手段に記憶されている洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態と、検知部による検知結果との相対的な差に基づいて前記拭取部材における洗浄液の塗りむらを検知することを特徴とする。
【0189】
かかる態様によれば、洗浄液が噴霧される前の払拭部材の状態と、洗浄液が噴霧された後の払拭部材の状態との差に基づき洗浄液の塗りむらを判断する態様において、洗浄液が噴霧される前の払拭部材の状態を実測するための検知部を省略可能となる。
【0190】
(発明11):発明1に記載のワイピングユニットにおいて、前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段と、前記洗浄液貯留手段と前記洗浄液噴霧手段とを連通させる洗浄液流路と、を備え、前記検知手段は、前記洗浄液流路における洗浄液の流速を検知する流速センサを含むことを特徴とする。
【0191】
かかる態様によれば、洗浄液の単位時間あたりの消費量に基づき、間接的に払拭部材における洗浄液の塗りむらを把握することができる。
【0192】
(発明12):発明11に記載のワイピングユニットにおいて、前記洗浄液噴霧手段は、前記拭取部材の幅方向について複数の噴霧ユニットをつなぎ合わせた構造を有するとともに、前記噴霧ユニットごとに前記洗浄液貯留手段と連通される洗浄液流路が接続され、前記流速センサは、前記噴霧ユニットごとの洗浄液流路のそれぞれに設けられることを特徴とする。
【0193】
かかる態様によれば、洗浄液噴霧手段を構成する噴霧ユニットごとに、洗浄液の塗りむらを判断することができる。
【0194】
(発明13):発明1に記載のワイピングユニットにおいて、前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段を備え、前記検知手段は、前記洗浄液貯留手段の洗浄液消費量を検知する液量センサを含むことを特徴とする。
【0195】
かかる態様によれば、洗浄液の単位時間あたりの消費量に基づき、間接的に払拭部材における洗浄液の塗りむらを把握することができる。
【0196】
(発明14):発明13に記載のワイピングユニットにおいて、前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段を備え、前記検知手段は、前記洗浄液貯留手段内の洗浄液の液面高さを検知する液面センサを含むことを特徴とする。
【0197】
かかる態様によれば、洗浄液貯留手段内の洗浄液の液面高さに応じて、単位時間あたりの洗浄液の消費量を把握しうる。
【0198】
(発明15):発明1から14のいずれかに記載のワイピングユニットにおいて、前記移動手段は、前記拭取部材が巻かれた送り出しローラと、前記送り出しローラから送り出された前記拭取部材を前記液体吐出面に接触させる接触位置において、前記拭取部材の前記液体吐出面と接触させる面の反対側面から前記拭取部材を支持する支持ローラと、前記送り出しローラから送り出され、前記液体吐出面と接触させた拭取部材を巻き取る巻き取りロールと、前記送り出しローラ又は前記巻き取りローラのいずれか一方を回転させるモータと、前記モータを所定の回転速度で回転させて前記拭取部材を所定の速度で走行させるように前記モータを制御するモータ制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0199】
かかる態様によれば、払拭部材を走行させることで、常に未使用の払拭部材を使用することができ、払拭部材により液体吐出面から除去された付着物が液体吐出面に再付着することを防止しうる。
【0200】
(発明16):インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、前記拭取部材を移動させる移動手段と、前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、を備えたワイピングユニットを具備することを特徴とするメンテナンス装置。
【0201】
(発明17):液体を吐出させるノズルが設けられる液体吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの液体吐出面に対してワイピング処理を施すワイピングユニットと、を具備し、前記ワイピングユニットは、前記インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、前記拭取部材を移動させる移動手段と、前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【0202】
発明16及び17において、上記発明2から15のいずれかに記載のワイピングユニットを備える形態が好ましい。
【0203】
(発明18):インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材を移動させる移動工程と、前記移動工程における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側で、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧工程と、前記洗浄液噴霧工程により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動工程の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知工程と、を含むことを特徴とするワイピング方法。
【0204】
本発明において上記発明2から15のいずれかに記載のワイピングユニット各手段に対応する工程を含む態様が好ましい。
【符号の説明】
【0205】
10…インクジェット記録装置、14K,14C,14M,14Y,41…インクジェットヘッド、51A…ノズル面、60…メンテナンスユニット、61…ワイピングユニット、62…ウエブ、64…拭き取りローラ、70…送り出しリール、72…巻き取りリール、74…巻き取りモータ、84…速度検出器、88…洗浄液噴霧ヘッド、94…第1温度センサ、94A…検出素子、95…撮像装置、95B…拡大光学系、96,96’…第2温度センサ、100…噴霧ノズル、152…システムコントローラ、156…メンテナンス処理制御部、165…ヘッド搬送部、166…ウエブ搬送部、168…温度調整器168、289…洗浄液チューブ、291…洗浄液タンク、294…流速測定器、296…液量測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、
前記拭取部材を前記液体吐出面に対して移動させる移動手段と、
前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、
前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、
を備えたことを特徴とするワイピングユニット。
【請求項2】
前記検知手段は、前記拭取部材の温度変化を検出することを特徴とする請求項1に記載のワイピングユニット。
【請求項3】
前記検知手段は、前記拭取部材の温度を非接触で測定する非接触式温度センサを含むことを特徴とする請求項2に記載のワイピングユニット。
【請求項4】
前記検知手段は、前記拭取部材に接触させて前記払拭部材の温度を測定する接触式温度センサを含むことを特徴とする請求項2に記載のワイピングユニット。
【請求項5】
前記拭取部材の液体吐出面に接触させる面の反対側面から前記拭取部材を押圧させて、前記拭取部材を前記液体吐出面に接触させる押圧部材を備え、
前記接触式温度センサは、前記押圧部材に内蔵されることを特徴とする請求項4に記載のワイピングユニット。
【請求項6】
前記洗浄液噴霧手段から噴霧される洗浄液の温度が環境温度以上となるように前記洗浄液の温度を調整する温度調整手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のワイピングユニット。
【請求項7】
前記検知手段は、前記拭取部材を撮像する撮像装置を含み、
前記撮像装置から得られた撮像信号に所定の画像処理を施して、前記拭取部材上の洗浄液の塗りむらの画像を生成する画像生成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイピングユニット。
【請求項8】
前記検知手段は、前記拭取部材の移動方向と直交する幅方向に沿って並べられた複数の検知部を含むことを特徴する請求項1から7のいずれか1項に記載のワイピングユニット。
【請求項9】
前記検知手段は、洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態を検知する第1検知部と、
洗浄液が噴霧された後の前記拭取部材の状態を検知する第2検知部と、
前記第1検知手段による検知結果と第2検知手段による検知結果との相対的な差に基づいて前記拭取部材における洗浄液の塗りむらを検知することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のワイピングユニット。
【請求項10】
前記検知手段は、洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態の情報が記憶される記憶手段と、
洗浄液が噴霧された後の前記拭取部材の状態を検知する検知部と、
を備え、
前記記憶手段に記憶されている洗浄液が噴霧される前の前記払拭部材の状態と、検知部による検知結果との相対的な差に基づいて前記拭取部材における洗浄液の塗りむらを検知することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のワイピングユニット。
【請求項11】
前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段と、
前記洗浄液貯留手段と前記洗浄液噴霧手段とを連通させる洗浄液流路と、
を備え、
前記検知手段は、前記洗浄液流路における洗浄液の流速を検知する流速センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のワイピングユニット。
【請求項12】
前記洗浄液噴霧手段は、前記拭取部材の幅方向について複数の噴霧ユニットをつなぎ合わせた構造を有するとともに、前記噴霧ユニットごとに前記洗浄液貯留手段と連通される洗浄液流路が接続され、
前記流速センサは、前記噴霧ユニットごとの洗浄液流路のそれぞれに設けられることを特徴とする請求項11に記載のワイピングユニット。
【請求項13】
前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段を備え、
前記検知手段は、前記洗浄液貯留手段の洗浄液消費量を検知する液量センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のワイピングユニット。
【請求項14】
前記洗浄液噴霧手段へ供給される洗浄液が貯留される洗浄液貯留手段を備え、
前記検知手段は、前記洗浄液貯留手段内の洗浄液の液面高さを検知する液面センサを含むことを特徴とする請求項13に記載のワイピングユニット。
【請求項15】
前記移動手段は、前記拭取部材が巻かれた送り出しローラと、
前記送り出しローラから送り出された前記拭取部材を前記液体吐出面に接触させる接触位置において、前記拭取部材の前記液体吐出面と接触させる面の反対側面から前記拭取部材を支持する支持ローラと、
前記送り出しローラから送り出され、前記液体吐出面と接触させた拭取部材を巻き取る巻き取りロールと、
前記送り出しローラ又は前記巻き取りローラのいずれか一方を回転させるモータと、
前記モータを所定の回転速度で回転させて前記拭取部材を所定の速度で走行させるように前記モータを制御するモータ制御手段と、
を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のワイピングユニット。
【請求項16】
インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、
前記拭取部材を移動させる移動手段と、
前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、
前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、
を備えたワイピングユニットを具備することを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項17】
液体を吐出させるノズルが設けられる液体吐出面を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの液体吐出面に対してワイピング処理を施すワイピングユニットと、
を具備し、
前記ワイピングユニットは、前記インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材と、
前記拭取部材を移動させる移動手段と、
前記移動手段における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側に配設され、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧手段と、
前記洗浄液噴霧手段により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動手段の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項18】
インクジェットヘッドの液体吐出面に接触させて前記液体吐出面を拭き取るシート状の拭取部材を移動させる移動工程と、
前記移動工程における拭取部材の移動経路の前記液体吐出面と前記拭取部材との接触位置よりも上流側で、前記移動手段により移動させている拭取部材に洗浄液を噴霧する洗浄液噴霧工程と、
前記洗浄液噴霧工程により洗浄液が噴霧された払拭部材における、少なくとも前記移動工程の移動方向における洗浄液の塗りむらを検知する検知工程と、
を含むことを特徴とするワイピング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−176545(P2012−176545A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40592(P2011−40592)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】